日版王宮 イケメン王宮★人気投票2021(獎勵故事)

日版王宮 イケメン王宮★人気投票2021

(獎勵故事)

日版王宮 イケメン王宮★人気投票2021(獎勵故事)

日版王宮 イケメン王宮★人気投票2021(獎勵故事)

日版王宮 イケメン王宮★人気投票2021(獎勵故事)

【期間】2021/09/11~2021/09/26

 

 

日版王宮 イケメン王宮★人気投票2021(獎勵故事)

 

日版王宮 イケメン王宮★人気投票2021(獎勵故事)

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『抱きしめられながら一緒に眠りたい部門』

『よそ見するなと強引に押し倒されたい部門』

『キスしてほしいと甘えられたい部門』

『お風呂上がりに髪を乾かされたい部門』

 

日版王宮 イケメン王宮★人気投票2021(獎勵故事)

 

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日版王宮 イケメン王宮★人気投票2021(獎勵故事)

 

ダイジェストを読む>>>


彼と迎える、二人の結婚記念日。
特別な日は、 “思い出の場所”でとびきり素敵な時間を過ごして…―
………
アラン
「……今日は、特別な日だから」
アラン
「これはお前への、忠誠と……愛の証」
……
ルイ
「今日が吉琳との特別な日だって話したら、皆がお祝いしたいって言ってくれて」
ルイ
「……君がプリンセスで、良かった」
……
ジル
「それでは、正解したご褒美をあげないといけませんね」
ジル
「私はこの先もずっと、貴女を幸せにし続けることを誓います」
……
レオ
「吉琳ちゃんとこんな時間を一緒に過ごせるようになるなんて夢にも思わなかった」
レオ
「俺を照らしてくれた太陽は……吉琳ちゃんだったんだよ」
……
ゼノ
「二人で、幸せな記憶を作ることが出来ればと思ったのだが」
ゼノ
「……今日のお前の姿を、この目に焼き付けても良いだろうか」
……
ユーリ
「今だから言える。……俺はもう、あの時から君を好きになっていたんだ」
ユーリ
「吉琳の幸せを、願いたい」
……
ロベール
「……君はいつもまっすぐな心で俺と向き合って、優しさをくれた」
ロベール
「そんな子は吉琳ちゃんが初めてだったよ」
……
シド
「そんなに俺に会いたかったのかよ」
シド
「いくらでも言ってやるよ……お前は俺の女だ」
……
アルバート
「色々と思い返していました。ここは、何かとあなたとの縁がある場所ですから」
アルバート
「あの頃から、俺のあなたへの想いはまったく変わりません」
……
レイヴィス
「……ここで話した夜のことは、一生忘れない」
レイヴィス
「あの時があったから、今こうして俺はお前と一緒に居られるんだから」
………
これまでも、この先もずっと、愛する彼とともに歩んでいく…―
もう一度、大切な彼との思い出に浸ってみませんか?

 

 

30枚特典
ストーリーを読む>>>


満天の星がきらめく、結婚記念日の夜…―
休暇をもらった私は、夜もロベールさんとゆっくり過ごすため、別邸を訪れていた。
ロベール 「吉琳ちゃん、移動で疲れたんじゃない?」
ロベールさんの気遣いを嬉しく思いながら、頭を振る。
吉琳 「そこまで長い移動ではなかったので、大丈夫ですよ」
微笑みを交わし合ってから、私は今日泊まることになる部屋を見回した。

(何だか懐かしいな)
(ここで昔、ロベールさんの手当てをしたんだよね……)

ドーク地区の侯爵に襲われた私を庇い、ロベールさんが怪我を負ったことを思い出すと、
今でも胸が締め付けられる。

(そんな辛いこともあったけれど……)
(ロベールさんの言葉があったから、ここでのことは優しい思い出になってる)

視線を移した先で、ロベールさんが微笑む。
昔下ろしていた前髪は、後ろへ撫でつけるように上げられていた。
その姿が過去と重なり、あの時のことが鮮明に蘇ってくる。

*****
ロベール 「髪を下ろしていたのは、逃げるために本来の姿を隠していたんだ」
ロベール 「だけど君の前では、もう偽らずにいよう」
*****

(この部屋に居ると、あの日のことが昨日のことのように思えるな)

ロベール 「吉琳ちゃん」
穏やかな声で名前を呼ばれて、はっと我に返る。
ロベールさんは、柔らかな色を瞳ににじませた。
ロベール 「良ければ、少し外に出ない?」
ロベール 「夜風も涼しそうだし、どうかな」
ロベールさんから誘いを受けて、私は迷うことなく頷き返した。

***

庭に出ると、ロベールさんに促されてベンチに座る。
ロベールさんも私の隣に腰を下ろした。

(こうしていると、どうしても思い出してしまう……)

自分の素直な想いを伝えたあの夜が蘇り、落ち着かない気持ちになる。
ロベール 「ここで、吉琳ちゃんが俺に告白してくれたんだよね」
吉琳 「あ……」

(ロベールさんも思い出してたんだ)

気恥ずかしく思いながらも、小さく頷く。
吉琳 「……私も今、その時のことを考えていました」
私達の間を、優しい風が吹き抜けていった。
無言の時間も心地よく感じていると、ふいにロベールさんの手が重ねられる。
ロベール 「……君はいつもまっすぐな心で俺と向き合って、優しさをくれた」
ロベール 「そんな子は吉琳ちゃんが初めてだったよ」
向けられる温かな眼差しに、鼓動が加速していく。
熱を持つ頬を隠そうと、私は顔を伏せた。
吉琳 「私に優しくしてくれたのは、ロベールさんの方ですよ」
ロベール 「……俺が隠していた過去を知った時も、君はそう言ってくれたね」
耳に届く柔らかな声に、ゆっくりと顔を上げる。

(それって……)

*****
吉琳 「たとえ過去に何があっても、」
吉琳 「私にとって、ロベールさんが優しい人ということは変わりません」
*****

思い出しながら見つめ返すと、ロベールさんはすっと目を細めた。
ロベール 「あの時は、本当に嬉しかった」
吉琳 「そんな……私はただ思ったままを言っただけです」
ロベール 「でも俺は、そういう君に救われたんだ」
ロベール 「だからこそ君には、偽りのない俺を見せようと思えた」
はっきりとした言葉に、ロベールさんはもうすっかり過去を乗り越えたのだと感じる。

(あの時の私の言葉がロベールさんの支えになっていたのなら嬉しいな)

温かな気持ちに包まれていると、微かにロベールさんが身を寄せてきた。
ロベール 「王になることを迷ってすぐには伝えられなかった言葉も……」
ロベール 「今はもう、はっきりと言える」
ロベール 「だからこの場所で、今度は俺から伝えさせてほしい」
紡がれる言葉を聞き逃したくなくて、耳を傾ける。
ロベールさんはふわりと口元をほころばせると、
想いを伝えるように重ねた手に力を込めてきた。
ロベール 「君を愛してる」
吉琳 「ロベールさん……」
贈られた言葉を噛み締めていると、温かな体温に包まれる。
抱き寄せられたのだと気づき、心臓が煩くなり始めた。
頬に触れた胸からも鼓動が伝わってくる中、ロベールさんは優しく後ろ髪を撫でてくれる。
ロベール 「俺の心の真ん中にいるのは、いつだって君だよ」
ロベールさんは抱き締めていた手を解くと、ポケットから小箱を取り出した。
ロベール 「これを君に。開けてみて」
吉琳 「……はい」
胸の高鳴りのせいで微かに震える手で小箱を開ける。
中には緑色の宝石をあしらったロケットペンダントが収められていた。
吉琳 「綺麗……ありがとうございます、ロベールさん」
ロベール 「この中には、俺が描いた吉琳ちゃんの絵が入っているんだよ」
吉琳 「私の絵が?」
ペンダントを開けようとするけれど、蓋は固くて全く動かない。

(あれ……?)

吉琳 「ロベールさん、開かないです……」
問いかけるように見つめる私に、ロベールさんはどこか楽しそうな笑みを浮かべた。
ロベール 「それを開けるには、鍵が必要なんだ」
ロベール 「だけど、今は渡せない」
吉琳 「どうしてですか……?」
ロベールさんは笑みを深め、私をまっすぐに見据えてくる。
ロベール 「これから先も君の隣に居る約束として……」
ロベール 「鍵は来年の同じ日に渡させて欲しい」
思い出の地でする未来の約束に、自然と頬が緩んだ。
吉琳 「そういうことであれば……来年、楽しみにしていますね」

(そういえば……)

私はこの状況に、微かな既視感を覚える。
吉琳 「なんだか、シュタインとの交渉にロベールさんが出向く前……」
吉琳 「イヤリングを贈ってくれた時みたいですね」

*****
ロベール 「ちゃんと戻ってくるって約束として、吉琳ちゃんに渡したくて」
ロベール 「もう片方は戻ってからプレゼントするよ。必ず渡すから」
*****

視線を交えたロベールさんが思い出したように、そっと顎を引いた。
ロベール 「あの時は吉琳ちゃんを心配させたり」
ロベール 「不安な気持ちにもさせてしまったと思うけど……」
ロベール 「今日は、幸せな未来の約束を君としたかったんだ」
吉琳 「……ロベールさんのその気持ちが、何よりも嬉しいです」
ひたむきな想いに胸を甘く焦がされながら、笑みを返す。
ロベールさんは真剣な表情で、私をまっすぐに見つめた。
ロベール 「もう二度と君を不安にさせたりしないから」
ロベール 「何があっても離さない」
低い囁きが鼓膜を揺らした直後、吐息ごと唇を奪われる。
想いを伝えるような熱いキスに身も心も溶かされて、
私はロベールさんの首に腕を回した…―

 

 

70枚特典
ストーリーを読む>>>


柔らかな陽射しが降り注ぐ、結婚記念日の朝…―
執務室で書類に目を通していると、
部屋にノックの音が響き渡り、花束を手にしたメイドが入ってくる。
メイド 「アルバート様よりこちらを届けるように、と言付かりました」
吉琳 「アルバートから?」
大きなバラの花束には、メッセージカードが添えられていた。

(今夜バルコニーに来てください……?)
(朝はそんなこと何も言っていなかったのに)

胸に抱いたバラからは甘く芳しい匂いがする。

(そう言えば……あの日も、アルバートからバラの花束を貰ったんだっけ)

ゼノ様と婚約声明を出すというその日に贈られたバラの花束を思い出す。

(嬉しかったけど、アルバートが好きだったからこそ、悲しくて……)
(でも今はただ幸せな気持ちで、受け取ることができる)

愛おしむように、ぎゅっと両手で花束を抱きしめた。

(今日は結婚記念日……アルバートと、本当の意味で結ばれた日だ)

***

夜になりバルコニーに出ると、アルバートは星を眺めていた。
吉琳 「アルバート」
声を掛けた私を振り返ったその表情は、緊張しているのかどこか硬い。
吉琳 「お待たせしてしまいましたか?」
アルバート 「いえ……」
アルバートは静かに頭を振ると、懐かしむように目を細める。
その優しい眼差しに、鼓動が甘く波打った。
アルバート 「色々と思い返していました。ここは、何かとあなたとの縁がある場所ですから」
吉琳 「ええ、そうですね」
笑みを返して、アルバートの隣に立つ。

(ここは私にとっても、思い出深い場所……)
(アルバートは、ここで初めて私に想いを伝えてくれたんだよね)

*****
アルバート 「あなたは優しく、とても暖かい人だ」
アルバート 「…ただ、それだけで」
アルバート 「俺にとってあなたを好きになる理由は、充分でした」
*****

懸命に想いを伝えてくれたアルバートを思い出すと、今でも胸が熱くなる。

(それだけじゃなく、アルバートはここで私に誓いを立ててくれた)
(私のことも、国のことも、決して諦めないと)

ふと、中庭に目を向ける。

(あの日は、中庭からここまでアルバートが登ってきてくれたんだっけ)

吉琳 「……今日も、あの庭から来てくれるのかと思いました」
からかうようにそう言うと、アルバートの頬が赤く染まる。
アルバート 「なっ……あんなこと、そう何度もやりませんよ」
眼鏡を軽く持ち上げたアルバートが、改まった様子で私と向き直った。
アルバート 「あの時はここからの距離が……」
アルバート 「俺とあなたの間にある大きな壁のように見えました」
アルバート 「しかし今は、あなたがこうして俺の隣にいてくれる」
男らしい手に肩を抱き寄せられ、そっと身体を預ける。

(いつだって、アルバートの隣が一番安心する)

肩を抱く手から伝わる温もりが、私を幸せにしてくれた。
吉琳 「こうして今寄り添えることが、夢のようです」
アルバート 「夢ではないですよ」
アルバート 「夢だとしたら……本当に幸せな、永遠に覚めない夢です」
吉琳 「……はい」
顔を上げると甘い熱を帯びた眼差しに捕まり、身体がじわりと熱くなる。
眼鏡の奥の澄んだ目は、私だけを映していた。
アルバート 「あの頃から、俺のあなたへの想いはまったく変わりません」
アルバート 「いえ、それ以上に日が経つごとに大きくなっていきます」
吉琳 「私も……アルバートと同じ気持ちです」

(時間を重ねる度に想いは深くなって……)
(あの頃以上にアルバートを愛してる)

アルバートはすっと視線を落とすと、ポケットから小さな包みを取り出した。
アルバート 「これをあなたに」
アルバート 「開けてみてください」
促すような視線を向けられ、包みを開ける。
中には繊細な装飾が施されたバラの髪飾りが入っていた。
吉琳 「綺麗……」
思わず吐息を漏らす私から髪飾りを取ると、髪に着けてくれる。
アルバートは嬉しそうに口元をほころばせた。
アルバート 「やはりあなたはバラが似合いますね」
アルバート 「今日は特別な日ですから、改めて伝えさせてください」
アルバート 「好きです……いえ、愛しています、吉琳」
短い言葉には、アルバートの愛が詰め込まれていた。
込められた想いに胸がいっぱいになるのを感じながら、見つめ返す。
アルバート 「この先ずっと、俺と一緒に歩んでくれますか?」

(そんなの……)

吉琳 「当たり前です。私も……アルバートだけを愛していますから」
ゆっくりと伸びた手が、私の頬を優しく包み込む。
上を向かされ、アルバートの顔が視界いっぱいに映った。
アルバート 「俺に運命を預けてくれて、ありがとうございます」
アルバート 「これからも愛するあなたのために……」
アルバート 「俺は自分にできる精一杯のことをしていきます」
吉琳 「アルバート……」

(あの日、アルバートを信じてよかった)
(……こうして二人で幸せに過ごせることが、何よりも嬉しい)

吉琳 「この先も、末永くよろしくお願いしますね」
アルバート 「……ええ、もちろんです」
低く優しい声に誘われ、どちらからともなく顔を寄せる。
さやかな月明りの下でもう一度誓いを立てるように、
私達はそっと唇を重ねた…―

 

 

110枚特典
ストーリーを読む>>>


ユーリとの結婚記念日は、シュタインで過ごすことになった。
昼間はユーリのエスコートで街を巡り、
夜はシュタイン城に泊めてもらうことになって……
夜、ユーリに誘われて庭に出る。

(ゼノ様にも温かく迎えてもらえて、嬉しかったな)
(ユーリとアルバートは相変わらずみたいだけど、楽しそうだったし)

出迎えてくれた二人を思い出しながら、ユーリと夜空を見上げる。

(前もこうして、ユーリと一緒に星を見たなあ)

吉琳 「星が綺麗だね」
ユーリ 「懐かしいでしょ?」
吉琳 「うん。ちょうど今、思い出していたところ」
吉琳 「『星の庭』って言われているんだっけ」
私の言葉に、ユーリが嬉しそうに頷く。
ユーリ 「そうそう。吉琳ともう一度、ここで星が見たかったんだ」
にっこりと笑うユーリに笑みを返しながらも、
ユーリと恋人になる前に、ここで星を見た時のことが頭に蘇る。

(あの頃は好きだと伝えずに、「一緒にいたい」とだけ言っていたんだよね)
(ユーリも、そんな私に同じように返してくれて……)

*****
ユーリ 「変かな。俺も……今は何も考えたくないんだ」
ユーリ 「ただ、吉琳様と一緒にいたいだけ」
*****

顔を上げると、愛しげな眼差しに捉えられた。
ユーリ 「あの時は、自分の想いを言葉にしちゃいけないと思ってた」
ユーリ 「でも、今だから言える。……俺はもう、あの時から君を好きになっていたんだ」
吉琳 「私も……一緒に星を見た時にはもう、とっくにユーリが好きになっていたよ」
あの夜に伝えることができなかった想いを、今言葉にして伝え合う。
照れくさそうに微笑むユーリに、愛しさが溢れた。

(今、こうして素直な気持ちを口にすることができて、すごく嬉しい)
(私はもう、ユーリと夫婦なんだ……)

庭を吹き抜ける夜風に、思い出から意識が引き戻される。
風の冷たさに身体を震わせたその時、
ユーリが私の肩にブランケットを掛けてくれた。
吉琳 「用意してくれていたの?」
ユーリ 「うん。このくらい当たり前でしょ」
吉琳 「……ありがとう、ユーリ」
身体を包み込む温もりと共に、ユーリの優しさが胸を温めてくれる。

(ユーリはいつも私のことを気にかけてくれる……本当に幸せだな)

ユーリに肩を抱き寄せられて、私はその身体にそっと頭を預けた。
ふと視界の端を何かが落ちていくことに気づく。
ユーリ 「あっ」
ユーリも気づいたのか、小さな声を上げると視線を夜空に向けた。
吉琳 「今のって、流れ星だよね?」
ユーリ 「うん……!」
ユーリ 「あの日も、ここで一緒に流れ星を見て……」
しばらく夜空を見上げていたユーリが、目を輝かせて私に視線を戻す。
ユーリ 「ねえ、あの星に何かお願いしようよ」
吉琳 「えっ? お願い……?」

(今が幸せだから、これ以上願うことなんて何も……)

にこにこと笑うユーリを見ていたら、願い事が一つ頭に浮かんだ。
吉琳 「じゃあ……ユーリの幸せを願おうかな」
ユーリ 「俺の?」
きょとんとした顔でまばたきを繰り返すユーリに、笑顔で頷く。
吉琳 「うん。ユーリはいつも側にいて、守ってくれて……私に幸せをくれるから」
吉琳 「だから次は私が、ユーリの幸せをお願いするよ」
短い沈黙の後、ユーリはふわりと口元をほころばせた。
ユーリ 「……俺も、それがいい」
吉琳 「えっ?」
ユーリ 「吉琳の幸せを、願いたい」
私を見つめるユーリの目が愛しげに細められる。
ユーリ 「夫婦になって気付いたんだ。俺にとっての幸せは、君自身だってこと」
ユーリ 「俺も、君にとっての幸せになってるのかな? もしそうだったら、すごく嬉しい」
吉琳 「ユーリ……」

(そんな風に想ってくれていたんだ)
(……幸せだな)

積み重ねた時間はユーリとの愛を深くしてくれたのだと改めて知り、胸が熱くなる。
目を潤ませる私に、ユーリの唇がふわりと弧を描いた。
ユーリ 「吉琳、見ててね」
夜空に向かって手を伸ばしたユーリが、何かを掴んだように握りしめる。
私に向き直ると、その手を差し出した。
ユーリ 「手、出して」
吉琳 「うん……」
言われるがまま出した手に、ユーリが何か載せる。
それは宝石を星のように象った美しいブレスレットだった。
吉琳 「これ……」
ユーリ 「君と俺の願いを込めて……」
ユーリ 「そして、これからもずっと君の側にいられるように」
ユーリが、こつんと互いの額を合わせる。
頬を撫でる吐息にあの夜を思い出し、胸が甘く締めつけられた。
ユーリ 「大好きだよ、吉琳」
吉琳 「私も大好きだよ、ユーリ」
吉琳 「これからもずっと側にいてね」
ユーリ 「もちろん」
ユーリ 「あの頃と変わらない気持ちで……ううん、この先もっと好きになっていくと思う」
ユーリ 「これからも君だけを愛し続けるから」
熱をはらんだ眼差しに誘われるように、唇を重ねる。
幾千もの星に見守られながら、
私とユーリは互いの想いを伝え合うのだった…―

 

 

160枚特典
ストーリーを読む>>>


白い雲が青空を撫でるように流れていく、とある日の午後…―
結婚記念日は休暇を取り、シドと二人で過ごす約束をしていた。
けれど数日前から国王として隣国の会合に出かけていたシドは、
まだ戻って来ていない。

(そろそろ帰って来る頃かな)

外の様子を見ようとバルコニーの手すりに体重を預けたその時、
昨日視察中に軽く痛めた足に響く。
けれど一瞬のことだったため、私はほっと息を吐いた。

(良かった……あまり無理な体勢は取らない方が良さそうだな)

気を付けつつ遠くまで見渡してもシドの姿は見えず、
数日間離れ離れだったこともあり、寂しさが胸をよぎる。

(やり残したことがあるから待ってろって、シドからは書簡が届いたけど……)
(早く一緒に過ごしたいな……シドに逢いたいよ)

ため息が零れ落ちたその時、後ろから誰かに抱きすくめられた。
吉琳 「わ……っ」
シド 「随分とでかいため息だな」
聞き慣れた声に、嬉しさを隠し切れず振り返る。
吉琳 「シド……!」
視線を交えると、シドはからかうように唇の端を持ち上げた。
シド 「そんなに俺に会いたかったのかよ」
吉琳 「だって、なかなか戻って来ないから……」

(私は寂しかったのに、シドはそうじゃなかったのかな)

いつもと変わらない余裕のある表情に、ほんの少し悔しくなる。
吉琳 「シドは私に会いたくなかったの?」
シド 「……分かんねえのか? だったら、教えてやる」
すっと伸びた手が私の顎を軽く掬い上げる。
シドは笑みを浮かべたまま、顔を寄せた。
シド 「離れてる間、俺がどれだけお前を求めてたか」
唇に何度も深いキスを落とされ、胸が忙しなく音を立てる。
吉琳 「シド……」

(同じ気持ちでいてくれたのは伝わってきたけれど……)
(ちゃんと言葉にしてくれないなんて、やっぱりシドは狡い……)

けれどそんなところにも惹かれた自覚があるため、それ以上何も言えなかった。
唇を離しても、シドは私から目を逸らそうとしない。
真っ直ぐな瞳に射抜かれると急に気恥ずかしくなってきて、
私は広がる景色に視線を向けて別の話題を探す。
吉琳 「シドって……シドのことを考えている時にいつも来てくれるよね」

(そういえば……)

吉琳 「城を離れることになった私に会いに、ルイの別荘まで来てくれた時もそうだったな」

(それで、シドが告白してくれて……)

*****
シド 「俺は……」
シド 「お前のことが好きらしい」
シド 「離れるんじゃねえ」
*****

あの時のシドの眼差しを思い出すだけで、胸が甘くくすぐられる。

(それから、その後も嬉しい言葉をくれて……)

シド 「何思い出してんだよ」
吉琳 「えっ?」
我に返ると、シドが私の耳元に口を寄せた。
シド 「にやけた顔して……もう一度言ってほしかったのか?」
からかうような声をすぐ側に感じて、鼓動が跳ねる。

(もう一度って……まさか、告白の時の言葉のこと?)

戸惑いながら速くなっていく自分の鼓動を感じていると、
逞しい腕に再び抱き寄せられる。
シド 「いくらでも言ってやるよ……お前は俺の女だ」
吉琳 「……っ」
囁かれたあの日と同じ言葉は胸の内で何度も繰り返されて、私の体温を上げていく。
シドはふっと笑みを深めると、抱き締めていた手を離した。
シド 「そろそろ出かけねえと日が暮れちまう」
シド 「ほら、やるよ」
シドが傍らに置いていた袋から無造作に青いハイヒールを取り出す。
吉琳 「え……これを、私に?」
シド 「お前以外に誰が居るんだよ」
シドはそっと、私の足元にハイヒールを置いてくれた。
今日の澄んだ空のように美しい青色に、目を奪われる。
吉琳 「可愛い……ありがとう、シド」
吉琳 「でも、いつの間に用意してくれたの?」

(ここ最近、公務で忙しかったはずなのに……)

不思議に思って見つめると、微かな笑みが返ってきた。
シド 「さあな。いいから履いてみろよ」
吉琳 「うん……」

(もしかして……)

書簡に書いてあったやり残したことって、これを買うことだったのかな)

シドの優しさを改めて感じながら靴を脱ぎ、ハイヒールに足を通す。
けれど、つい足を庇い、ぎこちない動きになってしまった。
その時、シドが私の動きを制するように鋭い視線を向ける。
シド 「……外に出んのは、止めだ」
吉琳 「え?」
シド 「そんな顔されて履かれたんじゃ、靴も嫌がるだろ」
私の足から脱がせたハイヒールと元々履いていた靴を袋にしまうと、
シドは私を横抱きにした。
視界が高くなり、とっさにシドの首に腕を回す。

(シド、私が怪我をしているのに気付いたんだ)
(……シドにはいつだって、見透かされてしまう)

ちゃんと私を見てくれていることを嬉しく思うと同時に、
申し訳ない気持ちが込み上げる。
吉琳 「でも、せっかくの記念日なのに……」

(それにあのハイヒールは、シドが今日のために用意してくれて……)

シド 「治ったら仕切り直しだ」
シド 「記念日なんざ、いつだって祝える。問題ねえよな?」
ぶっきらぼうな言葉ににじむ優しさに、胸がふわりと温かくなる。
吉琳 「……うん。ありがとう、シド」

(前にも、こうして怪我をした私を気遣ってくれたことがあったな……)

人差し指を怪我した私に、シドは素敵なグローブを贈ってくれた。
あの時のグローブは今も大切に取ってある。

(……やっぱり、シドは優しい)

首に回した手にそっと力を込めると、シドは笑うように息を吐いた。

***

二人の部屋に着くと、シドは私をベッドの上に下ろしてくれた。
シド 「代わりに今日は、部屋でたっぷりお前を可愛がらせてもらうか」
隣に腰を下ろしたシドが熱をはらんだ眼差しを向けながら、私の頬に触れる。
撫でるように伝い落ちる指先は怪我を気遣ってくれているのか、いつもよりも優しい。

(シドは私を大切に想ってくれている……私も、その想いに応えたい)

頷く私に、シドはわずかに眉を寄せた。
シド 「随分素直じゃねえか」
吉琳 「今日は、記念日だから……」
吉琳 「シド……いつもありがとう。これからもよろしくね」
微笑みながら感謝を伝えると、シドがわずかに目を細める。
シド 「ああ」
シド 「この先、一生お前の側にいてやるよ」
触れるだけだったキスはだんだんと深いものに変わっていく。
私とシドは積み重ねてきた想いを伝え合うように、
互いの背中に腕を回した…―

 

 

200枚特典
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吹き抜ける風が髪をくすぐる、ある昼下がりのこと…―
結婚記念日に休みをもらった私とジルは、二人で馬に乗って出掛けていた。
吉琳 「風が涼しくて気持ち良いですね」
ジル 「ええ、本当に」
ジル 「暑い時期の移動には、馬車だけではなく、馬での移動も積極的に取り入れても良いかもしれません」
ジル 「この辺りは少し揺れるので、しっかり掴まっていてくださいね」
後ろから私の身体を支えて手綱を握るジルの柔らかな声が、
耳元をくすぐり、何だか気恥ずかしい。

(こうして二人きりで過ごすの、久しぶりだな。嬉しい……)

ジルの導きによって、馬はどことなく見覚えのある道を進んでいく。

(思い出の場所に行こうとジルから言われていたけれど、もしかして……)

吉琳 「あの、ジル……私達、教会に向かっているんですか?」
記憶の糸をたぐりよせて問いかければ、振り返ったジルが唇を緩めて微笑んだ。
ジル 「答え合わせは着いてからにしましょう」

***

そのまましばらく馬を走らせて到着したのは、思った通り教会だった。
私の手を取ってエスコートするジルの唇が弧を描く。
ジル 「先ほどの答え合わせですが……正解です。よく分かりましたね」
吉琳 「思い出の場所と言われたので……やっぱりここかなと思って」
吉琳 「ここは宣言式の前に、ジルが私に嬉しい言葉を贈ってくださった場所ですから」

*****
ジル 「私を……王として、貴女の隣に置いてくださいますか?」
吉琳 「そんなの……決まってるじゃないですか」
吉琳 「私には、ジルだけです」
ジル 「そう、貴女が言ってくださるのであれば……」
ジル 「私はずっと、貴女と共にありますよ」
*****

(それで……その後、キスしてくれたんだよね)

触れた唇の温かさまで思い出してしまいそうになり、頬が微かに熱くなる。
そんな私を見つめたジルが、こちらへゆっくりと顔を近付けてきた。
ジル 「それでは、正解したご褒美をあげないといけませんね」
吉琳 「え……っ」
目の前のジルの姿が、記憶の中のものと重なる。

(もしかして、キスされる……?)

甘い予感に、胸の奥が疼く。
高鳴る心臓を感じながら受け入れようと、そっと瞼を下ろした。
ジル 「……いけません。そろそろ時間でした」
吉琳 「え……?」
聞こえてきた声に思わず目を開けた私から、ジルはぱっと身体を離す。
そして、私の目を覗き込んで意地悪に微笑んだ。
ジル 「続きはまた後で……ね?」
吉琳 「っ……はい……」
先ほどまで触れそうだった唇が目に入ると、恥ずかしさよりも名残惜しさも覚えてしまう。

(それにしても、時間って……?)

不思議に思っていると、急に聖歌隊の子ども達が教会に入ってきた。
思わず子ども達を目で追った私は、その中に見覚えのある顔を見つける。
吉琳 「どうしてあの子が……」
その子どもは、私がプリンセスになる前に城下で家庭教師をしていた頃の教え子だった。
驚いていると、ジルは小さく笑いながら私の手を引く。
ジル 「こちらに来てください」
吉琳 「ジル、これは一体どういうことなんですか……?」
ジル 「後でお話します。今は座りましょう」
促されてジルと一緒に席につけば、
壇上の聖歌隊の列の中から、私の元教え子が一歩進み出る。
子ども 「国王さまと王妃さまの結婚記念日を祝して、歌を作らせていただきました」
子ども 「受け取っていただけたら嬉しいです!」
元教え子の言葉が終わると、穏やかな旋律と美しい歌声が教会中に響いた。

(すごい、素敵な歌……)

一生懸命歌っている子ども達の姿を見て、胸に感動が込み上げてくる。

(成長したあの子の姿も見られて、嬉しいな……)

***

何曲かを歌いあげたところで、聖歌隊は壇上から下りた。
私とジルはひとりひとりにお礼を言って、子ども達の小さな背中を見送る。
元教え子は、満面の笑みでこちらに手を振ってくれた。
吉琳 「……まさか、あの子とこんなところで会えるなんて思いませんでした」
ジル 「驚きましたか?」
私が頷くと、二人きりになった教会にジルの柔らかな声音が響く。
ジル 「あの子から、私達の結婚記念日をぜひ祝わせてほしいと申し出があったのです」
吉琳 「そうだったんですか……」

(私が喜ぶだろうことも考えて、ジルは受けてくれたんだろうな……)

ジルの優しさが、ただでさえ幸せで満ちていた心を甘く溶かしていった。
吉琳 「忘れられない場所で、また嬉しい思い出が増えました」
ジル 「貴女にそう言っていただけて良かった」
ジル 「……ですが、もうひとつ二人だけの思い出も作らせていただけませんか」
そう言ったジルは、ふっと真面目な顔になる。
真摯な眼差しに射抜かれて、鼓動が跳ねた。
ジル 「以前、この場所で『もうどこにも行かない』と誓いましたが……」
ジル 「その気持ちは、今も変わりません」
ジル 「国王としてではなく……貴女を愛するひとりの男として」
ジル 「私はこの先もずっと、貴女を幸せにし続けることを誓います」
ジルは改めて誓いの言葉を口にしながら、私の手をそっと持ち上げる。
そして、美しい銀色の指輪を嵌めてくれた。
吉琳 「綺麗……」
ジル 「結婚記念日のプレゼントです。この場所で、私の想いと共に貴女に贈りたかった」
ジル 「私の誓いを、受け入れていただけますか?」
吉琳 「もちろんです……私も、ずっと側にいます」
溢れる幸せに泣いてしまいそうになりながら頷くと、ジルの表情が嬉しそうにほころぶ。
ジル 「吉琳……」
温かく、大きな手のひらがするりと頬を撫でる。
親指が唇をくすぐるようになぞっていく甘い刺激に、肩が小さく跳ねた。
ジル 「そういえば、正解したご褒美がまだでしたね……」
ジル 「先ほどの続きをしても良いですか?」
吐息が触れてしまいそうな距離で、ジルが艶やかに私を見つめる。
返事の代わりに瞼を下ろすと、今度こそ唇同士が重なった。
吉琳 「ん……っ」
何度も甘く食むように触れてきたジルが、熱っぽく囁く。
ジル 「こんなところは誰にも見せられませんね……」
ジル 「私達だけの秘密です」
そんなジルの言葉に、とある記憶が蘇る。

*****
ジル 「……こうして貴女と一緒にいると…」
ジル 「どんどん、ふたりだけの秘密が増えていってしまいますね」
*****

(そんな話もしたっけ……)

温かで優しい記憶に、思わず小さな笑みがこぼれた。
その瞬間、ジルの目がどことなく意地悪な色を帯びる。
ジル 「随分と余裕がおありのようですね」
吉琳 「えっ、そんなことは……」
吉琳 「ただ、一緒に居ると秘密が増えると……昔、ジルが言っていたことを思い出して」
ジル 「……ああ」
ジルも当時のことを思い出したのか、小さく頷く。
伸びてきた指先がゆっくりと、先程のキスを思い出させるように唇をなぞっていった。
ジル 「これからも二人だけの秘密は増えていきますよ」
ジル 「ずっと、隣に居ますから」
吉琳 「ジル……」
美しい笑みを浮かべたジルに、胸が甘く震える。
ジル 「ですが、そんな考え事が出来るなんて、やはりまだ余裕がおありのようですね」
ジル 「今目の前に居る私以外、考えられなくなる程に溺れさせましょう」
再び、深く唇を奪われる。
そのまま、溢れそうな私の想いも全て、
意地悪に笑ったジルからのキスに飲み込まれてしまったのだった…―

 

 

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涼やかな夜風と周囲の熱気がまざり合う、とある夜…―
結婚記念日を迎えた私とレオは、ネープルス王国のフェスティバルにやってきていた。
吉琳 「連れて来てくれてありがとう、レオ」
レオ 「お礼なんていらないよ」
レオ 「俺が吉琳ちゃんとここに来たかっただけだから」
私達がこのフェスティバルを訪れるのは、初めてではない。
前にもこうして、レオと一緒に広場に上がる美しい炎を眺めた記憶が脳裏に鮮やかに蘇る。
レオ 「前に来たのは、まだ俺達が恋人同士じゃなかった頃だよね」
以前は、次期国王候補として噂になっていたレオが、
ネープルスの国王から招待を受けて、私と一緒に訪れたのだった。
懐かしげに目を細めるレオに、自然と私の頬も緩んでいく。
吉琳 「うん、そうだったね……」
吉琳 「今こうして夫婦としてレオと一緒にお祭りに来られて、すごく幸せだよ」
レオ 「……そんな可愛い顔で嬉しいこと言われたら、キスしちゃうよ?」
低い声で囁かれ、鼓動が跳ねた。
からかうように口端を上げたレオが、ゆっくりと近付いてくる。
吉琳 「だめ、人もいっぱい居るから……っ」
慌てて顔を背けると、レオは小さく笑ってあっさり離れていった。
レオ 「それじゃあ、また二人きりになったらね」
残された声音と言葉は甘さを含んでいて、胸がときめく。
じわりと熱を持つ頬を隠すように俯くと、レオは視線を広場の炎へと戻した。
レオ 「俺もこうしてこの光景を吉琳ちゃんと見られて、本当に幸せだよ」
ゆっくりと顔を上げた私にレオは優しく微笑み、そっと手を繋いでくれる。
温かな気持ちで握り返すと、炎に照らされたレオの瞳が、情熱的な色を映したように見えた。

***

フェスティバルが終わり、私達は賓客として、
ネープルスの国王に用意してもらった部屋に案内された。
荷物を置いて部屋の中を見回していると、あることに気付く。
吉琳 「ここ、前に来た時に使わせてもらった部屋と同じだ……懐かしいね」
レオ 「うん……ねえ、吉琳ちゃん」
返事をしようとしたその時、不意にレオが後ろから私を抱き締めてきた。
吉琳 「レオ……?」
レオ 「二人きりだね」
目の端を緩やかに下げたレオの声は、砂糖を溶かしたように甘い。
その甘さが、先程フェスティバル中にキスされそうになった時のことを思い出させた。

(『二人っきりになったら』って言われたんだった……)

緊張しながらも頷くと、抱き締めてくる腕の力が強くなる。
レオ 「前にここに来た時は、吉琳ちゃんと結婚して……」
レオ 「こんな時間を一緒に過ごせるようになるなんて夢にも思わなかった」
レオ 「本当に幸せだよ」
首筋に吐息がかかり、そのまま優しく吸い付かれて肩が跳ねた。
うなじや耳の下にまでキスを落とされて、痺れるような感覚が身体を襲う。
何度も下りてくるレオの唇は、私の首にかかったネックレスにも触れた。
レオ 「吉琳ちゃんが今つけてるのって、昔俺があげたネックレスだよね」
吉琳 「うん……大切なものだから、レオとの大事な日には付けていたかったの」
レオ 「……そっか」
レオの声が嬉しそうな響きを帯び、その身体が一度離れる。
不思議に思った私が振り返るより先に、レオの指先がネックレスを辿ってうなじへと滑る。
レオ 「少しだけじっとしてて」
そのまま大人しく待っていると、満足気な笑みを浮かべたレオが手を離す。
私の胸元には、最初からつけていたネックレスの下に、
太陽のチャームがついたネックレスがかけられていた。
吉琳 「これは……」
レオ 「吉琳ちゃんに似合いそうなネックレスを見つけたから、プレゼント」
レオの言葉はひどく優しく、私の胸を震わせる。
吉琳 「ありがとう、レオ……」
そっと太陽のチャームへと触れながら、はにかむ。

(そういえば、前にネックレスをもらった時も、似たようなことを言われたっけ……)

*****
レオ 「……でも俺、女の子にプレゼントを渡すのは、初めてかも」
吉琳 「……じゃあ、どうして私に?」
レオ 「……さあ」
レオ 「そのネックレスが、すごく似合ってたからかな」
*****

過ぎった思い出の懐かしさに、私は思わず目を細める。

(あの時は、レオの気持ちが全然分からなかった)
(でも、今は……私を想ってくれているって、伝わってくる)

満たされるのを感じながら、私は二つのネックレスに優しく触れた。
手を離せば、解放されたチャームがゆらゆらと揺れる。
吉琳 「これ……前にレオからもらったネックレスと、元々二連のネックレスだったみたい」
吉琳 「一緒につけていても、馴染んでいるというか……」
レオ 「実は、俺もそう思って買ったんだ」
レオは柔らかく微笑むと、私の鎖骨の辺りに目を留める。
レオ 「吉琳ちゃんは記念日や大事なパーティーの時に……」
レオ 「そのネックレスを、よく付けてくれてるから」
レオ 「次に贈るネックレスは、合うものにしようと思って」
嬉しい言葉に、何となく胸の辺りがむず痒くなる。

(色々と考えてくれていたんだな……)

レオ 「それと、太陽のチャームにしたのには、もうひとつ理由があって……」
レオは言葉を切ると、すっと窓の外を見た。
つられて視線を向けると、そこには満月が輝いていて……
レオ 「月は、太陽の光を反射して輝いてるんだよ」
吉琳 「え……?」
突然の言葉にレオを見るけれど、その瞳は変わらず窓の外を向いている。
レオ 「今日は、満月だ」
吉琳 「……レオは、満月が嫌いだったね」
レオ 「うん……両親が殺された日から、ずっと」
レオ 「それと同じくらい、復讐のことばかり考えている俺自身のことも嫌いだった」
悲しい告白に、胸がきつく締め付けられる。
私は気付けば、レオへと腕を伸ばしてその手に触れていた。
レオの目が微かに開かれた後、柔らかく細められる。
レオ 「……でも、そんな気持ちも吉琳ちゃんが和らげてくれたんだ」
レオ 「ひとりでは輝けない月にとらわれていた俺を照らしてくれた太陽は……」
レオ 「吉琳ちゃん、君だったんだよ」
微笑んだレオは私の手を握り返し、反対の手でそっと頬に触れてくる。
レオ 「俺が復讐しようとしてるって気づいた時……」
レオ 「『レオの苦しみも憎しみも、全部受け入れたい』って言ってくれたよね」
吉琳 「うん……レオが大切で、好きだからそうしたいと思ったんだよ」
指先が緩く絡み合い、互いの温度が混じり合っていく。
レオはその熱に溶かされたかのように、小さく笑みの交じった息を吐く。
レオ 「そう言ってもらえて、すごく嬉しかった」
レオ 「でもこれから先は、そんな負の感情以上に……」
レオ 「俺が与えていく愛を受け入れていってほしいんだ」
レオの甘さを含んだ瞳に、真摯な光が宿る。
一歩踏み出したレオの顔が近付いて、瞳の中に私の顔が映り込んだ。
レオ 「何があっても、君のこと幸せにする。だから……この先もずっと、俺の側にいてくれますか?」
吉琳 「……はい」
胸がいっぱいになりながら頷く私に、レオが嬉しそうに表情を崩す。
窓辺で満月がこぼす光を浴びながら、私達は互いにそっと唇を触れ合わせた…―

 

 

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白い陽射しが路面に反射する、とある日の午後…―
結婚記念日の今日、休暇をもらった私は、レイヴィスと城下で過ごしていた。
市場の出店を覗きながら、二人きりの時間を楽しむ。

(あ、これ……)

店先に並んだ皮のベルトが目に留まり、足を止めた。
吉琳 「このベルト、レイヴィスが好きそうなデザインだよ」
吉琳 「それに、このシャツもすごく似合いそう」
次々と品物を指差す私に、レイヴィスは小さく息を吐いた。
レイヴィス 「俺のものばかりじゃなくて、自分のものも見なよ」
呆れたように言いながらも、その唇は柔らかな弧を描いている。
吉琳 「ごめんね、つい……」
レイヴィス 「……お前ってほんと、お人好しすぎ」
レイヴィス 「俺も、そんなお前に随分ほだされたみたいだけど」
ふっと笑みを深めたレイヴィスが、美しいレースが施されたグローブを手に取った。
レイヴィス 「これなんて、お前に似合いそうじゃない?」
吉琳 「そうかな?」
レイヴィス 「でも、デザインはこっちの方がいいか。色は……」
私のものを真剣に選び始めるレイヴィスに、思わず笑みが零れる。
レイヴィス 「せっかくだし、向こうの通りも見てみるか」
吉琳 「うん、そうだね」
笑みを返すと、レイヴィスは私の手を取り歩き出した。

***

街で楽しく過ごした後、レイヴィスは私を高台に連れて来てくれた。

(この場所、懐かしいな)

吉琳 「ここでレイヴィスが、私の告白を受けてくれたんだよね……」
陽が傾き、明かりが灯る街を眺めながら、あの時のことを思い出す。

*****
レイヴィス 「抜けてるように見えて、さらっと人の核をつくようなことを言う」
レイヴィス 「…そういうお前に惹かれてる」
*****

隣を見ると、レイヴィスはじっと街を見つめていた。

(レイヴィスも思い出しているのかな?)

端整な横顔を眺めていたその時、
こちらを向いたレイヴィスと視線が交わり、鼓動が小さく跳ねる。
レイヴィス 「……ここで話した夜のことは、一生忘れない」
レイヴィス 「あの時があったから、今こうして俺はお前と一緒に居られるんだから」
吉琳 「うん……私も、ずっと覚えてる」
今この瞬間、レイヴィスと心が重なっていることが感じられて、
胸が温かな感情に満たされていく。

(レイヴィスに想いを伝えて、本当に良かった……)

けれど、目の前の光景と過去の記憶が脳裏で重なり、ふとあることが気に掛かった。

(あの時、何かあったら頼ってほしいって言ったけど……)
(私はちゃんとレイヴィスを支えられているのかな)

そんな思いが胸をよぎり、レイヴィスの本音が知りたくなる。
吉琳 「あの……フレイ地区を治めながら、国王としての公務をするのはやっぱり大変だよね」
吉琳 「無理、してない……?」
レイヴィスはふっと笑うように吐息を零すと、軽く頭を振った。
レイヴィス 「心配いらない。最近、ますますやりがいを感じてるから」
レイヴィス 「お前のおかげで」
吉琳 「私の……?」
驚く私に、柔らかな表情のままレイヴィスは頷く。
レイヴィス 「俺にとって、どちらも誇れる仕事だ」
宣言式後のパーティーで、ゼノ様とアルバートを前に、
覚悟を口にしたレイヴィスを思い出す。
今改めて同じ言葉を紡ぐその瞳には、国王らしい凛とした光が宿っていた。
レイヴィス 「お前が俺を信じて支えてくれるおかげで、よりそう思えるようになった」
レイヴィス 「お前を愛しく思うほど、この気持ちは大きくなっていってる」
吉琳 「レイヴィス……」
迷いもためらいもない、まっすぐな言葉に心が揺さぶられる。
レイヴィス 「これからも、妻として王妃として、共に歩んでいって欲しい」
吉琳 「もちろんだよ。レイヴィスと一緒に居られるのが、私の幸せだから」

(この先も精一杯レイヴィスを支えていきたい)

揺るぎない想いでレイヴィスを見上げると、
レイヴィスは持っていた袋から箱を取り出して開け、中のものをそっと取り出した。
吉琳 「それは……」
レイヴィス 「今日のために用意したんだ」
レイヴィス 「俺の決意と想いを、もう一度お前に伝えたくて」
夜でもまばゆい光を放つティアラを、レイヴィスが私の頭にそっとのせてくれる。
微かな重みを感じながら、どうしようもないほどの愛しさが込み上げてきた。
レイヴィス 「変わらぬ愛を、お前に誓う。だから俺の隣で、幸せになりなよ」
吉琳 「……ありがとう、レイヴィス」
吉琳 「レイヴィスと一緒に居られて、もう十分すぎるほど幸せだよ」
レイヴィス 「十分なんて言わせない。これからもお前を幸せにするから」
微笑みを湛えたレイヴィスが、私の唇に触れるだけのキスを落とした。
ゆっくりと離れる温もりが名残惜しくて、つい目で追ってしまう。
レイヴィス 「そろそろ帰るか」
穏やかな声に促されるけれど、迷いから視線を泳がせる。

(あともう少しだけ、ここで一緒に過ごしたい)
(そういえば……)

*****
レイヴィス 「引きとめるの、下手だな」
吉琳 「下手って言われても…」
レイヴィス 「これぐらいしてみなよ」
*****

以前、甘い囁きの直後、口づけが落とされたことを思い出す。
とっさに私はレイヴィスに自分からキスをしていた。
レイヴィス 「……」
ゆっくりと唇を離すと、レイヴィスのまつ毛が微かに揺れる。
自分からキスしてしまったことへの気恥ずかしさが今更になって込み上げてきて、
私は目を伏せた。

(レイヴィスのこと、驚かせてしまったみたいだし、なんだか恥ずかしい……)

短い沈黙の後、ふっと笑う気配がして顔を上げる。
視線が交わると、レイヴィスは唇の端を持ち上げた。
レイヴィス 「引き留めるの、すっかり上手くなったな」
意図に気付いてくれたのだと分かり、照れながらも頷きを返す。
吉琳 「……駄目、かな?」
レイヴィス 「そんなわけないだろ。もう少しここで過ごしていくか」
吉琳 「うん……!」
頷いた直後、伸びてきた手に抱き寄せられ、
今度はレイヴィスから唇にキスを落とされる。
夫婦になり何度も温もりを分け合ってきたけれど、
レイヴィスとのキスは今も私の胸を甘くくすぐった。

(やっぱり私、レイヴィスのことが好きだな……)
(これからも夫婦として……国王と王妃として、支え合って生きていきたい)

ウィスタリアの街を視界の端に留めながら、
私とレイヴィスは愛を確かめ合うように唇を重ねた…―

 

 

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心地の良い風と日差しに、気持ちも上向くある日のこと…―
私はルイから招待を受け、孤児院へと向かっていた。

(今日は結婚記念日だけど……そこでお祝いするのかな?)
(でも、どうして……)

少し不思議に思いつつも、子どもたちと久々に会えることを楽しみに、
私は孤児院への道を、軽い足取りで進んだ。
孤児院の庭へと足を踏み入れる。
女の子 「あ! お姉ちゃんが来たよ!」
声がした方へ視線を向けると、
おめかしをした子どもたちの真ん中に、ルイが立っていた。
ルイは私に気がつくと、何かを後ろ手に隠す。

(ん? なんだろう……)

ルイ 「吉琳、来てくれてありがとう」
吉琳 「あ……うん。なんだか、待たせちゃった?」
ルイ 「ううん、大丈夫。……こっち」
片手で手招きをされて近づくと、ルイが背に隠していたものを頭に乗せられる。

(これは……白い花の、冠?)

ルイ 「……今日の主役だから」
吉琳 「主役って……」
孤児院の庭は、パーティー会場のようにテーブルがセットされており、
その上には子どもたちがしたであろう可愛らしい装飾が施されている。
色とりどりお菓子や飲み物まで並べられているのを見て、私は思わず目を瞬かせた。
ルイ 「子どもたちが……俺達の記念日を、お祝いしてくれるらしい」
吉琳 「え、子どもたちが……!」
ルイが目元を緩めると、子どもたちが笑顔で庭の中央へと駆けていく。
私達は、用意された椅子へと腰掛けた。
女の子 「お兄ちゃん、お姉ちゃん見ててね!」
男の子 「俺たち、いっぱい練習したんだ!」
吉琳 「わあ、何だろう……!」
愛らしくはしゃぐ子どもたちは、私たちの前に並ぶと、
練習したであろう可愛らしい歌や、踊りを披露してくれた。
その微笑ましさに胸が温かくなっていく。
吉琳 「……かわいいね」
ルイ 「うん」
内緒話のようにルイの耳元で囁けば、柔らかく緩められた唇が同意を返してくれる。
そして子どもたちの出し物が終わり、私たちは大きな拍手を子どもたちへ送った。
吉琳 「とっても素敵だったよ!」
ルイ 「うん。……皆、本当にありがとう」
労いの言葉をかけると、子どもたちは照れくさそうな笑顔を浮かべた。
そこでふと、ずっと気になっていたことをルイに尋ねる。
吉琳 「そういえば……どうして、この子達が私とルイのお祝いをしてくれたの?」
ルイ 「今日が吉琳との特別な日だって話したら、皆がお祝いしたいって言ってくれて」
ルイ 「この子達がここに居られるのは……吉琳のお陰だから」
ルイ 「改めて、感謝の気持ちを伝えたかったみたい」
子どもたちから私の方へと視線を移したルイの言葉に、
ルイとまだ出会って間もない頃の記憶が蘇ってくる。

(この孤児院は取り壊される寸前で……)
(私が慈善施設の奨励を働きかけたことで、存続できることになったんだよね)

当時のことを思い返していると、ルイがこちらの顔を覗き込んできた。
ルイ 「君が、この子達の笑顔を守ったんだよ」
吉琳 「……そう、なんだね」

(やっぱり……あのときの決断は間違いじゃなかったんだ)

ルイの温かい言葉に、安堵が胸の奥へと落ちていく。
吉琳 「本当によかった」
ルイ 「うん。……君がプリンセスで、良かった」
ルイの優しい声音にどきりと心臓が跳ねる。
ルイ 「……私も、ルイが居てくれて本当によかったよ」

(あれから、大変なこともたくさんあったけど……)
(乗り越えてこられたのは、ルイがいてくれたからだ)

*****
ルイ 「きっと守ってみせるよ、君も…君の大事な人達も」
ルイ 「…俺は、君の『王子様』だから」
*****

そっと視線を合わせると、ルイの眼差しが私を射抜いて……
子ども 「あっ、いちゃいちゃしてる!」
子ども 「ラブラブだ!」
ルイ 「……うん、そうだよ」
吉琳 「えっ」
はやし立てるように騒ぎ始めた子どもたちの中から、
男の子が一人、ルイのほうへと近寄ってきた。
子ども 「ねえ、お姉ちゃんみたいな素敵な人と結婚するには、どうしたらいいの?」
ルイ 「そうだな……」
ルイは少し考えるように黙ると、男の子の頭をぽんと撫でた。
ルイ 「君が、本当に守りたいと思った相手だけの王子様になればいい」
子ども 「王子様? どうやって?」
無邪気な子どもの問いに、ルイは笑みを深めた。
ルイ 「……こうやって、きちんと想いを伝えるだけ」
言葉の余韻が消えるより前に、ルイがこちらへと向き直る。
そして私の手を取ると、まるで王子様のように手の甲へ口づけをした。
ルイ 「君と一緒にいると、時が経つのがあっという間に感じる」
ルイ 「それぐらい君といると幸せで……離したくない、かけがえのないものだって思うよ」
ルイ 「大好きだよ、吉琳」
突然の囁かれた愛の言葉に、心臓がとくんと音を立てた。
吉琳 「……私も、ルイが大好き」
ルイ 「……嬉しい」
大勢に見られながら愛の言葉を伝えるのは少し恥ずかしくて、頬がじわりと火照る。
ルイはそんな私の腕を優しく引いて、ついばむようなキスをしてみせた。

(えっ……!)

子どもたちの黄色い歓声を聞きながら、突然のことに思考が止まる。
触れるだけのキスは容易くほどけて、唇には熱と感触だけが残った。
吉琳 「も、もうっ! 急にキスするなんて……!」
ルイ 「想いをちゃんと伝えるには、これが一番いいと思って」
声を上げる私に対して、ルイはいつも通りの顔をしている。
吉琳 「……子どもたちも見てるのに」
ルイ 「ごめん……嫌だった?」
吉琳 「えっと……」

(びっくりしたし恥ずかしいけど……嫌では、ない)

赤い顔を隠すように、ちょっとだけ拗ねてそっぽをむくと、少しの沈黙が落ちる。
すると、一人の女の子が駆け寄ってくる。
女の子 「けんかはだめだよ、お兄ちゃんたち!」
きっと眉を吊り上げて言う女の子に、私とルイは揃って目を見開いた。
そして、どちらからともなく顔を見合わせて笑い出す。

(そういえば、前もこんなことがあったな……)

ルイも同じことを考えていたのか、こちらを見つめる瞳はどこまでも優しい。
ルイ 「仲直り、しようか」
吉琳 「……うん」
そっと手をつないで、私たちは再び視線を絡ませる。
ルイ 「俺を選んでくれてありがとう、吉琳」
吉琳 「こちらこそありがとう、ルイ」
思いを伝え合えば、幸せが胸の中へと満ちていく。
その温かさに誘われるようにして、私たちはもう一度キスをしたのだった…―

 

 

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爽やかな風が吹き抜ける、穏やかな昼下がり…―
結婚記念日を迎えた私は、正門の前でアランを待っていた。

(アラン、そろそろ来るかな……)

そう考えたところで、ふとこちらに近付いてくる馬の足音に気付く。
そちらを振り返ると、馬に乗ったアランと目があった。
アラン 「待たせた、悪い」
私の前で馬をとめたアランが、私を見下ろして少しだけ眉を下げる。
吉琳 「ううん、大丈夫。迎えに来てくれてありがとう」
吉琳 「今日はこの子と出かけるの?」
アラン 「ああ」
頷くアランから馬へ視線を移すと、その頭が優しくすり寄せられた。

(かわいい……)

毛並みのいい額や首の辺りを撫でると、馬はどこか嬉しそうに小さくいなないた。
アラン 「……やっぱこいつ、お前に懐いてるんだな」

(そういえば、プリンセスになったばかりの頃……アランに馬術を教えてもらったっけ)

優しい微笑みを浮かべるアランに、昔の記憶が蘇る。

(……あの頃はアランとこうして夫婦になるなんて、考えもしなかったな)

思わずくすりと笑みをこぼすと、こちらを見ていたアランが目を瞬く。
アラン 「なんだよ」
吉琳 「ううん、なんだか少し懐かしくて」
アラン 「……そうだな」
アランの瞳に柔らかな光が灯り、その声音もどこか穏やかさを帯びる。
大切な過去を思い返すような眼差しに、とくりと心臓が音を立てた。

(今日は特別な日だからか、つい昔のことを思い返してしまう)
(アランも同じことを思い出してるのかな……だとしたら、嬉しい)

アラン 「……じゃあ行くか」
アラン 「ほら、乗れよ」
馬上のアランが、私へと手を差し伸べてくれる。
吉琳 「ありがとう、アラン」
私はその大きな手を取り、アランに引き上げられるような形で後ろにまたがった。
アラン 「ちゃんと捕まってろよ」
吉琳 「うん」
前にまたがるアランの腰へと、しっかりと腕を回す。
私より少し高いアランの体温と、そのがっしりとした身体に鼓動が速まった。

(出会ってから、随分時間が経ったけど……)
(いつまで経ってもアランと居るとドキドキしてしまう)

愛おしいときめきに頬が熱くなるのを感じながら、
私は今一度、ぎゅっとアランの腰に抱きついた。
吉琳 「そういえば、今日はどこに行くの?」
城を後にして市街地に出たところで、私は手綱を握るアランに声をかけた。
アランはちらりと私を見て、ふっと口元を緩めてみせる。
アラン 「懐かしいとこ。……お前との、思い出の場所」

(アランとの思い出の場所……?)

謎かけのようなアランの言葉に、私は考えを巡らせる。

(もしかして、あそこかな?)

脳裏にある場所を思い浮かべながら、私は片手でそっと耳飾りに触れた。
しばらく馬を走らせ、辿り着いたのは思い浮かべた通りの湖だった。
吉琳 「……やっぱり」

(アランとの思い出の場所といったら、ここだよね)

*****
アラン 「ただ、騎士としてではなく、アラン=クロフォードとして誓う」
アラン 「一生側で、お前を守るから」
*****

大切な記憶が蘇り、思わず頬を緩めていると、
手綱を引いて馬をとめたアランが、悪戯っぽく笑いながらこちらを振り返る。
アラン 「予想、当たってたか?」
吉琳 「当たってたよ。……またここにアランと来られて、嬉しい」
アラン 「……良かった」
そう呟いたアランは、馬から降りるとこちらに両手を差し出した。
アラン 「来いよ、受け止めてやるから」
吉琳 「あ……うん!」
いつかと同じような光景に一瞬驚いたものの、
私は微笑みながら、アランに身体を預けた。
そのままふわりと馬から降ろされて、アランの腕に優しく抱き留められる。
視線を絡ませた私たちは、どちらからともなく微笑みを浮かべた。
吉琳 「……ありがとう」
アラン 「どういたしまして」
アラン 「ほら、ここ。座れよ」
吉琳 「うん」
アランに促され、湖のほとりに腰を下ろす。
並んでぼんやりと湖を眺めていると、自然と昔のことが思い出された。
吉琳 「出会ったころは……アランが王になってくれるなんて、考えられなかったな」
吉琳 「あれから、本当に色々とあったよね」
アラン 「ああ……」
アラン 「あの日、門の前で会ってから随分経ったんだな」
アラン 「一緒にいればいるほど、お前のこと、離したくねえって改めて思う」
そう言葉をこぼしたアランが、私の腕を引く。
吉琳 「アラン?」
剣を握る大きくて硬い手が、私の左手を恭しく取る。
そして、アランはその場で跪いた。
アラン 「……今日は、特別な日だから」
アラン 「これはお前への、忠誠と……愛の証」
私の左手の小指へと、輝く銀色の指輪がはめられた。

(ピンキーリング……?)

ハートと王冠をかたどったその指輪を見つめていると、
アランは目を細めながら、言葉を続ける。
アラン 「アラン=クロフォードとして、今一度誓う」
アラン 「この先も一生側で、お前を守り……愛し続けるから」
そう言ったアランの唇が、はめたばかりの指輪にキスを落とす。
その一枚の絵画のような光景に、私は覚えがあった。

(あのときも、こんなふうに……私への愛を誓ってくれた)

懐かしさと共に、少し変化した愛の言葉に対する喜びがこみ上げてくる。
アランへの想いを込めて、私は大きく頷いた。
吉琳 「うん……! ありがとう、アラン」
胸に溢れてくる幸せに、思わず頬を緩めてしまう。
アラン 「なんだよ、その顔」
吉琳 「アランのこと、やっぱり好きだなあって改めて思ったの」
アラン 「改めてって……何。俺への気持ち、少し忘れてた?」
私の言葉に、一転してアランが意地悪な笑みを浮かべる。
吉琳 「そ、そういうわけじゃ……!」
アラン 「どうだか」
慌てて否定する私に、アランはさらに笑みを深めて、
ちゅ、と触れるだけのキスをくれた。
その甘い感触と、ぼやけるほど近くにあるアランの顔に、鼓動がどんどん高鳴っていく。
アラン 「もう二度と、忘れないようにしてやる」
アラン 「ずっと俺だけ見てろよ」
吉琳 「……そんなの、もうとっくにアランしか見えないよ」
恥ずかしい気持ちを抑えてそう伝えると、アランは嬉しそうに表情を緩めた。
アラン 「……ああ、俺も」
そうして降ってきたキスは、次第に甘く、深くなっていく。

(アランと夫婦になれて……本当によかった)

そんなことを思いながら、私は思い出の湖のほとりで、
アランとの幸せな時間に浸ったのだった…―

 

 

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さやかな星明かりが森の木々に降り注ぐ、結婚記念日の夜…―

(まさか、またここに来ることになるなんて思わなかったな)

少しの緊張を覚えながら、部屋のドアを開けて中に入る。
ソファに腰を下ろしていたゼノ様はこちらに目を向けると、
微かに表情を和らげた。
ゼノ 「ユーリは無事、送り届けてくれたようだな」
吉琳 「はい、もうここまでの道は完璧だって言ってました」
ゼノ 「だろうな。……ここに座るといい」
ゼノ様に促されて、隣に座る。
この場所に二人でいることを懐かしく思いながら、ゼノ様と静かに笑みを交わした。
ゼノ 「……大切な日を過ごす場所がここで、嫌ではなかったか」
ゼノ様に結婚記念日はどうしたいかと問われた時、
二人きりでゆっくり過ごしたいと返事をしていた。
吉琳 「驚きはしましたが……嫌なんてこと、ないです」
そして今日ユーリが連れて来てくれたのは、
昔ゼノ様と秘密の逢瀬をした森の中の邸だった。

(ゼノ様との婚姻を白紙に戻した時は、本当に辛かった)

今もあの時のことを思い出すと、胸が締めつけられるような気になる。
吉琳 「でも……どうしてここなんですか?」

(とても静かで、二人きりで過ごすには良いと思うけど……)

私の眼差しを受け止めたゼノ様が、わずかに目を細める。
おもむろに伸びた綺麗な指が、私の頬に優しく触れた。
ゼノ 「あの晩のお前は……泣いていただろう」
ゼノ 「だから今一度、ここでお前と過ごしたかった」
ゼノ 「二人で、幸せな記憶を作ることが出来ればと思ったのだが」
吉琳 「ゼノ様……」
温もりを残しながら、指はゆっくりと頬を伝い落ちていく。

(ゼノ様は泣いて夜を明かしたこの場所で)
(私に幸せな思い出を作ろうとしてくれているんだ)

私はゼノ様の優しさに胸がじわりと暖かくなるのを感じながら、頷きを返した。
吉琳 「ありがとうございます、ゼノ様」
そうお礼を告げると、ゼノ様がふわりと口元をほころばせる。

(この穏やかな眼差しに、ずっと見つめられていたい)

ゼノ 「……今日のお前の姿を、この目に焼き付けても良いだろうか」
ゼノ様の言葉に、あの夜交わした会話を思い出した。

*****
吉琳 「……私の姿を、覚えておいて頂きたいんです」
ゼノ 「ああ」
ゼノ 「お前が外せ」
*****

あの時の言葉も声音も、はっきりと覚えている。
そして今ゼノ様が言おうとしていることが分かり、見つめ返した。
吉琳 「……もちろんです」
ゼノ様の眼帯に、そっと手を伸ばす。
結びを取った眼帯の下からは、紺青色の目が覗いた。
吉琳 「……やっぱりゼノ様の目はとても綺麗です」
ゼノ 「そんなことを何度も言うのは、お前くらいだ」
笑うように息を吐いたゼノ様が、ゆっくりと距離を詰める。
顔の前に影がかかった直後、唇に柔らかな感触が触れた。
胸を甘く焦がした唇はすぐに離れ、ゼノ様の両目が私を捉える。
ゼノ 「お前こそ、日を増すごとに美しくなっていく」
ゼノ 「……目が、離せなくなるほどに」
ゼノ様の腕が、私の後ろに回されたかと思うと、
首元にひやりとした金属の感触が走る。
視線を下げると、美しい青紫色の宝石が胸元で輝いていた。

(……タンザナイトだ……)

ゼノ 「……お前の美しさが、宝石をより際立たせるな」
私の首元にある宝石へ、ゼノ様の唇が落ちていく。
吉琳 「ありがとう、ございます……」
贈られるキスに、頬がどんどん熱を上げていく。
同時に、ゼノ様への想いも膨らんだ。

(ああ……やっぱり私はゼノ様が大好き)
(今、夫婦としてこうして一緒にいることができて……本当に幸せ)

喜びを噛みしめる内に、視界が涙でにじむ。
ゼノ 「……お前はすぐに泣く」
吉琳 「すみません……幸せだなと思ったんです」
吉琳 「こうしてゼノ様の側にいられることが……」
ゼノ 「……ああ。お前に出会えて、本当に良かった」
熱い吐息に鼻先をくすぐられた直後、
ゼノ様の唇が涙を拭うように目元に添えられた。
伝わる温もりが、私と同じ想いだと教えてくれる。

(ずっとこの幸せが続いてほしい)

吉琳 「ゼノ様……愛しています」
零れ落ちた言葉を掬い取るように、ゼノ様が触れるだけのキスを唇に落とした。
ゼノ 「ああ、愛している」
ゼノ 「こんな想いを抱くのは、お前が最初で最後だ」
熱を持つ唇は頬に触れ、愛撫するように首筋へと下がっていく。
頭の奥が甘く痺れるのを感じながら、私はその愛を受け止めた。
吉琳 「……んっ」
思わず声が零れた私を、ゼノ様が強く抱きしめる。
ゼノ 「悪いが、離せそうにない。今日は、こうしてずっと腕の中にいろ」
吉琳 「……はい」

 

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