日版王宮 收集活動-停更後的合集:2019年

 

20190312~20190322 ◇有投票◇
(ふたりの彼に癒されて~To make your Smile~)

 

嗯……之前小窩在2018年5月開始就停止更新日版了,

這邊會放那些沒更新到的,而現在手邊有的截圖和故事。

當然,一定會漏會少,就當……小小記錄吧☆

預覽圖>>>

 

Love Perfume~王子様はプリンセスのトリコ♡~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

My Prince Story~意外な彼にときめいて~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

ふたりの彼に癒されて~To make your Smile~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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言いなりになるのは彼?私?~恋のお願いを聞かせて~

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Temptation Spa~ほどける素肌を抱きしめて~

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Little Jealousy~恋のスパイスで想いを深めて~

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Romantic Summer~今日は少しだけ大胆に~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

イケメン王宮 人気投票2019

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

Happy Anniversary~10人の王子様からの飾らない愛の言葉~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

Trick and Treat~彼のイタズラは甘いご褒美~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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Melty Hug~彼のぬくもりに包まれて~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

Share of Happiness~愛しい彼と同じ瞬間を~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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日版王宮 收集活動-合集: 2019年

20190116~20190127

Love Perfume~王子様はプリンセスのトリコ♡~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

『これは、大切な人との仲をより深めることができる香りです』
そんなメッセージ付きの献上品をもらったあなた。
その魅惑的な香りは、彼を甘く誘惑してしまうようで…―
ジル「逃げないでください」
ジル「貴女が煽ったのですから、今日は離しませんよ」
レオ「いい香りだね。俺と会うためにつけてきてくれたの?」
レオ「吉琳ちゃんから甘い香りがするから……つい、こうしたくなって」
ゼノ「この、甘い香りに包まれていると…不思議な気持ちになる」
ゼノ「…まだ足りないな」
シド「お前、誘ってんのか?」
シド「色っぽい匂いがするって言ってんだよ」
レイヴィス「動くと洗えないんだけど」
レイヴィス「お前の身体から良い香りがする。…香りに溺れそうなくらい」
甘い香りは、いつもより甘美に愛し合う二人を包み込む…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

プロローグを読む>>>


中庭を渡る風が、花の香りを乗せて木々を揺らすある日の午後…─
ユーリ 「吉琳様、お疲れ様」
執務室での公務がひと段落したところに、
ユーリが沢山の贈り物を両手に抱えて入ってきた。
吉琳 「それ、どうしたの?」
ユーリ 「貴族の方たちから届いた吉琳様への献上品だよ」
机の上に乗せられた贈り物の山を見つめ、私は目を瞬かせた。
吉琳 「全部?」
ユーリ 「少し遅いけど、新年のお祝いの品もあるみたい」
吉琳 「じゃあ、お礼状を書かなきゃね」
一つ一つ添えられたカードをユーリと一緒に丁寧に読んでいくと、
ふと気になるメッセージがついた、ある婦人からの贈り物を見つけた。
ユーリ 「吉琳様、どうかした?」
カードを見つめたまま首を傾げる私の横から、ユーリが覗き込む。
吉琳 「ユーリ、これ……どういう意味だろう?」
ユーリ 「『大切な方との仲をより深めることのできる品です』か…」
ユーリ 「何が入ってたの?」
(そっか、中身をまだ見てなかった)
吉琳 「開けてみるね」
私はカードが添えられていた小さな箱のリボンをするりと解いた。
箱を開けた途端、甘くて艶やかな香りが微かに立ち上る。
(素敵な香り……)
吉琳 「これ、何だろう」
甘い香りに胸を弾ませながら、箱の中にあったものを取り出して蓋を開けると、
辺りにはふわりと魅惑的な香りが広がった。
ユーリ 「わ、凄くいい香りだね」
香りを吸い込みながら、ユーリが笑みをこぼす。
吉琳 「うん、本当」
(こんな素敵な香り、初めてかも)
すると、不意に箱を覗き込んだユーリが首を傾げた。
ユーリ 「あれ、ここにもカードが入ってるよ」
箱の底から取り出したカードを手に取り、二人で文字を追う。
『ただし、こちらの香りは意中のお相手を前にした男性にのみ効果が現れます』
ユーリ 「注意書き、かな?」
吉琳 「ますます、よく分からないかも」
(仲をより深めるとか、男性にしか効かないとか…どういうことなんだろう?)
私がわずかに眉を寄せて考え込んでいると、隣でユーリがにっこりと笑う。
ユーリ 「うん。でも、心配しなくても大丈夫じゃないかな」
吉琳 「え?」
ユーリ 「俺も男だし、吉琳様のこと好きなのに何も起こらないからさ」
ユーリ 「吉琳様が好きなあの人にしか、効果はないのかもね?」
吉琳 「ユーリってば」
ユーリの冗談に笑みがこぼれて、悩んでいた気持ちが軽くなる。
(そうだよね、きっと不思議な謳い文句みたいなものなのかもしれない)
吉琳 「今度、使ってみようかな」
ユーリ 「うん! 香りは見えないお洒落だしね」
(もし使ってみたら、彼はどんな反応をしてくれるだろう……)
私は魅惑的な香りのする贈り物を見つめながら、彼と会える日を心待ちにした…─

 

【50個特典】シドの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

大きな窓から月明りが優しく差し込む頃…─
夜にシドと逢う約束をしていた私は、グランディエ邸を訪れていた。
仕事が長引いているというシドに代わり、部屋へはメイドさんが案内してくれた。
(シド、気づいてくれるかな)
貴族からの献上品で貰ったボディークリームを塗ってきた私は、
ソファに座りながら、自分の手首に鼻先を寄せた。
(メッセージカードの意味は分からなかったけれど、やっぱりいい香り…)
(喜んでくれるといいな)
甘い香りに心を弾ませたまま部屋の中で帰りを待っていると、
しばらくして不意に扉が開かれて、シドが入ってきた。
吉琳 「お帰りなさい」
ソファの上に私の姿を見つけたシドは、大きな歩幅で近づいてきて唇に笑みを乗せる。
シド 「いい子にしてたか?」
シドは、大きな手でくしゃりと私の髪を撫でた。
吉琳 「もうっ」
からかいを含んだ低い声に息をつきながらも、
久しぶりに会えた実感が湧いてきて、思わず笑みがこぼれていく。
するとシドがわずかに瞳を瞬かせて、私をじっと見下ろした。
シド 「お前、誘ってんのか?」
吉琳 「え?」
シド 「色っぽい匂いがするって言ってんだよ」
(気づいてくれたんだ…)
吉琳 「ちょっとね、いい香りのするボディークリームを貰ったからつけて来たんだ」
シド 「へえ」
シド 「可愛いことするじゃねえか」
シドは私の隣に腰を下ろすと、私の顎にを添え、わずかに上向かせた。
手から伝わるシドの温もりに、胸の奥が甘い音を立てていく。
私は恥ずかしさをごまかすようにシドの手を取って、そっと両手で包み込んだ。
吉琳 「今日もお疲れ様、シド」
(ずっと、会いたかった…)
想いが溢れて微笑んだ私に、シドは少し困ったように眉を寄せる。
シド 「ったく…」
ぐっと距離を詰められて、短くついた吐息が頬を掠め…─
シド 「お前のどういうとこが男を煽んのか、身体に教えてやるよ」
こぼされた低い声にかあっと頬を帯びると、同時に、私の身体がふわりと浮いた。
吉琳 「え、シド……っ?」
突然横抱きにされて戸惑う私を、シドはベッドへと運ぶ。
ふわりと背中がベッドに沈み込み、鼓動はうるさいくらいに鳴り響く。
吉琳 「ま、待って」
シド 「待たねえよ」
思わず目の前の逞しい胸に手をつくと、シドに手首を取られてしまう。
シド 「甘い匂いと仕草で、俺を誘ったのはお前だろ」
シドの腕の中にぐっと閉じ込められて、熱い唇が重なった。
吉琳 「ん……っふ」
唇を割って舌が絡まり、愛しつくすような強引なキスとは裏腹に、
大きな手が優しく背中を撫で上げて内側からとろけていく。
吉琳 「ゃ……ぁっ」
シド 「いい声してんな」
ふっと吐息をこぼしたシドを潤んだ瞳で見上げながら、
私はぼうっとする頭であのメッセージカードの言葉を思い出していた。
(『大切な方との仲をより深める』って、こういう意味……?)
吉琳 「シド……」
私は乱れた息のまま、思ったことを口にする。
吉琳 「もしかして、私があのクリームをつけたから…?」
シド 「あ?」
シドは私のことを見下ろすと、唇に笑みを乗せる。
シド 「確かに、この甘い匂いでいつもよりお前に色気は感じたな」
吉琳 「やっぱり……」
納得したように呟くと、悪戯に笑うシドの瞳が不意に真剣な色を帯びる。
シド 「分かってねえな」
シド 「お前自身に魅力がなきゃこうはならねえよ」
吉琳 「え?」
間近で絡む眼差しに鼓動が跳ねて、そのままもう一度唇が重ねられる。
シド 「分かるまで、覚悟しとけよ」
シド 「吉琳」
『身体に教える』という言葉の通り、
窓の外の月が高くなるまでずっと、
シドの愛情を一身に浴びながら、翻弄されていった…─

 

【250個特典】ジルの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

どんよりとした暗い空の下、強い雨風が窓を叩くある日のこと…―
私とジルは、温泉地に向かう途中で急な嵐に遭い、城へと引き返してきていた。
ジル 「残念ではありますが、貴女の安全が最優先ですからね」
(本当に残念だけれど、ジルとお城でゆっくり過ごす休日も……いいよね)
そう思い直した時、雨で少し服が濡れていた私は、小さなくしゃみをする。
するとジルは私の肩を温めるように腕を回して……
ジル 「風邪を引くといけませんから、お風呂で身体を温めてはいかがですか?」
吉琳 「いえ……これくらいだったら、大丈夫です」
(今は、少しでもジルと過ごす時間を大切にしたいから、お風呂は後で……)
そう考えていると、ジルが肩を抱いたまま、少し強引にバスルームに向かって歩き出す。
ジル 「こんなに身体が冷えたままでは、いけません」
吉琳 「あ……ジル」
躊躇する声をあげると、ジルが不敵な笑みを浮かべる。
ジル 「嫌だと仰るのなら、強引に抱きかかえてでも行きますよ?」
ジルの言葉が冗談とは思えず、私は慌てて頷いた。
吉琳 「っ……分かりました」
その後、私はジルに言われた通り、一人でお風呂に浸かって小さく息をついていた。
(本当ならジルと温泉で……)
その時、部屋のドアをノックする音がして……
ジル 「入ってもよろしいですか?」
(え……ジル?)
驚きつつも、肩までお湯の中に隠れてから招き入れると、綺麗な小瓶を持ったジルが入ってくる。
ジル 「温泉にお連れ出来なかった代わりに、良い物をお持ちしました」
近づいてきたジルが浴槽のふちに腰をかけ、小瓶の中身をお湯に垂らした。
ジル 「こうすれば、少しは温泉気分が味わえますよ」
ジルが持っていたのはアロマオイルで、一気に華やかな花々の香りがバスルームに広がる。
吉琳 「あ……いい香り……」
甘い香りに心がほぐれるのを感じていると、ジルが苦笑しながら言う。
ジル 「本当は温泉に行って返ってきた後で、いつでも温泉の気分が味わえるように……」
ジル 「プレゼントしようと思って用意していたのですが、思わぬ形で役に立ちましたね」
(私のために……)
ジルの気遣いに胸がときめくのを感じた私は、
そのまま立ち上がって出て行こうとするジルを呼び止める。
吉琳 「せっかくですから、二人で……」
恥ずかしい気持ちを堪えて告げるとジルがからかうような笑みを浮かべた。
ジル 「それは……大胆な誘いですね?」
吉琳 「っ……」
ジル 「……ですが、断る理由もありませんね」
ジルは少し考えた後でそう答えて、静かに服を脱いでいく。
慌てて顔を逸らしながら待っていると、
やがてジルが、私を脚の間に抱えるようにしてお湯に浸かる。
吉琳 「……ジルのアロマオイルのお陰で、本当に二人で温泉に行けた気分を味わえました」
後ろを振り向きながら言うと、ジルはゆっくりと顔を近づけてきた。
ジル 「そう言っていただけると嬉しいですね」
そのまま唇が重なりそうになった時、ドアの外からメイドさんの声が聞こえてくる。
メイド 「プリンセス。お湯加減はいかがでしょう?」
(っ……メイドさんは、私しかいないと思っているから……)
メイド 「プリンセス……?」
動揺している私を、ジルがそっと抱きしめて耳元で囁く。
ジル 「ほら、答えないと不自然に思われますよ?」
慌てて答えようとするけれど、ジルがいたずらっぽく私の背中に唇を辿らせ始め、
身体がびくっと揺れてしまって声が出なくなる。
吉琳 「っ……」
(わざと……)
それからどうにか返事をしてメイドさんに下がってもらうと、ジルが私の顔を後ろに向かせ……
ジル 「顔が赤いようですが、のぼせてしまわれましたか?」
(……ジルのせいなのに)
少しむっとして見つめ返すと、ジルは楽しそうに笑う。
ジル 「そんな火照った顔で睨んでも、私を煽るだけですよ?」
吉琳 「ん……」
そのまま深く口づけられて、私は何も考えられなくなってしまいそうになる。
吉琳 「ジル……少し、強引です」
照れ隠しに軽く抗議すると、ジルはふっと口元を緩めて…―
ジル 「身体が熱いですね……『強引』ですか」
ジル 「ええ、言ったでしょう。私は貴女が思っている以上に強引な男だと」
ジル 「ですが、私をそうさせているのは他でもない……貴女ですよ?」
再びジルの唇が重なり、キスの合間に呟くような声が聞こえた。
ジル 「貴女が、私を狂わせる……」
私はジルが与える熱に浮かされながら、お湯から立ち昇る甘い香りを感じていた。
(このアロマオイルを使う度に……ジルの温もりを思い出して、身体が熱くなってしまいそう……)
やがて身体の力が抜けていった私をジルが抱き上げ、お湯から出る。
ジル 「このままでは本当にのぼせてしまいますね。……続きは、ベッドで……」
その囁きに甘い予感を駆りたてられながら、私はジルの首に腕を回したのだった…―


【280個特典】レイヴィスの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

綺麗な満月が静かに地上を照らす夜…―
夜になって温泉地のホテルに着いた私たちは早速、離れにある温泉に向かっていた。
レイヴィス 「貸し切りにしておいたから、ゆっくり出来るんじゃない?」
吉琳 「うん、ありがとう」
(レイヴィスと旅行なんて久しぶりだから、二人でのんびりしたいな……)
そんなことを考えながら歩いていると、何故かレイヴィスが意地悪な笑顔を向けて言う。
レイヴィス 「言い忘れてたけど、温泉は混浴だから」
吉琳 「っ……それって、一緒に入るという事、だよね?」
驚いた声を上げ、じわじわと顔が熱くなっていくのを感じていると、
レイヴィスが目の前の大きな扉を開けながら、ふっと笑う。
レイヴィス 「今さらじゃない?」
(確かに、そうだけれど……)
開いた扉の中に入って顔を上げた私は、一瞬にして目の前の光景に目を奪われる。
浴場全体がキャンドルの火で煌めく中、お湯には色とりどりの花びらが浮かんでいた。
吉琳 「わ……素敵……」
(少し濁ったお湯だから、入ってしまえば、あまり恥ずかしくないかも……)
少しほっとしていると、レイヴィスが建物の奥の方を指差して言う。
レイヴィス 「女性の脱衣所は向こう」
吉琳 「あ、うん……」
(脱衣所は分かれているみたい。けれどこう明るいと、お湯に入るまでが恥ずかしいな……)
そんな私の照れくささを察したのかレイヴィスが苦笑する。
レイヴィス 「安心しなよ。お前が先にお湯の中に入るまで、見ないでおいてあげるから」
私はレイヴィスの優しさに笑みを返しながら、脱衣所に向かった。
それから先にお湯に入り、水面に浮かんだ花びらの香りに癒されていると、
背後で水が跳ねる音が聞こえて振り向く。
レイヴィス 「湯加減はどう?」
そう訊ねながらレイヴィスが、少し間を空けて隣に座る。
吉琳 「うん、ちょうど良くて気持ちがいいよ」
レイヴィス 「そう? 気に入ったみたいで良かった」
淡く微笑むレイヴィスを見てふいに胸が高鳴り、私は思わず下を向く。
(一緒にお風呂に入るのはやっぱり……恥ずかしいな)
濁ったお湯の中で透けて見える自分の肌に目を落としていると、レイヴィスが声をかけた。
レイヴィス 「もう少しこっちに来れば?」
吉琳 「え?」
弾かれたように顔を上げた私を見てレイヴィスが笑う。
レイヴィス 「これくらいで照れてるの?」
(っ、照れるよ……)
吉琳 「別に、そういうわけじゃ……。それより、あのキャンドル……綺麗だね」
照れ隠しに無理やり話を逸らすと、レイヴィスがぱしゃりとお湯の音を響かせて私の後ろに回る。
そして、ふわりと私を抱きしめた。
レイヴィス 「話逸らすの、下手すぎ」
吉琳 「っ……」
レイヴィス 「側に来たくないのは、俺のこと嫌いになったから?」
吉琳 「そんなこと……」
(あるわけないって、分かっているのに)
わざと意地悪な質問をしたレイヴィスが、私の耳元へとさらに唇を寄せ…―
レイヴィス 「言うこと聞けない奴にはお仕置き……好きって言うまで、離さないよ」
いつになく甘い声で囁かれて、鼓動の音が大きくなる。
レイヴィス 「ほら、言わないの?」
レイヴィスがうなじや肩に落としていくキスの感触に身を捩りながら、私は小さな声を出す。
吉琳 「……好きだよ、レイヴィス」
そう告げた途端に、お湯と羞恥心のせいで体温が上がり、頭がくらりとしてきて……
レイヴィス 「ん……上出来。吉琳……」
そこへ追い討ちをかけるように耳元で名前を囁かれ、ふっと私の視界が暗くなった。
……
気が付くと、私は部屋のベッドで横になっていた。
吉琳 「あれ……?」
レイヴィス 「のぼせたみたいだったから、運んで来たんだよ」
レイヴィス 「いちいち恥ずかしがるお前が可愛いくて、少し意地悪しすぎた」
ベッドの端に腰かけて私を見つめていたレイヴィスが、
申し訳なさそうに微笑んで、水が入ったグラスを差し出す。
吉琳 「ありがとう」
身体を起こしてグラスを受け取りながら先ほどのことを思い出して、頬が火照った。
吉琳 「レイヴィスのせいじゃないよ。私も少し、意識しすぎてしまっていたから……」
そう答えた私の肩を、レイヴィスがそっと抱き寄せ……
レイヴィス 「さっき、言わなかったけど……」
吉琳 「え?」
レイヴィス 「俺も好きだよ、吉琳」
(あ、さっき……私が言ったから)
愛しげに目を細めたレイヴィスの、温かい唇が優しく重なって、
私は再びのぼせたように頭がくらりとするのを感じていた…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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日版王宮 收集活動-合集: 2019年

20190214~20190225

My Prince Story~意外な彼にときめいて~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

レオから、アランとの意外な思い出話を聞いたあなた。
愛しい彼にも自分が知らない一面があるのかと思いを馳せて…―
ルイ「うん…なんとなくだけど、覚えてる」
ルイ「俺たちも作ってみる?」
ジル「しつけは得意ですので。……貴女もご存知のはずですよ?」
ジル「この犬に、やきもちを焼いているのですか?」
ユーリ「懐かしいな…」
ユーリ「あの頃はゼノ様のために…って無我夢中だったからね」
アルバート「あれはっ……どうぞ気にしないでください」
アルバート「何枚か片付け損ねていたようです」
レイヴィス「そんなに驚くこと?」
レイヴィス「……お前が言うなら、そう思うことにする」
彼の意外な一面を辿るひとときに、心は甘くときめいて…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

プロローグを読む >>>

穏やかな日差しが城の外壁に降り注ぐ昼下がり…─
私は、レオに教わりながら執務室で新しい書類作成の公務をこなしていた。
レオ 「やっぱり吉琳ちゃんは飲み込みが早いね」
そう言われ、私は羽ペンを走らせる手を止めてレオに視線を向けた。
吉琳 「ううん。レオの教え方が上手なんだよ」
レオ 「ありがとう」
レオ 「でも、昔はそうでもなくて。アランには何度も『分かんない』って言われたな」
吉琳 「昔って小さな頃?」
首を傾けて尋ねると、レオが頷く。
レオ 「うん。俺の方が字を覚えるのが早かったから、一緒に絵本を読みながら教えようとしたけど、」
レオ 「あの頃の俺は言葉も拙かったから『分かんない』って」
レオ 「そう言われたら俺もムキになっちゃって……よくケンカになったよ」
レオは笑みをこぼすと、懐かしそうに赤い瞳を細めた。
吉琳 「そうなんだ……二人の小さい時って、可愛かっただろうね」
小さな双子に思いを馳せて微笑むと、レオはかけていた眼鏡を外す。
レオ 「少し休憩しようか」
吉琳 「え?」
レオ 「他にも聞きたいって顔してる」
吉琳 「……うん」
言い当てられてわずかに頬を熱くしながら、私は小さく頷いた。
レオは息をつくように笑って、机の上に頬杖をついた。
レオ 「何才くらいだったかな……確か、お互いもう字が書ける頃だった」
レオ 「ある日ね、二人で遊んでいる時に、いろんな色が混ざった、きれいな石を拾ったんだけど…」
レオ 「あまりに綺麗だったから、アランが『これは太陽のかけらだ』って言い出してね」
吉琳 「へえ」
レオ 「よく一緒に読んでた絵本に出てきた言葉なんだけど、」
レオ 「でもその本には、もうひとつ『月のかけら』も出てくるんだ」
レオ 「だから俺が『太陽のかけらとは限らないよ』って言ったら、ケンカになって」
吉琳 「それで、どうなったの?」
レオ 「アランが宝物をしまってたクッキーの箱があるんだけど、」
レオ 「その箱に偶然、拾った石に似た色の、星の絵が描いてあったから……」
レオ 「星のかけらってことに落ち着いたよ。二人でその中に石を入れて、仲直り」
レオの話に、私の胸はきゅっと音を立てる。
(可愛い……今の二人からは想像できないな)
吉琳 「仲良しだったんだね」
レオ 「そうかもしれない。ケンカするほど……ってとこかな」
レオ 「これ……俺が話したってこと、アランには内緒だよ」
レオは唇の前で人差し指を立てて笑う。
吉琳 「うん、言わないよ」
レオ 「さ。残りの仕事を片づけちゃおっか」
笑みをこぼして頷くと、ふとある人のことが脳裏を過ぎる。
(彼にも、私の知らない一面があったりするのかな……?)
再び羽ペンを走らせながら、私は大好きな彼に想いを馳せた…─

 

【50個特典】アルバートの特典ストーリー

特典ストーリーを読む >>>


城の廊下を木漏れ日が優しく照らすある日…─
シュタインを訪れていた私は、公務の後アルバートと会う約束をしていた。
吉琳 「アルバート、私です」
部屋をノックすると、慌しい足音が近付いて来て、ドアが開かれる。
アルバート 「お待たせしました」
吉琳 「いえ」
招き入れられると、いつもきちんと部屋を整頓しているアルバートにしては珍しく、
本棚の横に、数枚の紙が無造作に重ねられていた。
吉琳 「あの紙は、どうしたんですか?」
アルバート 「あれはっ……どうぞ気にしないでください」
(そう言われても……)
慌てた様子が気にかかり、つい紙に目がいってしまう。
アルバートは軽く咳払いをすると、観念したように口を開いた。
アルバート 「本の間から、幼い頃描いた絵が出てきまして」
吉琳 「え?」
アルバート 「それをしまっている最中にあなたが来られたので、動揺してしまい……」
アルバート 「何枚か片付け損ねていたようです」
アルバートはバツが悪そうにしているけれど、私の胸はとくとくと小さな音を立てていた。
吉琳 「あの…見てもいいでしょうか?」
アルバート 「と、とてもお見せできるようなものではありません」
アルバートは大きく首を横に振ると、紙を伏せたまま拾い上げていく。
吉琳 「でも、どんな些細なことでも……アルバートのことが知りたくて」
アルバートは手の中の絵を見つめて溜め息をついた後、私の方へと差し出してくれた。
吉琳 「いいんですか?」
アルバート 「はい。あなたにそう言われてしまっては仕方がありません。ですが……」
アルバート 「できれば、笑わないでください」
眼鏡のつるを持ち上げ、少し不安そうに紡がれた言葉に、私は頷いた。
吉琳 「もちろんです。アルバートが一生懸命描いた絵を、笑ったりなんかしません」
お礼を言いながら絵を受け取って、私は胸を弾ませながら表に返す。
(わ……っ)
そこには、たどたどしい線で何かの動物が紙いっぱいに描かれていた。
(馬、かな? ……可愛い)
絵を眺めていると、アルバートの幼い頃が垣間見えて、胸がいっぱいになる。
アルバート 「……」
今は絵が上手なアルバートだけれど、昔からそうだったわけではないことも伺えて、
騎士としてだけではなく、絵をはじめ、あらゆる方向で努力してきたことが想像できた。
吉琳 「アルバートは昔から努力家だったんですね」
私が絵から視線を移して微笑むと、アルバートはほっとしたように表情を緩めた。
アルバート 「よかったら、座って眺めてください」
吉琳 「ありがとうございます」
二人でベッドの縁に座り、アルバートから思い出話を聞きながら一緒に絵を見ていく。
絵を描いた年齢は様々のようで、何を描いているかがはっきり分かるものもあった。
何枚目かの絵を見つめて、私は手を止めた。
吉琳 「これって、もしかして……」
アルバート 「ええ。ゼノ様です」
眼帯をしていない小さなゼノ様は、城を背景にして、笑顔の人々に囲まれていた。
絵を見つめて、アルバートはどこか懐かしそうに瞳を細める。
アルバート 「ゼノ様は、昔から立派な方でした」
アルバート 「シュタインの未来を見通せるだけの能力は当時の私にはありませんでしたが、」
アルバート 「ゼノ様をお助けし、お守りすることが国のためになるということは、幼心にも理解していました」
(アルバート……)
アルバートの想いを聞くと、その絵はさっきよりも輝いて見えた。
吉琳 「とても、素敵な絵です。温かくて……ゼノ様と国への想いが伝わってきます」
吉琳 「そして、この絵を描いた時から変わっていないアルバートの想いも、素敵だなって」
溢れる気持ちを伝えると、アルバートは目元を和らげた。
アルバート 「あなたのおかげで、この絵を描いたことが誇らしく思えてきました」
アルバート 「ですが……今守りたいのは、ゼノ様だけではありません」
吉琳 「え?」
アルバート 「あなたを守りたい。そう思っています」
アルバートは目を瞬かせる私の手をそっと握り…─
アルバート 「好きです」
真っ直ぐ伝えられた言葉に頬が熱を帯びていく。
吉琳 「私も、大好きです」
私たちはお互いを見つめて微笑み合う。
大切な気持ちを胸の奥で抱きしめて、
私はアルバートの手にそっと力を込めたのだった…─


【190個特典】ユーリの特典ストーリー

特典ストーリーを読む >>>


重たい雨雲が広がる空の下…―
シュタインでの公務を終えた私は、
同行してくれたユーリと一緒に、ウィスタリアへと向かう馬車に揺られていた。
ユーリ 「うーん…このままだと嵐になりそうだね」
車窓から外を見ていたユーリが言って、小さく息をつく。
吉琳 「風も強くなってきているみたい」
思わず不安な声を出すと、向かいに座るユーリが安心させるように微笑む。
ユーリ 「国境の森に入るのは危ないし、手前の街で休憩して、少し様子を見たほうが良さそうだね」
吉琳 「うん」
それから私たちは国境に近いシュタインの街へ立ち寄り、目に留まったカフェに入った。
護衛の騎士たちが店の外で見張ってくれている中、
ユーリはいたずらっぽい笑みを浮かべて、私と同じテーブルに座った。
ユーリ 「執事として来てるけど、誰も見てないから、吉琳様と同席してもいいよね?」
吉琳 「うん、私もユーリと一緒にゆっくりお茶を飲みたいから、座って?」
(公務中はずっと、執事とプリンセスとして接していたから…少し、寂しかったし)
ユーリの笑顔を見て、満たされた気持ちになりながら、二人で何気ない話をしていると、
ふいに、近くの席に座る老夫婦の会話が、耳に入ってくる。
老紳士 「最近は、この辺も治安が良くなったもんだ」
老婦人 「何年か前に騎士様たちが来て、悪い人たちを一掃してくれたおかげですね」
(とても平和そうな街に見えるけれど…数年前までは治安が悪かったのかな?)
私が内心驚いていると、一緒に老夫婦の会話を聞いていた様子のユーリが、
窓の外の景色に目を向けながら、ぽつりと呟く。
ユーリ 「懐かしいな…」
吉琳 「…? 何が懐かしいの?」
首を傾げて思わず訊くと、ユーリがふっと笑って話してくれる。
ユーリ 「何年か前、シュタインの騎士としてこの街に来て、」
ユーリ 「ここら辺を荒らし回っていた盗賊団を捕らえた事があったんだよ」
吉琳 「そうだったんだ…」
目を丸くしていた私に、ユーリはまた笑みをこぼす。
ユーリ 「まだ騎士団に入団したての頃だから、今でもよく覚えてるんだ」
懐かしそうに目を細めるユーリに私は興味津々で言う。
吉琳 「騎士の頃のユーリのこと…もっと聞いてもいい?」
するとユーリは苦笑しつつも、その時、派遣された騎士達は、
ゼノ様が直々に選んだ精鋭ばかりだったため、
さすがのユーリも少し緊張していたことを話してくれた。
(入団したてで精鋭として選ばれたユーリは、騎士としてとても優秀だった…ということだよね)
(ゼノ様の下で騎士として活躍していた頃のユーリのことは、あまり知らなかったから、)
(話を聞くだけでも、新鮮で…嬉しい)
ユーリのことをまた一つ知ることが出来て、嬉しい気持ちが胸の奥に込み上げる。
吉琳 「ユーリは、今もいざという時にとても頼れるけれど、昔から優秀な騎士だったんだね」
ユーリ 「あの頃はゼノ様のために…って無我夢中だったからね」
はにかんで答えたユーリが、ふいに私の瞳を真っ直ぐに見つめ…
ユーリ 「けど今は、吉琳様を守ることが俺の一番の使命だよ」
不意打ちで告げられた言葉に、胸が高鳴った。
吉琳 「っ…」
(嬉しいけれど、急に言われると、どきどきして困る…)
そうして頬が火照るのを感じていると、ユーリが再び窓の外に目を向けて言う。
ユーリ 「吉琳様、見て。空が晴れてきたよ」
吉琳 「あ…これだったら、森を抜けられそうだね」
ユーリ 「今のうちだね。急ごう」
二人で馬車に戻ると、やがてゆっくり馬車が動き出す。
ほっと息をついた時、隣に並んで座っていたユーリが、私の肩にそっと頭を預けてきて…―
ユーリ 「ちょっと疲れちゃったかも」
ユーリ 「城に着くまで、内緒でこうしていてもいい?」
上目遣いのユーリに至近距離から見つめられて、思わず顔が熱くなってしまう。
吉琳 「っ…あ、うん…」
(騎士のように頼もしい顔を見せたり、こうやって甘え上手な顔を見せたり、)
(ユーリのこういうところは、ずるい…)
私が照れつつも頷くと、ユーリは嬉しそうに微笑んで…
ユーリ 「ありがとう、吉琳様。大好き…」
そう言ってユーリは、私の頬にいたずらっぽくキスをしたのだった…―

 

【280個特典】レイヴィスの特典ストーリー

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暖かな微風が心地いい、ある日の昼下がりのこと…―
その日、公務でシュタインを訪れていた私は、帰りにレイヴィスの屋敷に招かれていた。
レイヴィス 「思ったより早かったな」
吉琳 「うん。順調に終わったから。あ…これ、良かったらどうぞ」
私は、用意してきた手作りのアップルパイを差し出した。
吉琳 「ちゃんとレイヴィスに合わせて、甘さ控えめにしてきたから、食べてくれる?」
レイヴィス 「公務で忙しいのに、ありがとう」
パイを受け取ったレイヴィスは感心したように言う。
レイヴィス 「パイ生地は作るのが難しいし、中のアップルフィリングも、」
レイヴィス 「別に作っておかないといけないから大変だったんじゃない?」
喜んでもらえたことに安堵しつつも、予想外の言葉に驚いた私はレイヴィスに訊ねる。
吉琳 「アップルパイの作り方に、詳しいんだね」
(少し、意外かも…)
レイヴィス 「他のお菓子の作り方はよく知らないけど、アップルパイだけは昔、作ったことがあるから」
どこか昔を懐かしむように言ったレイヴィスの言葉に、私は思わず目を見開く。
吉琳 「レイヴィスが…?」
驚きの声をあげた私を見て、レイヴィスがふっと笑う。
レイヴィス 「そんなに驚くこと?」
吉琳 「っ…驚くよ」
(甘いものが苦手なレイヴィスが、お菓子作りをするなんて…想像出来ない)
詳しく話を聞いてみると、レイヴィスに仕える執事の好物がアップルパイだったらしく、
小さい頃に、日頃の感謝の気持ちを伝えたくて作ったのだという。
レイヴィス 「味見したのは俺だから、かなり甘さ控えめだっただろうし、」
レイヴィス 「たぶん美味しくなかったんじゃないかな。…今思えば、見た目だって良くなかった」
レイヴィスの青い瞳が、わずかに揺れる。
レイヴィス 「だから、きっと無理して食べてくれたんだろうけど、」
レイヴィス 「美味しいって言われたあの時は、純粋に嬉しかったな」
苦笑しながら話してくれた失敗談に心が温かくなり、私は微笑んで言った。
吉琳 「執事さんは、レイヴィスの気持ちが嬉しかったんだと思う」
レイヴィス 「……お前が言うなら、そう思うことにする」
少し晴れやかな表情で口にするレイヴィスを見ながら、私は子どもの頃の彼を想像していた。
(何でも完璧にこなしてしまうレイヴィスでも、)
(小さい頃は子供らしい失敗をしたこともあったんだな…)
思わず口元が緩んでしまった私を見て、レイヴィスが顔をしかめる。
レイヴィス 「…なに笑ってるの」
吉琳 「子どもの頃のレイヴィスが可愛いな、と思って」
少しからかうように言うと、レイヴィスが照れくさそうに口を開く。
レイヴィス 「男が、可愛いって言われて喜ぶと思ってるわけ?」
吉琳 「…照れなくてもいいのに」
少し顔を赤く染めたレイヴィスが珍しく、つい頬を緩ませてそう言うと…
レイヴィス 「お前、笑いすぎ」
からかう私の口を塞ぐように、レイヴィスが突然キスをしてきた。
吉琳 「っ…」
驚いて言葉を失っている間にも、キスは繰り返され、
私は熱い唇を受け止めながら、レイヴィスへの想いを募らせる。
吉琳 「もっと前に…私たちが子どもだった頃に、出会えていたらよかったのにな」
レイヴィス 「え?」
吉琳 「そうしたら、もっとたくさんの思い出を二人で重ねて来られたのかも…って」
(子どもの頃の話を聞いたから、こんなことを考えてしまったのかな)
心に浮かんだ、取りとめもないことを口にした私に、レイヴィスは真面目に答えてくれる。
レイヴィス 「過去には戻れないんだから、これからの二人の時間を大切にすればいいんじゃない?」
吉琳 「っ…」
レイヴィスの、いつになく優しい声に胸の奥が甘く震える。
レイヴィス 「だから、この先もずっと…」
すべてを言い切る前に、レイヴィスは私を抱きしめ…―
レイヴィス 「離さない……絶対に」
レイヴィスの温もりを全身に感じ、涙が出そうになるくらいの幸せな気持ちが込み上げる。
吉琳 「っ…私も…」
レイヴィス 「そう? 良かった」
(今は、出会う前の…お互いに一人で生きてきた時間のほうが長いけれど)
(いつか、二人で寄り添って生きてきた時間のほうが、長くなる日が…きっと来る)
そんな、まだ遠い未来のことを考えながら、私はレイヴィスをそっと抱きしめ返した…―

 

【340個特典】ジルの特典ストーリー

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柔らかな風が中庭の花々を撫でる午後…─
執務室での公務を終えて、ジルと共に部屋へと向かっている途中、
中庭の花壇で、薄茶色い何かが動いているのが見えた。
(何だろう……)
ジル 「どうかしましたか?」
吉琳 「はい、今あそこで何かが動いて……」
花壇の方を指差すと、こちらを向いてピンと立った耳が目に留まる。
吉琳 「あ……犬、でしょうか?」
ジル 「コーギーのようですね。首輪をつけていますから、おそらく飼い犬かと」
ジル 「それにしても、一体どこから迷い込んだのでしょう……」
辺りを見回しても衛兵の姿は見当たらず、
犬がどこか別の場所へ行ってしまわないように、しばらく二人で見守ることに決めた。
こちらを気にしながらも、花の中を歩き回っている姿に思わず笑みがこぼれる。
(可愛い。この子と仲良くなりたいな)
吉琳 「おいで」
私がそっと手を差し出すと、犬は警戒を強めて急に尻尾を高く上げた。
ジル 「危ないので下がっていてください」
ジルは私を背後に隠すと、ゆっくりと近づき、あっという間に手懐けてしまった。
吉琳 「すごい……」
思わず感嘆の言葉をこぼした私を、ジルは犬の側に膝をついて撫でながら見上げる。
ジル 「しつけは得意ですので。……貴女もご存知のはずですよ?」
ジル 「立派なプリンセスになれるよう教育して差し上げたのは、私なのですからね」
ジルの言葉に、私の頬は微かに熱を帯びてしまう。
ジルは吐息だけで笑うと、犬を見つめた。
ジル 「実は……子どもの頃、犬が飼いたくて、世話の仕方を調べたことがあるんですよ」
吉琳 「そうなんですか」
(知らなかった……)
初めて聞いたジルの昔の話に、胸が甘くときめく。
吉琳 「でも、どうして犬だったんですか?」
ジル 「しつけ甲斐があるから、でしょうか」
どきっとするような言葉を口にしながらも、犬を撫でている表情はとても穏やかで、
言葉の裏に隠れた優しさに、思わず目を奪われてしまう。
私の視線に気づいたジルは、唇に笑みを乗せて私を見つめた。
ジル 「この犬に、やきもちを焼いているのですか?」
吉琳 「いえ、そんな……」
見つめ過ぎていたことを恥ずかしく思って俯いた瞬間、
見廻りにきてくれた騎士が私たちに気づいて声をかけてくれた。
ジル 「きちんと飼い主の元へ返してあげてくださいね」
騎士 「お任せください、ジル様」
引き渡した犬を抱えた騎士の後ろ姿を見送るジルの顔からは、
先ほどまでの笑みが消え、どこか寂しそうにも見えた。
吉琳 「……あの、元気を出してください」
おずおずと声をかけると、ふっとジルの目元が和らいだ。
ジル 「大丈夫ですよ。ご心配には及びません」
ジル 「犬の面倒を見るのも楽しくはありますが……一番しつけ甲斐があるのは貴女ですからね」
みるみる熱を帯びていく私の前に、身体を軽く屈めたジルはふわりと手を差し伸べて…─
ジル 「さあプリンセス、お手をどうぞ?」
ジル 「部屋までエスコートして差し上げます」
ジルの長い指と優雅な仕草に鼓動が跳ねる。
(でも、どうして……?)
改まった場でもないのに……と戸惑いを隠せずにいると、ジルはふっと笑みを浮かべた。
ジル 「貴女にやきもちを焼かせてしまったお詫びですよ」
恥ずかしいけれど、私はその言葉を否定できずにいる。
差し出した私の手をそっと握り、歩き出すジルの指先に胸を高鳴らせながら、
中庭を吹き抜ける風が、火照った頬を撫でていくのを感じていた…─

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

 

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

◇有投票◇ 20190312~20190322

ふたりの彼に癒されて~To make your Smile~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

公務がいくつも重なり、少しお疲れ気味なあなた。
そんなあなたを癒してくれるのは、二人の彼で…―
吉琳「もしかして、二人で一緒に用意してくれたの?」
アラン「一緒にじゃねえよ」
レオ「たまたま、なんだよね」
ユーリ「吉琳様、今日の夕食なんだけどね、」
ルイ「君のために、俺たちで作ろうと思ってるんだけど、いい?」
ジル「シドにしては上出来ですね」
シド「あ? もっと他に言い方があんだろ。……まぁ、その話は後だ」
アルバート「ゼノ様との会談までまだ時間はありますし、休まれますか?」
ゼノ「その件については、明日帰る前に少し話せればいい」
レイヴィス「お前はまあ、よくやってるんじゃない?」
ロベール「せっかくだし、3人でお茶はどうかな?」
彼たちの心のこもった気遣いに、自然と笑顔がこぼれ、
温かな気持ちに包まれる…―

和装が似合いそうな彼

スイーツが好きそうな彼

マジックが得意そうな彼

お風呂が好きそうな彼

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

ジル・シド(シナリオ特典)>>>


ドアがノックされ、ジルとシドが顔を出した。
シド 「公務は済んだか? プリンセス」
吉琳 「シド……お城に来てたんだ。うん、今終わったよ」
ジル 「ちょうど良いタイミングでしたね。では、参りましょう」
吉琳 「え……?」
いきなりそう告げられ、状況を呑み込めないまま、二人に促されて執務室を後にした。
ジル 「ここのところ、毎日遅くまで公務をなさっている貴女を、癒して差し上げたいと思いまして、」
ジル 「シドにいい方法を調べさせたのです」
シド 「急になんだとは思ったが……訳を聞いたら、断れねえだろ」
吉琳 「そうだったんだ……二人には心配をかけちゃったね、ごめんなさい」
そう謝ると、シドは私の頭を軽く小突き、ジルは微笑みながら首を横に振ってくれた。
シド 「謝るくらいなら、笑っとけ」
ジル 「そうですよ。貴女には、笑顔が似合います」
二人の優しさを感じつつも、私は考えを巡らせていた。
(これから何をしてくれるんだろう……)
戸惑いながらも、言われるままに扉を開けると、
部屋のあちこちでキャンドルが灯り、ベッドやテーブルの上には花びらが散らされていた。
吉琳 「素敵……」
シド 「気に入ると思ったぜ」
こんな風に部屋をロマンティックに飾りつけてくれたのは、シドだという。
喜びを隠しきれない私を見たジルはふっと微笑んで、シドに目を向けた。
ジル 「シドにしては上出来ですね」
シド 「あ? もっと他に言い方があんだろ。……まぁ、その話は後だ」
シド 「頼まれてた物は、あそこにある」
シドが顎で示した先のテーブルには、綺麗な色の小瓶がいくつも並んでいる。
吉琳 「それは、何ですか……?」
ソファに座らされた私が、目の前の小瓶を見つめていると、ジルが意味ありげな笑みを浮かべた。
ジル 「こちらは、私が特別に調合させた精油ですよ」
ジル 「これを使って、貴女にマッサージをして差し上げます」
吉琳 「え……ジルと、シドが……ですか?」
(オイルでマッサージって、素肌に直接、触れるんじゃ……)
思いもよらない話に戸惑っていると、シドがからかうように言う。
シド 「今、やらしいこと考えただろ」
吉琳 「っ……」
ジル 「そうなのですか? 今夜のプリンセスは随分大胆なようで」
ジル 「どうしてもとお望みであれば、叶えて差し上げますよ?」
吉琳 「そ、そんなことは……」
恥ずかしくて言葉を詰まらせた私を見て、シドが笑った。
シド 「まあいい。どの精油を使うか、選べ」
そう言われて選び始めたけれど、どれも良い香りで迷ってしまう。
シド 「決められねえなら、これにしとけ。俺の好きな香りだからな」
ある小瓶をシドが指差すと、すかさずジルも私にひとつの瓶を差し出した。
ジル 「それよりも、こちらはいかがでしょう。プリンセスにふさわしい香りかと」
吉琳 「えっと……どちらもいい香りなので、二つとも使ってみてもいいですか?」
困った末にそう言うと、シドが何故か、意地悪な笑みを浮かべた。
シド 「どっちも選べない……ねぇ。お前、案外欲張りなんだな」
吉琳 「え?」
きょとんとしている私に、今度はジルがどこか艶っぽく微笑みかけてくる。
ジル 「もし私たちが、貴女に想いを告げたとしても……」
ジル 「そう言って翻弄なさるおつもりですか?」
吉琳 「想いを……?」
左右からの視線に、頬がじわじわ熱くなるのを感じていると、
私の耳元で二人が囁く。
シド 「冗談だ」
ジル 「ええ、もちろん冗談ですよ」
(っ……冗談なら、どうしてそんな顔で見つめるの?)
二人の熱っぽい瞳に射抜かれ、どきどきしているうちに、マッサージが始まり……
シドは、書類仕事で疲れた私の手や腕を、
ジルは、視察などで歩いて疲れた足を、オイルでマッサージしてくれた。
ジル 「いつも頑張っていますね、プリンセス。そんな貴女だから、支えて差し上げたいと思うのですよ」
シド 「まあ、そうだな。たまには素直に認めてやるよ。……お前は、よくやってる」
マッサージは少し恥ずかしいけれど、二人の言葉に心が温かくなっていく。
(二人だって疲れているはずなのに、私のために……)
吉琳 「……上手く言葉に出来ないくらい、二人の気持ちが嬉しいです」
吉琳 「本当に、ありがとうございます」
少しでもこの想いを伝えたくて口にすると、ジルが苦笑をこぼした。
ジル 「あまり素直に感謝されると……困ってしまいますね」
吉琳 「……どうしてですか?」
ジル 「癒して差し上げると言えば、貴女に触れる口実が出来ると考えていた自分もいましたので」
その一言に驚きを隠せないでいると、シドも口を開いた。
シド 「ジルがいなけりゃ、手だけじゃなく、全身をマッサージしてやったんだが……」
シド 「続きは今度、ゆっくりな」
吉琳 「っ……」
二人から意味ありげな視線を注がれた私は、顔の火照りを抑えることが出来なかった…―


ゼノ・アルバート(シナリオ特典)>>>


ノックの後、執務室に顔を出したのはユーリだった。
ユーリ 「吉琳様、明日シュタインに行くのにまだ公務?」
心配げな眼差しで声を掛けてくれるユーリに、私は小さく頷いた。
吉琳 「うん。もうちょっとだけ進めようと思って……」
ユーリ 「そっか。あんまり無理は駄目だよ」
吉琳 「ありがとう、ユーリ」
ウィスタリアを数日離れる間のことを考え、私は月が高く昇るまで執務に没頭していた…─

……
翌日…─
シュタイン城に到着すると、アルバートが部屋へと案内してくれる。
長い廊下を歩きながら、私は昨日のユーリの言葉を思い出していた。
(確かに、このところ忙しいよね)
思わずこぼれそうになった溜め息を止めて、気を引きしめ直す。
(ウィスタリアのプリンセスとして公務で来たんだから、ちゃんとしなくては……)
アルバート 「こちらでお待ちください」
案内してくれたお礼を伝えようとすると、アルバートが眼鏡の奥ですっと瞳を細める。
アルバート 「……少しお疲れのようですね」
アルバート 「ゼノ様との会談までまだ時間はありますし、休まれますか?」
(顔に出てしまっていたなんて……)
気遣ってくれるような言葉に、私の胸には申し訳なさと恥ずかしさが広がっていく。
吉琳 「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
気丈に振る舞いたくて、にっこりと微笑んで見せると、アルバートの顔に影が差す。
アルバート 「そうですか……」
(もしかして、心配してくれたのかな?)
内心驚いてアルバートを見つめていると、
カーテンが揺れて、窓の外から茶色い何かが飛び込んできた。
吉琳 「きゃっ」
アルバート 「あっ! こら」
アルバートは跳ね回るその何かをすぐさま掴もうとする。
吉琳 「……ベンジャミン、ですか?」
アルバート 「そのようですね。すぐに追い出しますから」
窓から入ってきたベンジャミンは元気よく私の周りを跳び回り、
掴まえようとするアルバートの腕や脚の間をすり抜けていく。
吉琳 「手伝いましょうか?」
アルバート 「……すみません、お願いします」
二人でテーブルの下を覗き込んだり、左右から追い込んだりしているうちに、
ベンジャミンはぴょんっと私の腕の中に跳び込んできた。
吉琳 「あ……」
アルバート 「こいつ……っ」
吉琳 「掴まえましたね」
アルバート 「……ありがとうございます。本当に申し訳ない」
眉間に皺を刻むアルバートに、私は首を横に振る。
吉琳 「いいえ。なんだか、とても癒されました」
アルバート 「そうですか……そう言って頂けると助かります」
吉琳 「ありがとう、ベンジャミン」
ベンジャミンをアルバートの腕に渡しながら、私は小さく微笑んだ。
いつの間にか時間が経っていて、私はアルバートにもお礼を伝えると、ゼノ様との会談に向かった…─
……
ゼノ様との会談は予定していたよりも早く終わりを迎えた。
(この件について、もっと話さなくていいのかな?)
手元の書類に視線を落としていると、ゼノ様が私の様子に気づく。
ゼノ 「その件については、明日帰る前に少し話せればいい。今である必要はないと思ってな」
吉琳 「……分かりました」
ゼノ 「それよりも、ウィスタリアのプリンセスはこのところ多忙と聞いた」
ゼノ様の言葉に、私は目を瞬かせた。
吉琳 「いえ。ゼノ様に比べれば……」
ゼノ 「俺は慣れているが、プリンセスになって間もないお前には苦労も多いだろう」
ゼノ 「今日は休息に努めるといい」
思いがけない労いの言葉をもらって、その心遣いに胸が温かくなる。
(ゼノ様って、優しいんだな……)
吉琳 「ゼノ様は、どうされるんですか?」
ゼノ 「会議の分、時間を空けてある。執務に戻るのもいいが……」
少し思案を巡らせる深い色の瞳を見つめて、私はそっと口を開いた。
吉琳 「もしよかったら、ご一緒に休憩を取りませんか?」
ゼノ 「一緒に?」
吉琳 「はい。……お忙しいのは承知ですが、ゼノ様も休息を取って頂けたら嬉しいです」
ゼノ 「……」
驚いたように目を瞬かせたゼノ様は、次の瞬間ふっと息をつくように笑う。
ゼノ 「他国から献上品として、色々な菓子や紅茶が届いている」
吉琳 「え?」
ゼノ 「たまには午後の休息を取るのもいいだろう」
吉琳 「……はい」
午後のささやかなティータイムは、色とりどりのお菓子に囲まれて、
珍しくゼノ様と交わす他愛のない会話に心が弾む。
ゼノ 「……それは興味深いな」
私の話を聞きながら、優雅に紅茶を傾けるゼノ様を見つめて、私は小さく微笑んだ。
(公務で来ているはずなのに……)
(何だか久々に肩の力が抜けた気がする)
ゼノ様の心遣いや、アルバートの気遣いが、胸の深いところを優しく癒してくれる。
(この素敵な関係が、ずっと続いていったら嬉しいな……)
甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで、私は心まで満たされていくのを感じていた…─


レイヴィス・ロベール(シナリオ特典)>>>


扉をノックして、顔を覗かせたのはロベールさんだった。
ロベール 「明日の講義だけど、執務室じゃなくて中庭に来てくれるかい?」
(確か、絵画に関する歴史の勉強だよね……)
(どうして執務室じゃなくて、中庭なんだろう……?)
吉琳 「はい、わかりました」
不思議に思いながらも返事をすると、ロベールさんは優しい微笑みを浮かべて頷く。
ロベール 「それじゃあ明日、待ってるよ」

……
翌日の午後、私がロベールさんに言われた通り中庭に向かうと、
なぜかそこには、ケーキスタンドが乗った小さなテーブルと、椅子が用意されていて、
ロベールさんが先に座って待っていた。
ロベール 「どうぞ?」
ロベールさんに座るよう促された私は、戸惑いながら訊ねる。
吉琳 「歴史の勉強じゃ……?」
ロベール 「ごめんね。それは嘘だったんだ」
吉琳 「え?」
ロベール 「最近、疲れが溜まっているように見えたから、たまには息抜きが必要かな、と思ったんだよ」
優しく微笑むロベールさんの言葉に胸の奥が温かくなっていくのを感じた。
(私のことを気遣って、こうして落ち着ける時間を作ってくれたんだ……)
ロベール 「何より今日は天気も良くて、外の方が気持ちいいからね」
(確かに、風も心地良くて、心も軽くなっていくみたい……)
ふっと肩の力を抜いていると、近づいてくる足音が聞こえて……
レイヴィス 「お前、ここにいたんだ」
吉琳 「レイヴィス……ウィスタリアに来ていたの?」
驚いて訊ねると、レイヴィスは、私の隣に座るロベールさんを気にしながら頷く。
レイヴィス 「ウィスタリアのプリンセスは、最近、公務続きだって聞いたから、」
レイヴィス 「仕事でこっちに来たついでに、少し様子を見に来ただけ」
吉琳 「そうなんだ。……ありがとう」
ロベール 「とりあえず、レイヴィスも座ったらどうかな」
ロベールが柔らかく微笑んで言うと、レイヴィスはわずかに目線を逸らしつつも椅子に座る。
そして……
レイヴィス 「これ。飲むとリラックスできるらしい」
レイヴィスがくれたのは、ハーブティーの茶葉が入った小瓶だった。
吉琳 「……ありがとう、レイヴィス」
(言葉は素っ気ないけれど、レイヴィスも、私のことを心配してくれていたんだ)
(私……みんなに心配されるほど、疲れて見えるのかな)
私が内心で苦笑していると、レイヴィスがふっと笑う。
レイヴィス 「お前はまあ、よくやってるんじゃない?」
やっぱり言葉は素っ気なかったけれど、努力を褒められて、素直に嬉しくなる。
(……わざわざ様子を見に来てくれただけでも、嬉しいのに)
とくとくと、鼓動が速くなるのを感じていると、ロベールさんが言う。
ロベール 「せっかくだし、3人でお茶はどうかな?」
吉琳 「はい、ぜひ」
レイヴィス 「……俺も、あとシュタインに帰るだけだから、いいけど」
それからメイドさんに、レイヴィスが持って来てくれたハーブティーを淹れてもらい、
三人でのんびりとおしゃべりをしながら午後のひとときを過ごした。
レイヴィス 「そろそろ帰る」
やがてお茶を飲み終えたレイヴィスが立ち上がった頃には、意外と時間が経っていて……
(私も、もうすぐ次の公務が……)
すぐに頭が切り替わったけれど、何だかここに来る前よりも心が軽くなっている気がして、
私は晴れやかな笑顔で席を立つ。
吉琳 「二人ともありがとうございます。おかげで、また頑張れそうです」
すると、レイヴィスとロベールさんは私に笑顔を向けて、ほぼ同時に言う。
レイヴィス 「別に」
ロベール 「どういたしまして」
声が重なってしまった二人は、互いに顔を見合わせて苦笑をこぼすのだった…―


ルイ・ユーリ(シナリオ特典)>>>


ノックをして執務室に入って来たのは、ルイとユーリだった。
ユーリ 「吉琳様、今日も一日、お疲れ様」
ルイ 「……今日も、頑張ってたね」
吉琳 「うん、ありがとう」
二人からの労いの言葉にお礼を言うと、ユーリが私の様子を伺うように口を開いた。
ユーリ 「吉琳様、今日の夕食なんだけどね、」
ルイ 「君のために、俺たちで作ろうと思ってるんだけど、いい?」
吉琳 「え? それはありがたいけど、ルイも……?」
(執事であるユーリはともかく、ルイも料理をしてくれるの……?)
ルイ 「…………」
二人からの思わぬ提案に目を丸くしていると、黙っているルイに代わって、ユーリが答える。
ユーリ 「ルイ様も、普段は言葉にしないけど、」
ユーリ 「吉琳様がプリンセスとして頑張ってることを認めてるんだよ。だって……」
ユーリ 「吉琳様に何かしてあげたいんだけど、いい案はないかって聞いてきたのは、ルイ様だし」
ユーリ 「ね? ルイ様」
ルイ 「…………」
ルイは素っ気ないながらも、小さく頷いた。
ユーリ 「ちょうど俺も同じことを考えてたし、吉琳様への感謝を伝えるのにいい機会だから、」
ユーリ 「一緒に料理をしませんかって言ったんだ」
吉琳 「そうだったんだね。嬉しい……」
(二人だって忙しいのに……私のことを気遣ってくれているんだ)
ルイ 「……食べたいもの、ある?」
吉琳 「えっと……二人におまかせ、じゃだめかな?」
ルイ 「いいよ」
ユーリ 「それじゃあ、出来上がるまで吉琳様は、ゆっくり待っててね!」
早速、部屋を出て行こうとする二人を慌てて呼び止めた。
(私だけ、ここで待っているなんて……)
吉琳 「あの……二人が料理しているところを見ていてもいい?」
立ち止まって振り返ったルイが、ぽつりと言う。
ルイ 「公務続きで疲れてるんだから、休んでた方がいいと思う……」
吉琳 「ううん、大丈夫。二人が私のために料理をしてくれるんだし、」
吉琳 「出来たものを頂くだけじゃなくて、作ってくれているところも、ちゃんと見ていたいの」
吉琳 「そのほうが、二人の想いをもっと感じられるはずだから」
私のお願いを、ユーリとルイは微笑んで承諾してくれた。
そうして二人とともにキッチンへとやって来た私は、
慣れた様子で手際よく、材料の下準備をするユーリと、
無駄の無い動きでそれを調理していくルイの姿を、側で見守っていた。
(何だか、二人の息も合っているみたい)
微笑ましく思いながら見ていると、ルイがスープをすくったスプーンを差し出してきて……
ルイ 「味見、してみる?」
吉琳 「え……」
その柔らかな笑みに鼓動が速くなるのを感じていると、ユーリが声をあげた。
ユーリ 「あっ、ルイ様ずるいです! 俺も吉琳様に『あーん』してあげたい!」
吉琳 「え? 『あーん』って……」
そんなやりとりに少しだけ戸惑いながらも、私は二人から味見をさせてもらうのだった。
その後、完成した料理がずらりとテーブルに並べられた。
いくつも置かれた料理のうち、特に自信があるというヒラメのホワイトソースがけを食べてみる。
吉琳 「……うん、ユーリが作ってくれたホワイトソースも、」
吉琳 「ルイがソテーしてくれたヒラメもとっても美味しい……」
二人が込めてくれた想いを感じながら料理を味わっていると、自然と頬が緩んでしまう。
そんな私を見て、ルイが優しく目を細めた。
ルイ 「……吉琳の笑顔が見られて……作った甲斐があった」
ユーリ 「吉琳様の笑顔は、俺たちの元気のもとなんだよ!」
二人の気持ちが嬉しくて、私も何かを返したくなり、提案する。
吉琳 「今日のお礼に、次は私がご馳走するね」
そう伝えると、ルイは何かを思いついたように言った。
ルイ 「だったら次は……三人で料理をしてみたい」
吉琳 「それは楽しそう。ね、ユーリ」
ユーリ 「うん、今度やろう。絶対だよ」
声を弾ませながら言ったユーリは、小指を差し出し……
ユーリ 「吉琳様、約束のしるしに、指きりしよう?」
吉琳 「うん」
ユーリ 「ほらほら、ルイ様も一緒に!」
ルイ 「…………」
私が両手の小指を差し出すと、それぞれにユーリとルイの小指が絡められ、
私は少しくすぐったい気持ちになりながら、指きりをしたのだった…―


アラン・レオ(シナリオ特典)>>>


扉がノックされ、現れたのはアランとレオだった。
レオ 「吉琳ちゃん、大丈夫?」
吉琳 「え?」
アラン 「お前が風邪を引いたんじゃないかって話を聞いたから」
二人とも人づてに私の体調のことを耳にして、様子を見に来てくれたのだという。
(少し寒気がするってメイドさんたちには話したけれど……心配かけちゃったな)
吉琳 「平気だよ。まだ仕事が残っているし、もう少し頑張らないと」
アラン 「……無理したっていいことないだろ」
レオ 「アランの言う通りだよ」
レオ 「俺やジルで進められる部分もあるし、今日は大事を取って、早めに休んで欲しいな」
心配そうに見つめてくる二人の同じ色をした瞳に、私は小さく頷き返す。
吉琳 「……うん。分かった」
私は机の上を片づけ、部屋まで送ると言ってくれた二人とともに、執務室を後にした。
部屋へ戻ると、ホッとして気が抜けたのか、身体がどこか重く感じる。
(もしかして、体調が悪くなってきているのかも……)
そう不安に思っていたら、アランが顔を覗き込んできた。
アラン 「顔色悪いな」
レオ 「とりあえず、座って」
促されてソファに座ると、目の前のテーブルには美味しそうな料理と飲み物が置かれていた。
(何かいい香りがすると思ったら……)
吉琳 「もしかして、二人で一緒に用意してくれたの?」
アラン 「一緒にじゃねえよ」
レオ 「たまたま、なんだよね」
訳を訊ねると、二人は別の人から違うタイミングで私の体調が悪いことを聞いたらしく、
それを知らずに、それぞれが料理を用意してくれていたそうで、
その料理を私の部屋に運んできた時に、扉の前で鉢合わせたのだという。
吉琳 「それで、二人で執務室に来てくれたんだね」
レオ 「そういうこと」
(一緒に来てくれたのは意外だったけれど……そんな理由があったんだ)
(二人が仲良くなったのかと思ったのに……ちょっと残念)
そんなことを考えていると、空気を変えるようにレオが口を開いた。
レオ 「寒気がするって聞いたから、身体が温まる飲み物を用意したよ」
レオが差し出してくれたのは、蜂蜜入りのジンジャーティーだった。
対するアランは、シナモン入りの温めたワインを用意してくれている。
アラン 「風邪の時は、これが一番って言うだろ」
レオ 「薬を飲むかもしれないことを考えたら、そうとも限らないよ。飲み合わせが良くないからね」
(あれ……?)
穏やかに見えた会話の中で、二人の語調が強くなっていることに気づき、私は慌てて間に入る。
吉琳 「喉が乾いてるから、どっちももらっていい?」
アラン 「……ああ」
私は二人が用意してくれたカップを傾ける。
吉琳 「美味しい……」
スパイスが香る二つの飲み物が、身体を芯から温めてくれるのを感じていると、
今度はテーブルの上の料理を勧められる。
アラン 「夕飯、あんま食ってなかったらしいけど、スープならいけるんじゃないか?」
アランは、野菜たっぷりで栄養のあるスープを作ってくれていて、
レオは、さっぱりしていて食べやすいだろうと、ゼリーやフルーツを持って来てくれていた。
またしても意見が食い違った二人の視線が、静かにぶつかる。
吉琳 「あ……あのね、ちょうどお腹が空いてきたなって思っていたの。両方とも食べていい?」
レオ 「それならいいけど、無理しないでね」
吉琳 「ありがとう」
疲労が溜まっていたことと、二人の料理を口にしてお腹が満たされたことで、
小さなあくびがこぼれてしまう。
レオ 「横になった方が良さそうだね」
吉琳 「うん……」
(二人の前で横になるの、ちょっと恥ずかしいな)
アラン 「遠慮してないで寝ろよ」
私がためらっていたのを見透かしたように促され、おずおずとベッドに入った。
アラン 「風邪の時は、冷やしたほうがいいんだよな」
レオ 「いや、寒気があるうちは暖めたほうがいいと思うよ」
(え……また?)
吉琳 「ま、待って……」
止めに入ろうとして慌てて声を出すと、喉の奥に違和感を覚え、咳き込んでしまった。
アラン・レオ 「……っ」
咳を聞いた二人は、はっとした表情を浮かべた後、顔を曇らせた。
アラン 「悪い。こんなつもりじゃなかったんだけど」
レオ 「吉琳ちゃんに早く元気になってもらいたくて、意地になっちゃった。ごめんね」
吉琳 「ううん。元はといえば体調を崩した私のせいだし、二人の気持ちは嬉しかったよ」
首を横に振りそう伝えると、二人は一瞬だけ視線を交わした。
アラン 「……こいつが言うなら、寒気があるうちは暖めたほうがいいのかもな」
アラン 「もう一枚、ブランケットをもらってくる」
照れ隠しのように素っ気無い声色で言ったアランの背中へ、レオが呼びかけた。
レオ 「アランの言うことも一理あるから、」
レオ 「熱が上がった時に備えて、おでこを冷やすためのタオルももらってきてくれると嬉しいな」
アラン 「……分かった」
パタンと扉が閉まり、アランの足音が遠ざかる。
互いの意見を尊重しながら協力してくれる二人に、胸がじんわりと温かくなる。
レオ 「どうかした?」
吉琳 「え?」
レオ 「何だか嬉しそうに見えるから」
私の口元は自然とゆるんでいたようで、瞳を細めたレオが探るように見つめてきた。
私は、素直に気持ちを口にする。
吉琳 「二人が仲良くしてくれるなら、たまには風邪をひくのも悪くないかも、って思ったの」
アラン 「……バーカ」
いつの間にか戻って来ていたアランが、ブランケットを私の頭の上から被せた。
吉琳 「きゃっ」
(アランも聞いてたんだ)
照れているアランが可愛くて笑っていると、レオが私の頭のブランケットを取ってくれる。
レオ 「ほんと、素直じゃないな」
私にそっとブランケットを掛け直してくれたレオの唇も弧を描いている。
アランは頭をかきながら、私に向かって言った。
アラン 「それだけ笑えるなら、大丈夫そうだな」
アラン 「今日はさっさと休んで、早く良くなれよ」
その言葉に頷き、レオが続けた。
レオ 「……俺たちは、吉琳ちゃんの明るい笑顔にいつも助けられてるよ」
レオ 「ありがとう。ゆっくり休んでね」
優しい言葉が胸に沁み込んでいく。
私は頷いて、二人に見守られながら、ゆっくりと瞳を閉じていった…─

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

 

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

20190413~20190424

言いなりになるのは彼?私?~恋のお願いを聞かせて~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

ひょんなことから、彼とゲームをすることになったあなた。
ゲームに負けたほうが、勝ったほうのお願いを何でも聞くことになり…―
アラン「で? 俺は何をすればいいんだ」
アラン「何かあるんだろ」
ジル「貴女が自分から、ゲームに勝てたらひとつだけ願いを叶えてほしい、と言い出したのは、」
ジル「何か、私にして欲しいことがあったからでしょう?」
レオ「俺の勝ちだね。約束通り、勝者のお願いを聞いてくれる?」
レオ「今、お願いをもう一つ、思いついた」
ゼノ「約束だったな。俺は何をすれば良い」
ゼノ「本当に、こんな願いで良かったのか?」
ユーリ「やった! どんなお願いをしてもいいんだよね? 吉琳様」
ユーリ「そんなこと言われたら、嬉しくて……もっと無理なお願いをしたくなっちゃうなー」
彼からの無茶なお願いも、あなたが心から望む願いも……
叶えれば、二人の時間は甘さを増していく…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

ジルの特典ストーリー 
  
特典ストーリーを読む>>>

春の暖かな風が心地良い、ある休日…―
ジルと一緒に始めたカードゲームに勝ったのは、私だった。
(まさかジルに勝てるなんて……)
自分でも驚いていると、ジルがカードを片づけながら微笑む。
ジル 「貴女が自分から、ゲームに勝てたらひとつだけ願いを叶えてほしい、と言い出したのは、」
ジル 「何か、私にして欲しいことがあったからでしょう?」
ジル 「どうぞ、願いを言ってみてください」
私の考えを見透かしていたジルの、どこか含みのある笑みを見て、はっとする。
(もしかしたら、ジルはわざと負けてくれたのかな……)
そんなジルの気遣いを嬉しく思いつつ、私は少し緊張して口を開く。
吉琳 「その……ジルと、敬語を外して話してみたいんです」
私の提案に、ジルは困ったように笑った。
ジル 「せっかく何でも願えるというのに、そんなことでよろしいのですか?」
吉琳 「はい。いつも敬語なので、お休みの今日くらいは、そうしてみたいと……思ったんです」
(敬語じゃないジルを、私が見てみたいだけなのだけれど……)
そんな秘めた想いを胸に、返事を待っていると、ジルは小さく息をついて言う。
ジル 「確かに私は貴女の恋人ではありますが、」
ジル 「教育係という立場を重んじて敬語のままでいるのですよ。ですが、まあ……いいでしょう」
ふっと微笑むジルを見て、期待に胸を膨らませていると……
ジル 「ただし、せっかく敬語を外すのでしたら、プリンセスと教育係ではなく、ただの……」
ジル 「恋人同士として過ごそうか……吉琳」
急に敬語を外されて、頬が熱を持つ。
(っ……もう、始まっているの?)
向かいのソファに座っていたジルは私の隣に座り直すと、妖艶な微笑みを浮かべて口を開く。
ジル 「恋人らしいことを、敬語なしでしたいんだろう?」
吉琳 「っ、そこまでは……」
そう言いかけた時、ジルの指が私の火照った頬をするりと撫でる。
ジル 「ほら、顔に書いてある」
ジル 「敬語を取り払ったのだから、このまま遠慮なく可愛がってほしい……と」
唇が触れてしまいそうな距離から瞳を覗き込まれて、鼓動の音がさらに大きくなった。
吉琳 「っ……ジル、もう、これ以上は……」
吉琳 「恥ずかしいから、やめてください……」
熱くなっている顔を少し逸らすと、ジルは意地悪な笑みを浮かべる。
ジル 「吉琳が、可愛くお願いしてくれたらやめてもいい」
吉琳 「え……」
(可愛くお願いって、どうすれば……?)
迷っている間にも、ジルは頬に滑らせていた指を、唇に移動させていく。
ジル 「吉琳……」
吉琳 「……っ」
この状況に耐えられなくなった私は慌てて声をあげる。
吉琳 「いつもの……私が好きなジルに、戻ってください」
するとジルは、ふっと笑みをこぼして私の唇からそっと指を離した。
ジル 「貴女が望んだことですよ?」
吉琳 「そ、それはそうですが……」
楽しげに言ったジルに、私は少しだけ憎らしい気持ちが芽生え、ふいっと顔を背ける。
(ジルは、わざと私が恥ずかしがるように、あんなことを……)
真っ赤になっているであろう顔を見られたくないのと、
拗ねた気持ちから、顔を逸らしたままでいると、
ジルが少し困ったような声で私の名を口にした。
ジル 「吉琳……?」
そっと肩に手を置かれても、ジルの方を振り向かずにいると…―
ジル 「拗ねた貴女も可愛いですが……そろそろ、こちらを向いて頂けませんか?」
ジル 「貴女の顔が見られないのは、私も辛いんです」
ジル 「せっかくの休日でしょう?」
囁きながら、手で一房すくった髪にキスを落とされ、私は思わずジルの方を向いた。
(そんなに優しくされたら……ずるいよ)
ジル 「ようやく貴女の可愛い顔が見られました」
ジル 「この後は、ゆっくり過ごしましょう」
私の額に、ジルがそっと唇を寄せる。
どこまでも優しい口づけに、
わずかに拗ねていた気持ちも、一瞬にして消えていったのだった…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

 

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

20190515~20190526

Temptation Spa~ほどける素肌を抱きしめて~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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プロローグを読む>>>

山積みだった公務が、ようやく片付いた夜…─
ユーリ 「吉琳様、これは取り出しやすいところに入れておくね」
吉琳 「うん。ありがとう」
ユーリは、私が手渡した服や小物を手際よくトランクに詰めていく。
吉琳 「手伝わせてごめんね、ユーリ」
ユーリ 「ううん。こんな時間まで公務だったんだから、気にしないで」
ユーリ 「ここのところ毎日遅くまで頑張ってたし、旅行先ではゆっくりしてきてね」
笑顔で返してくれるユーリに、私も笑みを返す。
ユーリ 「温泉なんて、疲れを癒すには最高の場所だよね」
吉琳 「うん」
忙しかった私を気遣うように、行先は彼が温泉地に決めてくれたのだった。
(彼と一緒にゆっくり過ごすのは久しぶりだし……楽しみだな)
荷造りの手を休めることなく、ユーリがにっこりと笑う。
ユーリ 「いくつもある温泉の中から、一つを吉琳様のために貸し切ってくれたんだってね」
吉琳 「そうなの。だから落ち着いて過ごせると思う」
彼の計らいを嬉しく思いながら、私は頷いた。
ユーリ 「でも、温泉で二人きりだなんて、心配だなー」
言葉とは裏腹の、ユーリの楽しそうな表情に、
そこに秘められた意味に気づいて、私の頬には熱が集まってくる。
吉琳 「っ……ユーリ!」
私が怒ったような声を出しても、ユーリは全然こたえていないようで……
ユーリ 「楽しんできてね、吉琳様」
そういたずらっぽく微笑み、ユーリは荷造りを終えたトランクを閉じた。
頬に熱を帯びたまま、私は彼と二人きりで過ごす時間を心待ちにしていた…─


【50個特典】アルバートの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

温泉地に到着した頃には、陽はすっかり沈んでいて……
観光は明日からに決めた私たちは、温泉でゆっくりと身体を休めることにしたのだった。
(温泉に一緒に入るのは……やっぱり恥ずかしいな)
久しぶりに会えたアルバートの側にずっといられるのは嬉しいけれど、
アルバートの前で肌を露わにすることに、私はためらいを感じていた。
アルバート 「なぜ脱がないのですか?」
さらりとシャツを脱ぎ落としたアルバートが振り返り、衝立の向こうから声をかけた。
そのたくましい身体に鼓動が跳ね、返事がしどろもどろになる。
吉琳 「い、いえ! 今準備しますから……もう少し待っていてください」
アルバート 「……はい」
こちらを見つめながらじっと待っているアルバートに、恥ずかしさが更に増していく。
(……そうだ!)
吉琳 「あの、アルバート。少し屈んでくれますか?」
アルバート 「はい?」
不思議そうにしつつも身体を屈めてくれるアルバートから、私はそっと眼鏡を取った。
吉琳 「眼鏡が曇ってしまうので、今のうちに外しておきましょう」
(これなら……恥ずかしさも紛れるかも)
少し強引だったかなと思いながらドキドキしていると、
アルバートは少しだけ眉を寄せて、小さく頷いた。
アルバート 「確かに、そうですね」
アルバート 「ですが、何かあった時のために浴場には持っていきます」
吉琳 「はい」
アルバートに眼鏡を渡すと、私は急いで衝立の陰で服を脱ぎ、
身体を隠すために柔らかな布を巻いて出ようとすると……
吉琳 「きゃっ!」
焦っていたせいか、私は濡れたタイルに足を取られて、衝立ごと倒れてしまう。
アルバート 「何事ですか!?」
浴場に大きく響いた音と私の悲鳴に、先を歩いていたアルバートは慌てて振り返る。
眼鏡をかけて辺りを警戒するように見回すアルバートに、私は声をかける。
吉琳 「すみません、転んでしまっただけなんです」
アルバート 「そうでしたか。賊でも出たのかと……」
私を見下ろし、安心したように息をついたアルバートと顔を見合わせた瞬間、
二人で同時に、はっとする。
私が身体に巻いていた布は転んだ拍子にはだけ、肌が露わになっていた。
アルバート 「お、俺は何も見ていませんっ!」
視線を逸らすアルバートに、耳まで熱くなりながら、私は急いで布を身体に巻きつける。
転んだことも相まって恥ずかしくて堪らず、大きく鳴り響く鼓動を感じていると
アルバートが空気を変えるように、小さく咳払いをした。
アルバート 「か、考えてみれば、そこまで照れる必要もないでしょう」
アルバート 「あなたのその姿を、俺は何度も見ているのですから」
吉琳 「っ……」
アルバート 「先日会った時だって、その夜に……」
(フォローしてくれているんだって分かるけど……)
何度も見られているということを意識してしまい、私は居たたまれなくなっていく。
言葉では気にしないようなことを言いながらも、頬を染め視線を逸らしたままのアルバートが、
ぎこちなく手を差し伸べて、私を立たせてくれる。
アルバート 「怪我はないですか?」
吉琳 「大丈夫です。本当に、すみません」
アルバート 「いえ。せっかくの温泉なのですから、そんな顔をしないでください」
アルバート 「もしまだ恥ずかしいなら、あなたを見ないようにしますから……」
アルバートは再び眼鏡を外し、小さく俯いた私に言った。
アルバート 「その代わり、何かあってもすぐに助けられるよう、手を繋いでいてもいいですか?」
吉琳 「はい」
アルバートの気遣いにそっと微笑んで、私たちは一緒に温泉へと入った。
アルバート 「温かくて気持ちいいですね」
吉琳 「はい。ほっとします」
私は繋いだままの手をきゅっと握った。
吉琳 「あの、さっきは……気を遣ってくれて、ありがとうございました」
お礼を伝えると、アルバートはゆっくりと首を横に振った。
アルバート 「気にしないでください。眼鏡を外したのは、俺のためでもあったので」
吉琳 「え?」
アルバート 「真っ赤になって恥ずかしがっているあなたを前にして、冷静さを失いそうでしたから」
アルバート 「こんな場所で……我慢がきかなくなったら、あなたも困るでしょう」
アルバートの言葉に、頬がじわりと熱を帯びていく。
アルバート 「今、耐える代わりと言ってはなんですが……」
アルバートは何かを逃すように長く息をつくと、
お湯の中で握った手に力を込めて…─
アルバート 「今夜は離しません。……いいですか、プリンセス?」
低い響きがほのかな熱を帯び、浴場の湯気に溶けてゆらぐ。
小さく頷きながらも、温泉から上がった後の長い夜を想うと、
火照った顔はのぼせてしまいそうなほど、ますます熱くなっていった…─


【190個特典】ジルの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

どんよりとした暗い空の下、強い雨風が窓を叩くある日のこと…―
私とジルは、温泉地に向かう途中で急な嵐に遭い、城へと引き返してきていた。
ジル 「残念ではありますが、貴女の安全が最優先ですからね」
(本当に残念だけれど、ジルとお城でゆっくり過ごす休日も……いいよね)
そう思い直した時、雨で少し服が濡れていた私は、小さなくしゃみをする。
するとジルは私の肩を温めるように腕を回して……
ジル 「風邪を引くといけませんから、お風呂で身体を温めてはいかがですか?」
吉琳 「いえ……これくらいだったら、大丈夫です」
(今は、少しでもジルと過ごす時間を大切にしたいから、お風呂は後で……)
そう考えていると、ジルが肩を抱いたまま、少し強引にバスルームに向かって歩き出す。
ジル 「こんなに身体が冷えたままでは、いけません」
吉琳 「あ……ジル」
躊躇する声をあげると、ジルが不敵な笑みを浮かべる。
ジル 「嫌だと仰るのなら、強引に抱きかかえてでも行きますよ?」
ジルの言葉が冗談とは思えず、私は慌てて頷いた。
吉琳 「っ……分かりました」
その後、私はジルに言われた通り、一人でお風呂に浸かって小さく息をついていた。
(本当ならジルと温泉で……)
その時、部屋のドアをノックする音がして……
ジル 「入ってもよろしいですか?」
(え……ジル?)
驚きつつも、肩までお湯の中に隠れてから招き入れると、綺麗な小瓶を持ったジルが入ってくる。
ジル 「温泉にお連れ出来なかった代わりに、良い物をお持ちしました」
近づいてきたジルが浴槽のふちに腰をかけ、小瓶の中身をお湯に垂らした。
ジル 「こうすれば、少しは温泉気分が味わえますよ」
ジルが持っていたのはアロマオイルで、一気に華やかな花々の香りがバスルームに広がる。
吉琳 「あ……いい香り……」
甘い香りに心がほぐれるのを感じていると、ジルが苦笑しながら言う。
ジル 「本当は温泉に行って返ってきた後で、いつでも温泉の気分が味わえるように……」
ジル 「プレゼントしようと思って用意していたのですが、思わぬ形で役に立ちましたね」
(私のために……)
ジルの気遣いに胸がときめくのを感じた私は、
そのまま立ち上がって出て行こうとするジルを呼び止める。
吉琳 「せっかくですから、二人で……」
恥ずかしい気持ちを堪えて告げるとジルがからかうような笑みを浮かべた。
ジル 「それは……大胆な誘いですね?」
吉琳 「っ……」
ジル 「……ですが、断る理由もありませんね」
ジルは少し考えた後でそう答えて、静かに服を脱いでいく。
慌てて顔を逸らしながら待っていると、
やがてジルが、私を脚の間に抱えるようにしてお湯に浸かる。
吉琳 「……ジルのアロマオイルのお陰で、本当に二人で温泉に行けた気分を味わえました」
後ろを振り向きながら言うと、ジルはゆっくりと顔を近づけてきた。
ジル 「そう言っていただけると嬉しいですね」
そのまま唇が重なりそうになった時、ドアの外からメイドさんの声が聞こえてくる。
メイド 「プリンセス。お湯加減はいかがでしょう?」
(っ……メイドさんは、私しかいないと思っているから……)
メイド 「プリンセス……?」
動揺している私を、ジルがそっと抱きしめて耳元で囁く。
ジル 「ほら、答えないと不自然に思われますよ?」
慌てて答えようとするけれど、ジルがいたずらっぽく私の背中に唇を辿らせ始め、
身体がびくっと揺れてしまって声が出なくなる。
吉琳 「っ……」
(わざと……)
それからどうにか返事をしてメイドさんに下がってもらうと、ジルが私の顔を後ろに向かせ……
ジル 「顔が赤いようですが、のぼせてしまわれましたか?」
(……ジルのせいなのに)
少しむっとして見つめ返すと、ジルは楽しそうに笑う。
ジル 「そんな火照った顔で睨んでも、私を煽るだけですよ?」
吉琳 「ん……」
そのまま深く口づけられて、私は何も考えられなくなってしまいそうになる。
吉琳 「ジル……少し、強引です」
照れ隠しに軽く抗議すると、ジルはふっと口元を緩めて…―
ジル 「身体が熱いですね……『強引』ですか」
ジル 「ええ、言ったでしょう。私は貴女が思っている以上に強引な男だと」
ジル 「ですが、私をそうさせているのは他でもない……貴女ですよ?」
再びジルの唇が重なり、キスの合間に呟くような声が聞こえた。
ジル 「貴女が、私を狂わせる……」
私はジルが与える熱に浮かされながら、お湯から立ち昇る甘い香りを感じていた。
(このアロマオイルを使う度に……ジルの温もりを思い出して、身体が熱くなってしまいそう……)
やがて身体の力が抜けていった私をジルが抱き上げ、お湯から出る。
ジル 「このままでは本当にのぼせてしまいますね。……続きは、ベッドで……」
その囁きに甘い予感を駆りたてられながら、私はジルの首に腕を回したのだった…―


【280個特典】レイヴィスの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

綺麗な満月が静かに地上を照らす夜…―
夜になって温泉地のホテルに着いた私たちは早速、離れにある温泉に向かっていた。
レイヴィス 「貸し切りにしておいたから、ゆっくり出来るんじゃない?」
吉琳 「うん、ありがとう」
(レイヴィスと旅行なんて久しぶりだから、二人でのんびりしたいな……)
そんなことを考えながら歩いていると、何故かレイヴィスが意地悪な笑顔を向けて言う。
レイヴィス 「言い忘れてたけど、温泉は混浴だから」
吉琳 「っ……それって、一緒に入るという事、だよね?」
驚いた声を上げ、じわじわと顔が熱くなっていくのを感じていると、
レイヴィスが目の前の大きな扉を開けながら、ふっと笑う。
レイヴィス 「今さらじゃない?」
(確かに、そうだけれど……)
開いた扉の中に入って顔を上げた私は、一瞬にして目の前の光景に目を奪われる。
浴場全体がキャンドルの火で煌めく中、お湯には色とりどりの花びらが浮かんでいた。
吉琳 「わ……素敵……」
(少し濁ったお湯だから、入ってしまえば、あまり恥ずかしくないかも……)
少しほっとしていると、レイヴィスが建物の奥の方を指差して言う。
レイヴィス 「女性の脱衣所は向こう」
吉琳 「あ、うん……」
(脱衣所は分かれているみたい。けれどこう明るいと、お湯に入るまでが恥ずかしいな……)
そんな私の照れくささを察したのかレイヴィスが苦笑する。
レイヴィス 「安心しなよ。お前が先にお湯の中に入るまで、見ないでおいてあげるから」
私はレイヴィスの優しさに笑みを返しながら、脱衣所に向かった。
それから先にお湯に入り、水面に浮かんだ花びらの香りに癒されていると、
背後で水が跳ねる音が聞こえて振り向く。
レイヴィス 「湯加減はどう?」
そう訊ねながらレイヴィスが、少し間を空けて隣に座る。
吉琳 「うん、ちょうど良くて気持ちがいいよ」
レイヴィス 「そう? 気に入ったみたいで良かった」
淡く微笑むレイヴィスを見てふいに胸が高鳴り、私は思わず下を向く。
(一緒にお風呂に入るのはやっぱり……恥ずかしいな)
濁ったお湯の中で透けて見える自分の肌に目を落としていると、レイヴィスが声をかけた。
レイヴィス 「もう少しこっちに来れば?」
吉琳 「え?」
弾かれたように顔を上げた私を見てレイヴィスが笑う。
レイヴィス 「これくらいで照れてるの?」
(っ、照れるよ……)
吉琳 「別に、そういうわけじゃ……。それより、あのキャンドル……綺麗だね」
照れ隠しに無理やり話を逸らすと、レイヴィスがぱしゃりとお湯の音を響かせて私の後ろに回る。
そして、ふわりと私を抱きしめた。
レイヴィス 「話逸らすの、下手すぎ」
吉琳 「っ……」
レイヴィス 「側に来たくないのは、俺のこと嫌いになったから?」
吉琳 「そんなこと……」
(あるわけないって、分かっているのに)
わざと意地悪な質問をしたレイヴィスが、私の耳元へとさらに唇を寄せ…―
レイヴィス 「言うこと聞けない奴にはお仕置き……好きって言うまで、離さないよ」
いつになく甘い声で囁かれて、鼓動の音が大きくなる。
レイヴィス 「ほら、言わないの?」
レイヴィスがうなじや肩に落としていくキスの感触に身を捩りながら、私は小さな声を出す。
吉琳 「……好きだよ、レイヴィス」
そう告げた途端に、お湯と羞恥心のせいで体温が上がり、頭がくらりとしてきて……
レイヴィス 「ん……上出来。吉琳……」
そこへ追い討ちをかけるように耳元で名前を囁かれ、ふっと私の視界が暗くなった。

***

気が付くと、私は部屋のベッドで横になっていた。
吉琳 「あれ……?」
レイヴィス 「のぼせたみたいだったから、運んで来たんだよ」
レイヴィス 「いちいち恥ずかしがるお前が可愛いくて、少し意地悪しすぎた」
ベッドの端に腰かけて私を見つめていたレイヴィスが、
申し訳なさそうに微笑んで、水が入ったグラスを差し出す。
吉琳 「ありがとう」
身体を起こしてグラスを受け取りながら先ほどのことを思い出して、頬が火照った。
吉琳 「レイヴィスのせいじゃないよ。私も少し、意識しすぎてしまっていたから……」
そう答えた私の肩を、レイヴィスがそっと抱き寄せ……
レイヴィス 「さっき、言わなかったけど……」
吉琳 「え?」
レイヴィス 「俺も好きだよ、吉琳」
(あ、さっき……私が言ったから)
愛しげに目を細めたレイヴィスの、温かい唇が優しく重なって、
私は再びのぼせたように頭がくらりとするのを感じていた…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

 

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

20190613~20190624

Little Jealousy~恋のスパイスで想いを深めて~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

互いに想い合っているのに、すれ違ってしまう彼とあなた。
彼の言葉の裏には、強い愛が隠されていて…―
………
アラン「好きなヤツを、つい目で追うことってあるよな」
アラン「お前、それ本気で言ってんの?」
……
ルイ「……何してるの?」
ルイ「そう。それが君の気持ちなら……分かった」
……
レオ「……ごめん、今は冷静に話せない」
レオ「ちょっと立ち寄っただけだから、もう仕事に戻るよ」
……
ゼノ「責めたつもりはないが……そう聞こえたなら、すまない 」
ゼノ「……互いに少し、冷静になった方が良いようだな」
……
ロベール「プリンセスは、時には毅然とした態度を取らなければだめだよ」
ロベール「どうしても、分かってもらえないみたいだね」
………
あなたを想うがゆえの嫉妬から……
彼の愛を感じてください…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年
【50個特典】ロベールの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

柔らかな月明かりが降り注ぐある夜のこと…―
知り合いの貴族の男性が主催する舞踏会に招かれた私は、
ロベールさんと一緒にダンスを楽しんでいた。
ロベール 「こういう華やかな場で一緒に踊るのも久しぶりだけど、全然緊張していないみたいだね」
吉琳 「はい。ロベールさんのリードなら、安心して踊れますし」
ロベール 「プリンセスにそう言ってもらえるなんて、光栄だよ」
冗談めかして言うロベールさんに笑みを返し、流れる曲に合わせてステップを踏み続ける。
やがて舞踏会は中盤に差し掛かり、主催者である貴族の男性が、会場の中央へ進み出た。
男性 「皆さん、このあたりで少し趣向を変えてみませんか? 今からパートナーを交換して……」
男性 「組んだお相手の恋人になりきって踊るなんてどうです。次に踊るのは愛を謡う曲ですから」
(それって、ロベールさん以外の人と、恋人同士のように振舞うということ?)
気乗りしないなと考えていると、主催者の男性が近づいてきて、私に手を差し出した。
男性 「プリンセス。ぜひ私と一曲踊りましょう」
(この方……以前、お会いした時も困ってしまうくらい積極的に誘って来られたんだっけ)
吉琳 「えっと……はい」
ロベールさんに申し訳なく思い、ちらりと隣を見ると、
ロベール 「…………」
気にしないで、とでも言うように苦笑を浮かべている。
(主催者のお誘いを断るのは失礼だし、この場の楽しい雰囲気を壊さないようにしないと)
そう考えた私は差し出された手を取り、一曲だけならと誘いを受けることにした。
過剰に身体を寄せてくる男性に内心困りつつも、笑顔で踊っていたけれど、
その曲が終わっても男性は手を離してくれず、次の曲の前奏が始まってしまう。
(仕方がない……もう一曲だけ、お付き合いしよう)
密かにため息をついた時、ロベールさんが近づいてきたかと思うと、
私の手を取り、男性から奪うように抱き寄せ……
男性 「何を……?」
ロベール 「あなたとプリンセスが、本当の恋人同士のように素敵なダンスを披露していたので、」
ロベール 「私も負けていられないなと思ったんです。……恋人として」
冗談めかした口調だったけれど、はっきりと『恋人』と言われて顔が火照る。
(もしかして、私が困っていると気づいて助けてくれたのかな……)
ロベールさんは呆然としている男性をその場に残し、
穏やかな笑みを浮かべて私の手を取ると、音楽に合わせてステップを踏み出す。
(ダンスの途中に割って入ってくるなんて、ロベールさんらしくないというか……)
私はダンスを続けながら、いつもと少し様子が違うロベールさんを戸惑いながら見上げる。
吉琳 「あの……どうしてあんな強引なことをしたんですか?」
おずおずと訊ねると、ロベールさんは一瞬、驚いたような表情を見せてから苦笑し、
ステップを踏んでいた足を止めた。
ロベール 「吉琳ちゃんには、一度きちんと話しておかないといけないかな」
吉琳 「え?」
ロベールさんは、きょとんとしている私の手を引いてバルコニーへと向かい……
ロベール 「プリンセスは、時には毅然とした態度を取らなければだめだよ」
たしなめるように言って、私をじっと見つめている。
吉琳 「でもさっきは、主催者の顔をつぶすようなことをしてはいけないと思って……」
控えめに自分の考えを口にすると、ロベールさんは少し困ったように微笑み…―
ロベール 「その考え方は正しいんだけれど……」
ロベール 「どうしても、分かってもらえないみたいだね」
ロベール 「仕方ない、もっと具体的に……」
そう言ったロベールさんの顏が近づいてきて、
涼やかな表情には似つかわしくないほど熱い唇が重なった。
吉琳 「っ……」
不意打ちの口づけに目を見開いた私の髪に、ロベールさんの指先が触れる。
ロベール 「恋人同士のように振舞ってあのまま踊っていたら、」
ロベール 「こういうことをされていたかもしれないと、考えなかったのかい?」
(確かに、少し強引な方だったからそういうことも十分、考えられたかもしれない)
男性が過剰に身体を寄せてきたり、踊り終わっても手を離してくれなかったことを思い出す。
吉琳 「言われてみれば、そうですよね。……すみません」
思い直して謝ると、ロベールさんは優しく微笑んで私の頭を撫で……
ロベール 「分かってもらえて良かったよ。……けれど俺も、少し大人げなかったかもしれない」
ロベール 「こんな気持ちになったのは、久しぶりだったから……ごめんね」
吉琳 「こんな気持ちって……?」
思わず訊ねると、ロベールさんは少し照れくさそうに口を開く。
ロベール 「実は、さっきの男性に嫉妬していたんだ」
ロベール 「恋人同士を演じていると分かっていても、君が楽しそうに笑っていたから……」
(……いつもより強引な態度をとったのは、私が困っていたからだけではなくて、)
(私のことを心から想ってくれているからこそだったんだ……)
ロベールさんの気持ちを知って胸の奥が甘く疼くのを感じていると、
ロベールさんは私をふわりと抱き寄せ……
ロベール 「君といると、冷静でいられなくなることがある……今日のようにね」
ロベール 「けれど、嫉妬という感情ですら愛しく思えるよ」
ロベール 「その感情を与えてくれるのが、吉琳ちゃんだから……なんだろうな」
ロベールさんのどこか余裕のある笑みに、
私は胸を高鳴らせながら微笑みを返したのだった…―


【190個特典】レオの特典ストーリー

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初夏の爽やかな青空が広がる、ある日の午後…―
ここ数日、難しい公務に取り組んでいて多忙なレオに代わり、ジルが講義をしてくれていた。
ジル 「では、次のページを開いてください」
吉琳 「はい」
ジルの説明を聞きながら大事な部分を書き留めていると、ふとレオの姿が思い浮かぶ。
(ここは前にレオが教えてくれたところの応用だよね……)
(お互いに忙しくてあまり顔を合わせていないけれど、今頃レオはどうしているかな)
いつの間にかペンの動きが止まっていたことから、私の集中力が途切れたのを見抜いたのか、
ジルが苦笑まじりに言う。
ジル 「一度、休憩にしましょう」
……
それから二人で紅茶を飲んでいるとふいにジルがレオの名を口にする。
ジル 「今日は私が代わりましたが、普段レオの講義はいかがですか?」
吉琳 「レオは……教え方が上手で分かりやすいですけど、」
吉琳 「たまに講義中に私をからかって、いたずらをしてくる時は少し……困るかも」
(もちろん、嫌なわけではないのだけれど……)
はにかんで答えると、何故かジルが椅子から立って私の側に来た。
ジル 「いたずらというのは例えば……こういうことですか?」
そしてジルは腰を屈め、まるで口づけをするような距離まで顔を近づけて髪に触れ……
吉琳 「っ……ジル?」
私が焦った声をあげるのと同時にジルは離れ、その指先でつまんだ糸くずを見せてくれた。
(もしかして、髪についた糸くずを取ってくれた……?)
勘違いさせるようなやり方に驚いたけれど、糸くずを見せてくるジルの表情から、
講義中に上の空でいた私を反省させるために、わざとからかったのかも……と思い至る。
ほっとしてから、勘違いで熱くなってしまった顔をジルから逸らすと、
いつの間にか執務室の入り口に立っていたレオと目が合う。
吉琳 「あ……レオ。お仕事が終わったの?」
久々に会えたことが嬉しくて、駆け寄ろうと椅子から立ち上がったけれど、
レオはその場を立ち去ろうとするように踵を返し…―
レオ 「……ごめん、今は冷静に話せない」
レオ 「ちょっと立ち寄っただけだから、もう仕事に戻るよ」
(なんだか様子がおかしい……どうしたんだろう)
そんな違和感を抱えながら、私は何も言えずレオの背中を見送ったのだった。
…………
その夜、ベッドに入った後も昼間のレオのことが気にかかって寝つけずにいた。
(もしかしたら、ジルと私がキスをしていたと、勘違いさせてしまったのかもしれない)
(私だって勘違いしてしまったくらいだし……)
そんな可能性が思い浮かんでため息をついた時、
遠慮がちにドアをノックする音が聞こえて……
レオ 「……吉琳ちゃん、まだ起きてる?」
吉琳 「うん……どうぞ、入って?」
半身を起こして返事をすると、静かに扉が開きレオが現れた。
ゆったりとした足取りでやって来たレオが、ベッドの端に腰をかける。
レオ 「夜遅くにごめんね。本当は明日にしようとも思ったんだけど、」
レオ 「昼間のこと……吉琳ちゃんに謝るまで眠れそうになくて」
レオ 「吉琳ちゃんに素っ気ない態度をとっちゃって、本当にごめん」
小さく頭を下げたレオに、私は慌てて言う。
吉琳 「謝らないで。あの時、もしかしてレオを勘違いさせてしまったかもって今になって気づいたの」
吉琳 「糸くずを取ってもらっただけだったけど……そうは見えなかったんじゃないかって」
吉琳 「だから……私も謝りたかった。ごめんなさい」
レオ 「吉琳ちゃんが謝る必要なんてないのに」
レオは頷いて、私の手にそっと触れながら話を続ける。
レオ 「糸くずを取っただけってことは、ジルからも聞いたよ」
レオ 「二人のことを信じているし、普段ならただの見間違いだと冷静に判断出来るはずだけど、」
レオ 「最近、忙しかったせいで気持ちに余裕が無かったからかもしれない」
そう打ち明けてくれたレオが苦笑した。
レオ 「……勘違いで嫉妬するなんて、格好悪いよね」
吉琳 「っ……そんなことない」
レオ 「え?」
吉琳 「嫉妬してくれたのは、私を想ってくれている証拠だと思うから……ちょっと嬉しいかも」
はにかみながらも素直な気持ちを伝えると、レオの表情がみるみるうちに明るくなる。
そして私の頬に指先を滑らせながら瞳を覗き込んできて……
レオ 「許してくれてありがとう。……けど、一つだけお願いしてもいいかな?」
吉琳 「え? ……うん」
レオ 「もう嫉妬したりしないように、吉琳ちゃんは俺だけのものだって証明して、」
レオ 「安心させて欲しいな」
小首を傾げたレオがいつになく可愛く思えて、私は自分から抱きついていった。
(レオも……こんな可愛らしいお願いをしてくれることがあるんだ)
レオは嬉しそうに微笑んで私の背中に腕を回すと、そのまま唇を重ね……
レオ 「このまま吉琳ちゃんと一緒に、ここで朝を迎えてもいい?」
(それって……)
レオの言葉の意味が分かって瞬時に頬が熱くなった私は、
小さく頷いて目を閉じたのだった…―

 

【280個特典】ルイの特典ストーリー

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澄みきった青空に、木々の緑が映える暖かな日のこと…―
最近は公爵領での公務が忙しかったルイが久々にお城へとやって来た。
ルイ 「吉琳……会いたかった」
嬉しそうに微笑んだルイにそっと手を取られた私は、はにかんで頷く。
吉琳 「うん……私も会いたかった。公務はもう終わったの?」
ルイ 「後は報告だけ。先に済ませてくるから、部屋で待ってて」
ルイは名残惜しそうにしつつも、その場を去って行った。
(ルイ……少し疲れているように見えたな)
(何かルイを癒してあげられる事ができればいいのだけれど)
そんなことを考えながら歩いていると、
シド 「あ? なに難しい顔してんだ?」
ジルに会いに来ていたというシドが廊下の奥から歩いて来た。
吉琳 「えっと、実は……」
ルイを癒す方法を考えていたことを話すと、シドが少し考えてから口を開く。
シド 「貴族からの献上品に、滅多に手に入らねえ貴重な茶葉があったとかジルが言ってたけどな」
(美味しいお茶を用意して、一緒にティータイムを過ごしたら)
(ルイもリラックスしてくれるかも)
助言をもらった私は、早速シドにお礼を告げてからキッチンへと向かった。
吉琳 「……どうしてシドもついて来たの?」
ティーポットから立ち昇る紅茶の良い香りに包まれながら、
何故か一緒について来たシドに訊ねると、いたずらっぽい笑みが返ってくる。
シド 「面白そうだからな。それよりその貴重だっていう紅茶、俺が味見してやるよ」
(茶葉のことを教えてくれたのは、シドだし……)
吉琳 「それじゃあ、どうぞ?」
紅茶を淹れたカップを渡すと、キッチンの入り口の方を気にしていたシドが振り返り、
何かを企むような表情を見せた。
シド 「茶葉のことを教えてやったんだから、お前が飲ませろ」
吉琳 「ええっ?」
(また私をからかっているんだ。けど言うことを聞くまで、諦めなさそうだし……)
ルイのために早く部屋に戻りたかった私は仕方なく、手にしたカップをシドの口元に運ぶ。
その時……
ルイ 「……何してるの?」
いつの間にか入り口に立っていたルイが、
どこか冷ややかな表情でこちらを見ていたので、慌ててカップを置く。
(何か誤解されてしまったかも)
吉琳 「あの、これは……」
私が焦った声を出すと、明らかにこの状況を面白がっているシドが私の肩を引き寄せた。
シド 「これから二人で茶でも飲もうって話してたんだ。お前は邪魔すんな」
シド 「だろ?」
ルイ 「……」
シドはルイに挑発的な眼差しを向けてから、私の顔を覗き込む。
(っ、何を……)
シドの唐突すぎる言動と、ルイの感情が消えたような表情に動揺して何も答えられずにいると、
ルイがみるみるうちに表情を曇らせ…―
ルイ 「そう。それが君の気持ちなら……分かった」
悲しげな呟きを残して立ち去ろうとするのが見えて、胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
吉琳 「っ……違うの。ルイ、行かないで!」
私は思わず駆け出してルイの腕を掴んだ。
ルイ 「吉琳……?」
吉琳 「これはね……」
私が事情を話すと、ルイはだんだんと目を見開いていき……
ルイ 「……俺のため?」
吉琳 「ルイを少しでも癒してあげたくて……」
ルイ 「そうだったんだ。良かった……。けど、ごめん……酷いことを言って」
吉琳 「ううん、いいの」
誤解が解けて安堵していると、ルイが独り占めをするように私をしっかりと抱きしめ、
にやりとしてこちらを見ているシドを軽く睨んだ。
ルイ 「…………」
(いつもよりも、抱きしめる腕の力が強い……)
ルイの温もりに包まれて鼓動が速くなるのを感じていると、
シド 「俺に嫉妬するなんざ、お前もずいぶんお疲れみてえだな」
シド 「ちゃんと守っとかねえと、次は攫っちまうからな」
ルイ 「……次なんてない」
シドはすれ違いざま、ルイに含みのある笑みを向けてからキッチンを出て行く。
それから二人きりになると、ルイが申し訳なさそうな表情をして私の頬にそっと触れる。
ルイ 「吉琳を信じているのに……一瞬でも疑ってしまったこと、本当にごめん」
ルイ 「吉琳のこととなると、冷静じゃなくなるみたい」
私は困ったように微笑むルイの髪に触れ、小さく首を横に振った。
吉琳 「……それだけ私のことを想ってくれているということだから、ちょっと嬉しい」
はにかんで告げると、ルイも嬉しそうに頬を緩める。
ルイ 「二人で、仲直りのティータイム……しよう?」
吉琳 「うん」
それから二人で部屋に戻り、私が淹れた紅茶を差し出すと、ルイが焼菓子を差し出し……
ルイ 「久々に会えるから、一緒にお茶をしようと思って用意してきた……」
ルイ 「吉琳も公務を頑張ってて……きっと甘いものが欲しいだろうなって思って」
(ルイのほうが忙しいのに、私のことを考えて……)
ルイの気持ちが嬉しくて、胸の奥がくすぐったくなる。
吉琳 「ルイ、いつもありがとう……」
ルイ 「こちらこそ、ありがとう。吉琳……」
カップから立ち昇る紅茶の湯気越しに、
私たちはどちらからともなく微笑みあったのだった…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

 

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

20190713~20190724

Romantic Summer~今日は少しだけ大胆に~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

夏の暑さのせいで、いつもより大胆になってしまったあなた。
予想外のあなたの行動に、彼の熱も上がっていき…―
………
ルイ「はぐれないように……だめ?」
ルイ「……俺のことで頭がいっぱいって顔してる」
……
ジル「少し、わがままを聞いてもらえませんか?」
ジル「顔が赤いようですが……暑さのせいでしょうか?」
……
レオ「この時期、たまにこういう雨が降るって聞いてはいたけど……」
レオ「……気づいてる?」
……
シド「おい、結構きつい酒らしいから少しずつにしとけ」
シド「まったく……手のかかるプリンセスだな」
……
レイヴィス「ご褒美。公務、頑張ってるみたいだから」
レイヴィス「……自分で言った言葉も分からないわけ?」
………
彼と過ごす真夏のひとときに、あなたの鼓動は甘く乱れ…―
絡み合う視線は、一層熱を帯びていく…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

【50個特典】シドの特典ストーリー

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銀白の月が美しい夜…―
連日にわたっていた公務をようやく終えた私は、シドに招かれてグランディエ邸を訪れていた。
部屋に入ってソファに座ると、テーブルにはお酒の用意がしてあって……
シド 「お前が、何日も俺に会えないのを我慢して公務を頑張った褒美に、」
シド 「とっておきの酒を用意してやった」
いつものように少し意地悪な言い方だったけれど、シドの気持ちが嬉しくて私は微笑む。
吉琳 「私のために……ありがとう」
(離れている間、シドも……私に早く会いたいと思ってくれていたのかな)
シドは早速、用意してくれていたというお酒をグラスに注いでくれる。
吉琳 「このお酒、海みたいに綺麗な青緑色をしているんだね。初めて見た……」
クリスタルのグラスに注がれた不思議な色のお酒を見て、私は思わず声をあげた。
シド 「夏にしか採れないハーブを使ったかなり貴重なリキュールらしいぞ」
シド 「なかなか出回らない代物だそうだが、知り合いの商人が遠い異国で偶然手に入れたのを、」
シド 「いつも情報を流してやってる礼にもらったってわけだ。ありがたく飲めよ?」
少し自慢げに言ったシドからグラスを受け取り、私は笑顔で頷く。
吉琳 「さすがシドだね。ありがたく頂きます」
シド 「おい、結構きつい酒らしいから少しずつにしとけ」
吉琳 「え、そうなの?」
シド 「ああ。お前にはまだ早いかもな」
からかうように笑うシドに、私は少しむくれて言い返す。
吉琳 「シドと一緒にお酒を飲むようになって、これでも前よりは強くなったんだから」
そうして夏を思わせるような色のお酒を一口飲んでみると、
確かに強めだったものの、見た目通りの爽やかな味がした。
吉琳 「あ、美味しい……」
シド 「だからって飲みすぎんなよ?」
シドと久しぶりに会ったこともあり、お酒を楽しみながら夢中で話をしているうちに、
すっかり舞い上がってしまった私は、ぽつりと言う。
吉琳 「シドとこうして過ごす時間が一番幸せかも……」
シド 「あ?」
(って……何だか恥ずかしいことを口走ってしまったような……)
どんどん顔が熱くなっていくのを感じていると、シドが軽く鼻で笑う。
シド 「何だ、もう酔っぱらったのか?」
吉琳 「違……えっと、そう……かも」
本当は酔っていないけれど、素で思わず言ってしまっただなんて恥ずかしくて言えず、
酔った、ということにしてごまかした。
シド 「やっぱり、お前にこの酒は早かったか」
シド 「まったく……手のかかるプリンセスだな」
シドは少し呆れたように言いつつも口元に笑みを浮かべてソファから立つと、
いきなり私を抱き上げてベッドへと運んで行く。
(私が本当に酔ってしまったと思って……)
意地悪な言葉と裏腹なシドの優しい行動に、胸の奥で鼓動が甘い音を立てた。
ベッドで一緒に横になったシドに髪を撫でられ、私は照れながら口を開く。
吉琳 「忙しくて会えない間、ずっとシドの事を考えていて……早く会いたくて仕方がなかった」
普段は恥ずかしくて言えないけれど酔ったふりをしている今だから、少し勇気を出して言えた。
するとシドは笑みを深めて…―
シド 「素直に言えんじゃねえか。……俺も会いたかった」
いつもよりも優しい声でそう告げた。
(やっぱりシドも……会いたいと思ってくれていたんだ)
幸せな気持ちが込み上げるのと同時にシドへの想いが溢れ、
私は少し大胆に、自分から抱きつく。
吉琳 「こうして……触れたかったの。シドに」
(離れている間、シドの包み込んでくれるようなこの温もりが恋しかった)
シド 「お前……」
シドは一瞬驚いた顔をしてから、にやりと口の端を持ち上げると、私に覆いかぶさり……
シド 「公務が終わったばっかだから、今日は我慢して休ませてやろうと思ってたが……」
シド 「お前から煽ってきたからには容赦しねえ。覚悟は出来てんだろ?」
シドの挑発するような視線を受け止めながら、自分が言ったことの大胆さに気づく。
(会えたことが嬉しくて……つい。これも酔ったふりで、ごまかせるかな……?)
そんなことを考えていると、シドは意地悪な笑顔で頬に口づけ……
シド 「お前が酔ってようが酔ってなかろうが、止めるつもりはねえ」
吉琳 「っ……」
(もしかして、酔っていないってばれてる……?)
真相はわからないけれど、シドはそんな思考も溶かすほどのとびきり甘いキスで私の唇を塞ぎ、
その手で私の肌に熱を灯していった…―

 

【210個特典】レオの特典ストーリー

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気持ちの良い夏空の広がる、ある日…─
私とレオは、お城から離れた郊外のお祭りに、こっそりと参加していた。
(凄く賑やかだな……)
大通りの両脇には小さな露店が立ち並び、街は活気に溢れていた。
ある店では、ガラスでできた工芸品が風に揺られて透き通るような音色を響かせている。
吉琳 「……綺麗な音色」
レオ 「うん、涼しげでいいね」
露店には商人たちが仕入れた異国の物も多いようで、
初めて見る品々や、甘い香りを漂わせるカラフルなお菓子に心が躍る。
吉琳 「見ているだけでもすごく楽しい。レオ、連れてきてくれてありがとう」
隣にいるレオを見上げて伝えると、ふっと笑みが返された。
レオ 「どういたしまして」
レオ 「ねえ、吉琳ちゃん」
吉琳 「なに?」
レオは青空を背に、優しい眼差しを私に向けて…─
レオ 「その髪型も服装も、凄く君に似合ってる」
レオ 「本当に可愛いよ」
その言葉に、ふわりと心が包まれたように温かくなる。
(頑張ってよかった……)
今日のために夏らしいワンピースを選んだこと、その服に合う髪型を色々試したこと……
レオと過ごす時間のために、あれこれ悩んだ時間も、愛しいものへと変わっていった。
レオ 「あ、向こうの露店に吉琳ちゃんが好きそうなアクセサリーがあるよ。行ってみない?」
吉琳 「うん」
差し出された手を取り、レオの温もりを感じながら他のお店も見て回っていると、
ふいに冷たい風が頬を撫で、澄んだ空に黒い雲が広がっていく。
レオ 「もしかして……」
吉琳 「え?」
レオにつられて空を見上げた瞬間、大粒の雨が降り出した。
吉琳 「きゃっ」
(さっきまで晴れていたのにっ……)
レオ 「吉琳ちゃん、これ使って!」
レオが私の頭に上着をかけてくれて、肩を抱き寄せられる。
私たちはそのまま近くの宿へと小走りに向かった…─
吉琳 「びっくりした……」
雨風がしのげる宿に入り、ほっと息をついた私は、改めて窓の外へ目をやった。
窓ガラスを叩きつける雨音は更に激しさを増し、辺りはどんどん暗くなっていく。
レオ 「この時期、たまにこういう雨が降るって聞いてはいたけど……」
レオ 「せっかくのお祭りなのに、残念だったね」
私の隣に立ち、同じように窓の外を見たレオがぽつりとこぼした。
吉琳 「ううん。そんなことない」
吉琳 「雨が降る前に十分楽しんだし、これも思い出の一つになるよ」
笑ってレオを見上げると、雨の雫が銀髪を伝っていく様子が目に留まる。
吉琳 「でも、私をかばったせいで、レオが……」
レオは首を横に振って、静かに微笑んだ。
レオ 「気にしないで。吉琳ちゃんが濡れなくてよかった」
レオ 「だって、可愛い服もその髪型も、俺のためなんでしょ?」
レオの言葉が胸にじわりと広がり、頬が熱を帯びていく。
(本当に、優しいな……)
吉琳 「このままだと、風邪を引いちゃうから……待ってて」
その優しさを少しでも返したくて、私は部屋にあった布を手にすると、
レオの頭にふわりとかけ、雨粒を拭っていく。
(早く拭いてあげなきゃ)
柔らかな髪を拭き終え、次は肌を透かしているシャツに布を押し当て滑らせる。
レオが風邪を引いてしまわないように……私はただ、それだけを考えていた。
レオ 「……気づいてる?」
突然、耳元にいつもより低い囁きが落ちる。
あまりに近くで響いたその声に驚いて顔を上げると、目の前にはレオの顔があった。
(え……? ……っ)
雫を拭くことにばかり集中していた私は、
まるでレオに抱き着くようなかたちで身体を寄せていた。
吉琳 「ご、ごめんっ」
レオ 「やっぱり、気づいてなかったんだ。可愛いな」
耳まで熱くなるのを感じて離れようとすると、
レオは笑いながら、私を腕の中に閉じ込めた。
レオ 「もう、十分だから……雨がやむまで、こうしててもいい?」
そう甘く囁いた唇が掠めるように額に触れて、
少し冷えたその柔らかな感触に鼓動が跳ねる。
(もう……レオってば……)
恥ずかしさで火照る頬を隠すように、私はレオの胸に顔を埋めた。
レオ 「……そういうのに煽られるって、気づいてないんだろうな」
吉琳 「え?」
自分の鼓動だけが耳の奥に響いて、よく聞き取れずに見つめ返すと、
レオは瞳をふっと和らげた。
レオ 「雨がやんでも、離したくないなって言っただけ」
吉琳 「……もう」
私たちの唇は甘く何度も重なって、身体の奥がじんと熱を帯びていく。
雨音をどこか遠くに聴きながら、私はレオからの優しいキスを受け入れていた…─

 

【270個特典】ジルの特典ストーリー

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強い日差しを感じ始めた、ある夏の日…―
ジルに提案され、私は休暇を海辺の別荘で過ごしていた。
(ジルから誘ってくれるなんて、嬉しいな……)
波の音を聞きながら、吹き抜ける潮風を楽しむ。
からりと気持ちのいい青空は、城で見るものと違って見えた。
(風は気持ちいいけど、やっぱり少し暑いかも……)
喉の渇きを感じ、何か飲みたいと思ったその時……
ジル 「プリンセス」
振り返った私の前にジルが立っていた。
穏やかな笑みを浮かべ、そっとティーカップを差し出してくる。
ジル 「こちらをどうぞ。ミントティーです」
ジル 「冷やしてありますから、少しは涼しくなると思いますよ」
吉琳 「あ……。ありがとうございます」
(私が飲み物を欲しいと思ったこと、最初からわかっていたみたい)
私のことを理解してくれているという喜びを感じると同時に、
少しだけ、胸にもやもやしたものが渦巻いてしまう。
(今のジルは『教育係』の顔をしている気がする)
爽やかなミントティーを口に含んで、ためらいがちにジルへと告げた。
吉琳 「気を遣ってくださって嬉しいです。でも……」
吉琳 「……今日は休暇ですし、今はふたりきり……なので……」
自分の気持ちをきちんと伝えようと、ひとつずつ考えながら言葉を紡いでいく。
吉琳 「今、私もジルも対等な立場にあると思うんです。だから……」
ジル 「……それもそうですね」
最後まで言わずとも、やはり私の言いたいことを理解してくれたようだった。
ジル 「私の方こそ、気を遣わせてしまったようで申し訳ありません」
ジル 「今は対等だと言ってくださるのなら……」
ジル 「少し、わがままを聞いてもらえませんか?」
吉琳 「え……? わがまま、ですか……?」
(いったい、何だろう?)
ジルの微笑みからは『わがまま』が何かを読み取れない。
不思議に思いながらも、私は頷いたのだった。
……
ジルが私の手を引いて連れてきてくれたのは、バルコニーから見えていた海辺だった。
(ここに来るのがジルのわがまま……?)
吉琳 「あの、ジル……」
波打ち際に足跡を残しながら口を開きかけたそのとき、不意に大きな波の音が響き渡った。
吉琳 「あっ……」
ふわりと体が宙に浮く。
自分がジルの優しい腕の中で横抱きにされていると気付いたのは、一拍置いてからだった。
ジル 「貴女の足が波で濡れてしまわなくてよかったです」
吉琳 「だ、だからってこんな……」
驚きを隠せないでいると、ジルの整った顔が近付いてきて……
吉琳 「んっ……」
不意打ちで、触れるだけの口付けを落とされる。
吉琳 「だめです、外なのに……」
ジル 「ここにはふたりだけだ、と言ったのは貴女ですよ?」
吉琳 「ぁ……」
ふっと柔らかい微笑みを浮かべたジルに、先ほどよりも深いキスで言葉を奪われる。
ジル 「顔が赤いようですが……暑さのせいでしょうか?」
(私の顔が赤い理由なんて、ジルが一番知っているのに……)
意地悪な囁きに、恥ずかしさで何も言えなくなっていると、ジルが穏やかに目を細めた。
ジル 「すみません、少し意地悪をしてしまいましたね」
吉琳 「……なんだか、楽しんでいるように見えます」
ジル 「貴女が可愛らしいからですよ」
ジルが目元を和ませながら、とろけるような声色で囁く。
ジル 「貴女と一緒に見たいものがあります。ですが今は……」
ジル 「もう少し、このままでいさせてください……」
穏やかな熱を宿した瞳に見つめられ、また唇を塞がれてしまった…―

……
それから、私たちはふたりきりで砂浜を散策した。
少しずつ水平線に沈んでいく太陽を並んで見つめる。
吉琳 「こんな絶景、私たちだけで楽しんでいいんでしょうか……」
ジル 「ええ」
吉琳 「……もしかしてジルのわがままというのは、これを見ることだったんですか?」
ジル 「はい。以前、こちらの別荘に来た際、素晴らしい景色だと思っていまして」
ジル 「貴女とふたりで見てみたかったのです」
どきりと大きく鼓動が跳ねる。
胸がいっぱいになるのを感じ、夕日からジルへ視線を移した。
吉琳 「こんな素敵な景色を一緒に見られて幸せです」
ジル 「私も同じ想いを抱いていますよ」
ジルもまた私を見つめながら、頬に手を伸ばしてくる。
ジル 「この景色を独占したのと同じように、今夜……」
ジル 「貴女を独占してもいいですか?」
吉琳 「……はい」
顔が熱くなるのを感じながら、ジルの誘いに頷く。
誓うように落とされたキスは、私に甘い夜の訪れを予感させてくれたのだった…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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◇有投票◇ 20190813~20190825

イケメン王宮 人気投票2019

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

本編を進めたり、
プリンセスレッスンを行うことで貰える投票券を集めて部門ごとに彼に投票しちゃおう♪
投票券を使用した枚数に応じてご褒美GET★

甘えて欲しい彼部門

強引なキスをして欲しい彼部門

実は朝が苦手そうな彼部門

2人でお酒を飲みたい彼部門

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

50枚特典  
ストーリーを読む>>>

暖かな日差しが降り注ぐ、ある昼下がりのこと…―
ロベールのアトリエの前を通りかかったジルは、
開け放ったドアから見えた一枚の絵になぜか心惹かれ、部屋に足を踏み入れた。
ジル 「この絵には、どなたかモデルがいらっしゃるのですか?」
結婚式で幸せそうに誓いのキスを交わしている花嫁と花婿の絵に筆を滑らせていたロベールに、
ジルが話しかけると、ロベールが筆を止め、穏やかな笑顔で振り返った。
ロベール 「はい。知り合いの新郎新婦なんです」
ジル 「そうでしたか。どうりで……」
ジル 「まるで見ていたかのように、生き生きとした絵なのですね」
ジルが興味深そうに言うと、ロベールが笑みを深める。
ロベール 「ジル様にお褒めいただいて光栄です」
ロベール 「実は先日、この二人の結婚式に招かれたのですが、」
ロベール 「その時に見た素敵な式と、心の底から愛し合う二人に心を打たれまして、」
ロベール 「せっかくなので、その結婚式の様子を絵に残して、お祝いとして贈ろうと思ったんです」
ロベールの言葉に、ジルが納得したように頷く。
ジル 「確かに……この絵を見ているだけで彼らの幸せな気持ちが、」
ジル 「こちらにも伝わってくるようですね」
絵を見て目を細めるジルと共に、ロベールも正面のキャンバスに視線を移した。
ロベール 「ええ。この絵のモデルの夫婦を見ていた時、穏やかで平凡ながらも」
ロベール 「大切な人とずっと一緒にいること以上の幸せはないのかもしれないと、」
ロベール 「教えられたような気がしました」
ロベールが話したように、絵の中の二人はキスを交わしながら、
どこまでも穏やかで、幸せにあふれた様子で描かれている。
そんな絵をしばらく見つめていたジルが、ぽつりと言う。
ジル 「この夫婦のように、陽だまりのように穏やかな愛の形もあるのでしょうが、」
ジル 「もし私がモデルになることがあれば、こうはいかないでしょうね」
ロベールはふっと微笑んで、からかいまじりに訊ねる。
ロベール 「ジル様でしたら、こう穏やかにはならない……と?」
そんなロベールに、ジルが意味ありげな笑みを浮かべた。
ジル 「ええ。本当に好きになると、想いを抑えられなくなる性質(たち)ですので」
ジル 「私であれば……この絵とは違ってきっと相手を抱きすくめ、少々強引に唇を重ねるでしょうね」
ロベール 「その様子だと……まるでジル様の心には具体的なお相手がいるようですね」
ジル 「ええ。いますよ?」
ジルの言葉に、ロベールは一瞬目を見開いてからすぐに口の端を持ち上げる。
ロベール 「ジル様は、どんな時も常に冷静な方だと思っていたので……意外でした」
ジルは軽く肩をすくめて見せ、含みのある笑みを浮かべてロベールを見た。
ジル 「そう言うロベール殿の方こそ、常に穏やかで冷静ですが、」
ジル 「恋に落ちた時は……また少し違うのでは?」
ジルの探るような視線を受けたロベールは、どこか余裕のある表情で、
わざとらしく首をかしげてみせる。
ロベール 「さあ……どうでしょうか」
はぐらかしたロベールの心の中にもまた、ある女性の笑顔が思い浮かんでいたのだった…―


220枚特典  
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いつもとは違う一日を予感させる、明るい陽射しに包まれたある日の午後…―
レイヴィス 「…………」
ウィスタリア城を訪れていたレイヴィスは、帰路につくため、玄関へ向かっていた。
しかし、途中で声をかけられる。
レオ 「こんにちは、大公。用事は済んだの?」
レイヴィス 「……何か用?」
レオ 「そんな顔しなくてもいいでしょ。仲良くなろうと思っただけだよ?」
レオ 「これから公務で関わることが増えるかもしれないしね」
レオは怪訝な顔をするレイヴィスを安心させるように言うが、レイヴィスの表情は変わらない。
そのままレオを無視して歩き出そうとする。
レオ 「っと、帰っちゃうの?」
レイヴィス 「……ろくな話をしなさそうだから」
レオ 「そんなことないって。ちょっと付き合ってくれてもいいんじゃない?」
レイヴィス 「断るって言ったら?」
レオ 「愛想が悪い男はモテないよ?」
レイヴィスが肩をすくめたレオを見る。
レイヴィス 「興味ないやつにつきまとわれても、面倒なだけでしょ」
そう言って廊下を歩きだしたのを、レオは楽しげな顔で追いかけた。
レオ 「じゃあ、大公が興味ある人って……どんな子なの?」
レイヴィス 「答える必要、ある?」
レオ 「つれないな。答えてくれないなら勝手に想像するけど?」
振り向こうともしないレイヴィスに、レオはさらに続ける。
レオ 「たとえば……人の本心を見抜くくらい勘が鋭いのに、」
レオ 「ちょっとほんわかしてて他人を和ませる子……とか」
ぴたりとレイヴィスの足が止まる。
レオ 「一緒に高め合えるような人なのに、ときどき抜けててかわいい……とか」
レイヴィス 「……本当に勝手な想像だね」
レオ 「でも、足を止めてくれた。そうでしょ?」
レイヴィス 「このまま帰ったら、妄想を言いふらされそうだから」
それを聞いてレオはふっと笑った。
レオ 「話す気になってくれて嬉しいよ。じゃあ、遠慮なく聞こうかな」
レオ 「レイヴィスは好きな女の子に甘えたい? それとも甘えられたい?」
レイヴィス 「……何、その質問」
レオ 「答えないんだ? じゃあ、甘えたい派?」
レイヴィスは首を横に振って、小さく溜息を吐く。
レイヴィス 「俺があいつに甘えるとか、何の冗談」
むっとしているらしいレイヴィスの様子に、レオは軽く口元を緩める。
レオ 「へえ、思い浮かべるような相手がいるんだ?」
レイヴィス 「…………帰る」
レオ 「ごめんごめん、待ってってば」
レオに引き留められ、またレイヴィスが足を止めた。
レオ 「俺も教えるから許してよ。ちなみに甘えたい派。どちらかと言えば、だけど」
レイヴィス 「別に知りたくないし、聞いてもないけど」
レオ 「……あ、でもやっぱり決められないな。好きな人には甘えたいし、甘えられたいし……」
レイヴィスのことはそっちのけで、レオは明らかに誰かを思い浮かべながら悩み始める。
レイヴィスはもう一度溜息を吐くと、初めて苦笑いした。
レイヴィス 「……まあ、大抵の男はそうなんじゃない」
レイヴィス 「好きな人には甘えたいし、甘えられたい。……そういうものでしょ」
レイヴィスもまた、ある女性の顔を思い浮かべる。
その時、レイヴィスの表情はレオには向けなかった優しいものに変わった。
レイヴィス 「……あいつはどうなのか、今度聞いてみようかな」
レオ 「なになに、何の話?」
レイヴィス 「教えない」
穏やかな昼下がりに出会った2人は、口にこそ出さずにいるものの、
ある人に会いたいと同時に思ったのだった…―


340枚特典  
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白い雲が青空を撫でるように流れる昼下がり…―
ユーリ 「休憩中の騎士たちには全員渡したし、あとは……」
ウィスタリアとシュタインの合同訓練は、二日目を迎えていた。
二つのティーカップを載せたお盆を手に歩くユーリは、目的の人物たちを見つけて足を止める。
アラン 「……今朝のミス、らしくないんじゃねえの」
廊下の少し先でアランとアルバートが向かい合い、辺りに気まずい空気が流れている。
アルバート 「……すみません。午後の訓練ではこのようなことが無いよう努めます」
アランの涼やかな眼差しが、何かを思いついたようにアルバートを捉えた。
アラン 「お前、もしかして朝が弱いのか?」
アルバート 「……まさか」
心外とばかりにアルバートが瞳を細め、アランがわずかに眉を寄せた時……
ユーリ 「二人とも、ケンカはそこまでにしてください」
ユーリは場を和ませるように屈託のない笑みを浮かべ、二人に歩み寄った。
ユーリ 「こちらをどうぞ。疲れが取れるハーブティーです」
差し出されたカップを、二人は無言のまま受け取る。
ハーブティーを口に運ぶ二人を眺めていたユーリが、笑顔のままアルバートに視線を向けた。
ユーリ 「そういえば昨日の夜、アルが滞在してる部屋の明かりが遅くまでついてたけど……」
ユーリ 「何かしてたの?」
言い渋るかのような間の後、アルバートがおもむろに口を開く。
アルバート 「……昨日の訓練を鑑みて、適切なメニューを再考していた」
アラン 「熱心なのはいいけど」
アラン 「それで寝不足になってミスするなんて本末転倒だろ」
アランの言葉を受け、眼鏡の奥の瞳には不穏な光が宿っている。
アルバート 「……お言葉ですが、アラン殿の方こそ朝が苦手なのでは?」
アルバート 「以前ウィスタリアで早朝に賊が出た際、どこか調子が悪そうだったと聞きました」
アラン 「……は? 誰だよ、そんなこと言った奴」
アルバートが傍らに立つユーリに視線を投げた。
アルバート 「こいつです」
アランに鋭い眼差しを向けられても、ユーリが動じる様子はない。
アルバート 「……まあ、調子が悪かったのには何か理由があったのでしょうが」
アラン 「…………」
二人のまとう空気が柔らかくなったのを感じて微笑んだユーリは、ふと思い出したように言った。
ユーリ 「そういえば今朝、あの子もなんだか眠そうだったな」
ユーリ 「もうすぐ視察に行く国について、公務の後、夜遅くまで色々調べてるみたいです」
その言葉に、アランとアルバートが同時に片眉を動かした
アラン 「また無理してんのか……あいつらしいけど」
アルバート 「ええ。一生懸命なのはいいことですが、自分を顧みないのはどうかと」
ユーリ 「二人とも、心配しないでください。あの子が早く寝るように今夜は俺が見張っておきますから」
アランとアルバートは一瞬目を見合わせ、すぐに逸らした。
アラン 「別に心配してるわけじゃねえよ」
アルバート 「決して心配しているわけでは……」
ユーリ 「はいはい。心配しているわけじゃないことは、よーくわかってます」
空になって戻されたカップに、ユーリが笑みを深めた。
ユーリ 「さて、と。頑張ってるあの子に、頭がすっきりするハーブティーを淹れてあげようっと」
足取り軽く立ち去ったユーリの背中を見送った後……
アラン 「俺達も行くか。午前中みたいなミスすんなよ」
アルバート 「言われなくても、そのつもりです」
一歩先に歩き出したアランに、すぐ追いついたアルバートが、隣の横顔をちらりと見た。
アルバート 「昨夜再考した訓練メニューなのですが」
アラン 「……とりあえず聞かせろよ」
アランの素っ気ない口調の中に熱いものを感じ、アルバートは眼鏡を押し上げる。
庭木の緑を照らす陽光が、並んだ二人の影を長く伸ばしていた…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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20190915~20190928

Happy Anniversary~10人の王子様からの飾らない愛の言葉~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

プリンセスとして立派に務め、今年も無事に就任記念日を迎えたあなた。
就任記念式とパーティーを終えた後、彼から声を掛けられて……
いつも頑張るあなたを労うため、彼が考えてくれた「お祝い」とは…―?
アラン「可愛い奴」
アラン「……その顔、反則。我慢できなくなるだろ」
ルイ「顔……赤い。照れてる?」
ルイ「嘘ついてもだめ。分かるよ……吉琳のことは全部」
ジル「……相変わらず、照れたところも可愛らしいですね」
ジル「聞かせてください。貴女の可愛らしい声で」
レオ「ほんと、可愛いこと言ってくれるなぁ、吉琳ちゃんは」
レオ「ねえ……こんなに近いとドキドキしない? 俺はしてるよ」
ゼノ「浮かない顔は似合わない。お前には笑顔でいてほしい」
ゼノ「……吉琳、もう少し側へ来てくれ」
ユーリ「……吉琳様、照れてる?」
ユーリ「これからも吉琳様の色んな顔……ずっと側で見ていたいな」
ロベール「でも……その前に、誰よりも君を一番に幸せにしないとね」
ロベール「さあ……もっとそばにおいで」
シド「ゆっくり入って昨日の疲れでも癒せ」
シド「もっとこっち来いよ、何かされるとでも思ってんのか?」
アルバート「色々と連れ回してしまいましたが、疲れていませんか?」
アルバート「……楽しんで頂けたならよかった。最後にあなたを連れて来たかったのは、ここです」
レイヴィス「いきなりキスされたら困るって?」
レイヴィス「そんな顔で何言われても、説得力ないけど」
彼からの甘いお祝いをたくさんもらった今日は、
これまでよりずっと、思い出に残る記念日になる…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

【40個特典】ロベールの特典ストーリー

ロベール 「就任記念式の準備は出来たみたいだね」
ロベール 「二人でいられるうちに言っておこうと思って……おめでとう、吉琳ちゃん」
ロベール 「今日は君にとって節目の日だから……俺からもお祝いさせてほしいんだ」
ロベール 「今日は一日、時間をもらってもいいかな? 必ず、楽しいと思ってもらえる日にするよ」
ロベール 「……そんなに楽しみにしてくれると、俺も嬉しいよ」
ロベール 「とは言っても、就任記念式の後にはパーティーもあるから、」
ロベール 「二人きりでゆっくり出来るのは、午後からになってしまうけど……それでもいいかい?」
ロベール 「……ありがとう」
ロベール 「俺も楽しみにしているよ。それじゃあ、式の後でね」

……
ロベール 「就任記念式、お疲れ様」
ロベール 「吉琳ちゃん、緊張していたのかい? 全然そんな風には見えなかったよ」
ロベール 「凛としていて……見とれてしまったくらいだ」
ロベール 「ここからは二人でのんびり絵画を見て、リフレッシュしようか」
ロベール 「ここの美術館は時代ごとに絵画が展示されているから、順に見ていこう」
ロベール 「見てごらん、この絵のように少し前の時代には、ウィスタリアでも戦争があったんだ……」
ロベール 「でも、近代に描かれた絵画は、穏やかな風景画や幸せな人物像が描かれたものが多くなるね」
ロベール 「ん? その理由……かい?」
ロベール 「それは、歴代のプリンセスと国王たちの……平和への努力のおかげだね」
ロベール 「吉琳ちゃんなら、今こうして穏やかで幸せなウィスタリアを、」
ロベール 「さらに良い国にしていけると信じているよ」
ロベール 「自信がない……?」
ロベール 「就任記念式に集まってくれた人々の顔を見ただろう? みんな心から君を祝福していた……」
ロベール 「吉琳ちゃんは素敵なプリンセスだという証拠だ。だから自信を持っていいんだよ」
ロベール 「そうして笑っている君の隣で、俺も幸せで溢れる世の中を作っていきたい」
ロベール 「でも……その前に、誰よりも君を一番に幸せにしないとね」
ロベール 「さあ……もっとそばにおいで」
ロベール 「今、この穏やかなウィスタリアで、君に触れられる喜びを感じていたいんだ」
ロベール 「ここは美術館だから、手を繋ぐくらいしかできないけど……」
ロベール 「それだけでも、俺にとっては充分すぎるほど、幸せなぬくもりだから」

 

【90個特典】アルバートの特典ストーリー

アルバート 「式典での姿……堂々としていて、とても立派でした」
アルバート 「……そんな、謙遜しないでください。本当にそう思ったから言ったまでです」
アルバート 「以前頂いた手紙に、パーティーの後は空いていると記してありましたが、」
アルバート 「予定は変わっていませんよね?」
アルバート 「……そうですか、よかった。では……」
アルバート 「今日の予定はすべて俺に任せてくれませんか?」
アルバート 「あなたに喜んでもらえるよう、用意してきたことがあります」
アルバート 「とっておきの一日をプレゼントさせてください」

……
アルバート 「色々と連れ回してしまいましたが、疲れていませんか?」
アルバート 「……楽しんで頂けたならよかった。最後にあなたを連れて来たかったのは、ここです」
アルバート 「甘い物、好きでしょう。この店に来たことは? ……やはりありませんか」
アルバート 「最近出来た店のようなので、あなたが知らないのも無理はありません」
アルバート 「とても評判になっているらしいですよ。さあ、入りましょう」
アルバート 「そのお菓子、美味しいですか?」
アルバート 「……喜んでもらえて俺も嬉しいです」
アルバート 「公務の合間に、最近のウィスタリアの城下について色々と調べたかいがありました」
アルバート 「情報収集のためとはいえ、ユーリたちに頼るのは癪でしたが……」
アルバート 「あなたを喜ばせるためですから仕方ありません」
アルバート 「……せっかくですから、このお菓子、もうひとついかがですか?」
……
アルバート 「少し遅くなってしまいましたね。すみません」
アルバート 「ですが、あなたに満足して頂けたようで、本当に嬉しいです」
アルバート 「なっ……いきなり抱きついて来ないでください」
アルバート 「喜んで頂けたことは伝わりましたが……」
アルバート 「急にそんなことをされると、冷静でいられなくなりそうなので」
アルバート 「……動揺してしまい、あなたにかっこ悪いところを見せてしまいましたね」
アルバート 「俺はゼノ様のように完璧な人間ではありませんが、」
アルバート 「あなたと、あなたが愛するウィスタリア、」
アルバート 「そしてシュタインのために努力を重ねていくと誓います」
アルバート 「今、あなたの唇に……そう誓ってもいいですか?」

 

【140個特典】ユーリの特典ストーリー

ユーリ 「就任記念式、お疲れ様、吉琳様」
ユーリ 「それから……ほんとにおめでと! 俺からもお祝いを用意したよ」
ユーリ 「今日は君が楽しいって思えることいっぱい用意してるから、楽しみにしててね」
……
ユーリ 「就任記念式とパーティーがあったから遠出はできないけど、」
ユーリ 「代わりにお城の中で、お散歩デートしよ」
ユーリ 「散歩の後はアフタヌーンティーの用意をしてあるから、楽しみにしててね」
ユーリ 「吉琳様……朝からずっと予定が詰まってて疲れたでしょ?」
ユーリ 「だから、ゆっくりしてほしいんだ……」
ユーリ 「あっ、チロル! ……肩に乗りたいの? いいよ」
ユーリ 「きっと、吉琳様におめでとうって言いに来たんだね」
ユーリ 「チロル、吉琳様に撫でられて嬉しそう」
ユーリ 「ん? あ、今度は吉琳様の肩に乗りたいみたい」
ユーリ 「吉琳様、もうちょっと俺に近づいて肩をくっつけてくれる?」
ユーリ 「うん、いい感じだよ」
ユーリ 「……あっ、ちょっとチロル! そんな急に動いたら……んっ!」
ユーリ 「ご、ごめん、大丈夫? ……そっか、良かった」
ユーリ 「でも、今……キス、しちゃったよね」
ユーリ 「……吉琳様、照れてる?」
ユーリ 「ごめんごめん。隠さないで、こっち向いて? どうして、って……」
ユーリ 「今のは不意打ちみたいな感じだったし、もう一回ちゃんとしておきたいと思って」
ユーリ 「吉琳様、顔が真っ赤だよ。……可愛いなぁ、ほんとに」
ユーリ 「これからも吉琳様の色んな顔……ずっと側で見ていたいな」
ユーリ 「執事としても、恋人としても、吉琳様を支えていくから、」
ユーリ 「この先もウィスタリアのために一緒に頑張っていこうね」

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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20191016~20191027

Trick and Treat~彼のイタズラは甘いご褒美~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

彼と一緒に、異国のハロウィンパーティーに招かれたあなた。
プリンセスとしてスピーチを依頼されたため壇上へ向かうけれど
彼に囁かれた言葉が頭をよぎる。
『スピーチに失敗したらイタズラを…―』
『スピーチに成功したらご褒美を…―』
彼がくれるのは、一体どっち…―?
アラン「その格好、似合ってる」
アラン「じゃあ俺がイタズラするわけないだろ」
ルイ「側にいて良かった」
ルイ「吉琳は俺だけの天使だから……独り占めしたくなった」
ジル「遠慮などしなくて良いんですよ?」
ジル「子供だと思っている方に、こんな真似をすると思いますか?」
ゼノ「お前には『ご褒美』をやらなければな」
ゼノ「……随分、可愛いことを言う」
シド「これくらい可愛い『イタズラ』だろ?」
シド「こんな格好、他の奴らに見せるわけにいかねーしな」
彼の言葉に翻弄される甘い夜…―
緊張と、ほのかな期待を心に灯し、魅惑のハロウィンパーティーが幕を開ける…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

プロローグを読む>>>

彩られたパーティー会場が、ランタンで照らされたある夜のこと…―
今夜は、異国の貴族による『ハロウィンパーティー』が開かれていた。
プリンセスとしてスピーチを依頼されたので、事前に話す内容をきちんと用意してきた。
(いつも通り、ちゃんとやれば大丈夫)
小さく息を吐いて、スピーチのために会場の中央へと向かう。
いざ壇上へ上がろうとしたそのとき、このパーティーの主催者が近付いてきた。
異国の貴族 「スピーチの前に、少しよろしいでしょうか?」
吉琳 「はい、なんでしょう?」
異国の貴族 「差し支えなければ、ハロウィンの思い出を話していただきたいのです」
吉琳 「ハロウィンの思い出……ですか?」
異国の貴族 「ええ。より、このパーティーに親しみを持っていただければ、と思いまして」
吉琳 「……わかりました」
異国の貴族 「プリンセスは、スピーチがお上手だと伺っておりますので、楽しみにしております」
突然の依頼と期待に、頭が真っ白になってしまう。
(思い出なんて、急に言われても……)
不安になって、会場にいる彼の姿を探してしまう。
それと同時に、私の脳裏に、先程彼と交わした会話がよぎった。
スピーチに失敗したらイタズラを…―
スピーチに成功したらご褒美を…―
そのどちらかをくれると、彼は言っていた。
彼に囁かれた言葉を思い出すと、鼓動が少し速くなるのを感じた。
(イタズラって一体、何をするつもりなんだろう……?)
彼に視線を送ると、人垣の間から、私に向けて微笑んでいるのが見えた。
今まで意識していなかったけれど、想像のつかない彼の『イタズラ』に、緊張感がさらに高まる。
(……うまくできるよね?)
まだ彼の瞳に捉われているのを感じながら、改めて壇上へ向かって足を踏み出した…―
 

【50個特典】ジルの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>


ランタンの明かりが、パーティー会場を柔らかく照らす夜…―
(緊張したけれど、ちゃんとスピーチできて良かった……)
スピーチを終え、ホールにいるジルの元へと向かう途中、
ある親子の姿が目に留まった。
母親 「はい、あーん」
子供 「あーん!」
(なんだか微笑ましい)
なんとなく目を惹かれて見ていると、不意に誰かが隣に立つ。
ジル 「あの子を見ていると、誰かを思い出しますね」
吉琳 「え? 誰かって……」
聞こうとして、ジルの瞳がまっすぐ私を見つめていることに気付いた。
吉琳 「……もしかして、私ですか?」
(ジルにとって、あれぐらい手のかかる存在だったってこと……?)
気持ちがしゅんとしぼむのを感じたそのとき、ふっとジルが微笑んだ。
ジル 「落ち込まないでください。冗談ですよ」
吉琳 「……ジルの冗談はわかりづらいです」
そう言って少し頬を膨らませると、
パーティーに招待された貴族たちが私を囲んできた。
貴族1 「プリンセス、よろしければお話を……」
貴族2 「是非、プリンセスのご意見を伺いたく……」
そっとジルが後ろに控え、私は貴族たちと話すことになった。
……
あの後、あまりにも多くの貴族が集まったことを見かねたジルが、
きりの良いところを見計らって、私を会場の隅へと連れてきてくれた。
ジル 「お疲れでしょう。こちらに軽食とスイーツを運んでおきました」
吉琳 「いつの間に用意してくれたんですか……?」
ジル 「貴女が懸命にお話をされていたときです」
答えてくれたジルの表情は少しだけ複雑そうだった。
ジル 「貴女は本当に頑張る方ですね。ですが、そろそろ休んでください」
ジルの言葉が、私を優しく包み込んでくれる。
(そんな風に思っていてくれたんだ……)
吉琳 「……ありがとうございます。お言葉に甘えて、休みますね」
用意してくれたケーキを食べるため、フォークで一口大に切り分ける。
すると、ジルが私の手をやんわりと制し、フォークを奪い取った。
ジル 「はい、どうぞ」
吉琳 「えっ……?」
目の前に差し出されたケーキと、微笑んでいるジルを交互に見て、瞬きをする。
ジル 「スピーチを立派に成功させたご褒美として、食べさせてさしあげます」
吉琳 「そ、そんな……」
隅とはいえ、パーティー会場でジルにケーキを食べさせてもらうことが恥ずかしく、
戸惑っていると、ジルがさらにフォークを差し出して笑みを深める。
ジル 「遠慮などしなくて良いんですよ?」
吉琳 「でも……なんだか子供扱いされているみたいですし……」
さっき、同じようにしてもらっていた子供の姿が脳裏に浮かび、言い訳に使ってみる。
けれどジルは妖艶に微笑むだけで、引き下がってくれる様子がない。
その眼差しに負けて、渋々食べさせてもらうことにした。
吉琳 「……ん」
甘いクリームが、口の中でとろけて溶けていく。
けれど、今の私にはあまり気にしている余裕がなかった。
(恥ずかしい……)
吉琳 「あの、後は本当に自分で……」
ジル 「口元にクリームが付いていますよ?」
吉琳 「えっ?」
慌てて拭おうとした瞬間、すっとジルが顔を寄せてくる。
吉琳 「んっ……」
唇の端を舐められ、軽いキスをされる。
ジル 「子供だと思っている方に、こんな真似をすると思いますか?」
確かな熱を隠した一言が、私の頬を熱くしていく。
吉琳 「だ……誰かに見られたらどうするんですか?」
ジル 「それは申し訳ありませんでした」
ジル 「これも貴女へのご褒美のつもりだったんですが……」
スピーチの前にも見た、少しだけ意地悪な微笑みが向けられる。
ジル 「どうやら、私の考えたご褒美はお気に召さないようですね」
ジル 「では……せっかくのハロウィンですし、イタズラの方を試してみましょうか」
口付けの代わりに、唇を指でそっと撫でられる。
(ジルがくれるご褒美は、全部イタズラみたいなものだよ……)
自然と速くなっていく鼓動に眩暈さえ覚えながら、
私は、いつまでもジルの瞳から目を逸らせずにいた…―


【210個特典】シドの特典ストーリー

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白い月が地上に淡い光を投げかけ始めた夜…―
ランタンで彩られた会場は、多くの人で賑わっていた。
その中に、シドの姿は見当たらなず、心細くなる。
スピーチを終えた私は壇上から降り、シドの姿を探した。
(スピーチ、失敗しちゃった……)
肩を落としながら、周囲を見回すけれどシドの姿を見つけることができない。
(シド……? どこに行ったんだろう……?)

***

結局、シドを見つけることができないまま、私は用意された部屋に戻ってきた。
ソファに腰掛け、スピーチ前の出来事を思い出しながら、私はため息をつく。
(『スピーチで失敗したら、あれを着るってのはどうだ?』なんて……)
(シドがあんなこと言うから緊張して、スピーチで噛んじゃった……)
あれというのは、このパーティーの主催者が、仮装用に準備した民族衣装のことだ。
肩もおへそも丸見えの上、スカートは腿までスリットが入っていたその衣装を
主催者の挨拶中に見たシドは、私がスピーチに失敗したら着るように提案してきた。
(あんなの、恥ずかしくて絶対着れないよ……)
吉琳 「どうしよう……」
思わずため息がこぼれ落ちたその時、部屋の扉が開いた。
シド 「よお、堂々としてたじゃねーか」
シドは大きな歩幅で歩み寄ると、唇の端を持ち上げた。
シド 「辛気臭い顔してんなよ。せっかくのパーティーだろ」
シドらしい励まし方に、沈んでいた気持ちが少し楽になる。
吉琳 「……うん。ありがとう、シド」
吉琳 「そういえばさっき会場にいなかったみたいだけど……どこに行ってたの?」
シド 「約束通り、これを着てもらわねーといけないからな。取りに行ってた」
シドが私に差し出したのは、件の民族衣装だった。
(本当に着せる気なんだ……)
吉琳 「これ、着なきゃダメ……?」
吉琳 「肩もおへそも出るし、恥ずかしいよ」
差し出された衣装を押し返すと、シドはぐいっと私に体を寄せた。
シド 「これくらい可愛い『イタズラ』だろ?」
シド 「これが嫌だって言うなら、もっとすごいことしてやってもいいんだぜ」
鼓膜を揺らす低い声に、鼓動が跳ねる。
冗談とも本気ともつかない彼の口調に、私はしぶしぶ民族衣装を受け取った。
(もっとすごいことって、何をさせる気なんだろう……)
(それならこの民族衣装を着る方がマシかも……)

***

民族衣装に着替え、シドの前に立つ。
気恥ずかしさから上半身を隠そうとした私の腕を、シドが掴んだ。
シド 「似合ってんじゃねーか」
吉琳 「あまり見ないで。恥ずかしいから」
シド 「俺に見せなくて、誰に見せるんだよ」
満足そうな眼差しを這わされて、触れられてもいないのに体が熱を持つ。
腕を掴んでいた彼の手が離れ、露わになった素肌をなぞった。
吉琳 「シ、シド……!」
シド 「やっぱりお前はいい女だ。あれだけの人を前に、堂々とスピーチするんだからな」
シド 「頑張った褒美をやらねえと」
そう言って、シドは私の足元へと跪く。
弧を描いた唇が、おへそのすぐ横に添えられた。
柔らかな感触にくすぐったさを覚え、思わず体をよじらせる。
吉琳 「っくすぐったいよ、シド……」
その声が彼に火をつけたのか、添えるだけだった口づけは、
肌を啄むようなものに変わった。
吉琳 「シ、シド……そろそろパーティーに戻らないといけないから……っ!」
止まりそうにないシドを制するため、そうは言ったものの、
先ほどのスピーチを思い出し、不安が胸をかすめる。
シド 「どうした?」
吉琳 「……スピーチに失敗しちゃったから、会場に戻るのが少し不安なの」
シド 「あ? 考えすぎだろ」
吉琳 「でも、ウィスタリアの代表としてスピーチしてて、」
吉琳 「主催者の方も期待しててくださったのに……」
うつむく私に、シドが優しげに瞳を細めた。
シド 「んな顔すんな。大丈夫に決まってんだろ」
(……シド)
彼の言葉に後押しされて、臆病風に吹かれていた気持ちが前を向く。
吉琳 「……ありがとう。シドがそう言ってくれると、そんな気がしてくるよ」
シド 「ああ。……まあ、大丈夫だとは言ったが、戻っていいとは言ってねえがな」
吉琳 「えっ……?」
腕を引かれた私は抗う間もなく、シドの胸の中に吸い寄せられる。
シド 「こんな格好、他の奴らに見せるわけにいかねーしな」
吉琳 「でもパーティーが……」
シド 「後で戻っても問題ねえだろ」
抱きしめていた手が解かれた直後、呼吸を奪われる。
寸分の隙もないほど合わさった唇に、体から力が抜けていく。
シド 「……せっかく色っぽい格好してんだ。今はもっと楽しませろよ」
むせ返るほど甘い空気に包まれながら、
私は彼からの蕩けるようなキスに翻弄されるのだった…―。

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日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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日版王宮 收集活動-合集: 2019年

20191113~20191124

Melty Hug~彼のぬくもりに包まれて~

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

頬を撫でる風が冬の冷気を濃厚にまとい始めた頃。
寒空の下で身を震わせるあなたを彼が抱き寄せ…―
アラン「雨宿りできる場所まで、それ被っとけ」
アラン「俺にはお前の熱、わけてくれねえの?」
ルイ「落ち込まないで。吉琳は笑顔の方がいい」
ルイ「あったかい……。もっと触れていたいくらい……」
ジル「貴女のことで気付かないことなど、私にはありませんよ」
ジル「……さあ、どのように温めて差し上げましょうか」
ユーリ「……ねえ、俺とくっついたらあったかくなるよ?」
ユーリ「吉琳様は俺とこうするの、嫌?」
レイヴィス「吉琳も……俺を好きって言って」
レイヴィス「……吉琳を抱き締めてると安心するから」
二人がぬくもりを重ね合う時…―
震えるほどの冷たさは、とろけるほどの熱に変わっていく…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

【50個特典】ユーリの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

部屋の夜気がしんと冷たい、とある日の夜…―
(今夜は特に冷えるな……)
冷えてきた腕を服の上からそっと擦っていると、部屋のドアがノックされた。
ユーリ 「吉琳様、入ってもいい?」
(こんな時間にどうしたんだろう?)
首を傾げながらドアを開けると、ワゴンを押したユーリが立っていた。
ユーリはティーポットの載ったワゴンを目線で示すと、人懐っこい笑みを浮かべる。
ユーリ 「ホットワインを持ってきたよ」
ユーリ 「吉琳様を部屋まで送った時、少し寒そうにしていたから」
ユーリ 「これを飲めば、きっと温まるよ」
(ユーリ、気づいてくれてたんだ)
彼の気遣いに感謝しつつ、私は招き入れるようにドアを広く開けた。
吉琳 「ありがとう、ユーリ」
吉琳 「一人で飲むのも寂しいし、もしよかったら一緒に飲まない?」
……
ユーリと一緒にお酒を楽しみ、しばらく経った頃…―
ほのかに頬を赤く染めたユーリが、潤んだ眼差しを私に向けた。
ユーリ 「今日はなんだか酔っちゃったかも」
吉琳 「大丈夫? 顔が少し赤いよ?」
ユーリ 「平気。体がポカポカしてるだけ」
ユーリ 「……ねえ、俺とくっついたらあったかくなるよ?」
ユーリは並んで椅子に腰掛けていた私を覗き込む。
長いまつ毛を揺らす彼はいつもより艶めいて見え、胸が小さく音を立てた。
ユーリ 「俺の膝の上に座って? そしたら吉琳様のこと、あっためてあげられる」
吉琳 「だけど……」
(なんだか今日のユーリ、いつもより積極的……)
ユーリは私の手を握り、引き寄せる。
抗う間もなく、私は彼に抱きすくめられていた。
吉琳 「ユ、ユーリ……!」
身体をたじろがせる私を離さないというように、抱きしめる手に力がこもる。
ユーリは上目遣いに微笑みを浮かべた。
ユーリ 「吉琳様は俺とこうするの、嫌?」
(嫌だなんてそんなことあるわけないけど、もし誰かが部屋に来たら……)
(でも、ユーリにそんな風に聞かれたら、ダメだなんて言えないよ……)
返す言葉を見つけられずにいたその時、部屋のドアがノックされた。
(! ……誰か来た!?)
メイド 「失礼します。ジル様より、明日は視察に出かけられるとお聞きしたのですが……」
メイド 「何時にお声掛けすればよろしいでしょうか」
吉琳 「あ、あの……んっ!」
慌てて返事をしようとした私の唇をユーリがキスで塞ぐ。
唇はすぐに離されたものの、悪戯な笑みを滲ませたユーリが今度は頬に唇を添えた。
胸を軽く押し返しながら、小さな声で彼を諫める。
吉琳 「ダメだよ、早く返事をしなきゃ変に思われちゃう……!」
私の抵抗も虚しく、甘やかな吐息と共に、ユーリの手が私の髪を撫でる。
髪から滑り落ちた手は服の上から優しく体の線をなぞり…―
メイド 「あの……吉琳様?」
吉琳 「は、はい! 明日の時間は……」
答えようと思うのに、艶めかしい彼の指先が思考の邪魔をする。
メイド 「どうかされましたか? お部屋に入っても……?」
吉琳 「待ってください、今……!」
ユーリの腕を軽く握ると、私は明日の起床時間を告げる。
メイド 「承知いたしました」
部屋から遠ざかっていく足音に息を吐くと、ユーリはくすりと笑みを漏らした。
ユーリ 「慌てた顔の吉琳様、すごく可愛かったなー」
(もう……)
吉琳 「ユーリ、意地悪すぎるよ」
困った顔をしてみせると、途端にユーリは目を伏せた。
ユーリ 「吉琳様が可愛いから、つい……」
ユーリ 「ごめんね……?」
(ユーリにこの顔されちゃうと……)
私は小さく息をつき、目元を和らげる。
吉琳 「仕方ないなあ。今夜は特別に許してあげる」
ユーリ 「ほんと? ありがとう、吉琳様!」
ぱっと明るい笑顔を浮かべたユーリが、再び私を抱きしめた。
鼻先をかすめる彼の匂いに、鼓動が甘く乱される。
(さっきまでシュンとしてたのに、もう笑ってる……)
無邪気な彼に戸惑いつつも、私は見つめ返した。
吉琳 「許すっていうのは、抱きしめていいって意味じゃないよ?」
ユーリ 「聞こえないなー」
どこ吹く風の様子で、ユーリは更に強く私を抱きしめた。
温もりを分け合うようにぴたりとくっついた彼の体に否応なく鼓動が加速していく。
耳元に唇が寄せられ、熱い吐息が耳たぶをくすぐる。 「……っ」
ぞくりとした感覚に、上ずりそうになった声を抑えた。
すると、ユーリが妖艶な笑みを浮かべ、そっと囁く。
ユーリ 「ねえ……もっとプリンセスの声、聞きたい」
ユーリ 「さっきは、可愛い声を我慢してたでしょ?」
ユーリ 「今はもう我慢しなくていいんだよ?」
抱きしめていた手が解かれ、ユーリが甘い微笑みを瞳に滲ませた。
(……やっぱり、ユーリには敵わないよ)
可愛い彼の色香を帯びた声に、長い夜の始まりを予感する。
後ろ髪を優しく撫でるユーリに委ねるように、私はそっと体を預けるのだった…―


【210個特典】ジルの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

夜気が冬の気配を濃厚にまとい始めたある日のこと…―
城で開かれた舞踏会に参加していた私は、人知れず身を震わせていた。
(寒い……。ドレスが薄手すぎたかも……)
思っていることを知られないよう公務をこなし、バルコニーで貴族たちとの歓談を済ませる。
ようやく一人になってホールへ戻ろうとした時、こちらへやってくるジルの姿に気が付いた。
吉琳 「ジル……」
ジル 「こちらを貴女へ届けに来ました」
え、と声を上げるよりも早く、肩へストールをかけられる。
ジル 「寒かったでしょう」
ジル 「そんな素振りも見せずに、プリンセスとして相手を気遣う姿はご立派でしたよ」
ジル 「貴女の頑張りを見ていると私も誇らしいですが……あまり無理なさらないで下さいね」
どんなものよりも温かなぬくもりを感じる眼差しに見つめられ、胸が甘く疼く。
照れ隠しするようにストールを羽織り直し、笑みを作った。
吉琳 「気付かれてしまうようでは、まだまだですね」
ジル 「貴女のことで気付かないことなど、私にはありませんよ」
(ジルは……ずるいな)
余計に胸が高鳴るのを感じていると、不意にジルが私の耳にそっと触れる。
ジル 「そんなに耳が赤くなってしまって……もっとこちらへ来てください。温めて差し上げますよ」
ジル 「方法は……ご想像にお任せします」
低い声で囁き、そのまま耳に甘い口づけを落とした。
吉琳 「だ、誰かに見られたらどうするんですか……?」
ジル 「この瞬間を見られるようなことはありませんよ」
ジル 「皆、この寒さのせいでホールに戻っていますから」
吉琳 「でも、またバルコニーに出て来るかもしれません……」
ジル 「そうですね……。でしたら、これではどうでしょう?」
少し意地悪な笑みを見せたジルが、柱の陰へ私を抱き寄せる。
ジル 「これで私と貴女の姿は誰にも見えません」
ジル 「……さあ、どのように温めて差し上げましょうか」
吐息が触れるほどの距離で囁かれ、一気に顔が熱くなるのを感じる。
(公務中だしダメだって言わなきゃいけないのに、もっと触れてほしいと思うなんて……)
ジル 「……と、言いたいところですが」
うろたえる私に、またジルが囁く。
ジル 「今は公務中ですし、ここまでで我慢していただけますか?」
ジルの腕の力が緩み、私の身体に甘い痺れを残して離れていく。
ジル 「それでは、また後ほど」
私を翻弄するだけすると、ジルは艶めかしい笑みを浮かべて立ち去った。
(本当に、ずるい)
さっきまではあんなに寒かった外も、今ではそれほど冷気を感じない。
ジルのせいだと気付くまで、そう時間はかからなかった。
……
舞踏会を終え、自室のベッドで肩の力を抜いていた時……
ジル 「お疲れ様でした。明日の予定についてですが……」
吉琳 「ありがとうございます。確か、レオに勉強を教えてもらう予定でしたよね」
以前から伝えられていた予定を確認しようとすると、ジルに首を振られてしまう。
ジル 「いえ。明日は一日、休暇を取っていただきます」
吉琳 「え? ですが……」
ジル 「今夜は特に冷え込んでおりましたし、舞踏会も予定より長引いたでしょう」
ジル 「明日無理をするよりも、大事に備えて休みを取るべきだと判断いたしました」
吉琳 「そういうことだったんですね……ありがとうございます」
舞踏会の時にも感じた気遣いが、改めて心に沁みる。
吉琳 「では、お言葉に甘えて明日はお休みをいただくことにします」
ジル 「ええ、そうしてください。私も明日はお休みをいただく予定です」
吉琳 「大変だったのはジルも同じですしね。ゆっくり過ごしてください」
にっこりと微笑んで見せると、ジルが小さく目を見開いた。
そして、少し何かを考えるような仕草をした後、すぐにいたずらっぽく笑みを浮かべる。
ジル 「そのつもりでしたが……気が変わりました」
吉琳 「えっ……?」
問う前にやんわりベッドへと押し倒される。
ジル 「二人の時間をたっぷり取る方が、お互いにとって有意義だと思いませんか?」
ジル 「明日が休みならば、今夜をどんな風に過ごそうと問題ありませんしね」
(それって……)
ジルの含みを持たせた言い方に、胸がトクンと甘い音を立てる。
妖しげな笑みに頬を熱くしていると、ふっとジルが口角を上げた。
ジル 「また耳が赤くなっていますよ」
ジル 「……先ほどのバルコニーでの分まで、温めてさしあげなければなりませんね」
口付けが肌に落ちて、思わずシーツを掴んでしまう。
(ジルの熱で……溶けてしまいそうだよ……)
舞踏会ではできなかった方法でぬくもりを与えられながら、
その夜はジルの腕の中で何度も身を震わせたのだった…―

 

【290個特典】ルイの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

明るい陽射しの中に、寒雲が漂うようになったある日のこと…―
(ない……どこにもない……)
私は視察に訪れた地にある湖で、ルイからもらった大切なネックレスを探していた。
(昨日、視察で来た時まではちゃんと身に着けていたから……きっとここにあるはずなのに)
今日でこの土地を離れることが決まっている。
去る前に、どうしてもネックレスを見つけたくて、なんとか時間を捻出した。
(私が自由にできる時間はあと少しだけ……それまでに、絶対に見つけ出さなきゃ)
護衛に戻ると告げた時間が迫っていたけれど、あと少しだけ……と必死に探し続けた。

……
すっかり空が暗くなっても見つけられず、焦りを覚えていたとき……
ルイ 「吉琳!」
振り返った瞬間、駆け寄ってきたルイに抱き締められる。
吉琳 「ルイ……? どうしてここに……」
ルイ 「護衛から吉琳が一人で湖に行ったことを聞いた」
ルイ 「それで、時間になっても戻ってこないのを知って、探しに来たんだよ」
吉琳 「え……もうそんな時間だったの……?」
ネックレスを探すのに夢中になっていて、時間が過ぎていることに気がつかなかった。
ルイの心配そうな表情と、待っているであろう護衛たちのことを考えると、
申し訳なさに胸が痛む。
吉琳 「ごめんなさい、私……」
ルイ 「……心配させないで」
ルイが私をきつく抱き締め、懇願してくる。
そして、ほっと息を吐いた後に見つめてきた。
ルイ 「どうして、ひとりで湖に来たの……?」
(……ルイを心配させてしまったし、本当のことを言うしかないよね)
吉琳 「……ルイからもらったネックレスを、ここで失くしてしまったみたいなの」
吉琳 「とても大切にしてたから、どうしても見つけ出したくて……本当にごめんなさい」
ルイ 「……そう」
ルイは私の話にじっと耳を傾けたあと、怒ることもなく、柔らかに目を細める。
ルイ 「最初から俺に言ってくれればよかったのに」
ルイ 「ネックレスがなくなることよりも……吉琳に何かあることの方が、よっぽど嫌だから」
そう言うと、ルイは名残惜しげに私から腕を離し、地面に屈む。
ルイ 「俺も探す。一人より二人の方がいいだろうし、これ以上吉琳を一人にさせたくない」
吉琳 「ごめんなさい。ありがとう……」
その優しさに心強さを覚えながら、私もルイと一緒に、再び探し始めた。

それからしばらく経ったけれど、ネックレスはまだ見つからない。
(もうすっかり暗くなってしまったし……ルイをずっと付き合わせてるのも良くないよね)
(冷えてきたし、ルイが風邪を引いてしまったらそれこそ大変だもの)
(悲しいけど、諦めるべきなのかな……) 「ルイ、もう……」
泣きそうになりながらも、ルイに声をかけたその時……
ルイ 「吉琳、見て」
吉琳 「え?」
吉琳 「あ……!」
ルイの示した先には、満天の星があった。
吉琳 「綺麗……」
ルイ 「二人でこんなに綺麗な星空を見られて良かった」
心臓が小さく音を立てるのを感じながら、ルイの方を振り返る。
ルイ 「落ち込まないで。吉琳は笑顔の方がいい」
(私が泣きそうだったこと、気付いてたの……?)
ルイの思いやりと気遣いに、胸が甘く締め付けられる。
想いを伝えようとした時、視界の隅にキラリと何かが流れて行った。
吉琳 「あ、流れ星……」
ルイ 「願い事、した?」
吉琳 「ううん、一瞬だったから……」
ルイ 「じゃあ、もう一回流れるまで一緒に待っていよう」
頷いて、再び星が流れるのを待ってみる。
けれど、そう簡単に流れ星は見つからず、少しずつ身体が冷え始めてきてしまった。
吉琳 「っ……」
冬の冷気から自分を守るように、吐息で指先を温めようとする。
ルイはすぐ、そんな私に気付いてくれた。
ルイ 「……寒い?」
ルイ 「じゃあ……こうしてくっついていればあったかいよ。ねえ、もっとこっち来て?」
後ろから、ルイがぎゅっと抱き締めてくれる。
ルイ 「あったかい……。もっと触れていたいくらい……」
ルイの声を耳のすぐ側に感じて、くすぐったさと恥ずかしさがこみ上げる。
流れ星は意識の外へ行ってしまい、ルイのことで頭がいっぱいになった。
ルイ 「綺麗な星も見られて、吉琳の側にいられて……幸せ」
吉琳 「ルイ……」
ルイ 「……ここにも星が輝いてる」
微かに金属の擦れる音が聞こえ、ルイの指が滑った胸元へ視線を落とす。
そこには、ずっと探していたネックレスがあった。
吉琳 「え……どうして……?」
ルイ 「降って来たんじゃない?」
振り返った先で、ルイが少しだけいたずらっぽく微笑む。
吉琳 「ルイが見つけてくれたの……?」
ルイ 「うん、流れ星を待ってるときに」
穏やかに言って、ルイが足元を指さす。
吉琳 「良かった……! 本当にありがとう……!」
吉琳 「それから、ごめんなさ――」
私の言葉を遮るように、ルイは頬へキスをしてくる。
ルイ 「お礼も謝罪もいらない。吉琳と幸せな時間を過ごせたんだから」
ルイ 「そのネックレス、留め具が緩んでるみたい。今度、一緒に直しに行こう」
(だから、ちゃんと身に着けていたのに落ちちゃったんだ……)
胸元のネックレスに触れ、存在を確かめる。
吉琳 「……うん」
もう二度となくさないと誓いながら、私はそっと手で握りしめた。
そんな私を、ルイは優しい瞳でじっと見つめている。
頬にキスされたことを思い出し、恥ずかしくなり背を向けた。
するとまた、後ろから包み込むように抱き締められる。
ルイ 「……あ、見て」
ルイの囁きに顔を上げると……
星の光が、空を滑って流れていく。
ルイ 「今度は願い事、できた?」
吉琳 「うん」
(こんな時間を、これからもずっとルイと過ごせますようにって……)
そんなことを思っていると、ルイが私を抱きしめる腕に力を入れる。
ルイ 「吉琳の願い事が、俺と同じだと嬉しい」
ルイ 「そしたら……絶対叶う」
囁きながら、ルイは私の耳たぶへキスをする。
胸が高鳴るのを感じながら、私はそっと頷いた。
星はもう流れなかったけれど、私たちの間に流れる時間は穏やかで幸せなものだった…―

 

【350個特典】レイヴィスの特典ストーリー

特典ストーリーを読む>>>

寒空の下で冬の訪れを強く感じていたある日のこと…―
私は地方での公務を済ませ、同じくウィスタリアに視察に来ていたレイヴィスと過ごしていた。
ふたりで街並みを歩いていると、小さな教会が目に入る。
吉琳 「あ。あそこの教会って入れるのかな?」
レイヴィス 「どうだろう。もう昼の礼拝時間は終わっていると思うけど」
吉琳 「でも、扉は開いてるみたい」
吉琳 「綺麗な造りの教会だし、ちょっと中を見てみたいな……」
レイヴィス 「……まあ、行きたいなら付き合う」
レイヴィスは少し訝しんでいたけれど、やがて小さく笑い、
私の手を引いて教会へと向かった。
扉をくぐった先に人の姿はなく、教会内は少し薄暗かった。
レイヴィス 「……あ」
吉琳 「どうかした?」
レイヴィス 「あれ、見て」
レイヴィスが指し示した先を見ると、外の淡い光を宿したステンドグラスがあった。
吉琳 「なんて綺麗……」
レイヴィス 「そうだね」
私たちはステンドグラスの真下まで行き、聖壇から見上げる。
(本当に綺麗。レイヴィスと一緒に見られてよかった)
二人で寄り添いながら、しばらく美しいステンドグラスの光を眺めていた…―
……
しばらくして、再び外へ出ようと扉の前へ行き、開けようと手をかける。
けれど、扉が開かない。
吉琳 「そんな、どうして……?」
レイヴィス 「考えられるのは、そもそも手違いで開いてたってこと」
レイヴィス 「昼の礼拝の後、本当は扉を閉めるはずだったのに、開けっ放しにしてしまった……」
レイヴィス 「それに気付いた牧師が、扉に鍵をかけたんだと思う」
吉琳 「閉じ込められたってこと……? どうしよう……」
この状況に焦りが募る私とは反対に、レイヴィスは顔色ひとつ変えない。
レイヴィス 「待っていれば、夜の礼拝時間に開けてくれるんじゃない?」
落ち着いた声でそう言うと、レイヴィスは長椅子に腰を下ろしてしまう。
吉琳 「私のせいでごめんなさい」
レイヴィス 「別にお前のせいじゃないでしょ」
レイヴィス 「それに、吉琳と二人きりになれて、俺は嬉しいけど」
微笑みかけてくれたレイヴィスに、胸が温かくなる。
レイヴィス 「ほら、座れば?」
吉琳 「うん」
勧められた通り、レイヴィスの隣にそっと腰掛ける。
しばらくそうしていたけれど、薄暗い教会の中は寒く、体が冷えてきてしまった。
レイヴィス 「寒いの?」
吉琳 「え……?」
レイヴィス 「さっきからずっと、腕をさすってる」
吉琳 「あっ……」
寒さからの何気ない仕草だったけれど、
レイヴィスに心配をかけたくなくて咄嗟に手を止める。
そんな私を見て、レイヴィスは小さく息をついた。
レイヴィス 「お前のそういうとこ、放っておけない」
そう言ったかと思うと、レイヴィスは自分の上着を脱いで私にかけてくれた。
レイヴィス 「着てなよ」
吉琳 「だ、だめだよ。これじゃ、レイヴィスの身体が冷えちゃう」
レイヴィス 「俺は平気だから」
吉琳 「でも……」
レイヴィス 「だったら、こうさせて」
レイヴィスが私の肩に腕を回し、そっと抱き寄せる。
そして、胸を高鳴らせた私を見下ろして余裕の笑みを浮かべた。
レイヴィス 「せっかく教会にいるんだし、愛でも誓っておく?」
吉琳 「……っ!」
レイヴィスの思わぬ言葉に顔が熱くなり、つい口ごもってしまう。
吉琳 「レイヴィスが……そうしたいなら……」
照れくさくて曖昧に答える私を、レイヴィスはまっすぐに見つめた。
レイヴィス 「誓いたい」
熱を持つ私の頬を、レイヴィスの長い指が撫でていく。
レイヴィス 「俺は、吉琳を愛してる」
レイヴィス 「吉琳も……俺を好きって言って」
レイヴィス 「吉琳の気持ちを聞かせてほしい。扉が開くまで、ずっと」
ねだるような言葉さえ甘くて、二人きりの時間を特別に感じてしまう。
囁いた分だけ囁かれ、ステンドグラスの下で愛を交わし合った…―

……
翌日、私はレイヴィスが視察中に滞在している屋敷へと来ていた。
(昨日は大変だったけど……夜になったら無事に外へ出ることができて良かった)
(閉じ込められても不安じゃなかったのは……レイヴィスが一緒にいてくれたおかげだよね)
お礼を言わなきゃ、と考えながら、
私は使用人の後について、レイヴィスの部屋へと向かった。
(レイヴィス、まだ寝てる……?)
恋人だから、ということでレイヴィスの部屋に通してもらえたけれど、
レイヴィスはまだベッドに横たわったままだった。
(昨日のお礼を言いたかったけど……後での方がいいよね) 「また来るね」
一応、小声で声をかけて椅子から立ち上がろうとした時……
レイヴィス 「……寝てない……起きてる……一応」
くぐもったレイヴィスの声が聞こえ、様子を伺う。
軽く身を起こすと、レイヴィスは私にそっと手招きした。
レイヴィス 「悪いな、せっかく来てくれたのに」
吉琳 「ううん……そんなことより、大丈夫?」
吉琳 「もしかして、昨日私に上着を貸してくれたから、風邪を引いてしまったんじゃ……?」
レイヴィス 「関係ない……少しだるいだけ」
レイヴィス 「吉琳の顔を見たら元気出たし、本当に平気だから」
いつもより甘えたような緩い笑みを見せられ、何も言えなくなってしまう。
それでも不安を拭えず、レイヴィスの体温を確認しようと額に手を伸ばした。
吉琳 「もしかしたら熱があるかも……」
レイヴィス 「そうかな。それじゃ、お前が測ってみて」
吉琳 「……っ」
触れかけた手を引かれ、抱き締められる。
レイヴィス 「どう? 熱、あった?」
吉琳 「こ、これじゃわかんないよ……!」
レイヴィスが触れている部分全てが、熱くなるのを感じる。
それが、風邪によるものなのか、そうじゃないのか、もう私にはわからなかった。
顔を赤くする私を見ながら、レイヴィスはふっと笑みをこぼす。
レイヴィス 「風邪は大袈裟だと思うけど……」
レイヴィス 「俺が心配なら、このまま側にいて」
レイヴィス 「……吉琳を抱き締めてると安心するから」
普段とは違って素直なレイヴィスの言葉に、心が支配されてしまう。
吉琳 「少しだけ……だよ」
少しで済むはずなどないのは分かっていながら、
レイヴィスの望むようにぬくもりを分け合った…―

日版王宮 收集活動-合集: 2019年

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20191215~20191226

Share of Happiness~愛しい彼と同じ瞬間を~

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愛しい彼と寄り添うなかで、積み重ねた想いや時間……
共有する喜びが、ふたりの心を満たしていく…―
アラン「そうすれば、俺たち以外の誰にも使われないだろ」
アラン「わかったよ。一緒に、な」
ルイ「こうすれば、温かいでしょ」
ルイ「ただ手を繋いで歩いているだけの時間も……好き」
ゼノ「二人きりの時間を過ごしたい。誰の目も届かない場所でな」
ゼノ「共に、多くの時を重ねていこう」
アルバート「これなら二人とも温かい。どうです? 文句はないでしょう?」
アルバート「そんなことをされると、我慢ができなくなってしまいます」
レイヴィス「これでもう、はぐれる心配はないんじゃない?」
レイヴィス「それじゃあ、いつでもこの景色を眺められるようにしてあげる」
どんな喜びも、幸せも、
彼と分かち合うことができるのは、あなただけ…―

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【50個特典】アルバートの特典ストーリー

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襟足を冷たい冬の風が撫でる、休日…―
クリスマスが近づくシュタインの街を、私は恋人のアルバートと歩いていた。
(なんだか少し寒くなってきたな……)
デートも終盤を迎え、空に闇が広がると空気がぐっと冷えて来て、
私はコートの上からそっと腕をさすった。
通りを吹き抜ける木枯らしに、たまらずくしゃみが出てしまう。
アルバート 「まったく……あれほどマフラーを貸しましょうかと言ったのに」
アルバート 「今からでも遅くありません。これを使ってください」
心配と、私を想っての怒りがないまぜになった口調で言い、
アルバートは自分のマフラーを首から外して、私に差し出した。
吉琳 「そんな、大丈夫です」
アルバート 「大丈夫ではないでしょう。鼻の頭が赤くなっていますよ」
吉琳 「……それに、私がマフラーを借りると、アルバートが寒くなってしまいますし」
アルバート 「一国のプリンセスともあろう人が、一介の騎士に遠慮してどうするんですか」
(……アルバートに呆れられちゃったかな)
吉琳 「ごめんなさい……」
アルバート 「い、いえ! 決して責めているわけでは……!」
アルバート 「あなたが心配なので、つい……すみません」
眼鏡の奥のまつ毛が、申し訳なさそうに伏せられたけれど、
それでもアルバートは、マフラーを私の首元に掛けた。
アルバート 「俺は鍛えていますから、これくらいの寒さは平気です」
吉琳 「アルバート……」
(いくら鍛えていても、この寒さは……)
掛けられたマフラーを取ろうとすると、手で制されてしまう。
アルバート 「そのままで。私のことは気にしないでください」
吉琳 「でも……」
そう言い淀んだとき、ふと私の背後に視線を向けたアルバートの瞳が一瞬見開いた。
アルバート 「なるほど……ああいう方法もあるのか」
独り言のようにそう言ったアルバートは、再び私に目を向ける。
アルバート 「あなたの意見はわかりました。では、こうしましょう」
言葉と同時に身体を引き寄せられ、温もりをすぐ傍に感じる。
アルバートは、私の首に掛けていたマフラーを一度ほどき、自分の首にも一緒に巻きつけた。
吉琳 「!」
アルバート 「これなら二人とも温かい。どうです? 文句はないでしょう?」
吉琳 「そうですね、でも……恥ずかしいです」
どこか得意げに言われて何とか返事をするけれど、頬に熱が集まるのを止められない。
瞳を瞬かせるアルバートの頬も、だんだんと赤く染まり始めた。
アルバート 「こ、これは……! 向こうの通りを歩いていたカップルがこうしていたので」
アルバート 「効率的だと思い、彼らにならったのですが……あなたが嫌ならやめます」
慌てたように言ったアルバートは、マフラーを取ろうと手をかけてしまう。
吉琳 「待ってください……!」
抱き着くように、その腕をギュッと握った。
吉琳 「嫌だなんて、そんなわけないです」
(恥ずかしいけど、嬉しいから……)
気恥ずかしくてアルバートの顔を見ることができないまま、沈黙が落ちる。
アルバート 「吉琳……あまり可愛い反応はやめてください」
アルバート 「そんなことをされると、我慢ができなくなってしまいます」
吉琳 「え……?」
吐息と共に漏らされた声がよく聞き取れず、顔を上げる。
アルバートは眼鏡をすっと押し上げると、私から視線を逸らした。
アルバート 「いえ、なんでもありません。それより……」
アルバート 「目を閉じてください。えっ……『何をするか』ですか?」
アルバート 「それは……目を閉じてくださったら分かります」
(アルバート……?)
不思議に思いながらも目を閉じた直後、唇に柔らかな感触を覚える。
照れ屋な彼からの突然のキスに胸が甘くざわめいた。
(もしかして、これって……)
目を開くと、視界いっぱいにアルバートが映る。
吉琳 「このキスは、クリスマスプレゼントですか?」
アルバート 「なっ……違います! プレゼントは他にちゃんと用意をしていますよ」
アルバート 「あっ……」
ハッと口に手を当てたアルバートが、悔しそうな顔をする。
(私のために、色々考えてくれているんだ……)
吉琳 「当日を楽しみにしていますね」
吉琳 「でも……じゃあ、今のキスは?」
問いかける私に、アルバートは眼鏡の奥の瞳を柔らかく細めた。
アルバート 「俺が今どれだけ幸せなのか、あなたに知ってもらいたかっただけです」
アルバート 「俺は言葉を飾るのが苦手なので、ああするのが一番伝わると思いまして」
吉琳 「……はい、アルバートの心をとても近くに感じました」
幸せを噛みしめるように、巻かれたマフラーにそっと手を添える。
(私も今、すごく幸せ……)
吉琳 「だけど……」
吉琳 「暖かくなったらこうして一緒にマフラーを巻くことはできないですね」
アルバート 「確かにそうですが、他に方法はいくらでもありますよ」
アルバート 「手を繋いだり、先ほどのようにキスをしたり……」
照れながらもそう伝えてくれたアルバートの言葉に、
胸の中にあった寂しさが溶けていく。
(季節が変わっても、ずっとアルバートと一緒にいたいな)
アルバート 「こうして二人でマフラーを巻いていると、一人の時より暖かく感じます」
吉琳 「不思議ですね」
ふわりと弧を描いた唇に彼の想いが滲んでいるようで、心が温かくなる。
きらめく星空が広がる街の片隅で、私達は微笑みを分け合うのだった…―

 

【220個特典】レイヴィスの特典ストーリー

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音もなく雪が舞い降りる、ある夜のこと…―
フレイ地区に視察に来ていた私は、公務の後、レイヴィスと共に街を歩いていた。
吉琳 「いつもよりも通りが賑やかだね」
レイヴィス 「この時期はクリスマスマーケットが出てるから」
レイヴィス 「吉琳も気になる露店があったら覗いてみれば?」
吉琳 「うん、今の時期しか買えない物もあるしね」
思わず声が弾んでしまったのは、シュタインにいるレイヴィスとは頻繁に会えるわけではなく、
こうして同じ景色を見て、一緒に街を歩いているだけでも嬉しいからだった。
(こういう何気ない時間を一緒に過ごせることが幸せだな)
そうして二人で歩いている途中で、スノードームを売る露店が目に留まる。
吉琳 「あ……」
思わず声をあげた私を見てレイヴィスが笑う。
レイヴィス 「見たいの?」
吉琳 「うん」
小さく頷くと、レイヴィスは私の背中に手を添えて露店へとエスコートしてくれた。
私はスノードームを手に取り、透明な球体の中に広がる、白い雪に染まった街を見つめる。
吉琳 「綺麗……」
レイヴィス 「それ、フレイ地区の街並みを再現してるんじゃない?」
一緒にスノードームを覗き込んだレイヴィスの言葉を聞き、さらに覗き込んでみた。
吉琳 「あ、本当だ……」
小さなドームの中に、今まさに私たちが歩く街並みが精巧に再現されている。
(レイヴィスが治めている街のスノードーム……いつでも見られるように部屋に飾っておきたいな)
そう思ったけれど、すぐに別の想いがよぎる。
(でも、会えない間にこれを見ると余計レイヴィスが恋しくなるかもしれない)
(……やっぱり買うのはやめておこう)
レイヴィス 「気に入ったなら、買ってあげようか?」
吉琳 「ううん……大丈夫。ありがとう」
レイヴィス 「…………」
名残惜しい気持ちを抑え、スノードームの露店を離れる。
その後も、可愛い雑貨に目を奪われながらマーケットを歩いていると
隣にいたはずのレイヴィスがいないことに、ふと気がつく。
吉琳 「え……あれ?」
焦って周囲を見渡していると、後ろから肩に手を置かれ……
レイヴィス 「安心しなよ、ここにいるから」
吉琳 「良かった……」
胸を撫で下ろした私の手をレイヴィスがそっと取り、指を絡ませて微笑む。
レイヴィス 「これでもう、はぐれる心配はないんじゃない?」
指先から温もりが伝わってきて、胸の奥に淡い火が灯った。
(レイヴィスの手、温かいな……)
繋がれた手に胸を高鳴らせていると、レイヴィスがどこかへ誘うようにその手を軽く引く。
レイヴィス 「連れて行きたい場所があるんだけど」
(連れて行きたい場所……?)
…………
クリスマスマーケットを後にして、レイヴィスに連れられてやって来たのは、
フレイ地区一帯が見下ろせる高台だった。
吉琳 「わ……真っ白で綺麗。こんな場所があるなんて、知らなかった……」
レイヴィス 「俺のお気に入りの場所」
純白に染められた美しい景色に目を奪われていた私は、ふいにあることに気づく。
(あれ? この景色……初めて見るはずなのに、どこかで見たような気がする)
そう思い記憶を辿っていくと、
目の前の景色が、露店で見ていたスノードームの中の小さな街並みと重なった。
吉琳 「あ……」
思わず驚きの声が出て、レイヴィスがふっと目を細める。
レイヴィス 「気づいたんだ? ……この景色、お前に見せたかった」
吉琳 「私たちもスノードームの中にいるみたいだね。……このままずっと眺めていたいな」
(レイヴィスと一緒に……)
胸の奥でそんなことを考えていると、レイヴィスがいたずらっぽい表情をして……
レイヴィス 「それじゃあ、いつでもこの景色を眺められるようにしてあげる」
吉琳 「え? どうやって……」
目を瞬かせる私の目の前で、レイヴィスは何かを包み込むように両手を合わせる。
ゆっくりとその手が開かれると、そこには先程見ていたスノードームがキラキラと輝いていた。 「これ……!」
(もしかして……マーケットで姿が見えなくなっていた時に買ってきてくれたの?)
目を丸くする私に、レイヴィスはそれを手渡してくれる。
そして、同じものをもうひとつ取り出し、自身の手のひらの上に乗せた。
お互いのスノードームを、寄り添うように並べてみると
まるで高台から見えるこの雪景色を閉じ込めて、私たちだけのものにした感覚になる。
レイヴィス 「ウィスタリアに帰っても……」
レイヴィス 「このスノードームを見て、今日、二人で眺めた景色を思い出して」
レイヴィス 「それから……俺も同じ景色を見ているんだってことも」
レイヴィス 「……お前を想いながら」
私の寂しさをすくい上げてくれるようなレイヴィスの言葉に、胸が震えた。
(これを見たら、余計に寂しくなると思っていたけれど……違う)
(私がスノードームを覗いている時、)
(遠く離れたところでレイヴィスも同じものを見ている、と思えば……)
(すごく、温かい気持ちになる)
優しい心遣いが嬉しくて笑顔になった私を、レイヴィスはそっと抱きしめ…―
レイヴィス 「プリンセス……お前を愛してるよ」
レイヴィス 「いつ、どこにいても。それだけは忘れるなよ」
耳元で囁かれた声が、甘く心の奥底まで沁み込んでいく。
(私も……離れていても、いつだってレイヴィスのことを想ってるよ)
私はそんな気持ちを伝えるように、レイヴィスの背中にそっと腕を回した…―

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