◆シンデレラガチャ◆(シド◆ガチャシート

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彼目線のサイドストーリー

 

【続編】

◆愛の続き《本当の強さ》

◇愛のカタチ~プリティ〜《全てが愛しい》

◆愛のカタチ~ロイヤル〜《幸せの形》

 

 

 

 

【続編シート】

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愛の続き『本当の強さ』

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自分の過ちに気づき、シドは吉琳の元に向かった。そして…―
吉琳 「私、シドに謝らなきゃいけないの」
シドを見つめながら、吉琳が決意するように唇を開いた。

(謝る?)

意味が分からず、シドは眉根を寄せる。
シド 「何をだ? お前が謝ることなんて何もねえだろ」
吉琳 「あるの」
吉琳は深呼吸をすると、ゆっくりと話し始めた。
吉琳 「……私、シドの力になれてるつもりだった。でも、全然足りなかったって気づいたの」
吉琳 「出会った時、シドは情報屋だったけど、グランディエ家できちんと教育を受けてきたんだよね」
シド 「……」
吉琳 「私はプリンセスになったばかりで、まだまだ勉強が必要だったのに」
吉琳 「シドを支えられると勘違いしてた」
そう打ち明けた声はか細かったが、膝の上に置いた両手をぎゅっと握った瞬間、
意思を強めた瞳が凛としてシドを捉えた。
吉琳 「でも今から努力してシドに相応しい王妃になるから……」
吉琳 「それまでは今までみたいに負担をかけてしまうと思うけど」
吉琳 「どうか、私の側にいてください!」
吉琳が胸に秘めていた想いは、あまりに純粋で、
その心は、どこまでも綺麗で眩しかった。

(考えてたのは……そんなことかよ)
(こいつの事なら何でも知った気になってたが、違ってたみてえだな)

シド 「くっ……」
堪え切れず、笑い出すと吉琳は驚いたように目を瞬いた。
吉琳 「えっ、どうして笑ってるの?」
シド 「お前って、ほんとに……馬鹿がつくほど真面目だな」

(自分自身と真っ直ぐ向き合ってるお前を見ると)
(外面を繕うことが、馬鹿らしく思えてくる)
(次期国王候補として相応しくなきゃいけねえのは確かだが、必要以上に気負ってたのかもな)
(こいつとずっと一緒にいるためには、絶対に国王にならねえとって……)
(必死になってたのかもしれねえ。俺自身、気づいてなかっただけで)

笑い続けるシドを見て、吉琳も少しだけホッとしたように言い返してくる。
吉琳 「もう、馬鹿なんてひどいよ」
吉琳 「シドが色々教えてくれない理由を自分なりに真剣に考えたのに」
シド 「で、出した結論が『自分の力不足』なのか?」
吉琳 「うん……だって、それ以外に考えられなくて」
落ち込んだように本に視線を落とした吉琳に、シドは呆れつつも優しい視線を送る。

(俺がお前を守りたいと思ってることなんて、想像もしてねえのかよ)

シド 「馬鹿。それ以外の答えはいくらでもあるだろうが」
吉琳 「分かんないよ。シドが何を考えてるか、前よりは分かるようになったつもりだけど」
吉琳 「元情報屋だから、隠すのは得意だろうし」
吉琳 「今も一人で次期国王として認められるために、色々と動いてるんでしょ?」
その言葉に、シドはわずかに目を見張った。
シド 「……聞いたのか」
吉琳 「うん。でも全部教えてくれたわけじゃないよ」
吉琳 「ジルは、シドのことで悩んでいた私に、信じるよう言ってくれただけだから」
そう説明しながらも、吉琳の言葉にはジルへの気遣いが溢れていた。

(吉琳に黙ってろっていう約束を、ジルに破らせたことを気にしてんのか)
(そういやアイツも、吉琳に秘密を作ることをずっと気にしてたよな)
(こいつも、ジルも。俺の周りはお節介なヤツだらけだ)
(……けど、嫌な気分はしねえ)

シド 「そうか。なら、少しはアイツに感謝しねえとな」

(面倒なヤツに借りを作っちまったけどな)

そう心の中で憎まれ口を叩きつつも、そのおかげで吉琳と心がすれ違わずに済んだことに、
ホッとしている自分がいるとシドは気づいていた。
吉琳 「話して欲しいの。私のことを信じてくれるなら」
吉琳の澄んだ瞳がシドを真っ直ぐに見つめる。

(一人で動いていたのは、証明したかったからだ)

自分は次期国王としてふさわしい、吉琳を守れる男なのだと。

(その想いが、いつの間にか……)
(何があろうがこいつの側にいたい、汚い世界から守ってやりてえ)
(そんな想いに変わって、固執しちまってた)
(……いつから俺は、こんな風になっちまったんだか)

自分の弱さに気づき、思わずシドは自嘲する。

(けど、こいつは……それでも一緒にいたくなる、)
(どうしようもなく惹かれちまう女なんだ)

自分の心と向き合うと、どこかこそばゆい気持ちになる。
だがその瞬間、頑なだった心が自然と解け、素直な気持ちが唇からこぼれていた。
シド 「お前に話さなかったのは、汚え世界を見せなくなかったからだ」
たとえわずかでも笑顔を曇らせたくないと思うほどに、
シドにとって吉琳は大切な存在になっていた。
シド 「……ただ、お前を守りたかった」

(それともう一つ)
(早く国王として認められてお前と結ばれたかった)
(……こっちの理由は、死んでも言ってやらねえけどな)
(男ってのは、惚れた女の前では、格好つけたい生き物だ)

だからこんなにも恋焦がれていることを、吉琳には秘密にしておきたかった。
吉琳 「それが話してくれなかった、本当の理由?」
吉琳の問いに、シドは静かに頷く。
シド 「俺が背負って、一人で解決すりゃいいと思ってた」
シド 「初めての、大事な女だからな」
口にすると、想いが一層強まった気がした。
シド 「そういう訳で、お前の力不足でもなんでもねえ」
シド 「二度と、そんな風に自分を責めるんじゃねえぞ」
シドを真っ直ぐに見つめる瞳は、その純粋な心を表すように澄んでいる。
吉琳 「この国を、シドと二人で良くしていきたいって思いは」
吉琳 「シドに想いを伝えた時から変わらないよ」
吉琳 「だから、もっと私を頼って……」
吉琳 「これは二人で乗り越えていく問題だから」
大切そうに、一つひとつ言葉を紡ぐ吉琳の瞳が、涙で覆われていく。
シドを想って流れるその涙は、
シドにとってこの世の何よりも美しく見えた。
シド 「分かった。もう二度と隠し事はしねえ」
シド 「約束してやる」

(だから、もう泣くな)
(みっともねえ顔で、俺の隣を歩くんじゃねえよ)

そっと、吉琳の涙を拭う。
シド 「やっぱり……大人しく守られるだけの女じゃねえか」
シド 「お前ほどイイ女は見たことねえ」

(強さと優しさを持ったお前が……)
(俺のことで一生懸命になるお前が、可愛くてたまらねえ)

自覚していたより、ずっと吉琳のことを愛していることに改めて気づかされ、
その想いを伝えるように、優しく唇を重ねた。
吉琳 「ん……」

(守りたいものが出来たからって、弱くなるわけじゃねえ)
(どんな問題も、一緒に乗り越えて行きゃあいいだけのことだ)

吉琳に気づかされた想いが、シドの胸を奮い立たせていた…―

 


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愛のカタチ~プリティ〜『全てが愛しい』

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過去を思い出すように、揺れていた吉琳の瞳がゆっくりとシドへ向けられた…―
吉琳 「シド……、私は王妃としてシドの役に立ててる?」
ひたむきな眼差しに、シドは目を細める。

(そういう真面目なとこ……出会った頃から変わらねえな)

季節が移ろい、年を重ねていく中で、人は自分でも気づかないうちに少しずつ変化していく。

(特に、俺の見てきたヤツらは悪い方にばかり変わっていった)
(けど、お前は……)

何年経っても、ひたむきでただ真っ直ぐな吉琳を見ていると、
何年、何十年先も、今と同じようにシドの隣で笑う吉琳の姿が容易に想像出来る。

(……こんな気持ちになるなんてな)

胸を締めつけるのは、紛れもない幸福感だった。

(王妃として役に立ててるか、なんて決まってんだろ?)
(お前は王妃の役割以上に、俺を支えてる)

シド 「当たり前だろ」
シド 「お前は俺の最高の后で……最高のパートナーだ」
シド 「お前は誰よりも国民のことを考えてる。そういう意見は貴族からは出てこねえ」
シド 「だから公務を進める上で、お前の意見は貴重なんだよ」
吉琳 「シド……」
無邪気に喜ぶ吉琳に、シドは笑顔を返す。

(こいつ……ほんとに無自覚だよな)
(俺にとって、お前がどれだけ特別で、大切で、でかい存在なのか)
(少しもわかってねえんだからよ)

もし誰かに、吉琳の悪いところを一つだけ挙げろと言われたら、
きっと、こういうところを挙げるだろうとシドは思う。

(ったく、どうすりゃ伝わるんだか)

内心、苦笑してしまうものの、胸に湧き上がってくるのは、どうしようもなく甘い感情だった。

(思えば、くだらないちっぽけな悩みなのかもしれねえが……)
(こんなことで悩めること自体、俺だけの特権だと思うと、結構気分がいいもんだ)

シド 「……にしても、前の俺たちなら考えられねえよな」
シド 「ベッドの上で、公務の内容を確認し合ったり、意見を言い合ってるなんてよ」
シド 「これまでは、お前を可愛がる場所でしかなかったってのに」
そう言うと、吉琳の頬が淡く染まっていく。
吉琳 「もう、ベッドは寝るところでしょ」
シド 「あ? 今さら何とぼけたこと言ってんだ」

(事実を言ってるだけなのに、何照れてやがる)
(まあ、その照れた顔がいいんだがな)

赤くなった顔を隠すように俯く吉琳を見つめ、シドは笑みを深めた。
シド 「ほとんど毎晩、俺に可愛がられてるくせによ」
吉琳 「そ、そうだけど……」
別の話題を探しているのか、吉琳はわざとらしく目を逸らす。

(ああ……こいつの悪いとこ、もう一つあったな)
(こういうムードをすぐ避けようとするとこだ)
(王妃としての成長は申し分ねえが、俺としちゃ、もう少し積極的になって欲しいもんだ)
(けど、まあ……妻の教育をするのは夫の務めだしな)

シドは企むように、目を細めた。
シド 「言葉は正確に使わねえとな」
わざと声を低めて囁くと、吉琳が小さく肩を震わせる。
シド 「それはそうと、寝る前の日課が、お互いの公務の報告会なんて色気の欠片もねえから」
シド 「おかげで、こっちは雰囲気づくりに苦労してんだが……」
シド 「それについて、お前の意見を聞きてえもんだ」
吉琳の髪を梳くように撫でた指先を、耳元にたどらせていく。

(お前の身体は、もう知り尽くしてんだ)
(こうすりゃ、何も言えなくなるってこともな)

吉琳 「っゃ……」
シド 「くっ……、まぁ、お前が感じやすいおかげで、そこまで苦労はねえか」
耳の形に沿って、指を動かすだけで吉琳は真っ赤になって唇を噛み締めている。
吉琳 「……ん……シド、やめてって……」
与えられる感覚に呑まれそうになりながらも、吉琳は抵抗を試みる。
吉琳 「サフィール国のことを勉強しなきゃ!」
吉琳 「さっき、読んで聞かせるって約束したでしょ?」
吉琳はなんとかシドの胸を押し返し、膝の上に置いていた書類を読み始めた。
吉琳 「サフィール国はウィスタリアよりも南に位置する。1年中、温暖な気候で」

(すっかり勉強モードか)
(けど、簡単に逃げられたなんて、思わねえほうがいいぞ)

吉琳 「観光事業にも力を入れており……、あっ」
読んでいる途中で、シドは書類を奪い取る。
シド 「……わりいな。勉強は後だ」
吉琳 「え?」
シド 「お前に触れたくなっちまった」

(こっちは、もう止まれねえよ)

吉琳 「さ、さっきは公務の話は色気がないって……」
シド 「そういう気分になっちまったんだから仕方ねえだろ」
シド 「それに、俺のせいじゃねえよ」
シド 「……お前が、可愛い顔見せるからだろ?」
掴んだ腕を引き寄せ、唇を塞ぐ。
吉琳 「ん……っ」
ゆっくりと視線が交わると、そこには吉琳の甘く潤んだ瞳があった。

(こいつのこんな顔を見られる男は、俺だけだ)

シド 「吉琳、これからも俺の側にいろ」
吉琳 「うん……一生、シドの側にいさせて」

(もしまた問題にぶつかったとしても、俺たちは大丈夫だ)

寄り添い合う二つの心は、何があっても決して揺らがないと、シドは信じて疑わなかった。
絡み合うお互いの指にはめられた『永遠の幸せ』の名をもつブルー・エトワールが、
窓から差し込む夕日を反射させ、虹色に輝く。
その美しい光が、シドを見つめる吉琳の瞳にも映っていた。

(……らしくもねえが)
(『永遠の幸せ』ってもんを信じてみてもいいかもな)
(こいつと一緒なら……)

馬車の中、キスを交わす二人の影は、いつまでも重なっていた…―

 


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愛のカタチ~ロイヤル〜『幸せの形』

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婚姻式の様子が描かれた絵画の下、シドはニヤリと笑みを浮かべ、吉琳の唇を塞いだ…―
吉琳 「んっ……」
ゆっくりと唇を離し、シドは目を細める。
シド 「……お前のことは誰にも渡すつもりはねえ」
吉琳の耳元で囁いたシドは、ライアンに顔を向けると、どこか得意げに言う。
シド 「悪いな。もうこいつは俺のもんって決まってんだ」

(子ども相手に、みっともねえと言われたっていい)
(大人げないとわかっててもムキになっちまうくれえ……こいつに惚れてんだ)

シド 「お前は、お前だけのプリンセスを見つけろ」
シドの腕の中からライアンが無邪気に訊ねる。
ライアン 「ぼくのプリンセス?」
シド 「ああ、そうだ」

(こいつにも、心から守りたいと思える相手が現れる)
(後腐れねえ色ごと以外はごめんだと思ってた俺の元にすら)
(吉琳が現れたんだからな)
(まあ、子どもにはまだ分からねえだろうが)

確信めいたものを感じながら、シドはライアンの未来に想いを馳せた。
クロエ 「わたしにも、おとうさまみたいなつよい王子さまが見つかる?」

(こいつは吉琳に似て、真面目で真っ直ぐだ)
(きっと立派なプリンセスになって、最高のパートナーを見つけるだろう)

シド 「ああ、大きくなったらきっとな」
シド 「なあ、吉琳?」
吉琳 「……っ」

(俺のもんだってことは、もう何度も伝えてんのに、まだ照れてやがるのか)
(こういうとこが、吉琳の可愛いところでもあるが……)
(いつまでも赤くなってねえで、可愛いプリンセスに何か言えよ)

そう苦笑しながら、胸に浮かんだのは過去の思い出だった。

(出会ったばかりの頃の吉琳は)
(世辞にもプリンセスに相応しいとは言えねえ女だった)
(けど、会うたびに成長していく、こいつに驚かされた)
(それだけじゃねえ……)

その変化に驚くと同時に、心惹かれていったことを思い出す。

*****
シド 「抵抗しないのか」
吉琳 「きっとシドが寂しがるから、このままでいておく」
シド 「言うようになったじゃねーか」
*****

(いつの間にか、お前の存在が心の奥深くに入り込んでた)

そして、シドがそれまで知らなかった感情を教えてくれた。

(吉琳のことを好きになったばっかの頃は、我ながらどうかしてると思ったが……)
(今思うと、こいつのことを好きにならないわけがねえ)

胸を満たす思い出に、シドは目を細めた。

(この俺が、誰かに本気で惚れちまったことを)
(素直に認めたくなかっただけなのかもしれねえな)

吉琳を想うだけで、自然と湧き上がる気持ちのままに、
頬を染め立ち尽くしている吉琳に、シドはもう一度キスをした。
その時…―
??? 「いいかな、二人とも……」
遠慮がちな声が聞こえて振り返ると、そこにはアーレンス大公が立っていた。
ライアン 「おじいさまー!」
クロエ 「来てくださったのね!」
クロエと、シドの腕から降りたライアンが駆けていく。
その光景に、一瞬、息をすることすら忘れて見入った。

(……これが、俺の家族なんだな)

吉琳と出会わなければ、一生知ることのなかった尊い感情が、
シドの胸に込み上げる。

(こんなこと言うのは俺のガラじゃねえが、この感情を表す言葉は……)
(『幸せ』しか知らねえな)

二人に抱きつかれたアーレンス大公と、シドの視線が交わる。
アーレンス大公 「孫の顔が見たくなってな。だが、声をかけるタイミングが悪かったようで、すまない」
シド 「こっちこそ、気づかなくて悪かったな」
当たり前のように目の前にある幸せと、
吉琳との思い出にすっかり浸っていたことに苦笑する。

(キスの一つや二つ、俺は見られても構わねえが)
(吉琳はますます恥ずかしがってんだろうな)

案の上、吉琳は熱を帯びたままの顔を隠しながら、アーレンス大公に挨拶をする。
吉琳 「こんにちは。ようこそいらっしゃいました……」
そんな吉琳の気も知らずに、クロエがワクワクした様子で大公を見上げた。
クロエ 「おじいさま、なにを持っていらっしゃるの?」
アーレンス大公 「お前たちへのプレゼントだ」
新しい絵本に、クロエとライアンが歓声を上げる。
ライアン 「よんでよんで! はやく!」
クロエ 「わたしたちの部屋にいきましょう」
アーレンス大公 「はは、二人は絵本が大好きだな」
クロエとライアンに引っ張られながらアーレンス大公はシドと吉琳に笑みを向けた。
アーレンス大公 「子どもたちはしばらく私が見ているから、二人きりの時間を楽しんでくれ」
シド 「それは、ありがてえな」
シドは吉琳の腰を引き寄せ……、
吉琳 「子どもたちをお願い致します」
二人は寄り添いながら子どもたちを見送った。

(二人きりか)
(昼間にこんな時間が出来んのは久しぶりだな。さて、何をするかな)

考え出せばきりがなく、様々な事柄が頭の中に浮かんでは消えていく。
気持ちを持て余しながらベッドの端に座ると、吉琳も隣に腰を下ろした。
吉琳 「ふふ、クロエもライアンもおじい様が大好きね」
シド 「そうだな。少し、はしゃぎすぎだが」
吉琳 「アーレンス大公も二人を可愛がってくださるし、嬉しい」
吉琳 「今日はどんな絵本を持って来てくださったのかしら」
シド 「そんなに興味あるのか?」
吉琳 「うん。城下にいた時はよく子どもたちに読み聞かせをしてたから」
ふと、吉琳が懐かしそうに目を細める。
シド 「……何考えてるんだ?」
吉琳 「ちょっと昔のことをね。教え子たちは、今どうしてるんだろうって……」
吉琳 「最近、城下になかなか行けてないから」
シド 「気になるなら、今度会いに行けばいい」
吉琳 「うん、そうだね」
つぼみが綻んだような吉琳の笑顔につられ、シドも微かな笑みを浮かべる。

(子どもの話をしてる時のこいつは、ホント楽しそうな顔しやがる)
(けど、親父がせっかく気を利かせてくれたんだから)
(この時間は有意義に使わねえとな)

シドは頷いた吉琳に、顔を近づける。
シド 「……てことで、子どもの話は終わりだ」
吉琳 「え?」
そっと肩を押し、どさりとベッドに倒れた吉琳の上に覆い被さった。
シド 「ここからは大人の時間だ」
そう言うなり、可憐な唇に温もりを重ね、
舌先を忍び込ませると、触れ合う唇の隙間でくすぐった。
吉琳 「……ん、ん……っ」
キスをしたまま、吉琳の脚を撫でながらドレスの裾をたくし上げていく。

(いっそのこともう一人、家族を増やすのもいいかもな)

そんなことを考えながら、シドは目の前の愛しい存在に浸っていく。
幸せというのは、形がない。
だが、目に見えないその存在を、シドは何の疑いもなく受け入れていた。

(こいつといると心が満たされる)
(信じる理由は、それで充分だ)

気負うことなく、安らげる場所が確かに今ここにある。
吉琳にとっても、そうであることを願いながら……
確かな幸せで、シドの胸は満たされていった…―



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    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()