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Royal Prince Stage~わたしだけのアイドル~[前編](クロード)

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――…いつも100プリを愛してくれるプリンセスたちに、感謝を込めて…
3周年記念シナリオイベントでは、王子様たちがアイドルになって登場…!
気になるストーリーは……?
――…芸能事務所『Wistein(ウィステイン)』に所属する、大人気アイドルたち
今をときめくアイドルとあなたの関係は…?
………
――…シドとクロードの専属スタイリストになる…?
クロード 「頼もしい返事だな」
シド 「返事はな。ま、骨はあるほうなんじゃねえか?」
吉琳 「…それより、二人ともそろそろ服を着てください」
………
歌にモデルに演技に大活躍な彼らとする、秘密の恋のストーリー……
あなたはどのアイドルと恋をする…――?

 

*之前復刻時,因為這裡的吉爾太可愛了,所以存。

 

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プロローグ:

――…煌めく星が夜を明るく照らす頃
アイドル事務所『Wistein』主催で開かれるコンサートの会場には、多くの女性が集まっていた。
??? 「みんなー、今日は来てくれてありがとう!」
キラキラと輝き始めたステージの上、
そこに12人のアイドルたちが立ち並び、歓声が沸き起こる。
アラン 「バーカ、そんなに騒がなくても聞こえてる」
カイン 「最初からこのテンションじゃ、夜は越せねえぞ」
ノア 「みんな、今日は最後までついて来てくれるかなー?」
ルイ 「声援ありがとう。…嬉しい」
ジル 「それにしても…ここからだと集まった皆さんの顔がよく見えますね」
クロード 「ああ。顔もだがうちわもよく見えるな」
レオ 「あそこの派手なうちわは… 『手を振って』って書いてあるのかな?」
レオ 「そんな可愛いお願いなら、いくらでも聞くよ」
シド 「『罵って』ってうちわも見えんな」
シド 「そのお願いも叶えてやろうか?」
アラン 「…今の言葉に歓声が上がんの、おかしいだろ」
アルバート 「それより俺は、『ゼノ様至上主義』といううちわが気になります」
アルバート 「この会場にはゼノ様を慕う者がたくさんいるようですね。」
アルバート 「さすがです、ゼノ様」
ゼノ 「…そうか」
ゼノ 「皆の声は確かに受け取った。今夜は楽しんでいってほしい」
ロベール 「そろそろ時間みたいだね」
ロベール 「12人揃っての一夜限りのコンサートを始めようか」
ユーリ 「今夜は俺たちが、みんなに最高の時間をプレゼントするよ!」
彼らは、今をときめく人気アイドル。
この中で、あなたの視線を釘づけにするのは誰…――?

 

どの彼と過ごす…?

>>>クロードを選ぶ

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第1話:


――…柔らかな陽差しに、清々しい風が吹く朝
私は今日もシドさんとクロードさん…
二人のアイドルの専属スタイリストとして、慌ただしく動いていた。
クロード 「吉琳、次の雑誌の撮影で着る服はこれか?」
吉琳 「はい! そっちのアクセサリーも一緒につけてください」
シド 「おい、この服ほつれてる」
吉琳 「えっ?」
振り向くと、シドさんの持つシャツの袖から糸が出ていた。

(ほんとだ…ショップの人に確認したのに)

吉琳 「すみません、今直します…!」
シド 「お前にできんのかよ?」
吉琳 「はい、一通り習っているので」
クロード 「へえ、やるな吉琳」
吉琳 「あんまり難しいことはできないですけどね」
鞄から裁縫セットを取り出し、シドさんのシャツを直し始める。

(これ直したら、メイクをセットして靴も準備しないと…)

必死に針を動かし、シャツのほつれを直していると……
シド 「結構手際いいじゃねえか」
吉琳 「わっ……!?」
急に後ろから覗き込まれて、思わず声を上げてしまう。
シド 「おい、手は止めんな。早くしねえと撮影に間に合わねえぞ?」
吉琳 「…っ、わかってますけど、こんな風に見られるとやりにくいです」
クロード 「おい、シド。あんまり吉琳をからかうな」
シド 「くっ…わかってる」
意地悪に笑いながら、シドさんが顔を離す。
シド 「でもお前、これくらいで集中力切らしてたら俺たちのスタイリストは務まらないぜ?」
シド 「お前、俺とクロードの噂くらい聞いたことあんだろ?」

(噂って……)

吉琳 「お二人がスタイリスト潰しだって噂ですか?」
シド 「なんだ、知ってたのか」

—————————

シド 「なんだ、知ってたのか」
吉琳 「前に先輩のスタイリストから聞いたんです」
シドさんとクロードさんは、モデルの活動を中心にしている人気アイドルだ。
だから専属スタイリストは忙しくて、仕事の難易度もすごく高い。

(二人の担当になったスタイリストは長続きしないことで有名なんだよね…)

クロード 「言っておくが、俺は別にスタイリストともめた覚えはないよ」
クロード 「シドがそうやって新入りをいじめるから、長続きしないんだろ」
シド 「お前のスタイリングはやりづらいって言うのも理由の一つらしいけどな?」
クロード 「一流の仕事をするために、妥協はしない主義なんだよ」
クロード 「用意されたテーマに合わない服を出されれば、お前だって反論するだろ?」

(確かにクロードさんはセンスがいいから、衣装を自分で選ぶことも多いし)
(スタイリストとして自信を失くしてしまう人もいるかも)

平行線をたどる二人の会話に、ふっと息をつく。
吉琳 「要するに、お二人それぞれにも原因はあるってことですよね」
クロード 「なんだ、噂がほんとだとわかって不安になったか?」
吉琳 「いいえ、そんなことないですよ」
ほつれた箇所を縫い終わり、シャツを広げる。

(よし、できた…!)

吉琳 「はい、直りましたよ」
シドさんがシャツを受け取り、ほつれていた箇所を眺める。
クロード 「どうだ、シド?」
シド 「悪くねえ。…だが、だからこそ惜しいな」
吉琳 「どういう意味ですか?」
シドさんは口角をつり上げると、私に顔を寄せて…――
シド 「お前はどこまで続くだろうな?」

—————————

クロード 「どうだ、シド?」
シド 「悪くねえ。…だが、だからこそ惜しいな」
吉琳 「どういう意味ですか?」
シドさんは口角をつり上げると、私に顔を寄せた。
シド 「お前はどこまで続くだろうな?」

(私がいつ専属スタイリストを逃げ出すか…って意味だよね)

負けないように、真っすぐに視線をぶつける。
吉琳 「そう簡単には折れませんよ」
吉琳 「どんな噂や事情があっても、目の前の仕事から逃げ出したくないので」
クロード 「頼もしい返事だな」
シド 「返事はな。ま、骨はあるほうなんじゃねえか?」
吉琳 「…それより、二人ともそろそろ服を着てください」
ほどよく鍛えられた上半身から、さり気なく視線を逸らす。

(仕事上、見慣れてはいるけど…やっぱり少しドキドキしてしまう)

二人に視線を向けないよう裁縫セットを片づけていると、横から顔を覗き込まれた。
クロード 「なんだ、照れてるのか?」
吉琳 「ち、違います!」
吉琳 「もう…っ、私はお二人の靴を取りに行ってきますから」
吉琳 「それまでに着替えを終わらせといてくださいね?」
熱い頬を隠すように立ち上がり、私は逃げるように楽屋を出た。

***

吉琳の出て行った楽屋で、クロードはシドに視線を移した。
クロード 「お前がスタイリストを試すような質問をするなんて、驚いた」
クロード 「吉琳のこと気に入ってるんだな」
シド 「あ? なんのことだ」
クロード 「いつもは辞めようが続けようが、興味なさそうにしてるが…今回は違うだろ?」
試すような言葉に少しも表情を動かさず、シドはただ笑みを深める。
シド 「そう言うお前こそどうなんだ?」
シド 「用意された衣装をお前が素直に着ようとするとこなんて初めて見たぜ?」
クロード 「素直に着たのは気に入ってるからじゃない。吉琳のセンスがいいからだ」
クロード 「まだ経験の足りないところはあるけど、いい仕事してるよ」
わずかに沈黙が落ちて、二人はふっと笑みをこぼした。
シド 「今回の新入りは期待できそうだな?」
クロード 「ああ、これからが楽しみだ」

***

(着替えもメイクも、なんとか撮影に間に合った…)

ほっとしながら壁際に行き、スタジオの真ん中にいる二人を見つめる。
カメラマン 「それでは、よろしくお願いします!」
クロード 「ああ」
シド 「手早く済ませようぜ」

—————————

カメラを向けられると、二人の雰囲気はがらりと変わった。
シド・クロード 「…………」
背中合わせに立つ姿の凛々しさに、息を呑む声がいくつも届く。

(すごい…現場が二人の作る空気に一気に引き込まれた)
(でも…何かが足りないような…)

カメラマン 「うーん、何か惜しいな」
カメラマンも首をひねって、一旦撮れた写真を全員で確認する。
クロード 「確かに、もう少し画面に華がほしい気がするな」
カメラマン 「何が足りないのかな…吉琳さんはどう思う?」
吉琳 「そうですね…」

(衣装もポーズも、今回の雑誌のテーマに合ってるんだけど…)
(……あっ)

吉琳 「ドレスウォッチをつけたらどうでしょうか?」
シド 「ドレスウォッチ?」
吉琳 「シンプルな文字盤の、小さくて薄いデザインの腕時計です」
吉琳 「正装を着こなした男性がつける、おしゃれなアクセサリーなんです」
クロード 「ああ…今回の雑誌のテーマは『大人のラグジュアリー』だから、ちょうどいいな」
カメラマン 「そういえば、時計の特集用に借りてたやつがいくつかあったな。すぐ用意させるよ」
スタッフに声をかけ、アクセサリーケースを持ってきてもらうと、
中にはブランド時計の箱がいくつも入っていた。

(わ、たくさんある)

目移りしていると、シドさんとクロードさんも後ろから覗き込んで…――
シド 「せっかくだ、お前がこの中から選べよ」
吉琳 「え?」
クロード 「俺たちに似合う時計はどれだと思う?」

—————————

スタッフに声をかけてアクセサリーケースを持ってきてもらうと、
中にはブランド時計の箱がいくつも入っていた。

(わ、たくさんある)

目移りしていると、シドさんとクロードさんも後ろから覗き込む。
シド 「せっかくだ、お前がこの中から選べよ」
吉琳 「え?」
クロード 「俺たちに似合う時計はどれだと思う?」

(専属スタイリストとして、試されてるのかな?)
(…二人の期待に応えたい)

高ぶりそうな気持ちを抑えて、ケースから慎重に腕時計を選んでいく。
吉琳 「シドさんはゴールドを基調とした、華やかな衣装だから」
吉琳 「同じゴールドでも、控えめで細身のデザインがいいと思います」
シドさんの手首に、落ち着いた色合いのゴールドの腕時計を合わせる。
シド 「確かに、これなら悪目立ちしねえな」
吉琳 「クロードさんはすでにシルバー系のアクセサリーをつけてますが…」
吉琳 「高級感をより足したいので、少し光沢のある方がいいと思います」
クロード 「ああ、いい選択だ」
シルバーの腕時計をクロードさんにつけると、カメラマンも頷く。
カメラマン 「うん、いいね! 求めていたイメージにピッタリだよ」
カメラマン 「それじゃ、撮影を再開しようか」
その一声に、またスタッフたちが慌ただしく動き出した。

(よかった…私の意見、受け入れてもらえた)

確かな手応えにぎゅっと自分の手を握り込んだ時……
吉琳 「わ…っ」
撮影場所に歩き出した二人が、通り過ぎざまに私の頭に手を乗せていく。
吉琳 「な、何…」
シド 「――…上出来だ」
クロード 「ああ。あとは俺たちに任せろ」
吉琳 「……!」
頼もしい笑顔に、頬に熱がのぼりそうになる。

(…悔しいくらい、かっこいい)
(私…もっと二人にふさわしいと思ってもらえるようなスタイリストになりたいな…――)

***

――…撮影が終わった後
吉琳 「二人とも、お疲れさまでした」
椅子に座る二人に、コーヒーの入ったタンブラーを差し出す。
シド 「ちゃんとブラックだろうな?」
吉琳 「もちろん。お二人とも、砂糖は入れないんでしたよね」
クロード 「よく覚えてたな」
熱いコーヒーを一口すすり、ふとクロードさんが顔を上げる。
クロード 「次の撮影はシドと別々だったな」
シド 「お前は雑誌の撮影だろ?」
クロード 「ああ。シドは写真集だったか?」
シド 「そうだ。で、お前は?」
吉琳 「え、私ですか?」
シド 「どっちの現場についてくんだよ?」
クロード 「そういえば、聞いてないな」

(あれ、伝えてなかったっけ…?)

二人に見つめられる中、口を開く。
吉琳 「私は、クロードさんについて行く予定です」

 

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第2話:


吉琳 「私はクロードさんについて行く予定です」
クロード 「それじゃ、今日は1日一緒だな。よろしく、吉琳」
吉琳 「はい…!」
鮮やかな笑顔に、鼓動が甘く騒ぎ出す。

(仕事だから浮かれちゃだめだけど…)
(恋人と一緒にいられるのは嬉しい)

周りには秘密にしているけれど、私とクロードさんは恋人同士だ。
クロードさんをちらっと見ると、視線がぶつかる。
クロード 「…………」
吉琳 「……っ」
優しい眼差しにどきっとした瞬間、シドさんが「くっ」と笑った。
シド 「へえ、噂はほんとだったんだな」
クロード 「噂?」
シド 「お前らがつき合ってんじゃねえかって噂」
吉琳 「えっ…」

(うそ、噂になってるの…っ?)

クロード 「その手には乗らない。今のは嘘だろ、シド?」
冷静な言葉に、シドさんは悪びれる様子もなく肩をすくめる。
シド 「やっぱお前は騙せねえか。ああ、作り話だ」
吉琳 「…っ、嘘ついたんですか?」
シド 「素直に聞いても口割らねえだろ?」
シド 「けど、その顔だと図星みてえだな?」
吉琳 「それは…っ」
クロード 「吉琳、もういいよ」
吉琳 「クロードさん…」
クロード 「大丈夫、言いふらすような奴じゃない」
安心させるように優しく言うと、クロードさんが空いてる隣の椅子を引く。
促されるまま腰を下ろすと、周囲に聞こえないようシドさんは声をひそめた。
シド 「ずっと気になってたんだよな」
シド 「お前、俺らがスタイリスト潰しだって知ってんのに、自分から希望出したんだろ?」
クロード 「よく知ってるな。社長に聞いたのか?」
シド 「ああ。今まで自分から言って来た奴はいなかったから、変だと思ってな」

(シドさんが不思議に思うのも当然だと思う)
(でも、私が二人のスタイリストになりたいって言ったのは…)

そう思った時、シドさんは膝に頬杖をついてにやりと口角を上げた。
シド 「…で?」
シド 「お前らが付き合ってることとお前が専属の希望を出したことは、何か関わりがあんだろ?」

—————————

クロード 「ほんとに勘のいい奴だな、お前は。わかった、教えるよ」
吉琳 「あの…話していいんですか?」
クロード 「社長が伝えたなら、信頼できると判断したってことだ」
吉琳 「…そうですね」
それから私とクロードさんは周囲に気を配りながら、
二人の関係が社長に気づかれた時のことをシドさんに語り始めた。

*****
クロード 「社長に俺たちの関係がばれた…?」
吉琳 「うん…恋仲だって気づかれてるみたい」
吉琳 「でも、つき合っちゃだめだとは言われなかったよ」
クロード 「そのわりには、表情が固いな」
吉琳 「実は…恋仲を認める代わりに、交換条件を出されたの」
クロード 「何て言われたんだ?」
吉琳 「クロードとシドの専属スタイリストを務めてほしいって言われた」
クロード 「…俺とシドの専属?」
吉琳 「うん。二人のスタイリストが務まらないようなら、恋仲は認めないって」
*****

事情を話すと、シドさんは面白がるように目を細めた。
シド 「なるほどな。厄介な役を押しつけられたわけだ」
吉琳 「押しつけられたとは思ってません」
吉琳 「事情がどうであれ、二人のスタイリストを務めるのは光栄なことですから」
吉琳 「認めてもらえるように、頑張ります」
顔を上げて真っ直ぐ告げると、ふいにクロードさんが私の頭を撫でて…――
吉琳 「えっ、クロードさん?」
クロード 「腕のいいスタイリストってだけじゃなくて、いい女だろ?」

—————————

吉琳 「事情がどうであれ、二人のスタイリストを務めるのは光栄なことですから」
吉琳 「認めてもらえるように、頑張ります」
顔を上げて真っ直ぐ告げると、ふいにクロードさんが私の頭を撫でた。
吉琳 「えっ、クロードさん?」
クロード 「腕のいいスタイリストってだけじゃなくて、いい女だろ?」
シド 「はっ、言ってろ」

(…っ…嬉しいけど、恥ずかしい)

熱くなった顔を伏せると、ぽんぽんと軽く頭を叩いて手が離れた。
クロード 「…っと。吉琳、そろそろ時間だ」
吉琳 「あ、ほんとですね。着替えて次の撮影場所に向かわないと」
楽屋に向かうため、クロードさんと椅子から立ち上がる。
クロード 「それじゃ、シド。またな」
シド 「ああ。二人きりになるからっていちゃつくなよ」
吉琳 「し、しません…!」
シド 「わかったよ、さっさと行け」
クロード 「おい、シド。可愛い恋人が羨ましいのはわかるが、からかうな」
追い払うようにひらひら手を振るシドさんに眉をつり上げると、
クロードさんは可笑しそうに笑って私の背中を優しく押し出した。

***

――…それから1時間後
次の現場の楽屋に入り、トランクからクロードさんの服を出す。
クロード 「撮影に使う服はそれか?」
吉琳 「はい。どうですか?」
クロード 「そうだな…」
クロードさんが真剣な眼差しでカットソーを見つめる。

(いつもこの瞬間は緊張する)

沈黙をやけに強く感じながら待っていると、クロードさんが顔を上げた。
クロード 「色が少し派手すぎないか?」
吉琳 「そう、ですか…?」
クロード 「今から撮る雑誌はビジネスマンの読者を多く抱えてるからな」
クロード 「もう少し色味を抑えた方が受け入れられる」

(そういう視点で見てなかった…)

吉琳 「すみません、考え直してみます」
クロード 「ああ、頼む」

(やっぱり、クロードさんのそばで仕事するのは勉強になるな)

クロードさんは、自らファッションブランドを設立するほどのセンスの持ち主だ。

(知識も流行への敏感さも感心することばっかり)
(認めてもらうには、私ももっとセンスを磨かないと)

—————————

(認めてもらうには、私ももっとセンスを磨かないと)

意気込みながら、予備の服が入ったトランクを開けると、
ふいに大きな手が頭を撫でた。
吉琳 「クロードさん…?」
クロード 「真剣に選んでるとこ悪いが、ひとつ言い忘れた」
クロード 「服のチョイスは悪くない。初めの頃より、成長してるよ」
吉琳 「…! ほんとですか?」
クロード 「俺が服に関しては、お世辞の言えない人間だって知ってるだろ?」
吉琳 「…っ…はい!」

(始めの頃は、まだまだだって言われることばっかりだったのに)
(どうしよう、嬉しくて頬が緩むの抑えられない)

口元を手の甲で押さえると、その手をクロードさんが掴んで……

(え…っ?)

目を見開いた瞬間、唇に甘い感触が触れた。
吉琳 「…っ…なんで…」
クロード 「素直な反応をするお前が可愛いから」
クロード 「二人きりだし、これくらいはいいだろ?」
低い囁きがもう一度近づき、慌ててクロードさんの口を手で覆う。
吉琳 「今は仕事中です…っ」
クロード 「…手厳しいな」
言いながら、クロードさんは悪戯っぽく目を細めて……
吉琳 「…ぁ…!」
私の手のひらに音を立ててキスをすると、楽しげに顔を離した。
吉琳 「クロードさん…!」
クロード 「さ、仕事に戻るか」

(さっきまであんなに大人の顔をしてたのに、今は子どもみたい)
(でも…こういうところも、好きだなって思うから重症だ)

クロード 「今の続きは、後の楽しみにとっておくよ」
吉琳 「後って…」
目を瞬かせると、クロードさんが甘く微笑んで…――
クロード 「今日の仕事が終わったら、うちに寄るだろ?」

—————————

クロード 「今の続きは、後の楽しみにとっておくよ」
吉琳 「後って…」
目を瞬かせると、クロードさんが甘く微笑む。
クロード 「今日の仕事が終わったら、うちに寄るだろ?」
吉琳 「いいんですか?」
返事の代わりに、私の頬に手が添えられる。
クロード 「恋人が家に来るのを、嬉しく思わないわけない」
吉琳 「じゃあ…お邪魔しますね」

(そばで一緒に仕事ができることももちろん嬉しいけど)
(こうして恋人として甘やかしてくれる瞬間も、幸せだな)

触れる体温の心地よさに、もう少しこのままでいたいと思ったその時、
楽屋の扉がノックされた。
吉琳 「…! はい、どうぞ」
慌てて体を離すと、楽屋の扉が開いて……
吉琳 「あ…っ、ジルさん」
顔を覗かせたのは、同じ芸能事務所のジルさんだった。
ジル 「…もしかして、邪魔をしてしまいましたか?」
クロード 「いや、平気だ。次の撮影のことか?」
ジル 「ええ。ご一緒するので挨拶に来ました」
クロード 「丁寧にどうも。仕事で一緒になるのは久しぶりだな」
ジル 「そうですね。吉琳も、お久しぶりです」
ジル 「今はクロードとシドの専属スタイリストでしたか?」
吉琳 「はい。社長の意向で、担当アイドルが変更になったので…」
クロード 「そういえばお前、俺たちの前はジルの専属スタイリストだったんだよな」

 

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第3話:


クロード 「そういえばお前、俺たちの前はジルの専属スタイリストだったんだよな」
吉琳 「はい。当時は今より新人だったので、ジルさんにはよくご迷惑をおかけしました…」
ジル 「いえ、貴女は優秀なスタイリストでしたよ」
ジル 「突然クロードたちの専属になったと聞き、心配していたのですが…」
ジルさんの含みを持った視線に、クロードさんが口角を上げる。
クロード 「それは、俺たちがスタイリスト潰しって言われてるからか?」
ジル 「ええ。その通りです」
吉琳 「大丈夫ですよ。むしろクロードさんには、いつも勉強させてもらっています」
明るく告げると、ジルさんも安心したように微笑んだ。
ジル 「クロードは仕事に対してシビアですから」
ジル 「たとえ貴女が恋人であっても、生半可な覚悟ではスタイリストを務められない…」
ジル 「そう思っていましたが、大丈夫なようですね」
吉琳 「えっ…私たちが恋人同士だって、知ってたんですか?」
ジル 「ええ。行きつけのバーで飲む時」
ジル 「クロードによく貴女のことをのろけられましたからね」
クロード 「おい、ジル…」

(クロードさんが私のことを…?)

思わずクロードさんを見ると、居心地の悪そうな表情が浮かぶ。
吉琳 「クロードさん…ほんとですか?」
クロード 「さあ、酔ってたから覚えてないな」
ジル 「照れなくてもいいでしょう?」
クロード 「…今後お前と酒を飲むのは考え直した方が良さそうだな」
珍しくため息を落とすクロードさんに、自然と口元が緩んでしまう。

(クロードさんがのろけてたなんて、嘘みたい…嬉しいな)

吉琳 「あの、ジルさん。クロードさんは私のことどんな風に話したんですか?」
ジル 「そうですね、たとえば……」
クロード 「――悪いが、その話はまた今度だ」

—————————

ジル 「本人を前にのろけ話を披露するのは、さすがに避けたいと?」
クロード 「悪い顔をするなよ、ジル。否定はしないが、一番の理由はそうじゃない」
クロード 「吉琳」
とんとん、とクロードさんが腕時計を示す。
クロード 「あんまりのんびりしてると撮影が始まる」
吉琳 「あ……っ」
楽屋の時計を見ると、時間が差し迫っていた。

(ほんとだ、急がないと…っ)

吉琳 「ジルさん、続きはまた今度教えてください」
ジル 「もちろん、いいですよ」
クロード 「…駅前の有名店のケーキでも進呈すれば吉琳に話すのをやめるか?」
ジル 「買うのに2時間はかかる店に貴方が並べば、いい話題になるでしょうね」
ジル 「その覚悟があるなら、検討しましょう」
クロード 「お前なあ…」
苦い顔をするクロードさんに思わず笑ってしまう。
吉琳 「二人とも仲よしですよね」
クロード 「腐れ縁なだけだ」
話しながらも手を動かし、トランクの中から予備の服を出していく。

(読者の年齢層に合った、落ち着いた色味の服は……)

吉琳 「こっちのカットソーはどうですか?」
クロード 「ああ。それなら、着まわしのバリエーションも多そうだ」
吉琳 「だとしたら、ボトムスは……」

***

真剣な表情で話し合う二人を見つめながら、ジルはふっと微笑んだ。
ジル 「…二人とも生き生きとした表情をしていることに、気づいているのでしょうか」
ジル 「吉琳がスタイリスト潰しに合うことはなさそうですね」
静かに呟くと、ジルは二人を残してそっと楽屋を後にした。

***

――…その日の夜
ファッション誌の撮影を終えた後、私はクロードさんの家に来ていた。

(今日もスケジュールが詰まってて、忙しかったな…)
(クロードさんが人気アイドルだって、あらためて思い知った気がする)

ソファーに座って息をつくと、クロードさんが隣に腰を下ろす。
吉琳 「クロードさん、今日も1日お疲れさまでした」
クロード 「クロードだ」
吉琳 「え?」
クロードさんが仕事の時とは違う、柔らかい笑顔を見せて…――
クロード 「前に、二人きりの時は…――」

—————————

吉琳 「クロードさん、今日も1日お疲れさまでした」
クロード 「クロードだ」
吉琳 「え?」
クロードさんが仕事の時とは違う、柔らかい笑顔を見せる。
クロード 「前に、二人きりの時は呼び捨てでいいって言っただろ?」
クロード 「敬語もなしだ」
吉琳 「そうだったね…クロード」

(今は人気アイドルじゃない…私の恋人なんだ)

この笑顔を独りじめしていることが、なんだか奇跡のように感じる。
クロード 「吉琳、手を貸してくれないか?」
吉琳 「いいけど、どうしたの?」
手を差し出すと、クロードが両手で優しくマッサージをし始める。
クロード 「たくさん服運んだから疲れてるだろ? 今日頑張ったご褒美だ」
吉琳 「ありがとう…気持ちいい」
クロード 「どういたしまして」

(今日の疲れが全部抜けていくみたい…)

体の力を抜き、ソファーに背中を預けて目を閉じる。

(でも、ご褒美をもらえるようなことはしてない気がする)
(雑誌の撮影に使う衣装も、結局選ぶのクロードに手伝ってもらったし…)

その瞬間、柔らかな感触が指先に触れた。
吉琳 「……っ、クロード?」
吉琳 「今、指にキス…」
クロード 「お前があんまり無防備な顔してるから、つい…な」
吉琳 「もう…」
その時、つけていたテレビからクロードの声が聞こえてきた。
吉琳 「あ、この番組…」
クロード 「この間撮ったバラエティー番組だな」
吉琳 「クロードが芸能人の服装をチェックする番組だったよね?」
クロード 「ああ。けど、大御所にも辛口だって、よくプロデューサーに注意されてるよ」

—————————

(でも、視聴率はすごくいいんだよね)

番組では、クロードが女優さんに対して的確なアドバイスをしていた。

*****
クロード 『色のバランスはいいですが、カーディガンの丈が短いですね』
クロード 『Iラインのシルエットを作るには、ロングの方がいい』
女優さんが言われた通り着替えると、よりスタイルのいい印象へと変わる。
女優 『あっ、ほんとだ。全然違いますね』
クロード 『今季はビジューつきがトレンドですから、靴も変えてみました』
司会者 『さすがファッション界のリーダー的アイドルですね!』
*****

吉琳 「女性服のトレンドも把握してるの?」
クロード 「なるべく男女問わず、ファッション誌には一通り目を通すようにしてるよ」
吉琳 「そうなんだ…私も見習わなきゃ」

(元からある才能だけじゃない…)
(普段から努力して、ファッションへの知識を深めてるんだ)

改めて、クロードのスタイリストとして働くことの重みと意味を感じる。

(そういえば、私は社長から話を持ちかけられて専属スタイリストを引き受けたけど…)
(クロードはそのこと、どう思ってるんだろう?)

テレビから隣のクロードに視線を移すと、目が合う。
クロード 「どうした、吉琳?」
吉琳 「ううん…何でもない」
クロード 「本当か?」
クロードに指で顎をすくわれ、瞳を覗き込まれる。
吉琳 「うん、ちょっと見惚れてただけ」
クロード 「へえ、お前も上手い返し方を覚えたな」
吉琳 「クロードに教わったんだよ」
クロードは短く笑うと、唇を寄せて……
吉琳 「…んっ……」
甘さだけを残して、唇がゆっくりと離れていく。
クロード 「この口が本音を話したくなるように、キスで甘やかしてみるか?」
吉琳 「…甘やかしても、好きって言葉しか出てこないよ?」
クロード 「お前…ほんとにずるいことを言うようになったな」
クロード 「その返し方も俺から教わったのか?」

—————————

吉琳 「そうだよ。仕事でも一緒にいるようになったから、毎日クロードから学んでるの」
吉琳 「いいことも、悪いこともね?」
クロード 「…はっ、なかなか言うな」
クロード 「一本取られた。今日は俺の負けだ」
子どもっぽい顔で笑いながら、クロードがもう一度唇を寄せる。
クロード 「けど、これ以上言い負けないように…やっぱりお前の口は塞ごうか」
吉琳 「ん…っ」
重なる唇に互いの熱が溶けるほど、鼓動が高鳴っていく。

(クロードが好き…ずっとそばにいたい)
(そのために、私には何ができるかな…?)

くすぶる想いを隠しながら、私は甘い感触を受け止めた。

***

――…数日後の午後
吉琳 「すみません、撮影用の服を借りたのは私なのに運ぶのを手伝っていただいて…」
ジル 「構いませんよ。次の撮影までは時間がありますから」
ジル 「それに、あんなに大量の紙袋を一人で持つのは無茶ですよ」
吉琳 「実は事務所でジルさんに逢った時、腕がかなり限界だったので…助かりました」
和やかに話しながら事務所への帰り道を歩いていると、ふと数日前の記憶が蘇る。

(そういえば…気になってたこと聞いてもいいかな?)

吉琳 「あの、ジルさん。前にクロードさんが私のことでのろけてたって言ってましたよね?」
吉琳 「クロードさんはジルさんに、私のどんな話をしたんですか…?」
ジル 「ああ、そのことですか」
ジル 「クロードは貴女の…――」

 

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第4話-プレミア(Premier)END:


吉琳 「あの、ジルさん。前にクロードさんが私のことでのろけてたって言ってましたよね?」
吉琳 「クロードさんはジルさんに、私のどんな話をしたんですか…?」
ジル 「ああ、そのことですか」
ジル 「クロードは貴女の自慢話ばかりしていましたが…」
ジル 「その中でも特に、スタイリストとしての才能を褒めていたことが印象に残りましたね」
吉琳 「え…っ?」
ジル 「意外そうな顔ですね」
吉琳 「はい…私はまだまだスタイリストとして未熟だと思っているので」
柔らかな風を受けながら、ジルさんが優しく目を細める。
ジル 「前にも言いましたが、クロードは恋人の貴女相手でも、仕事ではシビアでしょう?」
ジル 「そのクロードが褒めていたのですから、自信を持っていいと思いますよ」

(そうなの、かな…?)
(でも、まだまだクロードから指摘されることは多いのに…)

ジルさんの言葉を嬉しく思いながらも、素直に呑み込むのは難しかった。

***

(スケジュール帳、事務所に置いてきちゃうなんて…)

ジルさんと別れた後、私は忘れ物に気づいて事務所に戻ってきた。
置き忘れた部屋に向かっていると……
社長 「最近、吉琳くんはどうかな?」
クロード 「俺の見立て通り、彼女には才能がありますよ」
廊下の角から聞き慣れた声がして、思わず足を止める。

(今の私の名前だったよね…?)
(どうしよう、出て行きにくい…)

戸惑っている間も、二人は言葉を重ねていく…――。

***

社長 「それはよかった。吉琳くんの活躍は私の耳にも届いてるよ」
社長 「そういえば君は、彼女がジルくんの専属だった時から目をつけていたな」
クロード 「ええ。彼女は優れたセンスの持ち主ですから」

—————————

クロード 「ええ。彼女は優れたセンスの持ち主ですから」
クロード 「何より、周囲の意見を柔軟に聞き入れる能力に長けていますしね」
社長 「ほう…それは、経験よりも重要なことなのかね?」
クロード 「どんなに経験があっても、着る人間やそれを見る者を置いてきぼりにしては意味がない」
クロード 「服を着る人間を幸せにすることが、スタイリストの仕事ですから」
社長 「それで前から吉琳くんに期待していたわけか」
クロード 「そういうことです」
クロード 「まさか吉琳の姿を目で追っているうちに…」
クロード 「恋に発展するとは思いませんでしたが」
社長 「恋とはそんなものさ」
社長が豪快に笑って、クロードの背中を叩く。
社長 「だが、君が彼女を専属スタイリストにほしいと言って来た時は驚いたよ」
クロード 「スタイリスト潰しで有名な俺たちに預けるのは不安でしたか?」
社長 「ああ。吉琳くんは、私にとっても将来有望なスタイリストだからな」
社長 「仕事に厳しい君たちの専属になったら、挫折しないかと悩んだね」
クロード 「それで何故吉琳に交換条件を出したんです?」
社長 「彼女の覚悟を確かめたかったのと…そう言えば、簡単に辞められないと思ったからさ」
クロード 「そんな妙な脅しをかけなくても、吉琳なら辞めないはずですよ」
クロードは小さく笑った後、真っすぐに社長に向き直って…――
クロード 「恋人としての贔屓(ひいき)なしに吉琳は…――」

—————————

クロード 「それで何故吉琳に交換条件を出したんです?」
社長 「彼女の覚悟を確かめたかったのと…そう言えば、簡単に辞められないと思ったからさ」
クロード 「そんな妙な脅しをかけなくても、吉琳なら辞めないはずですよ」
クロードは小さく笑った後、真っすぐに社長に向き直った。
クロード 「恋人としての贔屓
(ひいき)
なしに吉琳は…」
クロード 「俺が認めた優秀なスタイリストですから」

***

(クロードが、そんな風に思ってくれてたなんて…)

聞いたばかりのクロードの言葉が、胸の奥深くに染みていく。

(ジルさんの言ってた通り…クロードは私をちゃんと評価してくれてたんだ)
(それなら、私も今以上に期待に応えないと…――)

込み上げてくる嬉しさにぐっと顔を上げて、私はその場を静かに離れた。

***

――…数時間後
撮影に使う衣装の準備をしていると、クロードが楽屋に入ってきた。
クロード 「おはよう、吉琳。今日も早いな」
吉琳 「おはようございます。早めに準備しておきたかったので」
クロードの前に駆け寄り、選んだ服を机に広げる。
吉琳 「今回の衣装はどうでしょうか?」
吉琳 「雑誌の傾向を、自分なりに読み込んでみたんですが…」
クロードはしばらく眺め、レザーブレスレットを手に取った。
クロード 「このブランドは人気だが、他の雑誌で特集してたから別の方がいい」
クロード 「けど、衣装は完璧だ」
吉琳 「…っ、ほんとですか?」
クロード 「ああ、お世辞じゃない」

—————————

(初めて完璧だって言われた…嬉しい)

クロード 「他のブランドのブレスレットはあるか?」
吉琳 「はいっ、今出しますね」
笑顔でトランクを開けると、クロードが顔を覗き込む。
クロード 「今日は随分機嫌がいいな? 何かいいことでもあったか?」
吉琳 「え、わかるんですか…?」
クロード 「お前は顔に出やすいから」

(正直に、話してもいいかな…?)

吉琳 「実は…さっき忘れ物をして、事務所に寄ったんです」
吉琳 「その時、クロードさんと社長が話しているのを聞いてしまって…」
迷いながら告げると、クロードが目を見開く。
クロード 「なんだ、あの場にいたのか?」
吉琳 「盗み聞きしてごめんなさい。でも、クロードさんの想いを知って嬉しかった」
吉琳 「実力不足の私が、専属スタイリストでいいのか不安だったから」
クロード 「…それでこの前、俺の家で話した時、様子がおかしかったのか」
クロードが困ったように笑って、私の頬に優しく触れる。
クロード 「お前の才能は俺が認めてる。もっと自信を持て」
吉琳 「クロード…」

(――…もう迷ったりしない)
(これからも、クロードの隣で胸を張って仕事がしたい)

吉琳 「私、もっとクロードさんに認められるスタイリストになれるように頑張ります」
クロード 「それは楽しみだな。期待してるよ」
吉琳 「はい…!」

(現金だとも思うけど…この言葉だけで、いくらでも頑張れる気がする)

決意を新たにしていると、ふいにぐっと腰を引き寄せられる。
吉琳 「…っ…クロード?」
クロード 「頑張るのはいいが、仕事にばかり集中するなよ」
クロード 「そうじゃないとお前は…――」

—————————

(現金だとも思うけど…この言葉だけで、いくらでも頑張れる気がする)

決意を新たにしていると、ふいにぐっと腰を引き寄せられる。
吉琳 「…っ…クロード?」
クロード 「頑張るのはいいが、仕事にばかり集中するなよ」
クロード 「そうじゃないとお前は、俺の恋人だってことを忘れそうだ」
重なる瞳に独占欲のような熱が見えて、嬉しさに胸が締めつけられる。
吉琳 「もちろんだよ」

(仕事も恋も、クロードとならきっと最高のものにしていける)

吉琳 「恋人としても、スタイリストとしてもまだまだだけど…これからもよろしくね」
クロード 「ああ」
腰の手に力が込められ、どちらからともなく唇を重ねる。

(これからもスタイリストとして、恋人として…)
(二つの顔で、クロードを支えていきたい)

緩やかに熱が離れると、唇が今度は首筋を優しくなぞった。
吉琳 「…んっ…クロード…」
クロード 「…なんだ?」
吉琳 「痕…ついちゃうから、今はだめ」

(これから撮影で、他のスタッフとも会うのに…)

軽く胸を押すと、肌の上で吐息が揺れる。
クロード 「俺は勘づかれてもかまわないけどな」
クロード 「その方が、他の男が寄りつかない」
吉琳 「私は構うよ…っ、それに…恥ずかしい」
クロード 「またおあずけか、厳しいな」
クロードが私の顔を見て、悪戯な笑みを浮かべる。
クロード 「吉琳、もう少しでスタジオ入りだ」
クロード 「それまでに、その赤い顔をなんとかしておかないとな?」
吉琳 「えっ…?」
頬に触れてみると、のぼせたように熱くなっていた。
吉琳 「…っ…クロードのせいでしょ?」
クロード 「悪かったよ」
クロードが楽しそうに、肩を揺らして笑う。
その姿がひどく愛おしくて、またひとつ恋を重ねた…――


fin.

 

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エピローグEpilogue:

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――…アイドルな彼との甘くて幸せな日々は、まだ終わらない
彼の心があなただけに動く瞬間が、彼目線で描かれていく……
クロード 「俺は、どうしてお前にこんな痕を残すと思う?」
クロード 「こんな風にお前に甘い声を上げさせるのは、どうしてだ?」

(アイドルとして、たくさんのファンに囲まれても)
(誰にもこんな気持ちにはならない)

頬を染める姿を見つめながら、背中から腰へ淡く指を滑らせていく……
アイドルの彼があなたに見せる素顔は特別で、とびきり甘い…――

 

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