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Sillent Moon~恋に落ちたヴァンパイア~(ノア)

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*之前復刻時,我看吉爾的畫面還滿多的,所以有存。

 

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プロローグ:

――…見上げた木々の間から太陽の灯りがこぼれていく

(……ここ、いったいどこなんだろう)

私は見慣れない森で視線をさまよわせる。
有名な建築物を見ようと入った森で完全に目的地を失ってしまった。

(いったん、来た道を戻るしかないかな…)

その時、遠くから低いうなり声が聞こえてくる。
ゆっくり後ろを振り返ると、そこには……
吉琳「………!」

(狼…それにあんなにたくさん…っ)

しだいに近づいて来る狼の群れに、震える足で何とか駆け出して行く。

***

森を抜けた瞬間、目の前に城門が見えてくる。
気がつくと、いつの間にか一気に辺りは暗がりに包まれていた。

(どうして…?さっきまで昼間だったのに)

それでも近くで聞こえてくるうなり声に、とっさに城門に手を掛ける。

(開かない…っ…)

しだいに近づいてくる気配に目を閉じて、思い切り叫んだ。
吉琳「助けて…っ…!」
???「……助かりたいなら、じっとしてて」
その瞬間、体がふわっと浮き上がり……
ゆっくり目を開けると、ブロンドの男の人が至近距離で見つめていた。
???(路易)「………人間?」
吉「あれ、どうして…さっきは城門の外にいたのに」

(それに今、人間かって……)

???(諾亞)「あれー助けに来たのに、少し遅かった?」
そこには目を見張るほど綺麗な男の人が立っている。
???(艾倫)「…今日は満月か、どうりで狼が騒ぐはずだな」
いつの間にか現れた赤い瞳の男の人がため息をつくと、
後ろから来た切れ長の瞳の人が眉間に皺を寄せる。
その人は城門の向こうの狼の群れに低く告げた。
???(凱因)「………去れ」
その声で狼が後ずさって行くと、
その人は私に一度だけ視線を向けて興味がなさそうに視線を逸らす。
ブロンドの男の人は私をそっと下ろして空を見上げた。
???(路易)「…あの月が新月になるまで」
???(路易)「君はここから出られない」

(……ここから出られないって)
(どういうこと?)

???(凱因)「…………」
私はこの時、この名前を知らない人たちが何者なのかを、
まだ知らずにいた…――

 

どの彼と過ごす…?

>>>ノアを選ぶ

 

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第1話:


――…満月の光に照らされて、四人の男性の瞳が光る
??? 「…無駄に時間を取られた、クソ」
??? 「警備を強化する必要があるな」
??? 「…………戻る」
吉琳 「え……」
それぞれがバラバラのことを言いながら、中に戻ってしまう。

(ここを出られない、なんて言ってたけど…)

門の外に視線を移すと、外はやけに静かだった。

(もう、狼はいなそうだし大丈夫だよね?)

堅く閉ざされた門に手を掛けたその時……
??? 「やめておけばー?」
吉琳 「……?」
聞こえてきた気だるい声に振り向くと、
白シャツ姿の男の人が地面にしゃがんで私を見つめていた。

(座ってたから気づかなかった)

吉琳 「やめておけばってどういうことですか?」
??? 「そのままの意味」
??? 「狼に食べられちゃうってこと。きっとまだいるし」
その人はのんびりと言うと、穏やかに微笑んだ。
ノア 「俺は、ノア=レオンハート」
ノア 「名前、教えて?」

—————————

(ノア…)

その穏やかで気だるい雰囲気に流されて、思わず口を開いていた。
吉琳 「私は、吉琳です」
ノア 「吉琳かー。吉琳、うん、覚えた」
ノア 「俺のことはノアって呼んで、敬語もやめてねー」
吉琳 「私、行きたいところがあって…」
言いかけると、門の外からうめき声が聞こえてくる。
吉琳 「……!」
外の狼の姿に身をすくめたその瞬間……
ノア 「また戻ってきた……めんどくさいな」

(え……?)

耳元で声がして、体がふわっと浮き上がった。
ノア 「この子はあげないってば」
ノア 「あんま、やり合いたくないんだ。お互い傷つくのは嫌だし」
私を抱き上げたまま、ノアは狼に視線を送ってため息をつく。
吉琳 「ちょっと、おろして!」
ノア 「んー?」
私を抱き上げているノアの腕に触れると……

(……な…に、どうしてこんなに体が冷たいの)

ノア 「はい、いくよー」
私はノアの腕の中で、震える声を押さえて口を開いた…――
吉琳 「…あなた、何者?」
ノア 「俺は……」

—————————

ノアの腕の中で、震える声を押さえて口を開く。
吉琳 「…あなた、何者?」
ノア 「俺は……」
エメラルドグリーンの瞳が細められて、気の抜けた声が聞こえてくる。
ノア 「なんだろうね、よくわかんないやー」
吉琳 「………え」
ノア 「あ、それとあなたじゃなくて、ノア」
ノア 「はい、呼んで」
吉琳 「…ノア」
ノア 「合格」
ノアはにこっと笑うと、そのまますたすたと歩き出す。
吉琳 「どこに行くの?」
ノア 「イイとこ」

(……どういうこと?)

***

暗い廊下を抜けて、ノアは扉を押し開けた。
ノア 「ここ、俺の部屋。どーぞ」
暗い部屋に一台のピアノ、それを淡い月が照らしている。
ノアは私をそっとソファーに下ろした。

(聞きたいことはたくさんある。けど最初に聞かないといけないのは)

*****
??? 「…あの月が新月になるまで」
??? 「君はここから出られない」
*****

吉琳 「新月までこのお城を出られないってどういうこと?」

—————————

ノアは私の隣に座ると、窓から見える月を指差した。
ノア 「狼って満月の夜から動き始めるんだよ」
ノア 「…で、月が見えなくなる夜に大人しくなる」
吉琳 「だから月が見えなくなるまでここにいないといけないってこと?」
ノア 「そーいうこと」

(…満月から月が見えなくなるまで、まだまだ先だ)

綺麗な円を描く月を見上げていると、ノアは私の顔を覗き込んだ。
ノア 「そんな不安そうな顔しないでー」
吉琳 「ノア!その…近いよ」
ノア 「ごめん、嬉しくて」
ノア 「あんまりここには人が来ないから」
吉琳 「人が来ない?」
ノア 「ここ、ずっと陽が当たらないし。時計、見てみて」

(そういえば……)

森を抜けた途端に夜に包まれたことを思い出しながら、
時計に視線を落とすと……
吉琳 「まだお昼…!?」
ノア 「うん、みんな陽の光が当たらない場所には来ないよねー」

(ねーって……)

吉琳 「このお城はいったいなんなの?」

(それに、ノアは…)

ノアが口を開きかけると、扉が静かに開いて足音が響いた。
??? 「ここにいたんですね」

—————————

(この人は…)

端正な顔立ちの男の人は、ノアと私を交互に見てため息をつく。
ノア 「どーしたの、ジル」
ジル 「…どうしたのではありませんよ」
ジル 「城門が騒がしかったので、事情をアラン殿に全て聞いたところです」
吉琳 「アラン?」
ノア 「あーアランってさっきいた赤い目の人ね。で、この人はジル」
ノア 「ジル、この子は吉琳」
ジル 「話の腰を折らないでください」
ノア 「はーい、ごめん」
謝る気があるのかないのかわからない口調に、
ジルさんはまたため息をつく。
ジル 「ノア様、メイドにこの方の部屋を用意するように伝えてきて頂けますか?」
ジル 「ノア様の部屋に泊めることはできませんからね」
ノアはこくんと頷くと、立ち上がり歩いて行く。
ノア 「またねー吉琳」
ノア 「あ、吉琳のこといじめないでね、ジル」
それだけ言い残して、ノアが立ち去るとジルさんと二人きりになってしまう。

(なんだろう…妙に緊張する)

ジルさんは私の近くまで来ると、すっと目を細めた。
ジル 「それで、どこまでノア様から話を聞きましたか?」
吉琳 「新月の夜まで出られないことと…」
吉琳 「ここが陽の当たらない場所だってことだけ」
ジル 「全く…肝心なところを避けるのは悪い癖ですね」
さらりと呟くと、手袋をはめた指先が顎に触れて……

(…!)

くいっと持ち上げられると、妖艶な声が耳に届いた…――
ジル 「今から話すことを…秘密にできますか?」

 

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第2話:

 

ジル 「今から話すことを…秘密にできますか?」
顎を指先で持ち上げられて、有無を言わせない瞳に一度だけ頷く。
ジル 「この手が貴女とは違うことは、もう気づいていらっしゃるでしょう?」
吉琳 「はい…」

(手袋をしていても、冷たい。…ノアと同じ)

緊張で胸が痛いほど鳴ってしまう。
ジル 「私たちは姿は人と同じですが、…絶対的に異なる存在」
ジル 「…ヴァンパイアです」
吉琳 「ヴァンパイア……」
まるでおとぎ話のような言葉で、上手く理解できない。
ジル 「ここに二週間近くいるのなら、いずれはわかってしまうこと」
ジル 「ですから、先に口封じをさせてください。いいですね?」
すっと指先が離されて、やっと息がつけた。

(それじゃ……)

吉琳 「ノアも、その…ヴァンパイアなんですか?」
ジル 「……ええ」

(ジル…さん?)

一瞬だけ言葉を詰まらせると、ジルさんは気を取り直したように微笑んだ。
ジル 「それでは、月が消えるまでの間よろしくお願い致します」%

***

(ん……、…起きないと。時間はもう朝だよね?)

目を覚ましてまだ暗い部屋でベッドから身じろぐと……

(……!)

鼻先が触れる距離でノアが眠っている姿が視界に飛び込んできた…――
吉琳 「ノ…ノア!」
ノア 「ん…?ああ、こんばんはー」

—————————

鼻先が触れる距離でノアが眠っている姿が視界に飛び込んでくる。
吉琳 「ノ…ノア!」
ノア 「ん…?ああ、こんばんはー」
眠たそうに目を擦りながら、へらっとした笑みを向けられる。
吉琳 「なにしてるの!」
ノア 「吉琳と話したくてここに来たら、寝ちゃった」
吉琳 「寝ちゃったって…」
吉琳 「それに、今はおはようでしょ?」
ノア 「そっかーおはよう、吉琳」
ノアの大きな手が髪に触れて優しく撫でられる。
冷たい感覚の後に、指先がビーズリングのピアスに一瞬だけ触れた。
吉琳 「…?」
ノア 「寝ぐせ」
吉琳 「ありがとう…」
ノア 「ん。どーいたしまして、まだ眠い」
伸びをするノアを見てふっと疑問が浮かぶ。

(あれ…普通ヴァンパイアって寝ないんじゃないの?)

その瞬間、大きな音でお腹が鳴ってしまう。
吉琳 「……!」

(は…恥ずかしい。そういえば、昨日は何も食べてなかったっけ)

ノア 「お腹空いたねーよし、なんか食べに行こう」

—————————

キッチンに行くと、ノアは冷蔵庫を開けて肩を落とす。
ノア 「なにもない……パンだけ」
吉琳 「でも、苺とお砂糖はあるから…少しだけ待っててくれる?」
ノア 「……?うん」

***

ジャムを作りパンに塗って指し出すと、嬉しそうにノアはほおばった。
ノア 「おいしーありがとう、吉琳」

(よかった…けど)

並んでパンを食べながら、ずっと思っていたことを口にする。
吉琳 「…ジルさんからここにいる皆がヴァンパイアだって聞いたよ」
ノア 「そー。驚いたでしょ?」
吉琳 「うん。けどまだ信じられないかも」
吉琳 「だって、ヴァンパイアって血を飲むんじゃないの…?」

(ノア…ただパンを食べてるだけだし)

ノア 「飲まなくても生きていけるような秘密があるんだ」
吉琳 「秘密?」
ノア 「とにかくー血は飲んだことないよー」
吉琳 「そうなんだ…なんか拍子抜け」
ノア 「飲みたい気持ちはあるけどね」
ノアは悪戯に笑うと、唇に付いたジャムを拭いながら笑う。
ノア 「…飲んでほしい?」
吉琳 「…ダ、ダメ!」
ノア 「冗談、こっちのがいいよ」
ノアは笑うとまた美味しそうにパンをほおばる。

(変なヴァンパイア)


***

――…数日後

(…暗いと時間の感覚も無くなってくる)

暗い空を見上げると、前から聞き慣れた声が聞こえてきた。
ノア 「吉琳、俺とデートしない?」

—————————

ノアの後ろを歩いて行くと、そこは人気が無い綺麗な湖だった。
吉琳 「綺麗…」
ノア 「ここ城の裏手なんだけど、誰も来ないんだよ」
ノア 「外だし静かだから気分転換になるでしょ?」
吉琳 「うん。ありがとう、ノア」
並んで座ると、少しだけしか欠けていない月が水面に浮かぶ。
吉琳 「まだ、欠けないね」

(いつになったら、元の場所に戻れるのかな)

ノア 「そう…だね。だったらそれまで…」
ノア 「一つでも多く教えてよ。吉琳のこととか、人間のこと」

(きっと気を紛らわせてくれてるんだよね)

ノアのさりげない優しさに、笑みを返す。
吉琳 「眠って、美味しいものを食べて、遊ぶことが好き」
吉琳 「それはみんな同じだよ」
ノア 「そっか」
吉琳 「なんだかノアを見てると、ヴァンパイアでも人間でもあんまり変わらないって思えるね」
ノア 「………変かな?」
吉琳 「ううん、なんだか近くに感じるから嬉しいよ」
ノア 「…嬉しいか。なんかくすぐったいね」
ノアは顔を綻ばせると、私の肩に顎を乗せる。
吉琳 「ノア……重いです」
ノア 「わざとー」
笑い合いながら、色んな話をしているうちにどんどん時間は流れていく。
その時、それまで笑っていたノアがふっと視線を上げる。
吉琳 「ノア…?」
ノア 「……いけない」

—————————

その時、それまで笑っていたノアがふっと視線を上げる。
吉琳 「ノア…?」
ノア 「……いけない」
顔色がすっと変わって、ノアが立ち上がる。
ノア 「戻ろう、吉琳」
その時、淡い光がまぶたにかかって……

***

ゆっくり陽が昇って辺りを白く染めていく。

(…どうして)

陽が当たらない場所に眩しいくらいの陽が差し込む。
ノアは息をつくと、歩いていた足を止めた。
ノア 「あー…もういっか」
吉琳 「ノア…これどういうこと」
陽の光を受けて、ノアは気まずそうに視線を逸らす。
ノア 「ここだけは、この城の中で唯一陽が当たる場所」
ノア 「だから……ヴァンパイアはみんな近づかない」
ノアの口からこぼされる言葉に、鼓動が早くなっていく。
ノア 「陽に当たると、ヴァンパイアは死んじゃうから」
吉琳 「それじゃ、ノアは…」
ノア 「俺は大丈夫なんだ」
吉琳 「え…?」
ノアの表情が悲しそうに歪んだ。
ノア 「人間とヴァンパイアの血が入ってる」
ノア 「できそこないのヴァンパイアだから」

 

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第3話:


ノア 「人間とヴァンパイアの血が入ってる」
ノア 「できそこないのヴァンパイアだから」

(人間と…ヴァンパイア?)

陽の光のせいで、ノアの悩んでいる表情が浮き彫りになる。
ノア 「これ、秘密にしてくれる?」
ノア 「城に住む人に知られると、ここで生きていけなくなるんだ」
吉琳 「どうして…?」
ノアは笑顔を作ると、何でもないことのように言う。
ノア 「よくわからない存在は警戒される」
ノア 「そこはヴァンパイアも人も一緒だよね」

(こんな時、なんて言えばいいのかわからない…)

ノアは一度だけ陽の光を受けて伸びをすると、息をついた。
ノア 「よし、戻ろっか」

***

――…その日から、ノアは姿をパタリと姿を見せなくなってしまった

(…ノアに、逢いたい)

けれど触れてはいけない傷に触れてしまった気がして、
どうしても部屋にはいけなかった。
ジル 「…ノア様と何かありましたか?」
吉琳 「それは…」

(いけない、隠さないと…)

本を開いていた私の横で書類を片付けていたジルさんはペンを置くと、
瞳を覗き込んで薄い笑みを浮かべた…――
ジル 「本当に嘘が下手な方ですね…」%
吉琳 「……!」
ジル 「ノア様の秘密を、知ってしまった。違いますか…?」%

—————————

ジル 「本当に嘘が下手な方ですね…」
吉琳 「……!」
ジル 「ノア様の秘密を、知ってしまった。違いますか…?」
ジルさんの瞳に捉えられて手をぎゅっと握りしめる。

(…ジルはノアのことを知ってるんだ)
(それにきっと全部、気づいてる)

吉琳 「ノアを追い出さないでください!お願いします」
頭を下げると、笑う気配を感じる。
ふっと視線を上げるとジルが笑みを浮かべていた。
ジル 「私は追い出すつもりはありませんよ?」
吉琳 「え…」
ジル 「ノア様は、あんなに適当ですが影で懸命に動いてくださる方です」
ジル 「ヴァンパイアが生きやすいように、仕事をこなしていますからね」
それはきっと居場所を探すノアの償いのようなものなんだと思う。
ジル 「ですが…閉じこもるのは、ノア様らしくない」
吉琳 「ジル…さん?」
ジル 「ノア様の秘密を知ってしまった罰として、引きずり出してください」
吉琳 「…わかりました」

(そうだ…ただ立ち止まってるだけじゃ何も伝わらない)

***

自分の部屋に戻り、
私はフリルがあしらわれた日傘を手にしてノアの部屋の扉を叩いた。
吉琳 「ノア、入るよ?」

—————————

扉を開けるとノアがむくっとベッドから体を起こす。
ノア 「吉琳…?」
吉琳 「ノア、私とデートしない?」

***

ノア 「吉琳…?ここ…」
陽が当たる湖までノアの手を引いて、日傘を開く。
吉琳 「見られたら、まずいでしょ?入って」
ノア 「かえって目立つ気もするけど」
吉琳 「……っ…いいから」
ノアと並んで傘に入り座ると、肩が自然と触れ合う。
その少しだけ冷たい体温が、なんだかとても大切だと思う。
吉琳 「ノア、あれからたくさん考えたんだけど答えは一つだったよ」
ノア 「……一つ?」

(そんな簡単なことじゃないってわかってる)

*****
ノア 「城に住む人に知られると、ここで生きていけなくなるんだ」
吉琳 「どうして…?」
ノア 「よくわからない存在は警戒される」
ノア 「そこはヴァンパイアも人も一緒だよね」
*****

(だけど、ノアを見ていて思うことを伝えたい)

吉琳 「ノアは自分がよくわからない存在だって言ってたけど」
吉琳 「ノアはノアじゃないの?」
ノア 「……っ…」
小さく息を呑んだ気配がして、そっと大きな手を包んだ。
吉琳 「人間もヴァンパイアも変わらない」
吉琳 「同じ…でしょ?」
ノア 「……ずるいよ、それ」%
掠れた声の後に、言葉が紡がれていく。
ノア 「ずっと考えてきたんだ、自分が何者なのか」
ノア 「…ここにいても許されるのか」
ノア 「許されるために、その方法ばかり探してた」
視線がゆっくり重なると、大きな腕が私を捉えた。
吉琳 「ノア…」
ノア 「見ないで。泣きそーだから」
吉琳 「嫌だ、こっち見て」
体を離した瞬間…ノアの吐息が唇を掠めた…――
ノア 「…だから、ダメだって言ったのに」

—————————

ノア 「見ないで。泣きそーだから」
吉琳 「嫌だ、こっち見て」
体を離した瞬間…ノアの吐息が唇を掠める。
ノア 「…だから、ダメだって言ったのに」
吉琳 「ん……、…っ」
髪を撫でられて、触れるだけのキスが落とされる。
そっと唇が離れると、ノアの頬が微かに染まる。
ノア 「……泣くの、ごまかしただけ」
吉琳 「…うそつき」
ノアは戸惑うように瞳を揺らすと、もう一度キスをする。
吉琳 「今のは…?」
ノア 「……キス、したかった」
手首を掴まれて、手にしていた日傘が転がり落ちる。

(いつか……離れないといけないのに)

それでも今、どうしても触れていたい。

(私、ノアのことが好き)

先のことはわからない。
だけど私たちは何度も隙間を埋めるようにキスを交わした。

***

ノア 「吉琳ー、顔赤いよ」
吉琳 「…誰のせい?」
ノア 「俺のせい」
恥ずかしさを押さえるようにいつも通りの会話をして歩いていると……
ジル 「どこに行っていたんですか」
その声に視線を上げると、険しい表情を浮かべたジルさんが立っていた。

(…どうしたんだろう)

ジル 「ノア様……官僚執務室まで来て頂けますか」
ジル 「それと貴女も」

—————————

ジルさんの後に付いて行くと、そこには厳格な表情をした人たちがいた。

(この人たちが…官僚?)

緊迫した空気感を肌で感じていると、その中の一人が声を上げる。
官僚 「ノア様、裏庭に陽が当たる湖があるというのは本当ですか」
ノア 「……っ」
官僚 「そして、そこに貴方がいたのを遠くから見た方がいます」
官僚 「…人間の、貴女と一緒に」
吉琳 「……!」
早くなる鼓動に、淡々とした言葉が重なっていく。
官僚 「あなたは…何者ですか」
ノア 「俺は……」

(本当のことを言ったら、ノアはここを追い出されるかもしれない…)

手のひらをぎゅっと握りしめて、はっきりと告げた。
吉琳 「光が当たる場所にいたのは、私だけです」
ジル 「…………」
吉琳 「ノアにお願いして、場所を教えてもらっただけ」
吉琳 「狼に出逢って迷い込んできたけど、こんなところ飽き飽きして」

(こんなこと、本当は言いたくない…けど)

*****
吉琳 「人間もヴァンパイアも変わらない」
吉琳 「同じ…でしょ?」
ノア 「……ずるいよ、それ」
*****

ノアと交わした言葉を思い出しながら、ただ真っ直ぐに言う。
吉琳 「この人と、私は違う」
吉琳 「ヴァンパイアと、人間の私を一緒にしないでください」
ノア 「……………」
官僚 「ノア様の口から真実を知りたい」
官僚 「貴方はヴァンパイアですか、人間ですか?」
少しの沈黙の後、ノアはすっと目を細めた…――
ノア 「……そんなの決まってる」

 

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[プレミアENDに進む]

「我慢できなくなりそー…」
きつくうなじを吸われて、体中の熱が高まり…
禁断の恋に溺れてみる…?

 

[スウィートENDに進む]

「やっと、見つけた」
聞き慣れた声が届いて、強い力で抱きすくめられて…
切ない恋に溺れてみる…?

 

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第3話-プレミア(Premier)END:


官僚 「貴方はヴァンパイアですか、人間ですか?」
少しの沈黙の後、ノアはすっと目を細めた。
ノア 「……そんなの決まってる」

(本当のことを言ったら、ノアはここにいられない)
(だから、嘘をついて)

ぎゅっと手のひらを握りしめると、耳元で声がした。
ノア 「吉琳…俺、逃げないよ」

(ノア…?)

ノアはすっと姿勢を正すと、官僚を見据えて告げた。
ノア 「俺はヴァンパイアだ」
ノア 「そして…吉琳と同じ人間」
ジル 「……っ…」
官僚 「それは…どういう意味ですか?」
ざわめく声にも揺らがないで、ノアの声だけが響いていく。
ノア 「俺は半分ずつ持って生まれたんだ」
ノア 「そのことに、ずっと負い目を感じてきた」
落ち着き払った声に、しだいに周囲は静けさに包まれる。
ノア 「隠そうと必死に生きて…」
ノア 「だけど、もう本当のことから逃げたくはない」
ノア 「俺はちゃんと向き合いたい。だけど…」
ノア 「受け入れられないなら、追い出せばいい」

—————————

その言葉に、官僚が顔を見合わせていると……
ジル 「追い出すはずがないでしょう…?」
ノア 「ジル…」
ジルさんは唇に笑みを乗せて、すっと目を細めた。
ジル 「貴方がいないと、ここにいるヴァンパイアは生きていけない」
ジル 「それは貴方がたもよく知っているのでは?」
官僚 「……それは…っ」
ジル 「それに、人間とは実に愚かな存在ですね」
ジル 「ヴァンパイアをかばって嘘までつくんですから」
吉琳 「…ジルさん」
ジル 「こんな方が警戒する存在になると…?」
ジルさんの言葉に官僚の一人が戸惑いながら口を開く。
官僚 「…信じてもいいんですか」
ノア 「それは任せるよ」
ノア 「けど、信頼には誠意で返す。それだけ」
官僚の方々は顔を合わせると、ため息をついて部屋を出ていく。

(…ここにノアがいることを、許してもらえたの?)

ノア 「ジル…」
ジルさんはふっと笑みをこぼすと、腕を組み直した。
ジル 「これから忙しくなりますよ?」
ジル 「今まで以上に働いてもらわないといけませんからね」
ノア 「りょーかい」
ノアは視線を伏せて笑うと、私の手首を掴んで歩き出す。
吉琳 「え…ノア…?」
ノア 「…来て」

***

暗いダンスホールに入ると、
ノアは大きな腕で私を囲うように抱きしめた…――
吉琳 「…!」
ノア 「ねえ、一つ言わせて」

—————————

暗いダンスホールに入ると、ノアは大きな腕で私を囲うように抱きしめる。
吉琳 「…!」
ノア 「ねえ、一つ言わせて」

(ノア…)

エメラルドグリーンの瞳に、甘い言葉を期待して見つめ返すと……
ノア 「無茶しないで」
吉琳 「………え」
ノア 「ヴァンパイアの前であんなこと言って、何かあったらどうしてた?」
ノア 「噛みつく時は噛みつくんだよ…」
ノア 「でも嬉しかったから…あーもう!」
吉琳 「えっと…」
矢継ぎ早に言葉を重ねると、ノアは息をついて私の頭の顎を乗せた。
ノア 「……なに言ってるのか、わからなくなった」
吉琳 「何それ」
 見上げたノアの顔はどこか安心しているように見えて、笑みがこぼれる。

(ずっとこの先も、この笑顔が近くにあってほしい)
(ノアのそばにいるのは、私じゃないと嫌だ)

吉琳 「それじゃ、伝えたいこと私が先に言っていい?」
ノア 「うん…」
吉琳 「ノア、私ここにいたい」

—————————

大きく見開かれたノアの瞳を、下から覗き込む。
吉琳 「好きだよ。ずっと一緒にいてもいい?」
ノア 「本当にそれでいいの?って聞くのが正解かもしれない」
ノア 「だけど…そんなこと聞きたくもない」
抱きしめられていた腕が解かれると、ノアはその場にすっと膝をつく。
ノア 「吉琳と一緒にいる未来しか欲しくない」
ノア 「幸せにする。俺と…一緒にいて」
大きな手が差し出される。

(この手を取ることに、なんの迷いもない)

吉琳 「はい」
手を取ったその瞬間、ぐっと手を引かれて……
吉琳 「……きゃ!」
体勢を崩して胸に手をつくと、うなじに唇が触れていく。
吉琳 「……っ…ノア…」
ノア 「我慢できなくなりそー…」
きつくうなじを吸われて、体中の熱が高まっていく。

(…おかしく、なりそう)

吉琳 「ノア…待って」
ノア 「できそこないだけど、俺もいちおーヴァンパイアだから」
ノア 「気をつけてね、吉琳」
吉琳 「気をつけてねってどういうこと?」
ノアは悪戯に目を細めると、腰を抱き寄せて耳に唇を寄せた…――
ノア 「めちゃくちゃに愛したいってこと」

—————————

ノア 「めちゃくちゃに愛したいってこと」
ノアの大きな手がドレスの裾を割って入り込んでくる。
吉琳 「……ぁ…」

(このままだと止められる自信、ない…)

私まで溺れてしまいそうで、ノアの胸を軽く押して口を開く。
吉琳 「…ストップ!おあずけ!」
ノア 「えー…」
吉琳 「だって…私、ノアを押さえられる自信ないよ」
ノア 「確かに俺も押さえる自信ないしなー」
ノア 「吉琳のこと、噛みたくないし」
ノアは首を傾けると、一度だけ頷いて音をたてて唇にキスをした。

(…!)

ノア 「吉琳に慣れるために、たくさんキスしとく」
吉琳 「ノア…!」
少しだけ欠けた満月に照らされて、ノアは幸せそうに声を出して笑った。

***

――…それから、月の満ち欠けを何度も繰り返し

(見つけた)

湖で寝そべって月を見上げているノアの姿を見つけて顔を覗き込む。
吉琳 「探したんだよ?」
ノア 「あーおはよう、吉琳」
吉琳 「今は夜だから、こんばんはです」
ノア 「こんばんは」
私たちは毎日こんなちぐはぐな会話を繰り返して一緒にいる。
へらっと笑うノアを見て、湖に視線を移すと満月が映っていた。

(……なんだか、最初の出逢いを思い出すな)

黙って水面を見つめていると、
ノアが起き上がり私を後ろからぎゅっと抱きしめた。
ノア 「…吉琳」
吉琳 「ん?」
ノア 「…出逢ってくれて、ありがとね。好きだよ」
吉琳 「突然どうしたの…?」
ノア 「なんだろうね、伝えたくなった」
泣きそうな顔を見られたくなくて、空を見上げる。
何度月が満ち欠けを繰り返しても、欠けることのない想いを抱いて、
私はお腹に回された腕に触れた…――


fin.

 

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第3話-スウィート(Sweet)END:


官僚 「貴方はヴァンパイアですか、人間ですか?」
少しの沈黙の後、ノアはすっと目を細めた。
ノア 「……そんなの決まってる」
苦しそうな声が聞こえて、後ろ手に手をぎゅっと握られる。
その手に、胸が掴まれたような感覚を覚えた。

(ここは、ノアが守ってきた大切な場所でしょ?)
(だから、今だけは嘘をついて)

手をぎゅっと握り返すと、小さく息をつく気配を感じる。
そして、真っ直ぐな声が聞こえてきた。
ノア 「吉琳が言う通り」
ノア 「俺は……ヴァンパイアだ」
ジル 「……これでお分かり頂けたでしょう?」
ジルが口火を切ると、官僚の一人が声を上げた。
官僚 「待ってください。ノア様の件は信じましょう。しかし…」
官僚 「人間がいること自体、問題視されることかと」
吉琳 「……!」
その瞬間、聞いたことも無いノアの鋭い声が響く。
ノア 「月はまだ消えてない」

(ノア…?)

—————————

ノア 「狼がいる場所に、吉琳を放り出すことはさせない」
ノアの威圧感に押されながらも、官僚の無機質な声が落とされる。
官僚 「護衛、そして特別な護送車を出しましょう」
ノア 「……!」
官僚 「人間が傷つくのを見過ごした…などど問い詰められるのは御免ですからね」
官僚 「許可を下ろしてください、ジル様」
ジルは私とノアを交互に見つめると、低い声で頷いた。
ジル 「…ええ、許可しましょう」

***

――…月がまだ昇る夜、私はすぐに護送車に乗せられた
官僚 「ここでお待ちください」
吉琳 「…はい」
ドアが締められると、静寂が訪れる。

(これでもう、ノアとはさよならなの?)
(せめて…あの言葉を謝りたい)

唇を噛みしめたその時……
ノア 「吉琳!」
窓がどんどんと叩かれて、急いで開けるとそこには……
ノア 「…吉琳…!」
吉琳 「…ノア」
ノアは窓から覗き込むと、泣き出しそうに笑う。

(きっと…時間がない)

吉琳 「ノア…ごめんね…」
ノア 「…っ…」
吉琳 「最後に言ったことは…」
言いかけたその時、車のふちに置いた手をぎゅっと握られた…――
ノア 「わかってる…同じ、でしょ?」

—————————

吉琳 「最後に言ったことは…」
言いかけたその時、車のふちに置いた手をぎゅっと握られる。
ノア 「わかってる…同じ、でしょ?」
ノア 「守るために言ってくれたことだって、わかってるから」

(最後なんだから、泣いちゃダメだ…)
(ノアに伝えないと)

吉琳 「ノア、ここで生きて」
ノア 「吉琳…」

(ノアはずっと葛藤して、だけど前を見て歩いてた)

*****
ノア 「ずっと考えてきたんだ、自分が何者なのか」
ノア 「…ここにいても許されるのか」
ノア 「許されるために、その方法ばかり探してた」
*****

吉琳 「ノアは許されるための方法を探してたって言ってたけど」
吉琳 「自分のためだけに頑張ってたわけじゃないでしょ?」
ノア 「……!」
吉琳 「ノアはこのお城に必要な人だよ」
ノアは一瞬だけ視線を伏せると、私の頬に手を添えて呟いた。
ノア 「聞いて」
ノア 「前は居場所を…自分の存在意義を探してばかりだった」
ノア 「だけど、もう自分を探すことはやめにする」
そっと額が重なって、ノアの声が震えた。
ノア 「俺だって、吉琳が教えてくれたから」

—————————

至近距離で視線が重なると、胸の痛みが増していく。

(ほんとはたくさん言いたいことがあるのに…)

溢れる想いは、言葉にならない。
その時、遠くから足音が聞こえてきた。
吉琳 「…っ…ノア、行って」
ノア 「吉琳…」
優しい声が聞こえて、唇が微かに触れた。
ノア 「俺の居場所は、吉琳の隣だ」
吉琳 「ノア…」
その言葉だけを残してノアの姿が消えると、車のエンジン音がかかる。

(……好きだって、言えなかったな)

もう届かない想いを抱えて、私は暗い世界から抜け出した。

***

遠ざかるエンジン音に、ノアが階段に座り込んで顔を歪めると……
ジル 「逢いに行けばいいでしょう…?」
ノア 「ジル…」
ジルはノアを見下ろすと、唇に笑みを乗せる。
ジル 「あの方を探しにいける」
ジル 「それは、陽の光に当たれる貴方だけの特権ですから」
ノアはジルの言葉に眉を下げて笑うと、
吉琳が消えた方向を見つめて告げた…――
ノア 「ジル、俺はこの恋を運命にするよ」

—————————

――…お城から、城下に戻り数日が流れ……
吉琳 「はい、失礼します」
仕事の電話を切って、息をつく。
不意に空を見上げると、そこにはただ当たり前に青い空が広がっているだけだ。

(…夢だったんじゃないかと思う)
(でも……)

*****
ノア 「俺の居場所は、吉琳の隣だ」
*****

今でも鮮明に、あの優しい声を思い出すことができる。

(立ち止まってちゃいけない。前を向いて歩いていかないと)

今でもきっとあの夜に包まれたお城で、
前だけを見て歩いている姿を想いながら足を踏み出したその時……
吉琳 「…!」
肩がぶつかって、その場でよろめいた。
吉琳 「ごめんなさ…っ…」
ノア 「……吉琳」

(…嘘)

吉琳 「……ノア」
ノア 「やっと、見つけた」
聞き慣れた声が届いて、強い力で抱きすくめられる。
吉琳 「どうして…」
ノア 「言いたいことはたくさんあるけど、まずは一番に言わせて」
ノアは冷たい手を頬に添えて、優しく笑う。
ノア 「…ただいま」
その声にたまらず抱きしめ返す。
太陽の下、私たちの恋がここから始まる足音が響いた…――

 

fin.

 

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エピローグEpilogue:

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彼と初めて過ごす禁断の夜…――
彼の視点で描かれる、甘い時間が始まっていく……
ノア 「もっと声、出して」
ノア 「我慢しなくていいから」
細い腰がゆっくり下ろされると、お互いに吐息がこぼれていく……

(…ほんとは、めちゃくちゃにしたくなる)
(めちゃくちゃに、…しそう)

 

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