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Precious Memories~真夜中の鐘がなる時~(アルバート)

        時を越えて伝える想い…―      

今回のシナリオイベントは、なんと全編彼目線

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プリンセス記念日の前夜…
真夜中の鐘が、彼を『あの時』へと誘い、記念日の魔法をかける…―
………
(誤魔化さずに想いを伝えたせいか、)
(今日は、吉琳への気持ちが溢れて…止まりそうにない)

アルバート:真っ直ぐに自分の想いを伝えられる、そういうあなたが…好きです
……
解けない魔法にかけられて、
彼があなたへ贈る最高の夜が始まる…―

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プロローグ:

優しい風が庭の木々を静かに揺らす、ある夜のこと…―
私がプリンセスになって四周年の記念セレモニーを明日に控え、
ウィスタリア城内の慌ただしさは夜まで続いていた。
そんな中…―
私は噴水の縁に腰かけ、何度目かのため息をついていた。

(明日はセレモニーなのに…)
(こんな気持ちのまま、ちゃんとプリンセスとして振る舞えるかな)

数日前、些細なきっかけで彼と想いがすれ違ってしまい、
仲直りが出来ないまま、今日を迎えてしまっていた。

(あの時に戻れたら…)

心の中でぽつりと呟いたその時、
小さく笑う声が聞こえ、ふいに声をかけられた。
ロベール:大きなため息だね。どうしたの?
吉琳:ロベールさん…
ロベール:隣、いい?
吉琳:はい
頷くと、ロベールさんは私の隣にかけて心配そうに視線を向ける。
ロベール:悩んでいるのは、明日のことかな?
吉琳:それも、あるんですが…
彼とすれ違ってしまったことを話すと、
ロベールさんはにこやかに答えた。
ロベール:そう。だから暗い表情をしていたんだね
吉琳:はい…
吉琳:過去に戻れたら、もっと違う言い方をしたのに、なんて思ってしまって…
ロベール:過去に戻る、か。それが出来たら確かに悩むこともなかったかもね
ロベールさんは元気づけてくれるように、優しく微笑んで続けた。
ロベール:でも、きっと彼も吉琳ちゃんと同じ気持ちのはずだから、
ロベール:すぐに仲直りできると思うよ

(同じ気持ち…)

ロベール:だから、元気出して

(そうだよね。きっと、すぐに仲直りできるはず)

ロベールさんに励ましてもらい、心が温かいもので包まれる。
吉琳:…ありがとうございます
ロベール:うん。それじゃあ、もうこんな時間だから、部屋に戻った方がいいよ
ロベール:明日は大事な日だしね
にこっと笑って時計塔を見上げるロベールさんにつられて見上げると、
もうすぐ真夜中になりそうな時間だった。
吉琳:はい。本当にありがとうございます
ロベールさんにお辞儀をして立ち上がり、庭に面した廊下へと向かう。
私は、ふと夜空を見上げて、心の中で呟いた。

(あの人は今、何を思っているのかな…)

その時、真夜中の鐘がウィスタリア中に鳴り響いて…
???:時間が巻き戻せたら…―
ぽつりと呟いた彼に、記念日の魔法をかける…―

 

どの彼と物語を過ごす?
>>>アルバート

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第1話:

眩しい星が瞬く、ある夜のこと…―
プリンセス就任四周年の記念セレモニーを祝うため、
アルバートはウィスタリアを訪れていた。
風が吹き抜ける空中庭園のベンチにかけ、物思いに沈んでいた。

(吉琳に何と言えば…)

後悔が胸を埋め尽くし、何度目か分からないため息をつく。
それは、昨日の昼のこと…―

〝シュタインからウィスタリアに到着したアルバートは、〞
〝吉琳とわずかな時間、言葉を交わし、部屋を後にしていた。〞

〝(遊びに来ているわけではない、と分かってはいる)〞
〝(だが…吉琳と話す時間は幸せだ)〞

〝先ほどまでの吉琳の笑顔を思い出し、〞
〝ついふっと笑みをこぼしてしまう。〞

〝(もっと側にいられたら良かったのだが)〞
〝(…こんなこと、言えるわけはないが)〞

〝心の中でぽつりと呟いた、その時…―〞
〝???:顔が緩んでるよ、アル〞
〝はっとして顔を上げると、そこにはユーリが立っていた。〞

〝(よりにもよって、こいつに見られるとは…)〞

〝眉を寄せるアルバートに、ユーリは構わず話しかけてくる。〞
〝ユーリ:今吉琳様と話してきたんでしょ。分かりやすいなー〞
〝アルバート:うるさい、黙れ〞
〝睨みながら言い返しても、ユーリはますます楽しげに笑うばかりだった。〞
〝ユーリ:まあ気持ちは分かるけどね。離れてるとやっぱり寂しいだろうし〞
〝ユーリ:早く会いたいなーとかいつも思っちゃうでしょ?〞

〝(そんなことは当たり前だが…こいつに言うのは癪だ)〞

〝アルバート:貴様のような気楽な考えはしていない。一緒にするな〞
〝アルバート:そんなことを思うわけがないだろう〞
〝照れる気持ちから、自分の気持ちに蓋をしてきっぱりとそう言い放つ。〞
〝するとその時、小さな物音が聞こえた。〞
〝ユーリ:あっ…

〝(ん…?)〞

〝目を瞬かせるユーリの視線の先を辿って振り返ると、そこには…―〞
〝表情を曇らせた吉琳の姿があった。〞
〝吉琳:あ、その……すみません、聞くつもりはなかったのですが…〞
〝アルバート:…っ…〞

〝(今の話を聞いて…)〞

〝ぎこちなく言葉を紡ぐ吉琳の瞳には、薄く涙の膜が張っていた。〞
〝アルバート:吉琳…〞
〝声をかけようとするも、吉琳は逃げるように視線を伏せてしまう。〞
〝吉琳:私、公務があるので…失礼します〞
〝ユーリ:あ、吉琳様…!〞
〝ドレスを揺らし去っていく吉琳の姿を、〞
〝何も言えず見送ることしか出来なかった…―〞

それから、公務で多忙な吉琳とはすれ違いが続き、
未だにきちんと話す時間を持てていない。

(できることなら、今すぐに吉琳の元へ行きたいが…)
(明日は大事な式典の日だ。俺が訪ねれば心を乱してしまうかもしれない)

それを思うと、行動を起こすこともできない。
アルバート:時間が巻き戻せたら…
思わず、そう呟いたその時、
真夜中の鐘が鳴り響き、庭に強い風が吹いた。
アルバート:…っ……
その勢いに、咄嗟に目を閉じる。
やがて風は治まり、そっと目を開けると…―

(…っここは…?)

辺りを見回すと、そこはシュタイン城の書斎だった。

(これは一体、どういうことだ)
(今まで俺はウィスタリアにいたはずだが…)

信じられない気持ちで、瞳を瞬かせていると…―
???:アルバート…?
声に振り返ると、吉琳が心配そうにこちらを見つめていた。
アルバート:あなたは何故ここに…
尋ねると、吉琳は不思議そうに首を傾げる。
吉琳:眠れそうもなくて…何か参考になる本を探そうかと…

(…ん?)

その言葉に、微かな引っ掛かりを感じた。

(この言葉…覚えがあるような)

吉琳:どうかしましたか?
思わず黙り込むと、吉琳が心配そうに尋ねてくる。
しかし、この違和感をどう伝えていいか分からず、首を横に振った。
アルバート:いえ…何でも
吉琳:そうですか…ならいいのですが
吉琳:同じ質問を二度されるなんて、何だかアルバートらしくないと思って…
吉琳の言葉に、アルバートは驚き瞳を見張って…―

(同じ質問…―?)

そう言われ、胸に抱いた違和感が徐々に解けていく。

(そうだ。先ほど吉琳が言っていたことは、確か…―)

〝アルバート:こんな時間に何をしているのですか〞
〝吉琳:眠れなかったので…明日のために参考になる本を探そうかと…〞
〝アルバート:夜中に出歩くのは、良いとはいえませんが〞
〝アルバート:考えは悪くありませんね〞

吉琳が初めてシュタイン城を訪れた夜、
書斎で共に本を読んだ時にも交わした会話だった。

(…同じ質問をしたということは、)
(今、あの時と同じ状況、ということなのか?)

混乱しながらも考えを巡らせていると、
気遣わしげにこちらを見ていた吉琳が、
ふと何かに気付いたような顔をする。
アルバート:……?
どうしたのかと声を掛けようとしたその時、
吉琳がそっと手を伸ばし…―

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第2話:

吉琳が俺へそっと手を伸ばし…―
アルバート:…っ……
優しく髪を撫でられる感覚と、間近で交わる視線に、鼓動が大きく高鳴る。
戸惑いながら澄んだ瞳を見つめていると、
吉琳の頬が瞬く間に真っ赤に染まっていった。
吉琳:っすみません…
ぱっと伸ばしていた手を離し、吉琳は視線を逸らす。
吉琳:髪が乱れていたので、つい…
アルバート:い、いえ…
首を振ると、吉琳は再び本探しへ戻った。

(この頃から、こうして予想外なことをする方だったな、吉琳は)

懐かしく、同時に愛おしい吉琳の様子に、
混乱していた気持ちが少しずつ落ち着いていく。
冷静さを取り戻したアルバートは、再びこの状況に頭を巡らせた。

(時間が巻き戻って過去を繰り返している…というのは現実的ではない)
(そうなると…恐らくこれは夢なのだろう)

夢らしくない鮮明な感覚を不思議に思いながらも、
まだ頬をわずかに染めたまま、本棚を見上げている吉琳を見つめ…―
アルバートは先ほどの吉琳の言葉を思い返した。

〝吉琳:眠れなかったので…明日のために参考になる本を探そうかと…〞

(眠れないということは…何か悩みがあるのか?)

本を眺める吉琳は、気持ちが落ち着かないのか、
どことなく、そわそわとしているようにも見える。

(この時の俺は、こういった吉琳の些細な変化にも気付けなかった)
(だが、今なら分かる)

アルバートは、そっと吉琳の側へと近付いた。
アルバート:眠れない、と言っていましたね
アルバート:もし、何か心配ごとがあるのなら話してください
吉琳:え…?
声をかけると吉琳が、はっとしてこちらへ向き直る。

(…たとえ夢であっても、)
(吉琳が困っているのを見過ごすわけにはいかない)

そう思った瞬間、思わず吉琳の手を取って…―
アルバート:俺に出来ることなら、力になります
こちらを見上げる瞳を見つめ返し、そう告げると、
吉琳は瞳を瞬かせた後、嬉しそうにはにかんだ。
吉琳:ありがとうございます…嬉しいです

(っ……)

まるで花の綻ぶような優しい笑顔に、胸が甘く締め付けられる。
アルバート:こ、これぐらいで、大げさです
思わず掴んだ手を離し、熱を持つ頬を隠すように顔を背けると、
吉琳が柔らかな声で続ける。
吉琳:何だか昼間にお話した時よりも優しい気がして…
その言葉の途中、吉琳は小さく息を呑み、口をつぐんだ。
吉琳:っすみません、失礼なことを…
アルバート:いえ…

(確かに、この頃の俺は吉琳に厳しく接していたな)

この時はまだ、ウィスタリアのプリンセスである吉琳を、
半ば疑うように見ていたことを思い返す。

(…まさか恋人同士になるなど、予想もしていなかった)

すると、少しぎこちない沈黙の後、吉琳はそっと口を開き…―
吉琳:心配ごと、というほどではないんです
吉琳:ただ、シュタインに初めて来たので、少し緊張してしまって…
アルバート:…そうでしたか
そう答えながら、吉琳の言葉が重く心に響く。

(慣れない土地を初めて訪れて、緊張するなという方が難しい)
(そんなことは、初めから分かっていたというのに…)

〝アルバート:旅行気分でいるのだけは、やめてくださいね〞

冷たい言葉しかかけていなかったことを思い出す。

(まだ吉琳への想いを、はっきりと抱いていたわけではないが、)
(それでも、他に言うべきことがあったはずだ)

素直に吉琳を気遣うことができなかった当時の自分と、
誤解させるようなことを口にした昨日の自分が重なった。

(たとえどんな状況でも、)
(吉琳への想いを誤魔化すべきではなかった)
(…この夢が覚めたら、きちんと想いを伝えよう)

はっきりとした想いを胸に、吉琳に視線を戻すと…―
まだどの本を読もうか迷っているのか、本棚を見上げたまま難しい顔をしていた。

(確かこの時、吉琳が手にした本は…)

棚の端にある、茶色の地に金文字でタイトルが綴られた本を見つける。

(あれだ)

目当ての本を見つけ、手を伸ばしたその時…
アルバート:あっ…
吉琳:す、すみませんっ……
吉琳と手が重なってしまう。
慌てて手を引きながら、また頬が熱を持つのを感じていると、
吉琳も真っ赤になっていた。
アルバート:…タイミングが悪かったですね
吉琳:い、いえ…
首を振った吉琳は、まだ頬をうっすら染めながら言葉を続ける。
吉琳:それよりこの本、アルバートが先に読んでください
アルバート:え?
吉琳:これを読もうと思って、手に取られたんですよね
吉琳に本を差し出され、とっさに答える。
アルバート:それは…あなたがこの本を選ぶと思ったのでつい
吉琳:え?
吉琳の不思議そうな表情を見て、自分の言葉にはっとしたその時、
真夜中の鐘が鳴り響いて…―

 

◆分岐選択◆

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[スウィートENDに進む]

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第3話-スウィート(Sweet)END:

アルバート:それは…あなたがこの本を選ぶと思ったのでつい
吉琳:え?
吉琳の不思議そうな表情を見て、自分の言葉にはっとしたその時、
真夜中の鐘が鳴り響いて…―
アルバート:っ…
どこからか書斎に風が吹き込んだ。
頬を撫でる夜風を感じ、
アルバートは本を手に持ったまま不思議そうにしている吉琳へ声をかける。
アルバート:…窓が開いているようですね。閉めてきます
吉琳:あ…はい
誤魔化すように吉琳に背を向け、
窓辺へと歩きながら、アルバートは小さく息をつく。

(あんなことを言って、吉琳を混乱させてしまっただろうか?)

とっさに口にしてしまった言葉に小さく息をつきながら、
窓に手をかけたその瞬間…―
アルバート:…っ……
激しい風が吹き込み、思わず瞳を閉じる。
やがて、風も治まると響いていた鐘が鳴り止み、目を開けると…―

(…なっ…)

目を開けると、そこはウィスタリア城内の空中庭園だった。

(…やはり、俺は眠っていたのか?)

手元の懐中時計を開くと、真夜中を少し過ぎた時間で、
夢を見ていたのは、ほんの一瞬のようだった。

(何故、あんな夢を…)

考えを巡らせようとして、アルバートはぴたりと動きを止める。

(いや、それよりも大事なことがある)
(夢を見る前は、迷っていたが…今夜のうちに、吉琳へ会いに行こう)
(…もう、想いは誤魔化さない)

アルバートは立ち上がると、吉琳の部屋へと急いだ。
静まり返った廊下に立ち、目の前の扉をノックする。
すると、少ししてから扉が開かれ、吉琳が顔を覗かせた。
吉琳:アルバート…
こちらを見つめる吉琳は、驚いたように目を瞬かせている。
アルバート:もう、休んでいましたか?
吉琳:…いえ
アルバート:それでしたら…少し話してもいいですか?
訊ねると、吉琳はわずかな躊躇いの後、こくりと頷いてくれる。
その目元は、微かに赤く染まっていた。

(眠れずにいたのだろうか…)

胸がぎゅっと締め付けられるような気分になりながら、
部屋に足を踏み入れた。
吉琳:その…お話というのは…
しばしの沈黙の後、どこか不安げにそう切り出す吉琳の姿に、
いてもたってもいられなくなり、思わず、吉琳の手をぎゅっと握って…―
アルバート:…吉琳
吉琳:っ、アルバート…?
戸惑いの表情を浮かべ、アルバートを見つめ返す吉琳に、頭を下げる。
アルバート:昨日は、本当にすみませんでした
アルバート:あんなこと、あなたに聞かせるつもりはなかったのですが…
言いながら顔を上げると、吉琳が、そっとまつ毛を伏せる。
吉琳:…ユーリに言っていたことは…
吉琳:アルバートの本当の気持ちなんですか…?
掠れた、力ない声でそう訊ねられ、アルバートは首を横に振る。
アルバート:っそれは違います
吉琳:え…
吉琳がぱっと視線を上げ、真っ直ぐな眼差しが向けられた。
微かな涙の名残が覗くその澄んだ瞳を、一心に見つめ…―
アルバート:聞いてください、吉琳
アルバート:あなたの恋人となって月日は経ちましたが…この想いは変わりません
秘めていた想いを口にすることで、自分の胸が熱くなるのが分かる。

(そうだ、吉琳に誤解されてしまったあの時…)
(俺が伝えたかったのは、こんな言葉だった)

ユーリの前だからと、強がって隠してしまった本音を口にした。
吉琳:アルバート…
震える声で名前を呼ぶ吉琳の手を、一際強く握りしめる。
アルバート:離れている間もあなたのことばかり考えてしまいます
アルバート:…いつも、会いたいと思っています
吉琳:…っ……
息を呑んだ吉琳は、目尻に小さな雫を滲ませ、
次第に表情を和らげていく。
吉琳:……ありがとうございます
その頬に浮かぶ笑顔は、
夢の中、書斎で見せてくれたものと変わらない、優しいものだった。

(…吉琳を心から愛しく思う)

とめどなく募っていく想いに、全身が満たされていく。
アルバートは、衝動に突き動かされるように、繋いでいた手をぐっと引き寄せ…―
吉琳を、両腕でしっかりと抱きしめた。
アルバート:誤解させるようなことを言ってしまい、本当にすみませんでした
アルバート:…あの時は、照れてしまい…
頬に熱が集まるのを感じながら、ぽつりと呟くと、
吉琳の眼差しがますます柔らかなものになる。
吉琳:私こそ…アルバートの想いをちゃんと聞かずに、すみませんでした
ふわりと微笑んでそう答えてくれる吉琳に、
温かなものに包まれたような心地になる。

(…良かった。想いがすれ違ったまま明日を向かえずに済んで)

再び、吉琳と気持ちを通わせられたことが嬉しく、
改めて、深い愛しさを感じる。

(本当は、明日のために吉琳はもう休んだ方が良いが…)

離れがたく、アルバートは抱き締めた腕を離せないでいた。
何とか気持ちを抑え、手を離そうとした、その時…―
吉琳:………
腕の中の吉琳が、頬を真っ赤に染めながらも、
幸せそうに、アルバートの胸元に頬を寄せる。

(っ、こんなことをされたら…)

アルバート:吉琳
アルバート:あと少しだけ…このままでも良いですか
吉琳:…はい
小さな声でそう答え、吉琳がアルバートの首筋へ腕を回す。

(こうして触れていれば、愛しさが更に増していく)
(…この時間が永遠に続けばと、願ってしまう)

高鳴る二つの鼓動が重なる、甘く、くすぐったい感覚を味わいながら、
アルバートは、吉琳を強く抱きしめた…―


fin.

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[プレミアENDに進む]

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第3話-プレミア(Premier)END:

アルバート:それは…あなたがこの本を選ぶと思ったのでつい
吉琳:え?
吉琳の不思議そうな表情を見て、自分の言葉にはっとしたその時、
真夜中の鐘が鳴り響いた。
アルバートは、その音を耳にしながら、慌てて咳払いをする。
吉琳:今のってどういう…
アルバート:いえ、何でもありません

(こんなことを言っても、吉琳を混乱させるだけだ)

何事もなかったように吉琳へ向き直り、言葉を続ける。
アルバート:それより、もう夜も遅いので部屋まで送ります
吉琳:…いいんですか?
アルバート:ええ、それに…
アルバート:…この本は、あなたが読んでください
差し出された本を返すと、吉琳は、それを大切そうに胸に抱く。
吉琳:…ありがとうございます
アルバート:いえ…
吉琳の礼に首を振りながらも、
柔らかく微笑んでお礼を告げる吉琳に、自然と頬を綻ばせ頷いた…―

***

そうして書斎を後にし、吉琳と並んで廊下を歩く。

(それにしても、本当にあの時によく似た夢だ)
(何故、今になってこんな夢を…?)

改めて不思議に思いながら、吉琳の滞在する部屋の前に来ると、
ふいに吉琳がこちらを見上げ、気遣わしげに口を開く。
吉琳:あの…大丈夫ですか?
アルバート:え?
吉琳:難しい顔をされていたので…
その言葉に、思わず目を瞬かせた。

(本当に吉琳は誰かの心配ばかりする人だ)
(思い返してみれば…この翌日も、そう感じた出来事があった気が)

〝吉琳:こんな風に休む時は、自分のことを大切にしてください〞
〝アルバート:どういう意味ですか?〞
〝吉琳:書斎でお会いした時、国やゼノ様のことを常に考えていると…〞
〝吉琳:だけど、こういう時くらい自分も大切にしてください〞
〝吉琳:せめて、私といる時は…とか…〞

懐かしい記憶がよみがえり、温かな気持ちになる。
同時に、小さな後悔で、胸が痛んだ。

(あの時は、突然のことに驚いて、素っ気ない答えしか返せなかった)

しかし、本音ではずっと、吉琳へ礼を言いたいと思っていた。

(あの時、こう言えれば良かった)

アルバートは、目元を緩めて吉琳を真っ直ぐに見つめて…―
アルバート:ありがとうございます。ですが心配ありません
アルバート:…あなたが側にいると、ほっとするので
吉琳:えっ
吉琳は小さく声をこぼし、目を丸くした。
アルバート:…っ……
心の中で呟いたつもりの言葉が声に出ていたことに気付き、頬が熱くなる。
アルバート:そ、それでは、早く休んでください
慌てて吉琳から視線を外し、そう告げる。
すると、優しい声で吉琳が答えた。
吉琳:…はい。おやすみなさい
思わず顔を上げると、照れたように頬を赤くした吉琳が、
ふわりと口元を緩め、こちらを見つめている。

(っ、また…)

鼓動が大きく跳ねるのを感じる。
そんなアルバートの想いも知らず、吉琳はお辞儀をして部屋に入っていった。
パタリと閉じられた扉を見つめ、深くため息をこぼす。

(心で思っていたことを口に出すとは…)
(吉琳の前では、いつも調子が狂ってしまう)

高鳴る鼓動を鎮めようと、アルバートは近くの壁にもたれ、そっと目を閉じた。
その時、遠くから鐘の音が聞こえる。

(…ん?)
(おかしい…さっき鳴ったばかりだというのに)

段々大きくなる鐘の音に、違和感を覚え瞳を開けると…―

(…ここは…)

何故かウィスタリア城の空中庭園に戻っていた。
戸惑いながら周りを見回してみるが、何も変わったところはない。

(今までのは……やはり夢だったのか)

まだ響き渡り続けていている真夜中の鐘に、自然とそう思った。

(眠っていたのはほんのわずかだったはずなのに)
(随分、現実感のある夢だったな)

その夢の中で抱いた決意を、アルバートは再び胸に抱く。

(…吉琳に誤魔化さず、想いを伝えよう)

アルバートは立ち上がり、足早に吉琳の元へと向かった…―

***

アルバートを部屋に招き入れてくれた吉琳は、
不安げに視線を俯かせている。
表情を曇らせた吉琳に胸が苦しくなり、アルバートは口を開いた。
アルバート:誤解させるようなことを言って、すみませんでした
吉琳:誤解……?
目を瞬かせてこちらを見る吉琳に、深く頷いて続ける。
アルバート:あなたに会いたくないなどと思ったことは一度もありません
アルバート:ただ…照れてしまいあんなことを…
言いながら、頬が熱くなり、視線を逸らしたい衝動に駆られる。

(でも、それでは昨日と同じだ)

アルバートは再び吉琳の瞳を見つめ、言葉が返されるのを待った。
すると…―
吉琳:そうだったんですね
吉琳:アルバートの気持ちをちゃんと聞くのが怖くて…
吉琳:逃げるようにしてしまって、すみません
吉琳は、ほっとしたように柔らかな笑顔を見せてくれる。
その瞬間、胸の奥をぎゅっと掴まれたような心地になった。

(もう、こんな顔はさせたくない)

そんな強い想いから、吉琳の背に腕を回し…―胸に抱き寄せていた。
アルバート:これからはどんなことでも、すぐに俺に言ってください
アルバート:以前のように…

〝アルバート:あなたは、人の心に土足で踏み込むようなところがありますね〞
〝アルバート:だが、不思議と嫌じゃない〞
〝吉琳:アルバートが嫌じゃないなら、伝えて良かったです〞

よみがえる懐かしい記憶と、今、腕の中にいてくれる吉琳が、
愛しさを大きくさせる。
アルバート:真っ直ぐに自分の想いを伝えられる、そういうあなたが…好きです
吉琳は驚いたようにアルバートを見つめ返した後、ふっと頬を緩めた。
吉琳:それでは、アルバートも
アルバート:え?
吉琳:アルバートも何かあったら私に言ってください。約束です
吉琳はそう言って、幸せそうにアルバートの肩口に顔をうずめる。

(吉琳…)

すれ違いが嘘のように、二人の心が寄り添いあっているのを感じる。
髪に手を差し入れ、微かに熱を持った額に唇を落とした。

(もっと触れたいが…)

明日、セレモニーを控えている吉琳に休んでもらおうと、
身体を離そうとすると…―
吉琳:…額だけ…ですか
吉琳がきゅっとアルバートの上着を掴み、真っ赤になって囁く。
アルバート:なっ…
言葉を失っていると、吉琳が困ったようにまつ毛を伏せた。
吉琳:…どんなことでも言っていいと……
控え目にそう告げられる吉琳の想いに、鼓動が甘く震える。
アルバート:っあなたという人は…
アルバート:…明日は大事な日なのでこれでも我慢していました
アルバート:ですが、あなたがそう言うのなら
高鳴る胸の音を聞きながら、そっと吉琳の顎をすくい上げる。

(誤魔化さずに想いを伝えたせいか、)
(今日は、吉琳への気持ちが溢れて…止まりそうにない)

揺れる吉琳の瞳に吸い寄せられるように顔を寄せると、
アルバートはそっと唇を重ね、目眩のするような衝動に身を任せていった…―


fin.

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Epilogue:

仲直りをしたアルバートと、更に愛を深めたあなたに贈るのは…
とろけるような、記念日前夜…―

(何も、考えられなくなりそうだ…吉琳のこと以外は)

やがて愛しさが大きくなり、あなたがアルバートの眼鏡を外して…
アルバート:…これは…
アルバート:もっと近付いてほしいと言う意味ですか?
素肌を滑る指先に、甘い声がこぼれていき…
アルバートと忘れられない夜を、過ごしてみませんか…?

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    創作者 小澤亞緣(吉琳) 的頭像
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    ♔亞緣腐宅窩♔

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