新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):クロード

本編プリンスガチャ

◆ 恋の予感 
  『王宮のダイヤモンド』
◇ 恋の芽生え 
  『権力と幸せ』
◆ 恋の行方 ~夢見るプリンセス~ 
  『嘘とさよなら』
◇ 恋の行方 ~恋するプリンセス~ 
  『信じてるという言葉』
◆ 恋の秘密 
  『夢のあとさき』

新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):クロード

 

 

新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):クロード

 

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◆ 恋の予感 
       『王宮のダイヤモンド』

 

――…賑やかな声がお城を包む、吉琳のお披露目パーティーの夜

(…ギリギリか)

片手に持ったドレスに視線を投げて、月灯りが照らす廊下を歩いて行く。
思い出すのは自分が吉琳に告げた言葉だった。

*****
クロード 「…お前の背中を押すような世界にたった一つのドレス」
クロード 「この俺が作ってもいいか?」
*****

(…手懐けるためだと思えば、ドレス一着縫うくらい安いものだ)

自嘲ぎみな笑みを浮かべて、衣装部屋の扉を開くと……

***

ドレッサーの前に不安そうな顔で座る吉琳の姿があった。
クロード 「吉琳、遅くなって悪かった」
吉琳 「クロード…!」
笑顔を作って、吉琳の膝の上にふわっとドレスを乗せる。
クロード 「ぎりぎりで間に合ったな」
吉琳 「これ……」

(…いい顔をする)

クロード 「驚いてくれたか?」
クロード 「言っただろ?お前の背中を押すドレスを作るって」
吉琳はじっとドレスを見つめると、嬉しさと…不安そうを声を滲ませたまま呟いた。
吉琳 「………このドレス、大切にするね」

(…なんでもない普通の子がプリンセスとして公の場に出る)
(まあ、不安にならないわけがないが……それじゃ困る)

内心でため息をついて、屈んで吉琳の目を覗き込んだ。
クロード 「吉琳、緊張をほぐすついでに話でもしようか」
鏡越しに視線が重なって、言葉を紡いでいく。
クロード 「100年前、ガラスの靴に選ばれて『王宮のダイヤモンド』と呼ばれたプリンセスがいたんだ」
吉琳 「王宮のダイヤモンド…?」
クロード 「その女性は国民の支持を集めて、国王に認められ女王になったらしい」
吉琳 「そんなことってありえるの?」
クロード 「ああ、おとぎ話じゃない。廊下に肖像画が飾られてるだろ」
吉琳は思い出すような表情を浮かべると、一度だけ頷く。
クロード 「その女性はみんなの憧れで、夢と希望だったらしい」
吉琳が数日前に、どこか葛藤するようにこぼした言葉を思い出す。

*****
吉琳 「私にもクロードみたいに、必死になれる夢があればいいのに」
*****

(……夢だなんて笑わせる)
(夢は、目的のための過程をただ綺麗に飾っただけの言葉だろ…?)

それでも夢を探している吉琳に、甘い夢を差し出すこと。
それは自分にとって吉琳の心を手に入れて、自由に操るためには都合が良い条件だった。
クロード 「吉琳、プリンセスを務めることは立派な夢だ」
吉琳 「え…」
クロード 「お前は言ってただろ?夢があればいいのにって」
吉琳の瞳が不思議そうに揺れる。

(吉琳…俺はお前に極上の嘘をつく)

クロード 「誰かの夢になることも、立派な夢の形だろ?」
クロード 「王宮のダイヤモンドじゃなくてもいい」
クロード 「…プリンセスとして出来ることはたくさんあるはずだ」
吉琳 「……っ…」
嘘だらけの言葉を吐き出すと、吉琳が優しく微笑む。
吉琳 「うん…ありがとう、クロード」
クロード 「ああ。…そろそろ時間だな、着替えてダンスホールに」
吉琳 「クロードはどこに行くの?」
クロード 「まさか、この格好ではパーティーに出られないからな」
クロード 「お前も俺も」
自分のシャツ姿を見下ろして、扉に手を掛ける。
クロード 「そうだ、無事にやり遂げたらご褒美にデートでもするか」
吉琳 「二人で?」
クロード 「俺は二人以外をデートとは呼ばない主義だ」
吉琳 「了解」

***

扉を閉めた瞬間、窓ガラスに反射して自分の顔が映る。

(……吉琳の笑顔とは、大違いだな)

そこにはただ、暗い瞳をした男が苦笑いをこぼしていた。

(ダイヤモンドは、磨かなければ光らない)
(吉琳、お前には俺のためにもっともっと輝いてもらう)

ふっと視線を逸らすと、指先に気付かないうちに傷痕が出来ていた。
クロード 「………らしくない」
歩き出すと背中で扉が開く音がする。
振り返ると自分のドレスを纏った吉琳が、
ガラスの靴を履いて走り出す背中が見えた。
クロード 「…………」
その姿に、一瞬だけ指先が痛んだような気がする。

(…自分が求めるものを手に入れるためには)
(多少なりとも痛みを伴うものだ)

傷だらけの手をぎゅっと握りしめて、吉琳に背を向けるように歩き出した…――

 

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◇ 恋の芽生え 
       『権力と幸せ』

 

――…穏やかな陽ざしが降り注ぐ日
クロード 「……では、失礼致します」
国王陛下の私室である重厚な扉を閉めて、息をつく。
助手としても働いてくれている見習いデザイナーのフレッドは自分をちらっと見ると、
不思議そうに首を傾げる。
フレッド 「なんだか今日、クロードさんらしくないですね…疲れてます?」
クロード 「俺らしくないってどういうことだ?」
フレッド 「はい、いつもならこう…もっと国王陛下に挨拶をする時でも…」
口をつぐんだフレッドの頭を手の甲で軽く小突く。
クロード 「偉そうって言いたいんだろ?」
頷くフレッドを見て、作り笑いを浮かべた。
クロード 「俺にだって、たまには大人しくしようと思う時だってある」

***

フレッドと別れると、椅子に深く腰かけた。

(……俺、らしくない…か)

息をついて、ゆっくり目を閉じると……この王宮に来た日のことが思い出される。
――…それは数年前の話

*****
ジル 「…国王陛下から推薦を受けて、本日より王宮のスタイリストを引き受けてくださいました」
クロード 「こんにちは」
カイン 「…へえ、よろしくな」
ノア 「よろしくねー俺より背、高い人って初めてー」
ルイ 「クロード……」
数年ぶりに会ったルイが、自分を見て目を見開く。

(……三人の王位継承者…か)

煌びやかな姿で立つ三人、そして姿を見せないけれど自分から全てを奪った国王。
目の前の光景は、自分が憎むもの以外何物でもなかった。

(……俺は、この場所で全てを奪ってみせる)
(もう、自分の無力を恨むことには飽きたからな)

デザイナー、そしてスタイリストの仮面を被って、
すっと手を差し出した。
クロード 「はじめまして」
*****

クロード 「…………」
ゆっくり目を開けると、見慣れた天井が視界を埋め尽くす。
なぞるように何度も何度も思い返しては憎んでいた記憶が、
なんだか形を変えているような妙な感覚に襲われる。

(…何、不抜けてる)

その瞬間、浮かんだのは吉琳の表情だった。

*****
クロード 「甘えろ、いいな…?」
吉琳 「クロード、それは契約だから?」
クロード 「…………」
クロード 「ああ、そうだ」
吉琳 「……っ…」
クロード 「それ以外、俺の行動理由なんてない」
吉琳 「聞いた私が馬鹿だった」
*****

(契約で脅しているのに…まるで自分を大切だとでもいうような目で見る)
(権力は…幸せでないと、言い切る)

自分が変わった原因があるのだとしたら、それはただ一つだった。

(吉琳といるようになってから……)
(俺の調子は、狂ってばかりだ…)

らしくない感情を振り払うように、帽子を手にしてアトリエを出る。

***

バルコニーに出ると、少しだけ強い風が頬を撫でる。
少しだけ欠けた月を見上げるために視線を上げると……

(吉琳……?)

少し離れた場所に手すりに腕をついて、
どこか寂しそうな表情を浮かべる吉琳がいた。

(どうして…らしくない顔をしてる?)

近づいて声をかけようとしたその瞬間、不意に足が止まる。

(………らしくないのは、俺か)

吉琳がらしくない表情をしていると、くだらない冗談を言いたくなる。

(それで、あいつの…笑顔を見たいと思う)

それでも自分を確実に変えていく存在と、大きくなる感情を認めたら、
歩き方さえ忘れてしまいそうで、全てに蓋をするように帽子に手をかける。

(………気の迷いだ)

そして、まだどこか悲しそうな顔をしている吉琳に、
そっと帽子を被せた。
吉琳 「……!」
クロード 「またジルにでも叱られたか?」
被せられた帽子を吉琳が外すと……
大きな瞳が自分を真っ直ぐに捉える。
クロード 「なんだ、泣いてないな」
曖昧な言葉を吐き出して、大きくなる感情を掻き消していった…――

 

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◆ 恋の行方 ~夢見るプリンセス~ 
       『嘘とさよなら』

 

――…ナイトの称号を捨てて、一人で城下の別邸に戻ってソファーに体を沈める

(全てを手放したことに後悔はしていない。だが……)

どうしても気がかりなのは、吉琳のことだけだった。
淡い陽ざしの中、吉琳のことを考えていると足音が響く。
吉琳 「クロード……」

(もう、足音だけでわかるな)

振り返ると、吉琳が肩で息をして立っていた。
クロード 「お前が来るような気がしてたよ」
吉琳の瞳が何かを必死に伝えようと揺れる。
それでもそれをぐっと堪え唇を噛みしめて、吉琳が歩いて来る。
吉琳 「…クロード、これからどうするの?」
目の前に膝をついて、自分を見上げる瞳に胸が詰まる。
クロード 「そうだな…」
クロード 「ニューヨークにでも行って、有名雑誌のスタイリストになるのもいいな」
クロード 「もてそうだし」
吉琳 「なに……それ」

(ほんとだな…、こんな時に何を言ってるんだ)

だけど、こんな下手な言葉を吐いていないと、
本当の言葉が口を突いて出てしまいそうだった。
クロード 「エジプトに行って、糸の作り方を学んで来るのも楽しそうだ」
クロード 「暑いのはわりと嫌いじゃないんだ」

(この国を出る…だから、付いて来いだなんて言えないだろ)

自分の勝手で、散々吉琳を振り回した。
全てを手放した自分のこの手で、吉琳の手を掴むことはどうしてもできない。
クロード 「寒い場所はお断りだけどな」
表面を撫でるような言葉に、吉琳の瞳がだんだん潤んでいく。

(俺はお前に嘘ばかりついてた、最初からずっと)

*****
クロード 「変な言いがかりはやめてくれ」
衛兵 「クロード様…?」
クロード 「この子は、ただ俺を追いかけて飛び出しただけだ」
衛兵 「し…しかし」
クロード 「なんだ、確証が持てないと不安なのか」
衛兵 「…っ…」
吉琳 「クロード?」
クロード 「確証は俺自身だ」
クロード 「一切の責任は、俺が負う。行くぞ、吉琳」
*****

(全部、自分のための嘘だったけど…今はお前を泣かせないために)
(ただ、そのためだけに下手な嘘をついてる)

クロード 「吉琳…?」
吉琳 「ん…?」
クロード 「スーツケースにでも入って一緒に来るか?」
そう告げた瞬間、吉琳の目が見開かれる。

(スーツケースなんかでお前を連れていけるわけない…)

嘘と本音が混じった言葉を告げて、吉琳を見ていると、
ひどく掠れた声が聞こえてきた。
吉琳 「行けない…」
クロード 「…………」
吉琳 「だって私、スーツケースに入らないし…」
息をしただけで、こぼれてしまいそうな涙を吉琳がぐっと堪える。
吉琳 「それに私はまだ、100日間のプリンセスだから」
吉琳 「一緒には…行けないよ」
クロード 「…ああ」
吉琳はきっと、全てわかった上で言葉を重ねている、
そんな気がした。
吉琳 「それに叶えたい夢も、できたから」
クロード 「夢……?」
吉琳 「100日間が終わったら、このウィスタリアと私の国のかけ橋になりたいの」
吉琳 「まだ方法はわかっていないんだけど」
自分の足で、自分の意思ではっきりと夢を口にする姿がやけに眩しくて、
離さないといけない、そう思うのにひどく愛おしいと思った。

(吉琳、嘘ばかりの関係だった。)
(だけど、これだけは嘘じゃない)
(俺は……お前を)

クロード 「いいね」
クロード 「俺について来るよりも、英断だ」

(……愛してる)

 

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◇ 恋の行方 ~恋するプリンセス~ 
       『信じてるという言葉』

 

――…尋問が開かれる日
窓から見える時計台を見上げたその瞬間……賑やかな声が聞こえてきた。
クロード 「……なんだ?」
フレッド 「クロードさん!」
クロード 「……フレッド、どうして。それに…」
フレッドの後ろには、たくさんの城下の人たちがいる。
ユーリ 「はいはーい、公開尋問に参加する方はこちらですよ」
ユーリが誘導する方に、皆が移動して行く。
ユーリ 「…このままじゃ、入りきらないかも」
吉琳にウィンクして、ユーリは尋問が開かれる謁見の間に歩いて行く。
クロード 「どういうことだ…」
吉琳の方を見ると、柔らかく微笑んだ。
吉琳 「ジルが公開尋問にする手続きをしてくれたの」
クロード 「ジルが…?」
吉琳 「嘘じゃないよ、ジルの力」
クロード 「…そう、か」
その瞬間、胸が甘く軋む。

(吉琳、それはお前の優しい嘘だろ…?)

きっと自分の背中を押すために、こうして人を集めてくれた。

(俺はお前に、最低な嘘しかついていないのに)

吉琳が話す言葉は、吉琳の声はどこまでも強く、
どこまでも優しく自分の背中を押してくれる。
クロード 「…………」
吉琳 「クロード…」
淡い光の中、吉琳が自分を見上げる。
クロード 「……ん?」
吉琳 「クロードが歩いて来た道は、間違ってないよ」

(……っ……)

吉琳は何の迷いも無い表情で、優しく微笑む。
吉琳 「信じてる、誰よりも」
その言葉は、深く胸に響いた。

(…信じるなんて言葉、もうずっと遠くに置いてきたはずだった)
(だけど、吉琳、お前が言うなら)
(もう一度、その言葉を信じてみせようか)

クロード 「信じる、か…お前らしい言葉だな」
吉琳 「うん…」
クロード 「吉琳…」
光に照らされて光る柔らかい髪に手を伸ばして、
遠い昔の無くしてしまった宝物に触るような気持ちで撫でる。
クロード 「お前がしてくれたことは…無駄にしない」
吉琳 「え…」
クロード 「公開尋問をジルに頼んだのはお前だろ?」
吉琳 「…っ…」
吉琳が驚く姿に、思わず笑みがこぼれた。
クロード 「バレバレだ」
言葉を探している吉琳の姿が、愛おしくて仕方ない。
クロード 「お前は……綺麗だよ」
クロード 「綺麗で、一緒にいると自分まで良いものになったような気がする」
クロード 「良いもので、ありたいと思う」
吉琳 「…………」

(……変わりたいと、思う。いや、もう俺はお前に変えられた)
(過去に置いてきた感情を、取り戻させたのはお前だから)

クロード 「俺は、そういう部分にどうしようもなく惹かれたんだろうな」
吉琳 「どうして…今、そんなこと言うの?」
クロード 「言いたくなっただけだ」
笑うと、吉琳の肩にペットのリアンが飛び乗る。
吉琳 「リアン…!」
クロード 「お前が心配して来たわけじゃないことくらいわかってるよ」
そうだ、とでも言わんばかりにリアンがしっぽを振る。
クロード 「俺の心配はいい。だから…お姫様のそばにいてくれよ」
腰を屈めてリアンの頭を撫でると……
レオ 「もうすぐ始まる。吉琳ちゃんはあっちの扉から入って」
吉琳 「うん…」

(時間だ)

レオの声を聞いて歩き出す。
クロード 「……信頼には、心からの誠意をだな」
上着に入れた書類をレオに差し出す。
レオ 「クロード、これ…尋問の受け答えに必要な書類だよ」
クロード 「…レオ、あとで謝るよ」

(もう偽りの言葉は使わない)
(それで、吉琳と向き合いたい。ただ真っ直ぐに)

ただ、それだけを願って重い扉を押し開けた…――

 

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◆ 恋の秘密 
       『夢のあとさき』

 

――…穏やかな陽ざしが王宮に降り注ぐ日のこと

(……もう少し、形を変えた方がいいか)

ルイ 「…………」
吉琳 「…………」
ハサミを手にすると、吉琳がどこか呆れたように呟く。
吉琳 「ねえ、クロード…少し休憩しない?」
クロード 「ん?」
吉琳 「だって、このままじゃルイが疲れちゃう」
時計を見上げると、お昼から採寸を始めたはずなのにもう針はだいぶ傾いていた。
クロード 「ああ、悪かった」
ルイ 「……いいけど、どうして俺がモデルなの」
クロード 「次のコレクションに出すモデルのイメージにはまったから」
ルイ 「…そう」
ルイ 「でも、まさか一から採寸されて…足の形までとられるとは思わなかった」
ぐったりしているルイの姿に、思わず苦笑いがこぼれる。
クロード 「それじゃ、続きは明日だな」
ルイ 「…明日も?」
ルイが目を見開くと、吉琳が可笑しそうに柔らかい笑みをこぼす。

(ん……?)

吉琳 「あ…ごめん。なんだか二人のやり取りが可笑しくて」
あまりに嬉しそうに笑うから、ルイと顔を見合わせる。

(…今、こうしていられるのは)
(お前のおかげだよ)

だからこそ、この瞬間を大切にしたい。

(ルイにモデルを頼んだのは、それが理由だなんて言えないけど)

吉琳を見て笑みをこぼすと、隣で微笑む気配がした。
ルイ 「明日は、もう少し手加減して」
クロード 「…ああ」
ルイの背中を見送ってハサミを机の上に置くと、
吉琳がぽつりと呟く。
吉琳 「クロード、休憩は少しだけ?」

(…ああ、そういうことか)

遠回しな物言いが愛おしくて、腰を抱き寄せた。
吉琳 「……!」
クロード 「長い休憩にしようか」
吉琳 「え?」
クロード 「お前とたまには羽根を伸ばしたいと思ってたところだ」
クロード 「許可してくれますか、お姫様…?」
吉琳は目を見開くと、嬉しそうに微笑んで大きく頷いた。

***

城を出て城下に着く頃には、淡い夕日が街を鮮やかに染めていた。
ウィスタリアの街を一望できる高台まで来ると、
少しだけ冷たい風が頬を撫でる。
吉琳 「こうして、ゆっくり過ごすには久しぶりだね」
クロード 「そうだったか…?」
吉琳 「そうだよ」
吉琳が少しむっとした表情を浮かべる。
吉琳 「朝はスタイリストとして動いてるし、さっきみたいにお昼はデザイナーをしてるでしょ?」
吉琳 「それに最近じゃ夜は、靴を作ってるし」

(……言われてみれば、確かにそうだな)

吉琳と視線が重なると、眉がハの字に下がる。

(……?)

吉琳 「でも、思うんだ」
吉琳 「私は夢を追いかけてるクロードがやっぱり好きだなって」
クロード 「…………」
吉琳 「けど…!」
吉琳が背伸びして顔を覗き込んでくる。
クロード 「なんだ?」
吉琳 「少しでいいから、こういう時間も作ること」

(…何だ、それ)

あまりに可愛いお願いごとに、自然と口元が綻ぶ。

(そんな願いならいくらだって叶えるよ)

クロード 「少しでいいのか?」
吉琳 「…?」
クロード 「俺は、少しじゃ物足りないんだけど」
風に吹かれる前髪をそっとわけて、額に触れるだけのキスを落とすと、
吉琳の首筋が赤く染まる。
吉琳 「…クロードの欲張り」
そういう照れ隠しが、胸を甘くくすぐる。
何気ない瞬間、何気ない仕草、吉琳と過ごす時間に満たされながら、
出逢ったばかりの頃に交わした言葉がよみがえってくる。

*****
吉琳 「ねえ、クロードはこの先にどんな夢があるの?」
クロード 「この先…?」
吉琳 「だってたくさんのことを叶えてたら、もっとその先のことを叶えたくなるでしょ?」
クロード 「…そうだな」
クロード 「俺は王になるよ」
*****

(……たくさんのことを叶えたら)
(もっとその先のことを叶えたくなる…か)

クロード 「確かに、俺は欲張りだな」
見下ろすと、不思議そうに吉琳が首を傾げる。

(夢を見失ってた)
(だけど、今は数え切れないほどの夢がある)

クロード 「…こうして、お前と同じ景色を見ていたい」
吉琳 「……クロード」

(お前と見る景色は、なんだか綺麗に見えるから)

クロード 「手を伸ばせば抱きしめられる場所にいてほしい」
吉琳 「…………」

(ここに、幸せがあるって思えるから)

クロード 「キリが無いけど、要は…」
クロード 「お前のそばでたくさんの夢を叶えて行きたい」

(…一つでも多くの笑顔を見たいから)

泣き虫な吉琳は、泣くのを堪えるように、
ただこくこくと頷いている。
少しだけ強い風が吹いた瞬間、華奢な吉琳の体をこの両手で抱きしめた。
吉琳 「クロード……っ」
クロード 「吉琳…」
クロード 「お前は俺の新しい夢だよ」
その瞬間、大きな瞳からダイヤモンドのような涙がこぼれ落ちる。
クロード 「お前はほんとによく泣く。いい加減、枯れないか心配だ」
吉琳 「…クロードのせいでしょ」
吉琳は鼻をすんっと鳴らすと、照れくさそうに笑う。
吉琳 「でも……ありがとう」

(…それは俺の台詞だ)

愛おしさが言葉を塞ぐ。
いつまでも泣きやまない吉琳の頬にそっとキスをして、
もう一度しっかり抱きすくめた…――

 

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    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()