Screenshot_2016-12-04-07-21-391

Winter Wonder Land~クリスマスの奇跡~(ジル)

Screenshot_2016-11-30-17-52-091

雪降る街にふたりきり。。。

Screenshot_2016-12-03-20-37-311

キャンドルに火が灯され、ツリーに飾られた星が輝くクリスマスイヴ。
けれど、あなたと彼は、おとぎ話のように不思議な街に迷い込んでしまい…
クリスマスの奇跡が、彼とあなたに降り注ぐ…―
………
……
ジルが、あなたの耳元に唇を寄せ…―
ジル 「…今日の貴女は魅力的すぎて、目が離せそうにありませんね」
ジル 「まだ、イヴは始まったばかりですよ」
……
彼の温もりに、降り続ける雪の冷たささえ忘れていく。
とびきり甘いイヴの夜が、あなたを優しく包みこむ…―

christmas_dividers10

Screenshot_2016-12-03-22-50-08

【プロローグ】

空がかすかに茜色を帯び始めた、穏やかな夕暮れ…―
クリスマスイヴを迎えたウィスタリア城では、
今夜のパーティーに向けて飾り付けが行われていた。
ジル:…これで準備は完璧です
レオ:それにしても…あの二人も手伝ってくれるなんてね
並んでホールを見渡す二人の視線の先では、
シドがツリーのてっぺんにある星の位置を直し、
ルイがテーブルに置かれた花瓶の花を直していた。
ルイ:ジル、出来た
ジル:ありがとうございます、ハワード卿
ジル:お手を煩わせてしまって、申し訳ございません
ルイ:気にしないで
なんでもないことのように答えるルイとは反対に、
星を直し終わったシドは面倒くさそうに眉根を寄せた。
シド:ったく…こんなもん、使用人に任せりゃいいだろ
ジル:メイドでは手が届かなかったのですよ
ジル:たまたま通りがかったのですから、これくらいは頼まれてください
シド:こいつと扱いが違いすぎだろ。手伝い料請求するぞ
レオはそのやりとりに苦笑してから、
テーブルの上に置かれた招待状を手に取った。
レオ:あとは、吉琳ちゃんにこの招待状を渡すだけだね
ルイ:今夜のパーティー、吉琳には秘密にしてたの?
レオ:そう。驚かせようと思って
その時、ジルがふと何かに気付いたようにホールの入口を振り返った。
ジル:…おや。またどこかに行ってしまったようですね
ルイ:どうかしたの?
ジル:最近、ミケランジェロがよく姿を消すのですよ
ジル:さきほどまであのあたりで遊んでいたはずですが…
シド:ミケランジェロ…? …ああ、お前が飼ってた猫か
ルイ:…実は、シャルも最近どこかに行ってることが多いんだ
飼っている小鳥の様子を思い出し、ルイが不思議そうに首を傾げる。
レオ:恋人のところにでも行ってるんじゃない?
レオ:明日はクリスマスだし
当然のように言うレオに、シドが呆れたような顔になる。
シド:…相変わらずちゃらついてるな、お前
レオ:だって、誰もが思うことでしょ?
レオが微笑んで、言葉を続けた。
レオ:『クリスマスは、大切な人と過ごしたい』って

***

一方その頃、執務室では…―
ユーリ:吉琳様、今日の公務はもう終わりだよ
ユーリ:せっかくのイヴなんだし、楽しまなくっちゃ
吉琳:うん、ありがとう
私は書類から視線を上げて、
デスクにティーカップを置いてくれたユーリに微笑んだ。

(クリスマスイヴか…)
(せっかくだから、今夜と明日は大切な人と過ごしたいな)

カップを傾けながら彼のことを想って、自然と唇に笑みが浮かぶ。

(あ、そういえば…)

私はユーリに借りたままだった本があることを思い出し、
本棚から、どこかクリスマスを思わせる赤と緑の背表紙の本を抜き取った。
吉琳:ユーリ、この本ありがとう。面白かったよ
ユーリ:よかった。気に入ってくれた?
吉琳:もちろん。クリスマスに、不思議な街に迷い込むなんて…
吉琳:今の時期に読むのにぴったりなお話だね
ユーリ:うん。もし本当にこんなことが起こったらって思うと、わくわくするよね
ユーリと笑みを交わし、本を渡そうとしたその時、
ページの間から、栞がするりと抜け落ちた。
吉琳:あっ、ごめん
拾おうとしてしゃがむと……
栞と私を遮るように、何かふわふわとしたものがさっと横切った。

(え…?)

顔を上げて、ふわふわの正体を確かめる。
隙間の空いたドアの側で、ジルの飼い猫のミケランジェロが、
栞をくわえたままこちらを見つめていた。
ユーリ:ミケランジェロ、いつの間に…
次の瞬間、ミケランジェロはくるりと背を向け、執務室を出て行ってしまう。
吉琳:っ、ちょっと待ってて、返してもらってくるから
ユーリ:あ、吉琳様…!
ユーリが呼ぶ声を背中に聞きながら、私はミケランジェロを追って廊下に出た。

***

そしてすぐに、突き当たりに辿りつく。
吉琳:ほら、いい子だから、その栞をちょうだい
こちらをじっと見上げるミケランジェロに微笑みかけると…―
ミケランジェロが背を向け、ぴょんと壁の中に飛び込んでいった。

(…えっ…今、何が起こったの…?)

さっきまで目の前にいたはずのミケランジェロの姿が、跡形もなくなっている。

(この壁の中に…?)

おそるおそる壁に手を触れると、
そこは水面のように波打って、私の肘まで飲み込んだ。

(……!)

???:吉琳!
誰かが私の呼ぶ声が聞こえたのと同時に、
もう片方の手首を掴まれる。

(誰っ…?)

振り返るよりも先に、あたりはまぶしい光に包まれた。

(何が起こってるの…!?)

目がくらむ中で、私の手首をしっかりと掴む温もりだけを感じる。

***

そうして辿りついたのは、
ホワイトイヴの粉雪が舞う、不思議な街だった…―

 

どの彼と物語を過ごす?

>>>ジルを選ぶ

Screenshot_2016-12-03-22-47-091

christmas_dividers10

第1話:

 

目の前を白く包み込む、眩しい光がおさまった後…―
ゆっくりと瞼を開けると、
目の前には粉雪の舞う、真っ白な街並みが広がっていた。

(え…? ここ、どこだろう)

あたりは、普段見慣れている城下のようでいて、
細い路地や立ち並ぶ店の様子は、見覚えがない。

(さっきまでお城にいたはずなのに…)

見慣れない景色に呆然としていると、すぐ後ろから声がかけられる。
???:これは一体、どういうことでしょうか
振り返ると、そこにはジルの姿があった。
吉琳:ジル…!? もしかして、ジルも突然ここに…?
ジル:ええ。廊下で貴女の手を掴んだら、いつの間にか
辺りを見回したジルが、真剣な声音で呟く。
ジル:ここは、城下ではないようですね…
吉琳:ジルが言うならやっぱり、そうですよね

(クリスマスが近いからかな。みんなすごく楽しそう…)

笑顔の溢れる街とは対照的に、私の心には不安が湧きあがってくる。

(一体どうしてこんな街に来てしまったんだろう…)

俯いて足元に視線を落としたその時、頭上で何かがガサっと揺れる。

(何…?)

音のした頭上を見上げると…
突然、目の前に青年が飛び降りてきた。

(っ今、木の上から降りてきたの?)

驚く私たちを気にした様子もなく、青年が口を開く。
???:ふたりとも、ここにいたんだ
クリーム色の髪をふわっと揺らして木の上から現れた青年が、
しなやかな足取りでジルと吉琳に歩み寄る。
青年:どう? わくわくする?
青年:喜んでくれてもいいけど
どこか誇らしげに言うと、その青年はにこやかに私の両手を取った。
暖かい手に包まれながら、思わず首を傾げる。

(誰だろう…?)

すると、ジルがやんわりと青年の手首を掴む。
ジル:…どなたか存じませんが、彼女を離していただけますか?
青年の手が離れると、ジルは守るように私を後ろに下がらせた。
青年:…ジルのやきもち焼き
ジル:私のことを知っているのですか?
驚いたようなジルを見て、青年は拗ねたようにふいと視線を逸らした。
青年:知ってるよ。だって、毎日会ってるし。…分からない?

(え…?)

毛先に茶色のグラデーションがかかった髪をするりとひと房つまみ、
青年が目だけでジルを見上げる。
ミケ:ミケランジェロだよ。今は人間の姿を借りてるけど、ほら、毛の色が一緒でしょ?
ジル:ミケランジェロ…?
ジルが怪訝そうに眉根を寄せる。

(でも、ミケランジェロって……)

吉琳:っ、ジルが飼っている猫の…?
信じられない気持ちで尋ねると、青年は嬉しそうに頷いた。
ミケ:そう。プリンセスはこれで信じてくれるんじゃない?
そう言うと、青年がポケットを探り…―
出して見せたのは、見覚えのある栞だった。

(これ…ユーリの本に挟まっていた栞…!)

ミケ:ほら、ね?
覗きこむように私を見る目の前の青年の瞳が、
落とした栞をくわえて私を見上げたミケランジェロの瞳と重なって見える。
ジル:…本当に、ミケランジェロなのですか?
ミケ:ジルが驚くのも無理ないけどね

(信じられないような話だけど…)
(でも、嘘を言っているようにも見えないな)

吉琳:それじゃあ…ミケランジェロ、ここはどこなの?
ミケ:ここは、『ウィンターワンダーランド』だよ
ミケ:冬の間だけ出入りできる、動物たちの街
嬉しそうに目を輝かせたミケランジェロが、誇らしげに顔を上げた。
ジル:動物たちの街…?
ミケ:そう。でも、ここにいる間は人間の姿を借りて過ごすことになってるんだ
ジル:…私たちをここに連れてきたのは、貴方ですか?
ミケ:うん、そう
ミケランジェロが、あっさりと頷いてみせた。
ミケ:出入り口は色んなところにあっても、人間は滅多に入って来られないんだけどね

(じゃあ、私が触れた廊下の壁が、この世界への出入り口だったんだ…)

栞をくわえたミケランジェロが、壁の中に消えていく光景がよみがえる。
ジル:信じられないような話ですが…貴方を疑っても仕方ありませんね
小さく息をつき、ジルがさっきよりも優しい瞳でミケランジェロを見た。
ジル:ミケランジェロ、帰る方法を教えなさい
ジル:私たちをここに連れて来たのなら、どうすれば帰れるかも知っているでしょう?
ミケランジェロに問いかけるジルに、ほっと胸をなでおろす。

(よかった…急にいなくなったから、お城の人も心配してるだろうし…)
(でも、どうしてミケランジェロは私たちをここに連れてきてくれたんだろう?)

ジルが一歩近づくと、ミケランジェロは逃げるように後ずさり…
重力などないように、ひらりと塀の上に飛び乗った。
ミケ:…プリンセスはここに来たかったんでしょ?
ミケ:だからわざわざ案内してあげたのに…

(あっ…)

拗ねたようにふいっと顔を逸らしたミケランジェロを見て、
ふとユーリとの会話を思い出す。

〝吉琳:クリスマスに、不思議な街に迷い込むなんて…〞
〝吉琳:今の時期にぴったりなお話だね〞
〝ユーリ:うん。もし本当にこんなことが起こったらって思うと、わくわくするよね〞

(もしかして、ミケランジェロはあの会話を聞いてここに案内してくれたの…?)

ミケ:それじゃあね。せいぜい楽しんでいきなよ
吉琳:あっ、待って…!
止める間もなく、ミケランジェロは猫のような素早さで塀の上を駆けて行ってしまった。

(拗ねちゃったみたい…)

ジル:…まったく、困った子ですね
ミケランジェロの後ろ姿を見送って、ため息交じりにジルが呟いた。

(でも、ミケランジェロはきっと…)

吉琳:ジル…ミケランジェロのこと、あまり怒らないでください
ジル:吉琳?
吉琳:ミケランジェロは、本当に私が喜ぶと思ってここに連れてきてくれたんだと思います
ミケランジェロが私とユーリの会話を聞いていたことを伝えると、
ジルの表情がふっと緩んだ。
ジル:…そういうことだったのですか
吉琳:はい。…すみません、ジルも巻き込んでしまって
ジル:貴女が謝ることはありません
そう言って、ジルが私の前に手を差し出す。
ジル:城に着いたら、すぐに温かい紅茶を淹れて差し上げます

(ジル…)

ジルの手を取ると、優しく微笑みかけられて、
ぽっと明かりが灯ったように胸が温かくなっていく。
ジル:とりあえず、街を歩いてみましょうか
ジル:何か手掛かりがつかめるかもしれませんし、
ジル:ミケランジェロのことも見つけられるかもしれません
ジルは安心させるように、ぎゅっと握る手に力を込めた。
ジル:あの子は、帰り道を知っている様子でしたから
吉琳:そうですね

(ジルは、こんな時でも冷静ですごいな…)

この世界に来た時に感じていた不安が、ジルの言葉で溶けていく。
並んで歩く雪景色の街並みは、素直に美しく思えた。

(…道を歩く他の人たちもみんな動物なのかな? なんだか不思議…)

ミケランジェロが言っていたこの街の説明を思い返しながら歩いていると…
やがて、人通りの少ない場所にたどり着く。
吉琳:ジル、見てください。あんなところにヤドリギが
道の脇には、一本だけ大きく立派なヤドリギの木が立っていた。
ところどころに、ころんと丸い形に葉が茂る木に歩み寄る。

(わあ…こうして見ると、本当に大きい)

ジル:吉琳
見上げていると、後ろから歩いてきたジルにそっと声をかけられた。
ジル:クリスマスに、不用意にヤドリギの下に行ってはいけませんよ

(え…?)

吉琳:どうしてですか?
理由がわからず尋ねると、ジルがゆっくりと口を開く。
ジル:それはですね…

(あっ……)

ヤドリギの下に来たジルに、ふいに腰を抱き寄せられ…―
唇に、優しくキスが落とされた。
ジル:こういうことに、なるからです

christmas_dividers10

第2話:

 

ヤドリギの下に来たジルに、ふいに腰を抱き寄せられ…
唇に、優しくキスが落とされた。
ジル:こういうことに、なるからです

(っ…)

吐息の触れる距離で甘く囁かれて、頬が一気に熱くなる。
ジル:『ヤドリギの下にいる人にはキスをしてもいい』という話…
ジル:聞いたことはありませんか?
吉琳:…そいういえば、前にクリスマスの逸話として聞いたことがあるかもしれません…
恥ずかしくて下を向くと、ジルの手に顎を掬いあげられる。
親指がゆっくりと私の唇をなぞっていくと、胸の奥が甘く疼いた。
ジル:では、忘れないようにしてください
ジル:貴女の唇を、他の誰かに奪われるわけにはいきませんから

(…っ……)

艶めいた笑みを浮かべると、ジルはそっと体を離して手を差し伸べる。
ジル:では、参りましょうか
吉琳:っ、はい…
繋いだ指先から伝わる温もりと、治まらない胸の高鳴りに、
絶え間なく降りそそぐ雪の冷たさも忘れてしまいそうだった。

(早くお城に帰らないといけないのに、こんなこと思うのはいけないことかもしれないけど…)
(なんだか、ジルとデートしているみたい)

心が甘く満たされていくのを感じながら、ふと顔を上げると、
柔らかな街灯の光に照らされた道の先に、ぽつんと置かれたカードが目に入る。
吉琳:ジル、これは何でしょうか…?

(雪に濡れてない…。ついさっき置かれていったものみたい)

一緒にカードを覗きこみ、書かれた文字に目を滑らせる。

『帰りたいなら、この街で一番大きな広場を探してみなよ』

読み終えると、ジルの口元に笑みが浮かんだ。
ジル:どうやら、ミケランジェロが置いていったようですね
ジル:広場は…あちらにあるようです
ジルの視線の先には、広場の場所を示す案内板が建っている。
吉琳:行ってみましょうか
ジル:ええ

***

そして広場への道を歩いていると、やがて開けた場所にたどり着いた。
ジル:案外すぐに見つかりましたね
吉琳:はい。…でも、何もないみたいですけど…
暖かなオレンジ色の光が漏れる建物以外、
広場には大きなモミの木があるだけで、誰の姿も見当たらない。

(本当に、ここに帰るためのヒントがあるのかな)

あたりを見回していると、ふいにジルが声を上げた。
ジル:吉琳、またカードがありました
植え込みの一画に咲くクリスマスローズの花の上から、
ジルがそっとカードを拾い上げる。

『モミの木の側で、するべきことをして』

吉琳:モミの木の側…?
私たちの視線は、自然と広場の中心にあるモミの木に向かう。
吉琳:するべきこと、ってなんでしょうか
ジル:もう少し近づいてみましょう
ジルの後に続き、モミの木に向かって歩みを進めると…
???:本当に帰るの? もっと遊んで行けばいいのに
私たちの後ろにはミケランジェロの姿があった。
吉琳:ミケランジェロ…
ミケ:…別に、帰ってもいいけど
言葉とは裏腹に、ミケランジェロはどこかしゅんとして見える。

(…最初はびっくりしたけど、素敵な思い出もできたし)
(せっかくのクリスマスだから、ミケランジェロも笑顔になって欲しいな)

心からの気持ちを込めて、私はそっと口を開く。
吉琳:…私が喜ぶと思ってここに連れてきてくれたんだよね
吉琳:ありがとう。ミケランジェロとこうしてお話できて、嬉しかったよ
すると、ミケランジェロは驚いたように、わずかに目を見開いた。
ミケ:プリンセス…
ミケランジェロの元に歩み寄ったジルが、静かにその名前を呼ぶ。
ジル:ミケランジェロ
ミケ:……っ
ジル:突然私たちをこの街に連れてきて、
ジル:帰り道を言わずに去ったことに関して言いたいことはありますが…
ジルの手が、緊張した様子のミケランジェロを優しく撫でた。
ジル:プリンセスを喜ばせようとしたことについては、褒めて差し上げます
嬉しそうに緩んだ顔のミケランジェロが、小さな声でぽつりと呟く。
ミケ:…もっと撫でても良いよ
澄ましたようなミケの言葉に、ジルがふっと柔らかい笑みを浮かべた。
ジル:仕方ありませんね

(…素直じゃないところも可愛いな)

二人の微笑ましいやりとりを見ながら、私も?思わず頬が緩む。
すると、ふいにミケランジェロが私を見た。
ミケ:それじゃあ…プリンセスにだけ、最後のヒントをあげる
ジル:なぜプリンセスだけなのですか…?
ミケ:その方が、ジルが喜びそうだから。耳を貸して

(どういうことだろう…?)

不思議に思いながら、手招きをするミケランジェロに耳を寄せると…
ミケ:モミの木の上の方に、ヤドリギがあるでしょ
そっと、私にだけ聞こえる声で囁きかける。
吉琳:あっ、本当だ…
ミケ:…クリスマス、ヤドリギの下にいる人にすることは?
そう言って顔を離したミケランジェロの瞳には、楽しそうな光が浮かんでいる。
吉琳:え…?

(それってもしかして…)

〝ジル:『ヤドリギの下にいる人にはキスをしてもいい』…〞
〝ジル:という話を聞いたことはありませんか?〞

ミケ:そうしたら帰れるから
ミケ:言っておくけど、ジルからじゃ意味ないからね

(っ、やっぱり、私からキスを、っていうことだよね…)

ミケ:それじゃ、僕は先に帰るけど…
ミケ:ジル、プリンセス、良いクリスマスを
ミケランジェロが悪戯っぽく微笑んだかと思うと、
一瞬のうちにきらきらと輝く光に包まれ、消えてしまった。

(行っちゃった…)

すぐに会えるとわかっていても、少し寂しい気持ちになる。
ジル:…飼い主を置いて帰るなど、薄情な子ですね
吉琳:気まぐれなところは、本当にいつものままでしたね
困ったように笑っていたジルが、優しく口を開く。
ジル:それで…ミケランジェロから、ヒントはもらえましたか?
吉琳:っ、はい…
この後のことを思うと、どこか緊張してしまう。

(恥ずかしいけど…帰るためにはそんなこと言ってられないよね)

吉琳:ジル、もう少しモミの木の側に寄ってもらえますか?
ジル:分かりました。…このあたりでしょうか
ジルの上にヤドリギがあるのを確認して、ゆっくりと側に歩み寄る。

(きっと、変に意識しちゃうから恥ずかしいんだよね)

段々と速くなる鼓動を感じながら、私はそっとジルを見上げた。
ジル:…吉琳?
頬が熱くなっていくけれど、思い切って口を開く。
吉琳:えっと…ジル、キスをしても良いですか?
ジル:っ…
驚いたようなジルを見て、ハッとする。

(『目を閉じてください』とか、)
(そういう言い方の方が良かったかも…っ)

恥ずかしさで俯きながら、言い直そうかと迷っていた時…
ジル:…どうぞ
ジルの柔らかい声が耳に届いた。
ジル:たとえ私がヤドリギの下にいなくても、
ジル:貴女なら許可なんて必要ありませんよ
ジル:貴女は私の…大切な恋人ですから
微笑んで静かに目を閉じるジルに、どきっとする。

(…どうしてキスひとつで、こんなにドキドキするんだろう…)

ジルの胸元に手を置いて、小さく背伸びをする。
溢れる愛しさを伝えるようにそっと唇にキスを落とすと…

(…っ…)

その瞬間、
あたりが白く輝きだして暖かな光が私たちを包み込んだ。

(あ…来た時と同じだ…)

ジル:これが帰る方法だったのですね
辺りの景色は降りそそぐ雪に溶け込んで、段々と白く滲んでいき…―

 

 

christmas_dividers10

第3話-プレミア(Premier)END:

 

辺りの景色は降りそそぐ雪に溶け込んで、段々と白く滲んでいき…―
気付くと、私たちは見慣れた部屋に立っていた。
吉琳:帰って来たの…? どうして私の部屋に…?
ジル:ミケランジェロが、
ジル:出入り口はたくさんあると言っていましたからね
ジル:ここもそのひとつなのでしょう

(よかった…じゃあ、本当に帰ってこられたんだ…)

帰って来たことを確かめるようにあたりを見回すと、
ジルが窓を開けて外を確認する。
ジル:…ウィスタリアには、まだ雪は降っていないようですね
吉琳:なんだか…まるで、夢を見ていたような気分です
白い雪が降りそそぐ不思議な街を思い出し、ぽつりと呟いた。
ジル:ええ。もし夢だとしても、悪い夢ではありませんね
そう言って微笑むジルに抱き寄せられて、
すっぽりとジルの胸に収まってしまう。
ジル:…珍しく、貴女が積極的に振る舞ってくださいましたから

(っ…)

モミの木の下で交わした口づけをほのめかされて、ドキっとする。

(確かに、自分からしたけど…)

吉琳:あれは…ミケランジェロが教えてくれた帰る方法で…
恥ずかしくて口ごもると、ジルが眉尻を下げて口を開く。
ジル:ウィスタリアに帰るためでなければ、
ジル:あんなことはしなかった…ということですか?
ジル:そんな風に言われてしまうと、少々悲しいですね
口元に少しの苦笑を滲ませたジルに、わずかに胸が締め付けられる。
吉琳:っ、いえ、決して嫌だったとか、そういうことでは…
誤解を解こうと慌てて紡いだ言葉はジルによって遮られた。

(えっ…)

私の唇にそっと人差し指を押し当てたジルが、にっこりと笑みを深める。
ジル:それでは、もう一度お願いいたします
吉琳:もう一度…?
ジル:ええ

(恥ずかしい、けど…)

嬉しそうに微笑むジルに応えたい気持ちと、恥ずかしさの間で心が揺れる。

(でも…)

〝ジル:たとえ私がヤドリギの下にいなくても、貴女なら許可なんて必要ありませんよ〞
〝ジル:貴女は私の…大切な恋人ですから〞

(ジルは、いつもきちんと想いを伝えてくれる)
(あの不思議な街でだって…)

ジルの言葉を思い出すだけで、胸が甘く満たされていく。

(…だったら、私もちゃんと伝えないといけないよね)

そう決意をすると、私は目の前のジルを見つめ…―
ジル:吉琳?
私の名前を呼ぶ唇に、そっと触れるだけのキスをする。

(……っ!)

すぐに離れようとすると、ジルの手が私のうなじを引き寄せた。
吉琳:んっ…
不意打ちのジルからの口づけに驚く間もなく、より深く唇が重ねられ…
吉琳:……ん、ぁ…
舌先で優しく唇を押し開かれると、甘い吐息がこぼれ落ちた。

(どうしよう…もう…っ)

体の力が抜けて、ぎゅっとジルの胸元のシャツを掴む。
すると、ゆっくりとジルの唇が離れていった。
ジル:よく出来ました
私をしっかりと支えながら、ジルがふっと微笑んだ。
吉琳:…これで、信じて頂けましたか…?
まだ乱れる息を整えながら、ジルに尋ねる。
ジル:最初から、疑ってはいません
ジル:貴女をからかっただけですよ

(…そんなっ)

涼しい笑顔でさらっと答えられて、かあっと頬が熱くなる。
吉琳:っ、意地悪です…
ジル:すみません。慌てる貴女が可愛らしかったので
口元に笑みを浮かべたままそう言うと、ジルがふと部屋の時計に視線を移した。
ジル:そろそろ時間ですね

(え…?)

首を傾げると、ジルの目が悪戯っぽく細められる。
ジル:少し早いですが、貴女にクリスマスプレゼントがあります
ジル:取りに行って参りますので、少し待っていてください

(プレゼント…?)

するりと私の頬を撫で、ジルが部屋を後にする。

***

すぐに戻ってきたジルは、大きな箱を抱えていた。
ジル:…さぁ、どうぞ
ベッドの上に箱を下ろして、ジルが私を促した。
吉琳:開けていいんですか…?
驚きながら問いかけると、ジルが優しく頷いた。
はやる気持ちを抑えながら、赤いリボンを解いていく。
そして大きな箱を開けると…

(わあ、綺麗…!)

中から出てきたのは、
胸元に宝石があしらわれた、鮮やかなラベンダー色のドレスだった。
吉琳:こんなに素敵なもの、頂いていいんですか…?
そっと手に取り胸元にドレスをあてると、ジルが頷いた。
ジル:貴女のために作らせたのですから、当然です

(ジル…)

何よりもジルの気持ちが嬉しくて、私は緩む頬をそのままにジルを見る。
吉琳:ありがとうございます
お礼を言うと、ジルの手が柔らかく私の頬に触れた。
ジル:…今からこれを着て、ホールの前へ来てくださいますか?

(え…?)

突然の誘いに驚いて、つい同じ言葉を繰り返す。
吉琳:ホールへ、ですか…?
ジル:ええ
大きく頷いて、ジルが私を覗きこむ。
近づいたジルの綺麗な瞳に、とくんと胸が高鳴った。
ジル:貴女に、お見せしたいものがあります

***

ドレスに着替えた私は、ジルと約束したホールの前にやって来た。

(ジルの見せたいものって、何だろう…?)

思いを巡らせていると、後ろから声が掛けられる。
ジル:吉琳
振り向くと、そこには礼服を着たジルの姿があった。

(ジルも準備してくるって言っていたけど、)
(このことだったんだ…)

普段はなかなか見られない姿に、ひと際大きく胸が高鳴る。
ジル:どうしました? そんなに見つめて
目を逸らせずにいると、ジルが可笑しそうに口元に笑みを浮かべた。
吉琳:…っ、すごく似合っていたので、つい…
ジル:ありがとうございます。ですが…
ジル:思った通り、貴女もとてもよく似合っていますよ
吉琳:っ、ありがとうございます…

(当たり前だけど、このドレスはジルが選んでくれたものなんだよね…)

改めてそう思うと、まるでジルに包まれているような心地がする。
ジル:それでは、参りましょうか
嬉しい気持ちと少しの恥ずかしさを感じながら、
差し出されたジルの手に、私はそっと自分の手を重ねた。
そして、ジルにエスコートされ、一歩足を踏み入れると…

***

(わあ…!)

大きなツリーが飾られたホールには、城で働く大勢の人々が正装で集まっていた。
吉琳:これは、どうしたんですか?
驚いて隣のジルを見上げると、ジルがくすっと笑みをこぼす。
ジル:クリスマスパーティーですよ
ジル:貴女を驚かせたくて、皆で計画しました

(っ、そうだったんだ…)

ジルや城の皆の優しさに、胸がじんと熱くなる。

(皆も、楽しそう…)

豪華に飾られたホールとクリスマスツリー、
そして笑顔で踊る皆の姿はとても素敵で、目を奪われる。
ジル:喜んでいただけたようで、よかったです
ジルの穏やかな声に顔をあげると、優しい瞳と視線が重なった。
ジル:…普段は私がパートナーとして舞踏会に出席することはありませんが、
ジル:今日は公務ではありません
ジル:ですから…
目の前に、恭しくジルの手が差し出された。
ジル:私と、踊っていただけますか?
吉琳:っ、はい…! よろしくお願いします
ジルの手を取り、
きらびやかなシャンデリアの灯りの下でワルツのリズムに身をゆだねる。

(こうしてジルと踊れるなんて…すごく嬉しい)

胸をときめかせながら、ジルのリードに合わせてくるりと回る。
色とりどりのドレスが舞う中、
ラベンダー色のドレスの裾がひと際ふわりと広がった。

(この時がずっと、続けばいいのに…)

夢のようなひとときに、ジルの瞳を見つめながら微笑みかける。
すると、私を見るジルの瞳が甘く熱を帯びていった。
ジル:…今日の貴女は魅力的すぎて、目が離せそうにありませんね
吉琳:っ…
ジルの言葉に、ドキドキと胸が早鐘を打つ。
鼓動が伝わりそうなほどジルとの距離が近づいた時、
美しい旋律がゆるやかにホールに吸い込まれ、消えていった。
ジル:貴女と踊ると、一曲が短く感じますね
吉琳:あ……

(…もう終わってしまったんだ)

一瞬寂しい気持ちを抱いてしまう。

(でも、このまま続けるのも、なんだか照れてしまうな…)

次の曲が流れ出す前に、そっとジルの肩に回した手を下ろす。
すると、その手を引き寄せられて、耳元にジルの唇が寄せられた。
ジル:まだ、イヴは始まったばかりですよ
ジル:もう一曲だけ…私と踊って頂けませんか?

(私も…まだジルと踊っていたい)

やがて演奏が始まると、辺りは再び優雅な雰囲気に包まれた。
吉琳:…はい、喜んで
再びジルの肩に手を回すと、ふいにジルの腕の中に閉じ込められて、
耳元で、ジルが甘く囁いた。
ジル:吉琳
ジル:今夜は、私のことだけをその瞳に映していてください


fin.

christmas_dividers10

第3話-スウィート(Sweet)END:

 

辺りの景色は降りそそぐ雪に溶け込んで、段々と白く滲んでいき…―

(ここは、私の部屋…?)

気付くと、私たちは見慣れた部屋に立っていた。

(戻ってこれたんだ…)

ジル:…廊下の突き当たりが入口で、プリンセスの部屋の中が出口とは…
ジル:動物の街の出入り口は、随分といい加減なようですね
隣にいたジルがため息まじりに呟いた時、
急に窓の方から冷たい冬の風が吹き込んでくる。

(窓、開いていたんだ…)

閉めようと窓に近づくと、
頬に冷たいものが触れ、思わず目を瞬かせた。
頬に触れた雪は一瞬で溶けてしまう。

(あっ……)

空を見上げると、月明かりに照らされてきらきらと光りながら、
白い粉雪が舞い落ちてくる。
ジル:雪、ですか…。向こうほどではありませんが
ジル:ウィスタリアにも、すぐに積もるかもしれませんね

(ウィンターワンダーランド…)

ミケランジェロがそう呼んだあの街に思いを馳せるように、ジルが目を細めた。
吉琳:…まるで、おとぎ話のような街でしたね

(動物が人の姿を借りて生活しているなんて…)

ジル:ええ。いまだに夢を見ているような気分です
言いながら、すっと伸ばされたジルの手が私の頬を柔らかく包む。
ジル:夢じゃないか、確かめさせて頂いても……?

(ジルの手、冷たい……)

頬に触れた感触に夢じゃないと感じながら、そっと目を閉じた時…―
締まりきっていなかった部屋のドアが、キィと小さく音を立てた。

(あ…)

小さく音を立てたドアに視線を向けると…
ミケ:ニャア
わずかに開いた隙間から、するりとミケランジェロが滑り込んでくる。
ジル:私たちがきちんと帰れたかどうか、確かめに来たのですか?
ミケ:ニャー
ミケランジェロは少し面倒そうに返事をすると、
ぴょんとベッドの上に飛び乗った。

(…さっきまで人の姿をしていたなんて、なんだかまだ信じられないな…)

ジル:…ミケランジェロ、こちらへ
ミケランジェロを抱き上げて、ジルがベッドに腰掛ける。
言い聞かせるようにミケランジェロと目を合わせたジルは、
優しく撫でながら話し出した。
ジル:良いですか? 今後、突拍子もない行動は避けてください
ジル:吉琳を巻き込むようなことなら、なおさらです
ミケ:ミャア
調子の良い返事に、撫でていたジルの手がぴたりと止まる。
ジル:…本当に分かっているのですか?
すると、ミケランジェロはもっと、と言うようにジルの手に顔を擦り寄せた。

(ジルは叱っているつもりなんだろうけど、全く効果がないみたい)
(なんだか…ちょっと可愛い光景だな…)

ジルの隣に座り、ゴロゴロと喉を鳴らすミケランジェロを見ていると、
微笑ましい気持ちになってしまう。
つい頬を緩ませると…―
ジル:吉琳? 何を笑っているのですか
不思議そうに、ジルが私に問い掛けた。
吉琳:…ジルは本当にミケランジェロのことを可愛がっているんですね
吉琳:ミケランジェロのこと、真っ直ぐに叱っているので…
ミケランジェロを諭す口調からは、ジルの愛情が感じられる。

(だからミケランジェロも、叱られてるのに逃げないのかも…)

すると、ジルが微かに口元に笑みを浮かべた。
ジル:ええ。この子にも伝わっているといいのですが
言いながら、ジルがミケランジェロの背中を撫でる。
ジル:…この子はとても手触りが良いのですよ
ジル:撫でてみますか?

(えっ…)

ジルに促され、ミケランジェロに視線を向ける。

(いつも私が近づくと、なかなか撫でさせてくれないんだよね)

そっと手を伸ばすと、
ミケランジェロは小さく頭を持ち上げて私の手に触れてきた。
ジル:ミケランジェロも、貴女に撫でてほしいようです
その言葉が嬉しくて、私は優しくミケランジェロの毛並みを撫でた。
吉琳:ふわふわですね
頬を緩めて呟くと、
ミケランジェロがゆっくりとジルの膝から立ち上がる。
そして数歩移動して、今度は私の膝の上で丸くなった。

(わあ…可愛い)

つい撫で続けていると、ジルが小さくため息をついた。
ジル:吉琳の視線が貴方にばかり集まるのは、
ジル:少し複雑ですね
ミケランジェロに向かって話すジルが可愛くて、ついくすっと笑ってしまう。
吉琳:もしかして…妬いてくれているんですか?

(ミケランジェロにも、『ジルのやきもち焼き』って言われてたよね)

あまり見ることのできないジルの一面に、嬉しい気持ちが湧きあがった。
ジル:…私は、貴女のことに関しては嫉妬深いんですよ
ジル:ですから、私のことだけを見ていてください
悪戯っぽい言葉だけれど、
熱を帯びたジルの瞳で見つめられ、甘い期待が胸に広がる。
吉琳:そんなの…言われなくても、もうジルのことしか見えません
ジル:…可愛いことを言ってくださいますね
そっと髪に差し込まれたジルの手が、優しくうなじを引き寄せる。

(あ……)

ふと、膝が軽くなったかと思うと、ミケランジェロが音もなく絨毯の上に降りていた。
挨拶のように一度ゆらりと尻尾を振って、ミケランジェロはドアへと向かう。
ジル:ミケランジェロも気を利かせてくれたようですし…
静かに部屋を出ていく後ろ姿を見送ると、ジルが愛おしそうに名前を呼ぶ。
ジル:…吉琳
顎をすくい上げられ、艶めいた瞳が近づいた。
そして柔らかくキスが落とされ…
吉琳:…んっ…
求め合うように深く重なる唇が、名残惜しげに離れていく。
ジル:…このまま貴女とふたりきりの時間を過ごしたいところですが…
言葉を切り、ジルがまっすぐに私を見つめる。
ジル:あいにく、1時間後に予定が控えています

(えっ…)

甘く募っていた気持ちが、段々しゅんと沈んでいく。
吉琳:ジル、何か用事があったんですね

(一緒にイヴを過ごせないことは残念だけど…)
(ジルはいつも忙しそうだし、仕方ないよね)

胸の奥に小さな痛みを感じながらも、笑顔を向けると。
ジル:…貴女も一緒ですよ
吉琳:え?
ジル:これをどうぞ
そう言って、ジルが胸ポケットから取り出したのは一通の招待状だった。

(一体、何の招待状だろう…?)

受け取った招待状の封を切り、カードに目を滑らせる。
吉琳:クリスマスパーティー…今日の、19時から…?
驚いて呟くと、楽しそうにジルが頷いた。
ジル:公務としての行事ではなく、あくまでも城内のクリスマスパーティーです
ジル:クリスマスを楽しみにしていたプリンセスに、私たちからのプレゼントですよ

(っ…)

突然のプレゼントに、嬉しくて言葉が詰まってしまう。
吉琳:そんなことを計画してくださっていたなんて、全然気付きませんでした…
心が温かい気持ちで満たされていくのを感じながら、
ジルの優しい眼差しを見つめ返す。
ジル:…私にエスコートさせて頂けますか? プリンセス
恭しく、ジルが私の前に手を差し出した。
吉琳:っ、はい、お願いします
期待に胸を高鳴らせて、私はそっとジルの手を取る。

(今年のクリスマスイヴは、素敵な一日になりそう…)

絡められた指先から伝わる愛しい温もりを感じながら、
私たちのクリスマスイヴが始まった…―


fin.

 

christmas_dividers10

【エピローグ Epilogue】

Screenshot_2016-12-10-05-00-401

ウィスタリアに戻ってきたあなたを待っているのは、
ブッシュドノエルよりも甘いイヴの夜と、彼との幸せなクリスマス…
………
ジル:今夜の貴女はとても魅力的ですよ
ジル:すぐにこうして触れたくなってしまうほどに…
……
ひやりとした空気に素肌がさらけ出されると、
やんわりとジルに唇を押し開かれて…
……
ジル:今夜は私だけをその瞳に映してくださると、約束したでしょう?
ジル:恥じらう余裕など、すぐになくして差し上げます
………
彼の愛に酔いしれて、身も心も溶かされていく。
奇跡のようなクリスマスは、まだ終わらない…―

christmas_dividers10

Screenshot_2016-11-30-17-52-18

Screenshot_2016-11-30-17-52-38

Screenshot_2016-12-03-22-49-091

Screenshot_2016-11-30-17-52-26

christmas_dividers10

arrow
arrow
    全站熱搜
    創作者介紹
    創作者 小澤亞緣(吉琳) 的頭像
    小澤亞緣(吉琳)

    ♔亞緣腐宅窩♔

    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()