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【彼目線】Royal Honeymoon~甘い香りに酔わされて~(ジル)

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婚姻式を挙げ、夫婦となった彼とあなた。
ハネムーンの幸せな日々の中で、カクテルの甘い香りが、
二人の絆をさらに深めていく…―
………
……
星空を映すように澄んだ海を前に、ジルがあなたの顎を指で支え…―
ジル:私がどれだけ耐えていたのか、分かっていらっしゃらないのですね
ジル:…一度貴女に触れれば、際限なく求めてしまいます
………
……
カクテルに素直な気持ちを引き出されて、
異国の空の下、二人は再び愛を誓い合う…―

 

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序

プロローグ:

窓から見える月が、部屋に優しい明かりを届けてくれるような夜…―
ユーリ:吉琳様、いよいよ明日だね
ユーリがそう言いながら、テーブルの上にホットミルクを置いてくれる。
吉琳:うん。…ホットミルク、ありがとう
私は少し照れくさいような気持ちで頷いた。
温かなカップを持ち上げて、ほのかにシナモンが香るホットミルクを飲む。

(明日からハネムーンか…)
(楽しみなような、少し緊張するような…くすぐったい気持ちだな)

婚姻式を挙げ、夫となった彼のことを想い浮かべる。
すると胸が愛しさでいっぱいになり、唇には自然と笑みが浮かんだ。
ユーリ:なんだか、俺も楽しみになってきたかも
吉琳:えっ、どうして…?
ユーリ:…吉琳様が、幸せそうだから

(ユーリ…)

ユーリがくれる無邪気な言葉に、少し照れくさくなる。
吉琳:ありがとう、ユーリ
ユーリ:お礼を言われることじゃないよ
ユーリ:吉琳様が幸せだと、俺も嬉しいっていうだけ

(…ユーリは、出逢った頃から変わらないな…)

プリンセスになったばかりの頃、
ユーリの明るさと優しさに何度も助けられたことを思い出す。
吉琳:ユーリ、これからもよろしくね
ユーリ:急にどうしたの? そんなの、当然でしょ
ユーリがふっと笑って、私を見つめる。
ユーリ:これからも、なにかあったら、いつでも言ってね
ユーリ:王妃様の執事として、全力で力になるから
吉琳:ありがとう
頼もしい言葉に微笑んで、窓の外に視線を向ける。
そこからは、かすかに城下の街明かりが見えた。

(この国を守っていこう)
(このお城の皆と…彼と、一緒に)

改めてそんな風に決意を固めながら、
ハネムーンの前夜は更けていった…―

 

どの彼と物語を過ごす?
>>>ジルを選ぶ

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第1話:

1

満天の星々が、惜しみなく輝くある夜のこと…―
ジルが父親と和解し、二度目の婚姻式を行ってから、数カ月が経った。
…………
………
公務を終えたジルは、吉琳の待つ部屋のドアを開ける。
ジル:吉琳
吉琳:お帰りなさい、ジル
椅子に腰掛けていた吉琳は、本を閉じてテーブルに置くと、
嬉しそうにジルに駆け寄った。

(可愛らしい反応ですね)

甘く、じれったいような気持ちが胸をくすぐり、
ジルは目元を和らげて吉琳を抱き寄せる。
ジル:何かを読んでいたのですか?
テーブルの方に視線をやると、
そこにはカクテルについて書かれた本が置いてあった。
ジル:カクテルに興味があるのですか?
吉琳:えっと…あまり種類を知らないので、読んでいると楽しくて
陽だまりのような微笑みを浮かべながらも、
吉琳は、なぜか少しだけ頬を赤く染めた。

(…おや?)

その様子が気になったジルが尋ねるよりも先に、吉琳が口を開く。
吉琳:っ、それよりも、今日は何かお話があるとおっしゃっていましたけど…
ジル:ああ、そうでしたね
ジル:貴女にお話しようとしていたことですが…
吉琳を腕に抱いたまま、ジルがにこりと微笑む。
ジル:せっかく二度目の婚姻式も行いましたし、改めて、旅行に行きませんか?
吉琳:旅行…? っ、いいんですか?
目を瞬かせて、吉琳の表情がぱっと明るくなる。

(こうも喜んで頂けると、お話した甲斐があります)

柔らかな眼差しでジルは続ける。
ジル:ええ。貴女も正式に王妃になって忙しそうにしていましたが、
ジル:そろそろ休暇を取っても良い頃でしょう
そう言いながら、ジルは慈しむようにそっと吉琳の頬を撫でる。
すると、吉琳がふわりと嬉しそうな笑みを浮かべた。
吉琳:…ありがとうございます。素敵なご褒美ですね
ほんのりと頬を染めてはにかむ姿に、ジルの胸がときめく。

(いつまでたっても私の心は、貴方の表情ひとつで嬉しくなる)

指先で顎をすくい上げて、ジルは吉琳の瞳を見つめる。
ジル:私にとっても、最高のご褒美ですよ
ジル:貴女ともう一度ハネムーンのひと時を過ごせるなんて
吉琳:ジル…
お互いを瞳に映し、どちらからともなく唇が重なる。
吉琳:んっ…
深まるキスに吉琳の甘い吐息が零れ、ジルの理性を少しずつ奪っていく。
顔を傾けた時、視界の端で壁に掛けられた吉琳のドレスが目に入る。

(…そういえば、明日は…)

ふと明日のスケジュールを思い出して、ジルはそっと唇を離した。
ジル:そろそろ眠る時間ですよ、吉琳
吉琳:え…?
かすかに赤く染まった頬のまま、吉琳がジルを見上げる。
ジル:…明日は、朝早くから公務が入っていたでしょう?
ジル:ですから……おやすみなさい
優しく声を掛けると、吉琳は恥ずかしそうに身体を離す
吉琳:っ…おやすみなさい
揺れる瞳に手を伸ばしそうになるのを、ぐっと抑えた。

(…今はこれだけ)

そうして、吉琳の頭にキスを落として、ジルは部屋のドアへと向かった。
吉琳:ジル? どこに行くんですか…?
ジル:やることがあるのを思い出しました。貴女は先に眠っていてください

***

ジルは部屋を出ると、そのドアに背中を預けた。

(危うく、あのまま押し倒すところでした)
(吉琳に触れると、歯止めが利かなくなる)

婚姻式を終えてからも、日に日に狂おしいほどの愛しさが募っていく。

(…このままではいけませんね)

ふっとため息をついたその時…
???:あれ。国王様がどうして部屋の前でため息なんかついてるの
廊下を通りがかったレオが、どこか面白そうにジルに声をかけた。
ジル:頭を冷やしているところです。…吉琳を寝かせるために
自嘲するようなジルの言葉に、レオは全てを察したように笑みを浮かべる。
レオ:あー…なるほどね。のろけをごちそうさま
レオ:そういえば、近々休暇を取るって話を聞いたけど、吉琳ちゃんと旅行にでも行くの?
ジル:まったく、貴方はどこまで察しが良いのですか
レオ:褒めても何も出ないよ?
ジル:呆れているのです

(相変わらずするどい人ですね)

ジルはやれやれといった表情でレオを見る。
レオ:それで、行くところは決まったの?
ジル:これから吉琳の喜びそうなところを見繕おうと思っていますが…
その時、レオが何か思い出したように口を開く。
レオ:それなら、とっておきの場所があるよ
レオは思い出したように口を開くと、どこか悪戯っぽく微笑んだ。
レオ:吉琳ちゃんも喜ぶと思うけど
ジル:…聞きましょう

***

それから数日後…―
二人は、二回目のハネムーンとして海を隔てたサフィール国へとやってきた。
付き添いの使用人たちを先に宿泊先に行かせ、二人きりで港町を歩く。
吉琳:…暖かいですね
そよ風が吹き髪を揺らし、
吉琳は心地良さそうに目を細める。
ジル:ええ。この国は一年中温暖な気候ですから
吉琳:確か、観光事業にも力を入れているんでしたね
ジル:その通りです

(プリンセスだった時にお教えしたことを、よく覚えておいでのようですね)

ジル:気候も違えば、国の政策もウィスタリアとは異なります
ジル:だからこそ、この国に見習うべきところがあるかもしれません
吉琳は、ふいにジルを見上げ、くすっと笑う。
ジル:どうかなさいましたか?
吉琳:ジル、国王として公務をしている時と同じような顔をしています
ジル:それは…すみません

(せっかくの吉琳との旅行だというのに、いけませんね)

吉琳:いえ、謝る必要なんてありません
小さく首を振って、吉琳はどこか照れたように視線を逸らす。
吉琳:……かっこいいなと、思っただけですから

(貴女は、またそういうことを…)

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第2話:

2

(貴女は、またそういうことを…)

頬を染めて恥ずかしそうにする姿に、無意識に鼓動が早くなる。
愛しい感情が込み上げるのを押し隠して、ジルは歩みを止めると、
にこりと微笑んで、吉琳の手をとった。
ジル:貴女にそう言っていただけるとは、光栄ですね
そして、手の甲にそっと口づけをする。
吉琳:っ、ジル…
耳まで真っ赤になる吉琳を、ジルは目を細めて見つめる。
ジル:貴女はいつまで経っても初心な反応を返してくれますね
ジル:可愛らしくはあるのですが…夫婦になったのですから、
ジル:そろそろ慣れていただかなくては
からかうように言うと、吉琳の表情が少しだけ曇る。
吉琳:…そうですね
ジル:吉琳…?

(…いつもと反応が違いますね)

心配そうに見つめるジルに、吉琳はすぐに微笑みを浮かべた。
吉琳:なんでもありません。えっと、今夜泊る場所はこの近くなんですか?
ジル:いえ。この先に馬車を用意させています
吉琳の様子が気になりながらも、ジルは計画していたことを切り出す。
ジル:宿泊先に行く前に…ある場所に案内させて頂けますか?
吉琳:ある場所というのは、どこでしょうか…?
不思議そうに聞く吉琳に、ジルが微笑む。
ジル:それは、到着するまで秘密です
答えると、吉琳は明るい笑顔を浮かべた。
吉琳:なんだかわくわくしますね。楽しみです

(先ほど浮かない表情をしていたように思うのですが、)
(気のせいだったのでしょうか)
(…後で、聞いてみましょう)

そう心に決め、吉琳の手を包むように繋ぐ。
ジル:行きましょう

(この旅行は、吉琳に楽しんでいただかなくては意味がありませんからね)

***

馬車に乗り辿りついたのは、ひと気のない広い砂浜だった。
吉琳:わあ…! 一面の青ですね
海と空の境が分からなくなってしまいそうなほど透き通った景色の中で、
潮風に髪をさらわれながら、吉琳が歓声を上げる。

(…喜んでいただけたようです)
(この場所を教えてくれたレオに感謝しなければなりませんね)

ジル:ハネムーンでこの場所を訪れると、
ジル:花嫁は幸せになれるという言い伝えがあるそうですよ
吉琳:え…?
吉琳が頬を染めてジルを振り返る。
ジル:二回目のハネムーンになってしまいましたが、きっと問題はないでしょう
ジル:…私が、全てを賭けて貴女を幸せにしますので
穏やかな波の音が二人を包み…―
吉琳:ジル……。ありがとうございます
吉琳が瞳を潤ませて微笑むと、少しの間をおいて再び口を開いた。
吉琳:…でも、幸せになれるのは花嫁だけなのでしょうか?
吉琳:私は、ジルにも幸せになって頂きたいです

(吉琳…)

儚げに揺れる瞳に胸が甘く締め付けられ、
ジルはゆっくりと吉琳に歩み寄る。
ジル:…私はもう、充分に幸せですよ

(この上なく幸せで、貴女が愛しくて…)
(たまに、この想いが自分の手に負えなくなるくらいです)

愛しさを込めて、そっと吉琳を抱き寄せる。
ジル:貴女と出逢えて、こうして一緒になることが出来て
ジル:これ以上の幸せはありません
吉琳:っ…
すると、吉琳がジルの胸にそっと顔をうずめた。
吉琳:……少し、泣いてしまいそうです
ジル:普段想っていることをお伝えしただけですよ
吉琳:ありがとうございます。でも、こうして改めて伝えて頂けると…
吉琳:やっぱり、とても嬉しいです
吉琳が、かすかに瞳を潤ませながら、幸せそうに微笑む。

(どうして貴女はそんなに可愛らしいのでしょうか)

思わず頭にうかんだ浮ついたセリフに苦笑する。

(…全く、情けないですね)
(夫婦になっても、日に日に貴女に溺れていくなんて)

伝える代わりに、ジルはぎゅっと吉琳を抱きしめ、
その肩口に顔をうずめた。

***

やがて日が暮れ、二人は宿泊する屋敷へとやってきた。
窓からは、昼間見たあの海が見え、微かに波の音が聞こえる。
ジル:明日行きたいところはありますか?
ジルはソファーに腰掛けて、隣に座った吉琳に尋ねる。
吉琳:たくさんあります。…どこにしようか、迷ってしまいますね
楽しそうに話す吉琳にジルは微笑む。

(貴女が望むならどこへでもつれて行きたい)

ジル:ゆっくり迷っていただいて構いませんよ
ジル:まだ時間はたっぷりありますから。…明日も、明後日も
吉琳:…そうですね
吉琳が嬉しそうに頷いたその時、
ドアがノックされ、使用人が銀のトレーを手に入ってくる。
使用人:王妃様。お飲物をお持ちしました
トレーの上には、ラム酒の甘い匂いを放つ二つのグラスがあった。
ジル:カクテルですか…?
吉琳:私が、持ってきてくれるようにお願いしたんです
吉琳は立ち上がって使用人からトレーを受け取る。
吉琳:ありがとうございます
使用人が礼をして部屋を出て行った後、
吉琳はジルを振り返り遠慮がちに口を開く。
吉琳:ジル…少しだけ、一緒にお酒を飲みませんか?
ジル:貴女が飲みたがるなんて、珍しいですね
ジル:…いいでしょう。貴女となら喜んで
吉琳はトレーを持ったままジルの隣にくる。

(気のせいでしょうか。吉琳の顔が赤いような)

テーブルにゆっくりとグラスを置き…
やがて、吉琳は意を決したように唇を開いた。
吉琳:…このカクテルは、XYZという名前なのですが…
吉琳:『永遠にあなたのもの』という意味があるそうです

(え…?)

吉琳:……受け取っていただけますか?
少し緊張しているような面持ちで、吉琳がジルを見上げる。

(これは、もしかして…)

ジルはウィスタリアを出発する前、吉琳が読んでいた本のことを思い出す。
〝〞
〝ジル:カクテルに興味があるのですか?〞
〝吉琳:えっと…あまり種類を知らないので、読んでいると楽しくて〞
〝吉琳:っ、それよりも、今日は何かお話があるとおっしゃっていましたけど…〞

(恥ずかしがって、話を逸らしているような印象がありましたが…)
(あの本を読んでいたのは、このために?)

吉琳:実は、私もこの旅行を機に改めて想いを伝えたいと思っていたのですが…
吉琳:ジルに、先を越されてしまいました
吉琳が、はにかみながら視線をそらす。
ジル:まったく、貴女という人は…
ジル:どこでこんな誘い方を覚えたのですか?

(人が常日頃から吉琳に触れたい衝動を抑えているというのに…)
(そんなことも知らず、貴女はいつも無邪気に私の心を乱す)

ジルは、座ったまま吉琳をそっと抱き寄せる。
ジル:私を誘惑したからには…分かっているのでしょうね
吉琳:っ…

 

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第3話-プレミア(Premier)END:

P

(人が常日頃から吉琳に触れたい衝動を抑えているというのに…)
(そんなことも知らず、貴女はいつも無邪気に私の心を乱す)

ジルは、座ったまま吉琳をそっと抱き寄せる。
ジル:私を誘惑したからには…分かっているのでしょうね
吉琳:っ…
ジルは吉琳の耳のふちにそっと歯を立てた。
吉琳:ぁ…

(このように可愛らしい反応をする吉琳を前にしたら、)
(私の理性はいとも簡単に崩されてしまう)

吉琳の頬に手を添えて、その唇についばむようなキスをする。
吉琳:ん…ジル……
腕の中で吉琳がくすぐったそうに肩を揺らす。
ジル:足りないようですね
吉琳:え…
ジルがふっと笑みを浮かべると、吉琳の頬がさっと赤く染まった。

(…これが、答えの代わりですね)

ジル:お望みであれば
そう言って、今度は唇を塞ぐように重ねると、ジルは舌を絡めた。
吉琳:…んっ…っ
息もつけないほど深い口づけに、
吉琳はジルの胸元の服をぎゅっと握る。

(このまま永遠に離さないでほしいと願うのは、私の勝手でしょうか)

静けさの中、甘い息遣いだけが部屋に響く。
やがて、唇を離したその時…
吉琳:あっ…
吉琳が、ジルの肩越しに何かを見つけたように小さく声を上げる。
ジル:吉琳?
吉琳:見てください…とても綺麗です
吉琳の視線は、窓から見える海へと釘づけになっていた。

(そういえば、レオが夜は格別に美しいと言っていましたね)
(夜の海も吉琳に見て頂こうとは思っていましたが…)

吉琳:ジル…カクテルを飲むのは、海を見た後にしませんか?

(こんな風に頼まれたら、いま見ない訳にはいかないですね)

わくわくと目を輝かせる吉琳に、苦笑する。
ジル:そうですね。見に行きましょうか
二人は夜の海を観るため部屋をあとにした。

***

砂浜に行くと、視界いっぱいに透き通った海が広がり、
月や星の明かりを反射してきらきらと輝いていた。
吉琳:すごい…。昼間とは違った綺麗さがありますね
ジル:そうですね
海に見入っていた吉琳が振り返り、ジルを見る。
吉琳:本当に…ここに連れてきてくださって、ありがとうございます
ジル:いえ。喜んで頂けて、安心しました

(…若干、海に負けたような気分ですが)
(吉琳の嬉しそうな顔が見れたことで良しとしましょう)

吉琳に微笑みを返し、甘くほろ苦い本音を覆い隠す。
浜辺を歩きながら、ジルはふと浮かんだ疑問を口にした。
ジル:…それにしても、なぜ急にあのようなメッセージを伝えてくださったのですか?
吉琳:っ、それは……
ジルの問いかけに吉琳は赤くなり、少しためらったあと唇を開く。
吉琳:最近、公務の後に会う時間があっても、
吉琳:ジルはすぐに部屋を出て行ってしまっていましたし…
吉琳:もちろん、国王になったジルが忙しくしているということは分かっているんです。
吉琳:でも…
吉琳が、少し慌てたように言葉を続けた。

(吉琳…)

波の音に合わせて、ジルは自身の鼓動がだんだんと高鳴るのを感じた。
ジル:それはつまり、どういうことでしょうか

(貴女の言葉で、聞かせてください)

想いが溢れ、そっと吉琳を抱き寄せた。
吉琳:…少し、寂しかったんです
切なさを含んだ声がジルの胸を震わせる。
吉琳:婚姻式を終えてから、もっと、ジルのことが好きになりました
吉琳:そんな風に思っているのは私だけかもしれませんけど、
吉琳:改めて、想いを伝えたくて…

(…とんだ誤解ですね)

ジルは胸が締めつけられるのを感じて、吉琳の瞳をじっと見つめた。
ジル:貴女は…
ジル:私がどれだけ耐えていたのか、分かっていらっしゃらないのですね
吉琳:え?
苦笑して、ジルは吉琳の顎を指で支え、視線を合わせる。
ジル:忙しくしていたのは、貴女も同じでしょう
そうして、熱のこもった瞳で見つめる。
ジル:…一度貴女に触れれば、際限なく求めてしまいます
ジル:だからこそ、部屋を出ていったのです
驚いたような顔をした吉琳の頬が、さらに赤く染まっていく。
吉琳:っ…
そして、その表情を隠すように、ジルの胸にぽすっと顔をうずめた。
ジル:吉琳?
吉琳:…もし私を眠らせようとしてくださっていたなら、逆効果です
ジル:…どういうことでしょうか
吉琳:っ、ジルが、私にキスをして部屋を出て行ってしまった時も…
吉琳:どきどきして、なかなか眠れませんでしたから

(吉琳…)

頬を真っ赤にしながらも本音を伝えてくれる姿に、
ジルは心が甘く震えるのを感じた。

(私たちは、お互いに何をしているのでしょうね)

どうしようもない愛しさが胸を焦がす。
ジルは吉琳の耳元に唇を寄せると、甘い声音で囁いた。
ジル:吉琳。部屋へ帰りましょう
ジル:そろそろ、我慢の限界です。貴女に触れさせてください

***

ジルは吉琳をベッドに座らせると、
テーブルに載せたままだったカクテルのグラスを手に取った。
ジル:まずはカクテルを頂きましょうか
吉琳:っ、それじゃあ、私もグラスを…
ジル:いえ。その必要ありません
ジルはやんわりと吉琳を押しとどめる。
そうして、グラスを手に吉琳の横に腰掛けると、
カクテルを口に含んで吉琳に唇を重ねた。
吉琳:っ…
そのまま、口移しでカクテルを吉琳の唇に注ぎ込んでいく。

(…甘いですね)

吉琳がこくりと飲んだ後、
ジルは唇を重ねたまま、カクテルを味わうように舌を差し入れた。
吉琳:…んっ…はっ…

(このまま、もっと深くまで貴女を感じたい)

吐息まで奪うような口づけを何度も繰り返す。
そうして、吉琳の身体からくたりと力が抜けたのを確認して、
ジルはサイドテーブルにグラスを置く。
吉琳を見下ろすと、こちらを見つめる潤んだ瞳と視線が絡み、身体に熱が込み上げる。
ジル:…どんなカクテルも、貴女には及びませんね
ジル:その瞳に見つめられるだけで、酔ってしまいそうです
ジルは、吉琳のドレスのウエストに巻かれていたリボンをそっと解き、抜き取る。
吉琳:っ、ジル…?
ジル:じっとしていてください
吉琳の両手首を合わせて、リボンで緩く縛る。

(余計なことを考えずに、貴女はただ甘えていればいい)
(そして、私だけを感じてほしい)

ジル:今夜は、貴女の望み通りにいたしましょう
ジル:寂しい思いをさせていたぶん…たっぷりと、愛して差し上げます


fin.

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第3話-スウィート(Sweet)END:

S

ジル:私を誘惑したからには…分かっているのでしょうね
吉琳:っ…
耳元で囁かれ、吉琳の頬が赤く染まる。

(愛らしい反応ですね)

ジルがテーブルにあるグラスのひとつに手を伸ばし、吉琳の前に置いた。
ジル:それでは、私は貴女のグラスに誓いましょう
ジル:私は、永遠に貴女のものだと
吉琳:ジル…
軽い音を立てて、グラスを合わせる。

(まだ、時間はたっぷりあります)
(貴女をどう愛するかは、カクテルを飲みながらゆっくりと考えることにしましょう)

吉琳:…美味しいですね
ジル:ええ
ジル:貴女と一緒に飲むと、一段と美味しく感じます
吉琳:っ…
ふっと微笑むと、吉琳が恥ずかしそうに視線を逸らす。
吉琳:私…やっぱり、いつまで経っても慣れる気がしません
ぽつりと呟く声がどこか寂しげに聞こえ、ジルが吉琳の顔を覗き込む。
ジル:何にですか?
吉琳:ジルが、言葉や行動で想いを伝えてくださることに、です
吉琳:呆れてしまいますか…?

(…もしかして、昼間の発言のことでしょうか)

ジルはやっと、吉琳が気にしていることに思い当る。

〝ジル:貴女はいつまで経っても初心な反応を返してくれますね〞
〝ジル:可愛らしくはあるのですが…〞
〝ジル:夫婦になったのですから、そろそろ慣れていただかなくては〞

(あれを真に受けていらっしゃったのですね)

吉琳の肩に触れ、俯いた顔を上げさせると、
ジルは真っ直ぐに吉琳の瞳を見つめた。
ジル:…呆れたりなんてしませんよ
ジル:貴女のそういったところも、可愛らしいと思っていますから

(吉琳の赤くなった頬も、潤む瞳も…全てが、愛しい)

ジルは慈しむように吉琳の頬をゆっくりと撫でる。
吉琳:ジル…
ジル:もちろん、もっと積極的に振る舞ってくださっても嬉しいのですが

(…どんな貴女も、愛していますから)

吉琳:っ、もう…
吉琳は顔を真っ赤にして、恥ずかしさを誤魔化すようにグラスを傾けた。

(誤解は解けたようですね)

ジル:そんなに急いで飲むと、酔いますよ
ほっとした気持ちでジルは口元を綻ばせる。
ジル:ゆっくりと楽しみましょう
ジル:…二人きりの夜は長いのですから
妖艶な笑みを浮かべて、ジルも吉琳に合わせてグラスを傾けた。
それから、お互いのグラスが空になり…
吉琳は、どこかとろんとした眼差しで眠そうに瞬きをしていた。

(…吉琳には、少し度数の高いカクテルだったようですね)
(悪い酔い方はしていないようですが…)

心配になったジルは、使用人に頼んで水を持ってきてもらっていた。
ジル:吉琳。水を飲んでおいてください
吉琳:大丈夫ですよ。そんなに酔っていません
楽しそうに笑いながら、吉琳は眠そうに目元をこすった。
ジル:まったく仕方のない人ですね
困ったように言うものの、ジルの表情は穏やかだった。

(周りを心配させまいとするところは変わりませんね)

すると、吉琳がじっとジルを見つめて口を開く。
吉琳:……なんだか、教育係のジルに戻ってしまったみたいです
拗ねたように言われ、思わず笑みが浮かぶ。
ジル:ご不満でしたら、夫として貴女の酔いを醒まして差し上げましょうか?
するりと長い指で赤くなった頬を撫でると…
吉琳が、ジルの胸元に手をついた。
吉琳:っ…それは、だめ、です
吉琳:まだ、ジルに伝えたいことがありますから
どこか覚悟を決めたように、潤んだ瞳がジルを見上げる。

(そのような瞳で、だめ、と言われても困りますね)

吉琳に触れたところから、すでに熱が生まれ、
ジルは鼓動が速くなるのを感じていた。
ジル:それはどういう意味でしょう
触れたくなる気持ちを抑えて尋ねると、
吉琳は目元を赤らめたまま、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。
吉琳:ジルに触れられると、いつも何も考えられなくなってしまうので…
吉琳:今は、だめです

(……そういうことを口にするのは、逆効果だと思いますが)
(仕方ありませんね)

ジルは小さく息をついて自分の中に渦巻いていた熱を逃すと、
そっと吉琳の肩を抱き寄せた。
ジル:これくらいなら良いでしょう?
吉琳:…はい
吉琳はどこか嬉しそうに頷いて、ジルの肩にそっと頭を預ける。

(アルコールのせいで、いつもよりも素直になっているようですね)
(普段からこれくらい甘えて頂けると嬉しいのですが)

ジル:それで、私に伝え足りないことというのは?
吉琳:えっと……
吉琳:夫婦になって、しばらく経ちますね
ジル:ええ。婚姻式からもう数カ月経っているとは思えません

(貴女と過ごす日々は、幸せすぎて過ぎていくのが早い)

愛しさを込めて、吉琳の髪を優しく撫でる。
吉琳:これからもずっと、よろしくお願いします
ジル:ええ。それはこちらのセリフです
和やかに微笑むジルに、吉琳は甘えるような声で続ける。
吉琳:それから……
吉琳:ジル、大好きですよ
唐突な告白にジルの鼓動が大きく高鳴る。
ジル:……私も、愛しています

(…貴女が私に与えてくれる幸せに、いつまで経っても慣れないほどに)

安心しきったように肩にもたれる吉琳の頭を、ジルはそっと撫でる。

(今は、私も言葉で伝えるだけで我慢しましょう)
(ですが…明日は覚悟をしてくださいね)

そう心の中だけで宣戦布告して、
ジルは穏やかな温もりをいつまでも感じていた…―


fin.

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エピローグEpilogue:

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愛しい彼と迎えた、ハネムーンの夜。
カクテルに酔わされて、ふたりに甘美な一夜が訪れる…―
………………
………
ジル:寂しい思いをさせていたぶん…たっぷりと、愛して差し上げます
ジルは吉琳の自由を奪ったまま、ベッドへ押し倒した。
そのままドレスを乱し、素肌に指を滑らせ…―
ジル:本当に嫌なのか、それともその逆なのか…
ジル:私が貴女の反応を読み違えるとでも?
………
………………
薬指のリングで結ばれた愛情が、さらに深まっていく。
永遠を誓い合った後も、幸せな日々は、終わらない…―

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    創作者 小澤亞緣(吉琳) 的頭像
    小澤亞緣(吉琳)

    ♔亞緣腐宅窩♔

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