王子様とある日の思い出~Side Wistaria~(獎勵故事)
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――…大好きな王子様の思い出、気になりませんか?
王子様たちが、ある日の思い出について語っているようで…?
クロード:お、カイン。ちょうどいいところに。今日は暇か?
カイン:お前には暇って答えねえことにしてる
カインがクロードに暇と答えないきっかけになった思い出は…?
ノア:勝った人がこの…――をもらえます
レオ:燃える景品だね。ねえ、俺もその競争まぜてくれないかな?
二人が競った思い出…そして勝負の行方は…?
シド:くっ…
ジル:……いつまで笑ってるんです、シド?
シドが笑い、ジルが眉をひそめる思い出とは…?
ルイ:手伝う
アラン:お前が?
ルイ:うん。学生の時は待ってるだけだったけど、やってみたい
学生の頃の思い出をきっかけに、ルイがあることに挑戦…?
――…さらに、寄宿学校時代に起きた、ある事件の思い出が明らかに…
カイン:俺たち生徒会をなめてるみてえだろ?
アラン:あー…先輩が無駄にやる気になってる理由はそこなんですね
ほっこり温かで、ときどき笑いを誘うような思い出たち……
王子様の思い出を、あなたも覗いてみませんか…――?
ハートメーターが4個貯まると…
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――…夕陽がウィスタリアの城下を橙色に染め始めた頃
レオ:――…あ
ノア:ん? どーかした?
一緒の公務から城へ戻る途中、急に足を止めたレオにノアが首を傾げる。
レオ:あの噴水、懐かしいなと思って
ノア:あー、前にブローチ一緒に探した時のこと?
レオ:そうそう。確かあの時…――
夕焼け色に染まる噴水に懐かしそうに目を細めながら、
レオが数年前のことを語り出す…――。
…………
レオ:――あれ、ノア?
ノア:あ、レオー。お仕事の帰り?
レオ:うん、今日は外部の人と会議だったから
レオ:それより、ノアは噴水に入って何してるの?
ノア:俺だけじゃないよー
レオ:え?
ふいにノアの後ろから、ひょこっと一人の男の子が顔を出す。
男の子:おれもいっしょだよ!
ノア・男の子:ねー
レオ:へえ、二人は仲よしさんだね
声を揃える二人に優しく笑うと、レオはノアに近づいて声をひそめた。
レオ:…それで、本当は何をしてるところ?
ノア:遊んでる間に、お母さんから預かってたブローチ落としちゃったんだって
レオ:なるほどね、それで一緒に探してたってわけか
ノア:うん。どっちが早く見つけられるか競争してるんだ
ノア:勝った人がこのキャンディーをもらえます
ポケットから出された可愛らしい包みのキャンディーに、レオがくすくすと笑う。
レオ:燃える景品だね。ねえ、俺もその競争まぜてくれないかな?
男の子:いいよー!
ノア:よーし、それじゃ競争再開―!
レオ・男の子:おー!
…………
男の子:おにいちゃんたち、ありがとー!
ノア:ううん、俺も遊んでくれてありがとー
レオ:気をつけて帰ってね
去っていく男の子の手の中で、キャンディーとブローチが夕陽を受けて淡く光る。
レオ:見つかってよかったね
ノア:うん。探すの手伝ってくれてありがとう
ノア:それから、最初に気づいたのに、あの子に見つけさせてくれたこともね
レオ:あれくらいお安い御用だよ
レオ:それより…これ、どうしよっか?
上着を腕に抱える二人は、膝から下を濡らしたままだった。
レオ:こんな状態でお城に帰ったらジルに問い詰められそうじゃない?
ノア:だねー…
…………
ノア:――…そうそう、それで乾くまでこの辺で時間つぶしたんだよね
ノア:確か、あそこに売ってるアイス食べながら
レオ:そうだった。懐かしいね
ノア:せっかくだし、またアイス食べてく?
レオ:いいね、賛成
懐かしい話に花を咲かせながら、二人は思い出のアイス屋に向かって歩き出した…――
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――…爽やかな風が頬を撫でる朝
クロード:お、カイン。ちょうどいいところに。今日は暇か?
カイン:お前には暇って答えねえことにしてる
クロード:それは随分つれない答えだ。理由を聞いてもいいか?
カイン:お前、身に覚えがねえとは言わせねえぞ
カイン:前に『暇』って答えたら、用事につきあえって俺を国外に連れ出して
カイン:飛び入りでファッションショーに出演させただろうが
クロード:ああ、近未来風がテーマのショーか
クロード:モデルの欠員が出た穴を、お前がうまく埋めてくれたよな
カイン:あの時の二の舞はごめんだからな。お前に俺のスケジュールは教えねえ
クロード:確かに、強引にショーに出したのは悪かった
クロード:けど、俺の人選は今でも間違ってなかったと思うよ
カイン:は? 何でだよ
クロード:だってお前、一つのミスもなくやり遂げただろ…――?
…………
カイン:ウィスタリアが誇る世界的デザイナー、クロード=ブラックの作品は
カイン:きっと会場中に感動と驚きをもたらすと確信しています
カイン:モダンを飛び越え、近未来をテーマにしたこのファッションショー…
カイン:どうぞ最後までお楽しみください…――
…………
クロード:お前が話していたあの瞬間、会場中の人間がお前に釘づけになっていた
クロード:さすがは日頃から人前に立つのに慣れてるだけあるよ
カイン:おだてて連れてく魂胆だろうが、その手には乗らねえ
クロード:どうしてもか?
カイン:どうしてもじゃねえ。絶 対 だ !
クロード:そこまで言われると、さすがに俺も頼めないな
アルバート:――…お二人とも、話すのは結構ですが廊下を塞ぐのはやめて頂けませんか?
クロード:お、アルバート。いいところに来たな
アルバート:は? 何ですか?
カイン:じゃ、俺は行く。後は任せたぞ、アルバート
カイン:そいつ悩みがあるらしいから、聞いてやってくれ
アルバート:クロード=ブラックが私に悩み相談、ですか…?
クロード:ああ。すごく困ってるんだ。良ければお前の力を貸してほしい
アルバート:まあ、あなたにはゼノ様の式典衣装の制作などでお世話になったことがありますし
アルバート:話を聞くだけなら構いませんよ
クロード:そうか。それじゃ、俺のアトリエで少し話をさせてくれ
アルバート:わかりました
去って行くクロードとアルバートを見送り、カインがそっと口を開く。
カイン:アルバート…お前の犠牲は忘れない
小さな小さな呟きは、二人に届くことなく空気に溶けた…――
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――…数羽の鳥が気持ちよさそうに城の上を飛ぶ昼下がり
シド:くっ…
ジル:……いつまで笑ってるんです、シド?
シド:お前がいつまでたっても機嫌直さねえからだろ?
シドのからかいを込めた眼差しに、ジルが深く息をつく。
ジル:貴方がこんなブロマイドを持ち込んだのが原因でしょう
シド:よく撮れてたから見せてやらねえとと思ってな
ジル:それは余計な気遣いをありがとうございます
ジル:ですが、まさかあの時の写真が残っているとは……
シド:お前、その衣装で建国記念日のショーに出た時
シド:馬鹿王子みたいな格好って言ってたよな
ジル:こんな格好、それ以外になんと形容すればいいのです?
シド:けど、この時の女どもの騒ぎようはすごかったぜ?
シド:あのジル様が王子様みたいってな
ジル:王子は王位継承者のお三方だけで充分ですよ
短く息をはき出すと、ジルは珍しく深くソファーに背中を預けた。
シド:そういえばお前、何でショーに出ること承諾したんだ?
ジル:個人で建国記念日のお祝いを準備する暇がなかったからですよ
ジル:クロードはデザイナーとしての腕は確かですし
ジル:衣装の用意も確認せず任せていたのですが…それが裏目に出ましたね
シド:けど、ショーの時はちゃんと笑ってたじゃねえか
ジル:来てくださった国民の前で、不機嫌な顔を見せるわけにはいかないでしょう?
ジル:城の者が、国民に感謝を伝えるための催しですからね
シド:さすが国王の右腕。真面目だな
ジル:そういう貴方は、この日何をしていたのです?
シド:俺は近隣国から集められた酒を飲みまくってた
ジル:そうですか。時間に余裕があるようですので
ジル:今年の建国記念日は貴方をショーの出演者に誘うよう、クロードに伝えておきますね
シド:おい
二人が笑顔で睨み合った時、ノックの音が響きそっとユーリが入って来た。
ユーリ:あのー、ジル様が不機嫌でシドがずっと笑ってて怖…――じゃなくて
ユーリ:近寄りにくいって相談を受けたんですけど、何かあったんですか?
シド:それは報酬をもらわないと言えねえな
シド:こいつの弱みに関わる話だからな
ジル:弱みではありません。まったく…
眉を寄せる姿に笑い、シドはユーリの横を通り過ぎて扉に手をかけた。
シド:じゃあな
軽く手を上げ、シドは何事もなかったように部屋を出て行く。
その姿が扉の向こうに消え、ジルはため息を落とした。
ユーリ:えーと…紅茶でも淹れましょうか、ジル様?
ジル:…そうですね。お願いします
ジルは苦い思い出に蓋をするように、書類に意識を集中し始めた…――
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――…少し冷えた風が花のつぼみを揺らす早朝
アラン:ん? おい、ルイ
ルイ:…アラン
アラン:こんな朝早くにお前と逢うの初めてだな
ルイ:今、国外視察から帰ってきたところだから
アラン:ああ、早起きしたんじゃなくて寝てないのか
ルイ:アランは?
アラン:朝の鍛錬してきたとこ
アラン:お前、朝飯は?
ルイ:食べてない
アラン:なら、軽く作ってやるからキッチン来いよ
アラン:どうせ昨日の夜も食べてないんだろ
ルイ:どうしてわかるの?
アラン:学生の時と同じで、そういう顔してる
ルイ:そういう顔…?
アラン:いつもより面倒くさそうな顔
ルイ:…してるつもりない
アラン:けど、してる。そういうとこ学生の頃と変わんねえな
アラン:ほら、行くぞ
ルイ:…うん
…………
アラン:…よし、食材はこれでいいな
水を入れた小鍋を火にかけるアランの横に、上着を脱いだルイが立つ。
ルイ:手伝う
アラン:お前が?
ルイ:うん。学生の時は待ってるだけだったけど、やってみたい
アラン:じゃ、そこの卵割って
ルイ:わかった
卵を手に取りながら、ルイはフルーツをカットし始めたアランに視線を向ける。
ルイ:なに作るの?
アラン:エッグベネディクトとフルーツジュース
ルイ:卵がとろっとしてるやつ?
アラン:そう、それ
アラン:ベーコンもあったから、軽く焼いてイングリッシュマフィンに乗せる予定
ルイ:…楽しみ
ルイは手際よくカットされていくフルーツから視線を外すと、
キッチンの上で軽く卵を叩き、ボールに割った。
ルイ:あ
アラン:なに? 殻でも入った?
ルイ:そうじゃなくて…これ見て
アラン:…?
アランがボールを覗き込むと、中には二つの黄身が入っていた。
アラン:へえ、珍しい。二黄卵か
ルイ:アランとレオだね
アラン:冗談でもやめろ。食べにくくなる
途端に苦い顔をするアランに、ルイがわずかに肩を揺らす。
アラン:おい、笑ってると食わせないからな
ルイ:それは困る
笑みを滲ませたままそう言うと、ルイはふと思いついたように口を開いた。
ルイ:ねえ、カインとノアとレオも呼んでみんなで食べない?
ルイ:あと、プリンセスも
アラン:なんで?
ルイ:みんなアランの作るこれ、好きだったから
ルイ:プリンセスもきっと喜ぶ
アラン:ふうん?
ちらっとアランが食材のある場所を目で確認する。
アラン:ま、食材は足りそうだしいいんじゃない?
アラン:けど、起きてないやつもいそう
ルイ:起きてる人だけ呼ぶ
アラン:了解。じゃ、作ってるから呼んで来るのは任せた
ルイ:うん。あ…卵
アラン:やっとく
ルイ:わかった
早速キッチンを出て行くルイを見送り、アランは手元の作業に戻る。
アラン:あいつ、ちょっと学生の頃と変わったな
そう小さく呟き、アランはカットしたフルーツを皿に乗せていく。
澄んだ青空が広がる朝、城の一角で新たな思い出が作られようとしていた…――
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――…これは、カインとノアとルイ、
そして、アランとレオがまだ寄宿学校にいた頃の物語
『光輝く五人組』と呼ばれる彼らはある夜、こっそり校舎に忍び込んでいた…――
…………
ノア:――…諸君、今日はよく集まってくれた
レオ:これより、君たちには共にある謎に挑んでもらおうと思う
月明かりの差し込む廊下を五人で歩きながら、カインがぐっと眉を寄せる。
カイン:おい、なんだ今の
レオ:最近面白かったミステリー小説の真似だよ
ノア:今日は謎解きするために集まったんでしょー?
カイン:謎解きっつーか、犯人探しだな
アラン:俺詳しく聞いてないんですけど、犯人って何かあったんですか?
カイン:生徒会室の備品が2日連続で盗まれたんだよ
カイン:俺たちが施錠した時には確かに備品はあったからな。盗まれたのはたぶん夜の間だ
ルイ:でも、生徒会室には鍵がかかってた
レオ:うん。だから、誰も入れなかったはずなんだよね
生徒会のメンバーであるカイン、ルイ、レオが現状を伝えると、ノアが首を傾げる。
ノア:で、盗まれた備品ってなんだったの?
カイン:それは……
ルイ:ティッシュだよ
アラン:は?
レオ:ただし、盗られたのは中身だけで、箱はそのままだったんだけどね
ノア:ティッシュの…中身だけ?
ルイ:うん。机の上は荒れてたけど、盗られたのはそれだけみたい
カイン:盗るなら全部盗ればいいのに、わざと証拠残すみてえなやり方しやがって
カイン:俺たち生徒会をなめてるみてえだろ?
アラン:あー…先輩が無駄にやる気になってる理由はそこなんですね
カイン:無駄にってなんだ
アラン:いえ、暑苦しいなと思っただけです
カイン:アラン、てめえ…!
ノア:まーまー、落ち着いてカイン
アラン:そういえば、生徒会室の窓の鍵壊れてるって言ってなかった?
ルイ:うん、一番上の高いところだけ
レオ:でも、採風用の小さい窓だから、そこから誰かが入るのは無理だと思う
ノア:んー……
ルイ:…? ノア、どうかした?
ノア:今の話、なにか引っかかった気がしたんだけど…――
カイン:おい、そろそろ生徒会室着くから声落とせ
カイン:レオ、鍵は?
レオ:ちゃんと借りておいたよ。どうぞ、生徒会長
カイン:ああ
カインがレオから鍵を受け取ったその瞬間……
五人:…――!!
生徒会室からゴトンと何かの落ちるような音が響き、五人で顔を見合わせる。
ルイ:犯人…?
アラン:…かもな
五人で静かに部屋に近づき、扉の前に屈み込む。
互いに顔を突き合わせると、カインは声をひそめた。
カイン:いいか、中に誰かいるかもしれねえから物音立てんなよ
ノア:作戦名『夜はお静かに』、だねー
カイン:お前な…今そういうの言われると気が抜けるだろうが
ノア:だって、みんなと夜の学校に来てるの楽しくてさ
レオ:あ、俺も。実はちょっと楽しいと思ってた
ノア:だよねー
アラン:なんでもいいけど、早く犯人捕まえない?
アラン:俺、早く部屋戻って寝たいんだけど
ルイ:俺も…ちょっと眠くなってきた
カイン:お前ら緊張感ゼロか。…ったく
呆れた顔をしながら、カインが手にした鍵を鍵穴に向ける。
カイン:――…開けるぞ
無言で頷く四人を確認し、極力音を立てずカインは鍵を差し込んだ。
静寂に包まれた廊下に、鍵の開くわずかな音が響く。
カイン:いいか、一気に扉開けるからな
ノア:はーい
カインが扉に手をかけ、ぐっと開けると…――
五人:え…――?
…………
レオ:まさか犯人があんなに可愛いとはね
ルイ:予想外だった…
アラン:でも、箱の中身だけなくなってたのは納得
カイン:ああ、それと鍵がなくても侵入できた理由もな
ノア:確かにリスなら、あの小さい窓からでも中に入れるよね
アラン:けど、何でティッシュなんか持って行ってたんだ?
ノア:たぶん、巣にするんじゃないかなー
ルイ:巣…?
ノア:うん、前にティッシュで巣を作るリスの話を聞いたんだ
ノア:この間、中庭で昼寝してた時、リスの親子が木にのぼってくの見たし
ノア:子どもが生まれて、巣を大きくしてるんじゃない?
アラン:へえ、そういうことか
カイン:なんかすげえ拍子抜けな結末……
レオ:まあまあ、平和な結末で良かったと思おうよ
ノア:そうそう。ハッピーエンドでめでたしめでたしーだよ
ノア:ところでさ、このまま部屋に戻るのもったいないと思わない?
カイン:……お前、何か企んでんな
ノア:さっすが俺の幼なじみだねー、その通り!
ノア:ねー、レオ?
レオ:うん、さすが生徒会長だね
アラン:もしかして、あんたも共犯?
ノアとレオが視線を合わせ、同時に悪戯な笑みを浮かべる。
ノア:実はレオと二人で、屋上にこっそりお菓子と飲み物を用意しています
ルイ:どうして…?
レオ:こんなオチだろうと思って、終わったらみんなで天体観測したいなーと思ったんだ
カイン:この天文部コンビめ。この時間に屋上の使用は許可取らねえとだめだろうが
カイン:特にレオ! お前は生徒会役員なんだからノアを止めろよ
アラン:俺は帰る
ノア:二人がそう言うと思ったからー…――えいっ
アラン:…っ! ノア、離せ!
レオ:生徒会長も共犯になってくださいねー
カイン:てめえ、レオ! 後ろ襟掴むんじゃねえ!
ノアがアランの、そしてレオがカインの後ろ襟を掴みながら、廊下を歩き出す。
その後について行きながら、ルイは微かに笑みを浮かべた。
ノア:ルイは文句ないー?
ルイ:…たまにはいいと思う
人けのない夜の校舎を照らすように、明るい声が響く。
彼らの思い出の1ページは、もう少し月が傾くまで続く…――
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