小標

ドキドキ ペットシッター~君と過ごす初めての時間~[前編](獎勵故事)

 大標

 

*再次感謝沐沐幫忙路易&雷維斯的~~

*收集短語等之後空閒下來再補

 

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二人きりのデートのはずが、思いがけずペットを預かることになり…
その可愛さに癒されて、彼との距離もより一層近くなる…―
……………
ミケ:ミャーン
ルイ:少し…甘えさせて
ルイ:ミケランジェロに構ってもらえなかった分は…沐沐に構ってほしい
………
セバスチャン:プリンセス、スキ、スキ
ジル:…少しお行儀が悪いですよ、セバスチャン
ジル:こちらへ来なさい
セバスチャン:ジル、ウルサイ、ジル
………
アルバート:今日は、あなたのお陰で色んな事に気づくことができました
アルバート:ルークも、ありがとうございます
ルーク:アォン!
………
レオ:そうだね…これ以上は、少しお預け
シャル:ピッ!
レオ:吉琳ちゃんも、続きは後でゆっくり…ね?
………
レイヴィス:まず、人のものに手を出すのは駄目ってところから教えないと
レイヴィス:…ベンジャミン、これは俺の
ベンジャミン:……キュウ
……………
預かったペットと過ごす、いつもは見られない彼の一面…
二人と一匹の穏やかな時間が、あなたを幸せで包み込む…―

 

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01

ルイ
>>>彼を選ぶ

 

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澄んだ青空が広がる、ある晴れた日のこと…―
私は部屋で一人、公務で城を訪れているルイが来るのを待っていた。

(午後からは、一緒に過ごせるって言っていたから…楽しみだな)

鏡の前で簡単に身だしなみを整え終わると、ノックの音が響く。

(ルイかな?)

沐沐:はいっ…
開けた扉の向こうにいたのは、微笑みを浮かべたルイと…
ミケ:ニャーン
しっぽをピンと立てたミケランジェロだった。
ルイよりも先に、ミケランジェロは私の足元をすり抜け、部屋に入っていく。

(あれっ…)

沐沐:ルイ、ミケランジェロと一緒に来たの?
ルイ:さっきジルの部屋の前を通った時、偶然会って
ルイ:…いつの間にか、ついてきてた

(そうだったんだ…)

振り返ると、ミケランジェロは私たちのことなど気にかけず、
澄まして毛づくろいをしている。
ルイ:猫は好きだから…仲良くなりたいけど…
沐沐:けど…?
ルイ:今は…機嫌が悪いみたい
ルイの話を聞きながら、二人で並んでソファに腰掛ける。
すると、ミケランジェロはすぐにこちらにやって来て、
私たちの間のわずかな隙間にぴょんと飛び乗り、丸くなった。

(あ、可愛い)
(機嫌が悪いようには見えないけど…)

ルイ:………
目を閉じて、まるで眠ってしまったように見えるミケランジェロの頭に、
ルイがそっと手を伸ばす。
ミケ:……ミャーオ
その途端、ミケランジェロはパチっと目を開けて、
不機嫌そうにしっぽをゆらゆらと揺らした。
沐沐:あ……
ルイ:…ミケランジェロが寝てるとこ、ジルが起こしたって言ってた
ジルは出かける用事があり、
膝の上で寝ていたミケランジェロを仕方なく起こしたのだと言う。
沐沐:そうだったんだ…

(ジルが出かけしてしまって、寂しかったのかな…?)

私も、そっと背中を撫でようとしたけれど、
変わらず不機嫌そうに顔を逸らされてしまう。

(仲良くしたいけど、やっぱり難しいかな…?)

少し寂しく思いながら見つめていると、
やがてまた、ミケランジェロが静かに目を閉じた。

(…ミケランジェロ、今度は本当に眠ったみたい)

沐沐:ルイ、今なら大丈夫かも…
ミケランジェロを起こさないように、小さな声で呼びかける。
ルイはこくりと頷いて、おずおずとミケランジェロの頭に触れた。
ミケ:ニャ
次の瞬間、ミケランジェロはルイの方へ向けていた顔を、ぷいっと背ける。
また拒まれて、ルイは少し寂しそうに目を伏せた。
ルイ:やっぱり…駄目かな
沐沐:もしかしたら…慣れてくれるまで、少し時間がかかるのかもね

(ジルには、もっと甘えていた気がするし…)

普段のミケランジェロの様子を思い返しながら答えると、
ルイは納得したように頷いてくれた。
ルイ:そう…仕方ないね
ルイ:次会う時は…仲良くしてほしい
ルイが、ミケランジェロに優しく語りかける。
ミケ:ミャーン
その声はちゃんと聞こえていたようで、
ミケランジェロはしっかり返事をしてくれた。
沐沐:よかったね、ルイ。…私も、少しずつ仲良くなれると良いな
ルイ:うん
ルイは小さく頷くと、そのまま、私の肩にこつんと頭を預けてくる。
沐沐:ルイ…?
ルイ:少し…甘えさせて
沐沐:う、うん……
鼓動が早くなると共に、
ぴったりと寄り添ってくるルイの仕草が可愛くて、頬が緩む。

(なんだか、ルイが猫みたい…)

すると、寂しげだったルイの瞳に、ふと、いたずらっぽい色が浮かんだ。
ルイ:ミケランジェロに構ってもらえなかった分は…沐沐に構ってほしい

(あ……)

楽しげに綻んだ唇が近づいてきて、唇が重なりかけたその時…
ルイ:…っ…
突然、ルイがぴたりと動きを止めた。
沐沐:ルイ…?

(どうしたんだろう…?)

不思議に思って目を瞬かせると、ルイが、そっと自分の膝に視線を落とす。
視線の先を見ると、私たちの間で眠るミケランジェロの尻尾が、
ソファの上に置かれたルイの手に、くるりと巻きついていた。
沐沐:…ルイ、良かったね
ルイ:うん
そっと微笑み合っていると、控えめなノックの音が部屋に響く。

(誰だろう…?)

沐沐:はい…
返事をすると、扉が開き、ジルが顔を覗かせた。
ジル:…失礼します。ミケランジェロはこちらですか?
問いかけに答える前に、私たちの膝の上で眠るミケランジェロを見つけて、
ジルはふっと口元をほころばせる。
ジル:用が早く終わったので、迎えに来たのですが…
ジル:どうやらハワード卿は、ミケランジェロに気に入られたようですね
ルイ:そうなの…?
ジル:ええ。その子は、好きな人にしか自分から触れたりしませんから
ジル:そのまま、寝かせてあげてください
そう言い残し、ジルは静かに部屋を出て行った。
沐沐:…ミケランジェロなりに、ルイに甘えてたのかもね
ルイ:だったら嬉しい
ルイ:…あと、甘えてないのは沐沐だけだよ
ふいに訊ねられて、とくんと鼓動が跳ねる。
ルイ:沐沐は…これからどうしたい?

(私は…)

沐沐:このまま、皆でお昼寝したいかも…
答えながら、さっきルイがしてくれたように、その肩に頭を預けると、
温かい手が私の髪を撫でてくれた。
ルイ:…うん、そうしよう
ルイ:おやすみ、沐沐
優しいおやすみのキスを受け止めて、そっとまぶたを閉じる。
二人と一匹で過ごす午後の時間はとても穏やかで、
私の心を温かく満たしていった…―

 

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02

ジル
>>>彼を選ぶ

 

2

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爽やかな風が頬を撫でる、ある休日の昼下がり…―
ジル:近頃は日差しがすっかり暖かくなりましたね
吉琳:はい。気持ちが良いですね
ジルと微笑み合いながら、ゆったりと中庭を散歩していると、
羽音を鳴らして飛んできたセバスチャンが、ジルの肩に止まった。
ジル:セバスチャン…? 何ですか、急に
セバスチャン:レオ、テガミ、テガミ
セバスチャンの瞳は、ジルではなく私の方に向けられている。

(取って良いってことかな…?)

足に括りつけられた手紙をそっと解き、開いてみると…

--…レオ『ジル、急にごめん。』
--…レオ『俺は用事で少し城を開けないといけないんだけど…』
--…レオ『最近セバスチャンに構ってあげられなくて拗ねてるから、』
--…レオ『一緒に遊んであげて』

中には、流れるようなレオの字でそう記されていた。
吉琳:ジルに宛てた手紙みたいですね
吉琳:レオが外出している間、代わりにセバスチャンと遊んで欲しいそうです
手紙を渡しながら内容を伝えると、ジルは微笑んで頷く。
ジル:仕方ありませんね、レオが戻ってくるまでの間です
吉琳:よろしくね、セバスチャン
セバスチャン:プリンセス、スキ、スキ

(えっ…)

セバスチャンはジルの肩から私の肩に移ると、そっとすり寄ってくる。
セバスチャン:ウレシイ、イッショ、プリンセス
甘えるように頬ずりを繰り返すセバスチャンに、思わず頬が緩んだ。
吉琳:可愛いですね
ジル:…ええ。ですが少しお行儀が悪いですよ、セバスチャン
ジル:こちらへ来なさい
少し低い声でそう言うと、ジルが手を差し出す。
セバスチャン:ジル、ウルサイ、ジル
すると、セバスチャンはジルから逃げるように、頭上へ飛んだ。

(いつもは、こんな風に逃げたりしないのに…)

吉琳:手紙には、レオがあまり構えていないから、拗ねてると書いてありました
心配になってセバスチャンを見上げると、ジルがため息をつく。
ジル:どうやら、教育的指導が必要なようですね
ジル:レオに構って欲しいのなら、素直に甘えればいいんですよ
セバスチャン:レオ、イヤ、イソガシイ…
セバスチャンはやっぱり拗ねているようで、ぷいっとそっぽを向く。
ジル:忙しい相手だからこそ、甘える必要があるのでしょう?
ジルはふっと唇を綻ばせると、側にある噴水の淵にハンカチを敷いた。
ジル:吉琳、こちらへ
ジル:セバスチャンは、ここへどうぞ
ジルも噴水の淵に腰を下ろすと、
セバスチャンがおずおずと私たちの間に降りてくる。
ジル:いいですか? 『レオ、寂しい、遊んで』
ジル:レオなら、
ジル:貴方にこう言われればすぐにでも公務を片づけて遊んでくれるでしょう
セバスチャン:…レオ、サビシイ…ハソンデ?
ジル:遊んで、です
セバスチャン:アソンデ…レオ、サビシイ、アソンデ
ジル:そう、その調子で繰り返して

***

そうしてジルのレッスンは続き、
セバスチャンはとても上手に『寂しい』と『遊んで』を言えるようになった。
吉琳:レオが帰ってきたら、いつもみたいに『レオ、好き』って言ってあげてね
ジル:ええ、きっと喜びます
ジル:貴方と遊べないことを、レオもきっと申し訳なく思っているはずですよ
ジルが優しくセバスチャンに語りかけた、その時…
レオ:ジル、吉琳ちゃん
私たちの名前を呼んで、レオがこちらに駆け寄ってきた。
私たちは腰かけていた噴水の淵から立ち上がり、レオに笑いかける。
吉琳:レオ、お帰り。用事はもう良いの?
レオ:うん、早めに終わったからね。セバスチャンは…?
ジル:ここにいますよ
ジルは自分の陰に隠れているセバスチャンを、レオの前へと促す。
すると、セバスチャンはふわっと飛び上がってレオの側へ向かった。
セバスチャン:…レオ、サミシイ、アソンデ
セバスチャン:スキ、レオ、スキ
レオ:セバスチャン…
目を丸くするレオの頬に、嬉しそうな笑みが広がっていく。
レオ:…本当に、寂しい思いさせちゃったね
レオ:二人ともありがとう
吉琳:ううん
微笑んでレオを見送ると、
レオの肩の上に乗ったセバスチャンが、ふいに首を傾げるように後ろを見る。
セバスチャン:ジル、スキー
まるで手を振るように、ぱたぱたと羽根を揺らすセバスチャンに、
思わずジルと顔を見合わせた。
ジル:…レッスンが役立ったようで、何よりです
吉琳:セバスチャンもレオも、嬉しそうでした。ジルのおかげですね
ジル:想いは、素直に伝えるのが一番ですから
ジル:私も…改めて伝えておきましょう
立ち上がったジルが、すっと私に手を差し出してくる。
ジル:好きですよ、プリンセス
吉琳:…はい。私も、大好きです
微笑んで、その手に自分の手を重ねた。

(ジルの言う通り…)
(素直に想いを伝えることって、素敵なことだな)

二人で並んで歩き出すと、
降りそそぐ春の日差しが、心まで温めてくれる気がした…―

 

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03

レオ
>>>彼を選ぶ

 

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小鳥のさえずりが耳に心地良い、ある晴れた休日のこと…―
私はレオの部屋を訪れ、二人きりの時間を過ごしていた。
レオ:吉琳ちゃん、どうぞ
吉琳:ありがとう、レオ
紅茶のおかわりを微笑んで受け取った時、ふとノックの音が響く。
レオ:あ、俺開けるよ
立ち上がったレオが、扉を開けると…
レオ:ルイ、珍しいね
ルイ:こんにちは、レオ。…吉琳も
扉の前に立っていたのは、ルイだった。
その肩には、ルイのペットであるシャルが、行儀よく留まっている。
ルイ:急にごめん
中に招き入れたルイに、私たちは首を横に振る。
吉琳:ううん。でもどうしたの? シャルも一緒に…
ルイ:公務で家を空ける間…シャルの世話をして欲しくて
ルイの話によると、
いつもお屋敷でシャルの世話をしているメイドさんが休みなので、
レオに頼みに来たのだと言う。
ルイ:そんなに迷惑はかけないと思うけど…ね、シャル?
シャル:ピッ!
ルイの肩の上で、シャルが元気に鳴く。
吉琳:どうしてレオの所に?

(前にも預かったことがあるのかな?)

訊ねると、ルイが口を開く。
ルイ:それは、レオなら…
レオ:鳥の扱いに慣れてるからって理由でしょ?
レオはルイの言葉を引き継いで言うと、にこっと微笑んだ。

(そっか…レオには、セバスチャンがいるもんね)

今は外へ遊びに行っているセバスチャンのことを思い出し、納得する。
レオ:今日は吉琳ちゃんもいるし、寂しい思いはさせないと思うよ
吉琳:よろしくね、シャル
ルイ:…二人とも、ありがとう
ルイは優しく頭を撫でると、レオの肩にシャルを移した。
ルイ:シャル、またね
そう言って去っていくルイを見送ると、レオは時計を見上げる。
レオ:餌の時間には少し早いから…シャルにおやつをあげようか
レオはそう言って、セバスチャン用のおやつの袋を持ってきた。
二人でソファの上に腰を下ろすと、
レオの肩の上に乗っているシャルが、つぶらな瞳で私を見つめてくる。

(小さくて、ふわふわしてる…)

レオ:吉琳ちゃん、あげてみる?
吉琳:いいの? …ありがとう
胸を弾ませながらシャルにおやつを差し出すと、
小さなくちばしで、ぱくっと受け取ってくれる。
吉琳:すごい、可愛い…
嬉しくなって、顔を上げたその時…
レオ:……
吉琳:…っ…
レオの顔が思ったより近くにあって、ドキッと鼓動が跳ねた。

(シャルに夢中になってたから、気づかなかった…)

頬が熱を持つのを感じながら、すぐに距離を取ろうとすると、
レオの手が、私の頬に触れる。
レオ:…可愛いのは、吉琳ちゃんもね
レオ:頬、真っ赤だよ

(あ……)

いたずらっぽいレオの瞳が、ぐっと近づく。
甘い口づけの予感に目を閉じた、次の瞬間…
シャル:ピピ!
それまで大人しくおやつを食べていたシャルが、耳元で鳴いた。
吉琳:っ…
澄んだ声に驚いて、思わず身体を引いてしまう。

(シャルがいるのに…恥ずかしい)

余計頬が熱くなるのを感じていると、レオがくすっと笑った。
レオ:もう一つ食べる?
レオがおやつを差し出すと、シャルは嬉しそうにくちばしで受け取る。
レオ:気に入ったみたいだね
吉琳:う、うん
頷くと、レオが微笑みながらソファの上に置いていた私の手を包み込む。

(レオ…)

そうして指を絡め取られ、私もレオに応えようとしたその時…
シャル:ピー!
レオの肩から飛んだシャルが、ふわっと私たちの手の上に着地した。
レオ:……
シャルは甘えるように、私たちの手の下に身体を滑り込ませてくる。
レオ:タイミングが良いんだか悪いんだか
シャルの様子にふっと笑うレオにつられ、私も笑みをこぼす
吉琳:そうだね
すると、くちばしで指をやんわりと甘噛みしてきた。

(もっとおやつが欲しいのかも…)

そう思い、袋に伸ばしかけた手を止める。
吉琳:…あんまり、あげすぎない方がいいかな?
レオ:そうだね…これ以上は、少しお預け
レオ:その代わり一緒に遊ぼうか、シャル
シャル:ピッ!
レオの言葉が分かったのか、シャルは嬉しそうに声を上げた。
私たちの手の下から出て、元気よく部屋を飛び回る。

(やっぱり、可愛いな…)

自然と頬が緩むのを感じながらシャルを見上げていると、
ふいに、頬に優しい温もりが触れた。

(えっ…)

レオ:吉琳ちゃんも、続きは後でゆっくり…ね?
隣を見ると、私の頬にキスをしたレオが、艶めいた笑みを浮かべている。

(後で、って…)

その言葉に、再び鼓動が騒ぐけれど…
吉琳:……うん
甘い誘惑に、私は素直に頷いた。
シャル:ピピッ
レオ:吉琳ちゃん、シャルが呼んでるよ
吉琳:うんっ…何して遊ぼうか?

(二人きり、ではなくなってしまったけど…)
(こんな休日も、楽しいな)

シャルの可愛らしい声が響く中、
私とレオはそっと顔を見合わせ、微笑んだ…―

 

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04

アルバート
>>>彼を選ぶ

 

 

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優しい風に青葉が揺れる、ある午後のこと…―
公務でシュタイン城を訪れていた私は、
全ての予定を終えた後、アルバートと庭で待ち合わせをしていた。

(あっ、いた…)

吉琳:アルバート
微笑んで手を振ると、アルバートも手を振り返してくれる。
アルバート:お待ちしてました。…公務、お疲れ様です
吉琳:はい、アルバートも…
???:アォーン
突然聞こえてきた声にはっとして足元を見ると、
きりっとした顔立ちの子犬がきちんと座っていた。
吉琳:可愛いですね
アルバート:ええ。彼はハルナイト卿が飼っている、オオカミのルークです
吉琳:えっ…この子、オオカミなんですか?

(小さいから、てっきり子犬かと…)

アルバート:ハルナイト卿が一日家を空けるとのことで、
アルバート:散歩に付き合って欲しいと頼まれました
アルバート:俺も動物を飼っていますから、世話役には適任と思われたのでしょう
吉琳:そうだったんですね…
吉琳:でも、うさぎのベンジャミンとオオカミのルークのお世話の仕方は、
吉琳:大分違うんじゃありませんか?
アルバート:ええ、その通りです
アルバート:普段ベンジャミンがするような小さな悪戯でも、
アルバート:怪我に繋がる可能性もありますし…
アルバートはそう言って、ルークに視線を落とす。
ルークはお行儀よく座ったまま、アルバートを見上げていた。
吉琳:…心配しなくても、すごく良い子みたいですよ?
アルバート:そうですね… いや、
アルバート:ですがベンジャミンのようにいつ眼鏡を狙ってくるかも分かりません…
吉琳:そう言えば、前に悪戯でアルバートの眼鏡を狙ったことがありましたね
思わずくすっと笑みをこぼす私とは違い、アルバートの表情は真剣そのものだ。
悩ましげに眉を寄せ、アルバートがルークの前に膝をついた。
アルバート:…完全に信用して良いものでしょうか
ルーク:クゥーン…
ルークは少し心配そうに鳴くと、
まるで励ますように、アルバートの手に鼻先を擦り寄せる。
アルバート:っ……
吉琳:アルバートが困った顔をしていたから、心配してくれたのかもしれませんね
吉琳:やっぱり、良い子だと思いますよ?
アルバート:…確かに
アルバートは頷くと、
片手で眼鏡を押し上げながら、優しくルークの頭を撫でる。
アルバート:こんなに出来たペットがいるなんて…
アルバート:ハルナイト卿はどうやってしつけたのか…
アルバート:忠誠心の強いオオカミだからか…?

(ベンジャミンは、少しいたずらっ子だもんね…)

独り言のように呟いて、
また悩み始めたアルバートを、微笑みながら見つめていると…
ルーク:アォン!
ルークが私の足元に座り、一声鳴いた。
そうして勢いよく芝生を蹴って、庭を駆け出す。
吉琳:あっ、ルーク…
思わず呼びかけると、ルークはしっぽを振りながら、くるっとこちらを見た。
かと思うと、また楽しそうに駆け出し、何度も止まったり走ったりを繰り返す。

(もしかして、追いかけっこがしたいのかな…?)

吉琳:いいよ。そんなに早くは走れないけど…
そっとドレスの裾を持ち上げ、ルークの後を追いかける。
ルーク:アオォーン

(良かった…ルーク、楽しそう)

気持ちの良さそうな遠吠えを聞きながら、口元を緩める。
ふと気になってアルバートを振り返ると、
私たちを見て、優しい笑顔を浮かべていた。

(っ、何だか照れるな…)

くすぐった気持ちを感じながらも、しばらくの間追いかけっこを楽しんで、
ルークと一緒にアルバートの元へと戻る。
アルバート:吉琳、こちらへ
ベンチを勧められるままに、私はアルバートの隣に腰を下ろした。
吉琳:すみません…私ばかりルークと遊ばせてもらって
アルバート:いえ、おかげで一つ知ることができました
アルバート:追いかけっこをする貴方は、まるで子供のような顔を見せるのだと
吉琳:え…

(そんな風に思っていたんだ…)

先ほどのアルバートの優しい笑顔を思い出し、段々と頬が熱くなる。
アルバート:そう言うところも…素敵だと思います
アルバートは目元をかすかに染めながらも、
真っ直ぐに私を見つめ、そう伝えてくれた。
アルバート:…吉琳
わずかな沈黙の後、ベンチに置いた手にアルバートの手が重なり、
二人の距離が縮まりかけたその時…
ルーク:クゥン?

(あっ…)

ルークが不思議そうに、私たちの間に鼻を差し入れてきた。
その様子に、思わずぱっと顔を離す。

(ルークもいて…ここ、庭なのに…)

頬が一気に熱くなるのを感じていると、
アルバートが眼鏡をくいっと上げて口を開く。
アルバート:甘えたいのかもしれません
アルバート:賢くても、まだまだ子どもですね
吉琳:…そうですね
アルバートはルークを膝の上に抱き上げると、そっと艶やかな毛並みを撫でた。
アルバート:ルークを見ていたら逆にベンジャミンの良さにも気づけました
アルバート:ルークのように従順なペットも魅力的ですが…
アルバート:もしベンジャミンがそうなったらと考えると、物足りない気がします

(アルバートらしいな…)

わんぱくなベンジャミンと賑やかに過ごしながら、
いつもしっかりお世話をしている姿を思い出して目を細める。
アルバート:今日は、あなたのお陰で色んな事に気づくことができました
吉琳:それなら…私だけじゃなくて、ルークのお陰でもありますね
アルバート:ええ。ルークも、ありがとうございます
ルーク:アォン!
アルバートに応えるように、ルークが元気良く鳴いた。
アルバート:次は、三人で追いかけっこをしましょうか
吉琳:はい、是非!

(…さっきは、照れてしまって言えなかったけど…)
(私も、アルバートのこういう優しいところ、素敵だと思う)

二人きりになったら、ちゃんと伝えようと心に決めて、
春の柔らかな日差しの中、私たちは微笑んで駆け出した…―

 

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05

レイヴィス
>>>彼を選ぶ

 

 

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澄んだ空に白い雲が流れる、ある日のこと…―
シュタインを訪れていた私は、公務を終えた後、
招待されていたレイヴィスの家を訪ねた。
レイヴィス:適当に座って
沐沐:ありがとう
部屋に招き入れられ、微笑んでお礼を言うと…
ベンジャミン:キュッ
ソファの上に、思いも寄らない先客がいた。
沐沐:この子、アルバートのペットの…
レイヴィス:ああ。
レイヴィス:シュタイン城からの帰りがけに、脱走してるところを捕まえたら…
レイヴィス:アルバートに、そのまま一日預かってもらえないかって頼まれた

(そうだったんだ…)

ベンジャミンは長い耳をぴんと立て、部屋の中を見回している。
沐沐:でも、どうしてレイヴィスに頼んだんだろう…?
レイヴィス:前に、ルークを見たアルバートが行儀が良いって褒めたことがあって、
レイヴィス:それで、こいつのこともしつけて欲しいって相談されてたから
レイヴィスはソファへ腰を下ろすと、ベンジャミンの鼻先を軽くくすぐる。
レイヴィス:お前、いつもいたずらばっかりしてるんだって?
ベンジャミンは、つぶらな瞳でレイヴィスを見上げて、きょとんとしている。
レイヴィス:まあ、いいか。せっかくだし、しっかりしつけるから覚悟しなよ
レイヴィス:沐沐、そこにある袋取って
沐沐:うん
レイヴィスに頼まれて、私はテーブルの上に置かれていた袋を渡す。
沐沐:それは…ベンジャミンのおやつ?
レイヴィス:ああ。…しつけには、これが必要
ベンジャミン:キュッ
話しているうちに、ベンジャミンが膝の上に乗ってくる。
そうして背伸びをするように、そのまま私の唇にキスをしようとしてきた。

(甘えん坊さんだな)

微笑ましく思いながら、ベンジャミンの好きにさせていると…
レイヴィス:待て

(えっ?)

レイヴィスがベンジャミンの首根っこを掴み、持ち上げる。
ベンジャミンは、不満そうにレイヴィスの腕の中でじたばたしていた。
レイヴィス:まず、人のものに手を出すのは駄目ってところから教えないと
レイヴィス:…ベンジャミン、これは俺の
ベンジャミン:……キュウ
レイヴィスが瞳を覗き込むと、
ベンジャミンは怯えたようにか細く鳴いて、ぴたっと暴れるのをやめる。

(っ、俺のって…)

頬が熱くなるのを感じながらも、少し、ベンジャミンが可哀想になった。
沐沐:レイヴィス、ちょっと厳しすぎるんじゃ…?
レイヴィス:動物を相手にするときは最初が肝心だから
レイヴィスはそう言うと、袋からおやつを一つ取り出す。
レイヴィス:これ、あげてみて。
レイヴィス:アルバートがあげてもあんまり食べないって言ってた
沐沐:え…そうなんだ

(好き嫌いがあるのかな?)

首を傾げつつ、おやつを差し出すと…
ベンジャミン:キュキュッ!
ベンジャミンは、嬉しそうに飛びついて食べ始める。
そうして、私の手にすりすりと鼻先を擦り寄せて来た。
レイヴィス:………
ベンジャミン:キュッ
かと思うと、レイヴィスの視線を感じたのか、そっと離れていく。
レイヴィス:…沐沐からだと食べるんだな
レイヴィス:じゃあ、次はこっち
レイヴィスが渡してくれたのは、さっきのおやつとは少し見た目が違う、
若草色のビスケットのようなものだった。
ベンジャミン:…キュウ

(あれ…?)

さっきはあんなに嬉しそうに食べてくれたのに、
ベンジャミンは後ずさりをして、おやつから逃げ出そうとする。
レイヴィス:…ベンジャミン
ベンジャミン:!
レイヴィスが名前を呼ぶと、
ベンジャミンは耳をピンと立てて戻ってきたけれど、
やっぱりおやつは食べたくないようで、近づけると顔を背けてしまう。
沐沐:もしかして、すごく美味しくないのかな…?
レイヴィス:うさぎの健康には良いらしいけど
レイヴィス:アルバートが、一つも食べないって話してた

(健康に良いものなら、食べて欲しいけど…)

レイヴィス:ベンジャミン
レイヴィスが優しく声をかけると、ベンジャミンが、そろそろと顔を上げる。
沐沐:あっ…
そうして、私たちが見守る中、おやつを全部食べてくれた。
レイヴィス:偉いな、お前
レイヴィスはベンジャミンを抱き上げ、優しく頭を撫でる。
すると、少し緊張した様子だったベンジャミンもほっとしたのか、
嬉しそうに目を細めていた。
沐沐:すごいね、レイヴィス…
しっかりと褒めてあげたレイヴィスが、ベンジャミンをソファの上に降ろす。
レイヴィス:しつけには、飴と鞭が大事だから
ふいに、レイヴィスがからかうような眼差しを向ける。
レイヴィス:…お前にもしようか?
沐沐:えっ…
どこか艶を含んだ言葉に、鼓動が跳ねた。
レイヴィス:ご褒美。…しつけに協力してくれたお礼
レイヴィスはそう言いながら、そっと私を引き寄せ、唇を重ねる。

(ご褒美って言われると、ドキドキする…)

不意打ちで贈られた甘い口づけを受け止めていると…
ベンジャミン:キュー…
ふと聞こえた鳴き声に、はっとした。
見ると、ベンジャミンが羨ましそうにこちらを見つめていた。

(本当に、甘えん坊さん…)

何だかおかしくて、レイヴィスとくすっと笑い合う。
レイヴィス:沐沐が良いなら、してあげたら?
沐沐:うん…そうしようかな
柔らかい笑みを浮かべるレイヴィスに頷いて、
私は飛びついてきたベンジャミンを、そっと腕に抱き上げた…―

 

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