Anniversary Wishes~恋する想いをジュエリーにのせて~(ジル)
ウィスタリア城に残る恋の言い伝えが彼と過ごす記念日を輝かせて…♡
「このプレゼントも俺の想いも…お前だけのものだから」
特別な贈り物で彼と愛を深めちゃおう✧°
『特別な日には、特別なプレゼントを』
ウィスタリア城に残る恋の言い伝えが、彼と過ごす記念日を輝かせて…―
………
ジル:こちらへ
ジル:私からの贈り物です
………
王子様との大切な思い出が、また一つ増えていく…―
プロローグ:
木漏れ日が、庭に美しい模様を作る、ある日のこと…―
私は数冊の本を返しに、書庫を訪れていた。
目の前の扉を開け、中に入ると…
(あれは…)
吉琳:レオ…?
窓際の席に、眼鏡をかけて本に視線を落とすレオの姿が見える。
レオ:ああ、吉琳ちゃん。その本、返しに来たの?
吉琳:うん。でも、また別の本も借りるつもり
レオ:張り切ってるね。もしかして、城の開放日の準備?
一週間後、初代ウィスタリア国王の誕生日に合わせて、
一日、城を開放することになっていた。
吉琳:そうなの。準備は順調なんだけど、参考にする本が沢山あって
レオ:そっか。じゃあ…忙しい吉琳ちゃんの息抜きに、
レオ:一つ面白い話してあげる
吉琳:面白い話…?
レオ:正確には愛の話、かな
レオ:ウィスタリア城に伝わる噂話なんだけど
眼鏡を外してレオが話してくれたのは、初代国王と王妃の習慣だった。
二人は、一年に一度の特別な記念日に、ジュエリーを贈り合っていたのだという。
レオ:それから長い時間が過ぎていく中で話が変わっていって、
レオ:初代国王の誕生日に、恋人に贈り物をすることが愛の証になるんだってさ
(そんな素敵な話があったんだ)
吉琳:初めて聞いた…
レオ:最近はあまり聞かなくなったかな
レオ:俺が官僚になったばかりの頃は、城内でよく噂されてたけどね
レオ:『特別な日には、特別なプレゼントを』って
(愛の証か…)
彼への気持ちが、心を甘くくすぐる。
(贈り物、してみようかな)
そう思った時、小鳥の可愛い鳴き声が聞こえて二人で窓の向こうを見つめる。
すると、レオが楽しそうにこちらへ視線を戻した。
レオ:吉琳ちゃんに、もう一ついいこと教えてあげる
レオ:ここから中庭見てみて
(何だろう…?)
レオに促されて窓際に寄ると、ある人の姿が見えて…―
どの彼と物語を過ごす?
>>>ジルを選ぶ
第1話:
レオに促されて窓際に寄ると、ある人の姿が見えて…
吉琳:…ジル
思わず、そっと名前を呟く。
ジルは、少し足早に中庭を歩いていた。
(『特別な日には、特別なプレゼントを…か)
(私が贈るとしたら、もちろん…)
考えているうち、ジルが私の視線に気づいたように顔を上げる。
ふいに重なった視線に鼓動が跳ねると、ジルが唇を動かした。
(あ…)
レオ:なんだか吉琳ちゃんを呼んでるみたいだね
吉琳:う、うん
(時間ですよ、って言っているように見えた)
レオに応え、こちらを見上げるジルへ頷いてみせる。
するとジルは口元に淡い笑みを滲ませ、城の中へと戻っていった。
レオと別れた私は、書庫で借りた本を手に、すぐ執務室へと向かった。
ジル:プリンセス
先に戻ってきていたジルは、一度目元を和らげると、
ふっと真剣な眼差しでこちらを見つめ…―
ジル:これから更に忙しくなりますが、心の準備は宜しいですか?
ジル:参考になる本を読んでいただくのもよいですが、
ジル:やるべきことは山のようにあるので…
気遣わしげな声音で告げられた言葉に、深く頷く。
吉琳:……はい
開放日の準備は順調とはいえ、日頃の公務に加えてやるべきことが増えて、
確かに休んでいる暇もないほど忙しかった。
(ハンカチのデザインも、考えないといけないし…)
今回の催しでは、城を訪れる皆さんに、ハンカチを贈ることになっている。
そして、私がそのデザインを任されていた。
(皆さんに喜ばれるものを考えたいし、参考のために本も読みたい…)
(…眠る前の時間を使うしかないかな)
そう考え込んでいると…
ジル:プリンセス?
吉琳:あ…っ、ごめんなさい
呼びかけられ、はっと我に返る。
(…今は公務に集中しないと)
ジル:………
そうして、焦る気持ちを落ち着かせていたせいで、
ジルがどこか物言いたげに見つめていたことに、気づかなかった。
***
その夜、公務を終えて部屋へ戻った私は、
ソファに腰掛け、書庫で借りてきた本を開いていた。
(…素敵なデザインにするために、頑張ろう)
こぼれそうになるあくびを堪えながらページをめくっていると、
ドアをノックする音が聞こえ…―
(あれ…)
(誰だろう、こんな時間に)
疑問に思ったその時、よく知った声が扉越しに聞こえてくる。
???:私です
(え、ジル…?)
思いがけない訪問に目を瞬かせると、返事をする間もなく扉が開き…
ジル:…こんなことだろうと思っていました
ため息をつくジルの視線は、私が開いていた本へ注がれている。
ジル:昼間にも言いましたが、貴女にはやるべきことがたくさんあります
ジル:休息も、大切な仕事ですよ
(もしかして、心配して来てくれたのかな)
吉琳:ごめんなさい…少し読んでから眠ろうと思ったんです
吉琳:読み終わったらきちんと休むので…
わずかに罪悪感を覚えつつも、
もう少し本を読んでいたくて、ジルを見上げる。
ジル:………
すると、ジルがじっと見つめ返し、
こちらへ近づくと、そっと私に手を重ねた。
(えっ)
そうして、そのままベッドの方へと導く。
吉琳:ジル…?
おずおずと名前を呼んでも、答えはない。
優しいのに有無を言わせない手つきに、戸惑っていると…
(あっ…)
やがてジルが少し強引に、私の身体をベッドの上に横たわらせ…―
ジル:…仕方がありませんね
そう言いながら、瞳を覗き込むようにして、シーツの上に手の平を突く。
吉琳:あ、あの…
近付く距離に、鼓動が大きな音を立てた。
ジル:きちんと休めるように、指導してさしあげましょうか
吉琳:っ…
ふっと目を細めるジルに、頬が熱くなる。
吉琳:……一人で、眠れます
ジル:そうですか
ジルは笑みをこぼすと、すっと身体を起こし、ベッドの脇に腰掛けた。
優しい眼差しが向けられる中、改めて掛け布を被り直す。
ジル:………
(何だか…少し気恥ずかしいかも)
私を見守るような沈黙にくすぐったさを感じていると、
ふと、思い出すことがあった。
(…そういえば)
〝レオ:初代国王の誕生日に、恋人に贈り物をすることが愛の証になるんだってさ〞
〝レオ:『特別な日には、特別なプレゼントを』って〞
相変わらず穏やかな沈黙に包まれた部屋の中で、ジルの横顔を見つめる。
(特別なプレゼントが、愛の証…)
心の中で繰り返したその時、
ふっとジルの指先が頬に触れ…―
ジル:どうしました?
ジル:目を閉じなければ休めませんよ?
吉琳:っ…
肌の上を優しく撫でられ、また頬が熱を持った。
ジルは楽しげに笑みこぼし、私から指を離す。
(贈り物のこと…ジルに聞いてみようかな)
吉琳:あ、あの…ジル
吉琳:『特別な日には、特別なプレゼントを』っていう話、知っていますか…?
訊ねると、ジルは少し考えるような素振りを見せた後、答えてくれる。
ジル:…ええ。初代国王の誕生日に、贈り物をし合うという話ですか?
ジル:知ってはいますが…最近あまり聞きませんでしたね
吉琳:……そうですか
(ジルは、あまり興味がないのかな)
(確かに忙しいし、贈り物を用意する暇もないけれど…でも)
迷いながら、柔らかな布を口元まで引き上げる。
ジル:………
するとジルが瞳を和らげ、もう一度こちらへ手を伸ばした。
その手の平が、そっと明かりを遮るように、私の目元にかざされる。
吉琳:……あ…
視界が夏の木陰のように柔らかな暗さに包まれ、穏やかな声が耳に届いた。
ジル:この話の続きは、また今度
ジル:今夜は…
第2話:
ジル:この話の続きは、また今度
ジル:今夜は…
ジル:もう休む時間ですよ
触れそうで触れないジルの手の平から、
心地のいい温もりが伝わって来る気がする。
吉琳:……はい
私はほうっと息をつき、ゆっくりと目を閉じた。
(ジルの言うとおり)
(今夜は休んで…また、考えよう)
ジルがかけてくれた言葉のおかげで、気を張っていた心が軽くなり、
気がつくと、優しい眠りに落ちていた。
***
その翌朝からも、更に慌ただしい日々は続き、
ジルへの贈り物について、ゆっくり考えられないまま時が過ぎ…
ついに訪れた城の開放日の朝…―
(…あっという間にこの日を迎えてしまったな)
(でも、ハンカチのデザインもきちんと決められて良かった)
ほっと胸を撫で下ろしつつ、鏡の前で身支度を進める。
結局、ハンカチの確認やその他の準備で直前まで忙しなかったものの、
無事に間に合わせることが出来た。
(皆さんに喜んでいただけるといいな)
心からそう思った時、扉をノックする音が響き…―
ジル:少し宜しいですか?
吉琳:ジル…!
この後の式典のため、礼服姿で現れたジルに、小さく胸がときめく。
ちょうど支度も終わり、
着替えを手伝ってくれていたメイドさんたちが去ると、ジルに訊ねる。
吉琳:どう…でしょうか
それは城の開放日のために、特別に用意してもらったドレスだった。
うすい紫色のシフォン生地のフリルは、動くたびにふわりと揺れる。
(今日は城に、沢山の人がやってくる)
(プリンセスとして恥ずかしくないようにしたい…)
答えを待っていると、ジルが微笑んで頷いてくれた。
ジル:ええ、よく似合っていますよ
吉琳:……ありがとうございます
そう答えながらも、徐々に時間が迫っていると思うと緊張が高まっていく。
(沢山、勉強をして準備も頑張ったけれど…)
(今になって心配になってきた)
広がるドレスの裾を見つめながら、つい考えに沈んでいると、
耳に穏やかなジルの声が届く。
ジル:…こちらを向いてください
吉琳:え?
はっとして顔をあげると、ジルが私へ向かって手を伸ばし…―
吉琳:っ
耳に、優しく指で触れる。
それから、微かな重みのあるものが、両方の耳につけられた。
(これ、もしかして…)
たった今つけられたものに、想像を巡らせていると、
ジルはどこか満足げに私から手を離し、今度は、そっと手に手を重ねる。
ジル:こちらへ
微笑むジルに引かれ、鏡の前に立つ。
私の耳元に付けられていたのは…
(やっぱり…イヤリングだったんだ)
連なる二つのアメジストと、
その先で紫色の花を模したチャームが可憐に揺れていた。
ジル:私からの贈り物です
吉琳:……!
愛しげな声で囁かれ、鼓動が跳ねる。
(ジルは、こんな素敵なプレゼントを用意していてくれたんだ…)
動くたびにアメジストが光を放ち、
同時に花びらが揺れるのが、とても華やかで上品だった。
ジル:吉琳
イヤリングに魅入っていると、ジルが優しく私の肩に触れ、
鏡越しに真っ直ぐな瞳を向ける。
ジル:胸を張ってください
ジル:貴女は最高のプリンセスです
吉琳:っ…ジル
イヤリングを揺らしながら、ジルを振り返る。
ジル:………
私を見つめるジルの口元が綻び、距離が縮まって…―
(あ…)
唇が触れそうになったその時、扉がノックされ、はっとする。
ジル:…時間ですね
ジル:一日、頑張ってください
吉琳:は、はい
ジルはさりげなく私から身体を離すと、励ますような笑みを浮かべた。
その笑顔を見上げながら、イヤリングに指先で触れて存在を確かめる。
〝レオ:初代国王の誕生日に、恋人に贈り物をすることが愛の証になるんだってさ〞
〝レオ:『特別な日には、特別なプレゼントを』って〞
(これは…ジルからの、特別なプレゼントだ)
そう思うと、ジルへの気持ちが膨らんで、胸の奥が熱くなる。
(すぐにでも、お礼を伝えたいけれど)
(…今は、プリンセスの務めを果たすことに集中しよう)
ジル:行きましょうか
想いが溢れそうになるのを抑え、私はジルに頷いた。
***
そうして、ウィスタリアの中でも特別な一日である、城の解放日が始まり…
用意したハンカチは喜んで頂き、
沢山の笑顔に包まれて、催しが大成功に終わったその夜…―
城には昼間の賑やかさが嘘のように、静かな時間が訪れていた。
吉琳:っ……
けれど廊下には、ドレスの裾を揺らし、駆ける私の足音が響いている。
(後片付けを終えて、そろそろ部屋に戻る頃だと聞いたけれど)
(…今夜のうちに、ジルに逢いたい)
足を踏み出すたびに紫のイヤリングが揺れる。
(今日は特別な日……私からもジルに、)
(特別なプレゼントを贈りたいから)
辺りに視線を走らせながら進んでいると、
廊下の向こうを歩くジルの姿を見つけた。
(いたっ…)
吉琳:ジル!
とっさに名前を呼ぶと、ジルが足を止めて振り返る。
(良かった…)
私は息をついて騒ぐ鼓動を鎮め、ジルの目の前まで歩み寄る。
そうして足を止めると、ジルはいつもよりも柔らかな表情で微笑んで…―
ジル:吉琳
ジル:来ると思っていましたよ
◆分岐選択◆
第3話-プレミア(Premier)END:
ジル:来ると思っていましたよ
吉琳:っ…
微笑むジルの瞳は、私の気持ちを見透かしているようで、胸が小さく軋む。
(プレゼントを渡しに来るって…お見通しだったのかな)
ジル:ここでは、少し話しにくいですね
ジル:…場所を変えましょう
***
その後、私はジルの部屋を訪れていた。
勧められたソファに腰を下ろすと、私は正面に座るジルへ切り出す。
吉琳:あの…ジル
吉琳:私、どうでしたか? …プリンセスとして
(今日はウィスタリアにとって特別な日)
(プリンセスとして、その役目をちゃんと果たせたのかな…)
一日の様子を思い返す度、いくつもの不安が胸をよぎる。
すると、ふっと目を細めたジルが、いつもの余裕ある表情で頷いた。
ジル:ええ。立派でしたよ
吉琳:……よかった
ジルにそう言ってもらえて、ようやく心から安心できる。
けれどそれも束の間、私は膝の上に重ねた手にきゅっと力をこめた。
(でも、ジルに話したいことは、それだけじゃない)
吉琳:…今日の成功は、ジルのお陰だと思います
吉琳:ジルが私に…力をくれたから
言いながら、そっと耳元を飾るイヤリングに触れると…
ジル:……
立ち上がったジルが、私の隣に腰を下ろし…―
先ほどよりずっと近づいた距離で、ジルが口を開く。
ジル:今日、皆の前に立った貴女は、立派なプリンセスでしたよ
ジル:…ですが
言葉の途中でジルが手を伸ばし、私の片方の耳に手を添えた。
イヤリングを留めた耳に、ジルの指先が形を辿るように触れる。
ジル:今、目の前にいるのはただ…私の、恋人です
吉琳:……っ、あ
触れるジルの温もりと眼差し、そして、真っ直ぐな言葉に胸が高鳴った。
(ジルの気持ちが、嬉しい…)
(だからこそ、余計に…何も用意出来なかったことが申し訳ないな)
私は目を伏せながら、ジルへと謝る。
吉琳:本当は私も、ジルにプレゼントを贈りたかったのですが、
吉琳:用意が出来ていなくて…。ごめんなさ……
ジル:何を言っているんですか?
吉琳:えっ
私の言葉を遮るように言うと、ジルは更にこちらへ顔を寄せて…
ジル:貴女は私のものですと言ったんです
ジル:プレゼントはそれで十分ですよ
鼻先の触れそうな距離のまま、そう甘く囁いた。
(あ…)
鼓動がひと際大きく跳ね、息をのむ。
(プリンセスじゃない私は、何も持っていないけれど)
(私自身が…ジルへの『愛の証』)
吉琳:……はい
私は、耳元に触れていたジルの手に、そっと手を重ね合わせ…―
吉琳:私は……ジルのものです
高鳴る鼓動を感じながら、そう答える。
照れくささを感じつつも、ジルの伝えてくれた気持ちが勇気をくれた。
ジル:………
ジルはふっと笑みをこぼし、重なっていた私の手を、すくうように握り締める。
ジル:やはり…
ジル:貴女以上のプレゼントは、世界中どこを探しても見つからなさそうですね
そのまま、唇が重なりかけた時…
吉琳:……!
扉をノックする音が部屋の中に響き、思わず肩をびくりとさせる。
ジル:……こんな時間に
ジルはため息混じりにそう言うと、私からすっと手を離した。
ジル:少し待っていてください
吉琳:……はい
立ち上がったジルは扉を開けると、一度、部屋の外へと出て行った。
一人きりになり、私は騒ぐ鼓動をそっと抑える。
手にはまだ、ジルの触れた温もりが残っていた。
(ジルが帰ってきたら……何て言おう)
〝ジル:貴女は私のものですと言ったんです〞
〝ジル:プレゼントはそれで十分ですよ〞
吉琳:っ…
思い出すだけで、胸がきゅうっと締め付けられるような心地になる。
(私にとっても、ジルとの時間は)
(特別なプレゼント……かも)
満たされた気分のまま、瞼を閉じる。
その時、気が緩んだのか、今まで感じていなかった眠気を覚えた。
(ずっと、気にかかっていたことをジルに伝えられて、安心したせいかな…)
目を擦り、何とか目を覚まそうとしたものの、
全身を包み込むような眠気は、更に強くなっていき…―
***
(ん…)
ふと目を覚ました私は、しばらくぼんやりと天井を見上げる。
それから、はっと我に返った。
(いつの間にか眠ってしまっていたんだ。ジルは…?)
辺りを見回したその時、頬に温もりが触れて…―
ジル:おはようございます
(えっ…)
吉琳:ジ、ジル…私
いつの間にか隣に眠っていたジルが、私の頬を撫でて優しく目を細めた。
それから、ゆっくりと身体を起こす。
ジル:貴女が寝不足なのはずっと前から知っていましたから、
ジル:起こさずにいたんですよ
吉琳:っ…そうだったんですね
(それに、ベッドまで運んでくれたんだ…)
ベッドの側にある時計を見ると、
すっかり寝入ってしまっていたことに気付く。
吉琳:……ごめんなさい
(せっかくの、特別な日だったのに)
(こんな形で終わらせてしまうなんて…)
申し訳なさから、俯くと…
ジル:まだ……終わっていませんよ
吉琳:え?
顔を上げると、ジルが私の顔を覗き込み、
そのまま、そっと唇を重ねる。
吉琳:っ……
驚きながら口づけを受け止めていると、
ジルは私の肩を押し、覆いかぶさるようにベッドへ組み敷いて…―
ジル:これからが特別な時間です
ジル:さあ心の準備は……いえ
ジル:貴女が私のものだと、改めて教えてください
fin.
第3話-スウィート(Sweet)END:
ジル:来ると、思っていましたよ
(え……?)
返ってきた言葉に目を瞬かせる。
同時に、私をジルの元まで突き動かした愛しさが、胸の中で更に膨らんだ。
(ジルには、お見通しだったんだ)
(でも…改めて言葉で伝えよう)
吉琳:……私
ジルの前に立ち、息を整えて口を開く。
吉琳:ジルに何かお返しをしたいと思って、来たんです
(特別な日のプレゼントは愛の証)
(私はジルにイヤリングと……そしてプリンセスとしての自信をもらった)
(けれど…)
吉琳:ですが、何も用意が出来ていなくて
吉琳:何か私からプレゼント出来るものは、ないでしょうか?
ジル:……
言葉にしながら胸の奥がちくりと痛む。
ジルはそんな私の姿を、静かな眼差しで見つめ、
やがて、くすりと笑みをこぼし…―
ジル:それでは、ついてきていただけますか?
ジル:貴女から頂きたい物は、もう決まっていますので
(え…?)
吉琳:…分かりました
(ジルが欲しい贈り物って、一体何だろう…)
気になりながらも深く頷き、私はジルの後に続いた。
***
そうして、訪れたダンスホールを、私はそっと見回す。
(昼間はここで、城下の人たちも誰もが参加出来る、)
(とても賑やかな舞踏会が開かれていたっけ)
オーケストラの演奏や、人々の笑い声に包まれていた会場も、
今は夜の静けさに包まれていた。
吉琳:どうして、ここに…?
ジル:昼間、私は参加することが出来なかったので
ジルはそこまで言うと、ゆっくりと視線を私の方へ向けた。
その瞳には、誘うような色が浮かんでいる。
(…もしかして)
鼓動が跳ねたその時、恭しく手が差し出され…―
ジル:私と、踊って頂けませんか? プリンセス
高鳴る胸の音が、更に大きくなる。
(ここにはもう、誰もいない。音楽もない)
(…でも)
吉琳:……はい
差し出された手を取ると、ジルの優しい温もりが伝わってきた。
吉琳:喜んで
(ジルと過ごす時間は、)
(どんな華やかな舞踏会にも負けないほど、胸がときめく)
心を、喜びが満たしていく。
嬉しさが溢れるまま、私は目元を和らげるジルに笑みを返した。
そうして手を取り合い、
ダンスホールに二人分のステップを響かせていく。
吉琳:ジルにとっては、ダンスがプレゼントになるんですか?
ジル:ええ、十分ですよ
(でも…ジルだけじゃない。これは私にとってもプレゼントだと思う)
(だから…)
吉琳:…ジル
ジル:…?
踊りながら名前を呼ぶと、ジルが少し不思議そうに私を見つめる。
その瞳を見つめ返したまま、私は顔を寄せて…―
ジルの頬に、そっとキスをする。
(私の想いが…ジルに届きますように)
顔中が熱を持つのを感じながら、唇を離して再びジルの瞳を覗き込んだ。
ジル:………
すると、ステップを踏んでいたジルの足がぴたっと止まる。
(あれ)
私も、同じように踊る足を止めた。
(驚かせてしまったかな…)
少し心配になるけれど、気を取り直す。
(キスだけじゃなくて、)
(まだ、伝えたいことがあるから…)
吉琳:ジル、いつもありがとうございます
吉琳:…大好きです
(ジル以上に特別な人は、いないから)
ダンスが止まり、もう一度静寂に包まれたホールの中で、
騒ぐ自分の鼓動の音だけがうるさく聞こえた。
すると、わずかに引き結ばれていたジルの口元が、ふっと綻ぶ。
ジル:………
そうして、ジルが優雅に私の腰を抱き寄せて…―
吉琳:っ……わ
優しいキスが、唇へ落とされる。
吉琳:…!
甘い一瞬の後、温もりが離れていくと、私は瞼を開けてジルを見つめた。
もたれるように委ねた身体を、腰に回った手が改めて支えてくれ、
ジルは口元に浮かべた笑みを深める。
ジル:ありがとうございます
ジル:最高のプレゼントですよ
吉琳:っ…ジル
柔らかな声音に胸がときめいて、思わず名前を呼ぶと、
ジルはまたゆっくりと、ダンスのステップを踏み始めた。
そして…
ジル:私も、貴女を愛しています
穏やかな眼差しで私を見つめながら、ジルはきっぱりとそう告げる。
ジル:こうして誰もいないダンスホールで
ジル:独り占めしたいと、願うほどに
吉琳:っ…
先ほどのキスを再現するように、ジルの澄んだ瞳が間近に近づく。
(私も、ジルと同じ気持ち)
(大好きだから…愛してるから…)
(ジルから目を逸らしたくない)
特別なプレゼントが与えてくれた特別な時間を噛み締めるように、
私はジルと二人きりのダンスを続けた…―
fin.
エピローグEpilogue:
恋人とプレゼントを贈り合った、特別な日。
その夜は、どんなジュエリーよりも美しく、大切な時間となる…―
ジル:少し、赤くなってしまいましたね
吐息交じりの声が耳元に落ち、そのまま耳に優しく口づけられ…
ジル:貴女は最高のプリンセスであり…
ジル:私の、最高の恋人ですよ
交わし合うプレゼントは、愛の証。そして交わし合う熱は、幸せの証。
二つの証を胸に抱いて、彼と一つになっていく…―