日版王宮 劇情活動-Royal Memory With Yo

Royal Memory With You~いつまでも、愛するキミと寄り添って~

(アルバート)

日版王宮 劇情活動-Royal Memory With Yo

これはあなたと彼が結ばれたその後の物語…―
ふたりで過ごす幸せな日々の中、彼は王としてある壁に直面する……
…………
アルバート 「俺は、まだまだ努力しなければ」
アルバート 「今は……あなたからの愛があれば十分だ」
…………
愛する人と過ごした今日までの日々が、二人を支えてくれている。
とびきり幸せなアフターストーリーを、あなたに…―

 

*我就當是艾的續篇來看了哎

 

 

日版王宮 劇情活動-Royal Memory With Yo

 

日版王宮 劇情活動-Royal Memory With Yo

どの彼と物語を過ごす?

>>>アルバートを選ぶ

 

日版王宮 劇情活動-Royal Memory With Yo

 

第1話:

 

これはあなたと彼が結ばれたその後の物語…―
風に揺らぐ木々の影を映す廊下を、
私は嬉々とした色を隠せないまま早足で歩いていた。
吉琳 「アルバート、今お時間大丈夫ですか?」
ノックと共に、アルバートの執務室へと足を踏み入れると、
書類に向けられていたアルバートの鋭い眼差しが、
そのままの温度で私を捕らえた。

(あ……)

吉琳 「……忙しかった、ですか?」
アルバートは、少し眉根を寄せて焦点を合わせると、
眼鏡の奥の瞳を和らげてくれる。
アルバート 「いえ、大丈夫です」

(よかった……)

アルバート 「どうしました? とても嬉しそうな声でしたが」
書類をまとめて脇に寄せ、アルバートは向かいの椅子を勧めてくれる。
私はすとんと座ると、ひと呼吸おいて、先ほどレオから聞いたばかりの話を口にした。
吉琳 「あの……この間施行した国内の医師に対する給付金の件ですが」
アルバート 「はい」
アルバートの眉が、僅かにぴくりと反応する。
吉琳 「とても沢山のお礼の手紙が届いているんです」
吉琳 「薬や器具を充実させられて、よりよい医療を提供できることになったという内容が、幾つも!」
アルバート 「そうですか。それは良かった」
少しほっとしたような表情を滲ませて、アルバートは微笑んだ。
吉琳 「アルバートのお陰です。ありがとうございます」
アルバート 「いえ。元の草案は、あなたのものですから」
アルバートがウィスタリアの玉座についてから、
私たちは国がより良くなるよう努めていた。
身分ある者だけではなく、
人々が医療や学問を自由に受けられる環境を目指し、
秩序を正し、制度を少しずつ改革している最中だった。
アルバート 「今ちょうど区切りがついたところです。一緒に休憩をとってもらえますか?」
吉琳 「喜んで」
アルバートは椅子から立ち上がると、すっと腕を持ち上げる。
私はいつものようにその腕に手を添えて、
アルバートのエスコートで庭へと向かった…─


=====


アルバート 「……どうやら降り出してしまいましたね」
庭園には音もなく、白い糸のような雨が降り注いでいた。
吉琳 「さっきまで晴れていたのに」
アルバート 「……残念ですか?」
アルバートは身体を少し屈めて、私の顔を覗き込む。
私は小さく首を横に振ると、ふわりと笑顔を向けた。
吉琳 「いいえ」
吉琳 「アルバートと同じ時間を過ごせるだけで、幸せですから」
アルバートは唇を微かに綻ばせて、私の肩を引き寄せる。
アルバート 「俺もです」
アルバート 「こうしていられるだけで幸せだ」
二人で雨の当たらない軒下に並んで、
艶やかな色に塗り替えられていく庭の花々を眺める。
心地よい雨の静かな旋律を聞きながら、彼の温もりを隣に感じる。

(なんて、優しい時間なんだろう)

ふと、雨音に話し声が混じっている気がして顔を上げると、
廊下にいるメイドたちが、
こちらを見て何かを話しているようだった。
その横を颯爽とした風のように紫色の髪が通り過ぎ、
彼女たちのお喋りが止まる。
ジル 「お二人とも、そんなところにいては風邪を召されますよ」
私たちの元へと歩み寄ったジルは、丁寧に腰を折って挨拶をしてくれる。
吉琳 「すみません、ジル。雨音が心地よくて」
ジル 「ご休憩でしたら、紅茶をご用意します。あちらへどうぞ」
アルバート 「ありがとうございます」
アルバートの言葉にジルは静かに微笑み、
私たちは一緒に城の奥へと向かった…─

***

アルバート 「こちらが、祭りのメイン会場になる場所ですね」
レオ 「はい。この辺りに来賓の休憩所を兼ねた本部と、騎士の詰所を設営する予定です」
アルバート 「良いと思います」
翌日、私たちはレオを伴って、城下へと視察に来ていた。
雨はすっかりと上がり、洗い流された青空の下、
今度催される祭りの下準備をしていく。
レオ 「陛下……」
アルバート 「はい」
レオはアルバートを見上げて、唇に笑みを乗せる。
レオ 「今日は、何だか楽しそうですね」
アルバート 「何を言っているのか分かりません。仕事を進めてください」
レオ 「仰せのままに、陛下」
レオは胸元に手を当ててお辞儀をすると、現場へと戻っていく。
アルバート 「……吉琳」
吉琳 「はい」
アルバート 「俺は時々、彼から小馬鹿にされているように感じるのですが……」


=====


アルバート 「俺は時々、彼から小馬鹿にされているように感じるのですが……」
真顔で眉を寄せるアルバートに、私は思わず笑みを零した。
吉琳 「レオは元からあのままですよ。親しみやすくて、人をよく見ている」
アルバート 「そうですね。優秀な官僚であることは、分かっています」
吉琳 「アルバートも、もっと気軽に『レオ』と呼んでみては?」
アルバート 「……検討します」
私は小さく笑って、そのままアルバートを見つめた。
吉琳 「でも……今日のアルバートは、私から見ても少し楽しそうです」
アルバート 「え?」
吉琳 「このお祭りには、ゼノ様もいらっしゃいますしね」
アルバート 「ええ。なので、万全の態勢でお迎えせねば」
二国間の安定した友好を示すゼノ様のウィスタリア訪問に合わせ、
今度の祭りには、両国の商人が店を並べる市場も立つ予定だった。

(ゼノ様にお会いできるのが、嬉しいんだな)

微笑ましくアルバートを見つめる私の眼差しとは別に、
ふと、沢山の視線が彼に集まっているのに気づく。

(まただ……)

周囲には私たちの視察の様子を見に来た人々が、
遠巻きにこちらを窺っていた。
昨日のメイドたちといい、今日の民衆といい、
どこかまだ彼に対してよそよそしい雰囲気がある。
アルバートが決意に満ちた少し鋭い眼差しで周囲を見回すと、
人々は微かに視線を逸らしてしまう。

(皆にもっと、)
(アルバートの素敵なところを知ってもらえたらいいのにな……)

出身国は違えど、アルバートがこの国に尽くしているのは、
積み重なっていく実績が物語っていた。
騎士由来と視力の関係で目つきは少し鋭いけれど、
誰よりも優しく真面目な人だと私は知っている。
私はそっと手を振って、見に来ている人々に挨拶を贈った。
女の子 「プリンセスー!」
かつての呼び名のまま大きく手を振り返してくれる女の子に、笑顔が浮かぶ。
アルバートはふわりと眼差しを和らげて、それを見つめていた。


=====


(私だけじゃなく、皆がこの優しさに気づいてくれたら……)

女の子 「王様ー!」
すると、さっきの女の子が勢いよくアルバートにも手を振ってくれる。
驚いたように目を瞬いたアルバートは、
どこかぎこちない笑みで手を振り返した。
人々は遠くではにかんで軽い会釈を返し、
女の子の母親は頭を下げながら少しだけ慌てていた。

(敬意を持ってくれているのは伝わってくるし、)
(きっと少しずつ心も歩み寄れるはず……)

あの女の子が持ってくれるような好意が、
他の人々にも伝わっていくよう願いながら、
私はアルバートに笑顔を向けた…─

***

その夜…─
眠る支度を整えた私たちは、ソファーで少しくつろぎながら、
今度の祭りで並ぶ予定のワインを傾けていた。
吉琳 「ゼノ様にお逢いするのも、久しぶりですよね」
アルバート 「ええ、楽しみです」
赤ワインのラベルにはシュタインの紋章が描かれていて、
それを見つめながら、アルバートは微かな笑みを滲ませた。

(やっぱり、嬉しそう……)
(今度のお祭りが、シュタインを……)
(アルバートを知ってもらうきっかけになったらいいな)

アルバートにとってウィスタリアは完全な異国で、
疎外感や孤立を感じてもおかしくはない。
それなのに、ずっと政務に向き合い、
誠実に着実に王としての道を歩んでいる。

(本当に、尊敬してやまない)

彼の側にいられる喜びと、
彼の本当の意味での居場所をウィスタリアで確立していけるよう、
私は日々、自分に出来ることを模索していた。
アルバート 「……考え事ですか?」


=====


アルバート 「……考え事ですか?」
間近で低い声がしたかと思うと、
切れ長の瞳に見つめられていて、胸の奥が大きな音を立てる。

(あ……)

アルバートは少し前屈みになると、私の顔を覗き込んでいた。
端正で精悍な顔が目の前に広がり、私は騒ぐ鼓動を押さえた。
少し心配そうに見ているのが申し訳なくて、小さな笑みを覗かせる。
吉琳 「あの……今日の広場で、手を振ってくれた女の子、可愛かったですね」
アルバート 「そうですね」
アルバート 「まさか俺まで呼ばれるとは思わず、少し慌ててしまいましたが」
アルバートは眼鏡の位置を正しながら、苦笑を零した。
アルバート 「あなたは、民に愛されている」
ふわりと向けられた微笑みが、私の胸の奥を掴むような衝動を呼ぶ。
吉琳 「アルバートだって!」
思わず声を強めてしまうと、
アルバートは指の背で私の頬をそっと撫でた。
アルバート 「俺は、まだまだ努力しなければ」
アルバート 「今は……あなたからの愛があれば十分だ」
寂しさとは違う、静かな笑みを瞳に宿すアルバートに、
私は手を伸ばす。
そして、ほのかな熱を帯びる頬を両手で包み込んだ。
吉琳 「愛しています……心から」

(私が、人々の何百倍も何千倍もの愛を……)
(あなたに贈りたい)

こつんと額をつけて、アルバートの瞳を覗き込む。
アルバート 「……光栄です」
私たちはお互いを瞳に映して笑い合うと、ゆっくりと唇を重ねていく。
アルバートの故郷で実った芳醇なワインの香りが、
ふわりと私たちの夜を包んでいった…─

 

日版王宮 劇情活動-Royal Memory With Yo

 

第2話:

 

それから数日後…─
雲一つない空の下、
豪奢な装いの馬車が、ウィスタリアへと到着した。
先導していた黒馬に跨った淡い髪色の騎士は、
アルバートを見つけて口の端を持ち上げる。
かつて、嫌というほど見慣れた……
けれど、今はどこか懐かしさを覚えるその顔に、
アルバートは視線を逸らしてから、微かな笑みを唇に乗せた。

(……いけない、)
(あいつのペースに巻き込まれて笑っている場合ではないな)
(今の立場をわきまえねば)

アルバートは、ユーリを直視しないようにしながら、馬車を見つめる。
ゆっくりと開かれるドアに、
そこから覗くマントの裾に、胸が大きな音を立てていく。

(ゼノ様……)

そこに『いる』だけで圧倒的な存在感を発する王たる姿に、
アルバートは一度視線を伏せて、
胸のざわめきを押し流すように長く息を吐く。

(俺は、まだまだだ……しかし)

もう一度視線を上げると、
威厳を纏ったゼノが馬車から下りてくるところだった。
アルバートは吉琳と共に歩み寄り、ゼノを真っ直ぐと見つめた。
アルバート 「あなたが来るのを、心待ちにしていました」
アルバート 「ウィスタリアへようこそ、ゼノ」
ゼノは夜を想わせる瞳を微かに和らげ、アルバートを隻眼に映す。
ゼノ 「歓待に礼を言う」
ゼノ 「久しいな、アルバート」
アルバート 「はい」
久しぶりに呼ばれた自分の名は、
低く心地の良い重さを帯びていて、
アルバートの胸には懐かしさが押し寄せていた。

(俺はもう、この方の騎士ではなく、一国の王だ……)
(まだ、『自分』に戻るわけにはいかない)

ぐっと拳を握った腕にそっと触れたのは、
優しい温もりだった…─


=====


静かに視線を落とすと、吉琳と視線がぶつかる。
ふわりと微笑んだ吉琳は、
アルバートの腕をそっと撫で、一歩前へと出た。
吉琳 「遠いところありがとうございます、ゼノ様」
ゼノ 「息災なようだな」
吉琳 「はい、お陰様で。明日はお祭りも催されます。どうぞ楽しまれてくださいね」
優美なお辞儀をする吉琳に、ゼノは静かな笑みを向ける。
ゼノ 「祭りが両国にとってより良いものをもたらすよう、俺も尽力しよう」
吉琳 「ありがとうございます」

(俺は……やはり、まだ未熟だな)

吉琳の存在に助けられていることを感じながら、
アルバートは誰にも気づかれないよう、音のない吐息を零す。
けれど、ゼノだけはその様子を目の端で捉えていた。
ゼノ 「ウィスタリアの王よ」
アルバート 「はい」
ゼノ 「祭りのことを含めて話がしたい。今宵、時間を取れるか?」

(……祭りの準備は滞りなく済んでいるはずだが)

ゼノの申し出に思案しながら、アルバートは静かに頷いた。
アルバート 「ええ。では、夜に」

***

その夜…─
星空の下に設えたのは、ガーデン用のソファーにテーブル、
ゼノをもてなすためのワインだった。
アルバート 「どうぞお掛けください」
ゼノ 「ああ」
一人掛けのソファーにそれぞれ座ると、
日中よりも温度を下げた心地良い風が頬を撫でていった。
ゼノ 「アル。今夜は一国の王としてではなく、昔馴染みの友として語らわないか」
アルバート 「ゼノ様……」
思わず口を突いて出たのは、かつての主君への呼び名だった。

(祭りについてというのは、俺との時間を作る口実だったのか)

公の場での機転ある発言に感服し、
アルバートは頭を垂れる代わりに視線を伏せた。
アルバート 「ゼノ様……俺は」
アルバートは何かを言いかけると、もう一度口を閉ざして…─


=====


アルバート 「ゼノ様……俺は」
アルバートは何かを言いかけると、もう一度口を閉ざして……
ゼノはソファーに深く背を預け、夜空を見上げた。
ゼノ 「ウィスタリアで見る星も、なかなかのものだな」
アルバート 「……はい。星も土地もとても美しく、良い国です」
アルバート 「吉琳と共にこの国に尽くせることを、誇りに思っています」
ゼノ 「そうか」
星空から静かに視線を戻すゼノに、アルバートは少し自嘲気味な笑みを浮かべた。
アルバート 「ですが、人々に俺自身を認めてもらうには、まだ時間が掛かりそうです」

(……民が吉琳に見せる表情と、俺に向けるものとは別物だ)

国民と自分との間にはまだ壁があること、
それを吉琳が気遣っていることも、
アルバートは全て気づいていた。

(全ては、俺の力量が不足しているからだ……)

ゼノ 「事を急くな」
ゼノ 「王として、民から寄せられる期待や重圧……騎士として生きてきたお前には、何かと荷は重い」
アルバート 「はい。ですが……これは俺が選んだ道なので」
アルバート 「いつか絶対に認めてもらえるよう、日々尽力していくだけです」
瞳の色に力を宿し、きっぱりと言い切るアルバートに、ゼノは笑みを零した。
ゼノ 「色々と杞憂だったか」
アルバート 「……え?」
ゼノ 「お前のその熱意と実直さが、いつか民にも伝わるだろう」
ゼノ 「民は見ている。そう遠くない未来に、歩み寄れる日が来ると思っている」
いつになく柔らかい響きを纏った言葉に、アルバートの心が震える。
アルバート 「ありがとうございます」

(ゼノ様にお墨付きを頂けるとは……)

さざ波のように嬉しさが押し寄せて、アルバートは笑みを零した。
ゼノは瞳を和らげると、アルバートに訊ねた。
ゼノ 「ユーリが近くにいる。呼んでも構わないか?」
アルバート 「っ……!」

(もしかして、今の話を聞かれていた……?)

さっと顔色の変わるアルバートを見て、ゼノは笑みを滲ませる。
ゼノ 「あれは、会話を盗み聞くような真似はしない」
ゼノ 「ここを視認できる場所にはいるだろうが」
アルバート 「そう、でしたね」
かつての自分もそうだったことを思い出し、アルバートは再び笑う。
ゼノが片手を軽く上げて合図を送ると、
瞬きの間に音もなく、茂みの向こうに人影が浮かんだ。
闇から現れたようなユーリは、星明かりの下で、にこりと笑った。
ユーリ 「久しぶり、アル」


=====


ユーリ 「久しぶり、アル」
アルバート 「ああ」
ユーリ 「笑ったり青くなったり、王様になっても忙しそうだね」
アルバート 「貴様は……相変わらずだな」

(……全てが、懐かしいな)

花の香りを乗せた風が、久々に集った三人の髪を揺らしていく。
星々が見守る下で、
アルバートは寄せていた眉を解き、心からの笑みを零した…─

***

(すっかり話し込んでしまったな)

ゼノとユーリと共に、月が高くなる頃まで語らい、
充足感に満ちたアルバートは、
ゼノとの会話で得たものを書きとめるべく、
一度執務室に戻った後、ふと庭に差しかかった。
??? 「アルバート」
美しい鈴の音を震わせたような声が下りてきて、思わず空を仰ぐ。
月明かりに縁取られた美しい姿がバルコニーにあるのを目に留め、
アルバートは目を見張った。
吉琳 「ゼノ様とのお話は、もういいのですか?」
アルバート 「はい。存分に楽しませてもらいました」

(ここから話していると、思い出すな)

まだ二人が結ばれない運命だった頃、
この場所からバルコニーを上り、
吉琳の元へと会いに行ったことが脳裏を過ぎる。

(会いたくて……)
(あれほどの衝動に突き動かされることも珍しかった)

アルバートは、ふっと息を零して笑うと、吉琳に想いを届ける。
アルバート 「今、そちらに行きます」
吉琳 「え?」
枝振りのよい木に手をかけて、
自分の長身を腕だけで持ち上げていく。
吉琳 「アルバート!」
王になったとはいえ、日々の鍛錬は欠いてはいなかった。
軽々と登り詰め、欄干に手をかけると、
アルバートは柵を飛び越えた。
アルバート 「お待たせしました」
吉琳 「もう……気をつけてください」
少し眉を下げ、自分の胸に吉琳が身体を寄せる。
アルバートはその華奢な肩をそっと抱きしめて…─
アルバート 「俺は、あの誓いを忘れてはいません」


=====


アルバート 「俺は、あの誓いを忘れてはいません」
かつて、この場所で吉琳の運命を自分に預けてもらう誓いを立てた。

(俺はその責任を果たさなくてはならない)

そのために、ウィスタリアの民に認めてもらうことは、
絶対に必要なことだった。
アルバートはそっと身体を屈めて、愛しい人を覗き込む。
アルバート 「あなたの横に立つにふさわしい男になります」
アルバート 「もう少しだけ待っていてくれませんか」
返される微笑みにふわりと花が咲き、甘い香りが零れるようだった。
けれど、その香りは凛としていて、地に根を張った大輪の花にも思えた。
吉琳 「アルバートは、アルバートのままで、私は大丈夫だと思っています」
アルバート 「え?」
吉琳は優しい瞳に、強い光を宿してアルバートを見つめた。
吉琳 「絶対的な王という存在は、大切なのかもしれません」
吉琳 「でも、二人で一つでは……いけないのでしょうか?」
零された言葉がもたらす衝撃に、アルバートの瞳が思わず固まる。
吉琳 「どうか、私がいることを……忘れないで」
吉琳は、しなやかな腕でアルバートを抱きしめた。

(俺は、何か思い違いをしていたようだ……)

この愛しい人を、美しい国を守らねばと思っていた。
けれど、吉琳はぼやけた輪郭の幻などではなく、
そこに凛と咲き誇る象徴でもあった。

(共に生きるとは、そういうことか)

自分の非を連ねて打破するだけではなく、二人で超えていく。
それを許されていることに、胸の奥が熱くなる。
アルバート 「あなたと共にあることを、嬉しく思います」
アルバートは吉琳の頬をそっと撫でる。
等身大の愛らしい笑顔が向けられて、
苦しいほどに鼓動が音を立てていく。
アルバート 「愛しています」
はにかんだ笑顔を閉じ込めるように唇を重ねて、
お互いが溶け合うほどの長いキスを、
月明かりの下で交わし合った…─

 

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第3話-プレミア(Premier)END:

 

穏やかに晴れ渡った翌日…─
ゼノ様と共に訪れた市場は、祭りの活気に満ちていた。
ゼノ 「賑わっているな」
アルバート 「ええ」
特産品を扱う店のほか、シュタインのワインや菓子を気軽に楽しめるスペースを設けた甲斐もあり、
人々は楽しそうな笑顔を浮かべていた。

(よかった……皆、楽しんでくれてる)

ゼノ 「両国を知ることが出来る良い機会だ。俺にもウィスタリアのことを教えてくれるか」
アルバート 「もちろんです」
アルバートはゼノ様の一歩前に出ると、迷いなく工芸品の店へと歩いていく。
真っ直ぐ歩いてくるアルバートを、店主は少し驚いたように見つめた。
アルバート 「ウィスタリア郊外では林業が盛んです。その木材で作られたのがこちらの工芸品になります」
アルバート 「木の特性を生かした緻密な細工……清廉でいて美しさを纏い、素晴らしいものです」
ゼノ 「ああ。見事だな」
ゼノ様は興味深そうに店の品々を見つめる。
ゼノ 「この羊皮紙の保存箱を一つ貰おう。後で城に届けてくれ」

(ゼノ様……)

店主 「あ、ありがとうございます!」
店主は側にいた妻と喜び、何度も頭を下げる。
アルバート 「工芸品は伝承していくことにも意義がある。良き仕事を継いでくれたことに礼を言います」
アルバートの言葉に、
店主は感極まったように鼻の頭を赤くしていた。
その店を後にすると、
ゼノ様が並んで歩きながらアルバートに語り掛ける。
ゼノ 「お前は、昔から工芸品が好きだったな」
アルバート 「ええ。その風土に根付いて語り継がれるものに、魅力を感じます」
ゼノ 「そうか」
アルバート 「次はあちらの店です。ウィスタリアは鉱物資源も豊富ですので、染色にも目を見張るものがあり……」
絹を扱う店で店主に断りを入れてから、
その美しい色彩の布をゼノ様に広げて見せる。

(アルバート、楽しそうだな)

ふと、いつものように視線を感じて周囲を見渡すと…─


=====


(アルバート、楽しそうだな)

ふと、いつものように視線を感じて周囲を見渡すと……
嬉々としてウィスタリアの特産品を語るアルバートに、
いつもとは違う瞳が向けられていた。
温かな熱の滲んだ眼差しの数々に、私は目を瞬いた。

(もしかして、届いた……?)

アルバートの国を想う気持ちが伝わったかのような人々の顔に、
嬉しさが募っていく。
ユーリ 「ちょっと待っててね」
後ろでユーリの声がして振り返ると、
見覚えのある少女と共に立っていた。

(あれ? あの子は……)

それは先日の視察の際、
私たちに大きく手を振ってくれた女の子だった。
吉琳 「どうしたの?」
ユーリ 「うん。ちょっとね、アルに用事なんだって」
アルバートの雄弁な工芸品語りが途切れたのを見計らって、
ユーリは女の子と一緒に歩み寄る。
ユーリ 「ゼノ様、アルバート様」
ユーリの声に二人が振り返ると、
女の子はスカートを摘まんでたどたどしくお辞儀をした。
女の子 「国王さまたちに、うちのお花をさしあげたくて」
花屋の娘だという彼女は、小さな白い花のブーケを二人に差し出した。
ゼノ 「綺麗な花だ。礼を言う」
ゼノ様の低い声に少しはにかんだ女の子に、
アルバートは片膝をついて視線を合わせる。
アルバート 「ありがとうございます」
周囲が少しざわめき、人々は顔を見合わせた。
*截圖 8/3 01:22
アルバート 「この季節だけの特別な花ですね。いい香りだ」
柔らかな眼差しを向けると、
女の子はその白い花と同じような愛らしい笑顔を向けて…─
女の子 「王様、いつもありがとう!」


=====


アルバート 「この季節だけの特別な花ですね。いい香りだ」
柔らかな眼差しを向けると、
女の子はその白い花と同じような愛らしい笑顔を向けて……
女の子 「王様、いつもありがとう!」
城に飾る花を仕入れているという彼女の両親も側に来て、
アルバートにお礼を伝える。
それを皮切りに、沢山の人々の輪が私たちの周りに広がり、
皆がそれぞれアルバートに贈り物や温かな言葉をくれる。

(きっと、皆もアルバートに伝えるタイミングが分からなかっただけだったんだ……)

ずっと心配していた雲が晴れたようにほっと安堵すると、
両手に抱えきれないほどの贈り物を抱えたアルバートと視線がぶつかった。
アルバート 「沢山いただいてしまいました」
吉琳 「ええ。何だか、とても嬉しいです」
アルバート 「俺もです」
二人で笑い合っているのを、ゼノ様は隣で静かに見つめていた。
ゼノ 「ユーリ」
ユーリ 「はい、ゼノ様」
ゼノ 「これからスピーチがある。贈り物を全て城に送れるか」
ユーリ 「はい。今、人の整理をしているウィスタリアの騎士団も来るんで、先に俺が預かりますね」
*截圖 01:24 →衣服錯了啦😂
アルバート 「丁重に扱えよ」
ユーリ 「大丈夫ですって。ほら、俺を信じて預けて」
ユーリに渡し渋るアルバートを、ゼノ様と一緒に微笑ましく見守る。
少し困ったように眉を下げて笑うアルバートは、
とてもいい表情を浮かべていた…─


=====


先ほどまでの賑やかさとは異なり、
メイン会場に漂う空気は凛と澄んでいた。
人々は、二人の王の話を聞こうと静まり返っていた。
ゼノ様が最初に登壇し、ゆっくりと辺りを見渡す。
ゼノ 「まずは、この場を設けてくれたウィスタリアの王に礼を言う」
良く通る低い声が、会場の隅々まで響いていく。
ゼノ 「これからもウィスタリア、シュタイン両国が繁栄することを願い、ここに平和と友好を宣言する」
端的でいて力強い声音と共に白い鳩が空を舞い、わっと歓声が上がった。
ゼノ様は壇上から降りてくると、アルバートと視線を交わす。
視線だけで頷いたアルバートは、ゆっくりと壇上へと向かった。
アルバート 「今日この日、両国友好の祭りが無事に開催されたこと、嬉しく思います」
アルバートの落ち着いた声は、
聴く人の心に穏やかさをもたらしていく。
アルバート 「知っての通り、俺はシュタインの人間でした」
アルバート 「人生で唯一無二の女性と出逢い、今こうしてウィスタリアにいられることは幸福でしかない」

(アルバート……)

会場の上に広がる青空を、先ほど飛ばした白い鳩たちが旋回していく。
アルバート 「異国には、『比翼の鳥』という言葉がある。俺もそれに倣って、常に共にありたいと願っています」
アルバートは鳩を見送ってから、力強い眼差しを人々へと向けた。
アルバート 「俺の心と忠誠は、今ウィスタリアにある。どうか皆の運命を俺に預けてください」
アルバート 「絶対に後悔はさせない……より良き未来に向かって、俺はこれからも惜しみなく尽力していきます」
瞬間、湧き上がった割れんばかりの拍手と歓声で会場が渦を巻く。
皆が笑顔で拍手を贈ってくれるのを、
アルバートは瞳を固めて見渡した。

(こんな光景が見られるなんて……)

瞳の奥が熱くて胸がいっぱいで、
私はアルバートの元へと駆け寄った。
吉琳 「アルバート!」
アルバート 「なっ……!」


=====


吉琳 「アルバート!」
アルバート 「なっ……!」
彼の元へと飛び込む私を片手で抱きとめると、
歓声は一層大きくなった。
アルバート 「……危ないですよ」
吉琳 「すみません、思わず」
はにかむと、アルバートは微笑みを浮かべて、
私の耳元に低い囁きを落とす。
アルバート 「ありがとうございます」
吉琳 「いいえ。私の方こそ」
お互いに微笑みを交し合うと、私たちは国民の方へと向き直り、手を振った。
後に、比翼の国王とプリンセスと史実に記されることになる、
はじまりの一日だった…─

***

盛大な祭りは遅くまで続き、花火の匂いがまだほのかに残る夜…─
吉琳 「今日は、とても素敵な一日でしたね」
ベッドの縁に腰掛けるアルバートの隣に、
そっと寄り添うように座る。
アルバート 「ええ。夢のような一日でした」
アルバートは静かに微笑んで、私の手に手を重ねた。
アルバート 「俺は、世界で一番幸せな国王です」
アルバート 「本当に心から人に受け入れられる時、こんなにも幸せは胸に満ちていくのかと……」
吉琳 「アルバートが今まで頑張ってきたからだと思います」
アルバート 「いや、久々に思っただけです。俺はこの感覚を知っているからこそ、努力できた」
吉琳 「え?」
アルバート 「何をきょとんとしているんです」
アルバートは眼鏡の位置を正すと、私を見つめてふっと息を零す。
アルバート 「……あなたが、最初に俺の全てを受け入れてくれたんでしょう?」

(あ……)

アルバート 「あなたが隣で支えてくれる、それが何よりも俺の力だった……」
ずっと抑えていた感情が胸を支配して、嬉しさに瞳が潤んでいく。

(そんな風に言ってもらえるなんて……)

アルバート 「これからも、側にいてもらえますか?」
重ねられた手に力が込められて、私は大きく頷きを返す。
吉琳 「はい。いつまでも……」
留められずに零れる涙を親指で拭われて、
アルバートはそっと顔を寄せた。

(どうかこれからも、一緒に歩んでいけますように……)

世界で一番優しい口づけを受け止めながら、
私は愛しい人の腕の中で、共に歩む明るい未来を願った…─

 

fin.

 

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第3話-スウィート(Sweet)END:

 

澄んだ青が空いっぱいに広がる翌日…─
私たちは、祭りの行われている市場を歩いていた。
アルバート 「凄い賑わいですね」
ゼノ 「活気があるな」
ユーリ 「まさか、このメンバーでお祭りが楽しめるなんてね」
昨日の語らいの中で、ありのままのウィスタリアを見てみたいと告げたゼノ様の要望を叶えようと、
アルバートとユーリが思案した結果、
私たちはお忍びで祭りに参加することになった。

(もちろん、)
(すぐ側にいるのは一般人に扮した騎士団ではあるけれど……)

両国の特産品が並ぶ市場で、
何だか不思議な感覚に胸がドキドキとしてしまう。
ユーリ 「あ。俺、久々にあの揚げ菓子食べたい!」
いい匂いを漂わせる露店を指差して、ユーリが笑顔を浮かべる。
アルバート 「貴様の食べたいものを優先させるな」
ユーリ 「ゼノ様だって食べたいですよね?」
ゼノ 「そうだな。もらおうか」
アルバート 「であれば話は別です。すぐに買ってきま……」
思わず露店に足を向けようとするアルバートの肩を、
ユーリがぽんと叩く。
ユーリ 「アル、目立つことしないで。俺が行くよ」
軽やかに人混みをすり抜けて菓子を買いに走ったユーリは、
すぐに両手に抱えて戻ってきた。
アルバート 「早かったな」
ユーリ 「でしょ?」
ユーリはニッコリと笑みを浮かべて、菓子を配り始める。
ユーリ 「はい、ゼノ様」
ゼノ 「ああ」
ユーリ 「これは、アルと吉琳様」
吉琳 「ありがとう」
アルバート 「熱いので気をつけてくださいね」
そして、ユーリは私の後ろにいる彼にも手を伸ばした。
ユーリ 「はい、アラン様」
アラン 「……何で俺まで」
ユーリ 「こちらの要望に付き合わせてるお礼です」
ユーリと共に護衛として来ていたアランは、
怪訝そうに眉を寄せていたが、
揚げ菓子を受け取ると、小さな溜め息を零した。
ユーリ 「これこれー!」
ユーリは揚げ菓子にかじりついて満面の笑みを浮かべている。
アルバート 「久々に食べたな」
ゼノ 「……」
ゼノ様はそんな二人を見て口角を上げると、菓子を口元へと運んだ。
アラン 「なあ」
吉琳 「ん?」
アラン 「あいつら、仲良いのな」


=====


アラン 「あいつら、仲良いのな」
アランの視線の先を一緒に見つめて、私は笑みを零す。
吉琳 「そうだね」

(きっと、ずっと一緒だったから……)

胸の中が何だか温かくて、
けれどぎゅっとするようで、瞳の奥が僅かに熱くなる。

(こういう平和な時間を守っていけるよう、)
(私もいっぱい努力しなきゃ……)

ユーリからもらった揚げ菓子は甘くて美味しくて、
私の中で忘れられない味になった。
皆で特産品の店や、祭りに興じる人々を見ながら、
優しいひと時を過ごしていると、
アルバートが何かに気づいたように、じっと人混みを見つめる。
吉琳 「どうかしましたか?」
アルバート 「あそこに、子供が……」
ユーリ 「どこ? アル、背ぇ高いから俺と視野が違うよね」
アルバートが先導して進むと、
小さな少女が道の真ん中で立ちすくんでいた。
ユーリ 「大丈夫? ひとり?」
急に声をかけられて、
びくっと肩を震わせた女の子は、私たちを見上げる。
吉琳 「あれ? もしかして……」
女の子 「プリンセス……?」
目を瞬いたその子は、先日の視察の際、
私たちに大きく手を振ってくれた女の子だった。
吉琳 「やっぱり! もしかして、はぐれちゃったのかな? お母さんは……」
言いかけると、彼女の愛らしい顔がくしゃりと歪んだ。
ユーリ 「わ、泣かないで」
なだめようとするユーリの肩をとんと叩いて場所を変わったのは、アルバートだった。
アルバート 「人混みに取り残されて、心細かったでしょう」
アルバートは女の子の前で片膝をついて目線を合わせると、
気持ちを汲むように優しく微笑んだ。
女の子 「王様……」
アルバート 「もう、大丈夫」
アルバートの穏やかな声音は、
すっと心に入ってくるようで、
女の子も落ち着きを取り戻していく。
アルバート 「いい子だ」
アルバートが大きな手で頭を撫でると、彼女にほのかな笑顔が浮かんだ。
アルバート 「ゼノ、すみません。お忍びはここまでです」


=====


アルバート 「ゼノ、すみません。お忍びはここまでです」
ゼノ 「ああ」
ゼノ様は眼帯を取り出すと、慣れた手つきで紐を結ぶ。
ゼノ 「貴重な時間を過ごさせてもらった。お前の好きにするといい」
アルバートは頷くと、女の子をひょいっと抱き上げて肩へと乗せる。
女の子 「わあ、高―い!」
すっかり笑顔になった女の子は、
まるで見晴らしのいい丘に登ったように周囲を見渡す。
アルバート 「祭りを楽しんでいる最中失礼します! この子の、保護者の方はいらっしゃいませんか?」
アルバートが良く通る声を張り上げると、人々の視線が一気に集まる。
ユーリ 「さっすが、元騎士団長。いい声してるね」
どこか楽しそうなユーリが、アルバートを見上げる。
アルバート 「茶化している暇があったら、貴様も探せ」
ユーリ 「はーい」
吉琳 「誰と来たの?」
女の子 「ママ!」
アルバート 「この子のお母さま、いらっしゃいましたら、こちらまでお願いします!」
祭り客1 「え、あれって……」
露店の店主 「国王様……?」
ざわめきは波紋のようにすぐに広がり、人々が目を丸くする中、
一人の女性が人混みをかき分けるように、こちらへと向かってきていた。
女の子 「あ、ママっ!」
アランが人垣を割って駆け寄り、
道を作って彼女を連れてきてくれる。
アルバートが女の子を肩から降ろすと、
彼女は母親に包み込まれるように抱きついた。
母親 「すみません、国王様。ありがとうございます!」
何度も頭を下げる女性に、アルバートは首を横に振る。
アルバート 「いえ、無事に逢えて良かったです」
アルバート 「この人混みでは無理もない。もう少し人々の誘導などに、人員を配するべきでした」
穏やかで冷静に分析するアルバートに、母親は少し目を瞬いてから、笑みを浮かべる。
母親 「いつも、私たちのことを考えてくださってるのですね」
その言葉に、母親に抱きついていた女の子はハッとして、くるりとこちらを向き直った。
女の子 「王様、わたしもう一つ『ありがとう』を伝えなきゃ!」
女の子 「ママを助けてくれてありがとう!」
アルバート 「え?」


=====


女の子 「ママを助けてくれてありがとう!」
アルバート 「え?」
一瞬何のことか分からずにいると、母親が丁寧にお辞儀をして教えてくれた。
母親 「国王様たちが、お医者様に援助をしてくださったおかげで、私は今までにない治療を受けられました」
より充実した医療を人々が受けられるようにと施した政策により、助かった命がそこで微笑んでいた。
女の子 「ママが元気になったから、はじめて一緒にお祭りにこられたの!」
女の子 「ちょっとはしゃぎすぎて、ママを迷子にさせちゃったけど……」
はにかむ女の子が愛しくて、泣いてしまいたいほど嬉しくて、
私は思わず女の子を抱きしめた。
女の子 「プリンセス?」
吉琳 「私からも、『ありがとう』を伝えさせて」

(私たちの未来が、間違っていない証みたいだから……)

母親 「本当に、ありがとうございます」
アルバート 「いえ。俺は、この国の笑顔を守りたいだけです」
アルバート 「愛する人の大切な国を、俺も同じように愛していきたい。そういう王でありたい、と」
私に柔らかな眼差しを向けて、アルバートが微笑んでくれる。
吉琳 「ありがとうございます、アルバート」
優しい想いを胸に秘めたアルバートに、私は笑顔でお礼を伝えた。
周囲からぱらぱらと聞こえた拍手は、
あっという間に歓声を伴って渦を巻く。

(こんなことって……)

沸き起こった拍手が背中を押すように、
人々はアルバートに感謝の言葉を伝えていく。
沿道から、露店から、いろんな場所から『ありがとう』が届けられる。

(……きっと今まで、)
(伝えるタイミングが分からなかっただけなのかもしれない)

人々の笑顔を見回して、私たちは並んで立つと手を振って応えた。
ゼノ様は、アルバートの隣で静かに微笑む。
ゼノ 「民に、愛されているようだな」
アルバートはその言葉を胸に抱くように、視線を伏せる。
アルバート 「……光栄です」
『ありがとう』のやまない市場は、優しさで溢れていた…─


=====


祭りの余韻が残るその晩…─

(アルバート、どこだろう)

夕食会の後、ゼノ様を見送ってから姿の見えないアルバートを探して、私は廊下を歩いていた。
ふと、執務室から明かりが零れているのに気づいて、中を覗く。
アルバート 「待てよ……この事案は」
そこには、書類と書物の山の合間で没頭するアルバートの姿があった。
蝋燭の灯りに照らされた横顔は凛としていて精悍で、
強い眼差しには意志を感じる。

(アルバート……)

今日の人々からの言葉が、彼の背中を押しているのは明白で、
きっと更により良い未来への施策を練っているのだと伝わってくる。

(けれど……アルバートも疲れているはず)

吉琳 「アルバート」
そっと声を掛けると、
鋭い眼差しがいつものようにこちらに向けられた。
アルバート 「ああ。あなただったか」
すぐにふわりと和らぐ瞳に、変わらないなと笑みが零れる。

(変わっていくことと、変わらないこと……)
(きっとそうやって私たちは歩んでいく)

アルバートの側に歩み寄り、私は彼の髪にそっと触れた。
アルバート 「吉琳?」
吉琳 「無理のしすぎも、心配です」
アルバート 「無理というより……俺が、やりたいことをやっているだけです」
体力に自信がある彼だから、きっといつまでも頑張れてしまう。
それが心配で、私は少しだけ眉を下げた。
吉琳 「何か、私にできることはありますか?」

(私も、あなたと一緒に頑張りたいから……)

アルバートは、ふっと笑みを零すと、
私の腰に片腕を回して抱き寄せる。
アルバート 「……では、失礼します」
吉琳 「え?」
膝の上にすとんと座らせられて、
瞬きをする間もなく、唇が重なった。
アルバート 「これだけで、三日は頑張れます」
こつんと額を触れ合わせながら、アルバートが低く囁く。
吉琳 「もう……そんなことしたら、私が怒ります」
アルバートが珍しく声を零して笑うから、
愛しさが溢れて私は彼を抱きしめた。

(ずっと、あなたと生きていく……)

心から愛する人と共にあること……
その喜びを胸に、アルバートと笑い合う。
窓からは、美しい星々が私たちを見守るように煌めいていた…─

 

fin.

 

日版王宮 劇情活動-Royal Memory With Yo

 

エピローグEpilogue:

日版王宮 劇情活動-Royal Memory With Yo

王として問題を乗り越え、
あなたへの愛をより募らせた彼と迎える夜…―
あなたはいつも以上に愛され、甘く求められる……
アルバート 「あなたは、いつまでも愛らしくて困る」
彼とキスを交わすたびに体も心も熱を帯びてきて…―
アルバート 「俺は、あなたの全てを感じていたい」
甘くて幸せな時間はまだまだこれから…―

 

日版王宮 劇情活動-Royal Memory With Yo

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