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新版王宮 劇情活動-Cinderella Christmas(ジルのPremierEND)

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分歧>>>選択ジルのPremierEND

 

吉爾3

第三話-ジル:

吉琳:あっ…
手に持っていたトレイが滑り落ちる。
その瞬間、横からすっと手が伸ばされて……
ジル:吉琳
転びそうになった私を、ジルの腕が支えてくれた。
吉琳:っ…ジル…
ジル:大丈夫ですか?
吉琳:う、うん…ありがとう

(……っ…)

右の足首に少し痛みを感じながら、小さく頷く。
ジル:…………
吉琳:お騒がせしてすみません
私は落としてしまったトレイを拾い上げて、お客様にお辞儀をする。
ジル:吉琳、こちらはやっておきますよ
クロード:ああ、俺たち二人で大丈夫だ
吉琳:えっ、でも…
私の言葉を遮るように、ジルが微笑む。
ジル:それより、カウンターをお任せしてもいいですか?
吉琳:…うん、わかった
私はカウンターの中に入って、洗い物に手をつける。
少し歩いただけなのに、足が鈍い痛みを伝えてきた。

(どうしよう、足捻ったかも…)
(ダンスパーティーまでに、痛みがひくといいんだけど)

その時、カウンターに空のカップを下げに来たジルが私の耳に唇を寄せて…――
ジル:大丈夫ですか?
吉琳:え…
ジル:…………
ジルの視線が落ちて、私の足に向けられる。

(ジル、もしかして…)

その時、ドアが開いてまたお城の人が入ってきた。
吉琳:あ、いらっしゃいませ
つい体が動いてカウンターから出ようとすると、
動きを止めるようにそっと手を握られた。

(ジル…?)

ジル:私が行きますよ
吉琳:でも…
ジル:夜はダンスが控えていますから、今は無理をしない方がいいでしょう
吉琳:あ…

(やっぱり、私が足を痛めたこと気づいてたんだ…)

ジル:それに、貴女に見つめられながら仕事をする方が、やる気が出そうなので
ジルは唇に笑みを滲ませると、カウンターを出ていく。
ジル:いらっしゃいませ、こちらへどうぞ

(きっと、私が気にしないようにこんな風に言ってくれるんだよね…)
(ありがとう、ジル)

ジルの後ろ姿を見つめながら、心の中でそう呟いた。

***

カフェを無事に終えて、私たちは三人でお城に戻ってきた。
ジル:お疲れさまでした
クロード:ああ、それじゃまたダンスパーティーでな
吉琳:うん、二人ともまた後で
去って行くジルの背中を見つめて、カフェの間たくさん助けられたことを思い出す。

(私もジルのために何かしたい…)
(クリスマスはいつも忙しいって言ってたけど)
(パーティーの後、ジルに時間をもらえるように頼んでみよう)

***

ドレスに着替え終えた頃、部屋にノックの音が響き渡る。
吉琳:はい
ジル:お迎えにあがりました、プリンセス

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吉琳:ジル!
礼服に身を包んだジルの姿から、目が離せなくなる。
ジル:吉琳、そんな風に見つめられると…
吉琳:あ……
ジルの手にくっと顎を持ち上げられて吐息が唇に触れる。
ジル:貴女に今すぐキスをしたくなります
吉琳:っ……
息を呑んだ瞬間、ジルはくすりと微笑んだ。
ジル:冗談ですよ、吉琳
吉琳:え……
ジル:足の調子はどうですか?
顎から指を離したジルはもういつも通りの様子で、心の中で息をつく。

(ジルの冗談は心臓に悪いよ…)

吉琳:もう大丈夫、ジルのおかげで休めたから
ジル:少し見せてください
ジルは膝をつくと、私を見上げる。
吉琳:う、うん…
椅子に座り、緊張しながらジルに右足を見せる。
ジル:…………

(…っ……)

指先でそっと足首を撫でられて、心臓が小さく跳ねる。
ジル:…今日はガラスの靴はやめておきましょうか
吉琳:え…
ジル:なるべく足に負担のない靴を選びますから…
吉琳:…どうしても駄目かな?
ジル:吉琳?
吉琳:だって、今日は…

〝吉琳:クリスマスにガラスの靴を履いて踊ると、二人はずっと幸せになれるって話知ってる?〞
〝ジル:ええ、シンデレラクリスマスのことですね〞

〝(でも、ジルは教育係だから…私と踊るのは難しいかな…?)〞

〝ジル:では、このことはご存知ですか?〞
〝ジル:クリスマス当日は誰とでも踊ることができるのですよ〞

〝(え……)〞

〝吉琳:じゃあその日は、ジルと踊ってもいいの…?〞
〝ジル:ええ、貴女が望んでくださるのなら〞

(だから、ずっとパーティーを楽しみにしてたのに…)

ジル:シンデレラクリスマスのことを気にしているのですか
吉琳:…うん、ジルと踊りたいって思ってたから
ジル:貴女らしいですね
ジル:教育係としては止めなければならないところですが…わかりました
吉琳:いいの?
ジル:ええ。ですが、パーティーでは別の靴を履いてください
吉琳:え?
ジル:一緒に踊るのは、パーティーの後でもいいでしょう?
ジルは表情を緩めると、そっと私の髪を撫でた。
ジル:それに、貴女がその言い伝えを信じているのなら
ジル:他の男性とガラスの靴で踊らせるわけにはいきませんからね
ジル:貴女は、私だけのプリンセスですので
吉琳:ジル…ありがとう
柔らかな笑みで頷いて、ジルが足元に靴を差し出す。
ジル:では、今夜はこの靴を履いてください
吉琳:うん
ジルが選んでくれた靴を自分の足に滑らせていく。

(…これなら足が痛くならずにすみそう)

ジル:では、行きましょうか
ジルはそう言うと、私の体を抱き上げた。
吉琳:っ…ジル
吉琳:ここまでしてもらわなくても大丈夫だから…
下ろして、そう伝えようとした瞬間、ジルの顔が近づいて……
ジル:ダメですよ

 

吉爾4

第四話-ジル:

吉琳:っ…ジル
吉琳:ここまでしてもらわなくても大丈夫だから…
下ろして、そう伝えようとした瞬間、ジルの顔が近づいて……
ジル:ダメですよ
吉琳:ん…っ…
そのまま唇を塞がれる。
吉琳:……っ…は…
唇を離すと、ジルは瞳に顔が映る距離で微笑んだ。
ジル:大丈夫、会場の前までですよ
ジル:私とのダンスのために、休める間は足を休めておいて頂かないと
吉琳:だからって…
ジルは恥ずかしがっている私を見て笑みを深める。
ジル:お望みなら、ダンスホールの中までこのままお連れしましょうか?
吉琳:…会場の前までおとなしくしてます
ジルの首に腕を回すと、微かな笑い声が聞こえた。

***

ジルにエスコートされながら、ダンスホールに足を踏み入れる。
クロード:ジル、吉琳
吉琳:クロード
私たちの姿を見つけて、すぐにクロードがこちらに近づいてくる。
クロード:足は大丈夫か?
吉琳:クロードも気づいてたの?
クロード:ああ。ジルがずいぶんお前を気にかけてたからな、途中で気づいた
吉琳:え……
ジル:クロード…

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クロード:睨むなよ、本当のことだろ?
クロードは口の端を上げると、壁際に視線を投げた。
クロード:壁のところに休憩用の椅子をたくさん用意させたから、疲れたら休めよ
吉琳:ありがとう、クロード
ジル:そうですね、今日のところはお礼を言っておきましょうか
ジル:ではプリンセス、こちらへ
吉琳:うん。クロード、またね
クロード:ああ
ジルに手を引かれながら壁際に行き、椅子に腰を下ろす。
ジルは私を見守るように隣に控えた。
ジル:…こういう時、教育係でよかったと思いますね
吉琳:どういうこと?
ジル:こうして貴女の隣で、堂々と貴女を支えることができるので
吉琳:ジル…
見上げると、優しい眼差しが向けられて…――
ジル:愛する人を支えられることは、何にも勝る喜びですからね
まっすぐな言葉が嬉しくて、自然と笑顔になってしまう。
吉琳:ありがとう…私もジルがそばにいてくれると、すごく心強いよ
素直な気持ちを告げると、ジルが眉根を寄せた。
ジル:…吉琳、その顔は大変可愛らしいですが
ジル:できれば今は隠しておいてください
吉琳:え?
ジル:貴女のそういう顔を、他の方に見せたいとは思わないので
吉琳:…っ…ジルのせいなのに…
ジル:ええ、それでも頑張って堪えてください?
ジルは楽しむように目を細めた。

(もう、ジルには敵わないな…)

***

――…ジルと吉琳が話している頃
クロード:ユーリ、さっきは椅子の設置を対応してくれてありがとな
ユーリ:いいえ。でも、吉琳様のためだったんですね
二人は、椅子に座る吉琳と隣に立つジルを見つめる。
ユーリ:…ジル様、何か言ってますね
クロード:ああ、楽しそうにしてるな
ユーリ:こういうところで見せつけるのやめてほしいですよねー
拗ねたような表情でユーリはクロードに同意を求める。
クロード:そうだな…
クロード:でもあのジルにあんな顔をさせるなんて、吉琳じゃないとできないだろうな
ユーリ:確かに、それには全力で同意です

***

パーティーが終わり、私はジルと一緒に部屋に戻って来た。
ジル:足は痛みませんか?
吉琳:うん、大丈夫
ジル:それでは…
ジルがベッドに座る私の足元に膝をつき、気づかうように靴を脱がせていく。
ジル:今日の貴女は本当に1日立派でしたよ

(その言葉はすごく嬉しいけど…)

吉琳:きっとそう見えたのは、ジルがずっとそばにいてくれたからだよ
ジル:え?
吉琳:ジルがそばにいると、気持ちが落ち着くから
ジル:…それは、嬉しい言葉ですね
微笑んだジルが、そっと私の足から手を離す。
ジル:はい、終わりましたよ
吉琳:ありが…――

(あれ……?)

ガラスの靴に履き換えた足を見つめると、足首にアンクレットがつけられていた。
吉琳:これは…?
ジル:私からのクリスマスプレゼントです
ジル:メリークリスマス、吉琳
吉琳:ジル、ありがとう…!
ジル:ええ
優しく微笑んだジルに、胸の奥に温かい気持ちが広がる。
吉琳:実は、私もプレゼントを用意してるんだけど…受け取ってもらえる?
ジル:貴女がくださるものなら喜んで
机の上から持ってきた包みを、ジルに差し出す。
ジル:ん…? この香りは…
吉琳:カモミールティーの茶葉なんだ。甘いものにも合うし、リラックス効果があるから
ジル:吉琳……
ジルは驚いた表情で私を見つめる。
吉琳:いつも忙しいジルに何かしてあげたいと思ったんだ

(本当は、ジルのお仕事を手伝ったりできればいいんだけど)

吉琳:こんなことしかできなくて、ごめんなさい
ジル:本当に、貴女という人は…

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困ったように眉を下げたジルが私の手を包み込んで…――
ジル:こんなことではありませんよ、吉琳
ジル:貴女のくれるものが、向けてくださる心が
ジル:いつだって私を嬉しくさせるんです
吉琳:ジル…
ジル:それより、貴女に話したことがあったでしょうか?
吉琳:…? なにを?
ジル:カモミールの茶葉が、私の好きな茶葉の一つだということをです
吉琳:え、そうだったの?
ジル:ええ…どうやら偶然のようですね
吉琳:でも、ジルの好きなものを贈れたなら嬉しい
目を合わせて笑みを交わすと、ジルが私に手を伸ばして……
ジル:では、行きましょうか
私の体をそっと抱き上げた。
吉琳:っ…どこに行くの?
ジル:どうせ踊るなら、もう少しロマンチックな場所の方がお好きでしょう?
ジル:今日は、クリスマスですから
吉琳:…うん
私は足首に光るアンクレットを見つめて微笑んだ。

***

ジル:プリンセス、手を
吉琳:はい、ジル
ジルと手を取り合って、ステップを踏んでいく。

(ジル、私の足に負担が掛からないようにリードしてくれてる…)

吉琳:ジル、今日は1日本当にありがとう
吉琳:ジルのおかげで、素敵なクリスマスになったよ
ジル:…お礼を言うのはこちらの方です
ジル:私にとっても、忘れられないクリスマスになりましたからね
吉琳:ジル……
見つめ合うと、ジルの瞳にひどく優しい色が浮かんでいることに気づく。
ジル:知っていますか、吉琳?
ジル:私にとって…貴女以上の人はいないのですよ、吉琳
吉琳:私もだよ…

(私にも…ジルより大切な人なんていない…)

愛しい想いが溢れてきて、握った手に無意識に力がこもる。
吉琳:ジルのことが大好き…
小さく呟いた時、ふいにジルが足を止めた。
吉琳:どうしたの?
ジル:休憩にしましょう、あまり無理をさせたくはありませんから
吉琳:え…私は大丈夫だよ
ジル:それに…
ジルの手が私の頬を優しく撫でる。
ジル:ダンスをしていては貴女にキスできませんから
吉琳:んっ…
唇が重なると同時に、強い力で抱きしめられて……
星空の下、私たちは想いを伝えあうような甘いキスを交わした…――


End.

 

 

後記

Epilogue 予告:

――…特別なクリスマスの後に待つのは、二人きりの秘密の時間
彼の甘い想いが、あなたにとけない恋の魔法をかけていく…――
ジル:隠さないで…貴女の全部を見せてください
(…こうして何度触れても)
(まだ触れられていない貴女がいるような気がするのは、なぜなのでしょうね)
そして、一緒にクリスマスを過ごした時の、あなたへの想いが溢れだす……
(そんなに私は多くを求めているように見えるのでしょうか…)
(こうして貴女にふれるだけで、満たされた気持ちになるのに…)
愛する彼の、甘い恋の魔法にかけられてみる…?

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