小標

[復刻]Winter Wonder Land~クリスマスの奇跡~(レオ)

このイベントは2016年12月3日~12月15日に開催されていた『Winter Wonder Land~クリスマスの奇跡~』の復刻イベントとなります。

里奧標

キャンドルに火が灯され、ツリーに飾られた星が輝くクリスマスイヴ。
けれど、あなたと彼は、おとぎ話のように不思議な街に迷い込んでしまい…
クリスマスの奇跡が、彼とあなたに降り注ぐ…―
………
レオが、あなたへの深い想いを改めて告げる…―
レオ:次の休み、一緒にどこで過ごそうかとか…
レオ:何をしたら、喜んでくれるんだろうとか
レオ:吉琳ちゃんのことを考えてる時間全てが、幸せだ
………
彼の温もりに、降り続ける雪の冷たささえ忘れていく。
とびきり甘いイヴの夜が、あなたを優しく包みこむ…―

 

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第1話:

 

身体を包みこむような白い光が、次第におさまっていき…―
とっさに閉じていた瞳を開くと、ひやりとした夜風が頬をくすぐった。

(っ、ここは…?)

ふわふわと舞い落ちる雪が、どこか幻想的に街の景色を彩っている。
思わず目を奪われていると、ふいに温かな手が私の肩に触れた。
レオ:とっさに吉琳ちゃんの手を掴んだのは良かったけど…
レオ:何だか、信じられないことが起っちゃったね
吉琳:レオ…!
レオの顔を見て、少しほっとする。

(光の中で私の手を掴んでいてくれていたのは、もしかしてレオだったの…?)

吉琳:これって、どういうことなんだろう
レオ:普通に考えれば、夢を見てるんだろうけど…それにしては、リアルだよね
私は手を伸ばし、ふわふわの綿のような雪にそっと触れてみる。
吉琳:…そうだよね。雪も、触れるとちゃんと冷たい
その時ひやりとした風が首筋に触れ、私は小さくくしゃみをした。
レオ:大丈夫? その格好じゃ寒いよね

(あ…)

レオ:これ着てて
レオが上着を脱ぎ、私に差し出してくれた。
吉琳:っ、でも、レオが寒くなっちゃうよ
差し出された上着を受け取るのをためらっていると、
レオが上着を広げ、私の肩にそっとかけてくれた。
レオ:大丈夫。寒さには強い方だから
レオ:それよりも、吉琳ちゃんが風邪を引くことの方が心配だよ


=====


レオ:大丈夫。寒さには強い方だから
レオ:それよりも、吉琳ちゃんが風邪を引くことの方が心配だよ
吉琳:レオ…
レオの優しさと、上着に残る温もりに、頬が熱くなる。

(このまま遠慮をしても、きっと心配させちゃうよね)
(レオの気持ちに甘えることにしよう)

私は肩にかけてもらった上着に袖を通した。
吉琳:…ありがとう。すごくあったかい
レオ:どういたしまして
レオが微笑んで、どこか甘い眼差しで私を見つめる。
吉琳:どうしたの…?
レオ:恋人が自分の服をはおってるって、なんかいいなと思って
吉琳:っ、もう…
からかうような言葉にさらに頬が熱くなるのを感じながら、街の景色に視線を戻した。

(とにかく、早く帰らないと…レオも私も、お城の人たちに心配されちゃうよね)

レオ:…それじゃ、ここがどこなのか調べるために、ちょっと歩いてみようか
吉琳:うん、そうだね

(街並みを見る限り、城下のどこかみたいだけど…)

レオと並んで、うっすらと雪化粧を施された街並みを歩き出す。
家々の窓からは暖かな色の光が零れ、ドアに飾られた柊のリースからは、
もうすぐやってくるクリスマスの気配がした。

(クリスマスはもう明日だもんね…)

そう実感して、自然と心が浮き立つ。
レオ:そういえば、こうやって吉琳ちゃんとふたりで話すのは久しぶりだね
吉琳:そうだね

(ここ数日は、城内ですれ違うことも珍しかったよね)
(だから…今こうしてふたりで街を歩けているのは、ちょっと嬉しいな)

吉琳:…最近仕事が忙しかったみたいだけど、大丈夫?
レオ:うーん…仕事じゃないんだけど、ちょっとね
吉琳:え…?

(仕事で忙しかったわけじゃないのかな…?)

レオ:でも、もう終わったから大丈夫
レオが、私を安心させるように微笑む。
その優しい笑みに、私は数日前のことを思い出した。

(…そういえば……)

〝吉琳:アラン、レオがどこに居るのか知らない?〞
〝吉琳:さっきこのあたりからセバスチャンの声がしたんだけど…〞
〝アラン:セバスチャンはいるけど、レオはいない〞
〝噴水の前に座ったアランの後ろから、セバスチャンがぴょこんと顔を出す。〞

〝(あっ、そんなところにいたんだ)〞

〝セバスチャン:レオ、シゴト! シゴト!〞


=====


〝セバスチャン:レオ、シゴト! シゴト!〞
〝アラン:…だって〞
〝吉琳:レオ、最近仕事が忙しいのかな〞

〝(今日みたいに聞きたいことがあって探してる時も、なかなか会えないし…)〞

〝アラン:さあな。ただ……〞
〝アランが、どこか意味ありげな笑みを浮かべる。〞
〝アラン:最近、何か考え事してるみたいだけど〞
〝吉琳:っ、考え事って?〞
〝アラン:本人に聞いてみれば?〞

(…アランのあの言葉は、どういうことだったんだろう)
(てっきり仕事のことで悩んでいたんだと思ってたけど…もしかして、違うのかな?)

吉琳:レオ…あの、突然こんなこと聞くのは変かもしれないけど、何か悩み事はない…?
足を止めて見上げると、レオは少し驚いたような顔をした。
レオ:急にどうしたの?
レオ:吉琳ちゃんに心配してもらうようなことなんて、何もないよ
吉琳:本当…?
いつもの笑みに、心がざわつく。

(…レオは優しい人だから、心配だな)
(きっと悩みがあったとしても、私を心配させたくないって思うだろうから…)

レオ:あ。その顔は信じてないでしょ
レオ:俺が吉琳ちゃんに嘘つくと思う?


=====


レオ:俺が吉琳ちゃんに嘘つくと思う?
吉琳:それは…きっと、そんなことはしないだろうと思ってるけど…
真っ直ぐに見つめられて、思わず瞳を逸らす。
すると、ふいにレオの顔が近づき……

(っ…)

唇に、柔らかな温もりが触れた。
吉琳:レ、レオっ…?
一瞬遅れてキスされたことに気付いて、とくとくと鼓動が騒ぎ出す。
レオ:今、『廊下を歩いてたらいつの間にか外にいた』…なんて不思議な体験してるのに、
レオ:吉琳ちゃんは、俺のことばっかり考えてくれてるんだなと思って

(っ……たしかに、考えてみればそんな場合じゃないのかも。でも…)

吉琳:…それは…考えるよ。だって、他でもないレオのことだから
頬が熱くなっていくのを感じながら、私は正直にそう伝えた。
レオ:…そっか。ありがと
レオが、少し照れたような顔になる。
レオ:でも大丈夫だから、心配しないで
吉琳:…うん、分かった

(これ以上詮索するようなこと言うのは良くないよね)
(レオがこう言ってくれてるんだから、きっと大丈夫)

レオ:納得してもらえてよかった
レオ:ところで…さっきから、ちょっと変だと思わない?
吉琳:え…?
レオが顔を上げて、街を見渡す。
レオ:ウィスタリアの城下に似てるけど…少し、雰囲気が違う

(言われてみれば、そうかも…。)
(それに、いくら歩いてもお城が見えないのもおかしいよね)

心に不安が浮かんだその時…
女の子:わーい、人のかっこうだ!
男の子:ごしゅじんさまみたい!

(え…?)

道の向こうから、ふたりの子どもが、まるで犬がじゃれあうように駆けてくる。
レオ:人の格好…?
聞こえてきた不思議な会話にレオが眉を寄せると、
女の子が私たちに気付き、駆け寄ってきた。
女の子:こんにちは! おねえさんたちは、なんのどうぶつですか?
吉琳:え…?

(何の動物って、どういうことなんだろう)

好奇心を隠そうともしないきらきらとした瞳に戸惑っていると、男の子が女の子の手を引く。
男の子:こら、ここではそういうこと聞いちゃダメってかあさんに言われただろ
女の子:そっか。おねえさんおにいさん、ばいばい!
二人ははしゃぎながら、道の向こうへと走って行った。

(さっきの問いかけは、どういうことだったんだろう…?)

レオ:あ…吉琳ちゃん、見て。あそこに街の案内板がある
レオが、二人の子どもが去って行った先の道を指す。
吉琳:あっ、本当だ…
レオ:行ってみよう
レオの温かな手が、私の手を取り…―


=====


レオ:あ…吉琳ちゃん、見て。あそこに街の案内板がある
レオが、二人の子どもが去って行った先の道を指す。
吉琳:あっ、本当だ…
レオ:行ってみよう
レオの温かな手が、私の手を取り…
指を絡めるようにして、しっかりと繋いだ。

(…ここがどこでも、きっとレオと一緒なら大丈夫だよね)

レオの手から伝わる優しい温もりを感じながら、案内版のところまで行くと…
レオ:『ウィンターワンダーランドのご案内』…?
吉琳:そんな街の名前、初めて聞いた…
私たちは思わず顔を見合わせた。
レオ:あ…吉琳ちゃん、ちょっと下の方見て
レオに促されて、街の全体図から視線を下げる。
そこに書かれていた文章は…

『この街にいる間は、人の姿を借りてクリスマスを楽しみましょう!』

吉琳:これ…どういう意味だろう?
レオ:さっきの子たちも不思議なこと言ってたし、普通の街じゃないのかもね
子どもたちが言っていた言葉を、頭の中で思い返す。

〝女の子:わーい、人のかっこうだ!〞
〝男の子:ごしゅじんさまみたい!〞
〝女の子:こんにちは! おねえさんたちは、なんのどうぶつですか?〞

吉琳:っ、もしかして、この街にいる人は、みんな本当は動物なの…?

(そんなことがあるなんて、信じられないけど…)
(でも、そもそも、お城の壁を通り抜けてここに来ちゃったこと自体、不思議なことだよね…)

レオ:信じがたいことだけど…そうかもしれないね
レオ:…それなら、セバスチャンもどこかにいたりして

 

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第2話:

 

レオ:…それなら、セバスチャンもどこかにいたりして
吉琳:え…? どうしてそう思うの?
レオ:最近、鳥籠から出ると散歩がてらどこかに寄り道してるみたいなんだよね
レオ:もしかしたら、ここに来てたのかも…なんて思って
レオが少し冗談めかして言ったその時…
???:あっ、見つけた!

(えっ?)

道の前から歩いてきた青年が、私たちを見て驚いたように声を上げた。
???:こんなところまで歩いてきたの? 探すの大変だったよー
私たちが呆気にとられている間にも、青年は楽しそうにお喋りしながらこちらに歩み寄る。

(誰だろう…? なんだか、雰囲気が少しレオに似ているような…)

???:…あれ。もしかしてプリンセスもレオも僕のこと分からない? 寂しいなー
吉琳:っ、私たちのこと、知っているんですか?
レオ:…申し訳ないけど、名前を教えてくれる?
レオが聞くと、青年はどこか悪戯っぽく笑った。
???:誰だと思う? 当ててみてよ! なんとなく、雰囲気は出てると思うんだけど

(…さっきの案内版によると、ここは動物の街、なんだよね…?)

赤みがかった髪をした、人懐っこい青年を見上げる。
その瞳には、どこか覚えのある愛嬌があって…
吉琳:っ、もしかして…セバスチャン!?
セバスチャン:そう、当たり! さすがプリンセス。当ててくれてアリガトー
青年が嬉しそうに微笑んで頷く。

(やっぱり、そうだったんだ…)

レオ:…ちょっと待って。…本当に…?
セバスチャン:信じられないなら、昨日のレオの独り言をプリンセスに披露してあげようか?
セバスチャン:『プリンセス、今頃何してるのかな。明日はいよいよ…』…っ
レオが、セバスチャンの言葉を遮るように素早く口元を塞ぐ。
レオ:本当にセバスチャンだったんだね
そして、にこっと微笑んだ。
レオ:…分かったから、その先は言わないで


=====


レオ:…分かったから、その先は言わないで

(え…? 今、セバスチャンは何を言おうとしたんだろう)
(レオ、もしかして何か知られたくないことがあるのかな…)

何かを悩んでいたことも含めて、またレオのことが心配になる。

(気になるけど…でも、今はとりあえずここから出ないといけないよね)

もやもやとする気持ちを振り切って、私は口を開いた。
吉琳:ところで…セバスチャン、ここは本当に動物の街なの?
セバスチャン:そうだよ! 冬の間しか出入りできない、特別な街なんだけどね
口元を覆っていたレオの手が離れた途端、セバスチャンは楽しそうに喋り始めた。
セバスチャン:ところでプリンセス、こうやって人の姿で見ると、小さくて可愛いね!
吉琳:えっ?
セバスチャンが突然私の手を取り、きゅっと握る。
セバスチャン:いつもとちょっと違うから不思議だけど、たくさんお喋りできて嬉しいな
セバスチャンの無邪気な瞳に、胸が温かくなる。
吉琳:私も…なんだか不思議だけど、嬉しいよ

(セバスチャンはオウムの時もお喋りだけど、人の姿になるともっとお喋り好きみたい)

人の姿になっても相変わらずなセバスチャンに、自然と笑みがこぼれる。
セバスチャン:プリンセスも同じ気持ちでいてくれるの? えーと、こういう時ってなんて言うんだっけ
セバスチャン:そうそう、『嬉しいお言葉を頂けて光栄です、プリンセス』
セバスチャンが、貴族の挨拶をするように私の手の甲にそっと唇を寄せる。

(あっ…)

レオ:こら、セバスチャン
その瞬間、レオにやんわりと肩を抱きよせられて…―


=====


レオ:こら、セバスチャン
その瞬間、レオにやんわりと肩を抱きよせられて…―
レオ:だめだよ。吉琳ちゃんにキスしていいのは、俺だけだから
微笑んで言うと、私の頬にちゅっとキスをした。
吉琳:っ、レオ…!
少し遅れて、レオの唇が触れたところから頬が熱くなっていく。

(セバスチャンの目の前でキスしなくても…)

セバスチャン:プリンセス、カワイイー
レオ:うん、可愛い
吉琳:もう、二人とも…っ
二人は同時にどこか憎めないような笑みを浮かべた。

(…しょうがないなぁ…。そんな顔されたら、怒れない)

レオ:ところで…セバスチャン、どうすればこの街から出られるの?
セバスチャン:僕それ知ってる! 人は、僕たちとは違う方法で帰るんだって

(良かった…! 帰る方法を教えてもらえそう)

吉琳:それは、一体どんな方法なの?

(早く帰らないと、お城のみんなも心配するよね)

セバスチャン:なんでも、『モミの木の丘を下りながら、大切な人を想う』とか、そういうのだったような…
レオ:…うろ覚えみたいだね
セバスチャン:人がここに迷い込んだことは、動物の間でおとぎ話として語られてるんだ
セバスチャン:むかーし聞いただけだから、ちょっと曖昧になってて
うーんとうなりながら、セバスチャンが記憶をたぐり寄せるように首を傾げる。
やがて、はっと顔を上げた。
セバスチャン:そうだ思い出した! 確か、坂を下って、モミの木の間を抜けるんだったと思う

(坂…?)

レオ:とりあえず、場所はそこだってことだね
レオ:セバスチャン、この街の広さは?
セバスチャン:そんなに広くないよ。坂もあまりないから、すぐに見つかると思う
吉琳:よかった…。ありがとう、セバスチャン
レオ:…それじゃ、もう少し雪の舞う街を散歩しようか


=====


レオ:…それじゃ、もう少し雪の舞う街を散歩しようか
いたずらっぽく言ってウインクするレオに、私も笑顔になる。
吉琳:うん…! あの…でも、レオはそろそろ寒くない?

(私はレオの上着を借りてるから、温かいけど…)

レオ:大丈夫
レオ:帰ったら、吉琳ちゃんが温めてよ
甘い言葉に、頬が熱くなる。

(っ、でも…レオは私のために寒いのを我慢してくれてるんだから、)
(ちゃんとお返しがしたいな…)

少し迷ってから、私は頷いた。
吉琳:…うん、分かった。帰ったらね
レオ:えっ…
驚いたような顔をしたレオの頬が、少しだけ赤くなったその時…
セバスチャン:セバスチャン、ナカマハズレサミシー

(っ…)

セバスチャンのからかうような声に、私ははっと我に返った。
セバスチャン:仲良しなのはいいけどさー。僕もいるって忘れないでよ
レオ:…はいはい。ごめんね
レオは笑って、セバスチャンの肩を叩いた。
レオ:それじゃ、そのモミの木がある坂を探そうか
吉琳:うん
差し出されたレオの手を取る。

(突然こんなところに来て、早く帰らなくちゃいけないって分かってるのに…)
(なんだか、この時間が終わるのが少しだけもったいなくなるな…)

ふわふわとした粉雪が舞うイヴの街を、三人で歩いていく。
オレンジ色の街灯りに、自然と心が弾んでいった。
やがて、視界が開け…―
そこには、真っ白な世界が広がっていた。
吉琳:わあ…一面の雪景色だね
レオ:あ、見て
レオが指さしたなだらかな坂道の先には、
まるで門のように両脇にそびえるモミの木があった。

(もしかして…)

セバスチャン:ここが帰り道みたいだね!
吉琳:よかった…! 意外と早く見つかったね
ほっと胸をなでおろして一歩足を踏み出したとたん…
吉琳:きゃ…
思ったよりも深く積もっていた雪に、片足が埋まってしまった。
レオ:大丈夫? 掴まって
吉琳:っ、ありがとう…
レオの腕を借りて、さらさらとした雪の中から足を出す。
レオ:ここは長いこと雪かきされてなかったみたいだね
セバスチャン:このまま下っていくのは危険かも

(これじゃあ、歩いてモミの木のところまでは行けなそう…)

すると、レオが少し考えるようなそぶりを見せてから、口を開いた。
レオ:…それじゃ、そりとかは?
セバスチャン:いいね、冬らしいし楽しそう! ちょっと待ってて、どこかで借りてくるから
セバスチャンが元気に言って、来た道を引き返していった。

(そういえば、すぐ近くに雑貨屋さんがあったな。あそこで借りてきてくれるのかも…)

セバスチャンの背中を見送っていると…
レオ:…吉琳ちゃん、ごめんね
吉琳:え…?
レオ:…『心配してもらうことなんて何もない』なんて言ったばかりなのに
レオ:さっきセバスチャンが言いかけたこと、気になってるよね


=====


レオ:さっきセバスチャンが言いかけたこと、気になってるよね

(あ…)

〝セバスチャン:信じられないなら、昨日のレオの独り言をプリンセスに披露してあげようか?〞
〝セバスチャン:『プリンセス、今頃何してるのかな。明日はいよいよ…』…っ〞
〝レオ:…分かったから、その先は言わないで〞

吉琳:ううん、いいの。無理に聞こうなんて思わないよ

(…本当は、ちょっと寂しいけど、話したかったら話してくれるよね)

レオを安心させるように微笑むと…
レオ:もう、ほんと俺の負け

(え…?)

気付くと、レオの腕の中に身体がすっぽりと包まれていた。
レオ:ごめん。でも…あと少しだけ、待ってて
レオ:帰ったら、必ず吉琳ちゃんを笑顔にするって約束するから
吉琳:レオ…
レオの真剣な瞳に魅入られたように視線が逸らせなくなったその時…―
セバスチャン:二人ともー! 借りてきたよ

(っ…)

大きなそりを抱えて戻ってきたセバスチャンに、私たちは慌てて離れた。
セバスチャン:ちゃんと二人乗りだよ。良い子でしょ? 褒めて!
吉琳:わあ、ありがとう…!
レオ:よしよし
レオに撫でられて、セバスチャンが嬉しそうに微笑んだ。
レオ:それじゃ、帰る前に…セバスチャンに、お別れしておこうかな
レオ:向うに帰ったら、こんな風には話せないしね

(あ…そうだよね)

気付いてしまうと、帰るのが少し寂しくなってくる。
吉琳:セバスチャン、帰り道を一緒に探してくれてありがとう
セバスチャン:しんみりした空気にならなくても大丈夫! いつだって側にいるから
レオ:…確かに、向こうでも話すことはできるしね
セバスチャン:そうそう。セバスチャンカシコイ!
和やかな空気に、なんとなく幸せな気分になる。

(この街に来ることができて、よかったな)

レオ:それじゃ、行こうか
レオに促されて、そりに座る。
すると、レオが私の身体を支えるように、後ろから手をまわした。
セバスチャン:それじゃ二人とも、またウィスタリア城でね
そう言うと、セバスチャンは服のポケットから小さなサンタ帽を取り出す。

(あっ、あれって…)

そして、サンタ帽を頭に被って、私たちに手を振った。
セバスチャン:よいクリスマスを!
レオ:セバスチャンもね
吉琳:良いクリスマスを

(セバスチャンは、人の姿になってもお茶目だな)

挨拶を交わしてから、レオがそりを押し出す。
そりはゆっくりと雪の上を滑り出した。
セバスチャン:行ってらっしゃーい
遠ざかって小さくなっていくセバスチャンに見送られて、
私たちを乗せたソリは、門のようにそびえるモミの木に向かって走り出した。
吉琳:っ、レオ、ちょっとスピードが速いような気が…
そう言っている間にも、そりはぐんぐんとスピードを上げていく。

(見た目よりも急な坂だったみたい…)

レオ:スリル満点だね。吉琳ちゃん、捕まってて
レオが、私を後ろから抱きかかえるようにしてしっかりと身体を支えた。
レオ:坂を下ってる間は、俺のことだけ考えててね
吉琳:うん…
伝わる温もりに、恐怖が薄れたのもつかの間……
吉琳:きゃ…!
そりが何かの上を通ったようにがくんと揺れた。

(雪の下に岩が隠れてたんだ…!)

そりは大きくコースを変えて、モミの木の太い幹に向かってスピードを上げていく。
吉琳:レオ…! このままじゃ……
レオ:大丈夫
私の頭をかばうように抱き込んで、レオが前を向く。
レオ:俺が絶対に、吉琳を無事に帰すから

(レオ……)

やがて、木の幹が目の前に迫り…―

 

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里奧分

 

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第3話-プレミア(Premier)END:

 

そりは大きくコースを変えて、モミの木の太い幹に向かってスピードを上げていく。
吉琳:レオ…! このままじゃ……
レオ:大丈夫
私の頭をかばうように抱き込んで、レオが前を向く。
レオ:俺が絶対に、吉琳を無事に帰すから

(レオ……)

やがて、木の幹が目の前に迫り…―
急に、あたりがまばゆい光に包まれた。

(これって、来た時と同じだ…!)

***

光がおさまるのを待って、そっと目を開けると……

(ここは、私の部屋…?)
(もしかして、ここがモミの木から繋がる出口だったの…?)

レオ:よかった。無事だったね
レオが安心したように言って、私の身体をぎゅっと抱きしめた。
その温もりに、ゆっくりと心が落ち着いていく。
吉琳:レオも無事でよかった…。帰って来られたんだね
私も、レオの背中に控えめに腕をまわす。

(本当に不思議な街だったな…)

吉琳:あっ…そうだ、上着ありがとう。ずっと借りちゃってごめんね
私は身体を離すと、レオのジャケットを脱いだ。
レオ:どういたしまして
レオが微笑んで、ジャケットを着る。
そして、ポケットから懐中時計を取り出して時間を確認した。

(もしかして、何か用事があったのかな?)

レオ:…帰って早々お願いなんだけど、
レオ:1時間後、ドレスを着てホールの前に来てくれる?


=====


レオ:…帰って早々お願いなんだけど、
レオ:1時間後、ドレスを着てホールの前に来てくれる?
吉琳:えっ、どうして…?
見上げると、レオが悪戯っぽく微笑む。
レオ:いいから。公務じゃないから、緊張はしないでね
戸惑っていると、部屋のドアがノックされた。
メイド:プリンセス、今夜のドレスをお持ちしました
レオ:…吉琳ちゃんの着替えを手伝ってくれるよう頼んでおいたんだ
レオ:俺はホールの前で待ってるよ
聞く暇もなく、レオは部屋を出て行ってしまう。

(…一体ホールで何が行われるんだろう…?)

レオと入れ違いで入ってきたメイドさんに着替えを手伝ってもらいながら、
私は素敵な予感に胸をときめかせた…―

***

そして、1時間後…―
レオ:吉琳ちゃん、時間ぴったりだね
レオ:今日のドレスもすごく似合ってるよ
吉琳:っ、ありがとう…

(レオにこうやって褒められたことは何度もあるはずなのに、)
(何度言われても慣れないな…)

熱くなっていく頬を感じながら、正装に身を包んだレオを見上げる。
吉琳:…レオも、すごく似合ってるよ
レオ:ありがと
レオ:吉琳ちゃんにそう言ってもらえると、すごく嬉しい
レオの、本当に嬉しそうな微笑みに、幸せな気持ちが広がる。
吉琳:ところで…これから、何があるの?
自然と、視線が閉じられたままのホールの扉へと向かう。
レオ:すぐに分かるよ。でもその前に…
レオが、身体の影から何かを差し出した。
レオ:…これを、受け取って
ふわりと薔薇の香りが鼻先をかすめて…―

(わあ…!)


=====


吉琳:ところで…これから、何があるの?
自然と、視線が閉じられたままのホールの扉へと向かう。
レオ:すぐに分かるよ。でもその前に…
レオが、身体の影から何かを差し出した。
レオ:…これを、受け取って
ふわりと薔薇の香りが鼻先をかすめる。

(わあ…!)

レオが差し出してくれたのは、大輪の赤いバラの花束だった。
吉琳:綺麗…! これを私に…?
レオ:うん。今日はクリスマスイヴでしょ?
レオ:大切な人と過ごす日だから、改めて気持ちを伝えたくて

(レオ……)

思ってもいなかったプレゼントに、涙が出てしまいそうになる。
吉琳:…ありがとう
レオ:俺が贈りたかっただけだから、お礼はいらないよ
涙をこらえてうつむく私を、レオが抱き寄せた。
幸せな温もりに顔を上げると、ゆっくり唇が重なっていく。
吉琳:んっ…
目を閉じ、心地よい温もりに身を任せかけて…
私ははっと我に返った。
吉琳:っ、レオ、こんなところでキスしたら…
私の言葉を遮るように、レオが私の唇にやんわりと指を押し当てる。
レオ:…大丈夫だよ。みんなもう中にいるから

(…どういうこと…?)

レオ:だから、もう一回

(っ…)

甘く囁かれて、抵抗が奪われていく。
ついばむようなキスを繰り返した後、レオの舌が唇を割って忍び込んだ。
吉琳:っ…、ふ……
抑えきれない吐息が零れ出した頃…
レオが、ゆっくりと唇を離した。
レオ:…さて。本番はこれからだよ、吉琳ちゃん

(え…?)

レオ:俺にエスコートさせて頂けますか? プリンセス


=====


レオ:俺にエスコートさせて頂けますか? プリンセス
吉琳:っ、うん…
期待と戸惑いが入り混じる中で差し出されたレオの手を取ると、
レオが空いた方の手でホールの扉を開けた。その先にあったのは……

(わあ…!)

大きなツリーが飾られたホールの中、
このお城で働く沢山の人たちが、全員正装してホールに集まっていた。
レオ:クリスマスパーティーだよ。吉琳ちゃんを驚かせたくて、秘密にしてたんだ
吉琳:すごい…! みんな集まってくれたの?
レオ:うん。吉琳ちゃんと、クリスマスを楽しむためにね
扉の側で控えていたメイドさんが私に歩み寄り、
そっと花束を預かってくれる。
メイド:こちらは、お部屋の花瓶に生けておきますね。どうぞパーティーを楽しんでください
吉琳:ありがとうございます
そのとき、扉の近くで壁にもたれていたアランと目が合った。
アラン:…成功したみたいだな
レオ:うん。本当に良かったよ
アラン:……どんなパーティーにしようか、仕事の合間縫ってずいぶん悩んでたもんな
どこかからかうようにアランが言う。

(あっ、もしかして…!)
(アランが言ってた、仕事以外でレオを悩ませているものって、この計画だったの…?)

レオ:…そういうこと、恥ずかしいから本人の前で言わないでくれる?
珍しく照れているらしいレオに、アランが微笑んだ。
アラン:日ごろの仕返し
そして、アランはホールの向こうに去っていってしまった。
レオ:…ああ言って、アランも手伝ってくれたんだよ。もちろん、ウィスタリア城のの皆も

(っ、そうだったんだ…)

吉琳:アランも、レオも…みんなも、ありがとうございます
感謝と嬉しさに高鳴る胸を押さえながら礼をすると、ホールから拍手が巻き起こった。
同時に、ゆったりとした音楽が流れ出す。
レオ:…踊ろう、吉琳ちゃん
吉琳:うん…!
差し出されたレオの手を取ると、レオが私の身体を支え…―


=====


吉琳:アランも、レオも…みんなも、ありがとうございます
感謝と嬉しさに高鳴る胸を押さえながら礼をすると、ホールから拍手が巻き起こった。
同時に、ゆったりとした音楽が流れ出す。
レオ:…踊ろう、吉琳ちゃん
吉琳:うん…!
差し出されたレオの手を取ると、レオが私の身体を支えてくれた。
そのまま、音楽に合わせてステップを始める。
レオ:…俺の悩み、分かってくれた?
ダンスをしながら、こっそりとレオが私に囁く。
吉琳:うん。…ありがとう、レオ。すごく嬉しい
レオ:本当はもっとスマートに驚かせたかったんだけど…
レオ:何かを悩んでること悟られるなんて、かっこ悪いところ見せちゃったな
吉琳:ううん、かっこ悪くなんてないよ
照れくさそうにしているレオに、私は首を横に振った。
吉琳:すごく…かっこ良い
レオ:え…?
吉琳:だって、私を喜ばせたくて、そんなに悩んでくれたんでしょう?
吉琳:そのことが、すごく嬉しいから…
素直な気持ちを伝えると、レオがふっと微笑んだ。
レオ:吉琳ちゃんと過ごすたび、幸せな悩み事が増えていくよ
レオ:次の休み、一緒にどこで過ごそうかとか…何をしたら、喜んでくれるんだろうとか
レオ:吉琳ちゃんのことを考えてる時間全てが、幸せだ
吉琳:レオ…
ダンスをしながら、周りの景色はきらびやかなクリスマスツリーに溶けていき…
レオのことしか、見えなくなる。

(そんなの…そんな風に想ってもらえてる私の方が、幸せだよ)

抑えきれない笑みが、私の唇に浮かんでくる。
吉琳:レオ、大好き
気付くと、素直な言葉が唇から零れ落ちていた。
レオ:吉琳ちゃん…

(…ちょっと、突然すぎたかな)

驚いた様子のレオを見て、恥ずかしさに頬が熱くなっていく。
吉琳:急にごめん。…でも、伝えたくなったの
吉琳:私、レオにこんなに想ってもらえて幸せだなって思って
照れ隠しのように微笑むと、レオが困ったように眉根を寄せた。
レオ:…今この場で抱きしめて、キスしたい
声を落として囁かれた言葉に、どきっと鼓動が跳ねる。
レオ:今すぐ、吉琳ちゃんを独り占めしたくなる
吉琳:っ、レオ…
速くなっていく鼓動に耐えきれずに声を上げると、レオが微笑んだ。
レオ:…帰ったら暖めてくれるって約束、まだ忘れてないからね?
くるっとターンして、私たちの姿が柱の陰に入ったその時…

(っ…)

レオが、私の額にちゅっと音を立てて口づけた。
レオ:ダンスをするだけじゃ、まだ温まらないな
レオ:…もっと、吉琳ちゃんに触れさせて

 

fin.

 

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第3話-スウィート(Sweet)END:

 

そりは大きくコースを変えて、モミの木の太い幹に向かってスピードを上げていく。
吉琳:レオ…! このままじゃ……
レオ:大丈夫
私の頭をかばうように抱き込んで、レオが前を向く。
レオ:俺が絶対に、吉琳を無事に帰すから

(レオ……)

やがて、木の幹が目の前に迫り…―
急に、あたりがまばゆい光に包まれた。
吉琳:え……?
レオ:…これって、帰れるってことかな
吉琳:そうみたい…

(来た時も、こんな風になったよね…)

レオ:光のトンネルを二人で抜けるなんて、ロマンチックだね
吉琳:うん、でも、やっぱり速い…っ
心臓が、ばくばくとせわしなく音を立てている。
レオ:じゃ、遠慮なく俺にしがみついてよ
レオが、私を抱きしめる腕に力を込める。
レオ:ちゃんと、支えてあげるから
吉琳:レオ…

(恥ずかしいけど、でも…)

レオの、見た目よりもたくましい胸に頬を寄せて、ぎゅっと抱きつく。
レオ:そう、そのままでいて


=====


レオ:そう、そのままでいて
まるでご褒美のようにレオが私の頭にキスを落とすのを感じていると、
やがて光がおさまっていき…
急に、視界に色が戻ってきた。

(ここって…お城の中庭?)

私はレオに抱きしめられたまま、噴水の前に立っていた。
レオ:えっと…気のせいじゃなければ、さっきまでそりに乗ってたよね?
吉琳:うん…

(急にこんなところに出るなんて…)
(まるで、ウィンターワンダーランドに行ってしまった時みたい)

けれど、ウィンターワンダーランドと違って、ここには雪は降っていない。
吉琳:まるで夢を見ていたみたい…
ゆっくりとレオから身体を離し、そう呟いたその時…
パタパタと羽音が近づいてきた。
セバスチャン:モドッタ、モドッタ!
吉琳:セバスチャン!
セバスチャンの頭には、ちょこんとサンタ帽がのっかっている。

(あれって、ウィンターワンダーランドでセバスチャンが被っていたものだよね…?)

サンタ帽をかぶりながら、こちらに手を振ってくれていたセバスチャンを思い出す。

(っていうことは…)

レオ:夢なんかじゃなかったみたいだね
レオが、そっと私を抱きよせ…―


=====


(あれって、ウィンターワンダーランドでセバスチャンが被っていたものだよね…?)

サンタ帽をかぶりながら、こちらに手を振ってくれていたセバスチャンを思い出す。

(っていうことは…)

レオ:夢なんかじゃなかったみたいだね
レオが、そっと私を抱きよせた。
吉琳:っ、レオ…?
レオ:帰ったら温めてくれる約束でしょ?
悪戯っぽく言われて、どきっとする。

(そういえば、約束してたよね…)

その時、すぐそばでバサッと羽音が聞こえた。
セバスチャン:セバスチャン、イイコ! バイバイ!
セバスチャンはどこか愉しそうにさえずると、中庭を飛び去って行く。

(もしかして…いい子だから、邪魔しないっていうこと…?)

セバスチャンの気遣いに、ますます頬が熱くなった。
吉琳:あの…レオ、上着貸してくれてありがとうね
私は恥ずかしさに少し戸惑ってから、レオの背中に控えめに腕をまわした。
レオ:上着を貸すくらいで吉琳ちゃんから抱きついてくれるなら、いくらでも貸すよ

(もう……)

いたずらっぽい囁きに、とくとくと鼓動が速くなっていく。
レオ:そういえば…吉琳ちゃんはどうして俺が悩んでいるって思ったの?
吉琳:あ…えっと、レオにちょっと聞きたいことがあって探していた時に…

(…レオのクリスマスプレゼントは何にしようか迷ってて、)
(遠まわしにレオが好きなものを聞いてみようって思ったんだよね…)

私は、レオを探している途中にアランに会って、
『レオは最近何か考え事をしてる』ということを聞いた時のことを話した。
レオ:そういうことだったのか
レオ:ごめん、心配させて
吉琳:ううん…! 私の方こそ、勝手に気にしてごめんね
レオ:そんなことないよ
レオ:そんなアランの何気ない一言で、俺のことを心配してくれたっていうことが嬉しい
レオ:…それだけ、吉琳ちゃんにとって俺の存在が大きいってことでしょ?


=====


レオ:…それだけ、吉琳ちゃんにとって俺の存在が大きいってことでしょ?
吉琳:そんなの…ずっと前から、そうだよ

(こうやって、温もりを感じるだけで、心臓が壊れてしまいそうなくらい…)
(レオは、私にとって大切な存在で…どうしようもなく、大好きだから)

レオ:ありがと
レオが、私の頭のてっぺんにちゅっとキスを落とした。
吉琳:セバスチャンが言いかけたことは、レオの悩み事と関係があるの…?

〝セバスチャン:信じられないなら、昨日のレオの独り言をプリンセスに披露してあげようか?〞
〝セバスチャン:『プリンセス、今頃何してるのかな。明日はいよいよ…』…っ〞

レオ:…実はね、この後吉琳ちゃんに特別なプレゼントを用意してるんだ
吉琳:特別なプレゼント…?
レオ:うん。どうしたら吉琳ちゃんが喜んでくれるか、ずっと考えてたんだ
レオ:クリスマスは、大切な人と過ごす日だから

(っ……)

レオが、私の頬を愛しげに撫で…―


=====


レオ:…実はね、この後吉琳ちゃんに特別なプレゼントを用意してるんだ
吉琳:特別なプレゼント…?
レオ:うん。どうしたら吉琳ちゃんが喜んでくれるか、ずっと考えてたんだ
レオ:クリスマスは、大切な人と過ごす日だから

(っ……)

レオが、私の頬を愛しげに撫でる。

(それじゃあ、アランが言ってた『考え事』も、セバスチャンが言ってたレオの独り言も…)
(全部、私を喜ばせようとしていたことだったの…?)

レオ:だから、吉琳ちゃんが心配してくれる必要なんて、本当になかったんだ
レオ:俺にとっては、なによりも楽しくて幸せな悩み事だったから
吉琳:レオ…
胸に愛しさがあふれて、うまく言葉にならない。
レオ:それで、特別なプレゼントの一つ目だけど…
レオ:これから、俺と一緒に、お城のクリスマスパーティーに参加してくれる?
吉琳:クリスマスパーティー…? っ、うん、もちろんだよ…!

(そんな計画をしてくれていたんだ…)

差し出されたレオの手を取って、歩き出す。
吉琳:パーティーを計画してくれていたなんて、全然気がつかなかった…
レオ:…俺の他にも、吉琳ちゃんとクリスマスイヴを過ごしたい人たちがたくさんいたからさ
レオ:でも…明日の吉琳ちゃんは、俺に独り占めさせてね
吉琳:…うん
頷いて、繋いだ手にきゅっと力を込める。

(私も…明日は、レオを独り占めしたい)

愛しい温もりに、幸せな気持ちになった。

(…色んな事があったけど、楽しいクリスマスイヴだったな…)
(明日のクリスマスも、きっと素敵な1日になる)

そんな予感を胸に、レオと一緒に歩き出す。
降り始めた雪が、私の肩にふわりと舞い降りた…―。

 

fin.

 

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エピローグEpilogue:

里奧後

ウィスタリアに戻ってきたあなたを待っているのは、
ブッシュドノエルよりも甘いイヴの夜と、彼との幸せなクリスマス…
レオ:…あんまり、そういう目で見ないでよ
レオ:可愛くって、困る
レオの指先が素肌に触れて、甘い刺激に身体が震える。
レオ:吉琳ちゃん、好きだよ
レオ:…夜が明けるまで、俺の腕の中にいて
彼の愛に酔いしれて、身も心も溶かされていく。
奇跡のようなクリスマスは、まだ終わらない…―

 

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