日版王宮 劇情活動-あなたに贈るXmas Lovestory(ジル)
王子様と過ごす、聖なる夜…―
プロローグ:
ふわりと雪が舞い、星が瞬くある夜…―
私はユーリと一緒に、
座りながらクリスマスツリーに飾り付けをしていた。
ユーリ:あー、疲れた…
天使のオーナメントを持ったユーリが、息をついて寝転ぶ。
吉琳:あともう少しだよ
くすりと笑みをこぼしてユーリを見ると、
つまんだオーナメントを眺めていた。
ユーリ:子どもの頃はこういうの楽しかったけど
ユーリ:大人になると、クリスマスって恋人と過ごしたい季節だからなー
するとユーリは思いついたように、
ぱっと大きな瞳をこちらに向けてくる。
ユーリ:ねえねえ、吉琳様だったら、
ユーリ:好きな人とのクリスマスは、どんな風に過ごしたい?
(どんな風に過ごすって……)
彼を想うと、頬がぽっと赤くなってしまう。
ユーリ:あー、今なんか考えたでしょ
ユーリ:顔が真っ赤だよ
吉琳:ユ、ユーリっ……
そこへ…―
吉琳ちゃんは誰との物語を過ごしたいのかな?
>>>ジル・アルバートを選ぶ
第一話-ジル・アルバート共通:
上体を起こしたユーリが、大きな瞳を悪戯っぽく細める。
ユーリ:顔が真っ赤だよ
吉琳:ユ、ユーリっ……
(だって…ユーリがそんなこと言うから…)
赤くなった頬を隠すように、
オーナメントに手を伸ばそうとすると…
アルバート:立派なツリーですね
ジル:もう飾り付けは終わりましたか?
ホールに靴音が響き、ジルとアルバートが入ってきた。
私は立ち上がって、2人を迎える。
吉琳:もういらしていたんですね
アルバート:予定より少し早く着いてしまいました
そう言ってアルバートは私たちが飾り付けていたツリーを見上げる。
ジル:アルバート殿もいらっしゃったので
ジル:クリスマスの祭典について話し合いをしたいのですが
ジルはちらりとツリーを見た後、私へと視線を向けた。
ジル:プリンセスも来られますか?
(あともう少しだけど…)
そう思っていると、ユーリがすっと立ち上がった。
ユーリ:大丈夫です。もう終わりますから
ユーリはにっこりと笑って、
最後に飾り付ける星のオーナメントを手に取る。
吉琳:ユーリ、ありがとう
ジル:後は頼みましたよ
ジル:では、参りましょう
私は残りの飾り付けをユーリに頼み、その場を後にした。
***
机に広げた書類や城下の地図を見ながら、アルバートが口を開く。
アルバート:互いの国の特産品を扱って、
アルバート:マーケットを開くというのは面白いですね
今年はシュタインとの友好を深めるため、
合同でクリスマスの祭典を開くことになっていた。
ジル:ええ。城下の人々も喜ぶと思います
(上手くいくといいな……)
クリスマス当日のことを思い浮かべ、笑みを浮かべていると…
(そういえば…)
ふと疑問が湧き、私が声をかけたのは…―
吉琳ちゃんは誰との物語を過ごしたいのかな?
>>>ジルを選ぶ
第二話:
ふと疑問が湧き…―
吉琳:ジル、あの……
声をかけると、ジルがこちらを振り返る。
ジル:どうしましたか?
吉琳:交流会の準備で手伝うことはありますか…?
クリスマス当日は、シュタインの貴族の方々を城へ招いて、
交流会をする予定だった。
吉琳:私に出来ることがあればと思ったのですが…
そう告げると、ジルが目を細める
ジル:そうですね…
ジルはそう言いながら私を手招きした。
(何だろう…?)
首を傾げながら近付くと、耳元に顔を寄せられて…
ジル:心配しなくても、貴女には後ほどご説明させて頂きますよ
ジル:2人きりでじっくりと
吉琳:……!
耳のそばに落ちた囁きに、頬が熱を帯びる。
ふっと笑ったジルは顔を離して、アルバートへと視線を向けた。
ジル:では、続きを
***
そうして、話し合いが進み、当日までの進行が決められた。
アルバートが部屋を出て行くと、ジルと2人きりになる。
(準備のことだけど…)
〝ジル:2人きりでじっくりと〞
(あんな言い方されたら…)
思い出すだけで恥ずかしさがこみ上げる。
再び頬が熱くなるのを感じていると、すっと顎に手がかかった。
ジル:何か考えているご様子ですね
吉琳:それはっ…
ジル:ああ、2人きりでと言ったことですか
笑みを浮かべたジルは、掬い上げた私の顔にそっと唇を寄せて…
ジル:普通に説明するのではつまらないでしょうから…
吉琳:ジルっ…
ジルにぐっと顔を寄せられ、鼓動が跳ねる。
ジル:ヒントをさしあげましょう
言いながら、ジルは首筋へ指先を滑らせ、
触れられた肩がぴくっと揺れてしまう。
ジル:交流会では多くの方とお話することになるでしょう
ジル:もちろんダンスも
ジルが、耳元に顔を寄せる。
ジル:そのために貴女が準備しなくてはならないことといえば…
低められた声が耳に響き、鼓動が騒ぐ。
(ヒントって言われても…)
(これじゃ、ちゃんと頭に入ってこないよ…)
顔に熱が集まるのを感じてまつ毛を伏せると、
くすっと笑う声が聞こえた。
ジル:その反応…可愛いですね
(もしかして…からかわれてる?)
吉琳:ジ、ジル…
ジルは顔を離して、私の頬へ指先を滑らせた。
ジル:明日からクリスマスまでレッスンを受けていただきます
ジル:その間は、私がつきっきりでレッスンいたしますよ
(じゃあ…レッスンとはいえ一緒にいられるんだ)
顔を綻ばせると、ジルがふっと笑い、
吐息の触れそうな距離で見つめられた。
ジル:こうして優しくできるのも、今日までですからね
ジル:厳しく指導させて頂く前に…貴女を感じておかないと
ジル:貴女を感じておかないと
にこっと笑ったジルの唇が寄せられ、そのまま重ねられる。
吉琳:ん……
(恥ずかしさもあるけれど…)
繰り返し落ちるキスに、
私は心が満たされていくのを感じていた。
***
そうして次の日から、ジルとのレッスンの日々が始まり…―
私はジルに手を取られ、ダンスに励んでいた。
ジル:そこはもっと男性に身体を預けるように
ぎゅっと腰を引き寄せられ、耳元にジルの声が近づく。
(…レッスンなのにドキドキして…顔が熱くなってきてしまう…)
ジル:プリンセス
吉琳:は、はい…
頬にジルの指先が触れて、答える声が少しだけ上擦ってしまう。
ジル:顔を赤くするのは、レッスンが終わってからにしてください
ジル:早く終われば、いくらでも構ってあげますよ
ふっと笑う声が響き、恥ずかしさで更に顔が熱くなる。
(…でも)
ジルの言葉に、まつ毛を伏せた。
(早く終わればとは言っても…)
レッスンでジルと一緒に過ごしているとはいえ、
忙しい公務に追われ、恋人としての時間はとれていなかった。
わずかに湧く寂しさを胸に、ジルを見つめる。
ジル:…どうされました?
(…公務なんだし、寂しいなんて言ってる場合じゃないよね)
(気持ちを切り替えなくちゃ)
吉琳:いえ…もう1度初めからお願いします
ジル:では、お手をどうぞプリンセス
***
そうして数日が経ち、クリスマスイブの日…―
ジルが執務室に向かっていると、
廊下の向こうから歩いてきたレオに声をかけられる。
レオ:吉琳ちゃんのレッスン、順調?
ジル:ええ、飲み込みの早い方ですから
そう言うと、レオは探るように瞳を向ける。
レオ:へえ。厳しくしてるみたいだけど
レオ:クリスマスのこと、ちゃんと考えてるの?
すると、ジルはわずかに視線を伏せて…
ジル:そうですね…
ジル:もちろん考えていますよ。大切な人を喜ばせる日ですからね
そう言って笑みを浮かべたジルは、廊下の先へと歩いて行く。
レオ:凄いな吉琳ちゃん
レオ:ジルをこんなに本気にさせるなんて
レオの呟きだけが、廊下に響いた…―。
***
その頃…―
私はレッスンの復習をしていた。
(もうだいぶ頭に入ってるとは思うけど…)
わずかに残る不安から、手元の本をもう1度開こうとすると、
ジルが部屋へ入ってくる。
ジル:まだ、こちらにいらっしゃったんですね
吉琳:はい…もう少しだけ確認しておこうと思って
そう答えると、こちらへ近付いたジルは私をじっと見つめて、
顎をすくい上げた。
吉琳:ジル…?
ジル:昨夜はあまりよく眠れなかったようですね
吉琳:……!
言い当てられて、胸が小さく跳ねる。
(明日が本番だと思うと、緊張してしまって寝付けなかったから…)
(それに…)
押し込んだはずの寂しさも、胸を塞いでいた。
(でも、最後まで頑張るって決めたから)
吉琳:そんなことないです
そんな気持ちを悟られないように、にこりと笑みを向けると、
ジルが困ったように微笑んだ。
ジル:まったく、貴女という人は
ジルは指先を離し、私の髪を優しく梳く。
ジル:恋人に嘘はいけませんよ
告げながら、ジルが柔らかく微笑む。
ジル:なにか、私に言いたいのではありませんか?
ジルの言葉にはっと息をのむ。
(もしかして、気付いているのかな……?)
ジルに尋ねられた私は…―
最高のクリスマス>>>
第三話-スウィート(Sweet END):
ジル:なにか、私に言いたいのではありませんか?
(もしかして、気付いてるのかな……?)
尋ねられ、私は慌てて首を振った。
(クリスマスのこと考えてるのは私だけなのかなって思ったけど…)
そんな気持ちがよぎるけれど、
プリンセスとしての自分の責任を思い出す。
(明日は公務だし、しっかりしなくちゃ)
吉琳:いえ、なんでもないです
ジル:…そうですか
ジル:明日は本番ですから、今日はこれぐらいにしておきましょう
吉琳:はい…
私は伝えられない気持ちを胸に抱えたまま、頷いた。
***
迎えたクリスマス当日…―
私はパーティー用のドレスに着替えて、鏡の前に立っていた。
(ジルが選んでくれたドレス、とても素敵だけど…)
(なんだか緊張してきた……)
すると…
???:もう準備はできましたか?
ノックの音の後に、ジルが扉の向こうから声をかける。
吉琳:は、はい
返事をすると、部屋へと入ってきたジルへ振り返った。
吉琳:どうでしょうか…?
ドキドキしながら見つめていると、ジルが目を細める。
ジル:よくお似合いですよ
吉琳:ありがとうございます…
微笑んで、私はもう一度自分の姿を鏡に映した。
すると、ジルが私の後ろに立ち、そっと腕の中に包み込む。
吉琳:ジル……っ
鏡の中の自分の顔が赤く染まっていく。
ジル:貴女が可愛かったので、つい
さらりとそう言われ、鼓動が大きく跳ねた。
すると、鏡越しに目を合わせたジルが微笑み、
唇をうなじに押し当てた。
吉琳:だ、だめです……
ジル:だめと言うわりに、身体は熱いようですね
そう言って、ジルは抱きしめた腕を上げていき…―
ジルの腕が上がっていくのを感じて、肩をぴくりと揺らすと…
ジル:緊張は解けたようですね
吉琳:え……?
くすりと笑ってジルが身体を離した。
ジル:こんなに魅力的なのですから、緊張することはありませんよ
ジル:貴女は立派なプリンセスです
(私が緊張していたのを知って…?)
ジルに微笑まれ、胸の奥でキュンと甘い音が響いた。
***
そうして交流会が始まり…
レッスンの成果で、私は貴族の方たちからの質問にも、
よどみなく答えることができた。
貴族:ウィスタリアのプリンセスは、非常に教養が深い
貴族:ぜひ、今度私の屋敷にもお招きしたい
相手の方に上品に微笑みかけられ、私も笑みを浮かべた。
吉琳:ありがとうございます
(褒めて頂けたのも、ジルのおかげだな…)
お辞儀をして、ふと視線を上げると…
ジル:………
目が合ったジルが頷いてくれた。
(ジルも認めてくれたのかな…?)
嬉しさがこみ上げ、私の唇は自然と綻んでいた。
***
途切れることなくダンスの相手をつとめていた私は、
火照った頬を冷ますため、バルコニーに出ていた。
(今日の交流会はたくさんの方に喜んで頂けたみたいでよかった)
息を零すと、不意に肌をかすめるように、
柔らかなショールが肩にかけられて…―
(えっ…?)
夜風に当たっていると、肩にふわりとショールがかけられた。
ジル:探しましたよ吉琳
振り返ると、そこにはジルの姿があった。
吉琳:少し、風に当たりたくて…
ジル:疲れてしまいましたか?
吉琳:いえ…、クリスマスの賑やかな雰囲気は楽しくて…
ホールからワルツのメロディが流れてきて顔を綻ばせると、
ジルがくすっと笑みを零す。
ジル:疲れているのなら、遠慮しようと思ったのですが…よかったです
呟いたジルが、すっと手のひらを差し伸べる。
ジル:一曲踊っていただけますか?
驚きに目を瞬きながらも、胸には嬉しさがこみ上げる。
(…私も、こんな素敵な日に、ジルと踊りたい)
吉琳:はい、もちろんです…
にっこりと微笑み、ジルの手を取ると、優しく腰を引き寄せられて…―
ぐっと腰を引き寄せられ、
ホールから流れてくるメロディに合わせて、ジルに寄り添う。
(…ジルとこんな風にクリスマスを過ごせて良かった)
恋人同士として過ごすひと時に、胸の中が甘く震える。
ダンスをしながら頬を緩める私に、ジルが目を細めた。
ジル:嬉しそうですね
吉琳:そうですか…?
ジル:はい
吉琳:だとしたら…ジルのせいです
ジル:私の?
不思議そうなジルの瞳を見つめる。
吉琳:…本当はこうして、
吉琳:クリスマス当日にジルと2人で過ごしたいって言いたくて…
そう言うと、ふっとジルが笑みを浮かべた。
ジル:…過ごせるに決まっているではありませんか
吉琳:え?
ジル:貴女は私の大切な人ですよ
そっと絡んでいた腕が解かれると、
私の顔をジルの指先がすくい上げて…―
顎をすくい上げられ、間近で視線が絡む。
ジル:貴女は私の大切な人ですよ
ジル:今日までよく頑張りましたね
優しく微笑まれ、ジルが顔をそっと傾けた。
そのまま唇を重ねられ、胸がとくんと甘い音をたてる。
ジル:頑張ったご褒美です
そうして後ろに回ったジルが、首元にネックレスをつけてくれた。
(これは…?)
瞬かせた瞳で見上げると、ジルが笑みを浮かべた。
ジル:クリスマスですから
吉琳:ありがとうございます…
(プレゼントまで…)
嬉しくなって見上げると、ジルがゆっくりと顔を寄せる。
吉琳:あの…
吐息の触れそうな距離で見つめ合いながら、
ジルが小さく首を傾げる。
ジル:はい?
吉琳:メリークリスマス、ジル
(こうして、ジルとクリスマスをお祝いできて嬉しい)
その気持ちを込めて告げると、ジルは微笑み返してくれる。
ジル:メリークリスマス
ジルの指先が私の頬を滑る。
ジル:交流会の後の時間を、私に頂けますか?
ジル:クリスマスの夜はこれからですから
吉琳:…はい
ふっと笑ったジルからもう一度、口づけが落とされた。
ジルに抱き寄せられドレスの裾がふわりと舞う。
(この時間がずっと続いてほしい…)
胸の中でクリスマスの願いごとを呟きながら、
私はジルの背中に手を回した…―
End.
奇跡のクリスマス>>>
第三話-プレミア(Premiere END):
ジル:なにか、私に言いたいのではありませんか?
(もしかして、気付いてるのかな……?)
尋ねられ、私は言葉を詰まらせる。
ジルを見つめると、先を促すように優しく瞳を細めていた。
吉琳:あの、実は…
吉琳:クリスマスに、少しだけでもジルと2人でいたいと思って…
ずっと言えなかった気持ちを、言葉にしていく。
(改めて言うのは、なんだか恥ずかしいな…)
そっと俯く私にジルが近づき、ふわりと抱きしめた。
ジル:元からそのつもりですよ
吉琳:え…?
笑みを浮かべるジルは、私の耳元へ顔を寄せた。
ジル:明日、頑張ったご褒美を差し上げますので
ジル:楽しみにしていてください
***
迎えたクリスマス当日…―
交流会は無事に終わり、
私は着替えようとドレスのリボンに手をかけた。
けれど、ジルからもらったドレスが名残惜しくて手が止まる。
吉琳:脱ぐのが少しもったいないな…
(それに…やっぱり忙しくて、ジルと2人きりになれなかった…)
少し寂しさが胸をよぎった時、ノックの音がして…
???:プリンセス、よろしいですか?
--ジルと過ごす時間が取れず寂しさを感じていると、扉がノックされた。
ドアを開くと、私服姿のジルが微笑みかける。
そしてすっと手を差し出し…―
ジル:私と一緒に来てくださいませんか
(え……?)
***
そうして、ジルに連れられて来たのは…―
(ここは…劇場?)
私は驚きに目を見開いて、オペラ座のボックス席を見つめる。
ジル:今日まで頑張ったご褒美です
(驚いたけど、すごく嬉しい……)
吉琳:ありがとうございます
微笑みを浮かべた私の手を取り、
ジルは席までエスコートしてくれる。
その優雅な仕草に、胸がときめいた。
ジル:始まるようですね
吉琳:はい…
(楽しみだな)
幕が上がり、オペラが始まる。
華やかな舞台に目を惹かれ、ストーリーに胸を躍らせていると…
(あれ…?)
(この話ってどこかで…)
ふと物語に覚えがあるような気がして、記憶を探る。
(……そうだ。これってレッスンの時に…)
それは以前、座学のレッスンで教えてもらったものだった。
吉琳:この話は…ジルがレッスンで教えてくれたものですか?
尋ねると、頷く代わりにジルが微笑む。
ジル:この上演を知ったのは、偶然でしたが
ジル:貴女を誘うなら、これが良いと思いまして
(ジルが教えてくれた内容を、オペラで見られるなんて…)
その偶然が奇跡のように思えて、胸が高鳴っていく。
(もしかして…)
〝吉琳:あの、実は…〞
〝吉琳:クリスマスに、少しだけでもジルと2人でいたいと思って…〞
〝ジル:元からそのつもりですよ〞
吉琳:私が2人で過ごしたいって思っていたことを…
吉琳:あの時、伝える前から知っていたんですか…?
(オペラ座の席なんて、急には用意できないはずだし…)
ジル:……
尋ねるけれど、ジルは何も言わず、悪戯っぽく微笑んでいる。
その微笑みだけで、私の予感が当たっていることが伝わってきた。
(私の願いを叶えようとしてくれたんだ…)
無言のままだったジルの手が、私の手をそっと握る。
ジル:これからが物語の盛り上がるところです。楽しみましょう
吉琳:はい
暗闇の中、そっと触れた温もりに私はドキドキと胸を高鳴らせた。
***
やがて上演が終わり…―
吉琳:素敵な話でしたね…
余韻に浸りながらまだ椅子に腰かけていると…
ジル:ええ。ですが…
ジル:今夜の貴女の方が、素敵でしたよ
ジルはくすっと笑い、私の耳元に顔を寄せて…―
--席を覆っていた真っ赤な垂れ幕に隠れるように、ジルが私に顔を寄せる。
吉琳:ジル……っ…
ジル:貴女のダンスは、ホールにいた全員の目を惹いていました
ジル:私も…貴女から目が離せなかった
妖艶な瞳に見つめられ、鼓動が早まる。
吉琳:褒めて頂けて…嬉しいです
微笑むと、ジルがふっと息をついた。
ジル:喜んでいるのは、私のほうですよ
吉琳:え…?
ジル:貴女から一緒に過ごしたいと気持ちを聞いて、
ジル:本当に嬉しかったですよ
その声と共に、そっとジルの唇が重なる。
吉琳:んっ……
ジル:ここでは、声は出さないようにしてください
笑うような声でたしなめられて、頬が熱くなる。
唇を離したジルは、私を見つめた。
ジル:クリスマスですから、恋人らしいこともしたかったのでしょう?
吉琳:っ……そんな、ことは……
戸惑う私に、ジルはくすりと笑って小さく首を傾ける。
ジル:では、まったく期待していなかったんですか?
(期待してなかったわけじゃないけど……)
ジル:貴女は可愛いですね
そう言って優しい笑み浮かべたジルは、私に手を差し出した。
***
そうしてオペラ座を出ると…―
オペラ座を出て、馬車までの道を歩いていく。
(もう少し、ジルと一緒にいたいな…)
そう思っていると、ジルが繋いだ手を引き寄せた。
腰に腕が周り、間近でジルの瞳と視線が絡む。
吉琳:ジル…?
ジル:今日だけはこうさせてください
ジル:…少しでも長く、恋人らしく過ごしたいのは、私も同じですよ
(えっ…?)
私はその言葉に、瞳を瞬かせる。
ジル:実は馬車をここから少し離れたところに停めてあります
ジル:クリスマスの街並みを貴女と一緒に見たいと思ったので
優しく笑うジルの顔が、飾り付けられた街頭に照らされ、
いっそう柔らかな雰囲気に感じる。
ジル:もう少し付き合ってください
吐息まじりの声が耳に落ち、鼓動が甘く高鳴った。
吉琳:はい……
ジル:貴女が側にいてくれることが、何よりのプレゼントです
(まだ、ジルと一緒にいられるんだ…)
幸せな気持ちが溢れ、私はそっとジルの手を握り返しす。
(…私もこうして過ごす時間が、とても嬉しい)
クリスマスの灯りが彩る街並みを、
ジルと寄り添うように、歩んでいった…―
End.
ジルと夢のようなクリスマスを過ごした夜…―
募る想いが溢れ、ジルを引きとめたあなたに…
ジル:…貴女という人は
ジル:私を引きとめたらどうなるか、お分かりですか?
小さく頷くと、妖艶な瞳で見つめられ…
ジル:口づけは貴女からしてください
想いが深まる、ホワイトクリスマスの夜…
ジルの甘い囁きが、あなたをとろけさせていく…―