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劇情活動-Wistaria Ceremony~国王と王妃の秘密のジンクス~(アラン)

艾倫標

これは王妃になったあなたに贈るロイヤルストーリー…―
幸せな道を歩むあなたと彼に告げられた、
国王と王妃の秘密のジンクス…
………
……
アラン:本来のジンクスにのっとってねえけど…
アラン:こうして寄り添ってる姿も、俺たちらしい気がする
………
……
夢を叶えた先にある、
新たな物語の1ページが、今始まる…―

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100820059

プロローグ:

春らしい柔らかな風が吹く、ある晴れた日のこと…―
私はロベールさんのアトリエを訪れていた。
向かい合うようにしてじっと座っていると、
キャンバスから顔をあげたロベールさんが、にこやかに声をかける。
ロベール:そろそろ休憩にしますか?
沐沐:いっいえ…まだ大丈夫です
ロベール:では、続けますね。王妃様

(やっぱりこうした改まった話し方をされると…)

絵筆を持って再びキャンバスに向かおうとするロベールさんへ、
私は、おずおずと声をかけた。
沐沐:あの…やっぱりいつも通りにしませんか?
すると、わずかに瞳を瞬かせた後、ロベールさんはふっと笑う。
ロベール:そう? 王妃様らしく沐沐ちゃんに接した方が、
ロベール:絵にも気品や威厳が表れると思ったんだけどね
そう言って楽しそうに笑うロベールさんにさえ、
どこかくすぐったさを感じてしまう。

(王妃って呼ばれるのは、まだ慣れないな)

プリンセスから王妃となってもうすぐ1年が経とうとしていた。
今までよりも責任は重くなり、気を配ることも多くなったものの、
国王となった彼と歩んだ1年は、とても充実していたと感じる。
ロベール:まさか王妃様となった沐沐ちゃんの絵を描けるなんて
ロベール:本当に嬉しいよ
沐沐:私もロベールさんに描いて頂けて嬉しいです
ロベール:式典、楽しみだね
沐沐:はい
今日描いてもらっている肖像画は、
国王と王妃の即位1周年式典に飾るためのものだった。
キャンバスを見ながらロベールさんは優しく微笑む。
ロベール:そういえば、式典ではジンクスがあったよね
沐沐:はい。国の繁栄と幸せを願ったものだそうですが…
沐沐:どういったものなのか、私はまだ聞いていないんです

(どんな決まりなんだろう…)

そう思っていると、ふいにノックの音が部屋に響いた。
ロベール:どうぞ
ロベールさんが声をかけると、扉が開き入ってきたのは…―


どの彼と物語を過ごす?
>>>アラン

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第一話:

ふいにノックの音が部屋に響いた。
ロベール:どうぞ
ロベールさんが声をかけると、扉が開き…―
アラン:もう終わったか?
アトリエへと入ってきたのはアランだった。
沐沐:あともう少し
沐沐:アランのほうが官僚の方々との話し合い、早く終わったんだね
アラン:ああ、だから迎えに来た
この後、私はアランと2人で、
ジルから式典の説明を受けることになっていた。
すると話を聞いていたロベールさんがにっこりと微笑む。
ロベール:肖像画の方はもう大丈夫
沐沐:えっ、もういいんですか?
驚いていると、アランがロベールさんのキャンバスを覗き込む。
アラン:すごいな
ロベール:沐沐ちゃんのことは幼い頃を知っていますから
ロベール:そんな子が、王妃となった姿を描けるなんてめったにあることじゃない
ロベール:だから人一倍思い入れがあります
アラン:いい絵になりそうだな
ロベール:ありがとうございます
目を細めたロベールさんが筆を置いて、私を促す。
ロベール:行って来て、沐沐ちゃん
ロベール:ジンクスのこと気になってたでしょ
沐沐:はい…じゃあ行ってきます
頷いて椅子から立ちあがろうとすると…
アランが手を差し伸べてくれる。
アラン:ほら
沐沐:ありがとう。絵を楽しみにしていますね、ロベールさん
ロベール:うん、式典までには完成させるよ
そうして、私とアランはロベールさんのアトリエを後にした。

***

ジルの元に向かうと、早速式典の段取りについての説明を受け、
最後にジルは式典でのジンクスについて口を開いた。
ジル:そしてジンクスについてですが…
それは騎士の馬として仕えてきた、引退する2頭の馬に
それぞれが乗って城下を回るというものだった。

(騎士のアランにぴったりのジンクスだな…)

胸が弾むのを感じて、アランの横顔を見つめると、
アランも興味深い様子で頷いている。
アラン:騎士団の中でも活躍した馬が前線から退く時には引退式をするけど
アラン:即位1周年式典にもそんな伝統があったんだな
ジル:騎士団と共に国を守ってきた馬にそれぞれ乗ることで、
ジル:王と王妃それぞれが、
ジル:国を平和に守る象徴になる、というのがジンクスの由来です

(国を平和に守る象徴…)

その言葉の重みに改めて身の引き締まる思いがした。
私の表情を見つめ、ジルが唇に笑みをのせる。
ジル:そこで王妃様には式典まで乗馬のレッスンをして頂きます
ジル:もちろん、国王様と一緒に
ジル:その間は公務なども調整してレッスンを優先してください
私とアランはジルに頷き返して、お互いに視線を交わす。
沐沐:よろしくね、アラン
アラン:ああ
顔を見合わせて微笑むと、胸の中で鼓動が小さく音をたてた。
そうして、早速公務の時間を調整して
そのまま乗馬のレッスンを開始することになり…―

***

私たちは乗馬の練習場にやってきた。
アラン:馬に乗るのは久しぶりなんだろ?
アラン:見ててやるから、軽く1周回ってみろ
沐沐:うん

(なんだか、プリンセスの時にレッスンをしてもらったことを思い出すな)

自然と頬が綻んでしまうのを感じていると、
アランが馬に乗った私を下から覗き込んで…―
アラン:なんか、お前の顔嬉しそうだけど
沐沐:何だかプリンセスの時に戻ったみたいだなと思って
にこっと微笑むと、アランがいたずらっぽく笑った。
アラン:乗馬の腕まで戻ってねえといいけど
沐沐:もう…いじわる
少し拗ねたようにそう返すと、アランはふっと微笑む。
アラン:今まで教えたことが出来てるか確認するから、
アラン:引き締めてやれよ
沐沐:うん…!
私は少し緊張気味に手綱に触れて、馬を走らせた…―

***

アラン:…今の感じ忘れんなよ
沐沐:分かった

(だんだん感覚を思い出して、思うように操れてきたかも)

アラン:今日はそろそろ終わるか
沐沐:そうだね、ありがとう
肩に入った力を抜いて降りようとすると、
下からアランが手を差し伸べてくれる。
アラン:気をつけて降りろよ
沐沐:ありが……―
言いかけながら鞍から身体をずらした瞬間…―

(あっ…!)

身体がふらついて、
そのまま飛び込むようにアランの方へ落ちてしまう。
アラン:……っ!
しっかりと立たせてくれるように腰元を抱きとめられ、
耳元近くで小さく笑う声が聞こえた。
アラン:……ったく、気をつけろって言っただろ
沐沐:ごめん……でもアランのおかげで助かった
お礼を言って身体を離そうとすると…

(えっ)

なぜかアランは私をぎゅっと抱きしめたままでいる。
沐沐:ア、アラン…?
アラン:別にいいだろ…嫌なのかよ
かすかに熱を帯びた吐息が耳元をかすめる。
沐沐:ううん…

(こういう少し強引なところは今までと変わらなくて)
(やっぱり照れてしまうけれど…)

アランを想う気持ちは、
婚姻式から1年経った今でも大きくなる一方だった。
いつまでもほどけない腕に、私は胸を高鳴らせそっと唇を綻ばせた。
アラン:じゃあ、公務に戻るか
しばらくすると、そっと腕を解いてアランが馬の鼻をなでる。
その時、ふいにアランの眉が少し怪訝そうにひそめられた。
アラン:………
沐沐:どうしたの?
アラン:いや…何でもない

***

レッスンを終えて城に戻って来ると…―
レオ:待ってたよ2人とも

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第二話:

レオ:待ってたよ2人とも
乗馬のレッスンを終えて城に戻って来た私たちを、
レオが迎えてくれる。
レオ:ジルから伝言
レオ:アランに至急確認してほしい書類があるから、来てほしいって
沐沐:じゃあ、この後の練習は…

(レッスンの後は、)
(レオに見てもらいながらスピーチの練習をする予定だったけど…)

そう思いながらレオを見つめると、苦笑が返された。
レオ:書類のほうが緊急みたいだよ
レオ:2人の時間を邪魔して悪いんだけど
アラン:…余計なこと言ってんじゃねえよ
眉を寄せるアランに、レオがくすりと笑う。
沐沐:じゃあ、私はレオとスピーチの練習進めてるね
アラン:ああ
アラン:すぐ行く
レオ:了解
アランから声をかけられ、レオがにこっと笑って頷いた。

(アランとレオは相変わらずなように見えるけれど…)

ふと胸に温かいものが広がる。

(アランが国王になってから、二人の間には、)
(目には見えない信頼関係が積み重なっている感じがする)

アランに見送られ、私はレオと一緒にその場を後にして…

***

アランと別れて、執務室に向かっていると、
ふいにレオが小さく首を傾ける。
レオ:沐沐ちゃん、式典当日は結婚記念日でもあるよね?
微笑んだレオが、目を細めて私を見つめる。
レオ:やっぱりその日は少しでも2人で過ごしたいって思う?

(それは……)

沐沐:思うけど…
レオ:けど…?
続く言葉を促されて、気持ちを隠して微笑む。
沐沐:みんなにお祝いしてもらえるのはもっと嬉しいから

(もしアランと2人きりになれたら嬉しい気持ちもあるけれど…)
(それは少し欲張りかな)

レオ:そっか、沐沐ちゃんらしいね
微笑み返してくれたレオが口の中で小さく呟く。
レオ:でも、アランも結婚記念日のことは気にしてると思うんだけどな…
沐沐:え?
レオ:ううん、なんでもない
笑みを深めるレオに頷き、一緒に廊下を進んでいった。

***

そうして日々は過ぎていき、式典前日の夜…―
公務を終えてから、明日の式典で乗る馬のお世話をしに来ると…
沐沐:あっ!
汲んできた水桶を置いて、馬に駆け寄る。
そこには、明日私が乗るはずの馬が横たわっていた。

(具合が悪そう…とにかく水を……)

慌てて水桶の方へと戻ろうとすると…
???:お前も来てたのか
沐沐:アラン…!
厩へと入ってきたアランは、
私の様子に異変を感じ取ったのか、きつく眉を寄せる。
アラン:どうした…?
自然と奥の方へ視線を向けたアランは、
足早に馬に近づき、脇へ膝をついた。
アラン:レッスンの時、少し気になってはいたんだ
アラン:…ただ、その後いつも通りに見えたから
眉を寄せたアランが馬の鼻を撫でながら、いたわるように呟く。
アラン:…気づかなくて悪かったな
沐沐:そうだったんだ…
苦しそうな馬の様子に、ぎゅっと胸がつぶれそうになる。
沐沐:どうすればいい?
アラン:とりあえず、そこの毛布を…

***

処置が終わり、少しだけ落ち着いてきた馬の様子に息をつく。
苦々しげに呟くアランの声が、厩に響いた。
アラン:この状態じゃ、明日こいつに乗るのは難しいな
沐沐:そうだね…

(仕方がないとはいえ、どうしよう…)
(…このままだと、ジンクスが叶えられなくなってしまう)

弱っている馬の様子に胸が痛むのを感じながら、
明日の式典にわずかな不安を覚えてしまう。

(他の方法は…―)

考える私の目に、隣の馬房にいるアランの乗る予定の馬が見えた。

(ジンクスとは変わってしまうけれど…)

沐沐:ねえ、アラン。1つ考えたことがあるんだけど…
同じ馬を見ていたアランも、はっとして私の方を向く。
アラン:ああ。俺も

***

翌日…―
私はアランと一緒に1頭の馬に2人で乗り、大通りを進んでいた。
アラン:すごい歓声だな…
沐沐:うん、みんな笑顔だね
背中にアランの温もりを感じながら、
微笑んで、道を埋め尽くす人々に手を振る。

(あの後……)

〝沐沐:ねえ、アラン。1つ考えたことがあるんだけど…〞
〝アラン:ああ。俺も〞
〝沐沐:もしかして…〞
〝アラン、沐沐 :一頭の馬に二人で乗る〞
〝思わず揃った声に顔を見合わせると、アランが力強く頷いた。〞

(ジンクスと変わってしまうからジルにも相談したけれど、)
(快く賛同してくれて良かったな)

集まってくれた人々の顔を見ながら、
アランが手綱を操って大通りに馬を進ませる。
沐沐:昨日倒れた馬も大丈夫そうで良かったね
アラン:ああ。あのままいけば、じきに回復するだろ
あの後アランの処置が良かったお陰か、倒れてしまった馬は、
式典に出られないまでも、順調に回復していた。

(昨日は式典のことも馬のことも心配だったけれど、)
(今日をこうして無事に迎えることが出来て良かった)

沐沐:アラン
アラン:ん?
沐沐:平和の象徴って言われると、
沐沐:とても大きくてまだ実感が湧かないけれど…
振り返ってアランを見つめる。
沐沐:私は自分に出来る小さなことを一つずつ積み重ねていきたい
沐沐:そうして、この国を大事に思う気持ちが伝わればいいなって思う
アランに想いを告げた、その時…―
国民1:王様、王妃様…万歳!
国民2:ウィスタリアを平和に守ってくれてありがとう
沿道から聞こえた声に、はっと息をのんだ。

(こんなに沢山の人に、王妃だと認めてもらえたのは…)
(お城の皆の助けがあったことはもちろん…)
(アランがいつも1番に手を差し伸べてくれたお陰だな)

そう思うと胸が詰まる想いがして、ふいに熱いものがこみ上げた。
アラン:お前の気持ち、ちゃんと伝わってるみたいだな
沐沐:うん…

(この国を、これからも守っていきたい…)

アラン:泣き虫
沐沐:これは嬉しくて…
微笑んだアランが、私の目元を指先で拭ってくれる。
沐沐:昨日改めて思ったことがあるんだ
私はアランを振りかえりながらそっと想いを伝えた。
沐沐:これから、昨日みたいな突然なことが起こっても、
沐沐:アランと一緒にいれば乗り越えられるって

(一人だったら、不安になったり迷ったりしてしまうこともあるけれど、)
(側にアランがいると思うと、何でも出来る気がする)

すると、アランはわずかに瞳を瞬かせた後ふっと笑った。
アラン:何だよ急に
アラン:そんなの当たり前だろ
優しい声が歓声と共に耳に響き、胸がじんと温かくなる。
アラン:一頭の馬に乗るっていうのも、
アラン:本来のジンクスにのっとってねえけど…
アランがまっすぐに前を見つめ、
後ろから私を支える手に力をこめる。
アラン:こうして寄り添ってる姿も、俺たちらしい気がする

(アラン……)

私もアランと同じ方向を向いてゆっくりと頷いた。
沐沐:私もそう思う
沐沐:これからも私たちらしく、この国に尽くしていきたいって
アランの手に、自分の手を重ね…
私たちは馬に乗ってウィスタリアの街を進んでいった…―

***

やがて、式典は無事に終わり…
城へと戻ってきた私たちはジルに呼ばれて、部屋を訪れていた。
ジル:お二人ともお疲れさまでした
ジル:この後ですが…

艾倫分

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第三話-スウィート(Sweet END):

ジル:この後ですが…まだ息はつけませんよ
ジル:お祝いに来てくださっている貴族の方々との会合で
ジル:予定が埋まっていますので

(集まってくれた人たちの笑顔を見たせいかな…)
(王妃として頑張りたいって気持ちが胸に溢れてる)

私はにっこりと笑って、ジルに頷いた。
沐沐:はい…!
アランが私を見て微笑む。
アラン:張り切りすぎ
そう言うアランも、意志の強い真っ直ぐな瞳で笑みを向けている。
アランと手を取って、広間に向かった…―

***

そうして広間に集まった貴族の方々に挨拶をして、
すっかり夜になった頃…―
部屋に戻る途中、私は足を止めてアランに声をかけた。
沐沐:アラン、先に部屋に戻っててくれる?
アラン:別にいいけど
そう言いつつも、不思議そうにこちらを見ている。
沐沐:…とにかく先に行ってて
私は微笑みながら、ある場所へと向かった。

***

そして、部屋に戻ってくると…
沐沐:アラン、今日はお疲れさま
私はソファへかけるアランの前へチョコレートケーキを差し出した。
アラン:それ…どうしたんだよ
目を見開くアランの隣にかけて、テーブルにケーキを置き、
改めてアランへ、向き直る。
沐沐:今日は即位1周年でもあるけど……
その時、言いかけた唇を、アランにそっと指で押さえられた。

(え?)

アラン:結婚記念日、だろ
沐沐:っ……!
驚く私に、アランが呆れたようにため息をつく。
アラン:お前、忘れてると思ったわけ?
沐沐:だって、全然そんな素振りなかったから…
アラン:忘れるわけないだろ
アラン:…大事な日なんだから
言いながらアランの頬がかすかに熱を帯びて赤くなる。

(式典のような豪華なお祝いは用意できなかったけど…)

ささやかなものでも、何か用意したいと思い、
昨日ケーキを作ることを思いついたのだった。

(アランも同じように…)
(結婚記念日のことを気にしてくれてたのかな?)

言葉にしなくても、心が通じ合っているように思えて嬉しくなる。
沐沐:今からの時間は、国王と王妃としてじゃなく、
沐沐:夫婦として過ごしたい…
アラン:……
微かに瞳を瞬かせるアランに、頬がかあっと火照る。

(…顔が熱い……)

気恥ずかしさがこみ上げて、わずかに目を伏せると、
アランに腕を引かれ、ぎゅっと抱きしめられる。
アラン:ありがとな
その言葉と触れあう温もりに、胸が温かくなった。
するとアランが、わずかに身体を離して私の顔をすくい上げ…
アラン:…愛してる
何よりも甘い囁きが降り、唇を塞がれた。
沐沐:……ん

(嬉しくて……)

アランと気持ちがつながっているのを感じるだけで、瞳が潤んでしまう。

(今日は…胸がいっぱいになることばかりで…)

瞬きをすると、涙が一筋こぼれ落ちる。
すると、アランは何も言わずに涙を辿って、私の目元へ口づけた。
アラン:…それ、食わせて
沐沐:もちろん
笑顔を浮かべて、アランにケーキを差し出すと…

(アラン…?)

じっと見つめられ、目を瞬かせてしまう。
アラン:食わせてって言ったんだけど

(え…それって……)

いたずらっぽく笑うアランの考えに気付いて、頬がぽっと熱くなった。
アラン:いいだろ?
アランとの間に漂う空気が、甘くてくすぐったく思える。

(でも…こういうのも夫婦っぽくて嬉しい)

沐沐:はい…
フォークでチョコクリームとスポンジを掬い、
アランの口元に近づける。
すると、アランも顔を近づけて…
アランは一口頬張ると、唇の端についたクリームを親指で拭う。
アラン:うまい

(良かった……)

アランの笑顔に、胸が嬉しさで満たされ、
思わず小さく声をこぼして笑ってしまう。
アラン:何だよ急に
沐沐:幸せだなって改めて思って
そう告げるとふいにアランは真面目な顔をする。

(アラン…?)

きょとんとして、アランの様子を見つめていると…
アラン:これからもお前がそういう顔して笑っていられるように
アラン:…ずっと幸せでいられるように約束する
アランの言葉に、きゅっと胸の奥が締めつけられる。
沐沐:急に…そんなこと言わないで……
アラン:は?…今じゃなくていつ言うんだよ
呆れたように笑いながら、アランは照れたように頬を赤く染める。
沐沐:だって…幸せでまた泣きそうだから
アラン:…ったく
すると、息をついたアランにぐっと抱き寄せられて…―
アランの胸に飛び込んでしまう。
沐沐:アラン…?
ふいなことに瞳を瞬かせて見上げると、
アランは真っ直ぐに私を見つめた。
アラン:ちょうどいいから、言っとく
アラン:楽しい時も、辛い時も、一番近くでお前を見ていたい
まつ毛が伏せられ優しさの滲んだ眼差しが、そっと私を見下ろす。
アラン:一生側にいる
静かにそう言われ、重ねられた手に、力がこめられた。

(1年っていうこの時を、)
(こんなに温かい気持ちで迎えられているのは…)
(いつも隣にアランがいてくれたから)

もう涙を堪えられなくて、ひとすじの涙が頬を伝う。
沐沐:うん…
広い胸元に顔を埋める私を、
アランは守るように、優しく撫でる。

(私もこれからもずっと、アランの一番近くにいたい)

高鳴る胸の中が、アランの想いでいっぱいになっていった…―


fin.

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第三話-プレミア(Premiere END):

ジル:この後ですが…
ジル:公務はもうありませんので、お二人でゆっくりお過ごしください
沐沐:えっ?
驚く私の隣で、アランが一瞬ジルへ笑みを向けた気がした。

(あれ?)

すると、アランは戸惑う私の手を引いて…
アラン:行くぞ
沐沐:アランっ?
そうして、私は部屋の外に連れ出された。

***

一度部屋に戻って着替えると、
私はアランに連れられ、湖へとやって来ていた。
少し日が傾きかけた空をゆったりと雲が流れていく。
沐沐:公務がないって、こんな大事な式典の日にそんなことあるのかな…?
アラン:ジルが無いって言ってんだからそうなんだろ
湖を見ながら、後ろからアランが私を抱き寄せる。
アラン:そんな気になんのか?
沐沐:ううん、そんなことは……
沐沐:でも、アランは全然びっくりしてないみたい
アラン:別にそんなことねえけど
はぐらかすように目を逸らすアランの態度と、
部屋を出る前にジルへ微笑んだように見えたことが胸に少しひっかかる。

(もしかして……)

沐沐:アラン、知ってたの?
アラン:……
するとアランが視線を逸らしたまま口を開き…―
アラン:…まあな
後ろから回された腕に力がこもり、首筋にアランの笑う吐息が触れる。
アラン:俺がジルに頼んだから
沐沐:えっ…
すると、腕を離したアランに正面から見つめられた。
アラン:意外そうな顔すんなよ
照れたように視線を伏せたアランの目元がわずかに染まるのを見て、
胸が甘く音を立てる。

(わざわざジルに頼んでくれたって、もしかして…)

アラン:…一応、記念日だから
熱を帯びた囁きに耳をくすぐられて、私の頬も火照っていく。

(結婚記念日だって忘れないでいてくれたことも嬉しいけど、)
(2人の時間を作ってくれたことが…)

沐沐:嬉しい……
そっと呟いて口元を緩めると、アランの腕がそっと伸びて…―
沐沐:ア、アラン…っ?
私の頬をむにっとつまんで、アランが少し拗ねたように口を開いた。
アラン:でも2人で過ごしたいって俺に言えよ…レオじゃなく

(あ……)

〝レオ:やっぱりその日は少しでも2人で過ごしたいって思う?〞
〝沐沐:思うけど…〞
〝レオ:けど…?〞
〝沐沐:みんなにお祝いしてもらえるのはもっと嬉しいから〞

(あの時のこと、レオから聞いたのかな)

でも、そんなアランの少し拗ねているような口調にすら、
同じ気持ちでいてくれたことが分かって嬉しくなってしまう。
アランの手がそっと離れると、私は少しはにかんで口を開いた。
沐沐:うん…でも沢山の人達にお祝いされて嬉しかったから、
沐沐:そのうえアランと2人っきりで過ごしたいなんて欲張りかなって
私の言葉を聞いたアランは、深いため息をつく。
アラン:バーカ。欲張りでいいだろ
そう言う瞳は優しくてきゅっと甘く胸が締め付けられた。

(こういう優しいところも変わらなくて…アランが毎日好きになる)

アラン:まあ確かに、ああして祝われて嬉しかったけどな
アラン:今日改めて思った
アラン:この国の平和をお前と一緒に守っていきたいって
沐沐:…うん。私も、アランと一緒に守れるように、
沐沐:これからもっと頑張ろうって思った
しっかりと頷いて答えると、アランの瞳が真剣なものへと変わった。
アラン:それともう1つ。前にも言ったけど…
アラン:…お前のこともずっと側で守るから
アランとの間に、柔らかな風が吹き抜ける…―

(この言葉…)

〝アラン:ずっと側で守るから〞
〝アラン:結婚しよう、沐沐〞

(…婚姻式の前日の時と同じ)

あの時と変わらない真っ直ぐな眼差しに、胸の奥が甘く震える。

(アラン…愛してる)
(誰よりも……)

想いがどんどん大きく膨らんでいく。
すると、視線を交わしたアランが優しく唇を綻ばせた。
アラン:お前、あの時と同じ顔してる
沐沐:だって、あのプロポーズのこと思い出したから…
アランの優しい眼差しを受け止めて、まっすぐに見つめる。

(私もきちんと…アランに伝えたい)

沐沐:アランに会えたから、私は本物のプリンセスになれたんだよ
沐沐:だから、今度は自分の力で本当に国を支えられる王妃になりたい
ずっと胸に秘めていた想いを、アランに改めて伝える。
沐沐:アランのそばで頑張っていくって決めたから…
沐沐:これからもよろしくお願いします
にこっと微笑んでそう言うと、私を見つめるアランの瞳が和らいだ。
アラン:お前のそういうとこ、変わんないな
顎をすくい上げられ、微笑みをのせた唇がゆっくりと近づく。
アラン:愛してる沐沐
吐息がアランの唇で奪われ、
身体が痺れるくらい甘い口づけが落ちた。
沐沐:……ん、っ
アラン:ずっと、離さねえから
沐沐:うん…
角度を変えて注がれる口づけはどんどん熱を帯びていく。

(アランにキスされるたびに、想いが募っていく…)

沐沐:…私も愛してるよ
アランの背中に腕を回して、口づけの合間に囁くと、
もどかしそうな吐息と共に、いっそう深く口づけられた。
やがて唇が離されると、アランがふっと笑みをのせる。
アラン:…お前といると、一生忘れられねえもんが増えてく
アラン:今日の景色も…お前の笑顔も
そっと頬にアランの手のひらが滑り、甘く鼓動が鳴る。

(今日こうして2人で過ごしたことも…)
(そして国を守っていく約束も、)
(私もこの先、いつまでも忘れない…)

輝く水面をゆるやかな風が撫でていき、木々が揺れる音がする。
舞い上がった花の香りに包まれて、
私たちは何度目かわからない口づけを交わした…―


fin.

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エピローグ

艾倫後

アランと無事に式典を終えたあなたに贈るのは…
1年経っても変わらない、甘い夜…―
アラン:今夜は手加減できねえかも
アラン:覚悟しろよ
首筋に触れたアランの唇が、胸元へと降りて…
アラン:……っそんな声出したら、もっと耐えられなくなんだろ
素肌を滑る指先に、身体が熱を帯びていき…―
アランとのとろけるような夜を、過ごしてみませんか…?

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    創作者介紹
    創作者 小澤亞緣(吉琳) 的頭像
    小澤亞緣(吉琳)

    ♔亞緣腐宅窩♔

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