新版王宮 收集活動-Change!Change!Change!?私のみたことない王子様(獎勵故事)
★本編を進めようキャンペーン★
甘くて美味しい不思議な飴…。
ひとくち食べて目覚めた彼の性格が大変身?!
あなたの大好きな彼はどんな人…?
今回のストーリー特典では、
カイン・ノア・アラン・ルイ・ジル・の5人が登場するよ!
他にも可愛いペットスタンプもGETできちゃうよ★
プロローグ:
――…その日、王宮ではひそかに事件が起きていた…
――ケース1:アルバート=ブルクハルトの場合
次の公務に向かうため廊下を歩いていると……
吉琳:あれ、アルバートさん
アルバート:…プリンセス
会合のためにウィスタリアを訪れているアルバートさんが、なんだか難しい顔で立っている。
吉琳:何かあったんですか…?
アルバート:…ええ、ちょうどいいところに来てくださいました。助けてくれませんか?
吉琳:え…はい、私にできることなら
アルバート:では……
アルバートさんは近づいて来ると、なぜか私の体を壁に優しく押しつけた。
そして、かけていた眼鏡をそっと外す。
(え……)
吉琳:アルバートさん? なぜ眼鏡を…
アルバート:眼鏡をしたままでは、あなたにキスがしにくいからです
吉琳:………え?
(キ…キス…!?)
吉琳:と、突然なに言って…
アルバート:…もう黙ってください
手のひらで頬を包まれ、アルバートさんの顔が近づく。
(うそ…――っ)
思わずぎゅっと目を閉じた瞬間……
???:ちょーっと待ったー!!!
アルバート:……っ
(今の声……)
吉琳:ユーリ…!
目を開けると、肩で息をするユーリと、なぜか頭を押さえるアルバートさんの姿があった。
ユーリ:…間に、あった……っ
アルバート:…? 私はこんなところで何を……
吉琳:どうなってるの…?
ユーリ:あー…ちゃんと説明するね
***
ユーリ:――というわけで、城下で流行ってる『オカシな飴』を食べたら
ユーリ:一時的に性格が変わっちゃったみたいなんだよねー
ユーリ:飴を食べた途端に倒れて、ロベールさんを呼びに行ってる間にいなくなってさ
ユーリ:でも、まさか吉琳様に迫るなんて…
アルバート:…っ…貴様のせいだろう!
ユーリ:だから、ごめんってば。でも困ったな…
ユーリ:さっきの飴…他の人にも配っちゃったんだよね……
(え………)
ユーリの言葉を聞き、慌てて彼の様子を見に行くと……
(…っ…うそ、倒れてる)
吉琳:大丈夫? しっかりして…――!
――…ケース2:カイン=ロッシュの場合
『オカシな飴』の効果……極度の照れ屋に…――?
吉琳:カイン…、カイン…!
カイン:…っ…、ん……
部屋の床に倒れていたカインが目を覚まし、ほっと息をつく。
吉琳:よかった…大丈夫?
カイン:吉琳…?
カインが抱き起こしている私の手に視線を落とした瞬間……
カイン:――…!
(え……)
その顔が一瞬で赤く染まり、跳ねるように体を起こした。
吉琳:カイン? やっぱりどこか具合が…
カイン:さ、触るんじゃ…ねえ
吉琳:え?
カイン:女がこんな風に、簡単に男に触れるべきじゃ…ねえだろ
吉琳:触れるべきじゃないって…
赤く染まった顔を伏せて告げるカインは、
口調はそのままでも、明らかにいつもと様子が違う。
(もしかしてこれが『オカシな飴』の効果…?)
(ユーリは一時的な効果って言ってたけど…何か消す方法はないのかな)
吉琳:…カイン、ちょっと一緒に来て
ユーリに聞きに行く決意をし、立ち上がりながらカインの手を引くと……
カイン:…吉琳。行くのは構わねえが…
カイン:この手は、離せ…
吉琳:あ…ご、ごめん
片手で顔を覆うカインのあまりの顔の赤さに、自分の頬まで熱くなっていく。
(なんだかこんなに照れられると私まで恥ずかしい気持ちになる)
(いつもと違いすぎて調子が狂うよ…)
***
ユーリ:あれ、カイン様に吉琳様?
吉琳:ユーリ、さっきの『オカシな飴』のことなんだけど…
ユーリ:あー…もしかして、効果出ちゃいました?
吉琳:うん、カインの様子がいつもと違って…効果を消す方法知らない?
問いかけると、ユーリは気まずそうに眉を寄せた。
ユーリ:俺も効果は一時的って聞いただけで、すぐに消す方法があるかは…
ユーリ:ごめん、吉琳様
吉琳:そっか…
(やっぱり自然に効果が切れるのを待つしかないみたい)
カイン:…一時的なら、心配しなくてもきっと治るだろ
カイン:焦らずに待つぞ、吉琳。だから…ユーリも謝るな
ユーリ:え……
ユーリ:カイン様が嘘みたいに優しい…
ユーリの言葉に、またカインの顔が微かに赤く染まる。
カイン:や、優しいなんて…な、なに言ってんだ
動揺した様子で視線を泳がせると、顔を伏せた。
カイン:俺なんかは、全然…
カイン:ユーリの方がいつも周りに気を配ってて…優しいじゃねえか
控えめに言葉を紡ぐカインに、ユーリが呆然と私を見つめる。
ユーリ:これは…すごい効果が当たったね
吉琳:うん…いつもと違いすぎるよね
***
私はカインと部屋に戻り、二人で効果が切れるのをおとなしく待つことにした。
ソファーの隣に座るカインを横目で見つめる。
カイン:…………
(カイン、ずっと部屋の奥を見つめたままだけど…)
(もしかして、今の状況に色々不安を感じてるのかな…?)
吉琳:あの、カイン…
カイン:…!
心配で名前を呼ぶと、カインの肩が跳ねてゆっくりと私に視線が向けられる。
目が合うと、カインは大げさなくらいばっと顔を逸らした。
吉琳:え…今どうして顔を逸らしたの?
カイン:それは、だな…
言いよどむカインに近づき、顔を覗き込もうとすると、
カインはまた顔を赤くして、慌てたようにソファーから立ち上がった。
吉琳:カイン…?
カイン:顔、覗きこむのも…ダメだ
カイン:その可愛い目で見られると…どうしていいか、わからなくなる
吉琳:か、可愛い…?
カイン:だから…!それで今も、目逸らしてたんだよ
カイン:……言わせんじゃねえ
照れた様子で口元を手で覆うカインに、自分の頬まで熱を帯びていく。
(今のカインはいつものカインと違うのに…)
それでも、向けられる言葉に胸が高鳴るのを抑えられない。
(今の言葉、どこまでが飴の効果なんだろう…?)
恥ずかしさに言葉に詰まっていると、カインが息をついた。
カイン:…少し、外に出て来る
吉琳:え…どうして?
カイン:こんな…見つめられるだけで赤くなんの、格好悪いだろ
カイン:こんなとこ、いつまでもお前に見せんの…無理だ
顔を伏せたまま去って行こうとするカインの手を思わず掴む。
吉琳:…待って!
カイン:…! だから、こんな風に触れるのは…
カイン:――…っ
言いかけたカインが、ふいに苦しそうに胸を押さえてしゃがみ込む。
吉琳:え…カイン!?
慌てて顔を覗き込むと……
カイン:――…あ? お前、こんなとこで何して…
カイン:ていうか、何だよこの体勢
(この距離にいても顔が赤くならない…飴の効果が切れたんだ)
吉琳:カイン…!
カイン:おい…!? …っ…い
嬉しさのままカインの首に抱きつくと、一緒に倒れこんだカインの頭がソファーにぶつかった。
カイン:てめえ…いきなり何すんだ
吉琳:あ…ご、ごめん
顔を離すと、今度は照れではなく怒りで顔を赤くしたカインに睨まれる。
(こんな風に睨まれても、やっぱりいつものカインがいい)
吉琳:元に戻ってよかった…
カイン:全然意味がわからねえ。何があったのか説明しろ
吉琳:うん、もう少ししたら…
カイン:もう少しって……ったく
安堵の息をつきながら告げると、カインは困惑した声を上げながら、
あやすように優しく私の背中を叩いた。
――…ケース3:ジル=クリストフの場合
『オカシな飴』の効果……敬語が使えなくなる…――?
吉琳:ジル…! しっかりして
ジル:……吉琳…?
ゆっくりとジルの瞼が開いて、ほっと息をつく。
ジル:なぜそんな心配そうな顔を…?
吉琳:部屋にジルが倒れてたから…
ジル:倒れた…私が?
ジル:ああ、そういえばユーリから受け取った飴を食べてから記憶がない…
吉琳:大丈夫…? どこか具合が悪かったりしない?
ジル:ええ、大丈夫で…──
ふいに不自然なところでジルが言葉を切った。
ジル:……?
吉琳:ジル…? やっぱりどこか具合が…
ジル:いえ、具合はどこも悪くあり…――
吉琳:ジル?
ジル:……おかしい
ジル:大丈夫じゃない…らしい
(え…?)
***
クロード:敬語が使えない?
吉琳:うん、使おうとすると声が出なくなるみたいで
クロード:へえ、一時的とはいえ、飴でそんな効果がね…
たまたまジルに書類を提出しに来たクロードが、どこか面白がるようにジルを見つめる。
クロード:ジル、この書類だが…
ジル:後にしてく…れ
クロード:…くれ?
笑みを深めるクロードにジルは息をついた。
ジル:…いま貴方と話す気はない
ジル:話させて楽しもう、という魂胆が見え見えだ
クロード:いや、こんな大変な時に放っておくなんてできないだろ
ジル:見え透いた嘘をつくのはやめろ
クロード:……なんかこう、敬語のないジルは思った以上にグサッとくるな
吉琳:うん…
(口調が違うだけで、こんなに印象が変わるものなんだ…)
ジルは息をつくと、額を押さえた。
ジル:だったら、からかうのはやめなさい
クロード:ん?
ジル:…ん?
(あれ、今……)
ジル:…なるほど、命令口調は許されると
クロード:あー…わかってよかったな。けど、治るまでお前は少し休んでた方がいい
ジル:なぜ?
クロード:今のお前と話すと、周りの方が被害を受けそうだからな
おどけたように肩をすくめるクロードに、私とジルは苦笑して顔を見合わせた。
***
ジル:貴女まで付きあわせてすまない
吉琳:ううん、誰かと話さないと治ったかどうかわからないでしょ?
ジル:ああ…
ジル:ただ、この話し方は…正直慣れない
ジルは苦く笑うと、疲れたようにソファーに深く腰かけた。
(やりたくてやってるわけじゃないんだし…疲れるよね)
ジルの隣に膝を立てて座り、ぎゅっと頭を抱きしめる。
ジル:吉琳…?
吉琳:あの…こうしてると少しは疲れが取れるかなって
(自分からこんなことするの、本当は緊張するけど…)
ジル:…ああ、確かに貴女にこうしてもらえるのは落ち着く。それに…
ジル:これだと吉琳の速い鼓動も、よく聞こえる
吉琳:え…
吉琳:そ、それは聞かないでほしい…
慌てて離れようとすると、微かに笑ってジルは私の腰を掴まえた。
ジル:離さない
吉琳:ジル…!
ジル:今鼓動が速くなった…いつもと違う私に、動揺を?
ジルは可笑しそうに目を細めると、腰を抱えたまま私の体をソファーに押し倒した。
吉琳:あ、あの…
ジル:何なら一人称も変えてみようか
吉琳:変える…?
ジル:私ではなく…俺、と
瞳に楽しげな色を浮かべて、ジルが私の頬を撫でる。
ジル:疲れを癒してくれたお礼がしたい
ジル:俺は貴女に何をすればいい…?
吉琳:なにって……
(表情も触れ方も、いつものジルなのに…)
言葉遣いが違うだけで、なんだか別人のような気がしてしまう。
(戸惑う気持ちもあるのに…)
違う一面を知ったようで、胸の奥がひどく落ち着かない。
恥ずかしさに目を伏せると、ジルの顔が近づいて唇を甘い吐息が掠めた。
ジル:さあ、俺に…どうしてほしいのです?
(え……)
吉琳:あれ、今…
ジル:ああ、戻ったようですね
ジル:よかった、これでいつも通りです
にっこり笑うと、ついさっきまでの状況が嘘のようにジルが体を起こす。
(平然としてる…やっぱりからかってたのかな)
頬に残る熱を感じながら体を起こすと、ジルが顔を覗き込んできた。
ジル:少し残念…そんな顔ですね?
吉琳:そ、そんなこと…!
(確かに、いつもと違うジルに動揺してたけど…)
慌てて否定する私の髪を手に取り、ジルはそっとキスを落とした。
ジル:…冗談ですよ、吉琳
ジル:ですが、もし貴女が先ほどの私を気に入ったというのなら、またさっきのように話す努力をしましょう
ジル:もちろん、貴女と二人きりの時限定で…ね
耳に落とされる甘い囁きに首筋まで熱を広げた私に、ジルは楽しげな笑みを浮かべた。
(どんなジルでも…私が敵わないってことだけは変わらないのかも)
――…ケース4:アラン=クロフォードの場合
『オカシな飴』の効果……中身が子どもになる…――?
吉琳:アラン、大丈夫? しっかりして…!
アラン:…ん……
アランは目を開けると数回瞬きをして、怪訝そうに部屋を見回した。
アラン:……?
吉琳:アラン?
(どうしたのかな…)
アラン:なにここ…
アラン:…!
声を発した途端、なぜかアランは驚いた様子で自分の喉に手を当てる。
アラン:な、んだこれ
そして、今度は自分の両手を見つめた。
アラン:俺……大人になってる?
吉琳:え?
その時、ノックの音がしてレオが部屋に顔を出した。
レオ:アラン、俺のところに騎士団の書類が混ざってたんだけど…
レオ:…あれ? 二人ともびっくりしたような顔して、どうしたの?
アラン:………お前…もしかして、レオ?
レオ:え?
(今、アランがレオって…)
(いつもなら『あんた』って呼ぶのに)
アラン:レオも大人になって…なにこれ、どういうこと?
アラン:ていうか、ここどこだよ
(もしかして、アラン……)
***
レオ:『オカシな飴』か…原因はそれだね。でも…
レオ:まさか、中身だけ子どもになっちゃうなんてね
吉琳:うん…びっくりした
アラン:『オカシな飴』って……
アラン:そんな変なもの食べさせたの、誰
吉琳:このお城にいる、ユーリって執事さんだよ
アラン:………そいつ、絶対あとで殴る
小さく呟くと、アランは私に視線を向けた。
アラン:…で? あんたは誰?
(あ…そっか、今のアランは私と出逢う前のアランなんだ)
吉琳:私は……
口を開きかけた時、レオがにっこり笑った。
レオ:この子はこの国のプリンセスで…
レオ:アランの恋人の、吉琳ちゃん
吉琳:レオ…!
(こんなこと今のアランに言っても困らせるだけなんじゃ…)
アラン:……あんたが、俺の未来の恋人?
吉琳:え…それは…、その…
(何て答えたらいいんだろう…)
目を丸くしていたアランが、微かに首を傾げる。
アラン:違うの?
吉琳:…違わない、けど
アラン:……ふうん
(……何か言われても困るけど、何も言われなくても戸惑うな)
けれど、首の傾げ方も今の言い方も、いつものアランと同じだった。
(中身は幼くなっても、やっぱりアランはアランなんだ)
アラン:…で、これいつ治るの?
吉琳:ユーリは一時的なものだって言ってたよ
(でも、どれくらいで元に戻るかはわからないみたいだった…)
レオ:まあ、焦っても仕方ないし…
レオ:とりあえず、そろそろお昼だからご飯でも食べよっか
吉琳:うん…アラン、食堂に行こう?
アラン:……ん
(いつもより素直…中身が子どもなだけなのに)
(なんだか今のアラン、少し可愛いかも)
***
三人で昼食を取っていると……
吉琳:あれ、アランそれ…トマト食べないの?
お皿に残ったトマトを見て、アランは眉を寄せた。
アラン:…食べたくない
アラン:吉琳にあげる
吉琳:え?
アランはトマトを手に取ると、私の口の前に差し出した。
アラン:…ほら、あーん
(…っ…アランが、あーんって…)
恥ずかしさに息を詰めた瞬間、レオの微かな笑い声が聞こえる。
レオ:あれー、大きいアランは食べてたのに食べないの?
アラン:…………
レオ:なんてね。そういうところも昔に戻っちゃうんだ
(昔に…?)
吉琳:えっ、アランってトマト嫌いだったの?
レオ:そう、小さい頃はね。今は我慢すれば食べられるみたい
アラン:…トマト、食べれるように練習してるけど
アラン:……今日はやだ
顔を背ける様子が子どもっぽくて、つい可愛いと思ってしまう。
(今のアラン、甘やかしたくなる…)
吉琳:ねえ、そのトマト…
アラン:……っ
その時、ふいにアランが苦しそうに胸を押さえた。
吉琳:アラン…!?
慌てて顔を覗き込むと、瞼を開いたアランが目を瞬かせる。
アラン:…あ? 俺なんでここにいるわけ?
アラン:さっきまで部屋にいたはずなのに…
吉琳:アラン、元に戻ったの?
アラン:…戻ったってなに
***
事情を説明すると、アランは眉間に深いシワを刻んだ。
アラン:ユーリのせいかよ…あいつ、絶対あとで殴る
(…小さいころのアランと同じこと言ってる)
(変わったところも、変わらないところもあるんだな)
思いがけず垣間見えたアランの幼い頃に、頬が緩んでしまう。
アラン:…お前、何にやにやしてんの?
吉琳:何でもないよ
笑みを浮かべたまま答えると、むっと口を尖らせたアランに額を小突かれた…――
――…ケース5:ノア=レオンハートの場合
『オカシな飴』の効果……中身がワイルドになる…――?
吉琳:ノア…!
ノア:…ん、……吉琳…?
(よかった、やっと目を覚ましてくれた)
声をかけてもしばらく起きなかったノアに、ほっと胸をなでおろす。
吉琳:声をかけても起きなかったんだよ…大丈夫?
ノア:ん…
髪を掻き上げながらノアがベッドから体を起こした。
(飴を食べたら一時的に性格が変わるって聞いてたけど、特に変わりないみたい)
(寝てる間に効果が切れたのかな…)
吉琳:あ、お水用意しておいたけど飲む?
ノア:…飲む
コップを手渡そうとすると……
吉琳:…あっ?
ぐっとノアに腕を引かれ、ベッドに倒れこむ。
その瞬間、コップの水がこぼれてノアの服にかかってしまった。
吉琳:あ…! ご、ごめん、ノア
ノア:ああ、このくらい気にすんな
(……ん?)
(なんだか今の口調ノアらしくなかったような…)
不思議に思っていると、ノアが自分のシャツに手をかけて……
吉琳:ノア…!?
ノア:なに?(裸)
いきなりシャツを脱ぎ捨て、上半身裸になったノアから目を逸らす。
吉琳:どうしていきなり脱ぐの…?
ノア:濡れたから脱いだだけ。別におかしくないだろ?
(…やっぱり、口調がいつものノアらしくない)
(もしかして、飴の効果が出てるのかな…?)
吉琳:でも、さっきまで倒れてたんだし…そんな格好してたら風邪引いちゃうかも
そう言うと、ふいにノアがすっと目を細めた。
ノア:ふーん…心配?
吉琳:それは、もちろんだよ…
(いつものノアらしくなくても、ノアが心配なのは変わらない)
ノア:…それならさ、吉琳があっためてよ
吉琳:え?
ぎしっとベッドを軋ませて、ノアが近づいてくる。
吉琳:ちょっと、ノア…っ
ベッドの上で後ずさると、壁に背中がぶつかった。
ノア:そっち側に行くなんて、ほんとは逃げる気ないだろ
追い詰めるようにゆっくりと壁に腕を預けて、
ノアが上から顔を覗き込んでくる。
吉琳:そんなこと…
ノア:なら、次はどうやって逃げんの?
吉琳:…っ…い、意地悪!
ノア:…いーね、その強気な目。吉琳に睨まれんの、新鮮
目を見開いていると強く腰を引き寄せられ、向かい合うようにノアの膝に座らされた。
吉琳:何して…
ノア:何って…わざわざ聞くとか物好きだねー
ふっと吐息混じりに笑ったノアの瞳が、危険な光を帯びる。
ノア:今から吉琳に触れるつもりだけど
(……!)
ノアの手が私の頭の後ろを押さえ唇が近づいた瞬間、
ノックの音が部屋に響いた。
吉琳:ノア…誰か来たみたい!
ノア:…ここで邪魔が入るとか
小さく舌打ちをしてノアがベッドを下りる。
(た、助かった……)
胸に手をあてて安堵の息をつくと、ふいに顔を覗きこまれた。
ノア:助かった、とか思ってない?
吉琳:…! そんなこと…
ノア:ごまかしても無駄。俺が吉琳のことわからないと思う?
ノア:言っとくけど、逃さねーよ?
見たことがないような不敵な笑みを浮かべると、
ノアは私の額にキスを落とした。
ノア:いい子だから、おとなしくしてな
(…い、いつもと違いすぎる…っ)
低く笑うと、ノアはなぜかいくつもの枕を抱えて扉に向かっていく。
そして扉を明けた瞬間……
カイン:おい、ノア。お前変な飴食わされたって…
カイン:――…っ!?
入って来たカインに枕をぶつけた。
カイン:てめえ、いきなり何す…ていうか何で脱いでんだよ
ノア:うるさい、邪魔、出てけ
カイン:は? 人が心配してやったのに、何…
カイン:……っ
カインの言葉の途中で、ノアがまた手にしていた枕をカインに投げる。
ノア:出て行かないなら、またぶつける
カイン:お前…ふざけんなよ!
ぶつけられた枕をカインがノアに投げ、ノアがそれを叩き落とす。
そして、本格的に枕投げが始まってしまった。
(うそ、この二人が喧嘩なんて…っ)
睨み合う姿に慌ててベッドを下り、扉にいる二人の方に向かう。
吉琳:二人とも落ち着いて…! ノアは飴のせいでおかしくなってるだけで…
ノア:カイン…このっ、ドへたくそ!
ノア:――吉琳!
吉琳:え、え……うわっ
自分の方に飛んできた枕に、ぎゅっと目を閉じた瞬間、
かばうようにノアに体を抱きしめられ、勢いよくその場に倒れこんだ。
吉琳:…っ…ノア?
ノア:……ん…
覆いかぶさっていたノアが、頭の後ろを抑えながら体を起こす。
カイン:悪い…っ、二人とも大丈夫か?
ノア:……あれー? 俺……
ノア:なんで脱いでるの?
のんびりした口調に安心して、思わずノアに抱きつく。
吉琳:ノア…!
ノア:え、吉琳? どーしたの?
カイン:…お前はそのままのお前でいろ
吉琳:うん、変わらないノアでいてね…
ノア:なにそれー? 変な二人
柔らかな笑い声に、カインと顔を見合わせてほっと息をついた…――
――…ケース6:ルイ=ハワードの場合
『オカシな飴』の効果……頼もしすぎる性格に…――?
吉琳:ルイ、大丈夫? しっかりして…!
ルイ:…ん……
声をかけると、ソファーに倒れていたルイがゆっくりと体を起こした。
吉琳:ルイ、どこか具合が悪いんじゃ…
ルイ:…大丈夫、少しぼうっとしてたみたい
ルイ:それより――仕事をしないと
吉琳:え…?
すっとソファーから立ち上がり、ルイが足早に歩き始める。
(ついさっきまで倒れてたのに…)
(こんなにすぐ動いて、体は大丈夫なのかな…?)
吉琳:ルイ、待って。私も行く…!
***
心配で後を追うと、ルイは色んな人のところに顔を出し始めた。
ジル:この書類、もう終わったのですか…?
ルイ:ああ、他にもやることはある?
ジル:ええ、こちらに来月提出頂く予定のものが…
ルイ:2ヶ月先の分までもらう
ジル:ですが、かなりの量になりますよ?
ルイ:構わない
(なんだかルイが見たことないくらい張り切ってる…?)
ルイ:吉琳、次に行くよ
吉琳:あ…うん
***
ジルの部屋を出て廊下を歩いていると、ふいにルイが足を止めた。
ルイ:あれは…
吉琳:ルイ?
向かい側から、積み上げた箱を抱えたユーリが歩いて来る。
(すごいたくさんの箱…歩きにくそうだけど大丈夫かな?)
ルイ:ユーリ
ユーリ:あ…ルイ様、吉琳様
ユーリ:すみません、もし用事なら後で…
ルイ:用事じゃない。手伝う
ユーリ:え?
ルイは手を伸ばすと、ユーリからすべての箱を受け取った。
ユーリ:ルイ様、それ結構重いですから…!
ルイ:平気。クロードのところの届け物でしょ?
ルイ:それに、まだ運ぶ箱がたくさんあるんじゃない?
ユーリ:え、どうして…
ルイ:前に同じ箱をたくさん、クロードのアトリエで見たから
ルイ:月に一度クロードはまとめて布や飾りの仕入れをしてる、その荷物でしょ?
ルイ:だから、これは俺が運ぶよ。ユーリは次をお願い
ユーリ:はい…じゃあ、お願いします…
ルイに圧倒されたようにユーリが言葉を落とすと、ルイはすぐに歩き出した。
ルイ:行こう、吉琳
吉琳:あ…待って、私も運ぶの手伝うよ!
***
クロードのところに荷物を届けて廊下に出ると、声をかけられた。
シド:よお、泣き虫ぼっちゃん。それにプリンセスか
シド:相変わらず仲よくしてるみてえだな
シドの姿に気づいたルイが、背中にかばうようにすっと私の前に立つ。
ルイ:だったらなに?
吉琳:ル、ルイ…?
はっきり口にされた肯定の言葉に、頬が熱を帯びる。
ルイ:いつもみたいにからかうつもりなら、好きにすればいい
ルイ:でも、吉琳にちょっかいはかけさせない
ルイの返しに、シドが意外そうに眉を上げる。
シド:へえ? お前、今日はずいぶん強気じゃねえか
シド:そういう風に言われると逆に構ってみたくなるだろうが
シドが一歩私の方に踏み出そうとすると、遮るようにルイも動く
ルイ:させないって、言った
シド:…お前、やっぱいつもと何か違えな
シド:何があったか知らねえが…今日のお前をからかってもあんまり面白くなさそうだ
シドは肩をすくめると、私たちの横を通りすぎて去って行く。
(ルイがシドにあんな風に言葉を返すなんて…)
いつもなら相手にしようとせず睨むか無視をするところを、
今日は正面から言葉を突きつけていた。
(ほんとに、今日のルイはいつもと違って見える)
(いつも頼もしいと思うけど、今日は頼もしすぎるくらい…)
誰かのために頑張るルイは好きだけれど、
こんなに張り切り続けたらきっと疲れてしまう。
(…ん? いつもと違う……?)
吉琳:もしかして…
ルイ:吉琳、どうかした?
(これって『オカシな飴』のせいなのかな…?)
(それなら、効果は一時的って言ってたし…)
吉琳:あの…ルイに、手伝ってほしいことがあるんだけど
***
ルイ:これを作ればいいの?
吉琳:うん
トランプを渡し、トランプタワーの見本写真を見せる。
(子どもみたいなやり方だけど…)
(トランプタワーを完成させるには、きっとかなりの時間がかかるから)
(これなら、しばらくはルイを働かせずに引き止めておけるはず…)
そう思って提案したけれど……
ルイ:――できた
吉琳:え、もう…?
ルイは一度もトランプを崩さず、あっという間に作りあげてしまった。
ルイ:他に俺にできることはある?
吉琳:え……えっと
(どうしよう、何か言わないときっとまたルイが頑張りすぎちゃう)
吉琳:あの、ただ一緒にいたい…っていうのは、だめ?
(こんな言葉じゃ今のルイは止まってくれないかな…)
すがるように見つめると、ルイは口元に微かな笑みを浮かべた。
ルイ:いいよ
吉琳:え?
わずかに体を乗り出したルイに、瞳を覗き込まれる。
ルイ:どのくらい、一緒にいてほしいの?
(自分からルイを引き止めたけど…)
言葉も眼差しも私を甘やかすようで、無意識に頬が熱を帯びていく。
吉琳:どこまで、望んでいい…?
思わず問い返すと、ふっとルイが柔らかな笑みを浮かべた。
ルイ:好きなだけ
ルイ:君の望むだけ、一緒に…――
ルイ:………っ
ルイは言葉の途中で胸を押さえると、苦しそうに息を詰めた。
吉琳:ルイ…っ
慌ててルイの肩を支えると、顔を上げたルイが不思議そうに瞬きをする。
ルイ:……吉琳?
ルイ:俺、どうして君の部屋に…?
(もしかして、薬の効果が切れた…?)
吉琳:…よかった、戻ったんだね
(頼もしいルイも素敵だったけど…頑張りすぎは見ていて心配になる)
ルイ:…? なにがよかったの
吉琳:なんでもないよ
首を傾げる姿に笑顔を向けると、ルイの口元にふわりと優しい笑みが浮かんだ。
ルイ:…おかしな吉琳