小標

Love Target~キケンな恋と甘いくちづけ~(ジル)

吉爾標

狙われたあなたを守ってくれる、彼の本当の姿とは…?
隠された真実を知った時、
スパイの彼とのキケンな恋が動き出す…―
…………
ジルの腕に抱き締められると、
耳元に熱い唇が触れ…―
ジル:…これからは、一番近くで貴女を守ります
ジル:私と、一緒になってくださいますか?
…………
全てを受け止めたあなたには、
二人だけの甘く刺激的な夜が待っている…―

 

 

 

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第1話は共通の物語になっているよ!
第2話からお相手選択が発生し

各彼のエンディングが楽しめるよ!

 

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プロローグ:

暖かな日差しが降り注ぐ、ある休日の午後…―
数年前に両親を亡くした私は、
貴族の一人娘として、抱えている領地の視察に赴いてた。

(もう…二人の命日か…)

視察を終えてお墓参りに向かっていると、
通りがかった教会から、
ミサを終えたばかりの神父のロベールさんが顔を出した。
吉琳:こんにちは、ロベールさん
ロベール:こんにちは。今日は…ご両親の命日だね
黒いワンピースに身を包んだ私を見て、ロベールさんが穏やかに微笑む。
顔なじみで、いつも優しく相談に乗ってくれるロベールさんと話していると、
判事のジルと自警団のアランが教会を訪ねてきた。
ジル:近くで不審な人物が現れたとアラン殿から聞いたので、
ジル:ロベール殿にも伝えておこうと思いまして
二人は両親に先立たれた私を気遣ってくれて、
たまに夜道で会うと心配して家まで送ってくれることもあった。
アラン:お前も、気をつけろよ
吉琳:うん、ありがとう
そうしてみんなに見送ってもらい、私は教会を後にした。

(あれ…? あそこにいるのって…)

墓地に向かう途中にあるシドの営むバーの前で、
顔なじみの二人の姿を見つけて足を止める。
吉琳:シド、ゼノ様、こんにちは
挨拶をすると、シドが気だるげに片手を上げた。
バーの店主であるシドと他国から派遣されている外交官のゼノ様は、
こうしてバーで話していることが多く、私も仲間にいれてもらうことが多い。
シド:よお。そういや今日だったな
ゼノ:…暗くなる前に済ませると良い
吉琳:はい。行ってきます
そうして私は二人に笑顔を返すと、両親の眠る墓地へと足を進めた。

***

お墓参りを終え、すっかり暗くなった道を歩いて家に帰ると、
自室のバルコニーにぽつんと何かが置かれていることに気づく。

(何だろう…)

鍵のかかった鉄製の箱を手に取り、その下に置かれていた封筒を開ける。
封筒の中にはチェーンに通された鍵と、両親からだという手紙が入っていた。
吉琳:『中身はとても大切なものだ。取り扱いには気をつけるように』…

(どうしてこんなところに…二人の知り合いが届けてくれたのかな)

そう思いながら箱を開けようとしたその時、部屋のドアがノックされた。
持っていた鍵を首にかけ、箱を机の上に置いて部屋を出る。
けれど、そこには誰の姿もなかった。

(こんな時間に訪ねてくる人はいないだろうし、聞き間違いかな…)

不思議に思って部屋に戻り、はっと目を見開く。

(さっき置いた箱がない…)

驚きながらも、
私は消えた箱の代わりに置かれていた一枚のカードを手に取り…―
吉琳:『関わるな』って、どういうこと…?

 

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どのルートを選ぶ?

『今度の彼は全員スパイ!?』
彼との甘く刺激的な恋が楽しめるよ!

第1話はこちらの2ルートから選択してね♪

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>>>アラン・ジル・シドを選ぶ

 

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アラン・ジル・シド編 共通-第1話:

 

吉琳:『関わるな』って、どういうこと…?
不穏な警告を受けて、少しの怖さを感じる。
バルコニーから外を見下ろしても怪しい人影はなく、
胸に広がる謎は一層深まっていく。

(大切なものって書いてあったのに…)

両親からの手紙の内容を思い出して、
寂しさできゅっと胸がしめつけられる。

(箱を返してもらわないと…)
(もう夜も遅いけど、アランなら相談に乗ってくれるかも…)

そうして私は、
自警団の団員でいつも頼りにしているアランを訪ねることを決めた。

***

アランの家に向かう途中、路地裏から聞こえてきた声に立ち止まる。
声をひそめるような話し声は、どこか聞きおぼえがあった。
???:…まだ、中身がどこの国の情報かはわからない
???:そうですか…しばらく様子を見るしかありませんね

(アランとジルの声に似てる…)

そう思って路地裏を覗きこんだ時…
吉琳:…っ……
ふいに後ろから肩を叩かれ、驚いて振り向く。
すると、そこにはにやりと口元に笑みを浮かべたシドの姿があった。
シド:盗み聞きか?
シド:だが、気をつけろよ…
シド:知らなくていいことを知っちまうかもしれねえからな
吉琳:もう…大丈夫だよ
路地裏に入ろうとした私を引きとめたシドに笑いかけると、
シドがからかうように口を開いた。
シド:そうか? 三国間の関係は悪くなる一方だ
シド:どこの国のスパイがうろついてるか分からねえぞ

(確かに、最近は不穏な噂も聞くけど…)

西と東、そしてこの北の国の外交関係は悪化の一途を辿り、
長い間、緊張状態が続いていた。
シド:それにこんな時間に一人で歩くのも感心しねえな
吉琳:ごめん…
表情を固くする私の髪を、シドがわしゃわしゃと撫でる。
吉琳:わっ…
自然に笑顔がこぼれると、シドも口元を緩めた。

(気を紛らわせてくれたのかな)

バーを営むシドは、
貴族が招待されるパーティー会場でお酒を作っていることが多く、
よく顔を合わせるうちに気安く話せる関係になっていた。
シド:それでこんなとこで何してんだ?
吉琳:実は…
シドに話そうと思ったその時、路地裏から歩いて来る足音が聞こえ…―
ジル:…騒々しいと思ったら、貴女たちでしたか
アラン:お前…こんなところで何してんだよ
吉琳:ジル…アランも

(やっぱり、さっきのは二人の声だったんだ)
(よかった…ジルもいるなら、心強いな)

判事であり、
両親の古い知り合いだというジルはいつも親身に相談に乗ってくれる。
吉琳:二人とも、こんな時間までお仕事だったの?
吉琳:お疲れ様
外の見廻りをしていたのかと思い、そう言うと、
ジルが心配そうに眉根を寄せた。
ジル:ありがとうございます。
ジル:ですが、それよりも…シドの言う通りです、吉琳
ジル:こんな時間に暗い路地裏に入るのは、良くありませんよ
アラン:何か用事だったのか?
吉琳:うん、アランに相談があって…
そう言って、私は箱がなくなった経緯を話した。

(あれ…なんか空気が張り詰めてるような…)
(気のせいかな…)

いつもとは少し違う雰囲気を感じて口をつぐむと、シドが先を促す。
シド:それで、その箱の中身ってのは何だったんだ?
吉琳:それは…まだ見てないの
吉琳:鍵を開ける前になくなったから…
そう言うと、アランとジルがそっと目配せを交わし、
アランがいつもよりも低い声で訊ねた。
アラン:…で、その鍵はどこにあるんだ?
吉琳:あ、首に掛けたままで…
そう言って私が服の下に入れていた鍵をひっぱり出そうとした瞬間…
吉琳:きゃっ…
ぐっとジルに腕を引き寄せられ、胸元に抱きしめられる。
ジル:っアラン殿
アラン:ああ、分かってる
驚く間もなく鋭い声が飛び交い、金属のぶつかり合う音が響いた。
アランを見ると、真っ黒な衣服に身を包んだ男と対峙している。

(誰っ…)

ナイフを交えるその姿に一気に恐怖が湧いた。
男:くそっ…!
シド:…見たことねえ顔だな。どこの国のやつだ?
隣にいるシドが、冷たい目で男を見据える。

(一体、何が起きてるんだろう)

状況についていけず、私はただジルの腕の中から眺めていた。
吉琳:ジル…これは…
ジル:大丈夫です。すぐに終わりますよ
ジルの言う通り、
勝負はアランが圧倒的に優勢のまま決着がついたようだった。

(よかった…)

ドキドキしながら成り行きを見守っていると、ジルに声を掛けられる。
ジル:外は危ないですね
ジル:また襲われないとも限りませんし、
ジル:ひとまずここから近いアラン殿の家へ…
抱きしめていたジルの腕が離れて、頷こうとしたその時、
後ろからシドが私の腕を引き…―
シド:おっと。
シド:アンタが心配してんのは…吉琳じゃなくてこいつだろ?
首に下げていた鍵を持ちあげた。
アラン:手を離せ、シド
シド:分かったよ
背後から投げかけられたアランの固い声に、
シドが気にした様子もなくゆっくりと私から離れる。
後ろを振り向くと、
そこには射抜くような瞳でシドを見るアランがいた。

(こんなみんなは…知らない……)

思わず遠ざかるように後ずさり、呆然とみんなを見つめた。
ジル:悪いですが、貴女をシドに渡すわけには行きません
ジル:吉琳、こちらへ
ジルが優しい声音で告げた。
アラン:…その鍵を渡すだけでいい
アラン:お前は何も知る必要はない
同調するように言葉を続け、アランが手を差し伸べる。
シド:本当にそれでいいのか?
シド:何で狙われたのかも分からねえままで
吉琳:え…?

(確かに…気にはなるけど…)

私をまっすぐに見つめ、シドが口を開く。
シド:知りたいなら…俺と来い

(誰を信じたらいいの…?)

どうすればいいのかわからずに、
ぎゅっと瞑った私の目に浮かんだのは、
あの人のいつもの優しい笑顔だった。
そうして、私は彼の手を取る。
すると、耳元で優しい声が聞こえて…―
???:もう、大丈夫

 

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どの彼と物語を過ごす?

1

>>>ジルを選ぶ

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第2話:

 

ジル:もう、大丈夫
ジル:心配いりませんよ

(ジルっ…)

耳元に落ちたジルの声に、
胸をいっぱいにしていた不安が少し和らぐ。
男1:鍵を渡せ!
シド:おっと
その時、暗闇から飛び出してこちらへ向かってきた男を、
シドがあしらい、足止めしてくれた。
アラン:ジル、ここは何とかする。吉琳を連れてけ
ジル:…ええ、そうさせてもらいます。行きましょう
アランに頷いてみせると、ジルは、私の手を引いて走り出した。

***

月明かりだけが照らす街を抜け、私たちはジルの家へと身を隠した。
ジル:ここなら、しばらく襲われることもないはずです
吉琳:は、はい…でも、さっきのは一体…
ジル:貴女の元に届いた箱を狙ったのでしょう
ジル:鉄の箱の中に入れてあるくらいですから、
ジル:高価なものだと思ったのかもしれません
吉琳:そんな…

(でも…それだったら…)

吉琳:どうしてシドもアランも、鍵を狙っていたんですか?
吉琳:両親が贈ったものだと知っているのに…

(中身がどんなものでも、)
(二人が贈り物を奪おうとするような人には思えない)

不安な気持ちでジルを見上げると、静かな瞳が見つめ返してくる。
ジル:…シドはバーのマスターですが、スパイでもあります

(え…?)

ジル:ご両親からもらったものだと知ったからこそ、鍵を…
ジル:その箱の中身を狙ったのでしょう
吉琳:どういうことですか…?
ジル:貴女のご両親は、この国の有名なスパイでした
その言葉に、思わず息をのむ。
ジル:シドも、狙ってきた男たちも…
ジル:重大な他国の情報を、貴女に託したのだと思ったのでしょう
ジル:アラン殿もそれを知っていたから、
ジル:鍵を預かろうとしたのだと思います

(っ、そうだったんだ。それで…)

シドとアランの表情がいつもと違って見えたことに、少し納得した。
ジル:…すみません。
ジル:貴女が悲しむと思って、ご両親のことは今まで言えませんでしたが…
吉琳:いえ…二人が普通の仕事をしていないことは、薄々気づいていました

(昔から、急に家を空けることが多かったし…)
(…驚かなかったと言えば、嘘になるけど)

今はショックを受けるより、先に伝えないといけないことがある。
吉琳:箱と一緒に届けられた手紙には、
吉琳:中身はとても大切なもので、
吉琳:取り扱いに気をつけるようにと書いてありました
吉琳:中身を見るまでは分かりませんが、
吉琳:本当に、情報が入っているのかもしれません
ジル:……
ジルは私の言葉に応えず、考え込むような表情をしている。
吉琳:でも、シドがスパイって分かってて捕まえないのは…
吉琳:どうしてですか?
訊ねると、ジルは一瞬、少し苦しげに眉を寄せた。
吉琳:ジル…?
ジル:貴女には言わずにおきたかったのですが…仕方ありませんね
そう言って、ジルは真っ直ぐに私を見つめ…―
ジル:シドを捕まえないのは…私もスパイだからです
吉琳:え…?
驚いて呆然とする私に、ジルが言葉を続ける。
ジル:私とアラン殿が西の国のスパイ
ジル:そしてシドは、依頼があれば、どこの国にも所属するスパイです
ジル:今は東の国の指令を受けて、働いているようですね

(そんな…)

吉琳:じゃあ…シドとジルたちは、敵同士ということですか?
その質問に、ジルは一瞬押し黙る。
ジル:…私の任務は、自国の情報が他国に漏れないようにすることです
ジル:シドが西の国の情報を狙うことがあれば、
ジル:その時は敵と言えるかもしれませんね
そう口にするジルの表情は、いつもと違いとても冷ややかに見えた。

(本当に、ジルはスパイなんだ…)
(もしかして…私が好きなジルは、偽りの姿だったの?)

両親を亡くした私を気にかけ、温かく見守ってくれるジルの優しさに、
いつしか心惹かれていた。
だけれど…―

〝シド:おっと。お前が心配してんのは…吉琳じゃなくてこいつだろ?〞

シドの口にした言葉が、頭に浮かぶ。

(ジルのことを、信じたいのに…)

吉琳:あの…ジルも、箱の中の情報を狙っているんですか…?

(私を守ってくれたのも、それが理由で…?)

恐る恐る訊ねると、ジルは首を横に振る。
ジル:確かに、箱の中身が自国の情報であれば消す必要がありますが…
ジル:あの時はただ、貴女が心配だったんです

(…あ…)

いつものように優しく、ジルの手が私の頬に触れた。
ジル:鍵を持っている限り、
ジル:スパイ達は情報欲しさに貴女を狙ってくるでしょう
ジル:私が預かっておけば、
ジル:これ以上危険な目に遭わさずに済むと思ったんです
ジルの眼差しは真っ直ぐで、嘘をついているようには見えない。

(すぐには気持ちが追い付かないけど…)
(でも、ジルのことを信じたい)

ジル:今まで隠していて、すみません
ジル:それに、もう一つ話さなければならないことが…
ジルは一旦言葉を切ると、かすかに目を伏せて…―
ジル:…貴女の部屋のバルコニーから、箱を持ち去ったのは私です

(っ、ジルが…?)

吉琳:何で、そんなことを…
ジル:あの箱の中身は、おそらくこの国の王室から奪われた宝石です
ジル:箱を開ければ、すぐに盗人として捕らえられてしまうでしょう
吉琳:えっ…
不穏な言葉に肩を震わせると、
ジルが私を落ち着かせるように、ゆっくりと説明してくれる。
ジル:実は、先日王室から、
ジル:国の大事な宝石が奪われたという通報がありました
ジル:ちょうどその日、貴女の家に何者かが箱を届けたのを見かけたんです
吉琳:じゃあ…あれは両親からの贈り物ではないということですか…?
訊ねると、ジルが厳しい顔で頷いた。
ジル:ええ、恐らく。
ジル:本当に贈り物なら、どうしてもっと早く届けなかったのか疑問です
ジル:貴女のご両親は、他人を傷つけず国を守る優秀なスパイでしたが、
ジル:その分、出し抜かれたことを恨みに思う者も少なくなかった
ジル:箱を置いていった男も、恐らくそうなのでしょう
混乱していたけど、
ジルが丁寧に説明してくれたおかげで少しずつ事情が分かってきた。
吉琳:では、宝石は今、ジルが保管してくれているんですね
ジル:ええ
吉琳:…王室に、返しに行ってもいいでしょうか?

(盗人と誤解されてしまうかもしれないとしても…)
(このまま、大切な宝石を隠しているわけにはいかない)

そんな想いで見つめると、ジルがふっと頬をほころばせる。
ジル:吉琳は、そう言うだろうと思っていました
吉琳:え…?
ジル:策は今考えています
ジル:貴女の両親がスパイだったことを、そのまま話すわけには行きませんから…
ジル:無実を証明出来る材料が揃ったら、一緒に返しに行きましょう
吉琳:っ…ありがとうございます
ジルの言葉が、心強く胸に響く。
ジル:それに…敵国のスパイたちは、箱の中身が情報だと勘違いをしたままです
ジル:またいつ襲って来るか分かりません。ですから…
ジルは言いながら、そっと私の手を取り…―
ジル:私が吉琳を守ります
ジル:そして、何があろうと、
ジル:もう二度と貴女を裏切って傷つけたりしないと約束します
真摯な眼差しで、そう誓ってくれる。

(ジルのお仕事とは、関係ないはずなのに…)

驚きと同時に、嬉しさが胸に広がっていく。
ジル:私は一度、貴女に嘘をついてしまいました
ジル:急には信じられないと思いますが…これだけは本当です
吉琳:でも…どうしてそこまでしてくれるんですか…?
訊ねると、ジルは優しく目を細める。
ジル:…貴女のご両親には恩があると言ったでしょう?

(っ、そういえば…)

ジルがこの街に引っ越して来た時、
両親と昔からの知り合いで、
危ないところを助けてもらったことがあると聞いていた。

〝吉琳:じゃあ…ジルさん。これから、よろしくお願いします〞
〝ジル:ええ、こちらこそ〞
〝ジル:それと、私のことはジルと呼んでください〞
〝吉琳:えっ…?〞

〝(まだ会ったばかりなのに…いいのかな?)〞

〝迷う私に、ジルは穏やかに微笑んだ。〞
〝ジル:ご両親に、貴女をよろしく頼むと言われていたんです〞
〝ジル:貴女に何かあったら、私が必ずお守りします〞

(そうだ…ジルは出会った時から、私を守ると言ってくれてた)

そして、ジルは約束通り、今回も私を守るために行動してくれている。

(こんなに大好きなのに…どうして信じられなかったんだろう)
(ジルは、約束を破るような人じゃない)

ジル:私が信用できないのであれば、鍵を渡す必要はありません
ジル:ですがその代わり、箱の件が解決するまで、側を離れないで頂けますか?
ジル:私がいない間は、アラン殿を護衛につけます
吉琳:っ、そんな…信用してないなんて…

(さっきは少し戸惑ってしまったけど、今はもう…)

そんな想いを込めて見つめるけれど、
ジルは微笑んで、話題を変えるように口を開く。
ジル:…今夜は泊まっていってください。客室に案内します
その時、肩に触れたジルの手が、そっと私を抱き寄せ…―
ジル:大丈夫ですよ。こんなおかしなことは、すぐに終わります
柔らかな声が、励ますように耳に落ちる。
ジル:今日は…突然怖い目にあって驚いたでしょう
ジル:もう大丈夫です。
ジル:私がついていますから、安心して眠ってください
吉琳:…はい

(ジルの身体、温かい…)
(ドキドキするけど、安心するな…)

差し出されたジルの手を取った時と同じように、不安が軽くなっていく。
その後、
私は部屋でジルと箱を盗んでいないという証拠を手に入れるため、
何をすればいいのかを相談して、眠りについた。

***

そうして、翌日の夜…―
私がお風呂から上がって部屋に戻ると、ジルの姿は見当たらなかった。

(もう出かけちゃったのかな…?)

今日は夜からジルが出かけるため、
代わりにアランが家に来てくれることになっていた。
よほど心配だったのか、
言い含めるように注意していたジルの顔が頭をよぎる。

〝ジル:私が出かけた後、アラン殿が来るまでは…〞
〝ジル:誰が来ても玄関の鍵を開けてはいけませんよ〞

(ジルが行く前に、この鍵を渡そうと思っていたのに…)
(朝のうちに渡しておけばよかったな)

チェーンに下げたままの鍵に、服の上からそっと触れる。

(もう、ジルのことを信用しているのに…)
(ジルはまだ、私が迷ったままだと思っているのかな…?)

そう考えると後悔が募り、胸が少し苦しくなる。
俯いたその時、玄関からノックの音が響き渡った。
廊下に出て玄関の方をじっと見つめる。
吉琳:…アラン?
ドアの向こうへ、そっと訊ねると…―

 

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吉爾分

 

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第3話-プレミア(Premier)END:

 

吉琳:…アラン?

(それとも、鍵を狙っている誰か…?)

ドアの向こうへ、恐る恐る訊ねると…
男:手を貸してください…! そこで、母が急に倒れてしまって…
焦りをにじませた男性の声が聞こえてきて、はっと息を呑む。

(大変っ…)

吉琳:大丈夫ですか? きゃっ
慌てて扉を開けると、男性が強引に家の中へ押し入ってきた。
男:例の箱はどこだ?
その手には、鈍く輝くナイフが握られている。

(この人…ただの強盗じゃない)

吉琳:な、何の話ですか…
男:しらばっくれるな。命が惜しくないのか?
男が更に近づいてきて、私の喉元にナイフを向けたその時…
ジル:その手を下ろしなさい

(あっ…)

鋭い声が部屋の中に響く。
次の瞬間、
ジルが流れるような動きで男の首筋に剣の切っ先を突きつけた。
吉琳:っジル…もう出かけたんじゃ…?
ジル:庭で物音がしたので、裏口から様子を見に行っていたんです
ジル:ですが、正面から入ってくるとは…
男を睨むジルの眼差しが、これまでに見たことがないほど冷たくなる。
そうして、
けん制するような低い声で、もう一度男に向かって口を開いた。
ジル:…手を下ろすようにと言ったはずですが?
男:黙れ。俺は命なんて惜しくない
男:お前が斬りかかってきたら、この女を刺すまでだ
ジル:………
男の脅しに、ジルはかすかに眉をひそめる。
そうして、ゆっくりと剣を下ろした。

(ジルっ…)

何もできない歯がゆさに、唇を噛む。
男:昨日は仲間が世話になったな。箱はどこだ
ジル:…貴方は東の国のスパイですか
ジル:あの箱には、情報など入ってませんよ
ジル:北の国の王室から盗まれた宝石が入っているだけです
男:何っ…!? じゃあ、無駄足だっていうのか
男は驚いたように目を見開くと、口元に歪んだ笑みを浮かべる。
男:…だが、ここまで来て、ただでは帰れない

(あっ…!)

男は私を引き寄せ、腕の中に捕らえると、更にナイフを突きつけてきた。
男:箱の代わりに、お前の持っている情報を渡してもらおう
男:そうだな…お前が属している、西の国の情報がいい

(っ、そんな…)

西の国の情報を守るのが自分の仕事だと、ジルは言っていた。

(ジル、だめ…っ)

目で訴えるけれど、ジルは男を冷ややかに見すえ…―
射抜くような瞳で男に訊ねた。
ジル:…情報を渡せば、吉琳を解放してくれるのですね?
男:ああ。約束しよう
ジル:…分かりました

(っ、大切な任務のはずなのに…)

ジルは男の見張るような視線を受けながら、
鍵がかった机の引き出しを開ける。
そうして西の国の紋が入った文書を取り出し、テーブルの上に置いた。
男:その紋は…確かに西の国の機密文書だな
私を捕まえていた手を離すと、男は素早くその文書を懐にしまった。
ジル:吉琳
その間に、すかさずジルが私を引き寄せ、しっかりと腕に抱いてくれる。
男:女を守るために情報を手放すとは…とんだスパイだな
男があざけるようにそう言い残し、部屋を出て行く。

(…助かったんだ…)

ジルのぬくもりを感じながら、緊張の糸が切れる。
吉琳:ジルっ…ごめんなさい!
同時に、一気に罪悪感がこみ上げ、私はジルに頭を下げていた。
吉琳:私のせいで、ジルの国の情報を奪われてしまって…
言葉の途中で、ジルがそっと私の頬を包み込む。
ジル:…大丈夫ですよ

(えっ…)

顔を上げると、ジルが優しい眼差しで私を見つめていた。
ジル:貴女といる時の私は、スパイでも判事でもない
ジル:貴女に想いを寄せている、ただの男です
その言葉に、大きく鼓動が跳ねる。

(今、想いを寄せているって…)

信じられない気持ちで見つめていると、ジルがふっと口元を緩めた。
ジル:それに、今頃この家を見張っている私の仲間が、
ジル:あの男から文書を取り返しているはずです
吉琳:じゃあ…情報は無事なんですか?
ジル:ええ。安心してください

(よかった…)

ほっとため息をつくと、
ジルの指先が、慈しむように私の頬を撫でた。
ジル:…ですが、たとえ本当に情報が盗まれることになっていたとしても、
ジル:後悔はしません
ジル:貴女よりも大切なものなどありませんから
吉琳:え…っ
不意打ちで告げられた甘い言葉に目を丸くすると、
ジルが真剣な声で続ける。
ジル:最初は恩人の頼みだからと、義務感で見守っていましたが…
ジル:いつの間にか、ただ側に居たいと願うようになっていました
ジル:…貴女を、愛してしまったんです
吉琳:ジル…
嬉しさで胸が熱くなり、涙が滲みそうになる。

(夢みたい…)
(ジルに、こんな風に気持ちを打ち明けてもらえるなんて…)

声を詰まらせながら、私も、これまで秘めていた想いを口にした。
吉琳:私も…ジルの、側にいたいです
吉琳:ジルを、愛しているから…
ジル:吉琳…
高鳴る鼓動を聞きながら、ジルの瞳を見返すと…―
切なげな声が、私を呼んだ。
ジル:本当に、いいんですか?
ジル:私はスパイで…これから先も、それは変わらない
吉琳:…構いません。ジルの職業が、スパイでも、判事でも
吉琳:私が好きなのは…今ここに居る、ジルだけです
私は微笑んで、首に下げていたチェーンを外した。
吉琳:この鍵、ずっと渡したいと思っていました
吉琳:ジルはもう、裏切らないと言ってくれたから…一生、信じ続けます

(この選択は、きっと間違ってない)
(私の愛する人は…それだけ、誠実な人だから)

ジルは私の手から鍵を受け取ると、それをぎゅっと握り締める。
ジル:…貴女には、やはり敵いません
吉琳:え…?
ジル:その真っ直ぐな心に触れていると、
ジル:私まで、正直でいなければと思わされます
ジル:…貴女が、私に、忘れかけていた生き方を思い出させてくれたんです
鍵をポケットにしまうと、ジルは、そっと私の腕を掴んだ。
そうして夢のように優しく、唇が重なる。
吉琳:っ、ん…
初めてのキスは、かすかに触れ合っただけですぐに離れて、
それから、ついばむような口づけが何度も繰り返された。
吉琳:ジル……
頭の芯から、じんと熱くなり、こぼれ落ちる吐息と一緒に名前を呼ぶと、
背中に回ったジルの腕が、ひときわ強く私を抱き締める。

(…あっ……)

もっと間近にジルの体温を感じて、鼓動が速まったその時、
耳元に、熱い唇が触れた。
ジル:…これからは、一番近くで貴女を守ります
ジル:私と、一緒になってくださいますか?


fin.

 

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第3話-スウィート(Sweet)END:

 

吉琳:…アラン?
ドアの向こうへ、そっと訊ねると…
アラン:…俺だ。開けてくれ

(アランの声だ…)

返ってきた答えにほっとして、扉を開ける。
アラン:待たせたな。他に誰か来たりしなかったか?
吉琳:ううん、誰も…

(でも…やっぱりジルはもう行ってしまったんだ)
(…それなら)

吉琳:これから、ジルにこの鍵を渡しに行きたいの
私の言葉に、アランははっとする。
アラン:…今からか?
アラン:危険すぎるだろ。鍵なら、ジルが帰ってきてからだって渡せる
吉琳:それは分かってる。でも、今が一番、ふさわしい時だと思うから…
私はある想いを胸に秘め、決意を込めてアランを見つめる。
すると、アランはため息をつきながらも、頷いてくれた。
アラン:…しょうがねえな
アラン:ジルは、裁判所の方に顔を出すって言ってた。行くぞ
吉琳:うん…!

***

そうして、私はアランと共に、ジルの仕事場である裁判所へ向かっていた。
その途中、墓地を通り抜けると、よく知った後ろ姿を見つける。

(…え? あそこにいるのは…)

私の両親のお墓に花を手向け、
お祈りをしているのは紛れもなくジルだった。
吉琳:ジルっ…
思わず呼びかけると、ジルが顔を上げ、驚いたように私を見る。
ジル:吉琳…どうしてここへ
こちらへ駆け寄ったジルは、私たちを見てぐっと眉根を寄せた。
ジル:アラン殿も…。
ジル:吉琳を家から出さないようにとお願いしたはずですが
吉琳:ごめんなさい。私が無理にお願いしたんです
アラン:…詳しいことはこいつに聞け
アランの言葉に、ジルは私へと視線を移す。
吉琳:…私、ジルに…
声をひそめて、言いかけたその時…
男:お嬢さん。少しよろしいですか?
一人の男が私たちに近づいてきて、見覚えのある箱を差し出す。
男:これは、お嬢さんが失くしたものでしょう
男は少し強引に箱を渡そうと、迫ってくる。
するとジルが庇うように、私の前に立ちはだかった。
ジル:…一体何なのですか、貴方は
男:俺はその子の両親の昔馴染みですよ
男:大切な贈り物をお嬢さんに届けるようにと頼まれているんです
男はあくまで親切そうに言うけれど、
口元にはいやらしい笑みが浮かんでいる。

(ジルが話していた通りだ…)

明らかに怪しい様子に、
昨日の夜、ジルと交わした会話が思い出された。

〝吉琳:あの…ジル…〞
〝客室に案内された私は、〞
〝部屋を出ていこうとするジルを思わず引き止めた。〞
〝ジル:どうしました?〞
〝ジル:…一人で眠るのが寂しいのでしたら、一緒に寝てさしあげますよ〞
〝吉琳:っ、そうじゃなくて…〞
〝からかうように訊ねてくるジルに頬を熱くしながら、〞
〝ずっと考えていたことを切り出す。〞
〝吉琳:さっき、〞
〝吉琳:私の無実を証明するための方法を考えていると言っていましたよね〞
〝吉琳:私にも、手伝えることはありませんか?〞

〝(元はと言えば、私の両親がきっかけのことだし、)〞
〝(ジルにばかり、負担をかけるわけにはいかないから…)〞

〝そんな一心でジルを見つめていると、その手が、私の髪を撫でる。〞
〝ジル:気持ちは、とても嬉しいです〞
〝ジル:ただ…少し荒っぽいことになるかもしれませんので〞
〝吉琳:え…?〞
〝ジル:私が犯人を捜し、捕らえます。そして、罪を自白させる〞
〝ジル:貴方に協力してもらうには、危険すぎますよ〞

〝(っ、そうかもしれないけど…)〞

〝吉琳:… 犯人は私を罠にはめようとしているんですよね〞
〝吉琳:私が囮になれば…簡単に犯人をおびき寄せられるんじゃないでしょうか?〞
〝ジル:吉琳…〞
〝一瞬の沈黙の後、すぐにジルが厳しい顔で首を横に振る。〞
〝ジル:いけません。やはり、危険すぎます〞
〝吉琳:でも、ジルだけ危険な目に遭わせるのは嫌なんです〞
〝吉琳:どうか…お願いします〞
〝ジル:………〞
〝ジルは眉を寄せ、迷うような表情で黙り込んだ。〞
〝けれど、やがて口を開いて…―〞
〝ジル:…分かりました〞
〝ジル:ではまず、箱の中身が国家機密ではないと、〞
〝ジル:スパイ達の間に情報を流しましょう〞
〝ジル:そして私の保管していた箱を、どこか目に付きやすい場所に置き、〞
〝ジル:犯人が回収するのを待ちます〞

〝(えっ…)〞

〝ジルの言葉に、思わず目を瞬かせる。〞
〝吉琳:つまり、宝石を一度返すということですか?〞
〝ジル:ええ。苦労して盗んだ宝石を、そのまま放ってはおかないはず〞
〝ジル:きっと、もう一度貴女の元に届けに来るでしょう。〞
〝ジル:そしてその時は…〞
〝ジル:誰にも邪魔をされないように直接貴女に渡しに来る可能性が高いです〞

〝(直接、私に…)〞

〝想像すると、背筋が少し寒くなった。〞

〝(両親のことを、そこまで憎んでいる人に会うのは怖いけど…)〞

〝吉琳:…それで、犯人が分かるんですよね〞
〝不安を押し殺して頷くと、そっと、ジルの手が腰に触れた。〞

〝(あっ…)〞

〝そのまま引き寄せられ、優しい温もりが私を包む。〞
〝ジル:大丈夫です。貴女のことは…私が絶対に守ります〞
〝吉琳:ジル…〞
〝耳元に落ちた真剣すぎる声に、かすかな胸騒ぎがした。〞

〝(ジルは…やっぱり、一人で解決しようとしてるのかもしれない)〞
〝(もし、ジルが無理をしようとしたら、私は…)〞

〝必ずその後を追って、手伝いに行こう。〞
〝そう、密かに心に決めていた。〞

(でも、こんなにすぐ犯人が姿を現すなんて…)

戸惑いが、胸に広がっていく。
ジルは鋭く男を見据えると、冷ややかな声で告げた。
ジル:…貴方がしたことは全て分かっていますよ
ジル:隠れているお仲間たちと一緒に、素直に罪を認めたらいかがですか?
男:っ!? 気づいていたのか…
男が悔しそうに顔を歪めると、
林の影から、武器を構えた別の男たちが姿を現した。
男:その女を捕まえろ! 宝石泥棒として王に突き出すんだ!

(あっ…)

男が仲間に指示を出し、全員で襲いかかってくる。
ジル:っ、吉琳!
ジルが私を守りながら男たちの攻撃をかわす。
アランも応戦していたけれど、明らかな人数の違いに苦戦していた。
吉琳:ジルっ、アラン…!
男の仲間1:…女を守りながらじゃ俺たちには勝てない
男の仲間2:終わりだな

(どうしよう…私のせいで…)

男たちの笑い声を聞きながら、唇を噛んだその時…―
ジル:残念ですが…終わりなのは貴方です
ジルの声を合図に、数人の男性たちがこちらへ駆けて来た。
味方のスパイ:ジル殿、後は私たちが

何!?
瞬く間に犯人たちを取り囲むと、あっという間に縄をかけてしまう。
アラン:…これで証拠は十分だな。こいつらは自警団で面倒見ておく
ジル:頼みますよ
アランが先頭になり、男の人たちと一緒に犯人を連れて行くと、
残されたのはジルと私の二人だけになった。

(びっくりした…こんなにすぐ、犯人を捕まえてしまうなんて)

吉琳:さっきの人たちは…ジルの仲間ですか?
ジル:ええ。犯人が一人とは限らなかったので
ジル:アラン殿以外にも護衛として貴女を守るように声を掛けていたんです
吉琳:っ、そうだったんですか…

(私の知らないところでも、こうして助けてくれていたんだ…)

ジルの優しさが、改めて私の心を温めていく。
ジル:捕らえた犯人たちは裁判にかけ、二度と貴女に近づけないようにします
ジル:これで、疑われることなく、宝石も国に返すことができますね
吉琳:はい。ありがとうございます…ジル
心からのお礼を伝えると、ジルはそっと微笑んだ。
ジル:いえ。貴女を守るという約束ですから

(たとえ、ただの約束だとしても…)

吉琳:私は、ジルが側にいてくれて嬉しいです
吉琳:……ジルのことが、好きだから
ジル:え…
秘めていた想いが、自然と言葉になってこぼれ落ちる。

(出会った時から、私はずっとジルの優しさに守られていた…)
(ジルは、私と同じ気持ちではないかもしれないけど…)

それでも、もうこの気持ちを止めることはできない。
高鳴る鼓動を感じながら、真っ直ぐにジルを見つめると、
いつも以上に柔らかな声で口を開き…―
ジル:…困りましたね
ジルの腕が、私を優しく抱き寄せた。

(あっ…)

ジルとの距離が縮まり、澄んだ瞳が私を覗き込む。
ジル:この想いを告げるべきかどうか、迷っていたのですが…
ジル:貴女への気持ちは隠せそうにありません

(それって…)

ジルを見つめ返すと、胸の高鳴るような甘い笑顔が向けられる。
ジル:吉琳…私も、貴女のことが好きです
ジル:最初こそ、約束を果たさなければという責任感でいましたが…
ジル:真っ直ぐで一生懸命な貴女に、自然と心惹かれていました
吉琳:っ…

(まさか、ジルも同じ気持ちでいてくれたなんて…)

吉琳:嬉しい、です…
ぽつりと言うと、ジルの瞳が、ますます優しく細められた。
しばらく、そのまま抱き合っていると、少しとがめるような声が言う。
ジル:それはそうとして…どうして、私を追って来たんですか?
ジル:アラン殿と家で待っていた方が、安全でしょう…
吉琳:っ…すみません
吉琳:ジルが一人で犯人を捕まえに行くつもりなんじゃないかと、
吉琳:心配になってしまって…
謝ると、ジルは一瞬目を瞬かせた後、小さく声をこぼして笑う。
ジル:…なるほど。そういうことですか
ジル:確かに、理由も告げず出かけてしまいましたから…不安にさせて、すみません
ジル:私はただ貴女のご両親に、相談がしたかっただけなんです

(え…?)

ジル:言ったでしょう? この想いを伝えるべきか、迷っていたと
ジル:スパイの自分がずっと貴女の側に居たいと願っていいものか…
ジル:一度、話をしておきたくて
吉琳:っ、そう、だったんですか…
両親のお墓の前では、ジルが置いた花束が風に揺れている。
その光景が、真剣な想いを伝えてくれているようだった。
ジル:貴方も、本当にいいんですか?
ジル:スパイなんて、悪い男を選んでしまって
そう言って、ジルはからかうように微笑む。
吉琳:悪い男だなんて…

(私のことを、こんなに大切にしてくれて…)
(わざわざ両親にまで相談に来てくれるような人が、悪い人なはずない)

愛しさで胸がいっぱいになって、
私は背伸びをし、一瞬だけジルの唇に唇を重ねる。
吉琳:ジルを、選ばせてください
吉琳:あなたのことが…大好きだから
ジル:…吉琳
ジル:ええ、喜んで。…きっと、後悔させません
今度はジルが身体を屈め、優しく私の唇を塞ぐ。
二度目の口づけは甘く刺激的で、
ジルの恋人として過ごす新しい毎日を予感させてくれるようだった…―


fin.

 

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エピローグEpilogue:

吉爾後

想いが通じ合った二人に訪れる、愛おしいひととき…
………
……
ジル:貴女は、私を焦らすのが上手ですね
ジル:…可愛いですよ、吉琳
深い口づけを交わした後、ジルが貴女の耳元で甘く囁いて…
ジル:私の一生をかけて、貴女を愛し続けることを誓います。…吉琳
………
……
大好きな彼がスパイから恋人へと変わる夜、
真実の愛があなたを甘く包みこむ…―

 

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    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()