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Change!Change!Change!?〜いつもと違う彼に囚われて〜(ジル)

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――…今城下で流行りの『オカシな飴』が、愛する彼を狂わせて…
性格の変わった彼に、体も心も翻弄されいく……
…………
………
ジル:こうして少し触れただけで簡単に乱せるというのに…
ジル:他の男の前でお酒を飲むなんて、何を考えているのです?
ジル:いっそ、貴女を誰も来ない場所に閉じ込めてしまいましょうか…?
…………
………
いつもと違う彼に、ドキドキが止まらない…
今までにない彼との恋物語をお楽しみに…!

 

*因為記錯結束日期,只跑完吉爾跟傑諾...幸好之前有提早存好吉爾的...

但是全白金的雙馬尾沒有拿到...虧我都個甜3萬了 (╥﹏╥)

 

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プロローグ:

 

――…のどかな空の下、王宮ではひそかに事件が起きていた…
お城の廊下を歩いていると、突然一緒にいたユーリが立ち止まる。
ユーリ:吉琳様、あれ…!
吉琳:どうしたの?
視線を辿ると、そこには壁に手をついて苦しそうな顔をしているクロードがいた。

(…っ、大変)

ユーリと顔を見合わせ、慌てて駆け寄る。
吉琳:クロード、大丈夫…?
ユーリ:ロベールさん呼んできましょうか?
クロード:いや、大丈夫だ。飴を食べたら、一瞬立ちくらみがしただけで…――
クロード:……っ

(…?)

目が合った瞬間、なぜか勢いよく顔を逸らされた。
クロード:あんまり俺を見るな。…照れるだろ
二人:……え
クロード:…っ、だから、見るなって
耳まで赤くしたクロードが素早く背中を向け、そのまま足早に去っていく。
吉琳:今のは一体…
ユーリ:…何だったんだろう
ユーリと呆然と立ち尽くしていると、後ろから足音が近づいてきた。
ルイ:…ごめん
ルイ:クロードがおかしくなったのは、俺のせいかもしれない

***

私たちを部屋に招いたルイが、袖机から飴の入った瓶を取り出す。
吉琳:これは?
ルイ:バニラの飴を買った時、おまけとしてもらったんだ
ルイ:『オカシな飴』って言う、今城下で流行ってるものらしいんだけど…
ユーリ:あっ、それ、性格が変わるって噂の飴ですよね?
吉琳:どういうこと?
ユーリ:そのまんまの意味だよ。食べた人は、いつもと違う性格になっちゃうんだ

(そんな飴があるなんて…)

ユーリ:以前も同じ効果のある飴が出回ってたんだけど
ユーリ:最近のは改良されて、持続時間が長くなったんだって
吉琳:それじゃ、クロードはしばらくあのままなの…?
ユーリ:たぶん。でも、何日かすれば自然に治ると思うよ
ユーリ:体に害があるものじゃないしね

(それなら、ひとまず安心かな)

ほっと胸をなで下ろすと、ルイが気まずそうに目を伏せる。
ルイ:…どうしよう
ルイ:さっき、君の恋人にもこの飴を渡してしまった
吉琳:え…――
ルイの部屋を出た後、私は急いで恋人のもとへ向かった…――

 

どの彼と過ごす…?

9879878484

>>>ジルを選ぶ

 

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第1話:

 

――…穏やかな風に乗って花びらが踊る午後
『オカシな飴』の話を聞いた私は、ジルのもとへ向かった。

(あれ…?)

ジルの部屋に入ると、なぜかカインとノアに出迎えられる。
ノア:吉琳だー
カイン:お前もジルに用か?
吉琳:うん。…ジルはいないの?
ノア:今ちょうどお城を出てるんだって
吉琳:そっか…

(タイミングが悪かったな)

カイン:お前もここで一緒に待つか?
吉琳:え、いいの?
ノア:さっきジルに電話したら、ここで待ってていいって言われたからだいじょーぶ
吉琳:それじゃ、お言葉に甘えて…
窓際にいた二人に歩み寄ると、ノアがさり気なく椅子を用意してくれる。
吉琳:ありがとう
ノア:どーいたしまして。…吉琳も交流会絡みの用事?
吉琳:ううん、今日は別件

(ノアの言い方だと、二人は国際交流会の用事でここに来たんだ)

数日後にお城で開かれる大規模な交流会の準備に向けて、
最近は王位継承者の三人もジルも私も、忙しい日々を送っている。
カイン:交流会絡みじゃねえなら、ただ恋人に逢いに来ただけか?
吉琳:そういうのでもないよ。実は…――
ユーリとルイから聞いた『オカシな飴』の話をすると、
二人はそれぞれ目を瞬かせた。
カイン:性格が変わる飴って…ほんとかよ
ノア:さっき電話で話した時はふつーだったけど…
ノア:帰ってきたら、豹変してるのかな
吉琳:…そうだったらどうしよう

(飴を食べてなければいいけど…)

三人で顔を見合わせると、部屋の扉が開いて……
ジル:お待たせしました
吉琳:ジル…!
帰ってきたジルの姿に声を上げると、少しだけ驚いたような顔をされた。
ジル:吉琳もいたのですね
吉琳:うん、どうしても確かめたいことがあって
ジルに近寄り、注意深く様子を伺う。

(ぱっと見た感じ、いつものジルと変わりないけど…)

吉琳:ジル…ルイからもらった飴って、もう食べちゃった?
ジル:ええ、いただきましたよ
吉琳:…っ、それじゃ、どこか変なとこはない?
ジル:ありませんが…ハワード卿の飴がどうかしましたか?
吉琳:いや…何でもないならいいんだ
ジル:…?
不思議そうな顔をしたジルから離れ、カインとノアの元に戻る。
吉琳:……二人とも、どう思う?
声を潜めて尋ねると、カインとノアが内緒話をするように私に顔を寄せた。
カイン:性格が変わるなんてデマだったんじゃねえか?
ノア:少なくとも、豹変はしてないねー
吉琳:でも、飴を食べたクロードは性格変わってたよ
ノア:それじゃ、効果が出るのに時間差があるのかも
吉琳:そうだったら、しばらく油断できないな…
息をついた時、ふいに後ろから伸びてきた手がお腹に回される。
ジル:三人で内緒話ですか?
吉琳:…っ
すぐ近くで聞こえた声に振り向くと、
ジルが不自然なほどの笑顔で私を見下ろしていた。

(…? 何だろう…)

どこか違和感のある笑顔に言葉を紡げずにいると、
代わりにカインとノアが、『オカシな飴』についてジルに明かした。
ジル:――…そのような面白い飴があるのですね
ジル:自覚症状はありませんが、どこか変わっているところはありますか?
カイン:いや、そいつにベタベタしすぎってとこ以外は正常だな
ジル:では、問題ありませんね

(…何かが引っかかるけど、言葉にできない)

ジルが私から手を離し、カインとノアに向き合う。
ジル:それより、お二人の用件を伺いましょう
吉琳:あ…それじゃ、私はそろそろ行くね

(お仕事の邪魔になる前に部屋を出ないと)

扉に向かって歩こうとすると、ジルの手が再び腰に回されて…――
ジル:どこへ行くつもりです…?
吉琳:どこって…
ジル:この後、貴女に公務はないはずです
ジル:二人の話が終わるまで、ここで待っていてください
吉琳:……っ
すっと指先が動き、腰の弱いところを軽くくすぐられる。
ジル:…いいですね?

(なんだか…頷かないと大変なことになりそう)

そう予感させるきわどい触れ方に、急いで首を縦に振った。
吉琳:わかった…ここにいるよ
ジル:物分りがよくて助かります
穏やかな笑みを浮かべたジルが、私の腰から手を離す。

(私に何か用があるだけだと思うけど…)
(一瞬、いつものジルと違うように感じたのは……気のせい?)

***

――…数分後
用事を終えたカインとノアが部屋を出て、ジルと二人きりになった。
ジル:吉琳、こちらへ
椅子に座ったジルが、とんとんと指で膝を示す。
吉琳:ジルの膝の上…?
ジル:ええ、来てください

(座ってってこと…?)

恥ずかしさを覚えながらも横向きに腰を下ろすと、
ジルの手が私のお腹と背中に回された。
吉琳:ジル、私に用があるんだよね…?
ジル:いえ、特にありませんよ
吉琳:…? それじゃ、どうして私を引き止めたの?
顔を上げると、ジルは悩ましげな表情をした。
ジル:先ほど、少し妬いてしまいましたので
ジル:貴女は私のものだと、急に確かめたくなったのですよ
吉琳:妬いたって、何のこと…?
ジル:貴女がカイン様とノア様と内緒話をしていた時のことです

(あ…)

ジル:二人と親しげに話す姿を見て、少しもどかしい気持ちになりました

(…っ、今まで、そんな風に言うことなかったのに…)

ジル:私以外の男と親しくした貴女には、お仕置きが必要ですね
ジルが私の頭に手を添えて、首筋に顔を寄せる。
抵抗する間もなく肌に唇を押し当てられ、きつく吸い上げられた。
吉琳:ん…っ、痛……
ぴりっとした甘い疼きに顔をしかめると、
痛みの中心になだめるようなキスを落とされる。
ジル:綺麗に痕がつきましたね
吉琳:……っ
顔を離して満足そうに微笑むジルに、なぜか背中がぞくりとした。
吉琳:こんなところに痕つけられたら、隠せないよ…
ジル:隠す必要はないでしょう…?
ジル:貴女は私のものだと見せつけるためにつけたのですから
吉琳:っ…いつもはそんなことしないくせに…
ジル:お仕置きですから
親指で首筋の痕を撫でられ、心臓が変に音を立てる。
吉琳:ジル…
視線を重ねると、艶めいた眼差しの中に仄かな暗さを感じて息を呑んだ。

(…やっぱり、変だ…)
(『オカシな飴』のせいで、何かがおかしくなってるのかな?)

言い表せない違和感にもどかしさを感じていると、
ジルが突然、私の唇に軽く噛みつく。
吉琳:ん…っ、ジル…?
ジル:私が目の前にいるというのに、考えごとですか…?
吉琳:…っ、ジルのことを考えてたんだよ
咎めるような口調にとっさに言い返すと、
ジルの表情がふっと緩んだ。
ジル:それなら許しましょう
吉琳:ん……
二度目のキスは甘やかすように優しく、微かな痛みを消していく。

(…変、だな……)

私を抱きしめる腕も、触れ合う唇もいつものジルと同じはずなのに、
感じる高鳴りは、いつもと何かが違うような気がした。

***

――…その日の夜
お城の廊下を歩いていると、ルイとすれ違った。
ルイ:吉琳、ちょうどいいところに
吉琳:どうしたの?
ルイ:これから、交流会で振る舞うワインを決めようと思うんだけど…
ルイ:よかったら、女性の意見も聞きたい

(ワインの試飲をしてほしいってことかな?)

国際交流会で振る舞われるワインは、
ルイが経営するワイン会社のものに決まったと聞いている。
吉琳:いいよ
ルイ:ありがとう。…それじゃ、俺について来て

***

テーブルに用意された数本のワインを、少量ずつ味見していく。
吉琳:こっちのワインは、口当たりがよくて飲みやすいね
ルイ:うん。ただ、度数が強いという点が心配かもしれない
ルイ:もう一つのワインはどう?
ルイが慣れた手つきで、グラスにワインを注いでいく。

(なんだか、頭がふわふわしてきたな…)

差し出されたグラスを持ち上げようとすると、ふいに後ろから手が伸びてきて……
???:いけませんよ、吉琳

 

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第2話:

 

???:いけませんよ、吉琳
吉琳:え…
グラスを取り上げられ振り向くと、そこにはジルが立っていた。

(いつの間に…)

ジルがグラスをテーブルに置き、私の顔を覗き込む。
ジル:顔が少し赤くなっています
ジル:貴女…酔っているでしょう?
吉琳:そこまで酔ってるわけじゃないよ
ジル:そこまで…ということは、少しは酔っているのですね
吉琳:それは、まあ…
ルイ:…吉琳、ごめん
割り込んできたルイの声に、はっと振り向く。
ルイ:酔ってるの、気づかなかった
吉琳:…っ、そんなひどく酔ってるわけじゃないから、大丈夫だよ
吉琳:それより…どうしてジルがここにいるの?
視線を戻すと、ジルが微かに目を伏せた。
ジル:廊下を歩いていると貴女とハワード卿の声が聞こえたので
ジル:気になって様子を見に来たのですよ

(…? ジルが気にするようなこと話してたかな)

ジル:貴女たちは…ワインの試飲をしていたのですか?
ルイ:ああ。プリンセスに交流会で出すワインの意見を求めてた
ジル:…そうでしたか
ジル:邪魔をしてしまい申し訳ありません
そう言ってルイに向ける表情は優しいのに、
私の方を向いた瞬間、ジルの瞳が険しくなる。

(な、なんで……?)

ジル:事情はわかりましたが、私のいないところでこんなに顔を赤くして…
吉琳:……っ…
ジルが私の頬に手を添えて、そっと顔を持ち上げる。
艶めいた瞳が近くなり、鼓動が激しく胸を叩き始めた。
ジル:肌も少し熱くなっていますね
吉琳:あ、の……離して

(ルイもいるのに……こんな…)

目を逸らすと、ジルの指先が首筋を滑って…――
ジル:嫌だと言ったらどうしますか?
吉琳:あっ…
肌にある甘い痕を意識させるように、髪をかき分け優しく撫でられる。

(そういえば…ジルは『オカシな飴』でおかしくなってるんだった)

普段のジルらしくない行動に肌が熱を帯びるのを感じると、
小さな咳払いが聞こえた。
ルイ:……吉琳、酔ってるなら、外で体を冷ました方がいいと思う
吉琳:……っ、ごめん、ルイ

(恥ずかしい……)

どこか気まずそうに目を伏せるルイに、ジルから離れようと胸に手をつく。
すると、ジルは拍子抜けするほどあっさりと私から手を離してくれた。
ジル:確かに…ハワード卿のおっしゃる通りですね
吉琳:え…
ジル:私もついて行きますから、夜風で体を冷ましてはいかがですか?
吉琳:でも…
まだ試飲していないワインに目を向けると、ルイが首を横に振った。
ルイ:君からは、もう十分意見をもらった
ルイ:試飲のことは気にしないで
吉琳:…ごめん、ありがとう
ルイ:ううん。…俺の方こそ、手伝ってくれてありがとう
ルイ:ジルとゆっくりして来て

***

食堂を出た後、ジルに連れられ時計台にやって来た。
吉琳:どうして、時計台…?
素直な疑問をこぼすと、前を歩いていたジルが振り向き、にこりと微笑む。
ジル:ここなら、誰も来ないからですよ
吉琳:…? 体を冷ますだけなら、人がいる場所でも…
ジル:本気でそう思っているのですか?

(ジル…?)

低い囁きとともに背中に手を回され、淡い力でなで上げられて……
吉琳:…ぁ……

(…っ、変な声出ちゃった…)

慌てて口を押さえると、ジルの瞳が悩ましげに揺らいだ。
ジル:酔った貴女は、こんなにも無防備にだというのに
ジル:他の誰かに見られていいわけがないでしょう…?
吉琳:い、今のはジルのせいで……
ジル:いつもの貴女なら、あれくらいのことで声を上げたりしませんよ
吉琳:ん…っ
ドレス越しに腰をくすぐられ、お酒のせいではない甘い熱が込み上げる。
ジル:こうして少し触れただけで簡単に乱せるというのに…
ジル:他の男の前でお酒を飲むなんて、何を考えているのです…?

(…っ…いつもは、そんな意地悪なこと言わないのに…)

吉琳:あ…っ、や……
咎めるように弱い場所ばかりを撫でられ、堪らず指先を握り込む。
吉琳:っ…ジル、怒ってる?
ジル:怒ってはいませんが…
ジル:こんな風に隙だらけな貴女から目を離すのは、心配になってきました
乱れかけた息を整えていると、柔らかな感触が耳に触れて……
ジル:いっそ、貴女を誰も来ない場所に閉じ込めてしまいましょうか…?
吉琳:――…っ、なに、言って…
恐ろしく甘い囁きに勢いよく顔を上げると、
いつもの艶やかな眼差しに、ほの暗さが潜んでいることに気づく。

(また、この目……)

強い愛情を感じる一方で、背筋がすっと冷えていく心地がした。
吉琳:…冗談、だよね?
ジル:ええ
ジル:…今は、ですが
吉琳:……っ

(これはもう…気のせいなんかじゃない)

ずっと言葉にできなかった違和感の正体に、今気づく。

(ジルは『オカシな飴』で、いつも以上に嫉妬深くなってるんだ…)

ジル:無防備な姿は、私の前でしか見せないでください
ジル:貴女は……私のものですから
吉琳:…んっ
髪をかき分けられ、あらわになった首筋に唇を強く押し当てられる。

(……痕が…)

すでにあった痕を上書きするように吸い上げられた肌は、
昼間の時よりも甘く疼いた。

***

――…翌日

(なんだか、まだ疼いてる気がする…)

昨日ジルにつけられた痕を手のひらでそっと押さえながら、
交流会のスピーチに使えそうな資料を探して本棚に目を通していく。
???:吉琳?

(…?)

途中、名前を呼ばれて振り返ると、大量の本を抱えたクロードと目が合った。
吉琳:あれ…クロードが図書館にいるの珍しいね
吉琳:その本、どうしたの?
クロード:この間、交流会に向けて王子様たちの服をいくつか新調してな
クロード:そのデザイン資料として借りてた本を返しに来たんだよ
吉琳:そうなんだ…すごくたくさんの資料を使ったんだね
吉琳:私も、本を返すの手伝うよ
バランスよく重ねられた本に手を伸ばすと、クロードの指に触れて……
クロード:……っ
吉琳:えっ…
クロードが驚いたように手を引き、本が床に散らばってしまう。
吉琳:ご、ごめん…
クロード:いや、悪いのは俺だ
クロード:…これでもだいぶ落ち着いたと思ったんだが、まだだめか

(あ、そういえば…――)

〝クロード:あんまり俺を見るな。…照れるだろ〞
〝二人:……え〞
〝クロード:…っ、だから、見るなって〞

(――…クロードも『オカシな飴』を食べて性格が変わってるんだっけ)

じっと見つめると、クロードが顔を赤くして目を逸らす。
クロード:……やめてくれ、それ以上見つめられると変になる
吉琳:そんなに照れなくてもいいのに…
珍しい様子に思わず笑みをこぼすと、クロードはますます顔を赤くした。

***

――…その頃
会議室に向かっていたジルは図書館の前で立ち止まり、
開いていた扉の隙間から中の様子を伺っていた。
ジル:……あの二人は、何をしているのでしょうか…
険しい視線の先には、楽しそうな吉琳と照れた様子のクロードがいる。
ジル:……やはり、吉琳から目を離してはいけませんね
ジル:次から次へと、心配ごとが増えていく…
どことなくほの暗い色を瞳に浮かべて、
ジルは再び会議室へと歩き出した。

***

――…数時間後

(どうかな…)

私が図書館で作ったスピーチ原稿に、ジルの真剣な目が向けられる。
ジル:……なるほど
やがてすべてを読み終えたジルは、満足そうな笑みを浮かべた。
ジル:よくできていますね。問題ないと思いますよ
吉琳:ほんと…! よかった

(これで、交流会に向けての準備は完璧かな)

返された原稿を胸に抱え、ジルと向き合う。
吉琳:ありがとう、ジル
ジル:いえ…。貴女の今日の公務はこれで終わりでしたね
吉琳:うん、後は部屋に戻るだけだよ
ジル:――…そうですか

(…?)

急に低くなった声に首を傾げると、
ジルがすっと立ち上がり、扉に向かって歩き出す。
吉琳:外に出るの?
ジル:いえ、そうではありません
にっこりと微笑んだジルが、部屋の扉に鍵をかけて…――
ジル:貴女をここから帰す気がないだけですよ

 

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第3話-プレミア(Premier)END:

 

吉琳:うん、後は部屋に戻るだけだよ
ジル:――…そうですか

(…?)

急に低くなった声に首を傾げると、
ジルがすっと立ち上がり、扉に向かって歩き出す。
吉琳:外に出るの?
ジル:いえ、そうではありません
にっこりと微笑んだジルが、部屋の扉に鍵をかけて……
ジル:貴女をここから帰す気がないだけですよ
吉琳:……!
さらりと告げられた内容に、言葉を失った。
吉琳:帰さないって、どういうこと?
ジル:貴女を、この部屋に閉じ込めてしまおうかと思いまして
吉琳:冗談……だよね?
ジル:…………

(どうして、昨日みたいに『冗談』だって言ってくれないの…?)

思わず後ずさると、とんと執務机に背中が触れる。
ジル:なぜ逃げようとするのです?
吉琳:えっと…なんとなく?

(…微笑んではいるけど、目が本気だ…)

逃げ場を失くした私を囲むように、
距離を詰めたジルが机に両手をついた。
ジル:私のことを嫌いになってしまいましたか?
吉琳:な、なんでそうなるの…?
吉琳:ジルのこと、好きだよ
ジル:では、証明してください
吉琳:証明?
ジル:貴女が、私を愛しているのだと…言葉以外の方法で教えてください
切実に何かを求めるような眼差しを向けられ、鼓動が乱れていく。

(…そんな、不安そうな顔しないでほしい…)

ジルの頬に手を添えて、きつく結ばれた唇にキスを落とすと、
もっととねだるように頭の後ろに手を差し入れられた。
吉琳:ん…っ……ジル…
ジル:…まだ足りません
頭を引き寄せられ、唇が深く重なっていく。
吉琳:…ん…っ、は……
執拗にキスを繰り返され、こぼれる吐息が熱を帯びても、
ジルはまだ足りないと奥深くまで求めてきた。

(……っ…そろそろ…限界……)

少し強めに胸を押し返すと、顔を離したジルがまた不安そうに眉を寄せる。
吉琳:ジル…何かあったの?
ジル:何かとは?
吉琳:急に私を閉じ込めたり、不安そうな顔したり…
吉琳:なんだか、変だよ

(『オカシな飴』を食べて性格が嫉妬深くなってることを差し引いても)
(ジルがここまでのことをするのには、何か理由がある気がする…)

真っ直ぐにジルを見つめると、艶やかな色の眼差しにほの暗い影が落ちた。
ジル:…昼間、図書館で貴女の姿を見かけて思ったのです
ジル:貴女は酔った時だけでなく、普段の笑顔までもが無防備なのだと…

(昼間って、もしかして…)

吉琳:私とクロードのやり取りを見てたの?
ジル:ええ。…クロードはずいぶん、貴女に照れている様子でしたね
吉琳:…っ、あれは…!
『オカシな飴』を食べているせいだと言う前に、
ジルが私の顎に手を添えて、親指で唇を塞いだ。
ジル:貴女の無防備な姿に、私と同じように惹かれる男は多いでしょう
ジル:ですが…私は貴女を、誰にも渡したくない

(……っ)

熱を帯びた声を流し込むように再び唇を塞がれ、
言葉も吐息も、すべてが荒々しく奪われてしまう。
吉琳:ん…っ、……ふ……

(違うって、言いたい…のに…っ)

目尻に涙が浮かんで、ぎゅっと手を握り込んだ時……
コンコンと、扉をノックする音が響いた。
???:ジル様、部屋にいますか?

(っ……この声、ユーリ…?)

ジル:どうしました?
ジルが唇を離し、扉に向かって少しだけ声を張り上げる。
ユーリ:吉琳様が予定の時間になっても帰って来ないので探してるんですけど…
ユーリ:ジル様の部屋にいますか?

(いけない…っ、もうそんな時間なんだ)

吉琳:ユー…――、……っ
声を上げかけた私の口を、ジルが素早く手で塞いで…――
ジル:帰さないと言ったでしょう…?
吉琳:……!
手のひらで口を覆われたまま、もう片方の手で抱き上げられ、ベッドに運ばれる。
ジル:ユーリ、少し待っていてください

(なにを、するつもり…?)

口から手を離したジルが、サイドテーブルに置かれていたタオルに手を伸ばし、
ベッドの支柱に私の両手をくくりつけていく。
吉琳:ジ、ジル……
ジル:お静かに
背筋がぞくりとするほど優しい笑みを浮かべ、
ジルは手際よく私のドレスを腰まで下ろした。
吉琳:――…っ
出かかった声は、再びジルの手で塞がれてしまう。
ジル:声を出すと、貴女のそのあられもない姿を見られてしまいますよ…?
吉琳:っ…

(そのために、こんな……)

あらわにされた胸を隠すこともできず口を閉ざすと、
ジルは満足そうな顔をして部屋を出ていった。

***

――…数分後
廊下から戻って来たジルが、ベッドの縁に腰を下ろす。
吉琳:ジル、ユーリは…?
ジル:貴女が私の部屋で眠ってしまったと伝えると、帰っていきましたよ
吉琳:…そっか

(ユーリのことは、大丈夫そう…)
(…大丈夫じゃないのは、私の方だ)

注がれるジルの視線に恥ずかしさを覚えながらも、逃げずに見つめ返す。
吉琳:あの、タオルをほどいて
ジル:どうしてですか?
吉琳:…っ、どうしてって…
ジル:こうして繋いでおけば、
ジル:貴女が他の誰かのところに行く心配はありません
ジル:無防備な姿を、私以外に見せることもないでしょう…?
吉琳:…っ、まさか、ずっと繋いでおくつもり?
ジル:ずっととは言いませんが、今のところ外す理由がありませんね

(そんな…)

ジルがシーツの上に手をつき、膨らみにそっと顔を寄せる。
吉琳:あ…っ……
柔らかな場所に痕を残すように肌を軽く噛まれ、
甘い刺激から逃れようとすると、タオルで繋がれた手が邪魔をした。
吉琳:ん…ぁ……やめて…ジル…
微かな声をこぼすけれど、
ジルはやめるどころか敏感なところにまで痕を残していく。
ジル:そのまま、私のことだけを考えていてください
ジル:他の誰でもなく、ただ私だけを…

(…っ…今のジルは、きっと妬深くなりすぎて不安になってるんだ…)
(それなら…――)

吉琳:ジル…っ……聞いて
甘い声がこぼれそうになるのをどうにか抑え、言葉を紡ぐ。
吉琳:私は、何があっても…世界で一番ジルを愛してるよ…っ……
ジル:吉琳…?
顔を上げたジルは、ひどく驚いた顔をしていた。
吉琳:他の誰でもない、ただジルだけを愛してるから…
吉琳:私を、信じて
想いを言葉に変えていくと……
ジル:……っ
ジルが突然、苦しそうに前髪をかき上げた。
吉琳:…っ、ジル、大丈夫…?
ジル:ええ…少し目眩がしただけですので
ジル:それより…
ジルが顔をしかめたまま、私を拘束するタオルを解いていく。

(あ、れ……?)

ジル:…酷いことをしましたね
ジル:申し訳ありません、吉琳
ジルの瞳からほの暗い色は消え、
代わりに後悔するような優しい色が灯っていた。

(…っ、もしかして、飴の効果が解けたの?)

目を伏せる姿に胸が苦しくなり、思わずジルの体を抱きしめる。
ジル:…吉琳?
吉琳:大丈夫だよ
吉琳:ジルがどれだけ愛してくれてるのかが伝わってきて、嬉しかったから
ふっと微笑むと、ジルが私の体を優しく抱きしめ返して…――
ジル:私も…――あんなに酷いことをしたのに…
ジル:それでも貴女に世界で一番と言われて、嬉しかったですよ

(ジル…)

心も体も穏やかな温もりに包まれ、幸せな気持ちで満たされていく。

(もう大丈夫だとは思うけど、二度とジルが不安に思わないように…)
(何があっても世界で一番大好きだって、たくさん伝えよう)

顔を上げると、先ほどとは違う優しいキスを落とされて、
甘い熱を受け止めながら、ジルの首にそっと手を回した。

***

――…それから、数日後
国際交流会の当日を迎え、この日のための特別なドレスに着替えると、
タイミングを見計らったかのようにジルが衣装部屋を訪れた。
ジル:吉琳、後ろを向いてください
吉琳:…?
突然訪れたジルの言葉に背中を向けると、首に冷たいものが触れる。

(なんだろう…?)

さり気なく横にあった鏡を覗くと、
首の周りをアメジスト色のチョーカーが飾っていることに気づいた。
吉琳:わあ、可愛い…! これ、ジルが用意してくれたの?
ジル:ええ。先日貴女に迷惑をかけてしまったお詫びです
ジル:これなら、痕がしっかり隠れるでしょう…?

(あ…)

ジルがチョーカー越しに、私の肌に薄く残った痕を軽く撫でる。
吉琳:ありがとう…
吉琳:…でも、この痕は他の人に見せつけるためにつけたんじゃなかったの?
ジル:そうですが…今はもうその必要はないでしょう?
吉琳:え…
振り向くと、ジルの柔らかい眼差しとぶつかって……
ジル:貴女は、たとえ何があったとしても私を一番に愛してくれるようですから
吉琳:っ…

(改めて言われると、少し照れるけど…)
(でも、私の気持ちがジルにちゃんと伝わってよかった)

頬を緩めると、ジルがチョーカーに指を引っ掛けて位置をずらした。
ジル:私も、何があっても貴女のことを一番に愛していますよ

(ジル…)

空気に触れた痕に、柔らかな唇が優しく触れる。
痛みの代わりに感じた甘い熱は、肌を通じて心に溶け込んでいった――


fin.

 

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第3話-スウィート(Sweet)END:

 

吉琳:うん、後は部屋に戻るだけだよ
ジル:――…そうですか

(…?)

急に低くなった声に首を傾げると、
ジルがすっと立ち上がり、扉に向かって歩き出す。
吉琳:外に出るの?
ジル:いえ、そうではありません
にっこりと微笑んだジルが、部屋の扉に鍵をかけて……
ジル:貴女をここから帰す気がないだけですよ
吉琳:……!
さらりと告げられた内容に、言葉を失った。
吉琳:帰さないって、どういうこと?
ジル:…………

(……冗談、でしょう?)

ジルの瞳がほの暗さを帯びていることに気づき、息を呑んだ時……
???:ジル、いるか?

(…っ、この声、クロード…?)

コンコンとノックの音が響き、ジルが眉を寄せた。
ジル:今取り込み中なのですが…用件はなんです?
クロード:交流会の件で相談したいことがある
ジル:……仕方ないですね

(クロードが来てくれてよかった…)

ほっと胸をなで下ろしている間に扉が開き、
中に入って来たクロードが私の姿に目を見張った。
クロード:吉琳もいたのか
吉琳:うん
吉琳:でも用事は済んだから、そろそろ部屋に帰るね

(これからお仕事の話をするみたいだし…)
(邪魔にならないよう外に出よう)

開いたままになっている扉から廊下に出ようとすると、
すかさずジルが私の肩を抱き寄せる。
吉琳:わ……、ジル?
ジル:貴女もここにいてください
ジル:…帰さないと言ったでしょう?
吉琳:…っ
クロードに聞こえない音量で囁かれた言葉には甘い重みがあって、
物理的に縛られているわけではないのに、体が動かなくなる。

(やっぱり、ジルは本気だったんだ)

肩を抱きしめる手に力を込められ、高鳴る鼓動にぎゅっと手を握ると、
そばにいたクロードが照れたように顔を逸らした。
クロード:ジル、お前…そのままの体勢で話をする気か?
ジル:ええ、そのつもりですが…
クロード:…いちゃつくなら、俺のいないところでやってくれ
ジル:…? 今日の貴方は、ずいぶんおかしな反応をしますね
吉琳:あ、それは…クロードも『オカシな飴』で性格が変わってるんだよ
ジル:性格が…?
私の言葉に、ジルが目を見張る。

(そういえば話してなかったな)

吉琳:クロードはたぶん、照れ屋になってるんだと思う
ジル:あのクロードが…照れ屋……
クロード:ジル、笑うな
ジル:すみません
声を抑えて肩を揺らすジルに、クロードが赤くなった表情を険しくする。
ジル:それにしても…
ジル:貴方が昼間吉琳に対して妙な反応をしていたのは、そのためだったのですね
吉琳:あれ、もしかして…図書館でのやり取り見てたの?
ジル:ええ、声までは聞こえませんでしたが
ジル:楽しそうに笑う貴女と照れるクロードを見かけましたよ

(そうだったんだ…気づかなかったな)

ジル:てっきり、貴女が私以外の男を誘惑したのかと思っていましたが…
吉琳:ゆ…っ
クロード:お前な、妙なことを言うな
ジル:それは失礼しました

(私、ジルにとんでもない勘違いをされてたんだ…)
(もしかして、急に閉じ込めるって言い出したのもそのせい…?)

誤解が解けてほっと息をつくと、
遠くから時間を告げる鐘の音が聞こえてきて…――
二人:……っ
二人が突然、苦しそうに顔を歪めた。
吉琳:だ、大丈夫…?
ジル:ええ…少し、目眩がしただけです
クロード:奇遇だな、俺もだ
吉琳:ロベールさん呼んで来た方がいい?

(何かがあったら大変だし…)

部屋を出ようとすると、近くにいたクロードが私の手を掴む。
クロード:そこまでひどい目眩じゃない
ジル:心配してくださってありがとうございます
吉琳:二人が大丈夫ならいいんだけど…

(……あれ?)

掴まれた手に視線を落として、ふと気づく。
吉琳:クロード…私に触れても大丈夫なの?
クロード:ん? ああ、平気みたいだ
指先が触れるだけで顔を赤くしていたクロードの面影は、綺麗さっぱり消えている。

(もしかして…)

吉琳:飴の効果が…消えた?
クロード:…かもしれないな
ジル:私も、貴女を閉じ込めてしまいたいと思う衝動が消えたような…
クロード:なんだ、その物騒な衝動は
吉琳:と、とにかく…ジルもクロードも元に戻ってよかった

(嫉妬深いジルも、照れ屋なクロードも新鮮だったけど…)

吉琳:二人はやっぱり、いつも通りが一番だと思う
しみじみと感じたことをそのまま口にすると、
クロードは肩をすくめ、ジルは優しく微笑んだ。
ジル:そうですね
ジル:…本当に、貴女に酷いことをする前に正気に戻ってよかったです
吉琳:…?

(最後、なんて言ったんだろう)

ジルの言葉が聞こえず首を傾げると、何でもないと笑顔でごまかされた。

***

――…数日後の夜
国際交流会の当日を迎え、大勢の国賓の中でスピーチを披露した後、
ホールの片隅でひそかに休んでいると、ジルがやって来た。
ジル:吉琳、お疲れ様でした
ジル:貴女のスピーチ…とてもよかったですよ
吉琳:ほんと?
ジル:ええ。今回は報道機関の方々も多く招いていましたので
ジル:明日には、国内に貴女を褒める報道が流れていると思います
吉琳:ジルにそう言ってもらえると安心した

(一生懸命、準備して練習したかいがあったな)

緊張でこわばっていた体が緩んでいくのを感じた時、
給仕のメイドさんが私のもとにやって来た。
メイド:プリンセス、ワインはいかがですか?

(あ、ルイの会社のワインかな?)

吉琳:ありがとう。いただきます
差し出されたワイングラスを受け取ると、ふいに数日前の記憶が脳裏を掠める。

〝ジル:こうして少し触れただけで簡単に乱せるというのに…〞
〝ジル:他の男の前でお酒を飲むなんて、何を考えているのです…?〞

(――…思わず受け取っちゃったけど…飲んでいいのかな?)

さり気なくジルの様子を伺うと、不思議そうな顔をされた。
ジル:吉琳、飲まないのですか?
吉琳:飲んでもいいの?
ジル:ええ、もちろんですよ
ジル:挨拶も終えられていますし、適度な量でしたら問題ありません
そう言い切るジルの瞳に以前のようなほの暗さはなく、こっそりと胸をなで下ろす。

(飲んじゃいけないって言うのは『オカシな飴』の影響を受けた言葉だったんだな)

吉琳:それじゃ、いただきます
ワイングラスに口をつけると、
視界の端でジルがすっと目を細めた気がした。

***

――…それから、1時間後
交流会が終わって、ジルに部屋まで送ってもらった。
吉琳:ジル、ありがとう
ジル:いえ…

(ワインを飲んだからかな…)
(少しだけ、ふわふわする)

妙に心地いい気分でジルと向き合うと、ふいに指で顎をすくわれて…――
ジル:――…酔った貴女は、やはり無防備ですね
吉琳:ん…
唇に、軽く諌(いさ)めるようなキスを落とされる。
吉琳:ジル…?
突然のキスに目を瞬かせると、
ジルの指がお酒のせいで火照った耳をくすぐり始めた。
吉琳:ぁ…っ……そこ、やめて…
ジル:…お酒を飲むと、貴女はこのようにいつも以上に敏感になる
ジル:二人きりの時はいいですが、人前の時は十分警戒してください
吉琳:…っ…それなら、どうしてさっきはワインを飲んでもいいって言ったの?
咎めるような声音にむっとして言い返すと、
ジルが優しく目を和らげる。
ジル:私がそばにいたからですよ
吉琳:え…
ジル:貴女が無防備になったとしても、そばにいれば守れるでしょう?
吉琳:…っ

(そういえば、お酒を飲んでから誰とも話してないような…)

偶然にしては出来すぎている事実に気づいた瞬間、
ジルが耳から、首筋に薄く残った痕へと指を滑らせた。
ジル:あの飴を食べて気づいたのですが
ジル:私はどうやら、貴女に対しては心配症のようです
吉琳:ジル…
ジル:貴女をどこかへ閉じ込めようとは思いませんが…
ジル:それでも十分、気をつけてくださいね…?
吉琳:――…っ、うん
強い愛情を感じる言葉にただ頷き返すと、
ジルが優しく微笑んで、熱を持った唇にキスを刻んでいく。

(どんな形で愛されても…)
(きっとジルに惹かれるこの想いは変わらないんだろうな…)

胸の甘い高鳴りに耳を傾けながら、
ジルが注いでくれる深い愛情を、全身で受け止めていった…――

 

fin.

 

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エピローグEpilogue:

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――…『オカシな飴』の効果が解けたその後
元に戻った彼との甘い時間が、彼目線で紡がれていく…
ジル:私があれほど、人前で無防備な姿を見せるのはやめてくださいと言ったのに
ジル:それでも言うことを聞いてくださらなかった貴女へのお仕置きです
(恋人の可愛くて無防備な顔を他の男に見られたらと思うと…)
(『オカシな飴』を食べていない私でも、気が気ではありませんからね)
きわどい場所まであらわになった太ももを、痕が残るくらいきつく吸い上げて…――
ジル:…貴女のこのような姿を見ていいのは、私だけです
『オカシな飴』がもたらした甘い時間は、まだ終わらない…

 

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