日版王宮 劇情活動-Melody of Love~彼が奏でる

Melody of Love~彼が奏でる愛の音色~(ジル)
2019/02/27~2019/03/11
日版王宮 劇情活動-Melody of Love~彼が奏でる

とある演奏会に出演することになった彼。
普段はあまり見られない、楽器を弾く彼の姿に、あなたは引き込まれ…―
……
ジル 「私が代役を務めましょうか?」
ジル 「何より……プリンセスも、とても楽しみにしていらしたでしょう?」
……
彼の奏でる愛の調べは、甘く心に響いていく…―

 

 

日版王宮 劇情活動-Melody of Love~彼が奏でる

 

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日版王宮 劇情活動-Melody of Love~彼が奏でる

 

プロローグ:

日版王宮 劇情活動-Melody of Love~彼が奏でる

柔らかな日差しが降り注ぐ、ある日の午後…―
かねてより交流がある、隣国のご婦人から演奏会に招待された私は、
素晴らしい音楽の数々を鑑賞し、満ち足りた気分でお城に戻ってきた。
ユーリ 「お帰りなさい。疲れたでしょ?」
ユーリ 「今、紅茶を淹れるから、一息ついて」
吉琳 「ありがとう」
ユーリ 「演奏会、楽しかった?」
ティーセットを用意しながら訊ねてきたユーリに頷くと、
屈託の無い笑顔が返ってくる。
ユーリ 「……そういえば、」
ユーリ 「ウィスタリアでも近いうちに演奏会があるんだって」
吉琳 「そうなの? 知らなかった」
ユーリ 「正式に決まれば、吉琳様にも話がいくと思うよ。」
ユーリ 「……そうそう、」
アールグレイを注いだカップをテーブルに置いたユーリが、
何かを思い出したように言った。
ユーリ 「詳しいことは聞かされてないんだけど、」
ユーリ 「今回の演奏会に、あの人も関わることになるかもよ」

(あの人って……彼のことだよね)

いたずらっぽい目をして、ユーリが私を見つめる。
ユーリ 「そうなったら、きっと吉琳様のためにも演奏してくれるよ!」
ユーリ 「楽しみだね」
自然と彼の顔を思い浮かべてしまい、頬がだんだん熱を持っていく。
赤くなっているはずの顔を隠したくて、
香り立つカップに慌てて口をつけた。
ユーリ 「近隣諸国との交流を目的とした規模の大きなものだけじゃなくて、」
ユーリ 「城下の人たちが楽しめる演奏会を……」
ユーリ 「って話も出てるみたい」
吉琳 「そうなんだ。」
吉琳 「どちらも、たくさんの人たちに喜んでもらいたいね」
音楽で溢れる街と嬉しそうな人々の様子を想像して、
演奏会のために私ができることはないかと考えていると、
再び彼の顔が浮かんでくる。

(ユーリが言っていた通りに事が運んで、)
(彼と一緒に何かできたらいいのに)
(……なんて思うのは、わがままかな?)

私はそんなことを考えながら、
大好きな人の笑顔を琥珀色の水面に描くのだった…―


どの彼と物語を過ごす?
>>>ジルを選ぶ

 

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第1話:


よく晴れた空に浮かぶ雲が、穏やかに流れる午後…―
私は執務室で公務を進める中、
隣国の婦人から届いた手紙に目を通していた。

(この前ご招待された演奏会は本当に素敵だったな)
(ウィスタリアで催される演奏会は、どういうものだろう……?)

ユーリに教えて貰った話に想像を膨らませながら、手紙の返事を書き終えた時、
ノック音と共に扉が開かれ、穏やかな声が聞こえる。
ジル 「失礼致します。少しお時間よろしいでしょうか?」
吉琳 「はい。ちょうど一区切りついたところなので、大丈夫です」
確認を終えた書類の束を、机の横にある棚に収めると、
ジルは、これからの公務の予定を伝えてくれた。
ジル 「……私からは以上です。何かご質問は?」
にこやかに訊ねられ、ふと思い出す。

(ジルならあのことも、詳しく知っているかもしれない)

吉琳 「ひとつ教えて欲しいことがあるのですが……」
ジル 「ええ。何でしょう?」


=====


ジル 「ええ。何でしょう?」
ウィスタリアで催される演奏会のことを訊ねると、ジルはどこか楽しげに答えた。
ジル 「……もう知っていらしたのですね。教えたのは、ユーリでしょうか?」
吉琳 「はい。隣国の演奏会が素敵だったので、つい気になってしまって……」
ジル 「構いませんよ。貴女には、先にお伝えしておくべきでしたね」
ジル 「演奏会は、隣国の楽団がウィスタリアにやってきて、」
ジル 「教会前の広場で催される予定です」

(演奏会をするなら、)
(コンサートホールの方がいいような気がするけれど……)

吉琳 「どうして、教会前の広場で催すことになったのですか?」
ジル 「陛下の計らいですよ」
普段は宮廷音楽に触れる機会のない、
庶民の人々にも楽しんで欲しいという考えらしい。

(城下の人たちも、きっと喜んでくれるだろうな)

ジル 「楽団は明日ウィスタリアにやって来て、」
ジル 「本番までは城で練習を行う予定です」
吉琳 「そうだったのですね」

(公務の合間にでも、練習の様子を見せて貰えるかもしれない)

胸を弾ませていると、ジルがわずかに近づいてきて…―
ジル 「心躍らせる貴女の姿は、とても愛らしいのですが……」


=====


ジル 「心躍らせる貴女の姿は、とても愛らしいのですが……」
ジル 「まずは、目の前の公務に集中してくださいね」
吉琳 「ご、ごめんなさい」
ほんの少したしなめるように言われ、手元の書類に視線を落とすと、
ジルは悪戯めいた笑みを浮かべて、私の顎をすくい上げた。
ジル 「それとも……」
ジル 「お仕置きが欲しくて、わざとそうされているのでしょうか?」
吉琳 「……ジ、ジルっ」
囁かれた甘い声の響きに、鼓動が小さく波打つ。

(からかわれているだけだって、分かっているけれど)
(こういうふうにされたら、どきどきしてしまって……)

顔が熱くなり動けずにいると、顎を持ち上げていた指は、すぐに離された。
ジル 「冗談ですよ」
ジル 「明日の公務は、それほど時間がかかりませんから」
ジル 「楽団が練習する様子を、見に行く時間も取れそうです」

(ジルは私の考えていることを、何でもお見通しだな……)

微笑んで頷くと、ジルはにこやかに執務室を後にした。

***

その日の夜…―
公務を全て終えた私は、
部屋で寝支度を整えながら、あることを思い出す。

(そう言えば……)


=====


(そう言えば……)
(ジルも、ピアノがとても上手だけれど)
(最近は演奏していないようだから、またいつか聴かせて欲しいな……)

私はジルがピアノを弾く姿を思い浮かべながら、そっと目蓋を閉じた。

***

翌日…―
私はジルと一緒に、楽団の人たちが集まるホールへ挨拶に向かう。
吉琳 「ウィスタリアへようこそ。」
吉琳 「素敵な演奏を楽しみにしていますね」
ジル 「お困りの事があれば、何なりと仰ってください」
楽団員 「……ありがとうございます。」
楽団員 「ご期待に応えられるよう、頑張ります」

(あれ……?)

楽団の人たちも笑顔を見せてくれたものの、
その表情がどことなくぎこちないような気がする。
ジルと視線を交わすと、同じように感じたようで、
楽団の人たちへ向けて訊ねてくれた。
ジル 「どうかされたのですか?」
指揮者 「実は……」
指揮者は申し訳なさそうに、
ピアノ奏者が体調を崩し、演奏会に出られなくなったと話す。
指揮者 「ピアノが主旋律の曲を多く用意していたので、」
指揮者 「今から何曲も変更するのは難しく……」

(ピアノであれば私も少しは弾けるし、)
(もしかしたら代わりが出来るかもしれない)

名乗りを上げようと考えたその時、凛とした声が響き…―


=====


指揮者は申し訳なさそうに、
ピアノ奏者が体調を崩し、演奏会に出られなくなったと話す。
指揮者 「ピアノが主旋律の曲を多く用意していたので、」
指揮者 「今から何曲も変更するのは難しく……」

(ピアノであれば私も少しは弾けるし、)
(もしかしたら代わりが出来るかもしれない)

名乗りを上げようと考えたその時、凛とした声が響き……
ジル 「私が代役を務めましょうか?」

(え……)

にこやかに告げられた言葉に驚いていると、ジルは優しく微笑んだ。
ジル 「貴女にはプリンセスとしての公務がありますから、無理はしないでください」
吉琳 「でも……ジルの公務に差し障りがありませんか?」
ジル 「私の公務でしたら、ご心配なく」
ジルは一通りの曲は弾けるので、練習に多くの時間を割かれる事はないと答える。
ジル 「陛下が希望された演奏会です」
ジル 「私でお役に立てることなら、」
ジル 「何でもお手伝いをさせて頂きたいと考えていました」
ジル 「何より……」
ジル 「プリンセスも、とても楽しみにしていらしたでしょう?」
穏やかな眼差しで続けられた言葉に、胸が温かくなる。

(やっぱり、ジルは私の考えていることを、)
(何でもお見通しなんだな……)

ジルと私のやり取りを聞いていた指揮者が、ためらいがちに口を開く。
指揮者 「本当に……ジル様が弾いてくださるのですか?」
ジル 「ええ。私でよろしければ、是非」

 

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第2話:

 

ジル 「ええ。私でよろしければ、是非」
指揮者 「ありがとうございます!」
指揮者 「それでは早速ですが、一曲合わせていただけますか?」
ジル 「この曲ですね……分かりました」
ジルがピアノの前に移動し、それを合図に演奏が始まる。
譜面を見ながら、ジルは長い指先で軽やかに旋律を奏でていった。

(素敵……初めて演奏を合わせるとは思えないな)

久々に耳にした、ジルの美しいピアノの旋律に聞き惚れていると、
あっという間に曲は終わりを迎える。
指揮者 「……これなら、予定していた曲のままで問題なさそうです!」
ジルの腕前に楽団の人たちも感嘆のため息をこぼし、
ホールは明るい雰囲気に包まれた。
ジル 「では他の曲も含め、一通り演奏してみましょう」
指揮者 「はい、次は……」
そうして再開した演奏を聞き、私はあることを思い付いた。

(あっ、この曲なら……)

***

全ての曲合わせを終え、ジルと私は廊下を進む。
ジル 「これで、問題なく当日が迎えられそうですね」

(ジルが認めてくれるかどうかは、分からないけれど……)
(話してみよう)

にこやかに話すジルの隣を歩きながら、私は口を開いた。
吉琳 「あの……ジルにお願いしたいことがあるんです」
ジル 「なんでしょう?」


=====


吉琳 「あの……ジルにお願いしたいことがあるんです」
ジル 「なんでしょう?」
吉琳 「……私と連弾をして貰えないでしょうか」

(予定されている演奏の中で、)
(一曲だけ連弾でも演奏出来るものがあったから……)

思い切って提案すると、ジルは思案するような表情で、私を見つめた。
ジル 「……何か考えているとは思っていましたが、そういうことでしたか」
少し困ったような瞳には、私を心配する想いが滲んでいる。

(やっぱり、)
(一緒に弾いてもらうのは難しいかな……それでも)

吉琳 「私を気遣ってくれるジルの気持ちは、とても嬉しかったのですが……」
吉琳 「私も、陛下と街の人たちのために何かさせて欲しいんです」
ジル 「……」
吉琳 「駄目……でしょうか?」
気持ちを伝えながら、真っ直ぐにジルを見つめていると…―
ジル 「……貴女らしいですね」
ジルは苦笑交じりの呟きを落とし、穏やかに瞳を細めた。
ジル 「公務に支障のない範囲で、一緒に頑張りましょう」
吉琳 「はい!」

(私もしっかり練習しよう)

ジルと笑みを交わし、それぞれの公務へ向かった。

***

翌日の午後…―
ジル 「それでは、レッスンを始めましょう」
楽団員も私が演奏会に参加することを快諾してくれたものの、
今日の曲合わせで上手く弾けなかった部分は、
ジルが教えてくれることになった。
吉琳 「はい。よろしくお願いします」
ジルは私の隣に腰を下ろし、譜面をめくる。
楽譜に意識を向けた途端、指先が柔らかな温もりに包まれて…―

(あ……)

ジル 「連弾は、互いの呼吸を合わせることが何より大切ですから」


=====


ジルは私の隣に腰を下ろし、譜面をめくる。
楽譜に意識を向けた途端、指先が柔らかな温もりに包まれて…―

(あ……)

ジル 「連弾は、互いの呼吸を合わせることが何より大切ですから」
少し視線を下げると、ジルの手が私の手に重ねられていた。
ジル 「まずは、腕の力を抜いてください」
ジル 「効率のいい指の運び方を、お教えしましょう」
吉琳 「はい……」
触れ合う温もりに鼓動を速めながら、言われた通りに指を運ぶ。
ジル 「ここは手首が固まっていると弾きづらいので、
ジル 「柔らかく、強弱をつけるように弾いてください」
吉琳 「……こんな感じでしょうか?」
ジル 「ええ。お上手ですよ」
ジルのもう片方の手が、私の腰を引き寄せる。
後ろから抱きしめるような体勢でレッスンしてもらっていると、
ますます鼓動が速まった。

(こんなふうに教えられたら、どきどきしてしまって……)

ジル 「第二小節は、右手の運びをこのように……」
ジルはそれを見透かしたように、
どこか楽しげに囁いて、私の指先を鍵盤に促した。

***

胸を高鳴らせたまま、レッスンを続け、夕暮れが近づいた頃…―
ジル 「今日はこのくらいにしておきましょうか」
吉琳 「はい。ありがとうございました」
練習を終え片付けをする中、
ふとピアノの側に置いてある楽譜に目が留まり…―


=====


練習を終え片付けをする中、
ふとピアノの側に置いてある楽譜に目が留まり……

(難しそうな譜面……私には弾けそうにないな)

ジル 「その曲が気になるのですか?」
吉琳 「はい。でも、譜面に曲名が書いていないんです」
ジル 「少し、見せていただけますか? ……ああ、これは」
私の手ある譜面に目を通したジルが、曲名を教えてくれる。
吉琳 「その曲名……隣国の演奏会で聴いた曲です!」

(こんなに難しい曲だったなんて……)

ピアノの美しい独奏が思い出され、
心の声が微かな呟きになってこぼれ落ちた。
吉琳 「またいつか聴いてみたいな……」
ジル 「……」
少しの間その譜面を眺めていると、ジルがふっと瞳を細める。
それから扉に手をかけて、私を振り返った。
ジル 「そろそろ公務へ戻りましょう」
吉琳 「あ、はい!」

***

そして、演奏会の前日…―
私はジルに伴われ、会場の確認をするために、教会前の広場を訪れていた。
ジル 「緊張していますか?」
吉琳 「はい。少し……」

(強がりを言っても、きっとジルには見透かされてしまうから……)

正直に答えると、ジルは瞳を細めて少し離れた場所を示した。
ジル 「あちらを見てください」


=====


ジル 「あちらを見てください」
視線の先を追うと、城下の子どもたちが、
準備が進む様子を、わくわくした顔で眺めていた。
嬉しそうなその表情を見ているだけで、自然と心が綻ぶ。
吉琳 「子どもたちも、凄く楽しみにしているみたいですね」
ジル 「ええ。そのようです」

(演奏……頑張らないとな)

微笑ましい気持ちで眺める中、
指揮者がやって来て、ジルに声をかけた。
指揮者 「ジル様、明日の演奏会のことで少しご相談が……」
ジル 「構いませんよ。何か問題でもありましたか?」
指揮者 「それが……」

(曲順の一部が変更になったんだ)

ジルと指揮者の会話を耳にしながら、
子供たちが遊ぶ姿を眺めていると、
子どもたちの側に立て掛けてある大きな楽器が、
ぐらりと傾くのが見えて…―

(危ない……!)

慌てて駆け寄り、何とか楽器が倒れる前に押さえる。
吉琳 「どこか痛いところはない?」
男の子 「う、うん…ありがとう。プリンセスは?」
吉琳 「私も平気だよ」
驚いた顔をしているものの、
怪我をしている子はいない様子でほっとする。

(無事で、本当によかった…)

胸を撫で下ろしていると、駆け寄ってくる足音が聞こえた。
ジル 「プリンセス、大丈夫ですか?」
振り返って笑顔を向けようとした途端、手に微かな痛みを感じて…―

 

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第3話-プレミア(Premier)END:

 

ジル 「プリンセス、大丈夫ですか?」
振り返って笑顔を向けようとした途端、手に微かな痛みを感じて……

(少し……ぶつけてしまったかな)

吉琳 「はい、大丈夫です。お騒がせしてすみません」
ジル 「……危険に気付けず、申し訳ありません」
吉琳 「いえ、そんな……咄嗟の事でしたから」
子供たちに笑顔を向けて、その場を離れると、
ジルは私を広場の片隅にある井戸へ連れて行き、手を冷やしてくれた。
ジル 「まだ痛みますか?」
吉琳 「少し違和感がある程度なので、平気ですよ」

(これぐらいなら、明日の演奏は問題ないはず……)

そう伝えたものの、ジルの表情は明るくならない。
ジル 「無理は禁物です。明日の演奏会の連弾は中止しましょう」
吉琳 「迷惑をかけてしまうかもしれませんが……」
吉琳 「予定通り、演奏させて貰えませんか?」
伺うように視線を上げると、ジルは思案するような表情で続ける。
ジル 「責任感の強い貴女の事です。
ジル 「皆の期待に応えようという考えでしょうが……」

(ジルが心配してくれるのは、とても嬉しいけれど)

私は小さく首を振り、笑顔を向けた。
吉琳 「いいえ。私自身が、城下の人たちのために演奏したいんです」
吉琳 「我儘を言ってしまって、ごめんなさい。」
吉琳 「駄目……でしょうか?」


=====


吉琳 「我儘を言ってしまって、ごめんなさい。」
吉琳 「駄目……でしょうか?」
気持ちを込めながら、真っ直ぐに見つめると、
ジルは微かに苦笑し、その表情を緩める。
ジル 「……わかりました」
ジル 「演奏が危うくなれば、」
ジル 「私が必ずカバーしますのでご安心ください」

(そう言ってもらえると、本当に心強いな……)

吉琳 「ジル、ありがとう」
お礼を言って笑みを返し、私たちは城へ戻った。

***

迎えた翌日…―
良く晴れた空の下、
教会前の広場は演奏会を見に来た人々で溢れていた。
吉琳 「いよいよですね……」
ジル 「手は痛みませんか?」
吉琳 「はい。もう大丈夫です」

(でも……)
(たくさんの人たちの前で演奏することには慣れていないから、)
(やっぱり緊張してしまう)

気持ちを落ち着かせるために、
深呼吸していると、指先が柔らかな温もりに包まれる。
吉琳 「あ……」
ジル 「お静かに」
耳もとに落とされた囁きに顔を上げると、
ほんの少しだけ、意地悪な笑みに見下ろされて…―


=====


吉琳 「あ……」
ジル 「お静かに」
耳もとに落とされた囁きに顔を上げると、
ほんの少しだけ、意地悪な笑みに見下ろされて……
吉琳 「っ、ジル……」
ジル 「どうされました?」

(誰かに見られたら……)

慌てて周囲に視線を巡らせたものの、幸い近くに人影はない。
ジルはふっと瞳を細め、優しく指先を絡めてから、ゆっくり手を離した。
ジル 「少しは、気持ちもほぐれましたか?」

(私が緊張していることに、気づいていたんだ)
(でも今度は、別の意味でどきどきしてしまって……)

頬が熱くなるのを感じつつも、先ほどより心は落ち着いている。
吉琳 「……はい。ありがとうございます」
ジル 「それでは、参りましょう」
私は微笑んで頷き、ジルと一緒にピアノが用意されている場所へ向かった。

***

ピアノの前で挨拶をすると、会場から盛大な拍手が上がる。

(こんなにたくさんの人たちが、楽しみにしてくれていたんだ)

ジル 「準備はよろしいでしょうか?」
吉琳 「いつでも大丈夫です」
並んで腰を下ろし、腕の力を抜いて鍵盤に触れた。
視線を交わし演奏を始めると、ジルのレッスンが思い出される。

(そういえば……)


=====


(そういえば……)

*****
ジル 「連弾は、互いの呼吸を合わせることが何より大切ですから」
*****

(ジルが上手くリードしてくれるから、)
(自然と指が運べている気がする)

奏でられる美しい音色に合わせて、演奏を続け、曲も終盤に差し掛かった頃、
わずかに走った痛みで、指が上手く運べなくなり……
吉琳 「……っ」
ジル 「……」
音が飛んでしまった部分を、ジルが分からないように弾いてくれた。

*****
ジル 「演奏が危うくなれば、」
ジル 「私が必ずカバーしますのでご安心ください」
*****

(どんな時でも、ジルが側に居てくれたら安心だな……)

演奏を終え、ジルに手を取られてお辞儀をすると、大きな拍手が起こる。
城下の人たちから送られる感動の声に、私の胸も喜びで満たされた。

(楽しんでくれたようで、本当に良かった)

吉琳 「ジルのおかげです。本当にありがとうございました」
微笑んで見上げると、ジルは意味ありげに瞳を細めて…―
ジル 「お礼でしたら……」


=====


(楽しんでくれたようで、本当に良かった)

吉琳 「ジルのおかげです。本当にありがとうございました」
微笑んで見上げると、ジルは意味ありげに瞳を細めて……
ジル 「お礼でしたら……」
ジル 「また今度、二人きりの時に貰いますよ」
吉琳 「……っ」
私だけが分かるように向けられた甘さを滲ませた眼差しに、小さく鼓動が跳ねる。
演奏会は、城下の人たちの温かな拍手に包まれ幕を下ろした。

***

演奏会から数日が過ぎた、ある日の夕暮れ…―
ジル 「こちらへおかけください」

(演奏会は終わったけれど、何かあるのかな?)

不思議に思って訊ねると、ジルはふっと笑みを浮かべる。
ジル 「これは、演奏会を頑張った貴女へのご褒美です」
そう言ってジルが奏で始めた美しい旋律に、私は目を瞬かせた。

*****
ジル 「その曲が気になるのですか?」
私の手ある譜面に目を通したジルが、曲名を教えてくれる。
吉琳 「その曲名……隣国の演奏会で聴いた曲です!」
*****

(あの時『またいつか聴きたい』って言ったのは、)
(ひとり言のつもりだったけれど、…)
(まさかジルが弾いてくれるなんて……)

優雅な音色に聴き惚れていると、やがて演奏は止んだ。
ジル 「いかがでしたか?」
吉琳 「隣国の演奏会で聴いたものよりずっと……ずっと素敵でした」
吉琳 「ありがとう、ジル」
拍手をして、少しはにかみつつも感想を伝える中、
ジルは柔らかく表情を緩め、こちらへ向かってくる。
ジル 「あまり嬉しいことを言われては、困りますね」
ふいにジルの顔が近付いて、そっと唇が触れ合った。
吉琳 「ん……っ」
唇から伝わる温もりに、段々と鼓動が速くなっていく。
深まるキスに呼吸が乱れ、
微かに離した唇の隙間に、もう一度吐息が触れて…―
ジル 「お礼は……今度二人きりの時にと言ったはずです」
ジル 「貴女からのご褒美を、期待していますよ」


fin.

 

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第3話-スウィート(Sweet)END:

 

ジル 「プリンセス、大丈夫ですか?」
振り返って笑顔を向けようとした途端、手に微かな痛みを感じて……
吉琳 「……っ」
私は鈍い痛みが走った手首を押さえ、思わず眉を寄せた。

(さっきは夢中だったから、気にならなかったけれど……)

男の子 「プリンセス……手、いたいの?」

(いけない……子どもたちにまで不安させてしまう)

ハッとして、私は徐々に酷くなっていく痛みを堪え、笑顔を見せる。
吉琳 「……大丈夫だから、心配しないでね」
男の子 「うん」
ジル 「……プリンセス、こちらへ」
子どもたちへ笑顔を向けてから、差し伸べられたジルの手を取り、その場を後にした。

***

ジルは私をひと気のない場所に連れて行き、ベンチに座るよう促した。
ジル 「手を見せてください」
ためらいつつも、言われた通りにすると、
ジルは注意深く私の手首に触れながら、心配そうに眉を寄せる。
ジル 「……やはり、捻挫をしているようですね」
ジル 「私が側に付いていながら……申し訳ありませんでした」


=====


ジル 「私が側に付いていながら……申し訳ありませんでした」
吉琳 「そんなこと……私の不注意で、ジルのせいではありません」
吉琳 「少し腫れているけれど、明日には引いているかもしれませんし」
希望を持ってそう伝えたけれど、ジルは表情を緩めなかった。
ジル 「……まずは医師の診察を受けてください。」
ジル 「話はそれからに致しましょう」

***

診療所で手当てを受けてから城に戻った後、ジルが楽団の人たちへ向けて告げた。
ジル 「……プリンセスの怪我は、大事に至るものではありません」
ジル 「ただ明日の演奏会の連弾は、見送らせた方がいいとの事でした」
吉琳 「連弾をさせていただきたいと言ったのは私なのに……」
吉琳 「本当にすみません」
申し訳ない気持ちで一杯になる中、
事情を聞いた楽団の人たちは、優しく声を掛けてくれた。
指揮者 「どうか、ご無理をなさらないでください」
楽団員 「プリンセスが一緒に演奏をしたいと仰ってくださっただけで、」
楽団員 「もう十分です」

(心から言ってくれているのは、凄く伝わってくるけれど)
(私だけ、何も出来ないのは……)

ジルはそんな私の気持ちを察したように、穏やかに瞳を細めて…―
ジル 「演奏は出来なくても…―」


=====


(心から言ってくれているのは、凄く伝わってくるけれど)
(私だけ、何も出来ないのは……)

ジルはそんな私の気持ちを察したように、穏やかに瞳を細めて……
ジル 「演奏は出来なくても……」
ジル 「何か別の形で、城下の人たちのためになることを、」
ジル 「考えられてはいかがでしょうか?」
吉琳 「演奏以外で……」
穏やかに告げられた言葉で、心がふっと軽くなる。
吉琳 「ありがとうございます。何か考えてみますね」
ジル 「大丈夫です。プリンセスの気持ちは、」
ジル 「ちゃんと皆に伝わっていますから」
周りを見回すと、
私に向けられた眼差しがとても優しいものであることに気づき、
胸が温かくなるのを感じながら、笑顔を向けた。

***

迎えた翌日…―
教会前の広場には、楽団が奏でる優雅な音楽が流れている。
城下の人たちが楽しむ様子を少し離れた場所で眺めながら、そっと隣を見上げた。
吉琳 「……あと数曲で、ジルの出番になりますね」
出来るだけ明るい笑顔を向けると、ジルは薄く笑みを滲ませる。
ジル 「そんな顔をせずとも、」
ジル 「貴女の分まで想いを込めて演奏させていただきますので」
ジル 「期待してくださって、構いませんよ」
少しだけ残念に思っていた気持ちを見透かすように言われて、ハッとする。

(この次はジルと連弾を予定していた曲だから、つい……)

ジル 「それでは、行って参ります」


=====


ジル 「それでは、行って参ります」
吉琳 「はい。私は、ここで聴かせてもらいますね」
ピアノのある場所へ向かっていく背中を笑顔で見送る中、
ジルは私にだけ分かるように、優しく瞳を細めてくれた。
ジルが奏でるピアノは、繊細かつ大胆で、
まるでジル自身を表現しているようにも感じられる。

(綺麗な音色……練習で聞いたものより、ずっと素敵だな……)

城下の人たちが、演奏に聞き惚れる様子をそっと見守る中、
すぐ近くに居た親子が、感嘆のため息と共にこぼした言葉を耳にして……

(あっ、それなら……私でも役に立てるかもしれない)

演奏が終わり盛大な拍手が巻き起こる中、私は胸を弾ませていた。

***

それから数日が過ぎ…―
執務室に届けられた箱の中身を確認していた時、ジルがやって来た。
ジル 「そちらは?」
吉琳 「これを教会に置いたら、
吉琳 「城下の人たちが、いつでも音楽を楽しめるのではないかと……」
箱の中には、演奏会で奏でられた曲と同じ、
美しい音色を紡ぐオルゴールが収められている。

(『いつもこんな音楽を聴きたい』という声を耳にしたからだけれど……)
(喜んでもらえるといいな)

ジル 「貴女らしい贈り物ですね。きっと喜ばれますよ」
穏やかな瞳にそっと微笑みを返すと、ジルは私の手を引き…―
ジル 「私からも、貴女に差し上げたいものがあります」


=====


(喜んでもらえるといいな)

ジル 「貴女らしい贈り物ですね。きっと喜ばれますよ」
穏やかな瞳にそっと微笑みを返すと、ジルは私の手を引き……
ジル 「私からも、貴女に差し上げたいものがあります」
吉琳 「私に、ですか?」
ジル 「ええ、ついて来てくださいますか?」
公務を終えて、ジルが私を連れて向かった先は……

***

ジル 「この譜面を差し上げるので、一緒に弾いて頂けませんか?」
ピアノの前に立ったジルが、瞳を細めて楽譜を差し出す。
(この楽譜は、連弾の……)
吉琳 「……はい、ぜひ」

(演奏会ではジルのピアノを聴けただけで、)
(とても幸せだったけれど……)

やっぱり一緒に弾きたかったと、
少し心残りに感じていた気持ちを、汲んでくれたのだと気付く。
ジル 「それでは、早速お願いします」
ジルの優しさに胸の奥が温かくなるのを感じながら、
並んで鍵盤を弾いていると、心までひとつに重なる気がした。
吉琳 「……素敵な時間を、ありがとうございました」
ジル 「私が、吉琳と弾きたかっただけですよ」

(そんな風に言ってもらえて、凄く嬉しい)

幸せな気持ちで微笑むと、ジルは私の耳元に唇を寄せ、低めた声で囁いた。
ジル 「……この曲を人前で演奏するのは、またの機会に」
ジル 「今は、貴女と私だけの思い出にさせて下さい」

(二人だけの大切な思い出が、またひとつ増えたみたい)
(これからも、こんな時間を積み重ねていけたらいいな……)

優しさで描かれた記憶に胸を高鳴らせながら、そっとキスを交わした…―


fin.

 

日版王宮 劇情活動-Melody of Love~彼が奏でる

 

エピローグEpilogue:

日版王宮 劇情活動-Melody of Love~彼が奏でる
彼から贈られる、愛を奏でるような演奏に心から満たされるあなた。
けれどまだ、甘いひと時は続き……
ジル 「……この続きは、部屋に戻ってからにしましょう」
甘い独占欲を滲ませた瞳に見つめられ、心は甘く震え…―
ジル 「貴女が可愛らしいお礼をしてくれたので、私からもお返しを……」
愛し合うふたりは幸せな夜に溺れて行く…―

 

日版王宮 劇情活動-Melody of Love~彼が奏でる

 

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    小澤亞緣(吉琳)

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