新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):アルバート

本編プリンスガチャ

◆ 恋の予感 
  『たとえば護身術』
◇ 恋の芽生え 
  『拭き合いっこしましょう』
◆ 恋の行方 ~夢見るプリンセス~ 
  『心配させた罰』
◇ 恋の行方 ~恋するプリンセス~ 
  『本気の相手』
◆ 恋の秘密 
  『尽きることのない感情』

新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):アルバート

 

 

新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):アルバート

 

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新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):アルバート

◆ 恋の予感 
       『たとえば護身術』

 

――…澄んだ空気がウィスタリアを包む朝
日課の鍛錬の途中、アルバートは様子を見に来たと言う吉琳と向き合っていた。

(俺の鍛錬を見に?)
(…この人はよくわからないことを考えるな)

アルバート 「おかしな人ですね」
アルバート 「私の鍛錬を見ても、あなたが得をすることなどないでしょう」
浮かんだ思いを飾ることなくそのまま告げると、
プリンセスは緩く首を振った。
吉琳 「そんなことありません」
吉琳 「アルバートさんが国を守るためにどんな努力をしているのか、また一つ知ることができました」
言葉を止めて、プリンセスは少し悩むように首を傾げる。
吉琳 「あの、こういった訓練は私には必要ないんでしょうか…?」

(この人はまたそんなことを…)

自然と眉が寄るのを自覚しながら、昨日告げた言葉を思い出す。

*****
アルバート 「あなたは自分が守られる側の人間だと自覚すべきです」
アルバート 「期間限定とはいえ、国を背負う立場に立つのですから」
アルバート 「まあ、ただのお飾りでいるつもりなら止めませんが」
*****

(あれだけ言っても自覚する気がないなら)
(プリンセスなどさっさとやめた方がいい)

国を背負うということは決して簡単なことではない。
そばでゼノ様を見てきた自分は、そのことを嫌というほど知っている。

(半端な覚悟で苦労するのは面倒を見る相手だけじゃない、この人も同じだ)

そう思うからこそ、遠回りすることなく厳しい言葉を落とす。
アルバート 「あなたは馬鹿なんですか?」
アルバート 「昨日私が言ったことを忘れて…」
吉琳 「いえ、忘れたわけじゃなくて…っ」
慌てたように手を振り、思いがけず真っすぐに見上げてくる。
吉琳 「アルバートさんの言葉は私も正しいと思います」
吉琳 「でも、選択肢は多い方がいいんじゃないかとも思うんです」
アルバート 「どういう意味です?」
吉琳 「自分でも身を守る方法を知っていた方が」
吉琳 「何か起きた時の安全度は増すんじゃないかと」
アルバート 「…………」

(…なるほど。考えなしに言ったのかと思ったが違うんだな)

予想しなかった発言に、覚えたのは感心だった。

(この人なりに、俺の言葉の意味を考えたのかもしれないな)

考え込む間も、プリンセスのどこか必死な言葉が続く。
吉琳 「昨日みたいに剣を覚えるのは難しいと思うので、たとえば護身術とか…」
アルバート 「…………」

(護身術……)
(期間限定のプリンセスとはいえ、それくらいは身につけておくべきか)
(とはいえ、女性でも無理なくすぐ身につけられるものというと…)

吉琳 「…すみません、やっぱり無茶ですよね」
自信をなくしたような声に、はっと意識を引き戻される。
アルバート 「いや、一理ある」
吉琳 「え?」
アルバート 「ゼノ様も同じ理由で体を鍛えていらっしゃいます」
アルバート 「おそらく、この国の王位継承者たちも護身術程度は身につけているはずです」
アルバート 「ですが、あなたがそれを言い出すとは思わなかった」

(この人が本当に、自分の立場と向き合おうとしているのなら…)

アルバート 「…よければ、簡単なものをお教えしましょうか」
吉琳 「アルバートさんが教えてくれるんですか?」
アルバート 「私が先生では不満ですか?」
吉琳 「いいえ…っ、よろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げる姿に、なぜか笑みをこぼしそうになる。

(素直な反応をする人だ)
(この人のためになりそうな護身術は…あれか)

プリンセスの背中側に回り、両手で肩を押さえる。
アルバート 「後ろから羽交い締めにされた場合の対処法ですが」
アルバート 「片足を後ろに大きく引いて、体を垂直に落としてください」
アルバート 「両腕は広げるようにしながら上に」
吉琳 「片足を後ろに…」
アルバート 「そうです。なかなか上手ですよ」
アルバート 「では、私が後ろからあなたを押さえますから、三秒数えたら素早く抜け出してください」
吉琳 「え?」
告げてすぐに、プリンセスの体を後ろから押さえ込む。
吉琳 「ア、アルバートさん…!?」

(焦るのはわかるが、こういうことが起こると予想されるのは急な状況だからな)

手加減はプリンセスのためにならない。
そう考え、容赦なく数を数え始める。
アルバート 「数えますよ。いち…にの…」
息を詰める声が聞こえ、触れる体にぐっと力が入る。
アルバート 「さん…――!」
吉琳 「…っ…」
押さえていた体が腕を抜け出し、すとんと落ちる。
吉琳 「あれ…?」
アルバート 「うまくできましたね。簡単だったでしょう?」
吉琳 「嘘、あんなにきつく押さえられてたのに」

(きっとこんな反応をすると思ったが)

あまりに予想通りの反応に、今度は本当に笑みが浮かんだ。
アルバート 「みんな初めてやった時は、あなたのように驚いた顔をします」
吉琳 「あ…」
驚いた顔をしたままのプリンセスの手を引き、立ち上がらせる。
アルバート 「もう一回やってみますか?」
吉琳 「え…」
プリンセスの顔が、なぜか一瞬で赤く染まる。
吉琳 「だ、大丈夫です。覚えました…!」

(何を急に慌ててるんだ?)

アルバート 「ですが、反復をしないとなかなか覚えな…」
言葉を続けようとすると、プリンセスはぱっと頭を下げた。
吉琳 「すみません、用事を思い出したので私はこれで…」
吉琳 「あの、教えてくれてありがとうございました…っ」
アルバート 「あっ…プリンセス!?」
引き止める間もなく、プリンセスは去っていく。
アルバート 「…何だったんだ?」

(思いがけないことを言ったり、予想もしない行動に出たり…)
(よくわからない人だ)

そう思いながらも、なぜか見たばかりの赤い顔が頭を離れなかった…――

 

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◇ 恋の芽生え 
       『拭き合いっこしましょう』

 

――…強い雨が宿の窓を叩く夜
…………
アルバート 「ほら、動かないでください」
被せたタオルで髪を拭いていると、吉琳が視線を上げた。
吉琳 「それなら、拭きあいっこしましょう」
アルバート 「拭きあいっこ…?」
吉琳 「はい。でもこのままだと拭きにくいので、そこに座ってもらえると」
手を引かれ、促されるままソファーに並んで腰を下ろす。

(…この人は本当に、こういう時の行動が速いな)

けれど、この一面が発揮されるのは、いつも誰かを思って行動している時だ。

(こういう優しさに触れるたび、想いが募る気がする)
(だが、今の言葉は……)

考えている間に拭き合いが始まり、思わず笑みをこぼす。
吉琳 「アルバートさん?」
アルバート 「いえ、さっきの言い方が子どもみたいだったので」
吉琳 「え、おかしかったですか?」
アルバート 「いや…可愛いと思っただけだ」
自然とこぼれた言葉に、内心目を見張る。

(…もともと思ったことは口に出やすい方だが)
(こんなことを言うようになるとは)

吉琳を前にすると、想いと言葉が一緒に込み上げる。

(自分が自分ではないみたいだ)

自分の変化に戸惑っていると、赤い顔が視界に映った。
アルバート 「…なぜ顔を赤く?」
吉琳 「ア、アルバートさんが可愛いとか言うから…」
アルバート 「思ったことを素直に言っただけです、悪いですか?」

(こういうことに慣れていないから、加減がよくわからない)
(思うまま口に出さず抑えるべきなのか…?)

悩んでいると、小さな声がためらいがちに言葉を重ねた。
吉琳 「わ、るいです…」
吉琳 「……私の心臓に、悪いです」
アルバート 「…っ…」
恥ずかしそうに顔を伏せる吉琳に、鼓動が跳ねる。

(…なんだその可愛い顔は)

思わずそう口にしかけて、ぐっと口をつぐむ。
アルバート 「…そう言うあなただって、充分俺の心臓に悪い」
なんとかそれだけを口にして、また拭う手を再開させる。

(……だが、今ので納得した)
(やはり、思ったことを素直に口に出しすぎない方が)
(お互いの心臓にいいのかもしれない)

無言のまま手を動かし続けていると、沈黙が気まずくなってきた。

(普通の恋人はこういう時、どうしているのか…)

迷うたびに、恋に関して自分がわからないことだらけだと思い知る。

(…これは慣れるまで時間がかかりそうだ)

そんなことを考えているうちに髪が乾いてきて、互いに手を離す。
ソファーの正面に向き直った時、隣から小さなくしゃみが聞こえた。
アルバート 「寒いですか?」
吉琳 「少しだけ…でも、平気ですよ」
アルバート 「そんなことを言って、もうすぐ交流会なのに倒れられでもしたら困ります」

(何より、この人が風邪でも引いたら心配だ)
(だが、こんな時はどうすれば…)

腕をさすっている姿に、一つの考えが浮かぶ。

(…正しい対処方法かわからないが、これ以上寒そうな姿は見ていられない)

じっと見ていると、気づいた吉琳が首を傾げた。
吉琳 「どうかしました?」
アルバート 「……嫌だったら言ってください」
吉琳 「…?」
正面を向いていた体を横向きに回し、後ろからそっと抱きしめる。
吉琳 「ア、アルバートさん?」
アルバート 「こうすれば、少しは温かいでしょう」
吉琳 「は…い」
大人しく腕の中に収まった吉琳に、ほっと息をつく。

(この方法で、間違ってはいないようだ。だが…)

触れる温もりに、しだいに胸の音が速くなるのを感じる。

(……この行動は軽率だったかもしれない)
(だが、振り向かれなければ動揺も気づかれないだろう)

そう思った瞬間、吉琳が身じろぎをして…――
吉琳 「え…」
アルバート 「…っ…なぜ振り向くんです」
驚いた目と視線がぶつかり、さらに顔の熱が上がるのがわかった…――

 

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◆ 恋の行方 ~夢見るプリンセス~ 
       『心配させた罰』

 

――…物の少ない寂れた部屋で、
吉琳を羽交い締めにしている貴族院の男をきつく睨みつける。
アルバート 「思わぬ収穫はこちらも同じだ」
アルバート 「まさか、貴族院の議員本人がプリンセスを匿っているとはな」
アルバート 「人を雇う余裕もないほど追い詰められ、」
アルバート 「無計画に実行した…そんなところか?」
貴族院の男 「黙れ若造が……!」
アルバート 「プリンセス、3秒数えてください!」
吉琳 「…!」
ハッと目を見開いた吉琳が唇を引き結ぶ。
そして、前に護身術を教えた通りに素早く体を落とした。
貴族院の男 「なにっ……!?」

(さすが、覚えのいい人だ)

アルバート 「上出来です」
一瞬の隙をついて貴族院の議員に近づき、昏倒させる。
意識を失ったのを確認して、振り返った。
アルバート 「吉琳、大丈夫ですか?」
吉琳 「うん…」
床に座り込んで気が抜けたように返事をする姿に、胸が締めつけられる。

(きっと、ずいぶん気を張っていたんだな…)
(この人はどれだけの怖さを一人で耐えていたのだろう)

そんな時にそばにいられなかった自分に、強い悔しさが湧き上がる。

(吉琳をさらった男を、本当は殴ってやりたい)

けれど裁くのはこの場ではなく、国の定める法でなければならない。
ぐっと自分の手を握りこんだ時、
廊下を駆ける足音がして部下の騎士団員が顔を出した。
騎士団員 「アルバート団長、ご無事ですか?」
アルバート 「ああ。この男の拘束を頼む」
意識を失っている議員を預け、部屋に二人になる。
そばに膝をつくと、吉琳はぼんやりした様子で顔を上げた。
吉琳 「アルバート、どうしてここが…?」
いつもの笑顔を失っている吉琳に、
どうしようもなく手を伸ばしたくなる。
アルバート 「説明は後回しにさせてください」
アルバート 「それより、今は…」
吉琳 「あ…」
背中に手を回し、柔らかな体を強く抱きしめる。
アルバート 「――あなたが無事で、よかった」
胸の奥底からこみ上げる安堵に、深く息をつく。

(この人に何かあったら俺は……)
(さっきの男に対して、冷静ではいられなかっただろう)

吉琳 「…アル、バート」
背中に手が回され、弱い力がきゅっと服を握る。
吉琳 「腕強くて、苦しいです」
アルバート 「心配させた罰と思って、しばらくこのままでいてください」
吉琳 「罰にならないですよ…嬉しいですから」
アルバート 「あなたはまた、すぐそういうことを言って…」
愛しさが溢れ、吉琳の頭の後ろに手を回す。
隙間がないほどに抱きしめて、伝わる温もりに深く安堵を覚えた。

(貴族院は目的のために手段を選ばない連中だ)
(助けるのがもっと遅れていたら、)
(吉琳も無事では済まなかったかもしれない)

そう考えるだけで、不安に心臓が縮むような感覚がする。
アルバート 「…あなたがさらわれたと聞いた時、心臓が止まるかと思った」
アルバート 「もう駄目です。」
アルバート 「俺は、あなたなしではこれからきっと耐えられない」

(この人を、離したくない…――)

強い想いが、止まることなく言葉を口にさせる。
アルバート 「こんな弱音、格好悪いことこの上ないが」
アルバート 「あなたを失いたくない…心からそう思う」

(格好悪いと言われても…)
(俺は、ただこの人のそばにいたいんだ)

吉琳 「…っ……」
息を詰めた吉琳の顔を、腕を緩めて覗き込む。
アルバート 「プリンセスが終わったら、やはりあなたには俺のところに来てほしい」
アルバート 「これからずっと、手の届く距離で…俺と生きてほしいんです」

(こんなにも誰かのことを望むようになるなど…)

らしくない…そう思っていても、口に出さずにはいられない。
吉琳 「私でいいんですか…?」
揺れる瞳に想いを伝えたくて、また体を抱きしめる。
アルバート 「あなたでなくては駄目なんです」
アルバート 「…だから、ずっと一緒にいてください」
そう告げた瞬間、腕の中の体が微かに震えた。
背中に回されている手が、何かを決意したように力を込める。
吉琳 「私も…アルバートと生きていきたいです」
アルバート 「…ええ」

(吉琳が…この世でただ一人、俺が守りたいと望む女性だ)

腕の中の温もりに浸っていたその時、開いたままの扉がノックされて……
アラン 「そういうのは後にした方がいいんじゃない」
現れた姿に、吉琳と二人で息を呑んだ…――

 

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◇ 恋の行方 ~恋するプリンセス~ 
       『本気の相手』

 

――…吉琳たちと大使館の設立を決めた翌日
設立に協力してもらうため、呼び出した自分の父親と城の一室で向き合う。
アルバート 「単刀直入に申し上げます」
アルバート 「ウィスタリアとの結びつきを強めるために、大使館を設立したい」
アルバート 「そのために、」
アルバート 「交流会でも使わせてもらった建物を大使館として使わせてほしいのです」
アルバート父 「大使館を…?」
目を見張る姿にしっかりと頷くと、自分と同じ色の瞳が鋭く細められた。
アルバート父 「それは、あの土地が貴族院の影響を受けない場所だからだな?」
アルバート父 「だが、大使館設立など行えば貴族院は黙っていないぞ」
アルバート父 「対策はちゃんと考えてあるのだろうな」

(昔と変わらず、鋭い人だ)
(国の中央から離れた今も、きっと毎日のように国のことを考えているんだろうな)

アルバート 「もちろんです。無策な者に父上は手を貸してくださらないでしょう」
間髪入れず答えると、目の前の瞳が細められた。
アルバート父 「我が息子ながら、相変わらず呆れるほど真っすぐな男だな」
そう言って、なぜか父は小さく笑う。
アルバート 「なぜ笑って…?」
アルバート父 「いや、少し昔のことを思い出してな」
父の視線が、窓の外の青空を見上げる。
アルバート父 「ゼノ様に即位の話が出た時、」
アルバート父 「ブルクハルト家も他の有力貴族も、大半の人間が反対した」
アルバート父 「幽閉されていた王子に何が出来るのか…そう言ってな」
アルバート父 「だが、他に王位を継げる者はいなかったから結局ゼノ様が王になった」
アルバート 「…そうでしたね」
アルバート父 「皆が反対していたあの時、お前だけは初めからゼノ様を信じ、味方をしたな」
アルバート 「私はゼノ様が幽閉されている間もおそばにいましたから」
アルバート 「あの方に国を統治する力があると知っていただけです」

(きっとみんなもすぐにそのことに気づくだろうと思った)
(ゼノ様は、それだけの力を持っている方だ)

アルバート父 「ああ。今はお前の判断が正しかったと私も頷ける」
そう言うと父はふと、幼い子どもでもみるような親の目をした。
アルバート父 「…お前のゼノ様への信頼は、」
アルバート父 「ただ盲目的なだけかと思ったがそうではないのだな」
アルバート父 「ゼノ様は立派になられた。確かに仕えるに値するお方だ」
アルバート 「はい。あの方だけがこの国の、シュタインの王ですから」

(この答えだけは誰に聞かれようと、いつだって揺らがずに答えられる)

それだけ信頼できる主を得られたことを、騎士として誇りに思う。

(だが、今は……)

*****
吉琳 「私にはできないことの方がずっと多い、それはわかってます」
吉琳 「でも、もしできることが一つでもあるなら、その一つを絶対に成功させてみせます」
アルバート 「…………」
吉琳 「だから、アルバートさんの力に…シュタインの力に、ならせてください」
*****

(ゼノ様や国だけではなく、守りたいものがもう一つ増えた)

共に並ぼうとしてくれるあの人を、
この手を支えようとしてくれる吉琳を…心から大切にしたいと思う。

(吉琳との未来を掴むためにも…絶対に失敗はできない)

そう考えていると、父が表情を緩めた。
アルバート父 「わかった、あの建物は好きにするといい」
アルバート 「感謝いたします、父上」
頭を下げると、父は椅子から立ち上がりすぐに部屋を出ようとする。
けれど、扉に向かう途中でなぜか振り向いた。
アルバート 「父上?」
アルバート父 「退役の時、国境近くなど厄介払いもいいところに土地をもらったと思ったが」
アルバート父 「こんな風に役に立つとは思わなかった」
大きな手が背中に触れて、体をとんっと前に押し出す。

(父上…?)

まるで信じる道が間違っていないと後押しするような仕草に、胸が熱くなった。
アルバート父 「貴族院に一矢報いられる日を楽しみにしているぞ、アル」

(この言い方…もしかして、ずっと貴族院と対峙する機会を狙っていたんだろうか)

自分の父親ながら、抜け目のない人だと思う。
アルバート 「――はい」
頷くと、ふいに好奇心の滲む瞳を向けられた。
アルバート父 「ところでお前、ウィスタリアのプリンセスと恋仲というのは本当か?」
アルバート 「父上!? どこでそれを」

(昔から直感に優れた人だが、こんな勘までで当たるものなのか…?)

不思議に思っていると、父がにやりと笑った。
アルバート父 「ほう、否定せぬか。では、ルーカス殿の言った通りなのだな」
アルバート 「ルーカス様が?」
アルバート父 「さっき、紅茶を運んできてくれた時にな」

(…なるほど)

父とルーカス様は昔からの知り合いで仲がいい。

(だが、いくら仲がいいとはいえ、こんなことまで伝えなくても…)

アルバート父 「今度共に家に顔を出せ。お前が本気の相手ならば俺も歓迎しよう」
どこか楽しんでいる様子の父に、額を押さえる。

(吉琳を父に紹介しろということか)
(いざ逢わせると言ったら、色々とからかわれそうだ…)

――けれど、そんな未来が来ればいいとも思う。

(大切な人を父に紹介する…そんな未来は想像したこともなかったが)
(吉琳なら……)

これから何が起きたとしても、もう吉琳を手放さないと決めた。

(共に歩む中で、いつか紹介できる機会もあるかもしれない)
(まあ、吉琳が望んでくれればだが)

ぽんと軽く肩を叩き、父が再び扉に向かう。
アルバート父 「ではな、アル。ゼノ様の側近としてしっかり励めよ」
アルバート 「はい」
父が出て行き、窓の外を見つめた。

(これであの建物を大使館にする約束はできた)
(まずは第一歩…ここから一気に、貴族院の解散まで持っていく)
(吉琳と共に歩む…大切な未来を掴むために)

澄んだ空から視線を外し、決意を胸に歩き出した…――

 

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◆ 恋の秘密 
       『尽きることのない感情』

 

――…涼しい夜風がシュタインを包む夜
…………
城下での騎士団の仕事を終えて、廊下を足早に自室へと進む。

(約束の時間よりずいぶん遅くなってしまった…)
(吉琳はもう部屋に来てるだろうな)

アルバート 「…ん?」
部屋に近づくと、薄く開いた扉から明かりが漏れていた。

(まったくあの人は不用心な)
(俺がいない間に誰かが来たらどうするつもりなんだ?)

扉に近づき、わずかに押し開けた瞬間……
吉琳 「アルバート、遅いね…」

(……!)

聞こえた自分の名前に、ぴたりと動きを止める。

(吉琳は誰としゃべって…)

そっと中に視線を送ると、ベッドの上で横向きに寝転がる吉琳の姿があった。
腕の中に、ふわふわの物体を抱えている。

(…ベンジャミンに話しかけていたのか)

吉琳 「待ちきれないよ…早くアルバートに逢いたい」

(………!!)

部屋から視線を外し、声を出さずに深く息つく。

(本当に吉琳は…)

重ねられた言葉のせいで、頬が熱い。
深呼吸をして気を取り直し、開いた扉をノックして部屋に入る。
アルバート 「吉琳」
吉琳 「えっ? アルバート…!?」
ばっと慌てたように吉琳がベッドの上で体を起こす。
アルバート 「扉が開いたままでしたよ」
吉琳 「い…いつからここに?」
アルバート 「あなたが、その…」
アルバート 「俺に逢いたいと言ってるのは聞こえました」
吉琳 「…!!」
息を呑んだ吉琳の顔が、一瞬で赤く染まる。
視線をさまよわせると、消え入りそうな声で呟いた。
吉琳 「穴があったら入りたい…」

(その反応は可愛いが…)

アルバート 「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのでは?」
アルバート 「逢いたいと言ってくれているのが聞こえた時、俺は嬉しかったですよ」
吉琳 「で、でも聞かれただけじゃなくて」
吉琳 「寂しくて勝手にベッドに寝転がってたのを見られたのが、恥ずかしいんです…」
そう言って吉琳は、顔を覆ってベッドの上で体を縮めた。

(本当にこの人は……どこまで可愛い反応をすれば気が済むんだ?)

窮屈になったのか、ベンジャミンがばたばたと吉琳の腕から抜け出す。
アルバート 「まったく、こいつは…」
足元に近づいたベンジャミンを屈んで抱き上げようとすると、
ぴょんと軽くかわされた。
アルバート 「お前は…!」
アルバート 「最初の頃はおとなしくて可愛げがあったというのに」
アルバート 「いつからそんな態度を取るようになったんだ」
軽く睨むと、微かな笑い声が響く。
吉琳 「そういえば、ベンジャミンはいつから飼ってるんですか?」
アルバート 「確か…ユーリがこの国を出た頃ですね」
アルバート 「出ていってすぐ、一度だけ国内であいつを探したことがあるのですが」
アルバート 「その時、鳥にいじめられていたベンジャミンを見つけたんですよ」
アルバート 「勇敢に立ち向かってましたが、怪我をしていたので連れ帰りました」
吉琳 「そうだったんだ…」
ベッドから下りた吉琳が屈んで手を伸ばすと、素直にベンジャミンが近づく。
アルバート 「…吉琳相手には生意気なことをしませんね」
吉琳 「まだ心を許されてないからじゃないかな…?」
吉琳 「アルバートには懐いてるから、甘えてるんだと思います」
アルバート 「人を蹴ったり踏んだりするのが甘えだと…?」
吉琳 「う、うーん…どうでしょう」
難しい顔をする吉琳に笑って、屈んでいた体を起こす。
上着を脱いでシャツになると、吉琳にじっと見られていることに気づいた。
アルバート 「……視線が痛いんですが、なんですか」
吉琳 「あ…すみません、今日はどうして眼鏡もなしで髪型も変えてるのかと思って」
吉琳 「いつも変装する時くらいしかしないよね…?」
アルバート 「ああ。騎士団の仕事で、潜入捜査のようなことをしていたので」
吉琳 「えっ、大丈夫でしたか? 危ない仕事だったんじゃ…」
アルバート 「大丈夫です。対象の人物はもう捕らえましたから」
吉琳 「それならよかった…」
安堵の伝わる表情に、胸が温かくなる。

(なるべく心配はかけたくない、そう思うのに)
(いざ心配されると嬉しいと思ってしまうな…)

脱いだ上着をクローゼットにかける間も、吉琳の視線が離れない。
アルバート 「あの、吉琳? なぜそんなに見つめて…」
吉琳 「あ…ご、ごめんなさい!」
吉琳 「初めてその格好を見た時、すごくびっくりしたことを思い出してたんです」
アルバート 「ああ…」

(確かに、あの時の吉琳の反応は忘れられない)

素直すぎる反応に、思わず笑ってしまったくらいだ。

(あれ以上に驚いている吉琳は、恋人になってからも見たことがないな)

吉琳 「アルバートって変装してる時は見た目だけじゃなくて、性格も少し違いますよね」
吉琳 「ときどきほんとに別人みたい…どうしてそんなに変われるんですか?」
アルバート 「変装の時は、演技をしているようなものなので」
吉琳 「演技?」
アルバート 「昔、ユーリに別人になりきれと言われたんです」
アルバート 「それで何度かくり返しているうちに、自然と身につきました」
吉琳 「それであんな風に違うんだ…」
呟くように言うと、吉琳は何かを考えるように眉を寄せた。

(どうしたんだ…?)

吉琳 「…アルバート、ちょっと屈んでください」
アルバート 「…? はい」
言われた通りに屈むと、突然髪をわしゃわしゃと?き回される。
アルバート 「…っ…吉琳、何を」
吉琳 「どっちのアルバートも好きだけど」
吉琳 「変装中のアルバートは私よりずっと余裕があるから」
吉琳 「隣を歩いてないみたいで、少しだけ寂しくなるんです」
吉琳 「だから…二人きりの今はいつものアルバートがいい」

(…それでこんなことを?)

不可解な行動の理由がわかると、笑みがこぼれた。

(まったく…この人の可愛さは尽きることがないのか?)

アルバート 「あなたは、馬鹿だな」
吉琳 「ば、馬鹿って…」
アルバート 「こんなに簡単に俺の余裕をなくさせるのに寂しいなどと…馬鹿だろう?」
吉琳 「あ…っ」
吉琳の体を抱きしめて、そのままそばにあるベッドに倒れ込む。
吉琳 「アルバート…!」
アルバート 「あなたはほんとに、どうしようもないほど可愛い」
吉琳 「…っ…そんなに優しく言ってもだめですよ」
動揺した声に、腕を緩めて顔を覗き込む。
アルバート 「怒りましたか?」
吉琳 「……怒りました」

(…説得力がない)

眉を下げた顔は、怒っているというより照れているように見える。
もうとっくに許しているようなその顔に、ただ愛しさだけが込み上げた。
アルバート 「俺はどうすれば許されますか?」
囁いた声は甘さを含んでいて、勝手に変わる声音に自分で驚きそうだ。

(だが、この変化も吉琳が与えたものなら、すべて受け止めたい)

じっと見つめていると、吉琳は少しためらいながら口を開いた。
吉琳 「キス……してください」

(…そんなことを言うとは思わなかった。だが…)

アルバート 「…いいですよ」
こめかみにそっと唇を押し当てると、少しだけ不満そうな顔をされる。
吉琳 「違います、そこじゃなくて…」
アルバート 「どこですか?」
吉琳 「…っ…わかってて言ってませんか」
アルバート 「わからない」
アルバート 「言ってくれないと、わかりません」
あまりに可愛い反応を少しからかうと、
吉琳は何かを決意したように口を閉じた。
吉琳 「…じゃあ、教えてあげます」

(え…――)

吉琳の顔が視界いっぱいに広がって、唇に柔らかな感触が触れる。
アルバート 「…っ…吉琳」
吉琳 「…ここにしてほしかったんです」

(…反則だろう、これは)

口を手で覆うと、吉琳ははにかむように笑った。
吉琳 「言葉より行動の方が伝わることもあるでしょう?」

(まったく、そんなことを言って…)

アルバート 「変装の俺なんかより、本当はあなたの方が余裕なのでは?」
アルバート 「だが、それなら俺も…」
体を起こして、吉琳の顔の横に手をつく。
アルバート 「今日は言葉より、行動であなたに伝えてもいいですか?」
見下ろす顔が、一気に赤く染まる。
吉琳 「…っ…や、やっぱり行動はだめ」

(今さら撤回はさせない。だから…)

アルバート 「その言葉は、あなたに戻そう」
吉琳 「ん…っ」
キスで唇を塞ぎ、甘く吐息を奪う。
唇を離すと、熱を湛えた瞳とぶつかった。
アルバート 「…わかっただろう?」
アルバート 「あなたのことになるとすぐに余裕をなくす…俺がそういう男だと」
吉琳 「アルバート…」
見上げてくる眼差しには今、愛しさだけが滲んでいる。

(この瞳を、俺だけが知っていればいいと思う)
(俺だけが知る、吉琳であってほしい)

吉琳 「…まだ、わかりません」
吉琳 「だから…私しか知らないアルバートを、もっと見せて…?」
アルバート 「…ええ」
吉琳と出逢って知った恋という感情に、
そして自分の変化に、まだ戸惑うことは多い。

(それでも、共に過ごせる時間を幸せに感じることだけは)
(きっとこの先も、永遠に変わらないだろう)

そんなことを思いながら、尽きることのない愛しさを伝えるために、
腕の中の恋人と、優しく唇を重ねた…――
 

 

新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):アルバート

 

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    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()