新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):ユーリ

本編プリンスガチャ

◆ 恋の予感 
  『帰る場所はない』
◇ 恋の芽生え 
  『同じ夢にとらわれて』
◆ 恋の行方 ~夢見るプリンセス~ 
  『プリンセスへの誓い』
◇ 恋の行方 ~恋するプリンセス~ 
  『君を守る剣になろう』
◆ 恋の秘密 
  『手を伸ばす先に』

新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):ユーリ

 

 

新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):ユーリ

 

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◆ 恋の予感 
       『帰る場所はない』

 

――…月明かりが優しく降り注ぐ夜
誰もいないはずのダンスホールに、吉琳の姿を見つけた。
座り込んでいる吉琳の表情がどこか儚く陰る。
ユーリ 「……みーつけた」
吉琳 「ユーリ…」
ユーリ 「ここにいる気がしたんだよね、大正解」
吉琳 「どうして…」

(……こうして、一人でダンスの練習をしてる気がしたから)
(だから、探してたんだよ)

そう喉元まで出かかったけれど、笑顔でごまかして、隣に座った。
ユーリ 「んーだって俺、吉琳様を見つける名人だから」
足元に置かれた本に視線を向けて、今気づいた、そんな様子を装って言葉を紡ぐ。
ユーリ 「…一人で、ダンスの練習か」
ユーリ 「三人の中から誰かを選んでダンスパーティーでダンスを披露するんでしょ」
ユーリ 「ジル様から聞いたよ」
吉琳 「うん、でも全然まだ上手く踊れないから練習しないといけないんだ」
吉琳 「ここで練習してるの、秘密にしてくれる?」
ユーリ 「どうして?」
吉琳 「だって、なんだか恥ずかしいでしょ?」
吉琳が照れくさそうに笑う。

(…本当はそんな理由じゃない)
(みんなに迷惑をかけたくないから、頑張ってるんでしょ…?)

ユーリ 「吉琳様らしいや」
そう返すと、吉琳がほっとしたように笑みを深める。
ユーリ 「了解。…でも、口止め料はもらっておこうかな」
顎に指をかけると、吉琳の瞳が大きく見開かれた。
吉琳 「ユーリ…?」
ユーリ 「吉琳様。大人しく目、閉じて…」
吉琳 「…う、うん」
ユーリ 「口、開けてくれる?」
戸惑いながら小さく開かれた口に、そっと一粒のチョコレートを入れる。
吉琳 「…これ」
ユーリ 「ん、チョコレート」
ユーリ 「甘いもの食べると、元気になるでしょ?」
ユーリ 「これが、口止め料」
その瞬間、目の前に無邪気な笑顔が広がった。
吉琳 「美味しい、ありがとうユーリ」
ユーリ 「その笑顔が見られれば充分」

(…頑張り屋な吉琳様を、少しでも励ますことができたかな)
(本当はもっと力になりたいけど)

ユーリ 「あーあ、俺が吉琳様と踊れたらいいのに」
吉琳 「王位継承者としか踊れないってこと…?」
ユーリ 「ううん、執事だから」
ユーリ 「執事にはたくさんの禁止事項があるんだ」
吉琳 「…禁止事項?」
ユーリ 「そう、例えば…」
ユーリ 「執事はプリンセスとダンスを踊ることを禁止されてる」
ユーリ 「あとは、…そうだな。王子は礼服があるんだけど、執事はそれを着ることは許されてない」
吉琳 「そんな話、初めて聞いたよ…」
ユーリ 「うん、こういうのなんていうんだっけ」
ユーリ 「ああ、暗黙の了解ってやつだ」
吉琳 「あとは?」
ユーリ 「そうだな…あとは…――」
天窓から覗く月を見上げながら思い出していると、ふと言葉がこぼれた。
ユーリ 「帰る場所を望んではいけない…とか」
吉琳 「え…?」

(……っ)

吉琳の反応に、慌ててごまかすための言葉を紡ぐ。
ユーリ 「ほら、執事にとってご主人様が帰る場所だからね」
ユーリ 「場所には縛られないんだ」
そう口にした瞬間、胸の端が痛んだ気がした。

(ごめんね、吉琳様)
(でも……本当のことを言って、)
(吉琳様の顔を曇らせたくはないんだ)

吉琳 「それじゃ…」
吉琳 「今のユーリの帰る場所は、ここだね」
ユーリ 「…………」

(……帰る、場所)

突然降ってきた屈託のない温かな気持ちに、
何も言葉を紡ぐことができなくなる。
帰る場所をもう望んではいけない自分には、
その言葉があまりに眩しすぎた。
吉琳 「あ、ごめん…勝手なことを言ったかも」
ユーリ 「……ううん、そうだよ」
ユーリ 「吉琳様は、100日間だけの俺の帰る場所」
吉琳 「うん…」
穏やかな沈黙が流れ、しばらくしてゆっくり立ちあがる。
ユーリ 「それじゃ、一緒にダンスは踊れないけど……」
月明かりの下、吉琳に手を差し出す。
ユーリ 「そばにいるよ」

(本当のことなんて何も言えない俺だけど…)
(…ねえ、そばにいさせてくれる?)

吉琳 「うん…」
手が触れて、温かな体温が流れ込んでくる。
どうしてか分からないけれど、100日間この手を必死で守っていこう、
そんなことを朝までほど遠い時間の中で、ずっとずっと考えていた…――

 

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◇ 恋の芽生え 
       『同じ夢にとらわれて』

 

――…目を覚ますと、辺りは白に囲まれていた
立ち上がりゆっくり歩き出すと、自分の足音だけが響く。

(これは……夢?)

ただ白に埋め尽くされた景色の中を歩いて行くと、
一冊の本が落ちていた。
そっと拾いあげると、表紙には金色の王子様と一羽のツバメが描かれている。

(…幸福な、王子)

ページをめくったその瞬間、目の前の景色に色がつく。
気がつくと何もない荒野に、一人で立っていた。
ユーリ 「…………」
自分の体が上手く動かなくて、やけに重い。
すると、足元に一羽のツバメがとまった。
ツバメ 「はじめまして、綺麗な王子」
ユーリ 「はじめ…まして。でも綺麗な王子ってどういうこと…?」
ツバメ 「ご自分で気づいていないのですか? 王子の体は全て金で覆われ…」
ツバメ 「装飾は宝石、瞳は大きなルビーで出来ているじゃないですか」
そう指摘されて、初めてそのことに気づく。

(でも……)

ユーリ 「俺は、そんなに良いものじゃないよ」
――…王子という名前を付けられただけの、
大切な人を殺すために存在するお飾り人形だ。
そんな言葉を呑みこむと、視線の先にひどく困った顔を見つける。
ユーリ 「ねえ、ツバメさん。……お願いがあるんだけど」
ツバメ 「はい」
ユーリ 「俺の体だけは良いもので作られてるんでしょ? それなら…」
ユーリ 「俺の体から綺麗なものを全て取って、困っている人に届けてくれない?」
ツバメ 「ですが、そんなことをしたら王子には何もなくなってしまいます」
ユーリ 「いいんだ、この飾りには意味がない」
ユーリ 「俺は全てを失っても怖くはないよ」

(初めから俺には何もない、何にもなれない)
(それならせめて、使えるものは…全部あげるから)

ツバメ 「…分かりました、王子」
ツバメが何往復もする度に、どんどんみすぼらしい姿になっていく。
だけど、何とも思わなかった。
その時……

(あれ……? あれは…吉琳様?)

遠くに吉琳がいて、その頬を大粒の涙で濡らしている。
動いて抱きしめたいけれど、自分の足も手も動いてはくれない。

(いつも、そうだ)

自分が上手く手を伸ばせなかったから、母さんは消えてしまった。
ゼノ様には、手を伸ばすことすら叶わなかった。

(…また俺は、上手く手を繋げなかった?)

どうしても吉琳にだけは手を伸ばしたくて、
もどかしい気持ちでいるとツバメがまた足元にとまる。
ツバメ 「…どうしました、王子。困った顔をして」
ユーリ 「あそこに泣いている女の子がいるでしょ? その人の涙を止めたいんだ」
ユーリ 「この目からルビーを取って、吉琳様に…あの人に渡してあげてくれない?」
ツバメ 「そんなことをしたら、王子は何も見えなくなってしまいます…っ」
ユーリ 「いいんだ。自分が何も見えなくなったとしても、吉琳様の涙を止められるなら…」
ユーリ 「なんだか俺は、幸せな気がするんだよ」

(何にもなれない俺だけど…)
(せめて、泣いてる涙を渇かせる存在くらいにはなれるかな)

手を繋げないなら、せめて笑顔でいてほしい。
それだけが、願いだった。
ツバメ 「……分かりました、王子」
微笑むと、ツバメの羽が頬に触れて……
吉琳の姿が見えなくなる。

(この瞳は吉琳様をもう見つけることはできないけれど)
(どうか笑っていてほしい…)

何も見えない世界で、そのことだけを切に願った…――

 

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◆ 恋の行方 ~夢見るプリンセス~ 
       『プリンセスへの誓い』

 

――…ウィスタリアを出て、シュタインに戻り執務室の扉を開く
アルバート 「……お前、どうして…」
ゼノ 「…………」
ユーリ 「……ただいま、アル」
ユーリ 「だたいま戻りました、ゼノ様…――」
その場に膝をつき、頭を下げた。
アルバート 「どうして今、戻ってきた……」
ユーリ 「手紙だけを残し、シュタインを立ち去ったこと…申し訳ありませんでした」
ユーリ 「勝手なことだと分かっています」
ユーリ 「ですが……どうかシュタイン第二王子としてこの国を守らせてもらえないでしょうか?」
アルバート 「…………」
ゼノ 「…ユーリ」
ユーリ 「はい…ゼノ様」
ゼノ 「一つだけ答えてもらいたい」
目の前の瞳が、すっと細められた。
ゼノ 「……お前に、俺が殺せるか?」
ユーリ 「…っ」

(どう……して)

ユーリ 「ゼノ様……全部、知っていて」
ゼノ 「…答えろ、ユーリ=ノルベルト」
目の前の瞳を見つめたまま、はっきりと言葉を紡ぐ。
ユーリ 「例え、誰かに命じられたとしても…」
ユーリ 「俺はゼノ様の命を奪うことを拒みます」
ゼノ 「………お前はそれを誰に誓う」

(前ならこんなに真っすぐに胸を張って言えなかった)
(けど、今なら言える)

遠くにいる、愛おしい人の声を、体温を、姿を想う。
ユーリ 「…己自身に」
ユーリ 「そして、自分が意味のないものではないと教えてくれた…」
ユーリ 「ウィスタリアのプリンセスに誓います」
少しの沈黙のあと、低い声が部屋に響いた。
ゼノ 「……早く支度をしてくるといい」
ユーリ 「ゼノ様…?」
ゼノ 「…第二王子として、やらねばならないことが山ほどある」
ゼノ 「覚悟はできているな?」
ユーリ 「もちろんです」

***

廊下を真っすぐ歩いて行くと、後ろから足音がした。
アルバート 「待て…っ!」
ユーリ 「アル? なに追いかけてきてるの」
アルバート 「……その、…っ」
わけが分からない、とでも言いたげに視線をさまよわせるアルバートの姿に、笑みがこぼれる。

(…心配ばかりかけて、ごめん)

ユーリ 「……ねえ、アル」
ユーリ 「俺、ずっと自分の存在意義が分からなかったんだよね」
アルバート 「…存在意義?」
あの日、手の甲で涙を拭ってシュタインを出た日を思い出す。
ユーリ 「俺はゼノ様みたいな盾にはなれない」
ユーリ 「…人を傷つける剣にしかなれないと思って、ここを離れた」
アルバート 「…………」

*****
ユーリ 「けど、ウィスタリアで守りたいと思える人に出逢って…」
吉琳 「ここからは、プリンセスじゃなくて…」
吉琳 「普通の女の子になっていい…?」
吉琳 「ユーリ」
ユーリ 「…ん?」
吉琳 「…――心から」
吉琳 「愛してる」
*****

ユーリ 「傷つける剣じゃなくて、守る剣になりたい…」
ユーリ 「なるんだって思えた」

(想う気持ちが俺を強くする)

愛してる、そう伝えてくれた吉琳を縛ることはできなくて…、
この胸を満たす想いも、また逢う約束の言葉も交わすことはできなかった。
だからこそ、必ずもう一度逢いたい、と心の奥深くで願う。
アルバート 「…やはりお前の言うことはさっぱり分からない」
ユーリ 「ははっ、だよねー?」
アルバート 「だが…これだけは分かる」

(……?)

アルバート 「今のシュタインにはお前が必要だ」
ユーリ 「…アル」
アルバート 「…腕は鈍っていないだろうな」
ユーリ 「知ってるでしょ? 俺、お茶淹みより剣術の方が得意なんだ」
ユーリ 「アルこそ、足手まといにならないでよね」
アルバート 「……戯けたことを」
二人、揃って歩き出す。
アルバート 「反撃開始だ――」
ユーリ 「任せて」
この道を歩き切った先で、吉琳にもう一度逢いたい。
その時は、晴れ晴れとした気持ちでこの体、全部で愛を伝えよう。

(それまで……俺は)
(……誰にも負けるわけにはいかないんだよ)

 

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◇ 恋の行方 ~恋するプリンセス~ 
       『君を守る剣になろう』

 

――…二階から議員が集まる大講堂に足を踏み入れた

(……あそこにいるのは、貴族院と…あの男だ)

たくさんの貴族院と自分を駒として拾ったあの男が、ゼノを囲んでいる。
議員 「……ここで国王を亡き者にした方がいいのでは?」

(……っ…)

議員 「ジェラルド様が唯一恐れていた人…」
議員 「このまま逃がせば、この状況もひっくり返されることがあり得るのでは」
伯父 「…貴族院がこのまま権力を握れば」
伯父 「国王の死さえも揉み消すことができる…か」
伯父 「最後に言う言葉はありますか?」
引き金に指がかけられ銃口がゼノ様に向けられるのを見て、
手すりに足をかけたその時……
ゼノ 「俺が死んで、終わると思うな」
伯父 「…?」
ゼノ 「俺がここで死んでも、第二王子が残る」
ゼノ 「必ずお前たちの首を取りにくるだろう」

(……ゼノ、様)

ただ真っすぐに自分を信じる言葉に、胸が締めつけられる。
本当は、ずっとずっとゼノ様を守れる存在になりたくて仕方なかったんだと、
心が叫んでいる。
伯父 「第二が…あのお飾り人形に何ができる」

(…もう、俺はお飾り人形なんかじゃない)

*****
吉琳 「…ユーリはお飾り人形なんかじゃないよ」
吉琳 「誰よりも温かくて、強くて…」
吉琳 「私をいつだって守ってくれる人だよ」
*****

(俺の手は、大切な人を守るためにあるって、…言ってくれたから)

伯父 「お前の目も濁ったものだな…」
伯父 「消えろ…――ゼノ=ジェラルド」
引き金が引かれようとしたその瞬間、その場に響き渡るように言った。
ユーリ 「――…消えるのは、お前だろ」
伯父 「…?」
一斉に男たちが視線をさまよわせた隙に……
議員 「…っ!」
ゼノ様の腕を捉えていた男の腕を勢いよく蹴り上げた。
男の手から転がり落ちた銃を拾い上げて、ゆっくり視線を上げる。
伯父 「……お前は」
ユーリ 「いやだな、顔を忘れたなんて言わないでよね」
伯父 「第二…!」
ユーリ 「ゼノ様…無事ですか」
ゼノ 「…ユーリ、なぜ」

(……本当に)

ユーリ 「本当に……遅くなりました」
伯父 「今さら何をしに来た…」
伯父 「ゼノを殺せという命から逃げたお前に、何が出来る…!」
ユーリ 「…こうすることができる」
拾った銃を、自分を拾い…使おうとした男に向けた。
伯父 「…っ」
ユーリ 「俺は、あんたたちの指針にも盾にもならないと口にしてシュタインから逃げた」
ユーリ 「けど……やっと気づけたんだ」

*****
吉琳 「ユーリはこの手で大切な人を守るために」
吉琳 「生まれたの」
*****

吉琳の言葉が、背中を押す。
ユーリ 「指針にはなれない、盾になることもできない」
ユーリ 「だけど…」
ユーリ 「大切な人を守る剣になることは出来る」
ゼノ 「…………」
伯父 「……第二を消せ、めざわりだ」
議員 「はっ…!」
ユーリ 「………!」
すぐ近くで銃を構えた腕を捕え、その場になぎ倒す。
議員 「……くっ…っ」
ユーリ 「……どうした、撃たないの?」
伯父 「…何をしている」
ユーリ 「……好きにすればいい」
ユーリ 「けど、俺は死なない。…こんな場所で死ねない」
ユーリ 「例え、銃弾を何発体に受けても…死ねない」
ユーリ 「やっと……帰らないといけない居場所ができたんだ…」
望む全てを守れると、この背中を押してくれた、たった一人の愛おしい人。
必ず帰ると交わした優しい約束を、果たすまでは倒れることはできない。

(…今この瞬間も、抱きしめたい)
(……それで、全てを守れる俺になってあなたと生きていきたいんだ)

盾になることはできない。
それなら、全てを守れる剣であろう。
愛おしい面影を胸に描いて、自分を囲む男たちに笑みを向けた…――
ユーリ 「かかってきなよ…――」

 

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◆ 恋の秘密 
       『手を伸ばす先に』

 

――…長い、長い夢を見ていた
何度も、何度も、同じ夢を見ていた。

(……この夢、知ってる)

目を開いているはずなのに、視界は白に包まれたままだ。

(…ああ、そっか)

ツバメ 「…どうしました、王子。困った顔をして」
ユーリ 「あそこに泣いている女の子がいるでしょ? その人の涙を止めたいんだ」
ユーリ 「この目からルビーを取って、吉琳様に…あの人に渡してあげてくれない?」
ツバメ 「そんなことをしたら、王子は何も見えなくなってしまいます…っ」
ユーリ 「いいんだ。自分が何も見えなくなったとしても、吉琳様の涙を止められるなら…」
ユーリ 「なんだか俺は、幸せな気がするんだよ」

(吉琳様の涙を止めたくて、自分の目が見えなくなることを選んだからだ)

今になって気づく。

(そっか、自分の目が見えないと泣いていないか確かめることもできないんだ)
(馬鹿だなあ……)

せめて何か分からないかと、耳を澄ましたその時……、
遠くから足音が聞こえてくる。
足音が自分の前で止まり、頬に温かな体温が触れて……

(……っ…)

目の前が鮮やかな色に染まり、吉琳が顔を覗き込んでいた。
ユーリ 「……吉琳、様」
目の前の大きな瞳からは、大粒の涙がこぼれている。
ユーリ 「…泣きやんで? ほら、俺の瞳のルビーを返すから…他にもあげられるものならなんでも…」
その瞬間、言葉を遮るように抱きしめられる。
吉琳 「…………いらない」
吉琳 「なにも、いらないから」
ユーリ 「でも、そしたら吉琳様は泣きやんでくれないでしょ…?」
吉琳 「違うよ、私は……ユーリが自分を大切にしないから…」
吉琳 「ユーリがいなくなっちゃうことが怖いから、泣いてるんだよ…」
切ない声に、自分の胸まで締めつけられていく。
ユーリ 「……それじゃ、俺は何をしたら、いい?」
吉琳 「ただ、…そばにいて」
投げ出していた手が温かな体温に包まれる。
吉琳 「ただ、こうして手を繋いでいて。……それだけで私は幸せなの」
吉琳がもう一度手を、ぎゅっと握ったその瞬間……

(あれ………ここ、吉琳様の部屋だ)

見慣れた景色に、吉琳を起こしに来て自分まで眠ってしまったことに気づく。
起き上がろうとしたその時……
ユーリ 「…?」
自分の手を、眠っている吉琳がぎゅっと握っていた。

(夢と、同じだ)

温かな体温、握られた手に心が解けていくのを感じる。
何度も終わりがない夢を見続けて、だけど今日…初めて夢の出口を見つけた気がした。

(……あの夢は、俺の過去が作ったものだったのかな)

――…手を伸ばしたけれど、上手く掴めなくて母を亡くした
――…ゼノ様の背中には、手を伸ばすことすら叶わなかった

(…そして、いつからか手を伸ばすことを怖がって諦めてた)
(けど……どうしてだろう)

100日間の始まりに、まるで引き寄せられるように吉琳に手を伸ばし、
その手を掴んで走り出していた。

(…恋に落ちることが決まってたみたいだ)

手をきゅっと握り返すと、吉琳の目が少しだけ開く。
ユーリ 「……起きた?」
吉琳 「ん…?うう…ん」
曖昧な返事と、まだ眠そうな瞳にまだねぼけているんだと分かる。
ユーリ 「まだ眠ってていいよ。…ジル様に言ってきてあげる」
繋いだ手を離そうとすると、夢と同じ強さでぎゅっと握られた。
吉琳 「やだ……もう少しこのままでいて」
ユーリ 「…………うん、いいよ」
吉琳 「嘘……」

(…?)

吉琳 「……ずっと、こうして…手を繋いでいて」

(………っ)

ほどなくして、吉琳が穏やかな寝息をたてる。
穏やかすぎる時間が、優しすぎる体温が胸を焦がしていく。

(……ああ、そっか)
(こんな時間を…幸せって呼ぶんだ)

淡い陽ざしが繋いだ手を照らして、ちゃんと繋がれていることを証明してくれる。
当たり前のように繋がれた手に、目の奥が熱くなった。

(幸せだと泣きたくなるなんて、初めて知った)

今日がどんな日でも、
明日がどんな日でも、これだけは分かる。

(…今日も明日も、その先も)

繋いだ手をそっと持ち上げて、触れるだけのキスを落とす。
その瞬間、目から涙がこぼれて繋いだ手の甲を濡らした。

(俺はこの手を繋いで…守って)
(あなただけを愛していく)

 

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    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()