新版王宮 本篇轉蛋(本編プリンスガチャ):カイン

本編プリンスガチャ

◆ 恋の予感 
  『温室と不器用な手』
◇ 恋の芽生え 
  『噴水と恋心』
◆ 恋の行方 ~夢見るプリンセス~ 
  『最後のデート』
◇ 恋の行方 ~恋するプリンセス~ 
  『時計台と100日目の鐘』
◆ 恋の秘密 
  『運命とガラスの靴』

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◆ 恋の予感 
       『温室と不器用な手』

 

―……ダンスレッスンのあと、温室まで追いかけて来た吉琳は、
ロベールがいなくなると所在なさげな表情を浮かべた。
カイン 「…そういえばお前、何しにここに…っ…」
立ち上がりかけると、鈍い痛みが痣になった部分からじんっとひびく。

(…こんな姿、見せたくなかったのに。こいつなんで追いかけて来んだよ)
(タイミング悪すぎんだろうが…)

*****
吉琳 「カイン、どこ行くの?」
カイン 「飽きただけだ。モモは黙ってろ!」
*****

庇うつもりなど毛頭ないけれど、こんな痣になった足を見せたくはなかった。
すると、吉琳がすっと視線を上げて真剣な口調で告げた。
吉琳 「……っ…足、踏んだのに謝らなかったから追いかけて来たんだよ」
カイン 「……は?」
吉琳 「……気づかなくて、ごめん」
そう呟いて頭を下げる姿に、思わず視線を逸らした。

(……何だ、こいつ)
(こんな素直に謝られると気味が悪い。それに謝るほどのことじゃねえ)

頭を上げさせようと淡い光に照らされた柔らかい髪に手を伸ばしかけて、
我に返って手を握りしめた。

(こういう時、何て言えばいいのかも…どうすれば正解なのかもわからねえな)

思わず偉そうな態度で吉琳の目の前に、痣になった足を差し出した。
カイン 「謝ってる暇あんなら、『それ』貼れよ」
吉琳 「あ…うん」
視線を逸らしていたせいで吉琳の表情はわからない。
だけど少しだけ穏やかになった空気の中、足に湿布が貼られる感触を覚える。
その時、テーピングで肌が擦れ、思わず体を強ばらせた。
カイン 「…っ……」
吉琳 「ごめん…もう少しで終わるから」
申し訳なさそうな声が聞こえてきて、そっけなく言葉を返す。
カイン 「…別に痛くねえから、ゆっくりやれ。ただでさえ、手元ぎこちねえし」
また沈黙が落ちて、ふいに逸らしていた視線を足元に移すと、
ぎこちない手つきで真剣に手当てをする表情が視界に入った。

(こいつのことわけわかんねえ女だと思ってたけど)
(…もしかして、真っ直ぐなだけなのか?)

追いかけて来てまで不器用な言葉で謝ろうとしたり、
不器用な手つきで手当てをしたりする。

(……変なヤツ)

その瞬間、足の甲に触れていた手がすっと離れて吉琳が顔を上げた。

(おい、何だこれ)

巻かれた包帯は、どうやったらこうなるのかわからないくらい、
複雑に歪んでいる。
吉琳 「痛い…?」
カイン 「いや……違う」
それでも、真剣にやってくれたんだろう、そう思うと自然と頬が緩んでいた。

(……どうしようもねえな)

カイン 「…不器用だな、お前」
視線を伏せたまま堪え切れず笑いながら言うと、くすりと笑う気配がする。

(……?)

吉琳の顔を見ると、初めて見る柔らかい表情で笑っていた。

(こんな顔して、笑えるなら最初から笑えばいいのに)
(ホント…調子狂わされる)

その笑顔をじっと見つめながら、思わずらしくなく緩んでいた頬を元に戻して、
そっけなく言い放つ。
カイン 「何へらへらしてんだよ」
吉琳はハッと我に返ったように目を見開くと、
いつもみたいに生意気な表情で視線を逸らした。
吉琳 「何でもないけど」
目の前から消えた笑顔を思うと、なんだか少しだけ面白くない。
そんなことを考えた。
カイン 「わけわかんねえな、お前」
そのまま立ち上がると、温かい陽ざしがさし込む温室を歩いて行く。
歩くたびに解けそうになる包帯を見つめながら、ぼんやりと思う。

(…なんだかこの包帯みてえ)

危うくて、それでいていつ解けるかわからない。
だけど、こんな不格好でも解く気にはなんだかなれない。
それはどこか自分と、吉琳の今の関係のようだった。

(…らしくねえな、こんなこと考えんのは)

妙に胸を疼かせる感覚に首を傾げ、ごまかすように声を上げた。
カイン 「行くぞ、モモ」
すると、後ろから軽い足音が聞こえてきて、
いつもみたいに生意気な声が跳ね返ってくる。
吉琳 「……っ…モモじゃない!」
その声に一瞬だけ振り返ると、視線が重なっていく。
少しだけ怒ったような視線を受けとめながら、偉そうに笑ってみせる。

(不器用なこいつと過ごすのは案外、悪くない)
(100日間だけはしかたねえから、そばにいてやるよ)

自分の背中を追って来る足音は、
まるで春の訪れを感じさせるように、どこか温かい気持ちにさせた……―

 

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◇ 恋の芽生え 
       『噴水と恋心』

 

―……取材陣を引き連れて城下を回り終える頃には、
風が冷たくなり始めていた。

(……何やってんだ)

一日中、吉琳と視線を合わせないようにしているくせに、
吉琳とノアが話すたびに心の中につまらない感情が積もっていく。
取材に集中しようとカメラの方を向くと、記者が声を弾ませた。
報道記者 「では、最後に……お三方のインタビューを撮って終了になります」
ルイ 「………何が聞きたいの?」
報道記者 「期間限定プリンセスとの仲を!」

(…んなくだらねえこと、聞いてんじゃねえ)

心の中で毒づくと、ルイが淡々とした口調で呟いた。
ルイ 「プリンセスとしてよく頑張っていると思う」
ルイ 「…それだけ」
そっけなく返された言葉は、早く取材を切り上げたい気持ちが表れている。
報道記者は少しだけ肩を落とすと、気を取り直したようにノアにマイクを向けた。
ノア 「プリンセスとの仲?どうだろうね、なかよしだけど」
ノアの言葉に、取材陣が一斉にどよめく。

(……何で俺が、こんな気持ちになるんだ)

*****
カイン 「お前は…あいつが好きなのかよ」
ノア 「カインの好きにとればいーよ」
*****

ノアが何の気なしに口にする些細な言葉に、
吉琳の表情一つに胸が掻き乱されていく。
カイン 「……………ちっ」
自分の感情をかき消すようにこぼれた舌打ちに、吉琳が目を見開いた。
その瞬間、今日初めて視線が重なって言いようのないほど胸が疼く。
カイン 「鳩がマメ鉄砲くらったような顔してんじゃねえ」
ずっと抑えていた感情の蓋が飛んで、
気がつくと取材陣のマイクを掴み取って声を荒げていた。
カイン 「…てめえ、誰にでもへらへらしやがって」
吉琳 「………は?」

(……お前が、他のヤツに笑いかけるだけでどうしようもなく苛立つ)

カイン 「ダンスもロクにできねえ。その上、俺様に口応えする」
報道記者 「カ……カイン様?」
報道記者2 「あのカイン様が…一体どうされたんだ」

(…お前といると、俺が俺でいられねえ)
(……どうして、お前といるだけでこんなに乱される)

明滅するカメラのフラッシュの中、吉琳だけを見つめる。
カイン 「お前、何様なんだ…!」
吉琳 「……っ…何様なんだはカインのほうだよ」
つかつかと歩み寄って来ると、吉琳がマイクに手をかける。
カイン 「は…?お前…離せ!」
吉琳 「カインが離せばいいでしょ…?」
フラッシュの光に包まれながら、マイクを奪いあっていると、
ぐらっと重心が傾いた……―
カイン 「……!」
吉琳 「……!」
その瞬間、激しい水音を響かせて、噴水に落ちる。

(………つ…冷てえ)

しんっと静まり返った後、一斉にフラッシュが瞬く。
吉琳に視線を移すと、視線を伏せて今にも泣きだしそうな表情をしていた。

(……そんなツラ、すんな)

カイン 「…撮ってんじゃねえ!」
思わず荒げた声に報道記者が動きをとめた瞬間、ルイの声が響く。
ルイ 「…濡れたプリンセスを撮るなんて、品に欠けてる」
ノア 「そうだー、まだ案内してないとこあるけど」
報道記者 「……っ…行くぞ!」
こっちを気にしながらも、報道記者はノアとルイの後を追いかけて行く。
静かになった噴水に浸かったまま、ただ向かいあっている内に、
いつの間にか陽は沈み、淡い夕日の中、影が揺れ水音が響く。
カイン 「…………」
吉琳と視線が重なった瞬間……
自分が雨の日に、吉琳に投げた言葉を思い出していく。

*****
カイン 「…お前、俺に関わるな」
*****

(あんな言葉で拒絶したくせに、…手放せねえ)
(……泣きそうなツラさせてるくせに、…触れられたらどんなにいいかと思う)
(……俺は、矛盾だらけだ)

子どもの我がままのように幼くて、
行き場のないどうしようもない感情だけが、胸を満たしていく。
吉琳の髪から水滴が垂れて、揺れる水面に波紋が広がる。
吉琳 「…………」
ただ真っ直ぐに自分を見つめる瞳に、息がうまく吸えなくなっていく。

(……俺はお前を笑わせるのが、とんでもなく下手で)
(だけど、本当は誰よりもそばにいて笑わせたい。こんな気持ちになるのは……)

胸がどくんと音をたてたその瞬間、吉琳の瞳が大きく揺れた。
吉琳 「カイン、私を嫌いでもいい」
カイン 「………っ…」

(……何、言ってんだ)

吉琳の瞳が水面を映したように潤んでいく。
吉琳 「プリンセスとして足りないと思っててもいい。けど…」
吉琳 「ちゃんと、こっちだけは見てて……っ…」
吉琳の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちたその瞬間、
衝動的に抱きすくめる。
吉琳 「……っ…」

(……どうしようもねえな、今頃気づくなんて)

吉琳の濡れた体はひどく冷えていて、
温めるように抱きしめる腕の力を込めると、甘い感情だけが募る。

(……こんな気持ちになるのは、お前のことが……)

カイン 「………嫌いなわけねえだろうが」

(……好きで仕方ねえからだ)

 

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◆ 恋の行方 ~夢見るプリンセス~ 
       『最後のデート』

 

―……吉琳がプリンセスを終えるまで、あと1日。

(…女っていうのはなんでこう準備に時間がかかんだ)
(クソ…あいつが来たら、説教くらわせてやる)

吉琳を待ちながらバイクに寄りかかっていると、慌ただしい足音が聞こえてきた。
吉琳 「ごめん、お待たせ……っ…!」

(……っ……)

息を弾ませて駆けてくる吉琳は、
いつもよりなんだかやたらと可愛く見える。

(髪くるくる。…まあ、嫌いじゃねえから、説教は帳消しにしてやる)
(…にしても、昼間っからデートなんてしたことねえな)

ぎこちない表情を隠すために掛けたサングラス越しに、吉琳を見つめて言い放つ。
カイン 「……遅せえ」
カイン 「……で、お前のいう普通のデートって何すればいいんだ」
吉琳 「そうだな…まずはこれ取って」
つかつかと歩み寄る足音が聞こえて、サングラスがばっと外される。
カイン 「………っ…!」
眩しい陽ざしが目にかかり、吉琳の顔がはっきりと視界に飛び込んできた。
カイン 「……クソ、返せ」
吉琳 「カイン、もしかしてこれって照れ隠し?」

(……んなわけねえだろうが)

カイン 「は?ちげーよ!俺の…スタイルだ」
吉琳の訝しげな表情を前に、サングラスを奪い返す。
カイン 「それより、何するかって聞いてんだよ」
すると吉琳は、視線をさまよわせて何かを思いついたように頬を緩ませる。
吉琳 「あれで、城下まで行かない?」
カイン 「あれってお前……」
吉琳が指差す先にある物を見て、思わず目を見張った……

***

(…何だ、この非効率的な乗り物は)

吉琳 「カ…カイン、もっとちゃんと運転してよ!」
カイン 「はあ?…てめえが重いせいだろうが」
初めて乗る自転車のペダルをこぎながら、城下を目指していく。

(…道、間違えて城下を通りすぎた。ナビくらいつけろ)

一人、心の中で毒づいていると後ろから声が聞こえてくる。
吉琳 「この自転車はノアのなんでしょ?」
カイン 「ああ。クソ、男はバイクだろうが」
吉琳 「……ほんと、負けず嫌い」
ぼそっと呟かれた吉琳の声は、風にさらわれてもちゃんと耳に届く。
カイン 「お前、落とすからな!」
吉琳 「もう落ちそうなんだけどー!!」
やけに楽しそうな声が背中越しに聞こえてきて、
その瞬間、昨日の夜に交わした言葉が鮮明によみがえっていった。

*****
吉琳 「カイン、明日1日…私にくれない?」
カイン 「……何か用でもあんのか?」
吉琳 「ううん、ただカインと普通のデートってしたことないでしょ?」
カイン 「この俺様に、普通を求めるんじゃねえよ」
*****

明日はプリンセスが終わる日で、ガラスの靴を返すセレモニーがある。

(……こいつが普通のデートなんて言いだしたのは、意味があんだろ)
(きっと……)

吉琳の表情や、発せられる言葉の一つ一つで予感は確信に変わっていく。

(…自分の国に帰るつもりなんだろ)
(普通のデート、なんて思い出作りみてえなこと言いやがって)

それでも、吉琳の気持ちには応えたいその想いだけが自転車を走らせる。
吉琳 「代わろうか?」
カイン 「………いや、やる」
吉琳がどこか呆れたように笑いながら、背中にとんっと額を預けてくる。
その瞬間、触れあった部分から感情が伝染するように
らしくないけれど、胸がわずかな痛みを覚えた。

(本当は無理やりにでも、引き留めておきたい)
(こいつがそばにいんのが、もう当たり前なんだよ)

それでも吉琳は吉琳なりに、前に進むための答えを出したはずだ。
それを無下にして、引き留めることだけはどうしてもしたくなかった。
カイン 「お前、あったけえな」
背中にじんわりと体温を感じるたびに、胸が詰まる。
吉琳 「カインもあったかいよ」
お互いがお互いの体温を感じて、こうして言葉を交わせる。
この瞬間がどうしようもなく大切で、下唇を噛みしめた。

(ただな、例えお前がどんな決断をしようと)
(俺は、この体温を離せねえから。…どこにいたってお前は俺のものだ)

このまま自転車に乗って、連れ去ってしまえたら…。
風に掻き消されてもいいから、大声で行くなと叫べたらどんなにいいかと思う。
やけに大人しい吉琳の方を振り返ろうとしたその時、背中をばしっと叩かれる。
カイン 「…いってえな!」
吉琳 「早くしないと陽が暮れちゃうよ」

(……馬鹿が、声震えてんだろうが)
(ホント、勝手な女だな。だけど…)

カイン 「この我がままプリンセスが」
いつも通りに口調で言い放つと、吉琳がまた悲しそうに笑う。

(…俺はお前しか、いらねえよ)

必死にこいでいたペダルの速度を緩めて、
体温を感じられる距離を噛みしめるように、少しだけ背を後ろに預けた……―

 

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◇ 恋の行方 ~恋するプリンセス~ 
       『時計台と100日目の鐘』

 

静かな図書館に、鐘の音が静かに響いて100日目を告げる。
吉琳 「カイン…、離れないよ」
吉琳 「約束する」

(……何やってんだ)

衝動的に抱きしめた吉琳の体を、そっと離した。
カイン 「…悪い。らしくねえな」
吉琳 「……ううん」
窓から見える時計台は12時で針を止めて、まるで試すような音を響かせ続ける。

(……あの言葉に、嘘はない)

*****
吉琳 「私とカインは……っ…」
カイン 「それがどーした」
吉琳 「え…?」
カイン 「ガラスの靴を返す?」
カイン 「そんなもん、とっとと返しとけ!」
*****

吉琳が不安を消したくて、笑い飛ばしてきた。

(……けど、本当に不安になってたのは、…この俺だ)

遠くに見える時計台を見つめながら、言葉が自然とこぼれ落ちていく。
カイン 「一人でずっと生きていくと思ってた」
吉琳 「…………」
カイン 「誰も必要ねえ。次期国王ってのはそういうものだって」

(……もう遠い過去だけど、沁みついてる)

次期国王として育てられ、教育係からその在り方を教えられてきた。
人として、畏怖されるべき存在であることは同時に、
自分一人で生きて当たり前だということを意味している。

(…平気だと思った)
(痛くも痒くもねえ、それが俺の生き方だと)
(けど…それは違う)

視線を上げると、自分を真っ直ぐに見つめる瞳と視線が絡みあった。
カイン 「けどな…、お前が全部ひっくり返したんだ」
吉琳 「ひっくり返した…?」
カイン 「ああ、何を言っても言い返してくる」
カイン 「真剣に向き合ってくる」
言葉を重ねながら100日間、一番近くで過ごすうちに、
吉琳がそばにいることの温かさを知ってしまった。
隣を見ると、当たり前にそばにいてくれる空間を知ってしまった。
カイン 「…俺の真ん中にいつのまにか居座りやがって」
吉琳 「居座りやがってって…」
吉琳の髪にそっと触れると、また想いが積もっていく。

(……お前のせいで、俺はもう一人になるなり方を忘れただろうが)
(……ホント、どうしてくれんだ)

指先から吉琳の細い髪がこぼれ落ちる。
カイン 「もう二度とお前みたいな女には出逢えねえ」
カイン 「だから、…どんなにみっともなくても」
カイン 「格好悪くても、俺はお前だけは離せねえんだよ」
胸に苦しく響いていた鐘の音が、やっと鳴り止んだ。
まるで悪い魔法が解けるように、吉琳が目を細めるせいで、
自分までつられて表情を崩して笑う。
カイン 「だから、俺様の言う通りにしろ」

(こんな言い方しかできねえ…)
(二人でいようとすんのは、難しいなんてお前と出逢って初めて知った)

もっと上手い言い方があるはずだ、そんなことを考えていると、
吉琳は笑みを深めた。
吉琳 「うん、不器用で意地悪で……誰より偉そうだけど」

(……っ…)

カイン 「おい…」
吉琳の手が頬に触れて、そっと引き寄せられて唇が重なっていく。
カイン 「……っ…―!」
唇が離れると、吉琳は口元を綻ばせて笑う。
吉琳 「カインは私だけの王子様だから」

(……何だよ、ソレ)

この笑顔一つで、この言葉一つで自分がどれだけ動かされるか、
救われているか、きっと吉琳は知らない。

(だから、俺はお前のそばにいたい)
(誰よりもお前を幸せにできて)
(誰よりもお前を必要としてるのは、俺だから)

カイン 「俺以外、誰がお前のそばにいれんだよ」
吉琳 「それは私の言葉だよ」
言い合いながら、幾度となくキスを交わす。
胸を疼かせる感情は、夜が明けても消えることはなかった……―

 

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◆ 恋の秘密 
       『運命とガラスの靴』

 

―……透きとおるように空が晴れたある日の午後

(…あいつ、どこにいんだ)

撮影が終わって外から戻ると、吉琳の姿がどこにも見当たらない。
帰って早々、ユーリに尋ねると首を傾げて告げられた……

*****
ユーリ 「吉琳様ですか?公務が終わったあと、どこかに行きましたよ」
ユーリ 「部屋にいるんじゃないですか?」
*****

(……手間かけさせやがって)

吉琳の部屋のドアをノックもなしに開けると、そこには……

(ん…?)

吉琳の姿はなくて、その代わりにベッドの上に何かが無防備に転がっている。
近づいて見ると、それはガラスの靴だった。
カイン 「普通、ガラスの靴を脱ぎっぱなしにするかよ」
苦笑をこぼして、そっと拾い上げると少しだけ冷たい感覚にふっと記憶が呼び戻されていく……

(そういや、あいつは最初からガラスの靴を履いてなかったな)

*****
カイン 「何ぼけっとしてんだ、とっとと履け」
カイン 「……って、俺が何でこんなことしなきゃなんねえんだ」
吉琳 「あの、どうして急に車から引きずり降ろされないといけないんですか?」
カイン 「バイクの燃料が切れたからだ」
*****

吉琳に出逢ったのは、今思えばたまたまだった。
たまたま、車を奪って逃げようとして手を引いたのが吉琳で、
たまたま自分の100日間のパートナーになったのが吉琳だ。

(けど、このガラスの靴が吉琳の足にはまったのは)
(たまたまじゃねえのかもしれねえな)

ガラスの靴を手に、部屋を出て廊下を歩いて行く。

***

吉琳の姿を探しながら、
片手に持ったガラスの靴は陽の光を浴びてキラキラと光って乱反射する。

(このガラスの靴がはまるのは、奇跡みたいなものだ)
(それを偶然だなんて思わねえけど……――)

その時、自分の部屋の扉が薄く開いていることに気がついた。
カイン 「……?」
首を傾げて光の線ができた扉を開くと……
カイン 「………はあ?」
自分の部屋に入った瞬間、吉琳がベッドで穏やかな寝息をたてて眠っている。

(……何でこいつこんなとこで寝てんだ)

ベッドの脇にひざまずいて顔を覗き込むと、
寝ているくせにへらっとした表情になった。
カイン 「……アホっぽいツラ」
ふと吉琳の足元に視線を向けると、投げ出された足は裸足で笑みがこぼれる。
自分の手に持ったままのガラスの靴を、吉琳の足にそっと触れさせた。

(偶然じゃないなんて思わねえ。けど……)
(俺はガラスの靴が運ぶ運命の恋、なんて信じない)

カイン 「…………」

(こんな必然がなくても、俺はきっとお前と出逢って)
(お前を見つけた)
(そう、思いたいもんだな)

そっとガラスの靴を足に入れたその時、吉琳の口から短い声がもれて……

(……っ…!)

足と同じように投げ出された手が頬にばしっと当たる。
カイン 「……てめえ」
吉琳 「……ん?何してるの、カイン」
頬を押さえていると、吉琳が目を擦りながらむくっと体を起こした。
カイン 「何してんのじゃねえ、馬鹿が!お前を探してたんだろうが」
吉琳 「探してた…?」
吉琳がわずかに目を見開く表情を見て、思わず視線を逸らす。

(…余計なこと言った)

その時、温かい手できゅっと手を握られた。
カイン 「……何だよ」
吉琳 「同じだな、と思って」
カイン 「…は?」
吉琳 「私はカインを待ってたんだよ」
やたらと嬉しそうな声にちらっと視線を向けると、
吉琳の笑顔が視界に飛び込んできて不覚にも胸が疼く。

(……待ってた、か。やっぱりガラスの靴が無くても)
(俺は、お前を見つけた。そう思う)

吉琳 「ねえ、カイン…これどうしたの?」
カイン 「あ?」
吉琳は不思議そうに自分の足元を見つめて、
まるで解けない問題を解くような表情を浮かべている。
それが妙に可笑しくて、温かい手を握り直してぐっと引き寄せた。
吉琳 「…っ…カイン?」
カイン 「たまたま、拾っただけだ」
吉琳が次の言葉を言う前に、唇を塞ぐ。
運命なんてものがもしあるのなら、それはきっといつだって自分で掴まえるものだ。
それを肯定するように、擦れた布の音にまざってガラスの靴が一度だけ音をたてた……―

 

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    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()