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日版王宮 慶祝4週年-10日間限定 毎日読み放題

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9/17(土)12:00 ~ 9/26(月)23:59まで
上記期間中、毎日日替わりで過去のイベントのシナリオを無料で公開していくよ☆
読めるのはその日1日だけ!毎日ログインして、読み逃さないようにね♪

(*因為上班太累了,沒有再確認過有無遺漏,如真有闕漏...請多包涵>"<)

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『(2nd) 君と過ごす記念日』プロローグ、アラン、ルイ、ジル、レオ、ゼノ、ユーリ、シド、アルバート

『彼とのドキドキ 密着レッスン後編』アラン、ジル、レオ、シド

(缺)『王子様とかくれんぼ』プロローグ、ルイ、ゼノ、ユーリ、シド

『真夜中のデート』アラン、ルイ、ユーリ

『How to Kiss?』アラン、ジル、レオ、アルバート

『王子様とかくれんぼ』プロローグ、アラン、ジル、レオ、ロベール、アルバート

『彼とのドキドキ 密着レッスン前編』ルイ、ゼノ、ユーリ

『真夜中のデート』の ジル、レオ、ゼノ

『How to Kiss?』の ルイ、ジル、ユーリ、シド

『(1st) 君に恋した365日』プロローグ、アラン、ルイ、ジル、レオ、ゼノ、ユーリ

 

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★10日間限定毎日読み放題1日目★

2014年9月に開催していた『君と過ごす記念日』の プロローグ、アラン、ルイ、ジル、レオ、ゼノ、ユーリ、シド、アルバートのシナリオが読めちゃうよ☆

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プロローグ>>>

 

もうすぐ迎える記念日…
彼はあなたから贈られた手紙を見つめながら、思いを巡らせる…―
………
(せっかくだし、何かしてやりてえけど…)
……
(記念日には、吉琳と一日一緒にいよう)
……
(…これは悩みがいのある案件ですね)
……
(ここは王道にお祝いするのがいいかな…)
……
(こうやって吉琳のことで悩むのも、なかなか楽しいものだな…)
……
(吉琳様の特別って、どんなかな?)
……
(記念日はあいつが喜ぶようなこと、してやらねえとな)
……
(なるほど…これで、好きなものは分かった)
………
彼が大切な日のために用意した『贈りもの』…
あなたはどの彼と素敵な時間を過ごしますか…?

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アラン>>>

 

涼し気な風が吹く、よく晴れた午後のこと…―。
アランは、ベッドに寝転がりながら、
吉琳から届いた手紙を読んでいた。
アラン:靴とダンス……?

(新しい靴を履いて、ダンスを踊ればいいってことか…?)
(せっかくだし、何かしてやりてえけど…)

アランは仰向けになったまま、一人考えた。

***

次の休日……。
アランは城下に、吉琳へのプレゼントの靴を買いに行っていた。
ふと、店先に並んだ、可愛らしい靴に目がとまる。

(あいつに似合いそうだな……)

アランは店の扉をあけると、中にいる店員に声をかけた。
アラン:すみません、これ…

***

そうして迎えた記念日…―。
アランはプレゼントの箱を抱えて、吉琳に会いにいった。
アラン:吉琳
アランの姿を見とめると、綺麗なドレスを着た吉琳が、
こちらに足早に歩いてきた。
吉琳:アラン…!
アラン:これ…
少し気恥ずかしい思いをしながら、
アランは吉琳にプレゼントを差し出す。
すると、吉琳は嬉しそうにアランに微笑んだ。
吉琳:わあ…
アランは箱を開けて靴を取り出し、吉琳に履かせてあげると、
吉琳はうっとりした表情で頰を染めた。
吉琳:…嬉しい

(やっぱ、よく似合う)

アランは満足そうに微笑んだ。
吉琳:記念日だから…手紙で聞いてくれたんだよね?
吉琳:アラン、ありがとう

(記念日だから、こいつを喜ばせたいと思ったとか…)
(そんなこと、言える訳ねえ…)

アランはそんなことを考えながら、
わざと素っ気なく吉琳に頷いてみせた。
アラン:…で、踊るんだろ
アラン:ん
アランは、ぶっきらぼうに吉琳に手を差し出した。

(…こんな恥ずかしいこと)
(こいつじゃねえと、やらないよな…)

すると、吉琳はくすっと笑ってお辞儀をした。
吉琳:よろしくお願いします
ワルツの音楽が流れてきて、二人はステップを踏み始める。
踊りながら、優しい微笑みを浮かべる吉琳に、
アランは、胸がほんのりと温かくなった。

(こいつ…可愛いな…)
(色々、気恥ずかしいけど…)
(こいつの笑顔、見られて良かった…)

***

その後……。
ダンスを踊り、食事をして楽しいひと時を過ごしたあと、
アランは吉琳を部屋まで送っていった。
吉琳:…今日はありがとう、アラン
吉琳:素敵な記念日を過ごせて、嬉しかった
アラン:うん
アランは吉琳の笑顔を見て、目を細める。
吉琳:…なにか、お礼をしたいな
吉琳は部屋に入ると、ふと思いついたようにそう言った。
アラン:お礼って、なんだよ
アランがそう尋ねると、吉琳はしばらく悩んだように眉を寄せた。
吉琳:…肩たたきとか……?
アラン:…は?

(一体何を言い出すかと思えば…)

アランは可笑しくなって、思わず笑みをこぼした。
吉琳:だってアラン、いつも公務で疲れてるでしょ?
吉琳:さ、座って
言われるまま、アランがソファに腰掛けると、
吉琳は肩に手を添えて、とんとんと叩き始めた。

(肩叩きって…)

肩にかかる軽い衝撃に、アランは思わず苦笑いする。
アラン:…あのな、お前の力じゃ全然だって
吉琳:えー…?
背後から、残念そうな声が聞こえる。

(それに…)

アラン:お前、分かってねえな…

(こんなことされたら…)

アランは思わず振り返り、吉琳の肩を抱き寄せた。
吉琳:アラン…?
吉琳は、驚いたように目を見開く。
アラン:…もっと触れたくなるだろ
アランはそう呟いて、吉琳の身体をソファに押し倒した。
吉琳:ア、アラン…
吉琳は慌てた様子で頰を染める。
アラン:俺は、肩なんかより
アランは、吉琳のドレスのリボンに指を掛ける。
吉琳:あっ…
アラン:…お礼ならこっちがいい
アランが肩口に顔を寄せて囁くと、
吉琳は恥ずかしそうに黙ったまま、頷いた。
そしてアランは吉琳の胸元を開いて、
その滑らかな肌に指を滑らせた。
吉琳:あ……アラン……
吉琳は熱い吐息を零して、
その上気した肌に、アランは胸が高鳴っていく。

(どんなに時が経っても…)
(気持ちって、変わらないもんだな)

アランの胸には、出会った時と変わらない愛しさが湧いてきた。

(今でも、あのときと同じ…)
(いや、一緒にいる時間が増えれば増えるほど)
(こいつに夢中になってる気がする)

アラン:吉琳…
アランは優しく吉琳の名前を呼ぶと、
あふれる愛しい気持ちを胸に、吉琳の身体を強く抱き寄せた…―。

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ルイ>>>

 

淡い月だけが浮かんだ、しんと静かな夜…―。
ルイは、自分の執務室で吉琳から届いた手紙を読んでいた。
ルイ:かばん、か…
ぽつりと呟いて、ルイは再び手紙に視線を落とす。

『一緒に過ごせるのを、楽しみにしています』

(来週は、吉琳との記念日だけど…)

手紙から、吉琳の楽しげな気持ちが伝わってくるようで、
ルイは思わず、口元を緩めた。

(その日は、一日一緒にいよう)
(何か美味しいものを用意して…)

もの思いにふける様子で、
ルイは来週の記念日に思いを馳せた……。

***

そして迎えた、記念日の夜…―
ルイは吉琳の手を引いて、湖畔の別宅にやってきた。
吉琳:ルイ、ここは…?
突然、馬車でここまで連れてこられて
吉琳は不思議そうな表情でルイを見つめている。
ルイ:今日は、ここに泊まろう
ルイ:ディナーを用意したから
ルイはそう言って、邸宅の庭に顔を向けた。
吉琳:えっ?
言われて、吉琳が庭を見ると、
そこにはたくさんの美味しそうな料理や飲み物がテーブルに並んでいた。
吉琳:わあ…
すると、吉琳は溜息のような歓声を上げた。
ルイ:一緒に星を眺めようと思って、ここに用意したんだ
ルイはシャンパンの瓶をあけて、
グラスに注ぎ入れて、ひとつを吉琳に手渡した。
ルイ:大切な記念日を、一緒に過ごせて嬉しい
ルイは吉琳の瞳を見つめて、ふっと目元を緩めた。
吉琳:私も…
吉琳:ありがとう、ルイ
ルイは微笑んで、グラスをあわせた。
ルイ:こちらこそ

***

その後……。
食事を終えた二人が部屋に戻ると、
ベッドの上に、綺麗なリボンをかけた箱が置いてあった。
吉琳:これは…?
不思議そうな顔をする吉琳に、ルイは手で示す。
ルイ:開けてみて、プレゼント
箱を開けて、中からピンクのリボンがほどこされたかばんが出てくると、
吉琳は、ぱっと顔を輝かせた。
吉琳:嬉しい…
吉琳:ありがとう…ルイ
かばんを手にもって振り返る吉琳に、
ルイはにっこりと微笑んでみせた。
ルイ:思った通り、よく似合ってる
吉琳は嬉しそうに頷くと、
言葉に詰まったように、少しだけ俯いた。
ルイ:……吉琳?

(どうしたんだろう…)
(あんまり気に入らなかったかな…)

ルイが心配したように、声をかけようとすると、
再び感極まった様子で吉琳が口を開いた。
吉琳:…本当に、素敵な記念日で…何てお礼を言ったらいいのか…
吉琳:私、胸がいっぱいで…うまく言葉が出てこなくて…
きれぎれに、そうお礼を言う吉琳を、
ルイは目を細めて見つめていた。

(吉琳…)
(喜んでくれて、本当に良かった…)

吉琳の様子を見て、
ルイもまた、胸が詰まって吉琳に歩み寄った。
ルイ:…言葉じゃなくてもいいよ、吉琳
ルイは吉琳の顎をそっとすくうと、
瞳を覗き込んで、囁いた。
ルイ:…これが、一番嬉しいから
ルイは吉琳の身体を引き寄せると、
顔を寄せて、唇にそっと口づけた。
吉琳:ん……
すると、吉琳も、ルイの身体に手を回した。

(不思議……)
(時が経つほど、吉琳のことが好きになって)
(吉琳のこと、どんどん欲しくなってる気がする…)

ルイは抱きしめる手に力を込めて、さらに強く口づけた。
吉琳:んっ……
ルイ:吉琳…
ルイは吉琳に強いキスを繰り返しながら、
その胸元に指を伸ばしていく。
吉琳:あっ…ルイ…
ルイ:ごめん、もう我慢できない…
ルイは吉琳の耳元でそう囁いた。

(こんなに、吉琳が欲しいなんて)
(俺、吉琳がいないともう駄目なんだ…)

ルイ:…いい?
吉琳:うん……
吐息のような返事をすると、吉琳は小さく頷いた。
ルイは吉琳のドレスの胸元を開くと、
その柔らかく温かい肌に、唇を押し付けた。
吉琳:あっ…
吉琳は、小さくぴくんと身体を震わせる。
ルイは、その吉琳の身体を強く抱きしめた。
ルイ:…愛してる、吉琳
ルイ:これからも、ずっと一緒にいて…
吉琳:うん……
うわずった声を上げる吉琳の肌に身を埋め、
ルイはそっと目を閉じた…―。

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ジル>>>

 

霧がかかったような、美しい夜空の真夜中…―。
ジルは部屋で、吉琳から届いた手紙を開いていた。
丁寧な字を目で追いながら、ふっと目元を緩ませる。

(なるほど、私が選んだ洋服ですか…)
(可愛いことを言いますね)

ジルはつい口元を綻ばせた。

(しかし、これは悩みがいのある案件ですね)
(ゆっくり、考えるとしましょう……)

***

そして、数日後のこと……。
ジルは、吉琳がルイにレッスンをつけてもらうのを、
傍らで見守っていた。

(ずいぶん、上手くなったように見えますね…)

ジル:ちょっと、いいですか?
一曲、終わったところでジルはふいに声をかけた。
ルイ:何?
ジル:今度は、私と交代して頂けませんか?
ジル:プリンセスがどれだけ上達したか、チェックしなくては
ジルがそう言うと、吉琳は横で緊張した面持ちをした。
ルイ:もちろん、どうぞ
ルイと交代して、吉琳の強ばった手を取る。
ルイがホールの隅に移動して、紅茶を手に取るのを確認すると、
ジルは吉琳に視線を戻した。
ジル:そんなに、緊張しないでください
ジルは、吉琳に身体を密着させると、
耳元に顔を寄せて囁いた。
ジル:貴女があんまり素敵に踊るので…
ジル:私の腕の中に捕らえたくなってしまいました
吉琳:…えっ
吉琳は驚いたように顔をあげて頰を染める。
ジル:…駄目ですよ、ダンスを続けなければ
吉琳:はい……
ジルは微笑んで吉琳を見つめながら、考えていた。

(この可愛らしい人に、どんな服が似合うでしょうね…)

***

その後……。
ジルは、ひとり城下へおもむくと
服屋で洋服を仕立ててもらっていた。

(吉琳は、どんな服を着ても似合うでしょうけれど…)

服屋に指示を出しながら、ジルはぼんやりと考える。

(お祝いですから、華やかで美しいものがいい)
(それから、なにより私の気持ちを込めたものを…)
(二つとない大切な日の、贈り物なのですから)

***

そして、迎えた記念日…―。
公務が終わったあと、ジルはこっそり馬車を用意して、
吉琳を乗せて城下へ向かった。
吉琳:どこへ行くのですか?
ジル:…内緒です
ジル:今夜は、二人きりで静かに過ごしましょう

***

ついたところは、城下の町外れにひっそりとたたずむ店だった。
吉琳:ここは…?
ジル:酒場ですが、店主が知り合いなのです
ジル:貸し切りにしてありますから、ゆっくりくつろいでください
個室に通されて、ソファーに座ると、
店主が、ピンク色のお酒が入ったグラスを二つ持ってきてくれた。
ジル:記念日なので、特別なものを頼んでおきました
吉琳:ジル…
吉琳は驚いたように、目を二三度瞬かせて、グラスを持った。

(吉琳が居るだけで、この場所が何とも華やかに見える…)

ジル:では、乾杯…

***

吉琳:本当に…素敵な時間をありがとうございました
楽しい時間を過ごして、店を去ろうというときに、
目元を赤くした吉琳はジルにそうお礼を言った。
吉琳:とっても、良い記念日になりました
ジル:どういたしまして……でも
ジルはそっと吉琳の手を握ると、馬車にいざなった。
ジル:これで、終わりではないですよ
吉琳:……?

***

その後……。
ジルは湖畔にあるコテージに馬車を走らせた。
ジル:今夜は、ここに泊まりましょう
ジル:二人きりでゆっくり過ごすと言ったでしょう

***

ジルは吉琳を部屋に案内すると、
そのベッドの上には、仕立ての良い上品な服が広げてあった。
吉琳:ジル、あれは…
ジル:貴女へのプレゼントです
ジル:私の選んだ服が好きだと言ってくださったので…
ジル:仕立ててみました。気に入ってくれるといいのですが
吉琳は信じられないという顔をして、ベッドに駆け寄ると、
服を手に取った。
吉琳:嬉しい…ありがとうございます
頰を綻ばせる吉琳を見て、思わずジルは目を細める。

(そんな風に喜んでくれると、悩んだ甲斐がありますね)

ジル:さっそく、着てみてください。手伝いましょう
吉琳:あ…
ジルが手を伸ばすと、吉琳は少し身体を強ばらせていたけれど、
やがて俯いて小さく頷いた。
ジルは器用な指先で上着を脱がせると、
冷えた夜気に吉琳の肌が小さく震えた。

(吉琳…)
(どうしてでしょうね)
(どれだけ時間が経っても、吉琳への想いは色褪せない…)

ジルは、吉琳の肌を指でなぞる。
吉琳:あの……
そして、そのまま腰を引き寄せると、
その身体を抱きしめて、耳元にそっと口づけた。
吉琳:ジル…本当に、ありがとうございます
吉琳:忘れられない、素敵な記念日になりました
吉琳はジルを見上げて、恥ずかしそうに頰を染めた。
吉琳:私、ジルのことが今でも変わらず大好きです…

(吉琳…)

ジルの胸は、締め付けられるように、愛しさで溢れていった。
ジル:私も…
ジル:愛していますよ、吉琳…

(これからもずっと…)

ジルはそう思いながら目を閉じて、
いつまでも吉琳の温もりを感じていた…―。

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レオ>>>

 

公務が終わったレオは、
自分の部屋で吉琳からの手紙を読んでいた。

(へえ、花が好きなのか…)
(可愛い吉琳ちゃんらしいね)

レオはふと目を上げる。

(それなら、ここは王道にお祝いするのがいいかな…)

レオはくすりと微笑むと、
甘い予感を胸に、ふと目元を緩めた……。

***

そして、記念日当日……。
レオが馬車を用意して、城につけると
ドレスをまとった吉琳があらわれた。
レオ:おしゃれして来てくれたんだ

(…可愛いな)

レオの視線に気づいたように、吉琳は頰を染めて微笑んだ。
吉琳:…レオとの記念日だから
レオ:ありがとう、吉琳ちゃん
レオは吉琳の手を取ると、そっとその甲にキスをした。
レオ:さあ、行こうか

***

レオは馬車を走らせると、町外れにある教会までやってきた。
レオ:さあ、どうぞ
手を引いて馬車を降りると、吉琳は不思議そうに目を見開く。
吉琳:ここは…?
レオ:ここで、どうしても渡したかったんだ
レオはそう言って、持っていた紙袋から華やかな扇子を取り出した。
吉琳:……!
吉琳は驚いた顔で、レオを見つめている。
吉琳:花がらの扇子…
レオ:本物の花だと枯れちゃうし、これなら好きな時に持ち歩けると思って
レオはそう言って、吉琳に扇子を手渡した。
レオ:吉琳ちゃんと、今日の日を迎えられて、とっても嬉しい
レオ:これからも、ずっと一緒にいさせて
レオ:吉琳ちゃんを、誰よりも幸せにするって、ここで誓う
吉琳:レオ…
信じられないという顔で、吉琳は目を潤ませると、
レオに向かって、こくりと頷いた。
吉琳:ありがとう…私も、レオが好き…

(吉琳ちゃん…)

レオは吉琳の身体を抱き寄せると、
その唇に、そっとキスをした……。

***

レオが吉琳の手を引いて教会を出ると、
空からぱらぱらと雨が降ってきていた。

(雨か…)

レオは空を見上げて、少し眉をひそめる。

(夜景を見に行こうと思ってたけど……)

レオ:とりあえず、馬車に戻ろうか
レオがそう言うと、吉琳はこくりと頷き、
手を引いたまま、二人は馬車まで急いだ……。

***

(けっこう降ってたな…)

馬車に入ると、濡れた服が身体に張り付いて、
レオは軽く身震いした。
ふと傍らを見ると、吉琳のドレスもびっしょりと濡れて、
身体に張り付いてしまっている。
レオ:大丈夫、寒い?
レオは吉琳の肩を抱き寄せた。
吉琳:平気…
吉琳はレオを見上げる。

(でも、このままじゃ…)
(ていうか、吉琳ちゃんのこの格好は…)
(俺が落ち着かないっていうか…)

濡れて透けたドレスから吉琳の身体の線がうっすら見えている。
レオ:…いいこと思いついた
レオは口元に笑みを浮かべながら、
吉琳の腰に手を回して、その耳元で何ごとかを囁いた。
すると、吉琳はみるみる頰を染めて……。

***

その後……。
二人は城に戻ってくると、
そのまま部屋のバスルームへ向かった。
レオ:…濡れた服を脱がなくちゃ
レオが吉琳のドレスに手をかけると、
吉琳は、恥ずかしそうに目を伏せた。
吉琳:ねえ、レオ…
吉琳:本当に一緒に入るの?
レオ:もちろん。俺も濡れちゃったし
レオ:いいでしょ?
レオがそう言うと、吉琳は少し迷ったあと、こくりと小さく頷いた。

(可愛いな…)

レオは、胸の高鳴りを押さえられずにいた。

(もう、待てない…)

レオは吉琳のドレスを脱がせて、自分も服を脱ぐと、
恥ずかしそうにしている吉琳の身体を抱き上げた。
吉琳:きゃっ…
驚いてレオの身体にしがみつく吉琳の身体を、
抱き抱えたまま、レオは一緒にバスタブに入った。
吉琳の柔らかな肌と触れ合って、
レオは自分の身体が熱くなっていくのを感じていた。

(今日は予定と違っちゃったけど…)
(二人きりで、こうやって過ごせて良かった)

レオ:俺、吉琳ちゃんと、こうやって抱き合ってるのが一番嬉しいかも…
レオは吉琳の肩口に顔を寄せて、濡れた肌に唇をつける。
吉琳:あ……
吉琳はびくんと身体を震わせたあと、
レオを熱っぽい瞳で見上げて、呟いた。
吉琳:私も……
そう言って、吉琳はレオの腕にそっと手を添える。
レオ:吉琳ちゃん…

(どうしようもなく、愛しい…)
(出会ってからずっと…きっとこれからも…)

レオは吉琳の唇にキスしながら、
吉琳の胸の膨らみに手を這わせた。

(もっと欲しくなっちゃうな…)

吉琳:んっ……
吉琳の甘えたような声がバスルームに響く。
レオ:吉琳ちゃん
レオ:これからも、ずっと一緒にいて……
吉琳:うん……
レオは吉琳の肌を味わいながら、
そっと自分の身体を重ねていった…―。

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ゼノ>>>

 

星が夜空にまたたく、澄んだ夜…―。
ゼノは執務室で、吉琳からの手紙を読んでいた。

(身に付けるもの…か…)
(さて、色々あるが、どうしたものか…)

ゼノが思い巡らせていると、
そこへノックの音がしてアルバートが現れた。
ゼノ:…アル
ふとゼノは声をかける。
アルバート:はい
アルバートはぴしっと背筋を伸ばして返事をした。
ゼノ:ウィスタリアのプリンセスは、いったい何を一番嬉しがると思う?
アルバートは少し緊張した面持ちで咳払いをすると、厳かに答えた。
アルバート:ゼノ様がすることでしたら、何でも喜ばれるのでは…
アルバート:…しかし、悩まれるゼノ様を見るのは、複雑な気持ちになりますね
そう聞いて、ゼノはふっと笑みを零した。
ゼノ:そうか

(こうやって吉琳のことで悩むのも、なかなか楽しいものだが…)

***

そして、数日後……。
公務でウィスタリアを訪れたゼノは、
合間に吉琳の部屋をノックした。
吉琳:ゼノ様…!
突然訪れたゼノに、吉琳は目を見開いた。
ゼノはその吉琳の腕を取ると、顔を寄せて、耳元で囁いた。
ゼノ:…記念日は迎えにいく
吉琳:あ……
とたんに、吉琳は頰を染める。
吉琳:はい…分かりました……
吉琳は、二三度瞳を瞬くと緊張した面持ちで頷いた。
そしてゼノは、片手を挙げて部屋を出た。

(随分と悩んだものだが)
(吉琳は喜んでくれるだろうか…?)

***

そして、迎えた記念日当日…―。
馬車で吉琳を迎えに来たゼノを、
吉琳は、ドレスを着て待っていた。
ゼノ:行こう
吉琳:はい
ゼノは手を取って、馬車に乗り込んでいった。

***

ゼノが吉琳を連れてきたのは、シュタインのレストランで、
テラス席からはシュタインの街並みが一面見渡せた。
店主:いらっしゃいませ
店主:記念日ということで、どうぞごゆっくりなさってください
吉琳:ありがとうございます
吉琳が丁寧にお辞儀を返す。
ゼノ:店は貸し切りにしてある。ゆっくりするといい
店主がシャンパンを出してくれて、乾杯をすると、
美味しそうな料理が次々に出てきた。
吉琳:すごい…
吉琳:こんなにしていただいて…嬉しいです
感激している吉琳に、ゼノは目元を緩めた。

(こんな風に素直に喜ばれると…)
(俺も幸せを感じずにはいられない)

ゼノ:ところで…シュタインではこの時期、祭りを盛んにしていてな
吉琳:お祭り、ですか…?
吉琳は不思議そうに首を傾げる。
ゼノ:そろそろだと思うが…まあ、見ていろ
ゼノはそう言って、夜空を手で示した。
言われるまま、吉琳が空を見上げると……
大きな音が響いたかと思うと、夜空いっぱいに花火が打ちあがった。
吉琳:……!
吉琳はしばらくあっけにとられたような顔をしていたが、
花火の尾が夜空の中に落ちていくのを見つめながら、たちまち笑顔になった。
吉琳:ゼノ様、これって……
ゼノ:お前はよく、夜空を見上げているからな
ゼノ:この場所から、綺麗な夜空を見せたかった
吉琳:すごく…嬉しいです
吉琳は感動したように目を潤ませて、ゼノにそう呟くと、
ゼノは微笑んで、その手に自分の手を重ねた。

***

その後……。
ゼノと吉琳は、ゼノの部屋に戻ってきた。
ゼノ:それから、吉琳…
紅茶を飲みながらくつろいでいる吉琳に、
ゼノは小さなリボンのかかった箱を手渡した。
ゼノ:これを受け取って欲しい
吉琳:これは…?
吉琳が箱を開けると、その中には華奢な細工の髪飾りが入っていた。
吉琳:あの…もしかして、手紙の……?
吉琳はゼノと髪飾りを交互に見比べている。
ゼノ:ああ
ゼノ:公務で忙しくて会えない時も多いが……
ゼノ:俺がいつも、お前を想っていることを忘れないでほしい
ゼノ:今日の大切な日に、どうしてもそれを伝えたかった
吉琳:ゼノ様…
ゼノが吉琳の手を取ると、
吉琳は頷いて柔らかな笑みを浮かべた。
吉琳:私こそ…いつもゼノ様のことをお慕いしています

(不思議なものだな…)
(出会ってから随分経つが…)
(吉琳を愛しいと思う気持ちは、日に日に強くなっていく)

ゼノは吉琳を抱きしめると、その耳元に唇を寄せた。

(そして、吉琳を離したくないという気持ちも…)

ゼノ:愛している、吉琳…
ゼノは傍らのベッドに吉琳の身体をゆっくりと押し倒すと、
優しく、首筋に唇を押し付けた。
吉琳:ゼノ様……
吉琳はゼノの名前を呼びながら、熱い吐息を零した。

(この温もりを離したくない…)
(…この先、ずっと)

ゼノ:…吉琳、側にいてくれ
ゼノは吉琳を強く抱きしめると、
その身体をゆっくりと手で撫でていく。
吉琳:はい……
吉琳:いつまでも、側にいます
ゼノは吉琳の柔らかな肌に身を重ねると、
そっと目を閉じた…―。

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ユーリ>>>

 

爽やかな風が吹く、心地よい午後…―。
ユーリは、仕事の合間に、
庭で吉琳から届いた手紙を読んでいた。

(特別なことをしたい…か)

ユーリは手紙を畳むと、ポケットにしまってから考える。

(吉琳様の特別って、どんなかな?)
(忙しいから、どこか遠くに行くのは難しいかもしれないけど…)
(何か、してあげたいな…)

ユーリはそんなことを考えながら、ふと空を見上げた。

***

数日後……。
ユーリはひとり、市場を訪れていた。

(吉琳様、何が嬉しいのかな…)

慌ただしく過ごしながらも、
ユーリはいつも頭の隅では、記念日のことを考えていた。

(どうせだったら、記念になるようなものをプレゼントしたいけど…)

ユーリは市場をぼんやり見渡しながら歩いていると、
ふと花屋の前で立ち止まった。

(あ、これ…)

***

市場から帰ってきたユーリは、再び城の中の仕事に戻り、
公務中の吉琳に紅茶を注いでいた。
ユーリ:あのね、吉琳様
ユーリ:しばらく忙しいから、公務でしか会えないかも
吉琳:そっか…
ユーリの言葉を聞くと、吉琳は公務の手を止めて、
少し浮かない表情をした。
吉琳:…うん。でも仕方ないね
そして、気を取り直すように笑顔を浮かべると、
吉琳は書類に目を戻す。

(ごめんね、吉琳様…)

***

そして、記念日の前日……。
仕事が終わった後、ユーリはキッチンにアランと二人で立っていた。
二人の前には、たくさんの食材やスパイスが並び、
大きな鍋が火にかかっている。
ユーリ:…で、その後にこれを入れるの?
ユーリが慣れない手つきで、鍋に調味料を振り入れようとするのを、
アランが慌てて止めた。
アラン:おいバカ、入れすぎ
ユーリ:そう?
アラン:…ったく。これじゃあ俺が作った方が早えよ
アランが呆れたように眉をひそめた。
ユーリ:それじゃあ駄目なんだよ

(大切な人への贈り物だからね…)

***

そして、迎えた記念日当日…―。
公務が終わった吉琳の手を引いて、
ユーリは部屋までの廊下を歩いていた。
吉琳:どうしたの、ユーリ?
ユーリ:いいから、一緒に来て

***

そして、ドアを開けると……
吉琳:わあ……!
そこには、部屋一面に薔薇の花びらが舞い散っていた。
吉琳は驚いて、感嘆の声をあげながら、
花びらの上におそるおそる、足を踏み出していく。
吉琳:すごい……
ユーリ:吉琳様は、花が好きでしょ?
ユーリ:なにか、ロマンチックなことをしたくて…
吉琳:うん、すごく綺麗…嬉しい…
ユーリを見て、吉琳は顔をほころばせた。
吉琳:ありがとう、ユーリ…

(喜んでくれて良かった)

ユーリは嬉しくなって、続けた。
ユーリ:まだあるんだ、待ってて
ユーリはそう言って、部屋を出ると、
キッチンから料理の乗ったワゴンを運んできた。
かぶせてあった白いクロスを取ると、
そこには、ワインと焼きたてのパン、シチューの入った鍋が置いてある。
吉琳:美味しそう…これ、どうしたの?
ユーリ:作ったんだ、一緒に食べよう
吉琳:ユーリが?
吉琳が目を見開く。
ユーリ:そうだよ。手紙で教えてくれたでしょ?
ユーリ:記念日に、吉琳様に特別なことをしたかったんだ
ユーリがワインをグラスに注ぎながらそう言うと、
吉琳は、自分が手紙に書いたことを思い出したようで、
少し頰を染めてユーリを見つめた。
吉琳:ユーリ、覚えててくれたの…
ユーリ:もちろん
ユーリは料理をテーブルに並べ、椅子を引くと、吉琳を手招いた。
ユーリ:さあ、どうぞ
椅子に腰掛けた吉琳を、ユーリは後ろから覗き込む。
ユーリ:どこかに行くことはできないけど…
ユーリ:二人で、特別な時間を過ごそう
吉琳:ユーリ…
吉琳は嬉しそうに頷くと、
二人は、微笑みあってグラスをあわせた。
ユーリ:じゃ、食べさせてあげる
ユーリはスプーンでシチューをすくうと、
吉琳の口元に運んだ。
吉琳:…美味しい!

(良かった…)

ユーリは微笑む吉琳の表情を、にこやかに見つめる。

(出会った頃から、ずっと一緒だ…)
(俺、この笑顔が見たくて、大好きで…)

吉琳:ユーリは食べないの?
ふと気づいたように吉琳は尋ねる。
ユーリ:俺は……
ユーリは、ナプキンを手に取ると、
シチューのついた吉琳の唇をぬぐった。
吉琳:あっ…
ユーリは恥ずかしそうに身を引く吉琳の顔を押さえて、
自分の方に引き寄せた。
ユーリ:俺は、こっち…
ユーリはそう呟くと、
吉琳の腰に手を回して、唇を寄せてしずかにキスをした。

(吉琳様…)
(ずっと、俺の腕の中にいて欲しい…)

ユーリは吉琳の身体に回した手に力を込めて、
更に強くキスを繰り返す。
ユーリ:…ずっと、側にいて。吉琳様
ユーリ:これからも、ずっと…
吉琳:うん……
静かな夜の中で、
二人はいつまでも、身を寄せあっていた…―。

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シド>>>

 

空に星が瞬く夜…―。
シドは自室の椅子に座って、物思いに耽っていた。
使用人:……ご主人様
使用人:プリンセスから手紙です
声をかけられて、手紙を渡されてふと我に返る。
シド:ああ
シドは封を開くと、便箋に踊る綺麗な文字を目で追っていった。

(食事がしたい…か。なるほど…)
(記念日はあいつが喜ぶようなこと、してやらねえとな)

そして、シドは、ふと考え込んで……。

***

そして、迎えた記念日当日…―。
シドは、自分の邸宅に吉琳を呼び出した。
吉琳:…突然、どうしたの?
手を引いて廊下を急ぐシドに、吉琳は不思議そうな表情をしてついてくる。
シド:いいから、来い

***

そして、シドはとある部屋の前で立ち止まり、ドアを開けた……。
吉琳:わぁ……!
その途端、吉琳が歓声を上げた。
部屋の中には、数々のドレスと、メイク道具、
アクセサリーなどが、所狭しと揃えられていた。
吉琳:すごい……!
シド:お前のために用意した
シド:今日は、大切な日だからな
シドはそう言うと、吉琳の頰に顔を寄せた。
吉琳:シド……
すると、二人の傍らにメイドがやってきて一礼した。
メイド:お好きなものにお着替えください。お手伝いさせていただきます
シド:せめて、大人っぽくしてもらえよ、色気ねえし
吉琳:もうっ……

(拗ねる顔も、中々いいじゃねえか)

シドは思わず、目元が緩む。
シド:時間になったら、外で待ち合わせだ
扉へ向かうシドに、吉琳が声をかけた。
吉琳:…シド
シド:あ?
吉琳:惚れ直しても、知らないからね

(…相変わらず気丈なやつ)

シドは思わず、口の端を緩める。

(…面白れえ)

シド:そりゃ楽しみだな
シドはにやりと微笑んだ。
シド:期待してるぞ

***

そして、約束の時間……。
馬車を止めて待っていると、ドレスをまとって、髪を結い上げて、
ぐっと大人っぽくなった吉琳があらわれた。

(へえ……)
(……見違えたな)

シドは、その姿から目が離せず、胸が高鳴るのを隠せなかった。
吉琳:どう……?
シドは平静を装いつつ、静かに答える。
シド:悪くねえな
シド:…綺麗だ

***

馬車に揺られながら、
シドは隣にいる吉琳へ目を向ける。

(女って、髪型と化粧でこんな変わるもんなのか?)
(それとも、今日が特別な日だから余計にそう見えんのか)
(…調子狂うな)

***

そして、馬車は城下のレストランへついた。
店に入っていくと、シドは慣れた様子で吉琳をエスコートしていく。
吉琳:…あ、ここメイドさん達から聞いたことある
吉琳:有名なお店なんでしょう?
シド:なかなか美味いらしいぞ
個室に通されて、シャンパンを傾けると、
吉琳はリラックスした様子で微笑みを零した。

(連れてきて、良かったな)

シド:記念日に
シドがグラスを持ち上げると、吉琳も口元を綻ばせてグラスをあわせた。

***

やがて、食事を充分に楽しむと二人はシドの部屋へ戻ってきた。
吉琳:今日はありがとう…なんだか、夢みたいな一日だった
部屋に戻ってくると、
ほんのり上気した顔で、吉琳はシドにそう言った。
シド:ああ、そりゃ良かった

(どこ連れて行こうかと珍しく悩みもしたが…)
(この顔が見れたんなら、間違いはなかったみたいだな)

シドは目を細めて微笑みを返す。
吉琳:…惚れ直しても知らないよ、って言ったけど…
吉琳:私のほうが、シドに惚れ直したかも

(こいつ…)

吉琳:…シド?
吉琳は何も言わないシドの顔を、不思議そうに覗き込んだ。
シド:…お前、それ
シド:誘ってんのか?
シドは吉琳の腕を取ると、そのまま強引に壁に押し付けた。
吉琳:えっ、そんな…
慌てて、吉琳は首を振る。
シド:分かってんのか
吉琳:…え?
シド:お前が今、どれだけ魅力的か…
シドが顔を近づけてそう囁くと、吉琳はとたんに顔を赤くした。
吉琳:えっと、気に入った…?
シド:気に入ってるから、そのまま伝えてんだろ
シドが吉琳のあごをすくって真っ直ぐに見つめると、
吉琳はほっと息をついた。
吉琳:良かった…
吉琳:あんまり褒めてくれないから
吉琳:ひょっとして気に入らないのかと思って…

(本当にこいつは…)
(何もわかっちゃいねえな)

シド:…ああ
シド:その髪型、すげえ好みだ
シドは吉琳の髪に手をかけると、
そっと、耳に唇をつけて囁いた。
シド:ずっと、お前から目を離せなかった
シド:店で抱きしめてやろうかとも思ったが…
シド:さすがに、ああいう店ではまずいだろ
吉琳:シド……
吉琳はますます頰を染める。
そして、シドは吉琳の腰に手を回すと、
ドレスのリボンに手をかけた。
吉琳:あっ、シド…
リボンが床に落ちて、シドは柔らかな肌に指を這わせると、
胸元に顔を寄せ、そっとキスをした。

(こんなに吉琳が愛しいなんて…)
(今日ばっかりは…俺の完敗だな)

シド:出会ってから、今までずっと……
シド:…愛してる、吉琳
吉琳:うん、私も…
シドは吉琳の肩に顔を埋め、その身体を強く抱きしめた…―。

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アルバート>>>

 

少し肌寒い、夜更けのこと…―。
アルバートは、自分の部屋で吉琳から届いた手紙を読んでいた。

(なるほど…これで、好きなものは分かった)
(後は、日程を考えるだけだな)

アルバートは手紙を畳んで机にしまうと、眼鏡を直した……。

***

数日後……。
公務の後、アルバートは書斎で机に向かって、熱心に書き物をしていた。

(まずは、城下でお茶をして……)
(それから、話題の店に行ってみよう)
(食事は、どこがいいか……)

アルバートはふと羽根ペンを止め、少し目を閉じて考えると
再びペンを走らせた……。

***

そして、記念日当日…―。
アルバートが自室で支度をしていると、
ふいにノックの音が響いた。
使用人:すみません、急ぎの手紙が届きましたが…
アルバート:俺宛てに…?
不思議に思って、手紙を受け取り、差し出し人を見る。

(吉琳からだ)

急いで中を改めると、そこには……

『ごめんなさい、どうしても公務が終わらなくて…』
『会えるのが、夜になってしまいます』

アルバート:なっ……!?

(これでは…立てた予定に狂いが出てしまう…)
(どうする…?)

アルバートは部屋でひとり、頭を抱えていた。

***

その夜……。
公務が終わったと連絡があった吉琳を、
アルバートはようやく馬車で迎えに行った。

(夜のデートは、考えていなかったな…)
(結局、何も代案がないままだが…)

城の前で待っていると、急いだ様子の吉琳が現れた。
吉琳:すみません…どうしても急ぎの公務が入ってしまって
来るなり、吉琳はすまなそうな様子で、アルバートに頭を下げた。
アルバート:いえ…気にしないでください
アルバート:では、行きましょうか

***

馬車に乗った吉琳は、
ふとアルバートの手元にあるメモに目を留めた。
吉琳:それは…?
メモに書いてあることを読みながら、不思議そうに首を傾げる。
吉琳:城下でお茶……
アルバート:いえっ!
アルバート:これは…別に…ただのメモですから気にしないでください
慌ててメモをポケットにしまうアルバートに、
吉琳は優しげな表情を浮かべた。
吉琳:色々、考えてくださっていたんですね
アルバート:まあでも…遅くなってしまったので、なにか別の…
そう言うアルバートに、吉琳はふと微笑みを浮かべた。
吉琳:今からでも、回って頂けませんか?
アルバート:え?
吉琳:だって、アルバートが私のために考えてくれたんですから…
嬉しそうに頰を染める吉琳を見て、
アルバートは胸が温かくなった。
アルバート:……では
そして、アルバートは御者に行き先を告げて……。

***

城下の街で二人は馬車を降りた。
昼はにぎわっている通りも、今はしんと静まり返っている。
そして、とある店の前でアルバートが立ち止まった。
アルバート:ここで花を買う予定でした
吉琳:そうなんですね
吉琳:どんな花を買うつもりだったんですか?
アルバート:そうですね、あなたは鮮やかな可愛らしい花が似合うので…
アルバート:ガーベラやカーネーションとか…
吉琳:わあ、素敵ですね、大好きです
吉琳はにっこりと微笑んで、アルバートを見上げる。

(予定は違ってしまったが…)
(吉琳と二人で歩いているだけで、何とも楽しい気持ちになる…)

アルバート:行きましょうか
アルバートは手を伸ばすと、吉琳はそこにそっと手を添えた。
吉琳:はい…

***

そのまま夜の城下を歩きながら、
二人は教会の前までやってきた。
アルバート:最後はここで……
アルバートは持っていた鞄からプレゼントの包みを取り出した。
吉琳:これは……?
アルバート:記念日ですから…
アルバート:俺からの気持ちです
包みを開けると、中身は可愛らしいスカートだった。
吉琳:わあ、ありがとうございます
アルバート:このような色の服が似合うと思ったので…
吉琳:嬉しい…
吉琳は片手でスカートを胸に握りしめると、
アルバートを見上げてお礼を言った。

(吉琳…)

アルバートは繋いだ吉琳の手に力を込める。
吉琳:今日は、とっても楽しかったです
アルバート:たいしたことも出来なかったですが…
アルバートがそう言うと、吉琳は首を横に振った。
吉琳:いいえ。私、アルバートと二人でいるだけで楽しいから…

(そうか…)
(例え計画通りでなくとも)
(吉琳さえいれば、どんな日も特別になるのか…)

アルバート:俺もです
アルバート:あなたといると、それだけで楽しい

(出会った時から、ずっとそうだ…)
(吉琳といるだけで、わくわくしている…)

アルバート:吉琳…
アルバートは吉琳の身体を抱き寄せると、
その唇に、そっとキスをした。
アルバート:これからもずっと…側にいて欲しい
吉琳:はい
吉琳はアルバートを見上げると、目元を綻ばせた。
人けのない広場で、
二人はいつまでも繋いだ手を離さなかった…―。

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2

★10日間限定毎日読み放題2日目★

2014年3月に開催していた『彼とのドキドキ 密着レッスン後編』の アラン、ジル、レオ、シドのシナリオが読めちゃうよ☆

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アラン>>>


ある日の午後…―。
私はダンスレッスンのため、一人ホールへと来ていた。

(あれ…誰もいない)

静まり返ったホールを見渡していると、後ろから足音が近づいて来る。
???:ごめんね、吉琳ちゃん
振り返ると、そこにはレオの姿があった。
レオ:ジルから言われたんだけど、ダンスの先生が来れなくなたんだって
吉琳:そっか……
吉琳:じゃあ、部屋に戻ろうかな
レオ:もっと早く言えば良かったね
レオとホールを出ようとすると、通りがかったアランが顔を見せる。
アラン:お前ら、何してんの
レオはアランの顔を見た途端、ぱっと目を見開いた。
レオ:あ、いいこと思いついた
レオ:アランに教えてもらえば
アラン:は?
訳が分からないといったアランに、私は事情を説明する。
吉琳:実は…ダンスレッスンの先生が来れなくなっちゃって

(だからって、アランに教えてもらうのもきっと迷惑だよね)

思っていると、レオの手が私へと伸びてくる。
レオ:アランが嫌なら、俺が教えるけど
すると、レオよりも先にアランが私の腕をさらった。
吉琳:アラン…?
アラン:教えればいんだろ
アラン:行くぞ
アランがホールの中央へと私を連れて行く。
振り返ると、レオがひらひらと手を振った。
レオ:じゃあ頑張って、吉琳ちゃん

***

そうして、私はアランにダンスレッスンを教えてもらうことになった。
アラン:ほら、もっと近づけよ
アランが私の腰をぐっと自分のほうへ寄せる。
アランの身体と私の身体が、ぴったりと重なる。

(ダンスって、こんなに近かったっけ……)

アラン:音楽ねえから
アラン:ワルツでいいだろ

(それなら、私も分かるかも)

吉琳:分かった
アランが私をエスコートしながら、足を踏み出す。
私もドレスを揺らすと、音を頭の中で音符を描く。
アラン:できんじゃん
吉琳:ありが……
言いかけて見上げると、思ったよりも間近にアランの顔があった。

(どうしよう…どきどきしてしまう)

音を立て始める鼓動を隠そうと、まつ毛を伏せると
アランが私の耳元に顔を寄せた。
アラン:おい
吉琳:え?
アラン:ぼーっとしてると
言うアランが足をとめ、私の背中をぐっと自分のほうへ引き寄せる。
そして、私の身体を後ろに倒した。
吉琳:わっ……
アラン:こうするぞ
さっきにも増して、間近にアランの顔が迫る。
吉琳:こうって…あの……
今にも唇が触れそうな距離に、私は言葉が紡げなくなる。

(冷静に考えると、この状況…すごく恥ずかしい)

顔が赤くなるのを感じ、困ったように目線を外す。
アラン:…冗談に決まってるだろ
アラン:何、顔赤くしてんだよ
アランが呟き、倒していた私の身体を起こす。
吉琳:…ごめん
アランは身体を私から離すと、じっと見つめて来た。
アラン:………
吉琳:アラン…?
不思議に思い小首を傾げた、その瞬間…―。
アラン:もう、やめた
アランが私の両頬を手で掴み、触れるだけの口づけを落とした。
吉琳:………!

(今、キスを……)

驚きに瞳をはっとさせている私に、アランは目を細める。
アラン:顔赤くされたら、調子狂うだろ
アラン:だから、ダンスレッスンはやめた
今度は私の身体を引き寄せると、そのまま口づけてくる。

(あっ……)

アランの強く押し付けるような口づけに私の身体がのけ反ってしまう。
アランは私の腰を支えながら、もっと深く唇を重ね直す。
吉琳:アラン、ダンスレッスンやめるって……
一瞬、唇が離れた間にそう呟くと、アランの片腕が私の髪をかきあげる。
アラン:こんな気持ちにさせといて
アラン:責任とってもらうんだよ
そして私の耳元で、甘く囁いた。
アラン:俺の気が済むまで、耐えとけ

(こんなダンスレッスン……)
(もう二度と、恥ずかしくて受けられないよ)

やがて重ねられる口づけに、私は必死に応えていった…―。

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ジル>>>


これは、あるワンピースを身にまとった時のお話…―。
スカートの裾を小さく持ち上げると、私はジルにお辞儀をする。
吉琳:宜しくお願い致します
私はジルからマナーレッスンを受けることになっていた。
ジル:こちらこそ
その声に頭を上げると、ジルが私の顎に指先を添えた。
吉琳:あの……
ジルの紫色の瞳が、私の唇をとらえる。
ジル:綺麗なルージュですね

(気づいてくださったんだ)

私は仕立てたばかりのワンピースに合わせて、
ルビー・レッドのルージュをつけていた。

(少し派手かなと思ったけど…)
(つけて来て良かった)

吉琳:ありがとうございます
ジルはふっと笑みを浮かべると、指先を離す。
ジル:では、始めましょう

***

そうして私は、ジルから歩き方のレッスンを受ける。
ジル:もっと背筋を伸ばしてください
ジルの指先が私の腰にとんとんと触れる。
吉琳:あ、はい……
ジル:もっと顎もあげて
吉琳:はいっ……

(姿勢を良くするって、難しいな……)

思いながらも歩き始めると、ジルが優しい声で言った。
ジル:いいですよ、そのまま前の柱まで歩いてください
言われるまま私は前へと進む。

(あとちょっと……)

もうすぐ目の前に柱が見えてきた、その時…―
ジル:吉琳っ……
吉琳:あっ……
ヒールに躓いてしまった私の腰に、ジルの腕が後ろから回る。

(危なかった……)

吉琳:すみません…
そう言って、ジルを見上げると……。
吉琳:ジル……?
ジルが目を細めてこちらを見つめている。
ジル:どうやら、貴女の作戦は成功のようですね
ジルの親指が、私の唇をなぞる。
ジル:口づけたくなる

(あっ……)

私の鼓動が騒ぐのと同時に、ジルの唇が重ねられる。
ジルはゆっくりと私の唇を濡らすと、下唇を噛む。
吉琳:んっ……

(ルージュがとれてしまう……)

唇に触れようと手をあげると、気が付いたジルがその手を制す。
ジル:取れてしまいましたね…ですが
ジルの言葉が私の唇にかかるように、囁かれる。
ジル:例え取れてしまったとしても
ジル:私は素顔の吉琳も好きですよ
ジルが、私の背中を柱へと追い込む。
そのまま私の身体を囲うように壁に手をつくと、耳元で甘く囁いた。
ジル:しばらくの間
ジル:目を閉じてくださいますか

(この状況で、そんな風に言われたら…)

甘い囁きに、私はそっと目を閉じてしまう。
その瞬間、ジルが先ほどの口づけよりも深く私の唇を求める。

(こんなレッスンじゃ……)
(心が持たない……)

私はジルの胸元に手を添えると、ぎこちなく口づけに応えた…―。

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レオ>>>


これは、私が髪をハーフアップに束ねていた時のお話…―。
私はいつも通り、レオに勉強を教わっていた。

(難しいな……)

息をつくと、隣のレオが本をぱたんと閉じる。
レオ:他の国の言語を学ぶって、難しいよね
吉琳:うん…どうやったら分かるようになるのかな
レオ:そうだな…
レオは眼鏡を取ると、机に置く。
レオ:うまくなるには、その国の恋人を作るのが一番いいっていうから
レオ:吉琳ちゃんは、うまくなるはずだよ
吉琳:え?
レオ:俺って外国語分かるし、吉琳ちゃんの恋人だから
微笑むレオに、私の胸がどきっとしてしまう。

(レオって恥ずかしくなるようなことを、平気で言うから)
(たまに、どう答えていいのか分からなくなる)

恥ずかしく思っていると、レオが私の顔を覗き込んでくる。
レオ:せっかくだから恋人同士みたいに勉強してみる?
レオ:特別レッスン
吉琳:特別……?
レオ:うん。まずは今からいうこと、真似してみて
レオが私の耳元で、外国語を囁く。

(発音が難しいけど……)

聞こえた通りに話すと、レオがふっと笑う。
レオ:次はこれ
吉琳:う、うん…
もう一度、聞こえた通り発音するとレオは笑いを堪えるように眉を寄せた。
レオ:やばい、可愛いな
吉琳:えっ……
突然、可愛いと言われて私の顔が真っ赤に染まる。

(そういえば、全然聞いてなかったけど…)

吉琳:何ていう意味なの…?
するとレオは嬉しそうに笑った。
レオ:それはね
レオが私の身体を囲うようにして、
私が腰かけている椅子の手すりを両手で掴む。
レオ:こういうことだよ
そして顔を近づけてくると、私の唇に軽いキスを落とす。
レオ:今、俺にキスしてほしいって意味
私が驚く間もなく、レオが私の耳元で囁く。
レオ:それから、その後の言葉は…
レオ:俺に、抱かれたい
吉琳:レオっ……
私は、困ったように視線を伏せる。
レオは私の顎を上向かせると、面白がるように口角をあげた。
レオ:そんなに困らなくたって
レオ:もう何度も俺に抱かれてると思うけど
吉琳:それはっ……
私は言いかけると、じっと見つめてくるレオの瞳に耐えられなくなり
小さくつぶやいた。
吉琳:それはそうだけど…恥ずかしいよ
レオ:そう?
レオは目を細めると、私の唇をなぞる。
レオ:頭で覚えるより、身体で覚えたほうが早いかもよ
レオは親指で私の口を開かせると、そのまま唇を重ねる。
吉琳:ん……
重なる唇の隙間から、レオが言葉をこぼす。
レオ:こんな風に…ね?
吉琳:んっ…ふ…
息もできないような深い口づけに私は甘い吐息をこぼす。
レオは唇を離すと、私の頬に手を添える。
レオ:思い出してみて、さっきの言葉
私は小さく息を切らしながら、うるんだ瞳でレオを見つめる。
吉琳:こんなんじゃ…覚えられないよレオ…
レオ:覚えられないんじゃ、仕方がないな……
レオ:先生として、吉琳ちゃんにお仕置きしなきゃ
言うレオの唇が胸元へ寄せられる。
吉琳:あっ…レオ……
私は身体じゅうに落とされるキスに、
甘い吐息をこぼしていった…―。

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シド>>>


暖かな陽気が続く、ある日…―。
私は久しぶりに、シドの邸宅を訪れていた。

(久々に会うから、なんだか緊張するな……)

使用人の方に案内された部屋で待つと、ふとオルガンが目に留まる。

(城下にいた頃、子どもたちによく弾いていたっけ……)

懐かしく思い触れようとすると、扉が叩かれた。
シド:待たせたな
吉琳:あ、ううん。大丈夫
振り返ると、シドが片眉を上げながら近づいて来る。
シド:何してんだ
吉琳:オルガンがあったから、思わず城下にいた頃を思い出しちゃって…
吉琳:ほら、前に一度シドに話した事があるでしょ?
吉琳:あの時は、シドに教えてもらったけど……
シドが鍵盤を隠していた蓋を開ける。
シド:ああ、そうだったな
シドはそう言うと、どさりとオルガンの椅子に腰掛けた。
シド:もう一度、教えてやろうか
シド:来いよ
私はシドの体勢を見て、小さく目を見開く。
吉琳:えっ…膝の上は…
シドは私の仕草を見て、大きく笑った。
シド:おかしなこと言う奴だな
シド:来い
私の腕を引っ張ると、シドは私の身体を自分の膝の間に座らせる。
すっぽりとシドの身体に囲われた私の耳に、シドがいたずらっぽく囁いた。
シド:膝の上じゃねえ。間だよ
その言葉に、私をからかっているのが分かる。

(膝の上も変わらないのに……)

困ったように眉を寄せていると、後ろから私の手を鍵盤に乗せる。
シド:ほら、弾いてみろ
吉琳:……う、うん
ためらいつつも私は鍵盤を見ると、知っていたオルガン曲を弾き始める。
するとシドが私の首筋に鼻を寄せてきた。
シド:…いつもと違えな。お前の香り
吉琳:あ、うん…実は香水をつけてる
私は久々にシドに会うため、少しでも綺麗にしようと
ムスクの香りがする香水をつけていた。
シド:なんだ、色気づいたのか
吉琳:そんなんじゃないけど……
シドが私の髪を片側に寄せ、顔を近づける。
シド:この香り、悪くねえな
首筋に感じるシドのぬくもりに、私は弾いていた手を止める。
吉琳:ちょっ…教えてくれるんじゃないのっ……
シド:そのまま弾いとけ。教えてやるから
吉琳:でも……
シドの手が、私のブラウスの後ろから胸へと差し込まれる。
吉琳:んっ…シド……
シド:そのまま弾いてねえと、お前の声誰かに聞こえちまうぞ
シド:いいから、続けろ
シドに急かされ思わず弾き始めるも、弾くことに集中出来ない。
吉琳:シドがそんなことするからっ……弾いてられない
シド:仕方ねえだろ、俺も男なんだからよ
ブラウスの布が肩からずらされ、ランジェリーの紐が見えてしまう。
シド:お前がそんな香りさせてっと
シド:…乱したくなる
シドの唇が後ろから私の耳を甘く噛む。
吉琳:ぁっ…シド……
私の胸をシドの大きな手の平が包み込む。
甘く噛まれた耳からは、シドの吐息を感じる。
シド:久々に会ったんだ
シド:もっとお前を感じさせろよ

(そんなこと言われたら、逆らえないよ……)
(だって私は)

吉琳:あっ…シド……

(シドが好きだから)

私はシドから送られる甘い疼きに必死に耐えながら、
オルガンに触れていた…―。

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3

★10日間限定毎日読み放題3日目★

 

沒存到......

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4

★10日間限定毎日読み放題4日目★

2014年2月に開催していた『真夜中のデート』の アラン、ルイ、ユーリのシナリオが読めちゃうよ☆

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アラン>>>


私は予定通りの公務をこなし、視察から戻ってきた。
バルコニーで夜風にあたっていると、心の中でアランの言葉が響く。

(あの時のアラン…)

アラン:お前、分かってねえな
アラン:俺は……

(一体、何が言いたかったんだろう)

そこへユーリが顔を覗かせる。
ユーリ:こんなとこで何してるの?吉琳様
吉琳:ユーリ…
私は小さく微笑み、空に浮かぶ満月を見上げた。
吉琳:少し考え事をしてて
するとユーリが明るい声で言う。
ユーリ:元気のなさそうな吉琳様のために
ユーリ:俺がおもしろい話してあげる
そう言って、ユーリはいたずらっぽく微笑んだ。

***

ユーリと別れて部屋に戻ると、先ほどのことを思い出す。

(きっとユーリは私に気を遣ってあんな話をしたんだろうけど…)

〝ユーリ:最近、お城に幽霊が出るんだって〞
〝ユーリ:見る人の『好きな人』の姿になって、噴水に現れるらしいよ〞

(そんなことって、本当にあるのかな…?)

その時、不意に視界に入った窓の外に人影が見えた。

(あれは…)

***

私は人影を追うように、噴水の前にやって来た。

(ここにいたと思ったんだけど…)

辺りを見渡していると、噴水に視線が止まる。

(…ユーリが言ってた噴水だ)

半信半疑に思いながらも、私は噴水の縁にそっと手を置いてしゃがみこむ。

(本当に、アランの姿になった幽霊が現れたりして……)

透明な水の中を覗くと、自分の姿が水面に映し出された。

(やっぱりあるわけないよね。好きな人の姿をした幽霊が現れるなんて…)

息をつきながら微笑んだ、その時…―。
吉琳:……!
水面にアランの姿が映った。

(アラン…!)

驚いて、振り返ろうとした私は誤って手を滑らせてしまい、
私の身体は噴水のほうへ倒れ込んでいく。
アラン:おい…!
アランの腕が腰に回され、抱きとめられる。

(あ、危なかった…)
(でも、手が濡れちゃった)

咄嗟に噴水の中についた手を見つめていると、
ぐっと後ろから腰を抱き寄せられる。
アラン:何やってんだよ
間近から見下ろすアランの瞳に、私は目を瞬かせた。

(幽霊じゃなくて、本当のアランだったんだ)

吉琳:それは……
私は言葉を詰まらせながら、アランから離れようとした。
すると、自分の胸元が透けていることに気づく。

(あっ……)

思わず、アランに抱きつく。

(さっき、手をついてしまった時に濡れたんだ…)

じっとしていると、アランが息をつく。
アラン:なんだよ、黙ったまま抱きついて
吉琳:その…胸元が透けてて、見られたくないかも…
恥ずかしくて俯きながら、正直に言うと、アランが黙りこむ。
アラン:………
吉琳:でも、このままいるのも変だよね
胸元を隠しながら離れようとすると、アランの手が私の頭を引き寄せた。
吉琳:アラン…?
アランがぼそりと呟く。
アラン:だったら、見ないでやるから
アラン:お前も…今から言うこと俺の顔見ないで聞け

(なんのこと…?)

私はアランの言葉を不思議に思いながらも、頷いた。
吉琳:う、うん…
アラン:お前を守らせるのは、俺だけにしとけ

(えっ……)

夜風がふわりと、噴水の水面を揺らす。
吉琳:…もしかして、今朝の視察のことを言ってるの…?
思わず顔をあげてアランを見つめた瞬間、小さく目を見開く。
そこには、微かに頬を染めたアランがいた。
吉琳:アラン…?
アラン:見るなって言っただろ
見つめ合っていたアランの瞳が、突然近づいた。
ぎゅっと目を閉じると、アランの唇が優しく重なった。

(アラン……)

やがて触れていた唇が、そっと離れていく。
するとアランが眉を寄せながら、私を見つめた。
アラン:お前が噴水のとこに来いって言ったんだろ
アラン:何で驚かれなきゃいけねんだよ
吉琳:えっ?
アランの話によると…

(私がアランを訪ねて、後で来るように言ったみたいだけど…)
(ずっと部屋にいたし、そんなことありえない…)

頭を悩ませると、ユーリの話が頭を過る。

(アランが見たのは、私じゃなくて……もしかして、幽霊…!?)

はっとしてアランを見上げると、ジルの声が響く。
ジル:どなたかいるのですか
私たちの方に近づいてくる足音に気づき、アランは私の手をとった。
アラン:行くぞ
そのままアランは私の手を引く。

(まさか違うとは思うけど、)
(アランが見たのは、好きな人の姿になって現れる幽霊だとしたら…)

私の姿を見てくれたことに、嬉しさが込み上げる。
私は走りながら、アランの揺れる髪を見つめる。

(このままずっと私のこと、好きでいてくれたらいいな)

繋がれた手をぎゅっと握り返すと、アランの後ろを着いて行った…―。

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ルイ>>>


ある日の夜…―。
私は一日の予定を終えて、ようやく部屋に戻ってきた。

(大変だけど、次の休日にはルイと会えるし、がんばろう…)

一息ついて、ベッドに腰を下ろすと、ノックの音が響いた。
ユーリ:…ちょっといい?吉琳様
ドアをあけて現れたユーリは、どこか浮かない顔をしている。
ユーリ:あのね、今週予定されていたパーティーなんだけど
ユーリ:なんでも先方の体調不良で延期するって、連絡があって…
吉琳:そうなの…
ユーリ:うん、それで新しい日程なんだけど、次の週末になったんだって

(え、その日は…)

ユーリ:吉琳様はその日お休みの予定だったよね、ごめんね…
申し訳なさそうな顔のユーリに、私はわざと明るく返事をした。
吉琳:ううん、大丈夫。謝らないで、ユーリ

(すごく残念だけど、仕方ない…)

がっかりした気持ちが顔に出ないよう自分で自分に言い聞かせた。

(そうだ、ルイに知らせなくちゃ…)

私はさっそくペンをとって、ルイにお詫びの手紙を書くことにした。

『ごめんなさい。休日にはパーティーが入ってしまいました』

(きっとルイのことだから、気にしなくていいと言うだろうけど…でも…)

便せんを封筒に入れようとして、ふと思い立って、またペンを走らせる。

『早く、二人きりで会いたいです…』

***

次の週末…―。
パーティーは各地から集まった客人で大盛況だった。
貴族たちにひと通り挨拶をし終わると私は夜風にあたりに庭へ出た。

(顔の火照りがおさまったら戻ろう…)

誰もいない庭を歩き回っていると…―。
???:プリンセス
背後から声をかけられて、私は反射的にすっと背筋を伸ばした。

(この声は…?)

吉琳:…ルイ!?
見間違うはずもない。
暗がりの中に微笑みを浮かべて、ルイが立っていた。
ルイ:吉琳、驚いた顔してる
吉琳:う、うん、だって…
吉琳:ねえ、どうしたの。ルイ
ルイは黙ってゆっくりと歩み寄ると、私の頬に触れた。
ルイ:話は、キスのあと
ルイは私の顎をそっと持ちあげて、
会えなかった時間を味わうように、優しくゆっくりと、口づけた。

(こんなところで急に会えるなんてびっくりしたけど、でも…)
(うれしい…)

私が口づけに応えるように、ルイの首もとにそっと手を添えたとき、
窓を挟んだホールから、とつぜん軽やかな音楽が流れてきた。

(あ、ダンスが始まった…)

貴婦人:あら、プリンセスはどちらへ?
公爵:是非ともパートナーに名乗り出ようと思っていたのに!
人々の話し声が聞こえてきて、ルイはゆっくりと唇を離した。
そして私に向き直り、優雅な動作でお辞儀をすると、すっと片手を伸ばす。
ルイ:プリンセス、踊っていただけますか?

(ルイったら…)

吉琳:もちろん、喜んで
ルイの手を取って、私たちは並んでホールへ戻っていった。

***

ルイに誘われ、軽快な曲に合わせて私たちは、ともにステップを踏み出した。
貴婦人1:ねえ、見て。プリンセスと、ルイ様よ
貴婦人2:ルイ様って本当にいつ見ても、お麗しいわね
あちこちからご婦人方のうっとりとした溜息が聞こえる。

(ルイってやっぱり人気あるんだ…)

知ってはいたものの、やはり少し心がざわついてしまう。
すると……
ルイ:吉琳、俺を見て
ターンと同時に、突然ルイに腰を強く引き寄せられて、顔を覗き込まれた。
ルイ:やっぱり
青く吸い込まれそうな瞳が、目の前で見開かれている。
ルイ:俺の吉琳が、一番綺麗
吉琳:もう…
曲が転調し、ルイにリードされてステップが変わる。
まるで、空を飛んでるみたいに軽やかで楽しくて、私は思わずルイに微笑んだ。
ルイ:そう、俺だけ見て…
しかし、曲が終盤になるにつれ、私は少し寂しくなってきてしまった。

(今はこうして、お互いの腕の中にいるけれど、この曲が終わったら…)
(また離ればなれになって、会えない日々に戻っちゃうんだ…)

すると、ルイが私の耳元に唇を寄せて囁いた。
ルイ:そんな顔しないで。今夜、さらいに行くから
私が、意味がわからずにきょとんとしていると、ふたたび青い瞳に覗き込まれた。
ルイ:12時に、門の前で
ルイ:…いいでしょ?
この瞳で見つめられると、もう何も言えなくなってしまう。
私はただ、小さく頷いた。
ルイ:じゃあ……
曲が終わり、密着していた体がゆっくりと離れていく。
ルイは腰を屈めて、私の手の甲に口づけ、そっと小さな声で囁いた。
ルイ:つづきはまた今夜……

(また、今夜……)

次のダンスの曲が流れて、
そのリズムに合わせるように、私の胸も高鳴っていった…―。

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ユーリ>>>


ウィスタリア城の鐘が真夜中の12時を告げた瞬間…―
ふいに吹いてきた夜風が木々を揺らした。
ユーリ:…吉琳様、何してたの?
振り返った私は、ユーリを目の前に何も言えなくなってしまう。

(ユーリの話を思い出して)
(両想いになれる願いをかけようとしていたなんて…)

恥ずかしいような、くすぐったい気持ちが胸にこみ上げる。

(そんなこと、言えない)

吉琳:少し眠れなくて、散歩に出ようと思ったの…
私は小さな嘘をついた唇に、微笑みをのせる。
ユーリは私の言葉を聞くと、にこっと微笑んだ。
ユーリ:そっか
そして、私に手を差し出す。
ユーリ:遅くまでいると、寒いよ吉琳様
ユーリ:部屋に戻ろ

***

ユーリに送ってもらい、部屋に戻ってくる。

(何も言わないけど、気が付いてたりしないのかな)
(ユーリが話していた木のそばにいたから)
(私が何をしようとしていたか、分かってもおかしくなかったはず…)

不思議に思っていると、ユーリが私の視線に気づく。
ユーリ:もしかして…まだ眠れそうにない?
ユーリの心配そうな瞳が覗きこむ。
吉琳:あ、うん……
ごまかすように視線を伏せると、ユーリは悩ましげに息をつく。
ユーリ:しょうがないなー、吉琳様
ユーリ:今夜だけは特別に…

(今夜だけは…?)

微笑んだユーリの言葉の続きに、私は微かに目を見開いた。

***

そうして、ユーリの服に着替えた私は城下を歩いていた。
眠れないならと、ユーリはこっそり城下に連れ出して来てくれたのだ。
吉琳:だ、大丈夫かな?

(男の子の格好して、城下に来るなんて)

ユーリ:可愛いよ、吉琳様
ユーリ:誰が見てもプリンセスには、見えない
ユーリは瞳を細めて私を眺めながら、くすくすと笑う。
吉琳:もうっ……
からかう声に頬を赤くしていると、身体が引き寄せられた。
見上げた私のおでこにユーリがキスを落とす。
吉琳:…っ…ユーリ…
ユーリ:それにしても、寒いね
ユーリは楽しそうに微笑んで私の髪に顔をすり寄せた。
そして、視線の先にある看板を指さした。
ユーリ:入ってみようよ

***

地下へ続く階段をくだり、私とユーリはお店に入る。

(ユーリとこんなところに来るなんて、なんだか新鮮)

ユーリ:はい、吉琳様
吉琳:ありがとう
席に座る私に、ユーリが嬉しそうに話す。
ユーリ:寒いからってお店の人がホットワインをサービスしてくれたんだ
ユーリ:アルコールなしって言ったから安心して
吉琳:ありがとう
けれど、並べられたグラスのひとつから香る香りにふと思う。

(こっちのグラス、お酒が少し入っているような……?)

すると、確かめる前にユーリがそのグラスを手に取り、口元にもっていってしまう。

(あっ……)
(…アルコールなしで頼んだって言ってたし、気のせいだよね)

私ももうひとつのグラスを取り、味わってみる。
ユーリ:おいしいね、吉琳様
吉琳:うん、そうだね
冷えた身体が芯から温まっていき、私たちは微笑み合った。

***

(楽しい時間って、あっという間だな……)

そう思いながら店を後にしていると、
ユーリが後ろからぎゅっと抱きしめてくる。
ユーリ:…離したくないな
吉琳:え?
顔を寄せるユーリの唇からワインの香りがほんのりとする。

(やっぱりお酒が入っていたんじゃ……)

見上げると、ユーリが真剣な眼差しを向けた。
ユーリ:吉琳様
その表情に私は息をのむ。

(なんだか、ユーリが少し…大人びて見える)

ユーリは私の頬を手で包み込むと、目を細める。
ユーリ:キスしていい?
吉琳:でも、もし人が来たら……
そう呟く私を、ユーリは壁側に追いつめる。
そして、閉じ込めるように私の頭の上に腕をついた。
ユーリ:来ても、吉琳様かどうかなんて分からないよ
私の唇に今にも触れそうな距離でユーリが言葉を続ける。
ユーリ:それに、吉琳様は断れないでしょ
ユーリ:俺といつまでも、両想いでいたいって思ってくれてるんだから
吉琳:えっ……
ユーリの言葉に、木に願いをしようとしていた事を思い出す。

(あの時、ユーリは気が付いてたの…!?)

ユーリの唇がついばむように私の唇に重ねられる。
ユーリ:俺は吉琳様の気持ちが知れて嬉しかったよ
そう言いながら、ユーリはまたキスをする。
ユーリ:吉琳様、いつも好きとか恥ずかしがって言わないから
ユーリ:少し意地悪しちゃった

(意地悪…?)

驚く間もなく吐息まじりのキスが重なる。
戯れるように、ユーリは何度もキスを繰り返す。

(あのジンクスって、ユーリの作り話だったってことっ…?)

そう思うも寄せられるキスに、ときめきで頭が回らなくなる。

(ユーリには敵わないな……)

唇の隙間から、ユーリの舌が差し込まれる。
ユーリを抱きしめながら、私の胸はだんだんと甘く高鳴っていった…―。

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5

★10日間限定毎日読み放題5日目★

2014年6月に開催していた『How to Kiss?』の アラン、ジル、レオ、アルバートのシナリオが読めちゃうよ☆

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アラン>>>


細い三日月だけが地上を照らす、密やかな夜…―。
ジルの部屋を訪れていた私は、
ジルの腕に抱かれたままソファに腰掛けていた。
ジル:どうかいたしましたか
吉琳:少し緊張してしまって……
高鳴る胸を抑えて呟くと、ジルが淡い笑みを浮かべ、私に口づける。
ジル:緊張なんてすぐに解けますよ
吉琳:ん…
緊張する私をなだめるような優しいキスに、体の力が抜けていく。
ジル:…貴女はただ私に身を任せておけばいい
ジルの大きな手のひらが、私の頭を支えて、またキスが始まった。

(身を任せるって言っても……)

恥ずかしさから私は僅かに肩を震わせる。
ジル:…貴女は…
ジル:口づけの後、いつも酷く熱っぽい目で私を見ますね
唇が離れると、楽しそうに目を細めたジルに覗き込まれる。
ジル:それほど…私のキスが好きですか?
吉琳:…っ…それは…

(そんなこと、答えられるわけない…)

口ごもると、ジルは意味深な笑みを浮かべ、
火照った私の唇を親指でなぞる。
ジル:答えられないなら…
ジル:こういうことをしなければならなくなりますね
ジルにそっと肩を押され、ソファの上に体を横たえさせられた。
私の腕をソファに押し付けながら、息の苦しくなるキスを繰り返すジルに、
私の身体が甘く痺れていく。
ジル:どう致しますか、吉琳
ジル:貴女が答えなければ、このキスはいつまでも終わりませんが…

(そんな…これ以上キスされたら…)

私は熱っぽい吐息をこぼし、ジルから視線を逸らす。
そして耐えられなくなり、小さな声で呟いた。
吉琳:…好き、です…
吉琳:ジルに、キスされること…
ジルは押し付けている私の腕から手を離すと、
今度は、私の手に自分の手を絡めた。
ジル:…よくできました。では、今夜はご褒美に
ジル:どんなキスが一番、二人の愛を深めるのか、教えて差し上げましょう
吉琳:え…っ?

(答えたら、キスをやめてもらえるんじゃ…)

ジル:困った顔をしても、駄目ですよ
ジル:貴女が私のキスを好いていることは、もう知っていますから
からかうような笑みを浮かべるジルに、唇を寄せられて、
私は恥ずかしさに身を震わせながら、甘いご褒美を受け止めた…―。

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ジル>>>


シュタイン城に滞在中の事…―。
廊下を歩いている私の耳に、ふとメイドさんたちの声が聞こえてくる。
メイド:…初めてのキスはきっとレモン味だと思うの
メイド:そう? 私はもっと別の…

(…なんだか楽しそう)

思わず足を止め、私はふっと頬を綻ばす。
すると頭の上から、アルバートの声が降ってきた。
アルバート:プリンセス?
吉琳:アルバートっ……
驚きに目を瞬かせる私に、アルバートは構いもせず言葉を続ける。
アルバート:楽しそうですね。何を見ているのですか
アルバートに尋ねられるけれど、恥ずかしくて答えにくい。

(キスの話を聞いていたなんて…言えない)

吉琳:いえ。何でも…
目を逸らし、足早に歩き出そうとするとアルバートが声を掛けてくる。
アルバート:……俺には、言えないようなことなんですか?
アルバートのとがめるような視線に、黙ってもいられなくなる。

(変に誤解されるよりは…)

思い立った私は小さく言葉をつむいだ。
吉琳:その…メイドさんたちが
吉琳:初めてのキスはどんな味かって話をしていて…
アルバート:なっ…!
吉琳:それで、話すのが恥ずかしかったんです
吉琳:アルバートは、こういう話があまり好きじゃないかと…
アルバート:……
微かに頬を赤らめたアルバートが、何度か咳払いをする。
アルバート:なにを、勘違いしているんですか?
アルバート:その程度の話なら、別になんとも思いません
吉琳:そうですか?
アルバート:はい。先程は突然その話が出たので、驚きましたが…
言いながら、不意にアルバートが、私の腕を掴む。
吉琳:あ…
そのまま引き寄せられ、壁に手をついたアルバートの腕の中に囚われた。
アルバート:…キスの味くらい、俺も知っていますから
秘密を打ち明けるような小さな囁きとともに、
熱い唇が押し付けられた。
吉琳:ん…
お互い緊張しているからか、少しぎこちなくなってしまうけれど、
アルバートの不器用な優しさが伝わるようなキスに、力が抜けていく。

(アルバート……)

重なる唇から甘い吐息がこぼれそうになった、その時……。
アルバート:………
ふっとアルバートの唇が離れた。
アルバート:…悔しいですが、あなたとする口付けは魅力的だ
アルバートは甘やかな吐息をこぼしながら
私の髪に指をさし込み、カールヘアを乱した。
アルバート:もう一度…いいですか?
いつになく熱っぽい眼差しに射抜かれて、
私は、そっと頷いてそれを受け入れた。

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レオ>>>


久々の休日を翌日に控えたとある夜…ー。
私は、レオの部屋に泊まりに来ていた。
レオ:はい。どうぞ
吉琳:ありがとう、レオ
差し出された紅茶を受け取って、口をつける。

(…今日は、このまま朝まで二人きりなんだ…)

微かに自分の鼓動が波打つのを感じていると……。
レオ:吉琳ちゃん?
レオが顔を覗き込んでくる。
レオ:どうかした? なんか静かだけど
吉琳:あっ……
尋ねられて、私の頬が熱くなった。
どう答えればいいかわからずにいると、レオが笑みをこぼす。
レオ:やだな。吉琳ちゃん、緊張しすぎ
レオ:大丈夫だよ。俺も、いきなり吉琳ちゃんに襲いかかったりはしないから
レオが、そっと私の手を握る。
その優しい温もりに、少しほっとするけれど、私の鼓動がうるさい程に響いてくる。
吉琳:…なんだか、どきどきしちゃって
耐えられずにそう言葉をこぼすと、レオが優しく告げる。
レオ:ううん。無理もないよ
レオ:俺も、今晩何もせずに、吉琳ちゃんを帰す気ないし

(それってつまり……)

驚きに瞳を瞬かせる私のあごを、レオはすくいあげた。
レオ:そんなに、緊張してるんだったら
レオ:キスから練習してみる?
囁きと共に、レオの唇が近づく。
吉琳:ん…っ
触れるだけのキスはすぐ深くなり、熱い感触が私の体温を上げた。
吉琳:レオ……
ぎゅっと彼の腕にすがると、
体重をかけられて、ソファーの上に倒れ込んでしまう。
レオ:上手。唇へのキスはもう、練習の必要なさそうだね
レオ:じゃあ、他のとこへのキスを試してみようか
レオが呟きながら、ソファーの下にひざまづき、
イブニングドレスから覗く私の脚に唇を落とす。
吉琳:待って、レオ…
慣れない場所への口づけに驚き、思わず抗議の声をあげると、
レオが微笑みを浮かべたまま、唇で私の太ももをなぞった。
レオ:ずるいな吉琳ちゃんは
レオ:こんな可愛いドレスで部屋に来ておいて、今更だめだって言うの?
吉琳:だって……
艶めいたレオの眼差しに、反論する力も抜けてしまう。

(レオ、ずるいよ…)

レオ:まだまだ、始まったばかりだよ、吉琳ちゃん
レオ:次は、どこにキスしようかな?
上機嫌なレオの声を聞きながら…
まだまだ終わりそうにない『練習』の時間に、私の唇から熱いため息がこぼれた…―。

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アルバート>>>


夜空に月が浮かんでいる、真夜中…―。
公務を終えた私は、通りがかったアランに部屋まで送ってもらっていた。
沐沐:アラン、ありがとう
そう微笑みかけてドアノブに手を掛けた、その時…―。
アラン:待てよ
壁に手を突かれ、私はアランの腕の中に閉じ込められてしまった。
沐沐:アラン……?
そのまま、近づいてくるアランの唇に、私は慌てて顔を背ける。
沐沐:待って…誰かに見られたら…
アランは眉を寄せると、小さく呟いた。
アラン:なら…
アランに手を引かれるまま、部屋の中に閉じ込められる。
アラン:見られなければ、いいんだろ
力強い腕が私を抱き寄せ、唇を塞がれる。

(アランの体、熱い…)

どんどん迫ってくるアランに、気付けばドレッサーまで追い詰められ、
私は大きな鏡に手を触れていた。
するとアランの唇が私からふっと離された。
アラン:お前さ…
アラン:いつの間に、自分から口開くようになった?
沐沐:えっ……
私は口づけに応えていた自分に気づき、とっさに顔を俯かせる。
沐沐:…そんなこと、言わないで

(恥ずかしい……)

アラン:じゃあ、自分で分かってやってたってこと
沐沐:そ、れは…
アラン:お前って、本当にいつまでも恥ずかしがりだな
アラン:なんならもっと恥ずかしいキス、教えてやるよ
囁きながら、再び寄せられる唇に、ぎゅっと目を閉じる。
アラン:ダメだ
アラン:目、開けとけ

(え…?)

沐沐:ん…っ
互いの視線を絡み合わせたまま、アランがキスを深めていく。
戸惑いに視線を逸らそうとすると、ドレッサーの鏡に、
口づけをする私たちの姿が映っていた。

(見ながらキスするなんて…)

なんだかいけないことをしているようで、体が火照る。
沐沐:ア…ラン…
重なる唇の隙間から、震える声でアランを呼ぶと、
面白がるような眼差しが私を覗き込んだ。
アラン:嫌なら、やめるけど
沐沐:…っ…

(そんな……)

アラン:どうすんだよ、沐沐?
私はアランに見つめられると、耐えられずに呟く。
沐沐:嫌…じゃない
アラン:なら、このまま鏡のほう見とけ
私を抱くアランの力が強くなり、キスがまた始まる。
アラン:…これから、恥ずかしいってことも、考えられなくしてやるから
挑戦的な言葉に身を震わせながらも、
私はアランの求められるような口づけにそっと身を委ねた…―。

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6

★10日間限定毎日読み放題6日目★

2015年3月に開催していた『王子様とかくれんぼ』の プロローグ、アラン、ジル、レオ、ロベール、アルバートのシナリオが読めちゃうよ☆

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プロローグ>>>


春の訪れを感じる、ある昼下がり…―

(あれ…?)

廊下を歩いていた私は足を止め、隣にいるユーリを見上げた。
吉琳:ユーリ、あんな部屋あったっけ?
ユーリも足を止め、扉を見る。
ユーリ:ああ、あそこは使われてない部屋だよ
吉琳:そっか…まだ知らない部屋ってあるな…
私はそう言うと、ユーリと一緒に歩き始める。
ユーリ:たぶん、みんなも全部は分かってないんじゃないかな?
吉琳:ここに来て随分経つし、城のことは知っておきたい気もするけど…
ユーリ:うーん
考えるような声を出すユーリが、大きな瞳を天井に向ける。
やがて……
ユーリ:あっ、いいこと思いついた
吉琳:え?
ユーリが私を見てにっこりと微笑んだ。
ユーリ:楽しみにしてて、吉琳様

***

しばらくして、私は公務の間にジルに呼ばれる。
ジルの話を聞き、私は首を傾げた。
吉琳:『かくれんぼ』…ですか?
ジル:ええ
ジルはユーリから提案があったこと説明してくれた。
ジル:確かに、貴女が把握していない部屋があるのは
ジル:何かあった時に、困りますからね
吉琳:はい……
ジル:ああ、それから……
ジル:色んな方々にお手伝い頂いてるので
ジル:くれぐれも、失礼のないように
吉琳:は、はい…
そうして私は、城中を見て回る事になり…―

***

正門を出て、石畳の上を歩いて行く。

(どこから、行こうかな…?)

広い城内に目を細めた…―

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アラン>>>


私は馬小屋の扉をそっと開ける。

(アランだったら、ここに隠れてる気がする…)

そう思い、中に足を踏み入れると…―。
アラン:………

(あれ…?)

アランが全く隠れる素振りを見せず、平然と馬の世話をしていた。
吉琳:アラン…?
アラン:ああ、お前か

(どうして……)

吉琳:隠れてないの?
私の問いかけに、アランがブラシの手をとめる。
アラン:…ここなら、お前が来るような気がしたから
吉琳:え…?
聞こえずに聞き返すと、アランは眉を寄せた。
アラン:隠れて、脅かしてやってもよかったかもな
アラン:こんな風に

(あっ…)

アランは言いながら私を引き寄せ、そのまま腕の中に閉じ込めた。
アラン:俺を見つけるつもりでここに来たんだろ

(確かにアランがいる気はしてたけど…)

アラン:抱きしめてんのに、抵抗しないのかよ
吉琳:だって……
アランの胸板からは、鼓動がうるさい程に聞こえてくる。

(どうすればいいのか分からない…)

じっとしていると、アランが私の耳元に顔を寄せた。
アラン:お前がその気なら
アラン:このまま、俺がさらってやってもいいけど
吉琳:…! ア、アラン…っ
アラン:バーカ、嘘だよ
アランが腕を解き、私の額を指先で弾く。
吉琳:痛っ……
私は額を抑えながら、先ほどの事を思い出した。

(アラン…どうして、どきどきしてたんだろう…?)

分からないまま、私はアランを見上げていた…―

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ジル>>>


(結構、奥まで来ちゃったかな…)

うっそうとした森の中の様子に、私は少し不安になってくる。

(…いい加減、引き返そう)

そう思った、その時…―。
吉琳:あっ…
腰元のリボンが枝に引っかかり、身動きできなくなってしまう。

(は、外さないと…)

慌てていると、不意に側の草むらが大きく揺れた。
ジル:何をしているんですか
吉琳:ジル…っ
ジル:念のため、見に来て正解でしたね
ジル:こんなところまで来ては危ないですよ
ジルは言いながら、引っかかったリボンを解いてくれた。
吉琳:すみません…
ジル:いえ。では、ここを離れましょうか
ジルはリボンを結び直してくれると、前を歩きだす。
すると、その時…―
吉琳:……!
茂みが揺れた気がして、私は思わずジルの服の裾を掴んでしまう。
ジルが足を止め、振り返る。
ジル:………
吉琳:あの、これは……
ぱっと手を離すと、ジルは目を細め私を木に追い込む。
ジル:まったく、貴女という人は……
そして、私のあごをすくいあげた。
ジル:このような暗いところで引き止めるとは
ジル:…私を期待させて、どうするおつもりですか?
艶っぽいジルの瞳から、私は思わず視線を逸らす。
吉琳:怖くて、思わず……
ジル:本当にそうでしょうか…?
吉琳:えっ……
ジルの顔が、だんだん近づいてくる。
吉琳:ジ、ジルっ……

(もしかして……)

近づく顔に、ぎゅっと目を閉じる。
その瞬間……

(あれ……?)

今にも唇が触れそうな距離で、ぴたりとジルの動きが止まった。
ふっと笑うような息を感じ、私は目をあける。
ジル:冗談ですよ
ジル:これ位のお仕置きはしないと
ジル:貴女のために見つかってしまったのですから
楽しげに微笑むジルに、私は眉を寄せて見せる。

(からかわれてしまったけど……)

ジル:行きましょうか、プリンセス
手を差し出してくれるジルに、思わず頬を綻ばせる。

(探しに来てくれて、優しいな)

私は手を重ねると、ジルの隣に並んで歩き出した…―。

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レオ>>>


私は、柔らかな木漏れ日の落ちる森の中を歩いていた。

(…今、こっちで音が…)

そっと幹に手を触れ、大きな木の後ろを覗き込むと…―。

(あれ、もしかして…)

吉琳:レオ…?
呼びかけると、木に腰掛け本を読んでいたレオの姿があった。
レオ:あー、見つかっちゃったか
レオが持っていた本をぱたんと閉じる。
苦笑するその姿に、私の頬も自然とほころんだ。
吉琳:じゃあ、見つかった人は部屋に戻ってね
レオ:分かった
レオは頷くと、私の隣に立つ。
そして、そのまま私の耳元に唇を寄せた。
レオ:でも、せっかく二人きりなんだし
レオ:このまま、どこか行っちゃおうか?
吉琳:えっ…?
意味が分からず首を傾げると、レオがにこっと笑みを浮かべる。
レオ:一応、誘ってるつもりなんだけど

(誘ってるって……)

レオの意味深な言葉に、私の頬が自然と染まってしまう。
どう答えていいのか分からず目を瞬かせていると、
レオがふっと吹き出して笑った。
レオ:うそ、冗談だよ
穏やかな風が吹き木々を揺らす。
レオ:真っ赤な吉琳ちゃん、可愛いね
レオは言いながら、私の頬にかかる髪を優しく払ってくれた。
吉琳:レオっ…からかわないで…
レオ:からかってないよ
レオ:吉琳ちゃんを、可愛いって思ってるのは、本当
レオのまっすぐな眼差しに見つめられ、
私は気恥ずかしさに顔を俯かせた…―。

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ロベール>>>


城を歩き回って少し疲れた私は、バルコニーで風に当たる。

(見つからないな……)

目の前に広がる景色に目を細めた。

(そういえば昔、ロベールさんとかくれんぼした事があったけ…)
(探すの苦手だったから、ロベールさん、わざと見つかってくれて…)

思い出していた、その時……
???:あ…

(え…?)

背後で聞こえた声に振り返ると、ロベールさんが立っていた。
ロベール:まいったな。休憩しようと思って来たんだけど
ロベール:見つかっちゃったね
ロベールさんははにかんだ笑みを浮かべ、私の隣に来る。
その手には、レモン水が注がれたグラスが握られていた。
ロベール:飲むかい?
ロベール:俺より吉琳ちゃんの方が疲れてるだろうから

(ロベールさん…)

私はグラスを受け取りながら、ふと思う。

(もしかして、昔みたいに……)

吉琳:わざと見つかってくれたんじゃないんですか…?
ロベール:え……?
吉琳:昔の頃のこと思い出してたんです
吉琳:私が困ってたら、ロベールさんはこうして出てきてくれたなって
ロベールさんはゆっくりと空を見上げると、微かな笑みを浮かべた。
ロベール:さあ…どうかな?
曖昧だけど優しい言葉に、私の頬が自然とほころぶ。

(相変わらず、ロベールさんは優しいな…)

レモン水を口に付けると、私は昔の記憶に思いを馳せていた…―。

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アルバート>>>


庭園の中を歩き回っていた私は、ふと足を止める。

(誰もいないみたい…別の場所を探した方がいいかな)

そう思い、立ち去ろうとしたその時…―。
???:なっ……

(今の……)

茂みから声が聞こえたような気がして、振り返る。

(あそこから声が聞こえたような……)

辺りを見渡すと、私は歩き始めた。

***

覗いてみると、そこにはアルバートの姿があった。
アルバート:私としたことが……
アルバートは、なぜか顔を真っ赤にして口ごもっている。
そして私を見ると、困ったように眉を寄せた。
アルバート:…自分でも信じられないが
アルバート:大変だろうと思ったら、思わず声を出して……
吉琳:え?
アルバート:せっかくここまで来て、俺を見つけられないのはもったいないでしょう

(もしかして…)

吉琳:私が大変だと思ってくれたんですか…?
アルバートが顔を逸らし、うわずった声で言った。
アルバート:あまり…今の俺を見ないでください
アルバート:こんなこと思う自分に動揺しているのですから
そう言って眼鏡をつるを押し上げるアルバートに、
私は、くすっと笑みを零す。
吉琳:優しんですね…ありがとうございます
アルバート:なっ…!
アルバートは眉を寄せると、咳払いをした。
アルバート:私が勝手にしたことなので、お礼はいりません
アルバート:…さっさと戻る場所に連れて行ってください
吉琳:はい

(言葉は厳しいけど……)

私はアルバートの優しさに、胸があったかくなるのを感じた…―。

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7

★10日間限定毎日読み放題7日目★

2014年2月に開催していた『彼とのドキドキ 密着レッスン前編』の ルイ、ゼノ、ユーリのシナリオが読めちゃうよ☆

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ルイ>>>


星の瞬く、真夜中…―。
ルイが芝生の上に、そっと布を敷いてくれる。
ルイ:沐沐
差し伸べられた手に手を重ねると、二人で腰を下ろし星を見上げた。
沐沐:あれが、おとめ座…?
私は星座盤と夜空を照らし合わせながら尋ねる。
ルイ:うん
沐沐:ルイって星のことも、良く知ってるんだね
ルイはゆっくりと頷き、星座盤のおとめ座を指した。
ルイ:神話のことも分かる
その言葉に、私はぱっと瞳を瞬かせる。

(それなら…)

沐沐:城下の時教わったことがあるから
沐沐:私も知ってる
穏やかな夜風が、私の髪を揺らす。
ルイ:…そう
微かに笑みを浮かべたルイが、私の頬にかかる髪を優しく払う。
ルイ:じゃあ、俺の質問に答えられなかったら
ルイ:沐沐に俺の好きなこと…してもいい?
沐沐:えっ
予想外の言葉に小さく声を上げるも、ルイは淡々と話す。
ルイ:知ってるなら、大丈夫でしょ
沐沐:う、うん……
頷く私を見てルイは少し考えると、私に告げる。
ルイ:おとめ座をさらったのは、何ていう王様?
私は困ったように、視線を下げた。

(話についてなら知っているけど)
(名前までは、分からない……)

ルイが満足そうに笑みを浮かべる。
ルイ:沐沐の負け
私は息をつくと、上目を遣うようにしてルイを見上げた。
沐沐:…分かった。ルイのして欲しいことって何?
言うと、ルイが私のほうへ身体を向ける。
ルイ:じっとしてて
その瞬間…―。
ルイは私の膝に頭を乗せると、仰向けになり見上げてきた。
ルイの柔らかな髪が、私の膝でふわりと揺れる。
沐沐:ルイ……?
驚きに瞳を瞬かせていると、ルイが私の頬に手を伸ばす。
ルイ:ずっと、俺だけを見て
ルイ:良いって言うまで、キスして
沐沐:え?
ルイの言葉に、私の鼓動が早まっていく。
ルイ:…早く
ルイの伸ばされた手が私の頬に触れる。

(そんなにじっと見つめられたら…断れない)

私は頭をさげると、そっとルイの唇に自分の唇を重ねた。
ルイ:………
ルイの両手が、そっと私の頬を包み込む。

(こんなんじゃ、天体観測にならないのに…)

ルイの舌が、私の唇を押しあける。

(だけど、ルイのわがままは聞いてしまうな)

星が夜空に煌めく中、
私はルイに許されるまで口づけを交わしていった…―。

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ゼノ>>>


月が水面に照らす、真夜中…―。
シュタインに滞在していた私は、ゼノ様と湖畔に来ていた。
ゼノ:今夜は綺麗な月だな
吉琳:はい
私の身体を囲うようにして手綱を引いていたゼノ様が、馬を止める。

(すごく気持ちいい…)

穏やかな夜風が、馬の立て髪を揺らす。
そっと撫でると、その様子を見たゼノ様が声を掛けてきた。
ゼノ:お前は、ひとりで馬に乗ったりするのか
私はゆっくりとまつ毛を上げる。
吉琳:はい…ですが、遠くまで行くのにはまだ少し勇気がいります
吉琳:ゼノ様みたいに、上手になれたらいいのですが…
ゼノ:そうか
するとゼノ様が引いていた手綱を、私に差し出した。
ゼノ:持ってみろ
吉琳:え?

(もしかして、教えてくれるということ……?)

私は言葉の意味を悟ると、手綱を持つ。
ゼノ:簡単な事だ
ゼノ様が、手綱を持つ私の手に手を重ねる。
ゼノ:後ろでお前を支える。言う通りにやってみるといい
吉琳:はい……
重なる手の熱が、溶け合う。
ゼノ様は私の耳元に顔を寄せると、低い声で告げる。
ゼノ:馬は人の気持ちを察する
ゼノ:気が逸れれば、すぐに伝わってしまう
ゼノ:気を付けて、手綱を引け

(そんなこと言われても……)

ゼノ様の顔が肩口の側にあり、鼓動が跳ねてしまう。

(集中できないけど…教えて頂いてるし、頑張らなくては)

ゆっくりと、手綱を引く。
馬が歩き始めると、ゼノ様が耳元で言葉を続ける。
ゼノ:そうだ。その調子だ
吉琳:は、はい…
耳元にかかるゼノ様の息遣いに、私の鼓動がさらに早まる。
それでも頑張って手綱を引いていると……。
ゼノ:いいぞ、吉琳
ゼノ様の唇が、軽い音を立てて私の耳に触れた。
吉琳:………!
顔が真っ赤になり、私は引いている手綱を緩めてしまう。
馬が慌てた様子を見せると、ゼノ様はすぐに手綱を引き馬を止めた。
吉琳:すみませんっ……
見上げると、ゼノ様は視線を逸らし、笑いを堪えるようにしている。
ゼノ:………
その表情に、私は気が付く。

(もしかして、わざと耳元に口づけを……?)

吉琳:ゼ、ゼノ様っ……
からかわれたことに気が付き、困ったように眉を寄せる。
目元を緩めたゼノ様が、私の顎をすくい上げた。
ゼノ:お前を困らせるのも、たまには悪くないな
ゼノ:愛しさが募る
私の言葉など聞かずに、ゼノ様が口づけを落とす。

(もう……)

だんだん深くなる口づけに、私はゼノ様の胸に手をあてた。

(ゼノ様はずるいな……)

重なる唇の隙間から、ゼノ様の舌が私の舌を絡め取る。

(いたずらされても…どんなゼノ様も愛しいと思ってしまう)

水面には、私とゼノ様の重なる影が映っていた…―。

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ユーリ>>>


柔らかな陽だまりが、暖かな休日…―。
大きな木の幹に背をもたれ、私は読書をしていた。
次のページをめくろうと指を掛けた、その時……。
ユーリ:吉琳様
吉琳:……!
突然、声を掛けて来たユーリに私の肩がびくりと震える。

(びっくりした……)

吉琳:ユーリ……
ユーリは私の隣に腰かけると、顔を覗き込んでくる。
ユーリ:近づいても、全然気が付かないんだもん
ユーリ:もし怪しい人だったら、さらわれてたかもしれないよ
私は膝の上で本を閉じ、ユーリを見上げる。
吉琳:気を付けるようにするね
ユーリ:うん。そうして、吉琳様
ユーリは言うと、何かを思いついたのかぱっと目を瞬かせた。
ユーリ:でも、何かあった時のために…
ユーリ:自分で身を守る方法くらい、覚えておいた方がいんじゃない?

***

ユーリの提案で、私は自分で身を守る方法を教えてもらっていた。
ぎゅっと後ろから、ユーリの腕が私の身体を抱き込む。
ユーリ:さっき、教えたみたいに
ユーリ:この状態で、俺のこと振り払ってみて
吉琳:分かった
結ばれているユーリの腕に手を添え、ぐっと力を込める。
吉琳:ん……!

***

しかし、ユーリの腕はびくともしない。

(あれ…教えてもらったのに……)

悩むような仕草を見せると、くすくすとユーリの笑い声が響いた。
ユーリ:そんなんじゃダメだよ、吉琳様
ユーリは腕を解き、私を自分のほうへ向かせる。
ユーリ:ほら
吉琳:わっ……
私はユーリに、あっという間に押し倒されてしまった。
ユーリ:こんな風に、襲われちゃうよ?
ユーリが私の両手首を柔らかな芝生に押し付け、覆いかぶさる。
吉琳:お、襲われるって……
身動きが取れない体勢に、なんだかはずかしくなってしまう。
ユーリ:分からないの?吉琳様
ユーリ:襲われるって、どういうことか
私を見下げるユーリの顔が、だんだんと近づいて来る。
ユーリ:こんな風にされたり
ユーリの唇が、私の耳の端に口づける。
吉琳:ユ、ユーリ…こんなところでっ…
身じろぎするも、ユーリの唇が私の耳を濡らす。
ユーリ:襲われる時は、外だもん
ユーリ:もう一度、振り払ってみて
言われた通り手を動かしても、ユーリの抑える力に敵わない。
ユーリ:ダメだなあ、吉琳様
ユーリの唇が、首筋へと下りてくる。
ユーリ:ほら、もっといけないことしちゃうよ?

(そんなこと言われても……)

柔らかなユーリの唇の感触に、私の鼓動が音を立て始める。
ユーリ:早く、吉琳様
急かすような声に力を込めるも、ユーリの唇は私の胸元まで下りた。
吉琳:ぁっ……
思わず小さな吐息がこぼれてしまう。
すると、ユーリが顔を上げた。
吉琳:今のは違うの……
恥ずかしさから視線を逸らすと、ユーリは口元を緩ませた。
ユーリ:嫌がる吉琳様も…俺、結構タイプかも
吉琳:え……?

(これじゃあ、まるで……)
(ユーリに襲われてるみたい…)

私はユーリの瞳を見つめると、翻弄されてしまうのを感じた…―。

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8

★10日間限定毎日読み放題8日目★

2014年2月に開催していた『真夜中のデート』の ジル、レオ、ゼノのシナリオが読めちゃうよ☆

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ジル>>>


次の日…―。
公務が一息ついた午後。私はジルを探しに執務室を訪れた。

(ジル、今日も忙しいのかな?)

〝ジル:星が綺麗ですね〞

(昨日、ジルと一緒に星が見られて嬉しかった…)
(今日も、もし時間があったら一緒に見られないかな…?)

今夜の予定を期待しながら、私は部屋の扉を開いた。
吉琳:…ジル、いますか?
部屋の中では、ジルと若い女性が向かい合って話し込んでいた。

(えっ?)

女性は振り返って私に気づくと、丁寧にお辞儀をした。
慌ててこちらも挨拶をする。
ジル:プリンセス、お客様をお送りしてきますので、少しお待ちいただけますか
吉琳:はい…
そのままジルは、女性を連れ添って部屋を出て行った。

(誰だろう…綺麗な人だったな…)

ふと、二人がいた机に視線を向けると、二つ折りの便せんが置いてある。

(手紙、もしかして、忘れていっちゃったのかな)
(渡しにいこうかな…?)

そっと手に取ると、中身がうっかり見えてしまった。
そこには…―。

(そんな……!)

信じられないような内容が、書かれていた…―。

***

その日の夜…―。
私は昼間の出来事が頭を離れず、うまく眠れずにいた。

(あの手紙に書いてあったこと…)
(きっと、あの女性宛てだよね…)

部屋の中を意味なく歩き回っていると、不意にノックの音がした。
ジル:…プリンセス、起きていますか?
吉琳:はい…

(ジル? こんな夜中に、どうしたんだろう…)

ジル:眠れないなら、少し外に行きませんか?

***

ジルに連れられて外に出ると、正門の前に馬車が用意されていた。
吉琳:これは…ジル、いったい?
ジル:今夜は、二人で夜を明かしましょう
吉琳:えっ?
驚く私に、ジルはすっと手を差し伸べた。

(でも……)

ジルを前にしても私はまだ、昼間の手紙の一件が頭を離れない。
その内容は…―。

『どこか、二人きりで過ごしたいのです』
『お返事、お待ちしております』

(ジル、あの女性にも同じことを言ってた…)

ジル:嫌ですか?
吉琳:いえ、あの…
煮え切らない私に、ジルは怪訝な顔をしている。

(もやもやしてるのは嫌だし、正直に昼間のことを話してしまおう…)

吉琳:実は、手紙の中身を見てしまったんです……
私がそう白状すると、ふっとジルは笑みをこぼした。
ジル:やはりそうでしたか。どうりで様子が変だと思いました
ジル:貴女という人は、まったく…
吉琳:ごめんなさい! あの…
怒られると思って咄嗟に謝ったけれどジルは相変わらず笑顔のままだった。
吉琳:ジル…?
ジル:いらっしゃい。今から教えてあげますよ
ジルはそう言って馬車に乗ると、片手を伸ばして私を誘った。

***

馬車に乗せられて、連れてこられた先は、森の中の空き家だった。

(ここは、いったい…?)

不思議そうに、部屋の中を見渡している私に、ジルが言った。
ジル:誰にも知られぬように、と念のため手紙を返しに来てくださったのです
ジル:なので、お礼を言っておりました
吉琳:えっ…?
ジル:昼間来ていた女性の話ですよ
そう言ってジルは微笑んだ。
ジル:あの方は地主のご息女で、この辺りの土地にお詳しいのです
ジル:それで、高貴な身分の方と二人きりになれる場所を、教えていただきました
吉琳:それって…まさか

(手紙に書いてあった二人きり、って私のこと…?)

早とちりした自分が恥ずかしくて、私は思わず顔を伏せてしまった。
ジル:気に入っていただけましたか?
ジルが、横から私の顔を覗き込んでくる。
吉琳:……はい
小さく呟くと、ジルはふっと息を漏らした。
ジル:さあ、どうぞこちらへ…

***

ジルは私の手を取り、窓を開けてバルコニーへ連れて行くと、空をあおいだ。
吉琳:わあっ…!
そこには夜空一面に、星が輝いていた。
ジル:この辺りは空気が澄んでいて、星が一段と綺麗に見えるのです
吉琳:すごい…!
私は吸い込まれるような星空を、夢中で見上げていた。

(ジルは約束を叶えようとしてくれたんだ…それなのに…)

吉琳:勝手に勘違いをしてしまって、ごめんなさ…
ジル:謝らないでください
ジルは私の唇にそっと指を当てた。
ジル:疑われるなんて、私もまだまだですね。ですから…
そう言って悪戯っぽく微笑むと、ジルは私の体を引き寄せて、
ジル:今夜は、もっと私の愛が誠実だと知っていただかなくては…
強く抱きしめると、ゆっくりと口づけた。
吉琳:ん…
嬉しいような、申し訳ないような気持ちで、私はジルの口づけに応えた。

(ジル…)

ジルはそのまま私の腰に手を回して、ふわりと体を抱え上げると、
吉琳:ジル…?
ベッドまで移動して、そっと下ろした。
ジル:今夜は二人で夜を明かす約束ですよ
そう囁くと、ジルはゆっくりと私のブラウスのリボンに手をかけた…―。

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レオ>>>


城の鐘が、真夜中の12時を告げる頃…―。
吉琳:私も、一緒に行けたらな……
城下に行くというレオの言葉に、思わずそうこぼしてしまった。
するとレオが足を止めて振り返る。
レオ:………
私はレオと視線があうと、自分の言葉にはっとした。

(そんなこと出来るわけがないのに……)

吉琳:今のは気にしないでっ……
慌てて言う私に、レオはふっと笑った。
レオ:分かった
そうして歩いているうちに、部屋の前に着いた。
吉琳:じゃあ、ここで大丈夫だから
私がレオにそう言うと、レオは申し訳なさそうに眉を下げた。
レオ:ごめんね吉琳ちゃん
レオ:さすがに真夜中にプリンセスを連れ出すことはできない
吉琳:ううん、大丈夫。気をつけて行って来て
レオに微笑むと、私は部屋の中に入った。
レオと別れてから寝る仕度を整えると、
私はベッドに横たわり目を閉じていた。

(わがまま言ったみたいで、申し訳なかったな)

レオとのことを思い出し、眠れずに時計を見上げると、随分と時間が経っている。

(どうしよう…早く眠らなきゃ…)

そう思って枕に顔をうずめると、扉が叩かれた。
???:吉琳ちゃん
声のするほうに、上体を起こすとそこにはレオの姿があった。
吉琳:レオ……
レオは扉を閉め歩いてくると、ベッドのところに腰かける。

(城下に行ったはずじゃ……)

不思議そうに見つめると、レオが静かに言う。
レオ:吉琳ちゃんが、寂しそうだったから
吉琳:えっ?
私は声をあげると、自分がこぼした言葉を思い出し頬を赤らめた。
するとレオがすっと私の頬に触れる。
レオ:城下はダメだけど、城内だったら…
レオ:吉琳ちゃんを連れ出してあげる

***

レオに連れられて来たのは、城内でも見たことがない部屋だった。
吉琳:ここは……
不思議に思って辺りを見渡していると、扉を閉めたレオが言う。
レオ:昔、使われていた交渉部屋だよ
吉琳:交渉部屋…?
聞きなれない名前に私が首を傾げると、レオは窓のほうへ歩いて行く。
レオ:大事な取引とかする場所だよ。だけど……
そしてカーテンに手をかけると、一気に開けた。

(あっ……)

そこには、白銀色に輝く満月がはっきりと浮かんでいる。
レオ:満月が見える部屋での交渉は不吉だからって、使われなくなったんだ
吉琳:そうなんだ……
満月に視線を奪われながらそう答えると、ふと疑問が浮かぶ。

(どうして満月が見えたら、いけないんだろう)

不思議に思いながら窓を見つめていると、
レオは私に近づきそっと耳元に顔を寄せた。
レオ:満月って人の心を惑わす力があるんだって
吉琳:えっ……
囁かれた言葉に少し驚いてレオを見上げると、レオが目を細める。
レオ:せっかくこの部屋にいるんだし…
レオ:吉琳ちゃんを惑わしちゃおうかな
レオはふっと笑うと、私が言葉を出す間もなく
私の唇に自分の唇を重ねた。
吉琳:…っ……
レオは私の腰を引き寄せると、優しく唇を重ねる。
やがて重ねられた唇が熱を帯びると、レオは自分の舌をすべり込ませてくる。
吉琳:んっ……
レオから重ねられる口づけに、私が小さく息をこぼすと、
そっと唇を離したレオが、目を細める。
レオ:敵わないな…吉琳ちゃんには
レオ:俺が惑わされそう
そう言うと、レオは私の腰を両手で引き寄せ
何度も何度も、強く唇を重ねてくる。
吉琳:んん……
私はレオの口づけに応えながら、心の中で呟いた。

(私も……)
(レオに惑わされてしまいそう……)

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ゼノ>>>


シュタイン城の鐘が真夜中の12時を告げた頃…―。
私は部屋の扉を叩くと、そっと開けた。
吉琳:ゼノ様……
中に入ると、書類に目を通していたゼノ様が顔をあげる。
ゼノ:……ああ
私は扉を閉めると、ゼノ様に近づいた。
吉琳:遅れてしまい、すみませんでした…

(私から一緒にでかけたいと言っていたのに…)

申し訳なさから視線を下げると、立ち上がったゼノ様が低い声で言う。
ゼノ:気にするな
吉琳:えっ……
顔をあげると、ゼノ様がふっと唇に笑みを浮かべた。
ゼノ:むしろ都合がいい
ゼノ:お前を夜に連れだせる理由が出来たのだからな

***

そうしてゼノ様に連れられて来たのは、シュタインの外れにある別荘だった。
部屋につくと、バルコニーから湖が広がっている。
吉琳:すごい……
手すりにつかまり覗きこむと、
夜空の星が道を作るように、水面に映っていた。
吉琳:きれい……
うっとりとため息をつくと、後ろからゼノ様が言う。
ゼノ:今夜は、年に一度しか見れない特別な日だからな
吉琳:えっ?
振り返ると、ゼノ様が静かに口を開いた。
ゼノ:この辺りでは、言い伝えがある
私は手すりから手を離すと、ゼノ様の話に耳を傾けた。
ゼノ様が教えてくれた話は、私の胸をきゅうっと締めつけた。

(恋人同士なのに、一年に一度しか現れない星の橋でしか会えないなんて)

水面を見つめると、夜空の星が映った湖が風に揺らめく。

(なんて切ない話なんだろう…)

その時、ふと私の心がざわめいた。

(もし、私がゼノ様と一年に一度しか会えなかったとしたら……)

ゼノ:どうした
吉琳:いえ……
私はゼノ様の声にはっとすると、頬を染めて空を見上げた。

(やっぱりそんなの嫌だな…ずっとゼノ様のそばにいたい)

その時、ひとつの星が夜空を流れた。

(あっ……)

その瞬間、私はとっさに目を閉じる。
するとゼノ様が、私に尋ねた。
ゼノ:どうした
私は目を開けると、ゼノ様のほうを向く。
吉琳:流れ星が見えたので、願いごとを…
ゼノ:ああ、そうか
ゼノ様はふっと笑うと、空を見上げた。
ゼノ:何を願ったんだ?
吉琳:それは……
私は夜空を見上げるゼノ様の横顔を見て、言いかけていた言葉をのむ。
そこには、私が初めて想いを寄せた人の姿がある。

(私が願ったのは……)

吉琳:ゼノ様のそばに、ずっといれますようにと……
小さく呟くと、ゼノ様は私に視線を移した。
そして、低い声で告げる。
ゼノ:それは願わなくてもいい
吉琳:えっ?
一言だけそう言うと、ゼノ様は私の腰をぐっと引き寄せた。
ゼノ:俺がお前を離すわけがないだろう
吉琳:ゼノ様……
ゼノ様は目を細めると、私の頬にそっと触れる。
ゼノ:………
そして顔を傾けると、私の唇に優しいキスを落とした。
吉琳:…っ……
私はゆっくりと目を閉じると、ゼノ様の胸元に手をあてる。
ゼノ様は何度も重ねるようにくちづけると、私の首元に手を添える。
吉琳:んっ……
私はだんだんとゼノ様に濡らされていく唇に、甘い息をこぼした。
するとゼノ様の舌が私の舌を絡め取る。
吉琳:んんっ……
私はゼノ様の口づけに応えながら、甘い夢を見た。

(願いなんてつきない)
(もしもゼノ様のそばにいれるのなら…)

その時、ゼノ様の唇が軽い音を立てて離れた。
私はそっと目を開けると、ゼノ様を見上げる。
ゼノ:………
ゼノ様から向けられる優しい瞳に、私は心の中で呟いた。

(このままずっと……)

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★10日間限定毎日読み放題9日目★

2014年7月に開催していた『How to Kiss?』の ルイ、ジル、ユーリ、シドのシナリオが読めちゃうよ☆

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ルイ>>>


満天の星がきらめく、美しい夜…―。
城でのパーティを終えた私は、ルイと共に自室へ戻っていた。
吉琳:今日も、すごいパーティだったね
ルイ:うん。でも、吉琳は立派にプリンセスの役目を果たしてた
穏やかな眼差しを向け、温かい言葉をかけてくれるルイに、笑みがこぼれる。
吉琳:ありがとう…
ふとまつ毛を伏せると、身にまとっているドレスが目に留まった。

(そうだ…先にこのドレスを着替えてこなくちゃ)

吉琳:ルイ。私、奥で着替えてくるね
そう告げると、ソファで休んでいたルイは不思議そうに目を瞬かせた。
ルイ:ここで着替えれば?
思いも寄らないルイの言葉に、頬が熱くなる。
吉琳:そんな…できないよ…
ルイ:そう? 俺は気にしないよ

(…ルイが気にしなくても、私は気になる…)

困って視線を逸らすと、
不意に伸ばされたルイの指先が、私の頬に触れた。
ルイ:なら、俺が…
ルイ:吉琳が、気にならないようにしてあげようか?
囁きとともに、ルイが私の唇を塞ぐ。
吉琳:ん…っ
突然の口づけに胸が高鳴り、
切ない吐息が、触れ合った唇の隙間からこぼれた。
ルイ:…ほら。こうしてる間は
ルイ:吉琳がどんな格好になっても、見えないでしょ?
吉琳:え…
大胆な提案に驚くと、ルイは鼻先の触れ合いそうな距離のまま呟く。
ルイ:ね…キスしよう、吉琳

(そんな風に言われたら、断れない…)

ねだるようなルイの眼差しから、逃げ出したい気持ちで目を閉じると、
再び、甘い口づけが始まる。
ルイ:吉琳…
愛おしげに私を呼ぶルイに身を任せ、キスを受け入れていると…―。
ルイ:もっと口開けて。吉琳
ルイ:今より深いキス、したい
ルイの腕に力がこもり、互いの胸が触れるほど近く引き寄せられる。
ルイ:それに、キスさせてくれないと…
ルイ:俺、我慢できなくて、吉琳の裸見ちゃうかも

(こんなことされてたら…)
(着替えなんて、絶対できないよ…)

私は瞳を潤ませながら、
いつまでも脱げそうにないドレスのすそを、固く握り締めていた…―。

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ジル>>>


細い三日月だけが地上を照らす、密やかな夜…―。
ジルの部屋を訪れていた私は、
ジルの腕に抱かれたままソファに腰掛けていた。
ジル:どうかいたしましたか
吉琳:少し緊張してしまって……
高鳴る胸を抑えて呟くと、ジルが淡い笑みを浮かべ、私に口づける。
ジル:緊張なんてすぐに解けますよ
吉琳:ん…
緊張する私をなだめるような優しいキスに、体の力が抜けていく。
ジル:…貴女はただ私に身を任せておけばいい
ジルの大きな手のひらが、私の頭を支えて、またキスが始まった。

(身を任せるって言っても……)

恥ずかしさから私は僅かに肩を震わせる。
ジル:…貴女は…
ジル:口づけの後、いつも酷く熱っぽい目で私を見ますね
唇が離れると、楽しそうに目を細めたジルに覗き込まれる。
ジル:それほど…私のキスが好きですか?
吉琳:…っ…それは…

(そんなこと、答えられるわけない…)

口ごもると、ジルは意味深な笑みを浮かべ、
火照った私の唇を親指でなぞる。
ジル:答えられないなら…
ジル:こういうことをしなければならなくなりますね
ジルにそっと肩を押され、ソファの上に体を横たえさせられた。
私の腕をソファに押し付けながら、息の苦しくなるキスを繰り返すジルに、
私の身体が甘く痺れていく。
ジル:どう致しますか、吉琳
ジル:貴女が答えなければ、このキスはいつまでも終わりませんが…

(そんな…これ以上キスされたら…)

私は熱っぽい吐息をこぼし、ジルから視線を逸らす。
そして耐えられなくなり、小さな声で呟いた。
吉琳:…好き、です…
吉琳:ジルに、キスされること…
ジルは押し付けている私の腕から手を離すと、
今度は、私の手に自分の手を絡めた。
ジル:…よくできました。では、今夜はご褒美に
ジル:どんなキスが一番、二人の愛を深めるのか、教えて差し上げましょう
吉琳:え…っ?

(答えたら、キスをやめてもらえるんじゃ…)

ジル:困った顔をしても、駄目ですよ
ジル:貴女が私のキスを好いていることは、もう知っていますから
からかうような笑みを浮かべるジルに、唇を寄せられて、
私は恥ずかしさに身を震わせながら、甘いご褒美を受け止めた…―。

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ユーリ>>>


眩しい日差しが降り注ぐ、初夏の休日…―。
私は自分の部屋のドレッサーの前に座り、髪を編み込んでいた。
ユーリ:吉琳様、何してるの?
吉琳:編み込みの練習をしようと思って
にっこりと笑いかけると、ユーリが眉を寄せる。
ユーリ:せっかくの休みなのに?
吉琳:うん。自分でできることが多い方が、嬉しいから

(…それに)
(ユーリとお忍びでデートするとき、いつもと違う髪型を見せたいし…)

考えると頬が熱くなってきて、ユーリから目を逸らして鏡を覗いた。
ユーリ:……
ユーリ:ねえ、吉琳様?
呼びかけられて、鏡越しにユーリに視線を向ける。
吉琳:どうしたの?
ユーリ:吉琳様の心がけ、すごく素敵だね
ユーリ:だけど俺…
ユーリの指先が私の唇に触れる。
ユーリ:吉琳様には、練習した方がいいことが他にあると思うな
吉琳:え…?
ユーリの指先が私の肩に降り、ユーリのほうに私の身体が向かせられる。
ユーリ:例えば、キスの仕方とか
ユーリは身をかがめて、私の唇に自分の唇を押し当てた。
吉琳:…ユーリ…?
唇が離れて、驚きのままユーリの目を見つめ返す。
ユーリ:ほら。たった一回のキスで、こんなにびっくりしてる
ユーリ:もっと慣れないとだめだよ
笑みを浮かべ、私に繰り返し胸が苦しくなるようなキスをする。
吉琳:ユーリ…っ
吉琳:こんな…急に、恥ずかしいよ…
重なる唇の隙間から、お互いの吐息がこぼれる。
ユーリは重ねていた唇を止めると、困ったように私を見つめた。
ユーリ:だって…このままキスしてたら、俺に構ってくれるでしょ
ユーリ:だから…まだ、やめない
キスの合間に、いつになく真剣な眼差しで射抜かれ、抵抗できなくなる。

(練習してたのは、ユーリに見せたいからだったのに…)

中途半端に編みこまれたままの髪がほどけていく。
私は寄せられる甘いキスに、そっと目を閉じた…―。

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シド>>>


星の光が降り注ぐ、静かな夜…―。
私はソファの上で、シドの口づけを受け止めていた。
シド:吉琳…
シドの大きな手が私の頬を包み込み、
何度も角度を変えながら唇が重ねられる。

(身体が、倒れそう……)

寄せられる唇に、思わず私の身体がのけ反ってしまうと、
シドの唇がふっと離れた。
シド:…これじゃあ、足りねえな
シドが私の身体を横抱きする。

(あっ……)

慌ててシドの首に手を回すと、やがて私の身体はシーツの上に降ろされた。
吉琳:シド…?
シドは驚きに目を瞬かせる私の上に覆いかぶさり、口角の端をあげる。
シド:このほうが、もっとお前に迫れる
吉琳:えっ……
私の答えを待たずに、シドが唇を重ねてくる。
シドの親指が私のあごにあてられ、そっと唇を開かされた。
吉琳:ん……
深まるシドとの口づけに肩をすくめると、
シドは僅かに唇を離し、囁くように告げる。
シド:せっかくだから教えてやるよ
シド:男が喜ぶキスの仕方ってやつを
シドがごろんと体勢を変え、私の身体を自分の身体の上にのせる。
そして、下から私を見上げた。
シド:お前からしてみろ
吉琳:そんなこと、出来ないっ……
恥ずかしさに首を振ると、シドが片側の眉を上げ、私を見つめる。
シド:だったら……
シドの大きな手が私のスカートをまくりあげようとする。
吉琳:ちょっ……
シドの思いもよらない行動に慌てた私は、めくれたスカートを隠すように
とっさに自分からシドの唇に唇を重ねた。
するとシドが手を止め、唇を離す私の頬に触れる。
シド:できんじゃねえか

(本当に、意地悪なんだから……)

戸惑いに頬が熱くなるけれど、
唇を塞いでくるシドの口づけに、私もぎこちなく応える。
シドは唇を重ねる度に、甘い吐息の混じる掠れた声で告げてきた。
シド:何度したか分からねえが
シド:…お前を抱くのは、飽きねえな
シドの腕が私の背中にあるリボンをほどいていく。

(そんなこと言うなんて…ずるいな、シドは……)

私は自分の鼓動が速まっていくのを感じながら、
そっとシドの頬を両手で包み込んだ。

(もっと…キスをして欲しいと思ってしまう)

更なる口づけの予感に、密かに胸をときめかせながら瞳を閉じると、
シドの力強い腕が、私を優しく引き寄せた…―。

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10

★10日間限定毎日読み放題10日目★

2013年9月(GREEにて)に開催していた『君に恋した365日』の プロローグ、アラン、ルイ、ジル、レオ、ゼノ、ユーリのシナリオが読めちゃうよ☆

*因為之前3周年有些有存過,就不再存了,請點傳送門:http://a168119.pixnet.net/blog/post/372017233

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プロローグ>>>


私がウィスタリアのプリンセスに選ばれてから1年。
その記念日として、お城では盛大なパーティーが開かれていた。
会場に入ると、にっこりと笑ったユーリがこちらにやって来る。
ユーリ:おめでとう、吉琳様。そのドレス良く似合ってるね
吉琳:ありがとう、ユーリ
お礼を言いながらいつもとは違う格好のユーリに目を瞬かせていると、
レオが私に声を掛ける。
レオ:どう?似合ってる?
吉琳:うん、レオもアランもすごく素敵
答えると、レオは何も言わず隣にいるアランを見て片眉をあげた。
レオ:本当は嬉しいくせに。アランは素直じゃないな
アラン:…うるせーよ
私はそんな二人のやりとりを見るとくすっと笑う。
すると後ろから、私にジルが耳打ちをしてくる。
ジル:シュタインのゼノ国王がいらっしゃってますよ
吉琳:えっ……
振り返ると、私は小さくドレスの裾を持ち上げお辞儀をした。
吉琳:本日はお越しくださり、本当にありがとうございます
ゼノ:ああ
ゼノは穏やかに目元を緩めると、私に言葉をかけた。
ゼノ:プリンセスとして、立派になったな
吉琳:ゼノ様……
嬉しさからはにかむと、私の視線が入口に留まる。

(来れそうにないと言っていたけど……)

ジル:間に合ったようですね
私はゼノ様にお辞儀をすると、こちらに来たルイを見上げた。
ルイ:………
吉琳:来てくれたんだ
ルイ:…うん
すると壇上から、お祝いの言葉を述べるよう私を呼ぶ声が聞こえる。
ルイ:頑張って、プリンセス
私は頷き歩いて行くと、壇上に上がる。
会場にはこれまでお世話になった人たちの姿が見えた。

(こんなにたくさんの人に支えられたから)
(私はプリンセスとして頑張れた)

私は背筋を伸ばすと、にっこりと微笑んだ。

***

(出逢って、今日で一年…)

パーティーを終え、彼は一人バルコニーから星を眺めていた。
???:……
しばらく夜風にあたった後、
彼は愛するプリンセスの元へと向かうため、バルコニーをあとにした…―。

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アラン>>>


吉琳がお城に入って間もないある日…―。
雨上がりの空気がひんやりと肌を冷やす朝の事…―。
吉琳:ちょっと待って、ユーリ
朝の稽古を終えたアランは、吉琳の声に振り向いた。
つい先日吉琳が城を抜け出すのに同伴したアランは、
それ以来、何となく、吉琳を目で追ってしまう。
ユーリ:吉琳様、あんまり身体を冷やしちゃだめだよ
吉琳:ごめんなさい。珍しく虹が出ていたものだから…
空を見上げる吉琳は、瞳をキラキラと輝かせていた。

(あいつ…風邪でも引いたらどうすんだよ)

眉をひそめると、アランは吉琳の方へ歩み出そうとする。

(…いや……)
(別に、騎士の俺が気にする事じゃないか…)

自分に言い聞かせるように頷くと、アランはその場を立ち去った。

***

翌朝…―。
パーティーに出席する吉琳に同行する予定のアランは、
広間で吉琳を迎えた。
吉琳:おはようございます、アラン
そう声をかけた吉琳は、心なしか顔が赤いように見える。

(…熱でも…?)

じっと見つめていると、吉琳はにっこりとアランに笑いかけた。
吉琳:パーティー、緊張する…。でも、アランとユーリが一緒で良かった
嬉しそうにそう言って、吉琳は先に城を出て行く。

(…気のせいか)

アランは、吉琳に続いて扉をくぐった。
ちょうどお昼時に始まったパーティーはとても盛況で、
誰もが吉琳と話をしたがった。
男爵:城内の暮らしはいかがですかな?
貴婦人:城下の暮らしと違うことだらけで、ご苦労なさってるでしょう

(…プリンセスも大変だな……)
(けど…)

興味や嫉妬、たくさんの感情が混じる人々の言葉に、
吉琳はニコニコと笑って受け答えをしていた。

(心配ないみたいだな)
(…立派にプリンセスやってんじゃねーか)

その日のパーティーは、空に月が上るまで、長々と続いた…―。

***

その夜…。
お城に一行が帰って来た頃には、城は静まり帰っていた。
ユーリ:あ、いけない。俺、吉琳様の明日の準備をしないと
ユーリ:アラン様、吉琳様の事お願いね
そう言うと、ユーリは足早に階段を上っていく。
アラン:ほら…行くぞ
振り返ると、吉琳が床に倒れ込んでいた。
アラン:おいっ!
駆け寄って抱きかかえると、吉琳の身体は驚くほど熱を持っている。

(やっぱりコイツ、熱あったのかよ)

〝(別に、騎士の俺が気にする事じゃないか…)〞

(あの時俺が……)

自分を責めるように舌打ちをすると、アランは吉琳を抱き上げて走り出した。
部屋に到着してそっと吉琳をベッドにおろした。
吉琳:アラン……
アラン:今、医者呼んでやるから
優しく言うと、吉琳は目に涙を滲ませて首を振る。
吉琳:私が…勝手をして熱を出したのに…
吉琳:皆を巻きこんで…
吉琳:こんなんじゃ…プリンセスって認めてもらえなくても仕方ないよ…
その言葉に、アランはハッと先日の事を思い出した。

〝アラン:私情をはさむな、周りを巻き込むな〞
〝アラン:じゃないと、お前みたいな奴…誰もプリンセスだなんて認めねえぞ〞

(プリンセスになったばかりのアイツに、)
(俺が言った言葉…)

アラン:…お前…
アラン:それで、朝から何も言わずにいたのかよ
アランの言葉に、吉琳が目をそらす。

(馬鹿な奴…)
(何も、こんなになるまで守らなくてもいいだろ)

深く溜息をつくと、アランは吉琳の手を優しく掴んで布団に入れる。
吉琳:アラン……?
アラン:次からは…俺に言え
アラン:この前みたいに、毎回付き合ってはやれねえけど…
アラン:…少なくとも、馬鹿なお前を止めてやることくらいは出来るだろ

(俺…何でこんな事言ってんだろ)

やがて小さく頷いた吉琳の姿に、アランは胸が熱くなるのを感じた。
ジル:アラン殿?
ジルの声に振り向くと、ジルは一瞬で自体を察知したようだった。
ジル:すぐに医者の手配を
吉琳:……ごめんなさい……
ジルが部屋を出て行くと、吉琳は申し訳なさそうに俯く。

(…めんどくせー女)
(…でも……)
(何でか守ってやりたくなる)

アランの眼差しを、小さく灯されたろうそくの揺らめきが照らした…―。

(こんなの、騎士の仕事じゃねーのに…)

***

あれから一年…―。
プリンセス就任の1周年記念式典が終わった夜のこと。
吉琳:問題なく済んで良かった…
純白のドレスを身にまとった吉琳が静かに胸を撫で下ろす。
アラン:遠目から見ててもお前が緊張してるの分かったけどな
アラン:いい加減慣れろよ
吉琳:だって…あんなにも沢山の人が来てくれるとは思わなかったら
吉琳:でも、アランが居てくれたから頑張れた
顔を傾け、笑いかける吉琳にアランの鼓動が跳ねる。

(…俺も、慣れねえよな)

アラン:…お前、安心してる余裕とかあるのかよ
アランは吉琳を抱き寄せると、そのままその唇を奪った。
アラン:最近、式典の準備とかでずっとお前に触れられなかったからな…

(お前のこと、いくら触っても慣れねえ)
(すぐ…また抱きしめたくなる)

吉琳の耳元に口元を寄せ、アランはそっと言葉を囁く。
アラン:式典の時…ずっとお前から目離せなかった

(一年前より、俺はもっとお前に惹かれてる)

吉琳:アラン…
宝物を扱うように吉琳をベッドに横たえると、
アランは、その胸の膨らみにそっと触れる。
吉琳:あ…っ

(この先もずっと、俺がお前のことを守る)
(俺が忠誠を誓うのは、お前だけだ)

アラン:吉琳…
アランが名前を呼ぶと、吉琳の手がベッドのシーツを強く握る。
その後すぐに、吉琳の甘い吐息が部屋中に漏れていった…―。

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ジル>>>


吉琳がプリンセスに指名された日のこと…―。
まもなく始まるプリンセス選定のパーティーを前に、ジルは思いを巡らせていた。

(プリンセス…)

プリンセスに選ばれたものが身につける事になるチョーカーに触れ、目を瞑る。

(この国の未来を担えるような人が見つかれば良いのですが…)

国王陛下からプリンセスの人選をまかされているジルは、
のしかかる重圧を振り払うように、窓の外に目をやった。
すると、城門を乗り越える人影が目に入る。

(アラン殿…?)
(それに…)

アランが手を差し伸べ、誰かに壁を越えさせている。

(どなたも、プリンセスになろうと必死のようですね)

***

昼下がり…―。
プリンセス選定のパーティーが始まり、ジルは会場で多くの女性に囲まれていた。

女1:ジル様…ずっとジル様とお近づきになりたいと思っていました
女2:ジル様、初めまして!私…
ジル:……

(どの方もプリンセスに選ばれたいという意気込みをお持ちのようですが…)
(この中からたった一人を選ぶというのは、なかなか難しいですね…)

目は皆を見据えたままに、ジルは口元で柔らかく笑った。
ジル:皆、よく集まってくれましたね
よく響く声でそう言うと、会場中の視線がジルに集まる。
ジル:ご存知のとおり、本日はこの中からプリンセスを選出致します
ジル:その時まで、どうぞごゆっくりお楽しみください
にわかに色めきだった会場内を見渡していると、
朝アランと城壁を乗り越えていた女性が部屋を出て行くところが目に止まる。

(一体、どこへ…?)

しばらく考えると、ジルはそっと会場を抜け出した。

***

女性を追ってきたジルの耳に、独り言が聞こえてくる。
吉琳:ここ…かな?
吉琳:あの子の病気のお母さんのために…探さなきゃ
その女性はスカートの裾が汚れるのも構わず、花壇にしゃがみ込んだ。
ジル:……
声をかけようか迷っていると、庭のベンチで本を呼んでいるルイが目に入る。

(ハワード公爵…あれほど会場にいてくださいと申し上げたものを)

しばらく見つめていると、ルイが立ち上がり、彼女に声をかけた。
ルイ:…ここで、何してたの
吉琳:さ…探し物を…
吉琳:絵本に出てくる、白い花を…

(…花…?そんなもののために…?)

ルイ:…それじゃあ君は、プリンセスになるためじゃなく、花探しのためにこの城へ?
ルイの言葉に、女性はこくりと頷いた。
その曇りのない瞳を見て、
ジルは心の中に、一筋の光が差し込むのを感じた。

(自分の為ではなく、人の為に城壁を超えた行動力と勇気…)
(そして、あの人嫌いのハワード公爵に自ら声をかけさせた…)

目を瞑ると、確信が深まっていく。

(…この方であれば)

深く一度息を吸うと、ジルは彼女に声を掛けた。
ジル:そこの貴女

***

吉琳:あの……
やがて白いドレスに身を包んで別室から出て来た吉琳は、
透明な光をまとっているように見えた。
ジル:…よくお似合いですよ
そう言って、大切に持っていたチョーカーを吉琳の首に付ける。

(私は正しい人選を出来たでしょうか…)
(皆に、認められるでしょうか)

吉琳:…ジル様……?

(いえ…)

フッと目を細めると、ジルはチョーカーから手を離す。

(なんとしても認めさせてみせましょう)
(これから、私が教えて差し上げればいいのですから)

ジル:これから、どうぞよろしくお願い致します。プリンセス吉琳…
ジルは、忠誠を誓うようにチョーカーにゆっくりとキスをした…―。

***

あれからちょうど一年…―。
吉琳がプリンセスになって一年の記念式典が行われた夜のこと。
吉琳:ジル、今日はありがとうございました
純白のドレスに身を包んだ吉琳が、優雅な仕草でお辞儀をした。
ジルは一年前の吉琳の姿を思い出し、思わず目を細める。

(あの日の貴女ときたら…)

フッと笑みを漏らすと、吉琳が不思議そうに首をかしげる。
吉琳:ジル……?

(…よく、ここまで成長しましたね)

思いがこみ上げ、ジルは吉琳を強く抱きしめた。
やがて唇にキスを落とし、吉琳と共にベッドに腰を下ろす。
吉琳:ジル、ドレスが…
ジル:脱がせて差し上げます。私が…
ドレスのリボンを解き、そのまま肩から滑らせ、脱がしていく。

(あの日、チョーカーを渡したプリンセスが貴女で良かった…)

吉琳:あっ…
露わになった吉琳の胸元に口付けると、吉琳が甘い声を漏らした。

(まさか私と貴女がこんな風に愛し合うとは)
(思いもしませんでしたが…)

吉琳:ちょ、ちょっと待ってください…っ
ジル:いけませんよ、吉琳…ちゃんと、全部見せてください
肌を隠そうとする吉琳の腕を掴み、ジルが囁く。
ジル:近頃は式典の準備で忙しく、滅多に二人きりになれませんでしたからね
ジル:久しぶりだからでしょうか…

(貴女のことは本当に、何度愛しても愛し足りない)

ジル:今日の貴女はいつも以上に…
吉琳:…っ
ジルが脚の間に顔をうずめると、吉琳は声にならない声を上げる。
ジル:吉琳…

(いつか、誰の前でも吉琳と呼べるようになるまで…)
(全力でお仕えしますよ)
(私の…吉琳)

やがて吉琳の甘い声が夜の部屋に響いていった…―。

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ゼノ>>>


シド:ウィスタリア王国の「プリンセスが決まったらしい
シドの言葉に、ゼノは僅かに目を見開いた。
シド:そのプリンセスは…
シドの話に聞き入りつつ、ゼノは窓の向こうに視線を流した。

(城下出身のプリンセスか…)
(面白い)
(一体、どれほどの者か……)

***

セレモニーを終え、吉琳が初めてゼノに正式な挨拶をした次の日のこと…―。
吉琳とともに馬車に乗り込んだゼノは、
移り変わる車窓からの眺めを悠然と眺めていた。

(豊かな国だ)
(国民の表情も活気に満ちている)
(そして…)

ふと吉琳に目をやると、ゼノの事を見つめていたのか、慌てて視線をそらす。

(この娘がこの国のプリンセス…)

何事もなかったかのように窓の外に目を向けると、ゼノはフッと微笑んだ。
ちょうどお昼の鐘が鳴る頃…―。
城下に到着したゼノたちは、吉琳の案内で街を見てまわっていた。
吉琳:あれが音楽堂です。国王陛下のご命令で、昨年出来たばかりなんですよ
慣れた様子で城下を歩く吉琳の少し後ろに、ゼノが静かに続く。
(さすが城下出身のプリンセスと言ったところか…)
(この辺りには詳しいようだな)
吉琳:あ…このパン屋さん…!
吉琳:ゼノ様、ウィスタリアのパンはもう召し上がりましたか?
吉琳は楽しそうに瞳を輝かせてパン屋に入っていく。
やがて出て来た吉琳は、両手に焼きたてのパンを4つ抱えていた。
吉琳:ゼノ様、おひとつどうぞ

(街中で……?)

ふと見回すと、市場の真中にもうけられたスペースにはテーブルが並べられ、
人々はそこで、買ったものを食べたり、お茶をしたりしているようだった。

(これも視察の一貫には違いないか…)

アラン:おい、そんなことしたら…
たしなめられると、吉琳が咳き込む。
吉琳:ゼノ様、ごめんなさい、私……
ゼノ:良い。一つ、もらおう
手に持ったパンをしばらく見つめ、ゼノはそれを口に運んだ。
心配そうに見つめる吉琳に、ゼノはゆっくりと答える。
ゼノ:…ウィスタリアの小麦は、質が良いのだな
吉琳:えっ?
ゼノ:シュタインのものよりも、おそらくは小麦自体の甘みが強い

(温暖な気候のせいだろうか…)

しばらく考え込んで顔を上げると、吉琳が頬を染めている。
ゼノ:…どうした
吉琳:いえ…ゼノ様が、どんなときも国の事を考えていらっしゃるから…
吉琳:私、恥ずかしくて…見習わなきゃって…
ゼノ:別に褒められたものでない。それ以外に考えることが無いだけだ

(いや、確かに…)
(近頃考えることと言えば、国のことばかりだな…)

街の男:吉琳ちゃん、久しぶりじゃないか
二人の間に流れた沈黙を、陽気な声がやぶる。
吉琳:おじさん…
街の男:久しぶりに会えて嬉しいよ。よし、サービスだ
男は手押し車に乗せていた、売り物らしい飲み物を差し出す。
街の男:ほら、そっちの人も
ゼノに差し出された飲み物の前に、アルバートが立ちふさがった。

(異国の地でなくとも城下で出されたものなど、普段なら滅多に口に出来ないが…)

ゼノ:アルバート…良い

(一体どうしたことか…)

横目に見ると、プリンセスの瞳が不安そうに揺らいでいる。

(断れる気がしないな)

ゼノは男をまっすぐに見据えると、飲み物を受け取った。
ゼノ:…頂こう
慎重に口をつけると、口の中に覚えのある甘みが広がる。
フッと微笑んで見せると、吉琳の顔に笑顔が戻った。
街の男:最近シュタインからいい砂糖が入るようになってな。試しに使ってみたんだ
街の男:お客さんにも好評だし、もっと砂糖を買ってみようかと思ってるんだ

(…はじめてだな)
(こんなに身近に貿易の影響を感じるのは…)

吉琳に目をやると、瞳を輝かせて男と話し込んでいる。

(見習わなければならないのは、俺の方かもしれない)

ゆっくりともう一口飲み物に口を付ける。

(こんな風に街中で食事をするのは、初めてだ)
(それに…)

まだ湯気の立つその飲み物は、ゼノの心を暖かく包み込んだ。

(こんな風に、他愛ない会話をしながら食事をするのも…)
(…興味深いプリンセスだ)

吉琳を見つめるゼノの瞳は自然と細まっていた…―。

***

それから一年が経ち、プリンセスの就任1周年記念式典が終わった夜のこと…―。
ゼノは、月明かりが差し込む窓辺で、吉琳を抱きしめていた。
ゼノ:良いスピーチだった
吉琳:ゼノ様…
ゼノ:今も…城下を思い出すか?

(ウィスタリアには、心から感謝している…)
(この吉琳と出逢わせてくれたのだから)
(…だが)

吉琳:…プリンセスとしてのお仕事は、城下にもつながっていますから
少し寂しそうな顔をした吉琳の頬に、ゼノは唇を落とす。
ゼノ:お前がウィスタリアを離れる日も遠くない
吉琳:え……?
ゼノ:だが、心配することはない
ゼノ:お前の言い方でいくと、シュタインもまた、ウィスタリアとつながっているのだろう?
意味をようやく理解した吉琳が、頬を染めて俯く。
首筋に唇を落とすと、吉琳が僅かに吐息が漏れる。
そのままゼノはゆっくりと吉琳のドレスを脱がしていった。
ゼノ:…寂しいか?
低く囁くと、吉琳はゆっくりと頭をふる。
ゼノ:…そうか

(…もっとも)
(寂しいと言われても、連れて行くが…)

あらわになった吉琳の肌が月の光に照らされ、
ゼノはその白さを指で辿る。
ゼノ:相変わらず、お前は美しいな
ゼノ:このままさらってしまいたくなる…
やがて色づいた腰元に口づけ、ゼノは唇を下の方へと落としていった。
吉琳:ゼノ様、駄目です……んっ
ゼノは吉琳の閉じかけた脚を抑え、甘く囁く。
ゼノ:俺に全て、身を任せていろ
ゼノ:俺も…お前に全てを捧げよう

(どこまでもお前を共に連れて行く)
(お前と離れて生きる事など、もはや考えられない)

熱い露をたたえた窓ガラスから差し込む月の光が、二人を優しく照らしていた…。

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    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()