◆シンデレラガチャ◆(ロベール◆ガチャシート)

88988087090

彼目線のサイドストーリー

 

【本編】

◆恋の予感(恋のよかん)《揺らぎ》

◇恋の行方(恋のゆくえ)〜Sugar〜《一歩》

◆恋の行方(恋のゆくえ)〜Honey〜《君に出会うため》

◇恋の行方(恋のゆくえ)~secret〜《秘密の結婚式》

 

 

 

 

164893

【本編シート】

 

1216307112

 

Screenshot_2016-10-21-01-13-081

Screenshot_2016-10-21-01-13-14

Screenshot_2016-10-18-19-32-531

◆恋の予感(恋のよかん)
《揺らぎ》彼目線で語られる2話の特別編

 

この日、ロベールは政治学を教えてほしいと吉琳に言われ、
共に過ごしていた。

(予習までしてるなんて、熱心だな)

ロベール:…今の説明で分かったかな?
隣に座る吉琳の顔を、横から覗き込んで訊ねる。
吉琳はロベールを見上げて、微笑むと、こくりと頷いた。
吉琳:はい、ありがとうございます

(…それにしても、政治学か)

教材に並ぶ文章の中に『君主制』と書かれた文字が目につく。

(あの国はまさに君主制だった)
(だからこそ…)

ふと過去の記憶がよぎりそうになったその時…―
吉琳:ロベールさんも、こういった国に関わるようなことを、
吉琳:以前勉強していたりしたんですか?
吉琳の声で我に返り、瞬時に微笑みを浮かべる。
しかし同時に、身体の中心が一気に冷えていく感覚がした。

(以前、ゼノにも似たようなことを聞かれた気がする)
(吉琳ちゃんも、同じように鋭いところがあるのかもしれないな)
(でも…やっぱり話すつもりはない)

一瞬言葉に詰まってしまったのを悟られないように、
いつも通りの笑みを向ける。
ロベール:…どうだったかな
吉琳:昨日はプリンセスに必要なことも教えてくれましたよね
そう訊ねてくる吉琳の瞳は、少しの曇りもなかった。

(素直すぎるほど真っ直ぐで、綺麗で…)
(まるで…全てを受け止めてくれるような)

そう錯覚しそうになって、ロベールははっと小さく息をのむ。

(何で…こんなことを)

驚いていると、吉琳は考えるように視線を伏せながら言葉を続けた。
吉琳:ロベールさんのしてくれる話は、
吉琳:ただの知識ではなく、まるで本当に経験されたことのようで…

(これ以上話をしていたら、俺は何を言うか分からない)

そう思った瞬間、
ロベールは吉琳の椅子の背もたれへ手を伸ばした。
ロベール:そんなことを聞いてどうするの?
告げた言葉は、自分でも思うほどに冷たく響いた。
吉琳:えっ
椅子に置いた手に体重をかけ、囲うように近付くと、
戸惑いと驚きに見開かれた瞳が、間近で絡む。

(…あの時のことを、この子に告げるわけにはいかない)

ロベールは、先ほどよぎりかけた苦い記憶を思い返す。

*****
それは今よりずっと前のこと…―
バルコニーから街並みを見つめるロベールに、後ろから男性が声をかけた。
男性:辺境の地区を治める貴族が、お会いしたいと城に来ております
ロベール:…何度来ようと話すことはない。自分の土地に戻るよう伝えろ
きっぱりと告げると、男性はおずおずと口を開く。
男性:ですが、彼らの話に耳を傾ける余地はあります
男性:都市部はまだアルデリアからの攻撃の被害は受けておりませんが、
男性:辺境の土地は少しずつ被害が拡大しています
男性:このままでは…
ロベールは振り返り、男性を見据える。
ロベール:何が言いたい
男性:そ、それは…
鋭い視線を向けると、男性は恐縮して黙り込む。
ロベール:私は何より国の繁栄を考えている
ロベール:そのために切り捨てるべきものを切り捨てているだけだ
男性:彼らは『切り捨てるべきもの』だと…
ロベール:…分かったなら、その者たちに帰るよう伝えろ
*****

(告げられないんじゃない。…知られたくないんだ)
(自分の感情すら切り捨てていた、あの頃を)

目の前にある真っ直ぐで綺麗な瞳が、失意の色を浮かべたとしたら…

(俺は…)

胸が軋み、ロベールは眉根に力を込めた。
そしてわざと突き放すように、冷たい言葉を放つ。
ロベール:君は知らなくていいことだよ
ロベール:もう、この話は終わりにしよう

(この先ずっと、この過去を誰にも告げず抱えていくと決めた)

しかしそんな決心とは裏腹に、思わず眉を寄せてしまう。

(そのはずなのに…)
(どうして吉琳ちゃんに話してしまいそうになったんだ)

自分でも理解できない想いが心を覆っていく。
吉琳:は、い…

(…これでいい)
(この過去を知れば、信頼してくれている君を裏切ることになるから)

吉琳の返事を聞き、ロべールはいつも通りの笑みを作った…―

 

1216306824

 

164891

164892

◇恋の行方(恋のゆくえ)〜Sugar〜
《一歩》彼目線で語られる7話の特別編

 

ウィスタリアへと戻ってきたロベールは、今までの事情をジルに話していた。
ジル 「そういう理由で、あなたが狙われたということですね」
ロベール 「はい…ウィスタリアを巻き込んでしまい、申し訳ありません」
そう告げるとジルはゆっくりと首を振る。
ジル 「いえ、悪いのはその元貴族の方々です。それで、彼らは?」
ロベール 「既に逃亡しているようです」

(もう一度…話せれば良かった)
(話を聞いて、少しでも彼らの辛さを受け止められたら…)

吉琳が自分の過去を受け止めてくれたことを思い出す。

(…吉琳ちゃんが俺にそうしてくれたように)

後悔が押し寄せ、胸が軋む。
ジルはロベールの表情を見て、わずかに眉を寄せるものの、
手元の羊皮紙を見て、あえて笑顔を作るように微笑んだ。
ジル 「そうですか…ですが、この文書があれば十分でしょう」
ジル 「陛下のお気持ちも遂げられそうで良かったです」

(それは、一体どういう…)

思わぬ言葉にロベールはわずかに首を傾げる。
ロベール 「陛下の…?」
ジル 「ええ。陛下より、ロベール殿へ伝言を預かっています」
驚くロベールに、ジルはにこやかに言葉を続けた。
ジル 「女王側近になる気はないか、と」
ロベール 「私が…側近、ですか?」

(しかも女王ということは…)

*****
吉琳 「ジルから次期国王について話をされていて…」
吉琳 「私が…女王になる選択肢もある、と」
*****

(ここに来る前、女王に推されていることについては聞いていたけど…)

ロベール 「しかし、私は相応しくありません」

(吉琳ちゃんの迷惑になることはしたくない)

ジルはじっとロベールを見据える。
ジル 「そう仰ると思いました。ですが…」
ジル 「あなたがシュタインとの交渉を提案してくださったお陰で、」
ジル 「無事に戦争は終わりました」
ジル 「その功績は十分、側近になるにふさわしいかと」
ロベール 「それは…私だけの功績ではありません」

(吉琳ちゃんが最後までプリンセスとして行動していたから)

するとジルがふっと笑う。
ジル 「あなた方は同じことを言うんですね」
ロベール 「え?」

(同じこと…?)

頭に思い浮かんだのは、たった一人だった。

(吉琳ちゃんも同じことを…?)

ジル 「もちろん、プリンセスの働きも評価した上でのお話です」
ジル 「プリンセスを女王にと進言する前に、」
ジル 「あなたが側近だと知れば、吉琳様も安心されると思ったので」

(きっと吉琳ちゃんの気持ちも、俺の気持ちも分かった上で)
(その提案をしてくれたんだろう)

ロベールは思わず苦笑をこぼす。
ジル 「いかがですか?」

(吉琳ちゃんを側で支えられたらと、ずっと思っていた)
(まさかこんな形でそれが叶うなんてね)

心の中にかかっていたもやが晴れ、澄み切っていくのを感じる。
ロベール 「ウィスタリアのため…プリンセスのために、尽くしていきます」
部屋の中に、ロベールの凛とした声が響いた…―

***

その後、慌ただしく時は過ぎ…
女王となる準備をする吉琳をロベールは支え、日々を過ごしていた。
そうして、無事に宣言式を終え…―
ロベールは吉琳と並んで噴水の縁に腰かけていた。
先ほどの宣言式の様子を頭に思い浮かべ、隣を見つめる。
ロベール 「とても素敵だったよ」

(一生忘れられないほど、美しい光景だった)

そっと指を絡めるように手を繋ぐと、
吉琳は頬を赤らめながら、嬉しそうに笑みをこぼした。
吉琳 「そう言ってもらえて、嬉しいです」
花が咲いたような笑みに、胸がじんと熱くなる。
すると、吉琳が絡めた指にわずかに力を込めて、言葉を続けた。
吉琳 「ロベールさんが側にいてくれるから、」
吉琳 「女王になる一歩を踏み出せたんだと思います」
優しい言葉が胸に響き、ロベールは笑みを浮かべた。
ロベール 「一歩を踏み出す、か。俺にとっての一歩は、君だった」
吉琳 「え?」

*****
吉琳 「…ロベールさんが好きです」
*****

(そうして俺は君の想いを知って…)

*****
ロベール 「俺の過去を知っても想いを伝えてくれた君に、」
ロベール 「…俺も真っ直ぐ向き合うよ」
ロべ―ル 「ゼノに教えた言葉を君からもう一度聞いて、昔の気持ちを思い出した」
ロベール 「国を良くしようとしていく吉琳ちゃんを、支えたい」
ロベール 「いや、支えるだけでなく…」
ロベール 「君と一緒に、今度こそ国を守らせてくれないかな?」
ロベール 「…愛してる」
*****

(あの時伝えた気持ちが、今はもっと大きくなってる)

ロベールは真っ直ぐに吉琳を見つめた。
ロベール 「過去へ向き合い、吉琳ちゃんの手を取って共に歩む」
ロベール 「それが俺にとっての一歩で、相手が君だったから出来たことだよ」
吉琳 「ロベールさんも私も、新しい一歩を踏み出したんですね」
見つめ返してくる吉琳の瞳は、うっすらと涙が滲んだように潤んでいた。
ロベール 「そうだね」

(俺は君と生きていく)

ロベール 「この先、一歩ずつ二人で歩んでいこう」
吉琳 「はい」
ロベールは、確かな想いを胸に、吉琳を抱き締めた…―

 

1216306824

164890

150085

150083

◆恋の行方(恋のゆくえ)〜Honey〜
《君に出会うため》彼目線で語られる7話の特別編

 

騎士団が剣を持った男たちを取り押さえる中、
ロベールは吉琳に駆け寄る。
手首に巻かれていた縄を解き、華奢な身体を胸に抱きしめた。
ロベール:吉琳ちゃん、怪我はない?
吉琳:はい…
ロベール:もし君が傷つけられていたら、俺は…

(とても冷静ではいられなかっただろう)
(あと一歩入るのが遅れていたら…)

剣を突きつけられた吉琳の姿を思い出すと、背筋がひやりとする。
吉琳がここにいることを確かめるように、きゅっと手を握った。
ロベール:良かった…無事で
顔を覗き込むと、吉琳はほっとしたように小さく微笑む。
吉琳:ロベールさんも無事で良かったです
ロベール:こんな目に合わせてごめん
吉琳:謝らないでください。私が提案したことですから

(一緒に囮になると言われた時、危険なことは分かっていた)
(それでも…)

*****
吉琳:それなら…私も囮になります
ロベール:吉琳ちゃん…?
レオ:理由、聞いてもいい?
レオの問いかけに吉琳は言葉を続ける。
吉琳:…狙っているのは、ロベールさんだけではないんじゃないかと思って
吉琳:計画を邪魔されてこの城にまで攻めてくるというなら、
吉琳:ウィスタリア自体にも恨みを持っているはずです
吉琳の話に、レオは納得したように頷いた。
レオ:その場合、一番狙われるのは吉琳ちゃん、てことか
ロベール:囮が増えれば襲われる標的が増えて、敵を分散出来る…ということかな?
吉琳:はい。そうすれば危険も少なくなるのではないでしょうか
*****

恐れを抱えながらも、立ち向かおうとしていた姿を思い出す。

(プリンセスとしての吉琳ちゃんの考えを尊重したかった)
(けれど、もう二度とこんな目には合わせたくない)

ロベール:そうだね。確かに上手くいった
ロベール:…でも、もうこんな無茶をさせないよ。絶対に
吉琳:それは…ロベールさんも一緒ですよ
吉琳:一人で囮になろうなんて、もう言わないでください

(こんな時ですら、吉琳ちゃんは人のことを考えて…)
(心配になるほど、優しい子だ)

こみ上げる愛しさを感じながら、
ロベールはふっと笑みをこぼして頷いた。

***

そうして、無事に城まで戻り、数日が経ったある夜…―
ロベールは吉琳の元を訪れていた。
ベッドに隣同士に腰かけ、そっと吉琳を見つめる。
ロベール:あれから少し時間は経ったけど、もう平気?
吉琳:はい…
そう頷くものの、吉琳の表情は晴れない。

(あの時の恐怖は少しずつ和らいでいるんだろうけど、)
(まだ悩んでいることがあるように見えるな)

ロベール:…そう。でもまだ他にも悩みがあるんじゃないかな?
優しく続けると、吉琳は悩むようにしながらも言葉を紡いだ。
吉琳:あの日言っていたことで…
ロベール:言っていたこと?
吉琳:国は滅んでしまったけれど、全てがロベールさんのせいではありません
吉琳:だから罪だなんて…
吉琳は瞳を揺らし、声を絞り出す。

(まさかそのことで悩んでいたなんて思わなかった)
(…でも誤解させるような言い方だったのは、確かだな)

吉琳を安心させるように、わざとおどけたように答えた。
ロベール:心配させちゃったみたいだね
ロベール:でもあの言葉の意味は、吉琳ちゃんが思っているのと少し違うんだよ
吉琳:え?
ロベール:ただブランデンのことを忘れたくなくて、ああ言ったんだ

(あの人に会って、自分の生まれ育った国を滅ぼしてしまったのだと、)
(改めて思い知らされた)

それは長い間、胸に残っていた深い後悔だった。

(今までブランデン王国のことを忘れたことはない)
(でも俺は、起こしてしまった出来事を見て見ぬふりをしていた)

ロベール:君に出会う前までの俺は、罪から目を逸らし、隠し、逃げてきた
ロベール:でも、それではいけない。罪は罪として受け入れないとね
吉琳の存在が、正面から向き合おうと思わせてくれた。

*****
吉琳:やっぱり…ロベールさんの優しさは見せかけなんかじゃないです
吉琳:ロベールさんがここに来てくれたことが、何よりの証拠ですから
*****

(もう過去に背を向けないよ)

ロベール:君が、俺の過去を受け入れてくれたのに、
ロベール:俺自身が受け入れないわけにいかない
ロベール:同じ過ちを繰り返さないように、君と一緒に前へ歩くよ
そう告げると、手にそっと吉琳の手が重ねられる。
視線を上げると、吉琳はふわりと笑みを浮かべた。
吉琳:私にも半分、分けてください…
けれどロベールは静かに首を振る。

(吉琳ちゃんに分けるのは、苦しみじゃない)

ロベール:吉琳ちゃんには、もっと違う感情を一緒に分かち合ってほしい
ロベール:…俺と生涯、喜びを分け合ってくれるかな
目の前の瞳が、大きく揺れる。
吉琳:…プリンセスとして、ロベールさんを選んでもいいですか?
ロベールは静かに頷き、そっと吉琳の手の甲に口づけて…

(良い思い出ばかりの過去ではないけれど、もう後悔することはない)

ロベール:次期国王としてウィスタリアを…君を守らせてほしい

(きっと全て…君に出会うための試練だったんだろうな)

そのまま手を引き、ゆっくりと柔らかな温もりを唇に重ねた…―

 

1216306824

150081

150082

150086

150080

◇恋の行方(恋のゆくえ)~secret〜
《秘密の結婚式》彼目線で語られる特別編

 

宣言式から数日後のある休日…―
ロベールは吉琳を連れ、
ウィスタリアの街が見渡せる高台に来ていた。
吉琳 「ここが…ロベールさんの好きな場所なんですね」
ロベール 「うん。城下がよく見えるからね」

(せっかく二人揃って取れた休みだから、城下に行こうと誘ったけど…)
(俺の好きな場所に連れていって欲しいって言われた時は驚いたな)

城下にある店を数か所回った後、次に行きたい場所を聞くと、
吉琳はそう答えたのだった。

(でも、こんな顔をしてくれるなら連れてきて良かった)

吉琳は風に揺れる髪に手をやり、微笑みながら景色を眺めている。
吉琳 「街を見るのが好きなんですか?」
その質問に、わずかに戸惑う。
ロベール 「好き…なのかなきっと」
ロベール 「城下で画家をしていた頃から、よくここに来ていたよ」

(懐かしいな)

スケッチをしに通っていたことを思い出す。

(でも、俺がここから街を眺めるのが好きなのは…)

ロベール 「街を見ていると、その国の色を感じられる気がしてね」
吉琳 「色…ですか?」
ロベール 「うん、温かい色だったり、暗い色だったり…」
ロベール 「そこに住む人々の表情がそのまま色になって感じられるんだ」
吉琳 「それじゃあ、ウィスタリアはどんな色なんですか?」
吉琳がわずかに身を乗り出し、見つめてくる。

(可愛いな。好奇心で瞳を輝かせて、)
(昔、勉強や絵を教えていた頃と変わらない)

胸の奥から愛しさがこみ上げ、ロベールは微笑んだ。
ロベール 「そうだな…」
目の前に広がる景色を見つめながら、思ったままを口にする。
ロベール 「優しくて、明るい色、かな」

(まるで吉琳ちゃんみたいな色だ)

すると、吉琳はどこか嬉しそうな声で答える。
吉琳 「素敵な色…」
ロベール 「吉琳ちゃんにはどんな風に見えるか知りたいな」

(君の瞳にはどんな景色が映っているんだろう)
(同じ風景を見ているけれど、きっと違う風に見えているんだろうな)
(仕方のないことだけど、歩んできた道のりは違いすぎる…)

そんな考えがよぎり、わずかに目を伏せる。
吉琳 「きっとロベールさんと同じだと思います」
しかし、風で運ばれてきた柔らかな声に、はっとした。

(同じ…?)

吉琳 「色…なのかは分かりませんが、城下を見ていると、」
吉琳 「優しくて明るい感じが伝わってきます」
吉琳 「何だか、ロベールさんの描いた絵の色みたいです」
にこっと微笑んでそう言う吉琳に、胸が甘く締め付けられる。
吉琳 「こんな風に、色も、空気も…」
吉琳 「ロベールさんと一緒の景色を見られたらいいなと思います」
ロベール 「見られるよ。この先ずっと、こうして側にいるからね」
吉琳 「ロベールさん…」
ロベールを見上げていた吉琳の顔が、ゆっくりと綻んでいく。
吉琳 「はい…」

(心から、君が愛しい)

ロベールは上着のポケットに忍ばせていたある物に手を伸ばす。

(渡すなら今…)

けれど、その手をぴたりと止めた。

(…いや、せっかくなら、)
(吉琳ちゃんに、もっと喜んでもらえそうな場所で渡したい)

ロベール 「吉琳ちゃん、もう一か所行きたい所があるんだけど、良いかな?」

***

そうして、美しい花が咲き誇る花畑へ吉琳を連れてきた。
歩幅を合わせ、ゆっくりと花の間を連れ添って歩く。
吉琳 「綺麗ですね…」
ロベール 「そうだね」
すると、吉琳がぽつりと呟くように口を開いた。
吉琳 「時々思うんです」
吉琳 「もしロベールさんとこうして再会していなかったら、」
吉琳 「どうなっていたんだろうって」

(再会していなかったらか…)
(確かにそういった未来もあったのかもしれない)

けれど、そんな未来を想像すると、小さな悲しみが広がった。
ロベール 「それで、どうなっていたと思ったの?」
吉琳 「…想像出来ませんでした」
小さく苦笑をしながら、優しい声が響く。
吉琳 「もうロベールさんが隣にいないなんて、考えられないみたいです」

(吉琳ちゃん…)

ゆっくりと恥じらった表情で吉琳がロベールを見上げる。
視線が合うと、唇が綻び…
その笑顔は、夕日に照らされてひと際美しく見えた。

(吉琳ちゃんは、真っ直ぐ前だけを向いている)
(本当に…綺麗な子だ)

膨らんでいく幸せを胸に、ロベールは立ち止まった。
吉琳 「ロベールさん?」
不思議そうに立ち止まる吉琳に笑みを向け、
上着のポケットから小箱を取り出す。

(そんな吉琳ちゃんを幸せにすると、今日誓おう)

ロベール 「俺も…もう考えられないよ。君を離したくない」
ロベール 「今日はその想いを、改めて伝えてもいいかな」
ロベールは小箱を開け、中から指輪を取り出した。
ラインにそって宝石が散りばめられ、それが夕日に照らされて虹色に輝く。
吉琳 「それって…」
ロベール 「正式なものではないけれど、二人だけの結婚式」
吉琳は、はっと小さく息をのみ瞳を微かに揺らす。
そしてすぐに、嬉しそうに目元を緩めた。

(この子に初めて会った時、城で再会した時、俺は常に額縁の外にいた)
(幸せになってはいけないと、ずっとそう思っていたから)

吉琳に向き直り、ロベールは真っ直ぐに視線を向ける。

(けれど今は…絵の中にいる。吉琳ちゃんと一緒に)
(だから俺も、前だけを向いていこう)

ロベール 「ロベール.ブランシェは、」
ロベール 「吉琳のことを一生愛し、守り続けていくと誓います」
指輪を吉琳の指にはめ、そっと手を離そうとすると…

(えっ)

きゅっとその手を握られる。
ロベール 「吉琳ちゃん?」
吉琳 「……私も誓います」
吉琳 「この先何があっても、ロベールさんの側にいることを」
真っ直ぐに伝えられた言葉が、胸に温かく広がっていく。

(当たり前のようにこんなことを言えて…)
(本当に吉琳ちゃんには敵わない)

溢れる愛しさを伝えるように、その身体を抱き寄せた。
ロベール 「ありがとう」
ロベール 「…ずっと側にいるよ」

(君を幸せにするために、出会ったんだと…そう思うよ)

囁くように告げると、そっと吉琳の顔を上に向ける。
すると、受け止めるように、赤く染まった吉琳の瞼が伏せられた。
吉琳 「ん……」
ロベール 「愛してる」

(この世界で、たった一つだけ変わらないものがあるとするなら…)
(それは君への愛だよ)

温かな夕日の色が二人を包み込む。
ロベールは溢れる想いを抱いて、吉琳に口づけた…―

 

1216306824

arrow
arrow
    全站熱搜

    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()