Only my knight~あなたの腕に守られて~(レオ)
プリンセスに迫る危機。 守ってくれるのは、
―…あなただけのナイト。
愛しいあの人がナイトとして、一日誰よりも近くにいることに…
………
レオ:その日は、朝から夜までつきっきりで守ってあげる
レオ:一日だけ騎士ってことで、宜しくね
……
とろけるような愛につつまれる物語が、ここに…―
*感謝Alice殿下提供文字檔(・∀・)
第1話:
足音が中庭に響いて…
レオ:ああ、いたいた
キラキラと飛沫をあげる噴水の向こうから現れたのは、レオだった。
Alice:レオ
近づいてくるレオと頬を緩める私を交互に見て、
ユーリがそっと脇へ避ける。
ユーリ:もしかして、Alice様に用事ですか?
レオ:うん。ジルから伝言
レオ:城下へ行く許可が出たってさ
Alice:本当?
先日、城下にいた時、お世話になったおじいさんが体調を崩していると聞き、
ジルにお見舞いに行けないかと頼んでいたのだった。
(許可が下りて良かった)
笑みを深める私に、レオが優しい眼差しを向ける。
レオ:それと、頼まれてた物もちょうど届いたから取りに来てくれる?
(レオにお願いしてた物…もう手に入ったんだ)
Alice:うん、すぐに行くね
微笑みながら頷き、私たちは中庭を後にした。
そうして、レオの部屋まで向かい…―
=====
Alice:うん、すぐに行くね
微笑みながら頷き、私たちは中庭を後にした。
そうして、レオの部屋まで向かい…―
レオ:これで大丈夫?
レオがアンティークのボタンを机に並べる。
(わぁ…色んな種類があるんだな)
それは近隣国で作られている様々な形をしたボタンで、
それを集めるのが、おじいさんの趣味だった。
Alice:うん。きっとお見舞いに持って行ったら喜んでくれると思う
Alice:本当にありがとう
レオ:俺は何もしてないよ
レオ:ちょっと知り合いの人に頼んだだけだから
優しく微笑んだレオは当たり前のように、そう言う。
私は一週間前、レッスンの合間にお見舞いの品を話した時、
レオが協力すると言ってくれたことを思い出した。
(でも、たった七日でこれだけの物を集められるなんて…)
(色んな人に声を掛けてくれたんだろうな)
そう思うと、手を尽くしてくれたレオにお礼を言わずにはいられない。
Alice:それでも…ありがとう
Alice:レオが協力してくれなかったら、
Alice:こんなに早く、手に入れられなかったかもしれないから
するとレオは嬉しそうに目を細めて、私の手を取り…―
レオ:お役に立てて光栄です。プリンセス
=====
するとレオは嬉しそうに目を細めて、私の手を取り…
レオ:お役に立てて光栄です。プリンセス
ちゅっと小さな音を立てて、手の甲にキスを落とした。
Alice:もう、レオってば
冗談めかした言葉と仕草が、私を自然と笑顔にしてくれる。
するとレオは、にこっと笑ってから手を離して、
ポケットからある物を取り出した。
レオ:実は、ついでにこんな物も貰ったんだよね
Alice:カード…?
目の前に差し出されたのは、ゲーム用のカードだった。
レオ:前にカードゲームしたことあったな、と思って
レオ:またやってみない?
まだレオと恋人になる前、カードゲームをした記憶が、
その言葉と共に、呼び戻される。
(あの時はレオの圧勝だったな。でも…)
Alice:うん。今やったら勝てるかもしれない
レオ:自信あるんだ?
Alice:私も腕上げてるんだよ
挑発めいた視線を受け止めて、笑みを返すと、
レオは楽しそうに目を細め…―
レオ:そこまで言うなら、この勝負に条件でも付けようかな
=====
レオ:そこまで言うなら、この勝負に条件でも付けようかな
Alice:条件?
レオ:例えば…負けた方が勝った方の言うこと聞くっていうのはどう?
突然の提案に微かに驚くものの、私は思い切って頷いた。
Alice:分かった
(条件があった方が、お互い本気になれそう)
どこか、わくわくした気持ちを抱く私へ、
レオが手を差し出し、椅子へと促す。
レオ:じゃあ、始めようか
そうしてお互い机を挟んで椅子に座り、ゲームを進めていき…―
****
(これなら、本当に勝てるかも)
手持ちのカードを見つめ、期待が湧いてくる。
自信を持ってカードを机に並べると…
レオ:今回も俺の勝ち
Alice:えっ
目の前に並べられたカードは、確かにレオの勝利を示すものだった。
そのカードを見て、私は思わず肩を落としてしまう。
Alice:やっぱりレオは強いね
レオ:ここで手を抜いたら、逆にAliceちゃんに失礼でしょ
おどけたように言うレオに、小さな笑みがこぼれてしまう。
(こういうところ、レオらしいな)
Alice:それじゃあ…レオのお願い、聞かせて
(何て言われるんだろう)
自然と速くなる鼓動を聞きながら、レオの言葉を待っていると…―
レオ:城下へのお見舞い、俺も一緒に行っていいかな?
=====
レオ:城下へのお見舞い、俺も一緒に行っていいかな?
Alice:えっ
(それが、レオのお願い?)
思いがけない言葉に、私は瞳を丸くする。
Alice:でも、どうして?
訊ねると、レオは微笑んだまま理由を教えてくれた。
レオ:城下に行く時は、騎士が護衛でつくのが普通だけど、
レオ:Aliceちゃんのことだから、大げさにしたくないよね?
レオ:ただ…行き先になってる所は酒場も多くて、もしもの場合もある
レオ:だから、護衛を俺に任せてほしいな
告げられるレオの言葉に、はっと息をのむ。
(不思議なくらい、レオには私の気持ちが伝わってしまうみたい)
(でも…嬉しいな)
Alice:ありがとう
笑顔を返す私に、レオがわずかに顔を寄せて…
レオ:その日は、朝から夜までつきっきりで守ってあげる
Alice:……!
Alice:それ、さっき庭で話してた…
ユーリとオペラについて話していた内容が、頭をよぎる。
レオ:うん。最後の方だけ聞こえてたんだよね
レオ:望んでくれるなら、いくらでも側にいて守りたいけど、
レオ:遠慮しちゃうでしょ、Aliceちゃん
そう言われて、ふとあることに思い至った。
Alice:もしかして、それでカードゲームを?
レオは問いかけには答えず、ただ柔らかく微笑んでいる。
それでも、レオの気持ちは十分伝わってきた。
(私が気にしないように、カードに勝った条件にしてくれたんだ…)
優しい気遣いに胸が甘く音を立てる。
レオ:一日だけ騎士ってことで、宜しくね
第2話:
レオ:一日だけ騎士ってことで、宜しくね
(レオが、私の騎士に…)
オペラで演じられていたプリンセスと恋人の姿が、
今の自分たちに重なり、頬が微かに熱を持つ。
(一日だけど、朝から夜まで大好きな人に守ってもらえるなんて嬉しいな)
Alice:こちらこそ、宜しくお願いします
そうして微笑み合った時…
Alice:あ…っ
ふと、レオの後ろのチェストに置いてある時計が目に入った。
レオ:どうしたの?
Alice:もうすぐ次の公務の時間だったの。すぐに行かないと…
(レオと話してるとすぐに時間が過ぎてしまう)
レオ:ごめんね、引きとめちゃって
Alice:ううん、私も楽しかったから
レオからもらったアンティークのボタンを箱にしまい、手に抱える。
Alice:じゃあ、またね
にこっと笑って立ち上がると、
いたずらっぽい笑みを浮かべたレオが側へと近づいた。
レオ:そうだ。公務の前に…
(わっ)
思いがけず、腕が軽く引き寄せられ…―
=====
レオ:そうだ。公務の前に…
思いがけず腕が軽く引き寄せられ…
Alice:っ……
額にふわりとキスが贈られる。
レオ:言ってた通り、ゲームの腕上げてたから、その頑張りを称えて
ふいの口づけに、早鐘を打つ鼓動をどうすることも出来ない。
(上達していたこと…ちゃんと見ていてくれたんだ)
(レオといると、どうしてこんなに嬉しいことばかりなんだろう)
Alice:あ、ありがとう…
頬を熱くする私に、レオは優しく微笑みかけてくれた。
レオ:行ってらっしゃい
***
それから数日後の休日…―
私とレオは、おじいさんのお見舞いに訪れていた。
おじいさんはベッドから身体を起こして、私たちを迎えてくれる。
Alice:だいぶ顔色も良くなってますが、無理はしないでくださいね
おじいさん:ああ、分かっているよ
おじいさん:それにしても、忙しいのに来てくれてありがとう
おじいさん:こんな素敵な物まで持ってきてくれて
おじいさんは、自分の膝に視線を落とす。
黄色いリボンが解かれた包みの中には、あのアンティークのボタンが入っていた。
(よかった…喜んでもらえたみたい)
感謝の気持ちを込めて、壁際に控えるレオへ視線を向けると、
優しい笑顔が返される。
わずかな間、見つめ合う私たちに、おじいさんが声をかけた。
おじいさん:そちらは、騎士の方かな?
Alice:あ、この人は…
すると、私の言葉を遮ってレオが口を開き…―
=====
レオ:初めまして
レオ:本日は、プリンセスの護衛で、一緒に伺いました
そう告げたレオは、いたずらっぽく微笑む。
(そうだった。今日は騎士として来てくれてるんだもんね)
私はレオの視線を受け止めて、小さく頷いた。
おじいさん:そうですか。…この子を宜しくお願いします
おじいさん:プリンセスとして立派にやっていると思いますが、
おじいさん:昔は、よく泣いていた子なんです
おじいさん:好きな男の子が引っ越した時もなかなか泣きやまないで…
レオ:へえ
おじいさんの話に、レオが興味深そうに相づちを打つ。
Alice:も、もう…そんな昔のこと…
慌てて話を止めると、おじいさんは楽しそうに肩を揺らした。
***
そうして、おじいさんの家を後にして、
レオと共に馬車の停めてある場所まで歩いていく。
Alice:ごめんね、時間かかってしまって
明るいうちに城下へ来たはずが、
辺りは、すっかり静かな夜の景色になっていた。
レオ:気にしないで。Aliceちゃんのことも少し聞けたしね
Alice:あ、あれは…
(子どもの時のことは…何だか恥ずかしくてレオに言えない)
照れて言葉に詰まっていると、レオがふと足を止めて…―
レオ:俺は、もっと聞きたかったんだけどな
=====
レオ:俺は、もっと聞きたかったんだけどな
レオ:Aliceちゃんの子どもの頃の話
Alice:えっ
落とされたその声が、いつもより少しだけ低く感じて、
ぱっとレオを振り返った。
レオ:先生をしていた頃のことはよく話してくれるけど、
レオ:そういえば、小さい頃のことはあんまり聞いてなかったなと思って
レオを見つめると、少し困ったように笑う瞳と視線が絡む。
(どうして、そんな顔を…)
気のせい、とは思えないほど胸の引っかかりを感じ、
訊ねようとすると、暗い路地に声が響いた。
???:あんたら、こんなとこで痴話げんかか?
ふいにかけられた声に振り返ると、若い男性が数人こちらに歩み寄ってくる。
(…酔ってるみたい)
少し離れていても分かるほどの濃いお酒の香りに、思わず眉を寄せてしまう。
危うい雰囲気を感じた時…―
レオ:そういうのじゃないから、ほっといてもらっていい?
=====
レオ:そういうのじゃないから、ほっといてもらっていい?
男たちの感情を、逆なでしないようにするためか、
レオが柔らかな物腰で告げる。
けれど、男の一人が声を荒らげた。
男1:あ? 生意気なこといいやがって
男2:そういう態度なら、痛い目みてもらわねえとな
レオの隣に立つ私へ、いやらしい笑みが向けられる。
背筋がひやりとして、身体を強張らせた瞬間、ふいに男の腕が伸びてきて…
Alice:っ…
レオ:っAliceちゃん
レオに手を引かれ、その背にかばわれる。
男2:何もしてねえだろ? まだ、な
男1:そうだな。何かするってのは…
Alice:きゃっ
いつの間にか距離を詰められ、別の方向から、ぐっと私の腕を掴んだ。
Alice:……!
腕を引いても、びくともしない強い力に恐怖がこみ上げたその時、
私を捕らえている男性の腕を、レオが掴み上げ…―
第3話-プレミア(Premier)END:
腕を引いても、びくともしない強い力に恐怖がこみ上げたその時、
私を捕らえている男性の腕を、レオが掴み上げ…
レオ:この手、離してもらえる?
男1:っ……
レオがさらに力を込めると、男は顔を歪めて徐々に掴んだ手を開いていく。
男2:お、おい。もういい。行くぞ
焦った声と共に、男たちは一斉に立ち去っていった。
その瞬間、レオが男に掴まれていた私の手を優しく包みこむ。
レオ:もう行ったから、大丈夫だよ
声をかけられて、やっと詰まっていた声が口からこぼれた。
Alice:…ありがとう
(側にいてくれたのがレオでよかった)
レオの大きな手に包み込まれ、胸に安堵が広がる。
レオ:帰ろう
Alice:うん
レオの温もりを離さないように、私は包んでくれた手に指先を絡めた。
そうして、馬車で城へ戻り…―
レオに送ってもらい、私は部屋まで戻ってきていた。
(今日のお礼も、改めてちゃんと言いたいし…)
(まだ、離れたくないな)
そんな気持ちを告げようとすると、ふとレオに引き寄せられて…―
(あっ)
レオ:もう少しだけ、一緒にいてもいい?
=====
(まだ、離れたくないな)
そんな気持ちを告げようとすると、ふとレオに引き寄せられて…―
(あっ)
レオ:もう少しだけ、一緒にいてもいい?
レオの肩越しに閉じていく扉が見える。
(レオも同じように望んでくれるなら…)
Alice:うん。…一緒にいて
鼓動が早鐘を打つのを感じながら、小さな声で伝えた。
すると、ふっと笑ったレオがわずかに身体を離し、私の手首に触れる。
レオ:ここ、まだ赤いね
Alice:うん…でも、痛くないしすぐに引くと思う
レオ:……
小さく首を振るけれど、レオは私の手首を撫でながら眉を寄せる。
レオ:今日、怖い想いさせてごめん。Aliceちゃん
耳に届いた声音は、いつもと違った真剣なもので胸が痛む。
Alice:…そんなことないよ
(レオが責任を感じる必要なんてない)
(だってレオは…ちゃんと私を守ってくれたから)
その想いを伝えたくて、私は腕を伸ばし…―
=====
(レオが責任を感じる必要なんてない)
(だってレオは…ちゃんと私を守ってくれたから)
その想いを伝えたくて、私は腕を伸ばし、
レオの背中にぎゅっと手を回した。
Alice:謝らないで
Alice:ボタンを探してくれた時と一緒だよ
レオ:え?
広い胸に押し付けるようにしていた顔を上げて、レオの瞳を見つめた。
Alice:レオがいてくれなかったら、
Alice:あんなにすぐ離してもらえなかったかもしれない
Alice:レオが協力してくれなかったら、
Alice:こんなに早く、手に入れられなかったかもしれないから
Alice:私を守ってくれてありがとう
微笑んで告げると、
どこか戸惑っているように見えたレオの表情が、ゆっくりと和らいでいく。
レオ:Aliceちゃんって不思議なくらい、俺の欲しい言葉くれるよね
レオ:だから、こんなに好きで…ひとり占めしたくなっちゃうんだろうな
=====
レオ:だから、こんなに好きで…ひとり占めしたくなっちゃうんだろうな
Alice:ひとり占め…?
レオは深く息を吸い込んでから、
いつものように冗談っぽく笑って続けた。
レオ:今日、Aliceちゃんの昔の話を聞いて、思ったんだよね
レオ:今だけじゃなくて、
レオ:俺と出逢ってなかった頃も、全部俺のものにしたいってさ
(もしかしてあの時…)
〝レオ:俺は、もっと聞きたかったんだけどな〞
困ったように微笑んでいたレオの表情と、
今、話してくれたレオの気持ちが繋がる。
(私の知らないレオがいて…レオの知らない私もいる)
(出逢っていなかった間のことは、なかなか埋められないけれど…)
胸にこみ上げる気持ちを、私は声に乗せて伝えた。
Alice:今も、これから先もずっと、私はレオのものだから
Alice:過去の分まで、未来を全部レオにあげる
そう言うと、レオは目元を染め…
レオ:……
やがて、ふっと笑った吐息が頬を掠める。
レオ:大胆だね
Alice:そ、そうかな…
レオ:うん。そういうところも好きなんだけど
Alice:っ……
さらりと告げられた甘い言葉に、真っ赤になってしまう。
そんな私を見つめて楽しそうに笑ったレオは、
ふと身体を離して、チェストへと向かい…―
=====
レオ:うん。そういうところも好きなんだけど
さらりと言われて、真っ赤になってしまう。
そんな私を見つめて楽しそうに笑ったレオは、
ふと身体を離して、チェストへと向かい…
Alice:レオ…?
レオ:今、いいものが見えたから
すぐに戻ってきたレオは、
ボタンを包む時に使った、黄色いリボンを手にしている。
(リボンでどうするんだろう…)
首を傾げていると、レオはそのリボンを私の両手にするりと巻いた。
Alice:えっ
レオ:これなら、赤くなってるところ隠せるでしょ
Alice:そ、そうだけど…片手だけで大丈夫だよ…
レオ:まあね。でも、
レオ:この方が、Aliceちゃんのこと独占してるみたいで燃える
その言葉通り、熱い眼差しで見つめられて鼓動が跳ねる。
(確かにレオのものって言ったばかりだけれど…)
(はっきり独占と言われると…照れてしまう)
緩く巻かれたリボンに囚われてしまったようで、全身が熱を持っていく。
やがて笑みが刻まれたレオの唇が、耳元に寄せられ…―
レオ:でも本当に嫌だったら、もちろん外してあげるよ
レオ:選んでAliceちゃん
レオ:俺に独占されたい? それとも、されたくない?
fin.
第3話-スウィート(Sweet)END:
腕を引いても、びくともしない強い力に恐怖がこみ上げたその時、
私を捕らえている男性の腕を、レオが掴み上げ…
レオ:この手を離さないなら、そのまま城に連行するけどいい?
静かに、きっぱりとそう告げる。
男1:はあ? どういう意味だよ
馬鹿にしたように笑っていた男たちの一人が、私の顔を見てはっとした。
男2:待て。この顔……もしかして、プリンセスじゃねえか?
私の手を掴んでいた男の表情も、一気に青ざめていく。
男たちを見据え、レオは薄く笑みをたたえて答えた。
レオ:そういうこと。もうすぐ王室直属の騎士も来るんじゃないかな
男2:……!
その鋭い視線と低い声に、男たちが息をのむ。
男1:っおい、行くぞ
慌てた声でそう言って、男たちはすぐにその場を去っていった。
(よかった……)
離された手に視線を落とすと、自分の意志とは関係なく微かに震えている。
(もう、大丈夫なのに……おかしいな)
頭では分かっていても、感情が追いつかない。
すると、優しい声がかけられた。
レオ:Aliceちゃん
振り返ると、レオはやんわりと震える手に触れ…―
=====
レオ:Aliceちゃん
振り返ると、レオはやんわりと震える手に触れ、
私を優しく抱き寄せた。
そうして、お互いの額がぴったりと触れ合う。
(レオが…こんなに近くに)
鼓動が小さく音を立てるのと同時に、
身体から強張りが抜けていくのを感じた。
レオ:…俺だけ見て
レオ:全部忘れていいから、俺のことだけ。ね?
(レオの温もりも、声も、香りも…)
(全部、落ち着く)
胸を埋め尽くしていた恐怖が薄れていき、レオの上着をきゅっと握る。
Alice:うん…レオだけ、見てる
間近で見つめ合うと、レオが愛しげに見つめ返してくれた。
(あっ震えが…)
穏やかな雰囲気に安心したせいか、もう指先の震えは止まっている。
Alice:ありがとう…もう大丈夫だよ
そう告げたものの、レオはずっと私を抱き締め続けている。
Alice:あの、レオ…?
レオ:ごめんごめん。Aliceちゃんがしがみついてくれるのが嬉しくて
レオ:どうせなら、ずっとこうしててもいいんだけどな
Alice:…もう
レオの言葉に、私はくすくすと笑ってしまう。
(からかわれて、ようやく少し笑えた気がする)
やがて、すっかり気持ちが落ち着いて身体を離すと、
やんわりと、レオと指先が絡んで…―
=====
やがて、すっかり気持ちが落ち着いて身体を離すと、
やんわりと、レオと指先が絡んで…
レオ:帰ったら、俺の部屋で紅茶飲んでいかない?
レオ:このままじゃ、後味悪いでしょ
私の気持ちをほぐそうとしてくれているのが分かり、胸の中が温かくなる。
Alice:うん
(今日、レオが側にいてくれてよかった…)
私はそう思いながら、レオの手を握り返した。
***
その後、無事に城へと戻った私はレオの部屋を訪れていた。
レオ:はい、どうぞ
Alice:ありがとう
ソファに腰かけ淹れてもらった紅茶に口をつけると、
心の奥からほっとした心地になる。
レオ:もう平気みたいだね
カップを置いたレオに頷き、同じようにカップを目の前のテーブルに置いた。
Alice:レオが守ってくれたから
Alice:改めて、今日一緒に来てくれてありがとう
レオ:どういたしまして
(まるで本当にオペラの一場面みたいだった)
私を守ってくれた時の、騎士のように凛々しい姿を思い出していると、
ふと、帰り道のレオの様子が同時に頭をよぎった。
〝レオ:俺は、もっと聞きたかったんだけどな〞
(あの時のこと、まだ聞けてなかった)
Alice:あのね、レオ。一つ、聞いてもいい?
=====
Alice:あのね、レオ。一つ、聞いてもいい?
レオ:うん。どんなこと?
隣に座っていたレオが、私に向き直る。
Alice:帰り道で『もっと聞きたかった』って言ってた時、
Alice:いつもと様子が違ったから…どうしてかなと思って
レオ:ああ、バレてたんだ
レオはどこか照れたように笑ってから、ゆっくりと視線を落とした。
レオ:当たり前だけど、俺の知らないAliceちゃんもいるって実感したら、
レオ:少し寂しくなってさ
レオ:恋人のことは全部ひとり占めしたいから…なんてね
冗談っぽく言いながらも、レオは真っ直ぐな眼差しを向ける。
(今の言葉は…レオの本心なんだよね。きっと…)
真実を知り、レオの想いに全身が包まれていくような感覚に胸がときめく。
(こんなに愛してくれる人は…レオしかいない)
(…でも)
Alice:そう思ってくれて、すごく嬉しい
Alice:でも、子どもの頃のことは…恥ずかしいこともいっぱいあるから、
Alice:やっぱり好きな人には、話せないよ…
自分の胸の内を全て伝えるように、
膝に置かれたレオの手に自分の手を重ねて…―
=====
Alice:でも、子どもの頃のことは…恥ずかしいこともいっぱいあるから、
Alice:やっぱり好きな人には、話せないよ…
自分の胸の内を全て伝えるように、
膝に置かれたレオの手に、自分の手を重ねて…
Alice:レオの前では、可愛いって思ってもらえる自分でいたいの
想いを口にすると、レオは一瞬驚いたように瞳を瞬かせた後、
楽しそうに声をこぼして笑った。
レオ:分かった。もう聞かない
レオ:でもその代わり…
言いながら、レオの顔が近づく。
レオ:今の可愛いAliceちゃんはひとり占めさせてくれるよね?
目の前に広がる微笑みに、胸の奥が嬉しさでいっぱいになった。
Alice:うん…
こくりと頷くと、レオは嬉しそうに私を引き寄せてキスを落とす。
(恥ずかしい過去は秘めておきたいと思うほど、レオが好きで)
(素敵な恋人に見合う私でいたいな)
大好きな人の腕の中で、私は甘いひと時に浸りながら目を閉じた…―
fin.
エピローグEpilogue: