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My Little Prince & Princess(レオ)

里

 

 

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どの彼と物語を過ごす?

>>>レオを選ぶ

 

 

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第1話:

 

ユーリ:何だろう、あれ…
ユーリと顔を見合わせ、光がおさまった場所に向かうと…
吉琳:っ…女の子?
そこには、淡い黄色のワンピースを着た女の子が立っていた。
背丈は私の腰元ぐらいで、長い銀髪を三つ編みにしている。

(可愛い子だな)
(でも、何でだろう…見覚えがあるような気もする…)

ユーリ:今日の来客の中に、子どもはいないし、
ユーリ:城の解放日でもないのに、おかしいよね
吉琳:うん…。迷子かもしれないから、声をかけてみよう?
怪訝そうに首を傾げたユーリと共に、
不思議と懐かしさを感じる女の子へ歩み寄って行く。
すると、こちらに気づいた女の子が、黄色がかった薄茶色の瞳を瞬かせた。
???:あっ……
はっとした様子で小さな声をあげた女の子は、
私たちが声をかける前に、気まずそうな顔で走り出してしまう。
吉琳:っ、待って…!

(勝手に城に入って、怒られると思ってるのかもしれない)

ユーリ:吉琳様、追いかけよう
吉琳:っうん

***


(どこに行っちゃったんだろう…)

中庭を抜け、廊下の先を見渡しても女の子の姿は見当たらず、
諦めかけた、その時…―
レオ:もしかして、この子を探してる?


=====


レオ:もしかして、この子を探してる?
女の子を抱き上げたレオが、廊下の向こうから歩いてくるのが見えた。

(レオが一緒だったんだ)

吉琳:うん。よかった…迷子かと思って、心配だったの
ほっと息をつきながら、二人を見つめる。

(こうして並ぶと、あの子…レオにそっくり)
(どこかで逢ったことがあるような気がしたのは、)
(レオに似ていたからかもしれない)

そう納得していると、レオは女の子を下ろし、優しい声で促した。
レオ:鬼ごっこはおしまいだよ、小さなプリンセス
レオ:ほら、二人にちゃんと謝って
???:…はい、お父さま
ユーリ:えっ
吉琳:レオが、お父様って…

(一体どういうことなの…?)

驚きに言葉を無くしていると、
女の子がこちらへ駆け寄ってきて、ぎゅっと私に抱きついた。
???:お母さま、ユーリ……逃げたりして、ごめんなさい
吉琳:…!

(お母様って、私のこと…?)

思わずユーリと顔を見合わせた時、
レオが苦笑をこぼしつつも、はっきりと告げた。
レオ:この子の名前は、ソフィー。すぐには信じられないと思うけど、
レオ:俺と、吉琳ちゃんの子どもみたいなんだよね


=====


レオ:この子の名前は、ソフィー。すぐには信じられないと思うけど、
レオ:俺と、吉琳ちゃんの子どもみたいなんだよね
ユーリ:子ども…?
吉琳:そんなことって……
現実味のない言葉に、瞬きを繰り返していると、
レオの穏やかな声が響いた。
レオ:ここじゃ落ち着いて話せないし、場所を変えようか

***

お茶を用意してくれるというユーリと別れ、
レオと私は、ソフィーを連れて部屋に戻ってきた。
ソフィー:ねえ、お母さま。この本読んでもいい?
本棚を楽しそうに眺めて訊ねるソフィーに、
私は、少し戸惑いながらも頷きを返す。
吉琳:う、うん…どうぞ
レオ:こっちで読んだら? おいで
ソフィー:ありがと!
ソフィーは、レオが用意した椅子に座り、
楽しげに瞳を輝かせながら、城下から持ってきていた絵本を読み始めた。

(レオと同じで、本が好きなのかな)

恋人との小さな共通点に、自然と笑みがこぼれる。
すると、ソファに並んで腰かけていたレオが口を開いた。
レオ:吉琳ちゃんたちと逢う少し前に、ソフィーが俺の執務室に来たんだ
レオ:そこで、少し話を聞いたんだけど…


=====


レオ:吉琳ちゃんたちと逢う少し前に、ソフィーが俺の執務室に来たんだ
レオ:そこで、少し話を聞いたんだけど…
ソフィーは城の中のことや、
私とレオしか知らないような思い出を話し始めたという。
レオ:ソフィーが嘘をついているようには見えないし、
レオ:未来から来た俺たちの子ども、っていうことで間違いないと思うよ
迷いなく告げられたレオの言葉を受けとめて、
中庭でソフィーを見た時に感じた、不思議な感覚を思い出す。

(はじめて逢ったはずなのに、どこか懐かしいような気持ちになったのは)
(ソフィーが、未来の私たちの子どもだったからだよね、きっと)

吉琳:私もそう思う。それにソフィーは、レオによく似ているしね
そう返すと、レオは少し意外そうに瞳を丸くして、
すぐに、ふっと笑みをこぼした。
レオ:そう? 俺より、吉琳ちゃんに似てるんじゃないかな

(顔立ちも本が好きな所も、レオ譲りだと思うけれど…)

レオ:…分からない?
レオは私の肩を抱き寄せながら、耳元に唇を寄せて…―


=====


(顔立ちも本が好きな所も、レオ譲りだと思うけれど…)

レオ:…分からない?
レオは私の肩を抱き寄せながら、耳元に唇を寄せて…
レオ:素直で笑顔が可愛いところとか、吉琳ちゃんにそっくりだよ
吉琳:っレオ…
ふいに近づいた距離に鼓動を騒がせながら、慌ててソフィーの様子をうかがう。

(…よかった。気がついていないみたい)

ほっと胸を撫で下ろすと、レオはどこか楽しげな笑みを浮かべた。
レオ:ソフィーなら大丈夫だよ
レオ:本に集中してるから、周りのことなんて見えてないと思う
吉琳:どうして分かるの?
はっきりとした言葉に首を傾げると、
レオはどこか懐かしそうに瞳を細めて答える。
レオ:俺がそうだったからかな

(そっか…そんなところもレオにそっくりなんだな)
(未来から自分たちの子どもがやって来たなんて、)
(普通では、考えられないことかもしれないけれど…)

レオとソフィーを見ていると、不思議とすんなり納得することが出来た。
レオ:…そろそろ読み終わる頃かな
レオがソフィーに視線を向けると同時に、本が閉じられる音と元気な声が響く。
ソフィー:お母さま、次はあそこのお姫さまの本が読みたい!
吉琳:うん、取ってあげるね
笑みをこぼして立ち上がった時、
ノックの音と共に扉が開かれ、ユーリがティーワゴンを運んできた。
ユーリ:お待たせ
ソフィー:わあ、ユーリの紅茶だ!
ソフィーは本をテーブルに置き、にこにことワゴンに駆け寄る。
そんなソフィーへ笑顔を向けてから、ユーリは私に声をかけた。
ユーリ:この後なんだけど…―

 

 

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第2話:

 

ユーリ:この後なんだけど…
ユーリ:ジル様にお願いして、少しだけ公務の時間を調整してもらえたよ
吉琳:ありがとう、ユーリ。迷惑かけてごめんね

(後でジルにもお礼を言わないと)

ユーリ:ううん! 俺も、三人で過ごしてもらいたいなって思ったんだ
ユーリは、にこっと笑って紅茶を淹れ、
ソフィーに黄色のマカロンを一つ差し出す。
ユーリ:はい、ソフィーにはこれをあげる
ソフィー:マカロンだ! ありがとう、ユーリ大好き!
ユーリ:俺も! じゃあ、お父様とお母様が公務の間は、俺と一緒に遊ぼうか?
ソフィー:うん!

(よかった…。事情を知ってるユーリが預かってくれるなら安心だな)

レオ:ありがとう。時間になったら、声かけるよ
ユーリ:分かりました。それじゃあ、俺はこれで
ユーリは明るく返事をして、ソフィーに手を振り、部屋を後にする。
ユーリに手を振り返して、マカロンをもう一つ食べようとしたソフィーは、
ふと、何かを思い出したようにお皿に伸ばした手を止めた。
レオ:お腹いっぱいになった?
ソフィー:ううん。……ぜんぶ食べたら、妹の分なくなっちゃうから
吉琳:妹がいるんだ。残しておいてあげるなんて、優しいね
何気なく告げた言葉に、ソフィーは怪訝そうに首を傾げて…―


=====


何気なく告げた言葉に、ソフィーは怪訝そうに首を傾げて…
ソフィー:ねえ…みんな、いつもと違うよ。どうして?
吉琳:っ、それは…

(本当のことを伝えても、戸惑わせるだけかもしれない)
(でも、隠したらもっと不安にささせてしまうよね…)

どう話していいか迷っていると、
レオが安心させるような笑みを浮かべて、ソフィーの頭を撫でた。
レオ:よく聞いて
レオ:ここは、ソフィーが生まれる前のウィスタリアなんだ
ソフィー:えっ
ソフィーが大きな目を瞬かせながら、私とレオの顔を見比べる。
ソフィー:だから、みんなびっくりしてたの?
吉琳:うん…私たちの子どもだって、すぐに分かってあげられなくて、ごめんね
ソフィー:わたし…どうしたらいいの?
ソフィーの瞳には、今にもこぼれ落ちそうな涙の膜が張っていき、
私は、少しでも励ましたくて小さな手をぎゅっと握った。
レオも、隣から穏やかな声色でソフィーを慰める。
レオ:大丈夫だよ。元の世界に戻る方法を、一緒に考えよう
レオ:まずは、ここに来る前に何があったか、教えてくれないかな?
レオに訊ねられたソフィーは、涙をぐっと我慢して頷き、
少し考えるような表情を見せて…―
ソフィー:もしかして…わたしが、あんなことしちゃったからかな…?


=====


レオ:大丈夫だよ。元の世界に戻る方法を、一緒に考えよう
レオ:まずは、ここに来る前に何があったか、教えてくれないかな?
レオに訊ねられたソフィーは、涙をぐっと我慢して頷き、
少し考えるような表情を見せて…
ソフィー:もしかして…わたしが、あんなことしちゃったからかな…?
レオ:あんなことって?
ぽつりと呟かれた言葉の続きを、レオが優しく促す。
ソフィーは気まずそうに俯き、小さな声で答えた。
ソフィー:…妹とケンカして、お城を飛び出したの
吉琳:どうしてケンカになったのか、聞いてもいい?
ソフィー:……
けれど、ソフィーはそれきり口をつぐんでしまう。

(無理に話させるわけにはいかないけれど、)
(…原因が分からないと、ずっとこのままかもしれない)
(話してもらうには、どうしたらいいのかな)

考えを巡らせているうちに扉がノックされ、
メイドさんが次の公務の時間を知らせる。
レオ:行ってきて。俺は、もう少し時間あるからソフィーといるよ
吉琳:…ありがとう
吉琳:ソフィー…すぐ戻ってくるね
ソフィー:…うん
私は気がかりを残したままソフィーをレオに預けて、公務へ向かった。

***

そうして徐々に日が傾いてきた頃…―
公務を終えて部屋に戻ると、レオがベッドに腰かけていた。
レオ:吉琳ちゃん、お疲れさま
吉琳:っ…レオ?


=====


レオ:吉琳ちゃん、お疲れさま
吉琳:っ…レオ?
レオの腕の中では、ソフィーが小さな寝息を立てている。
私は足音を立てないようにそっと近づき、小声で訊ねた。
吉琳:ずっとレオが見てくれたの?

(公務の間は、ユーリが預かってくれると言っていたはずだけれど…)

不思議に思って首を傾げると、レオはくすっと笑う。
レオ:違うよ。公務が早く終わったから、ユーリと交代したんだ
しばらく遊んでいるうちに抱っこをせがまれ、
そのまま眠ってしまったのだという。

(ソフィーも安心しきった顔で眠ってる…。可愛いな)

吉琳:すっかり、いいお父さんだね
レオ:吉琳ちゃんとの大事な子どもだし、沢山可愛がってあげないとね

(そんな風に考えてくれていたんだ)

優しい想いに胸が温かくなり、微笑んで隣に腰かけると、
レオは少し意地悪な眼差しで続けた。
レオ:でも『いいお父さん』って、
レオ:子どもが寝てる隙に、こういうことする?
ふいに声を低めたレオが、ゆっくりと私の顎をすくい上げて…―


=====


ふいに声を低めたレオが、ゆっくりと私の顎をすくい上げて…
吉琳:…っ
淡い音を響かせて唇をついばみ、名残惜しそうに離れていった。
いたずらっぽく瞳を細めるレオに、ぽっと頬が熱くなっていく。
吉琳:っ子どもといる時は、だめだと思う…
高鳴る鼓動を落ち着かせながら、そう答えると、
レオは楽しげに目を細めた。
レオ:ごめんね。吉琳ちゃんが可愛くて、つい
吉琳:もう……
拗ねた声を返しつつ、恥ずかしさから視線を下げると、
レオの側に、会議で使った様子の書類が置いてあるのが見える。

(公務の後、すぐここに来てくれたんだ)
(…ずっと遊んでくれていたなら、レオも疲れてるかもしれない)

吉琳:後は私が見てるから、レオは自分の部屋で休んでも大丈夫だよ
レオ:俺は平気。それに、ソフィーが離してくれないかも
吉琳:あっ…
少しだけ困ったように笑うレオの視線の先を追うと、
シャツの裾を、小さな手にしっかりと握られていた。

(無理に手を離して、起こしたら可哀想だよね)

吉琳:それなら…もうしばらく一緒にいてくれる?
レオ:もちろん
笑顔で頷いたレオは、ふと何か思い付いたような表情を浮かべて…―
レオ:…そうだ
レオ:ソフィーが起きたら行きたい所があるんだけど、付き合ってくれないかな

 

 

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里分

 

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第3話-プレミア(Premier)END:

 

レオ:ソフィーが起きたら行きたい所があるんだけど、付き合ってくれないかな
笑顔で頷くと、レオも優しい微笑みを返してくれた。

***

その後…―
レオが私とソフィーを連れて行ったのは、
日が暮れ始めたにも関わらず、活気に溢れた店が立ち並ぶ城下だった。

(こんな風に城下を歩くのは、久しぶりだな)
(ソフィーものびのびしているし、ケンカの原因も話してくれるかも)

三人で手を繋いで歩いていると、ふいに足を止めたレオが、懐から何かを取り出す。
レオ:はい、二人にどうぞ
ソフィー:わあ…! お父さま、ありがとう
吉琳:可愛いね。ソフィーにすごく似合いそう
それは、先ほど露店でソフィーが見ていた、
黄色い小さな花が、いくつもあしらわれた髪飾りだった。
私もお礼を言って受け取り、ソフィーの髪を飾る。
レオ:吉琳ちゃんには、俺がつけてあげるよ
吉琳:あ、ありがとう…

(自分の子どもの前だと思うと、何だかいつもよりドキドキするな)

自然と速まる鼓動を感じた時、髪飾りを嬉しそうに揺らしていたソフィーが、
何かを話したそうな表情で、レオを見上げた。
ソフィー:……
レオ:どうしたの?


=====


レオ:どうしたの?

(さっきまで、すごく楽しそうだったのに…)

心配になり近くのベンチに座らせると、ソフィーは小さな声で話し始めた。
ソフィー:昨日も、お父さまがわたしと妹にお人形をくれたんだけど…
ソフィー:妹が二つとも欲しいって、ケンカになっちゃったの
吉琳:そうだったんだね…
レオ:……
自分はお姉さんだからいつも妹に譲ってきたものの、
同じようなことが続いて我慢しきれず、城を飛び出してしまったのだという。

(ソフィーだけが、我慢しなきゃいけないなんて事はないと思うけれど、)
(きっとソフィーは、お姉ちゃんとしての責任感が強い子なんだな)

ソフィーの想いを否定せずに慰める言葉を探していると、
話を聞いていたレオが、何でもないことのように告げた。
レオ:それぐらい平気だよ
レオ:俺とアランも、子どもの頃はよくケンカしてたから
ソフィー:お父さまたちも?
レオ:うん。でも、色々と難しい事が起きて…

(ご両親が亡くなった頃のことかな…)

レオは遠くへ想いを馳せるような眼差しで笑みを浮かべて…―
レオ:我慢するのが当たり前になってた時、アランに言われたことがあってさ


=====


レオ:うん。でも、色々と難しい事が起きて…

(ご両親が亡くなった頃のことかな…)

レオは遠くへ想いを馳せるような眼差しで笑みを浮かべて…
レオ:我慢するのが当たり前になってた時、アランに言われたことがあってさ

〝アラン:アンタの本音を聞かせろよ〞
〝アラン:俺のために我慢するとか、もうやめて欲しいんだけど〞

(アランがそんなことを…)

初めて聞く話に、ソフィーと共に聞き入っていると、
レオは、勇気づけるように続けた。
レオ:思ってることは、言葉にしないと伝わらない
レオ:ソフィーも、何回ケンカしてもいいんだよ
レオ:同じ数だけ、仲直りすればね

(レオもアランのお兄さんとして、)
(難しい時期を、乗り越えてきたからこそ言えることなんだろうな)

ソフィー:うん。わたしも妹と話して、ちゃんと仲直りしたい
ソフィーの表情が、晴れやかになったその時…
吉琳:あっ
あたりが白い光に包まれた。
レオ:元の世界に戻れそうだね
レオの言葉にソフィーは、にこっと笑うと、光がひと際強くなる。
ソフィー:ありがとう。またね!
吉琳:っ……
眩しさにぎゅっと目を閉じると、すぐに光が弱まるのを感じた。
そっと目を開けると、想像通りそこにソフィーの姿はなくなっている。

(よかった…帰れたみたい)
(今は寂しいけれど…また逢える日を楽しみにしていよう)

その時、レオが何かに気づいたように視線を落とした。
レオ:あれって…


=====


レオ:あれって…
レオはソフィーがいた場所に残されていた髪飾りを手にして、優しく微笑んだ。

(髪飾り…人形の代わりに持って行ってほしいとも思ったけれど、)
(…きっと仲直り出来ると思うから、代わりはいらないかな)

レオ:またいつか、小さな手を繋いで一緒に歩く日が来るんだよね
吉琳:うん…。すごく待ち遠しいな
その日を思い描き、レオと自然と指先を絡めると、
夕陽に染まる街並みに、穏やかな風が吹き抜けた。

***

その夜…―
城に戻った後、
レオと並んでソファに腰かけながら、私は不思議な出来事を思い出していた。
レオ:ソフィーのことを考えてるの?
吉琳:うん。夢みたいに幸せな時間だったなって…

(ソフィーが生まれたら今日のことを話して、また髪飾りを付けてあげたいな…)

二つ並んだ髪飾りを見て笑みをこぼすと、
指先が、大きくて優しい温もりに包まれた。
レオ:あんな時間がまたすぐ来てくれるように、俺も頑張らないと
吉琳:頑張るって?
返ってきた言葉に、小さく首を傾げると、
レオは、そっと私の顎をすくい上げて…―
レオ:…分からない?


=====


レオ:あんな時間がまたすぐ来てくれるように、俺も頑張らないと
吉琳:頑張るって?
レオは、そっと私の顎をすくい上げて…
レオ:…分からない?
少し意地悪な囁きと共に、唇へ優しいキスを落とした。
レオ:吉琳ちゃんがもっと俺に夢中になってくれるように、頑張るってこと
吉琳:っ…
いたずらっぽい囁きに、鼓動が小さく跳ねる。

(からかわれてるのは、分かっているけれど、)
(それでも、嬉しい…)

吉琳:…私は、いつもレオのこと…考えてるよ
恥ずかしさにそっと目を伏せつつ答えると、レオがくすっと笑みをこぼした。
レオ:嬉しいな
レオ:俺も、いつでも吉琳ちゃんを一番に考えてる
レオはわずかに熱を帯びた眼差しで、さらに距離を近づけ、
舌先が唇を割って、柔らかな感触が溶け合っていく。
吉琳:……っ、ん…

(そんな風に言われたら、レオのことしか考えられなくなりそう…)

吐息を奪うように深くなっていくキスに、甘い熱がいくつも灯された。
レオ:力、抜けて来たね。可愛い
吉琳:…ぁ……
背中を、つっと指先が滑り、思わず肩を揺らすと、
微かに離された唇から、低い囁きが落とされた…―
レオ:もうキスだけじゃ我慢出来ない
レオ:今夜は、俺に夢中になってる吉琳ちゃんの顔をもっと見せて

 

fin.

 

 

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第3話-スウィート(Sweet)END:

 

レオ:ソフィーが起きたら行きたい所があるんだけど、付き合ってくれないかな
吉琳:うん。どこに行くの?
レオ:それは、着いてからのお楽しみ
レオは、意味ありげにそう答えるだけだった。

***

その後、目を覚ましたソフィーと三人で馬車に乗り…―
向かった先は、隣国の海岸だった。
ソフィー:わあ、大きい海…!
レオ:海を見るのは初めて?
ソフィー:うん! 遊んでもいいの?
弾んだ声で訊ねるソフィーに、レオが優しい笑みを返す。
レオ:もちろん
吉琳:でも夜だから、遠くには行かないでね
ソフィーは大きく頷き、波打ち際で綺麗な貝がらを拾い始めた。

(さっきは少し元気がなかったから、心配だったけれど…)

吉琳:ソフィー、お城に居た時より楽しそう
レオ:そうだね
穏やかな潮風が髪を揺らし、心地よさに瞳を細めながら、
ソフィーが遊ぶ様子を見守るレオに訊ねた。
吉琳:ねえ、レオ。どうして海に連れてきてくれたの?
レオ:ちょっと気分転換したくてさ


=====


レオ:ちょっと気分転換したくてさ
吉琳:そう…
小さく相づちを打って、長い銀髪を無邪気に揺らす姿へ目を向ける。

(でも、レオよりソフィーの気分転換になっているような気がする)
(レオは私より、ソフィーの気持ちが分かっているのかもしれないな)

さり気ない行動で心を軽くしてくれるレオらしさに笑みをこぼすと、
レオがその場に屈み、砂でお城を作り始める。
すると、ソフィーが大きな瞳を輝かせて、駆け寄ってきた。
ソフィー:お父さま、すごい上手!
レオ:こういうのは得意なんだ。ソフィーも一緒に作ろうか
ソフィー:うん!
ソフィーは、にこっと笑い、集めた貝がらを砂のお城に飾っていく。
私も一緒に飾り付けをしようとしゃがんだ時、
ソフィーは真っ白な貝がらを手にしたまま、ぽつりと呟いた。
ソフィー:こんなにいっぱい遊んでもらえたの久しぶりで、すごく楽しい
レオ:久しぶり…?
私の胸にも引っ掛かった言葉をレオが訊ねると、
ソフィーが、わずかに瞳を揺らしながら答えてくれる。
ソフィー:…妹が、お母さまとお父さまをひとりじめしても、
ソフィー:わたしはお姉ちゃんだし、わがまま言っちゃいけないから…

〝ソフィー:…妹とケンカして、お城を飛び出したの〞

(それがケンカの理由…)
(ソフィーもまだ小さいのに、ずっと我慢してきたのかな)

ソフィーの言葉に胸が詰まり、小さな身体をぎゅっと抱きしめる。
レオもソフィーの頭を撫で、優しく諭すように告げて…―
レオ:ソフィーは、少し思い違いをしてるかもね


=====


(ソフィーもまだ小さいのに、ずっと我慢してきたのかな)

寂しげな言葉に胸が詰まり、小さな身体をぎゅっと抱きしめる。
レオもソフィーの頭を撫で、優しく諭すように告げて…
レオ:ソフィーは、少し思い違いをしてるかもね
レオ:甘えたい時は、甘えていいんだよ
ソフィー:え…いいの?
驚いたように目を瞬かせるソフィーに、レオは笑顔で答える。
レオ:もちろん。ソフィーの気持ちは、わがままとは違うから
レオの言葉に続いて、私も優しく声をかける。
吉琳:妹のために我慢しようとしたのは、ソフィーの素敵なところだと思う
吉琳:でも、我慢しすぎてソフィーが悲しむのは違うと思うな
レオ:それに、未来の俺たちもソフィーと遊びたいって思ってるよ。絶対に
ソフィーは、嬉しそうに私たちを見上げた。
レオ:元に戻れたら、ごめんなさいって出来る?
ソフィー:うん! 帰ったら、ごめんなさいってちゃんと言う
ソフィーが大きく頷いた、その時、
あたりが白い光に包まれて…
吉琳:これ…ソフィーが来た時と一緒
レオ:ということは、これで戻れるのかな

(よかった…)

ほっと胸を撫で下ろすと、
ソフィーが何かを思い出したように、レオの袖を引いた。
ソフィー:あっ…そうだ。お父さまにお話があるの


=====


ソフィー:あっ…そうだ。お父さまにお話があるの
ソフィーは、レオの耳元で内緒話を始める。

(何の話をしているのかな)

レオ:……
レオはわずかに目元を赤く染め、気まずそうな表情を見せた。
レオ:それは…元の世界に戻っても、秘密のままにして欲しいかも
ソフィー:うん、わかった。わたしとお父さまだけのひみつね
吉琳:ソフィー、何の話をして……
訊ねようとした瞬間、光がひと際強くなる。
ソフィー:またね!
吉琳:っ……
眩しさにぎゅっと目を閉じると、少しずつ光が弱まり…
目を開けると、そこにソフィーの姿はなかった。
レオ:帰れたみたいだね
吉琳:うん…

(不思議な出来事だったな)
(まだ夢の中にいるような気もするけれど…幸せな時間だった)

たった今までそこにあった影を、既に懐かしく思いながら、
私は、ソフィーが戻る直前に言っていたことをレオに訊ねる。
吉琳:ねえ、レオ…ソフィーは帰る前に、何を話したの?
レオ:…吉琳ちゃんには、あまり教えたくないかも
吉琳:二人だけの秘密はずるいよ
レオ:そんなに知りたい?
頷くと、レオはいたずらっぽい眼差しで、そっと私の頬に手を伸ばして…―


=====


レオ:そんなに知りたい?
頷くと、レオはいたずらっぽい眼差しで、そっと私の頬に手を伸ばして…
吉琳:あ…
柔らかく唇を重ねながら、腕の中に抱き寄せた。
胸の高鳴りを感じながら見上げると、
ほんの少し困ったような笑みを向けられる。
レオ:ソフィーの目を盗んで、こういうことしてたのが
レオ:…バレてたみたいなんだ
吉琳:えっ

(ソフィーに気づかれていたなんて…)

恥ずかしさで頬を熱くしていると、レオが声をこぼして笑った。
レオ:女の子って本当、勘がいいよね
レオ:未来の俺たちも、似たようなことしてバレてたりして
吉琳:えっ
すぐに想像出来てしまうそんな様子に、ますます火照ってしまうと、
穏やかに微笑みながら、レオが言葉を紡ぐ。
レオ:なんて、今のは冗談だけどさ。ソフィーと逢って気づいたよ
レオ:今が一番幸せだって、ずっと思ってたけど、
レオ:吉琳ちゃんと一緒なら、この幸せがどんどん大きくなるってこと
吉琳:レオ…

(レオの優しさに包まれながら、)
(愛情の芽を、一緒に育てていく日が来るんだ)

見つめる澄んだ瞳の中に、少し先の未来が見える。
幸せの種が芽吹くのを感じながら、私たちはもう一度キスを交わした…―

 

fin.

 

 

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エピローグEpilogue:

里後

未来への期待と幸せが、彼への想いを溢れさせて…―
レオ:だめだな。可愛すぎて夜が明けても、離してあげられないかも
鎖骨にそっと口づけられ、ふわりと抱き上げられて…
レオ:俺だけが知ってる甘い顔、もっと見せて
レオ:愛してるよ、吉琳ちゃん
こぼれる吐息も、絡み合う眼差しも甘く溶け合い、
この愛は、永遠に続いていく…―

 

 

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