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My Little Prince & Princess(レイヴィス)

雷

 

 

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どの彼と物語を過ごす?

>>>レイヴィスを選ぶ

 

 

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第1話:

 

ユーリ:何だろう、あれ…
ユーリと顔を見合わせ、光がおさまった場所に向かうと…
吉琳:女の子…だよね…
茶色の髪を一つにまとめた小柄な女の子が、こちらに背を向けて立っている。
ユーリ:うん。でも、どうしてこんなところに…?
ユーリが不思議そうに呟いた時、廊下側から聞き慣れた声に呼び止められた。
レイヴィス:何してるの、こんなところで
吉琳:レイヴィス。もう帰って来たんだね
レイヴィスは、数日前からウィスタリアに滞在していて、
今日は交流のある貴族と会食をしていた。
レイヴィス:お前も、視察早く終わったんだな
そう言いながらレイヴィスがこちらに近づいて来た瞬間、
私たちの横を、さっと小さな影が通り抜ける。
吉琳:っ…!
その直後、先ほどの女の子がレイヴィスにぎゅっと抱きついた。
女の子:お父様!
吉琳:えっ
思いもよらない言葉に目を見開くと、
隣のユーリが、レイヴィスと女の子を交互に見つめて…―。
ユーリ:もしかして…レイヴィス様の子ども…?


=====


ユーリ:もしかして…レイヴィス様の子ども…?
レイヴィス:ちょっと、何の話? そんなわけ…
そう言いかけたレイヴィスの声を遮って、
女の子が私たちを振り返り、澄んだ青い瞳をにっこり細めた。
女の子:お母様と、ユーリもいたんだね!
吉琳:……!
ユーリ:お母様って……
レイヴィス:……

(私のこと…だよね)

レイヴィスとユーリの視線を受け止め、驚きが胸に広がる。

(レイヴィスもお父様って呼ばれていたけれど、もしかして…)

ユーリの推測が本当なのかもしれないと思った時、
レイヴィスは、目線を女の子の高さに合わせるようにしゃがんで訊ねた。
レイヴィス:ねえ、名前は?
女の子:また、上手にごあいさつ出来るかのテストー?
少しおっとりとした愛らしい声をこぼしながら、女の子はにっこりと微笑む。
アンナ:アンナ=ハルナイトです
アンナ:お父様、お母様、ユーリ、ごきげんよう
アンナと名乗った女の子は、そう言ってワンピースの裾を持ち上げお辞儀をした。

(やっぱり、私たちの子ども…!)
(でも…)

身に覚えのない子どもの存在に戸惑いを隠せずにいると、
隣のレイヴィスが小さな呟きを落とし…―
レイヴィス:未来から来た、子ども…?


=====


レイヴィス:未来から来た、子ども…?
吉琳:未来…?
レイヴィスの不思議なその言葉に、思わず小首を傾げる。
ユーリ:レイヴィス様がそんなこと言うなんて珍しいですね
レイヴィス:さっき会食した伯爵がそんなこと言ってたんだよ
レイヴィス:自分の子どもが、未来から訪ねてきたことがあるって
吉琳:……え?
レイヴィス:冗談だと思って真に受けなかったけど…

(私たちは、その伯爵と同じ体験をしているということ…?)

自分の庭にいるかのように落ち着いているアンナの様子からは、
迷いこんで城に入ってきたようには見えず、また嘘をついているとも思えなかった。
レイヴィス:ひとまず、もっとアンナと話す必要がありそうだな
レイヴィス:俺はちょうど公務終わったからいいけど、お前は?
吉琳:私は…
向けられたレイヴィスの視線に、ユーリがにっこりと笑う。
ユーリ:この後は書類の確認だけだから、調整出来るかも!
ユーリ:俺、ジル様に聞いてくるよ


=====


ユーリ:俺、ジル様に聞いてくるよ
吉琳:ありがとうユーリ
城の中へと足を進めるユーリの背中を三人で見送った。
レイヴィス:とりあえず、俺の部屋に来て
二人:うん!
返事のタイミングが、見事なまでにアンナと被ってしまって顔を見合わせると、
レイヴィスはふっと笑みをこぼす。
レイヴィス:お前たち、似てるな
吉琳:うん…そうかもしれない

(こんな些細なところからも、自分たちの子どもなんだって思うな)

小さな共通点に、抱いていた戸惑いが和らぎ、部屋へ向かおうとすると、
アンナがレイヴィスを見上げ、不思議そうに訊ねた。
アンナ:お父様。おしごと終わったのに、いつものやらないの?
レイヴィス:いつもの?
アンナ:うん。おしごと始める前とか、終わった時とかにやってるでしょ
アンナ:お母様のおでこにちゅーって
吉琳:っ……

(もしかして未来では習慣になってるの…?)

頬に熱が集まるのを感じていると、レイヴィスが楽しげにアンナに答える。
レイヴィス:ああ、忘れてた。ありがとう、アンナ
吉琳:えっ
その返答に驚いているうちに、優しく手を引かれて…―


=====


レイヴィス:ああ、忘れてた。ありがとう、アンナ
吉琳:えっ
その返答に驚いているうちに、優しく手を引かれて…
吉琳:っ……
額にレイヴィスの唇が触れた。
離れていく意地悪な眼差しに、鼓動はもっと落ち着かなくなる。

(もう、レイヴィスってば…)

それでも未来でのレイヴィスとの習慣に、甘く胸が高鳴っていった。

***

その後、レイヴィスの滞在する部屋で、私たちは改めてアンナの話を聞いていた。
ソファの真ん中にちょこんと座ったアンナは、
両隣にいる私たちを見上げて答えていく。
吉琳:不思議なことが起きたのは分かる?
アンナ:うん…。ぴかって光って、目を開けたらお庭にいたよ
レイヴィス:光に包まれる前は何してた?
アンナ:えっと……
アンナは思い返すようにしてから一瞬、瞳を揺らして口を閉ざしてしまう。
レイヴィス:……

(何か言いたくないことなのかな…)

しゅんと肩を落とす様子を心配に思っていると、
アンナをじっと見つめていたレイヴィスが、あることを訊ねた。
レイヴィス:アンナ。お前、何か悩みがあるんじゃない?

 

 

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第2話:

 

レイヴィス:アンナ。お前、何か悩みがあるんじゃない?
アンナ:っ……
レイヴィスの言葉に、高い位置で結ってあるアンナの髪がびくりと揺れる。
吉琳:悩み?
レイヴィス:子どもの悩みを解決したら未来に帰ったって、伯爵が言ってたから

(じゃあ、アンナの悩みが解決出来れば…)

思いを巡らせていると、アンナが勢いよく立ち上がった。
アンナ:悩みなんか、ないもん…
アンナはそう言って扉へと駆けだし、部屋を出て行ってしまう。
吉琳:待って、アンナ…!
一瞬レイヴィスと顔を見合わせて、私たちは急いでアンナの後を追った。

***

日が傾き始めて淡く染まる廊下を探していると、
アンナが、大きな風景画の前で立ち尽くしている姿が目に入る。

(よかった…すぐに見つかって)

吉琳:レイヴィス、あれ…
レイヴィス:…ああ
頷きを交わして、アンナの元へと歩み寄り、
レイヴィスが穏やかな声色で訊ねた。
レイヴィス:その絵がどうかした?
その声にアンナは肩を揺らすと、ゆっくりとこちらを振り返る。
まだわずかに影の差した表情のまま、アンナはぽつりと呟いた。
アンナ:これ…ロベールさんが描いた絵だよね…?


=====


アンナ:これ…ロベールさんが描いた絵だよね…?
吉琳:うん。そうだよ
アンナ:アンナ…ロベールさんにひどいことしちゃった……
今にも泣きそうなその声に胸が締めつけられ、
私はレイヴィスと一緒にしゃがみ込み、アンナと目線を合わせる。
レイヴィス:怒ったりしない。だから俺たちに話して
レイヴィスが優しく諭すように顔を覗き込むと、
アンナは小さく頷いて、ぽつりぽつりと喋り始めた。
アンナ:アンナね、ロベールさんのアトリエでお絵かきしてたの
アンナ:でも…
ロベールさんが少し席を外した時、アンナについてきていたメイドさんが、
間違って描きかけの肖像画を破ってしまったという。
アンナ:お父様とお母様の絵…はじめてだったの
アンナ:それでメイドさん、すごく困ってて…アンナがないしょにするって言って…
しかし、アンナはロベールさんや周りに嘘をつくのが辛かったと話していく。
レイヴィス:そういうことか

(メイドさんのためについた優しい嘘でも、やっぱり辛いよね…)

アンナの想いが痛いほど伝わって、目の前の小さな手をぎゅっと握る。
すると、レイヴィスの手がそっと私の頬に伸びてきて…―


=====


(メイドさんのためについた優しい嘘でも、やっぱり辛いよね…)

アンナの想いが痛いほど伝わって、目の前の小さな手をぎゅっと握る。
すると、レイヴィスの手がそっと私の頬に伸びてきて…
レイヴィス:お前までそんな顔しても仕方ないだろ
なぐさめるように親指を私の目もとに滑らせた。
いつの間にか浮かんでいた涙を拭われて、私はゆっくりと頷く。

(そうだよね。私まで悲しんでいる場合じゃない)
(アンナのために出来ることを考えないと…)

そう思っていると、レイヴィスはふいに立ち上がった。
レイヴィス:それじゃあ、二人とも行くよ
吉琳:えっどこに…?
レイヴィスは意味ありげに笑って、私とアンナをある場所へと促した。

***

そうしてやってきたのは、ロベールさんのアトリエだった。

(アンナのこと詳しく説明しなかったのに、)
(すぐここを貸してくれたな…ロベールさん)

〝ロベール:アトリエに入りたいの?〞
〝レイヴィス:そう。少しでいいから〞
〝ロベールさんは、不安そうなアンナを見て優しく微笑んだ。〞
〝ロベール:好きに使ってくれて構わないよ〞

(でも…レイヴィスはどうしてここに連れて来たんだろう?)


=====


(でも…レイヴィスはどうしてここに連れて来たんだろう?)

ロベールさんの部屋に飾られた絵を見ながら不思議に思っていると、
アンナも興味深そうに絵の一つ一つを覗き込んでいる。
レイヴィス:アトリエで描くぐらい、絵好きなんだ?
レイヴィスはアンナの隣に立つと、同じように絵を眺めながら問い掛けた。
アンナ:うん。一番好きなのは、ロベールさんの絵
レイヴィス:そう。じゃあ、破ってしまった絵も?
アンナ:っ……
アンナ:…ごめんなさい
小さく謝るアンナに、レイヴィスはその頭をぽんぽんと撫でる。
レイヴィス:怒ってるわけじゃない
レイヴィス:アンナは、その絵も好きだったんだろ?
アンナ:うん…
アンナがおずおずと頷くと、
瞳に優しい色を滲ませたレイヴィスが、腰を屈めてアンナを覗きこみ…―
レイヴィス:多分、ロべールもその絵が好きだったと思う。ここにある色んな絵と同じく


=====


レイヴィス:多分、ロべールもその絵が好きだったと思う。ここにある色んな絵と同じく

(あ…)

レイヴィスがアンナをここに連れてきた意図に気づき、
娘を諭すその横顔を見つめる。

(ロベールさんの気持ちを考えさせて、)
(かばうだけが優しさじゃないって教えてあげているんだ)

自分の子どもを正しく導こうとするレイヴィスの姿に、頼もしさを感じ、
胸の真ん中がぽうっと温かくなって、少しだけ目の奥が熱くなった。
アンナもまた、納得するように何度か頷いて、瞳を潤ませている。

(ちゃんと、アンナにも伝わっているみたい)

レイヴィス:いい子
屈めていた腰を戻したレイヴィスが、アンナの髪をさらりと撫でていく。
レイヴィス:メイドがロベールにちゃんと謝れるように、
レイヴィス:お前が後押ししてあげられる?
アンナ:うん…。アンナも一緒にあやまる
アンナが笑顔でそう言った瞬間、強い光に包まれて…―

 

 

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雷分

 

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第3話-プレミア(Premier)END:

 

アンナ:うん…。アンナも一緒にあやまる
アンナが笑顔でそう言った瞬間、強い光に包まれて…
吉琳:アンナっ…
レイヴィス:待って
光に包まれていくアンナに不安を覚えて思わず手を伸ばすと、
レイヴィスが私の腕をそっと掴んだ。
レイヴィス:多分この光、アンナが帰れるってことなんじゃない?
吉琳:あっ…悩みを解決出来たから
少しほっとしてアンナを見ると、青い大きな瞳が寂しそうな色を滲ませる。
アンナ:お別れ、いやだなあ…
少し甘えたほんわりとした声が耳に届いて、愛しさが溢れていく。

(私も、もっと話していたいけれど…)
(それじゃあアンナがロベールさんに謝れないよね)

吉琳:本当に帰れなくなったら大変だよ
アンナ:でも……
レイヴィス:お別れじゃないだろ。未来に帰っても逢える
レイヴィスが優しく微笑むと、アンナの顔がぱあっと輝いた。
アンナ:そっか…!
レイヴィス:安心して帰りなよ


=====


レイヴィス:安心して帰りなよ
レイヴィスは身体を屈めると、小さなアンナの額に口づける。
アンナ:うん。お父様、お母様、バイバイ
アンナがワンピースの裾を持ち上げて、にっこりと笑うと、
アンナを包む光がいっそう強くなった。
吉琳:っ……
思わず目をつぶってしまうものの、一瞬のうちに瞼の裏にも感じた光がおさまる。
あたりを見回すと、アトリエからアンナの姿はなくなっていた。
レイヴィス:まったく。将来、手がかかる子どもが出来るって覚えておかないと
吉琳:そうだね…
心の中を少しの寂しさがよぎりながらも、無邪気な笑顔が胸に焼きついている。

(少しおっとりとしていて、とても心の優しい子が生まれるんだと思うと、)
(未来が楽しみだな…)

その瞬間に想いを馳せて、私は自然と笑みをこぼしていた。

***

その夜、夕食を終えて食堂を出ると、レイヴィスがそっと私の手を取る。
吉琳:レイヴィス…?
ふいに絡められた指先に、思わず瞳を瞬かせると、
レイヴィスがふっと目を細めて…―
レイヴィス:部屋、来るだろ?


=====


ふいに絡められた指先に、思わず瞳を瞬かせると、
レイヴィスがふっと目を細めて…―
レイヴィス:部屋、来るだろ?
レイヴィス:まだ話し足りないんだけど

(今日は本当に色んなことがあったし、私もまだ話していたい)

吉琳:うん
笑顔で頷き、繋いだ手にきゅっと力を込めると、
レイヴィスも穏やかに微笑んで、歩みを進めた。
レイヴィス:嘘がつけないところ、お前とそっくりだったな。アンナ
吉琳:それを言うなら、優しいところはレイヴィスとそっくり
レイヴィス:俺が優しい?
吉琳:今日だってそうだったよ
アンナがここにやって来てから、ロベールさんにアトリエを借りて、
アンナの気持ちに寄り添いながら諭していく姿を思い出す。
レイヴィス:あれは子ども相手だったから
レイヴィス:お前と初めて逢った時、
レイヴィス:優しいなんて言われるような態度じゃなかったと思うけど?
懐かしいその時を思い出して、私は笑みをこぼした。

(…確かに、冷たい人ってあの時は思ったけれど、)
(はっきり言ってくれたお陰で、あの後プリンセスとしての自覚が持てた)

吉琳:ちょっと厳しい時もあるけれど、それだって相手のためだと思うから
吉琳:レイヴィスの優しさは…一番知ってるよ
レイヴィス:……
レイヴィス:お前って本当……
レイヴィスはぽつりとそうこぼすと、私の手をぐっと引く。
吉琳:っ……
そうして、既に辿りついていたレイヴィスの部屋に導かれ…―


=====


レイヴィス:お前って本当……
レイヴィスはぽつりとそうこぼすと、私の手をぐっと引く。
吉琳:っ……
そうして、既に辿りついていたレイヴィスの部屋に導かれ…
吉琳:んっ…
扉が閉じた瞬間、熱い口づけが落とされる。
吉琳:レイ…ヴィス……
一瞬で頭の奥を溶かされてしまいそうなキスの合間に名前を呼ぶと、
甘い吐息をこぼして、そっと唇が離された。
吉琳:あの……急にどうしたの?
乱れた呼吸を整えつつ問いかける私に、
レイヴィスは、小さくため息をついて答える。
レイヴィス:不意打ちで可愛いこと言ったのはそっち
吉琳:っ可愛いなんて…
思わず頬が熱くなるのを感じながら、私は俯いた。

(レイヴィスの言葉の方が、よっぽど不意打ちだよ…)

落ち着かない鼓動を抑えたくて胸に手を当てると、
レイヴィスが小さく苦笑をこぼす。
レイヴィス:お前のそういうところは、アンナに似ないといいけど
吉琳:え…?
レイヴィスを見上げると、私の頬へその指先を滑らせて…―


=====


レイヴィス:お前のそういうところは、アンナに似ないといいけど
吉琳:え…?
レイヴィスを見上げると、私の頬へその指先を滑らせて…
レイヴィス:誰にでも可愛いこと言いそうで困るってこと
レイヴィス:まあ、それはお前も一緒だけど
その瞳には、わずかな独占欲が滲んでいて、
目を逸らせないのに、鼓動だけが速まっていく。

(誰にでもなんて…言わない)

吉琳:レイヴィスだけだよ
吉琳:大好きな人だから…一番知ってるって言えるの
レイヴィス:ふーん
そう言った唇が嬉しそうに弧を描き、再び私に寄せられた。
触れるだけのキスが一度離れると、
柔らかな余韻が消える前にもう一度塞がれる。
吉琳:ぁっ……
今度は深く、舌先がくすぐるように誘って、
おずおずと応えると、吐息ごと絡め取られるようにキスが重ねられた。
吉琳:ふ……ぁっ
背中を抱き寄せられて、息をつく間もないほどの想いを受け止めながら、
身体をじんと駆け抜ける甘い痺れに目眩を覚える。
微かな音を立てて唇が離れると、レイヴィスの親指が濡れた唇をそっと拭って…―
レイヴィス:じゃあ、もっと教えて
レイヴィス:お前だけが知ってる、俺のこと

 

fin.

 

 

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第3話-スウィート(Sweet)END:

 

アンナ:うん…。アンナも一緒にあやまる
アンナが笑顔でそう言った瞬間、強い光に包まれて…
吉琳:……!
あっという間にアンナの姿が白い光に覆われていく。
しかし、閃光はすぐにおさまり、
目の前にはいつも通りのアトリエの景色が広がっていた。
レイヴィス:アンナ、帰ったみたいだな
一瞬の出来事に呆然としていると、レイヴィスの言葉に引き戻される。
気持ちの整理が出来ないまま、私は小さく頷いた。
吉琳:うん…でも、お別れ言えなかったね
吉琳:…もう少しアンナのことや、未来の話を聞きたかったな

(アンナの悩みが解決したのは、いいことなんだけれど…)

未来から自分の子どもが来るという不思議な状況や、
何よりも、愛らしいアンナとの時間をもっと続けていたかった。
すると、隣に立つレイヴィスがふっと笑う。
レイヴィス:それは、やめておいた方がいいんじゃない?
吉琳:えっ


=====


レイヴィス:それは、やめておいた方がいいんじゃない?
吉琳:えっ
レイヴィス:未来の楽しみは、とっておいた方がいいと思うけど
光の消えた方を見つめていたレイヴィスの瞳が、私に向けられる。
レイヴィス:これから少しずつ知っていけばいいだろ
レイヴィス:二人で一緒に

(あっ)

レイヴィスの瞳には確かな未来への約束が秘められていて、
その優しい眼差しに、心の奥がじんわりと温かくなっていく。

(そっか…。アンナとは、また逢えるんだもんね)
(嬉しいことも、今みたいな少し悲しいことも、)
(その時まで、全部とっておかないと)

吉琳:うん。そうだね
私は笑みを浮かべて大きく頷いた。

(でもなるべく、未来であんな悲しそうな顔をさせないようにしたいな)

そう思った時、私はあることを思いつく。
吉琳:レイヴィス。夕食の後、時間をもらってもいい?
問いかけると、レイヴィスは瞳を細めて私の髪にさらりと触れ…─


=====


吉琳:レイヴィス。夕食の後、時間をもらってもいい?
問いかけると、レイヴィスは瞳を細めて私の髪にさらりと触れ…
レイヴィス:ああ
耳にそっと髪を掛け直してくれた。
レイヴィス:お前のそういう顔、好き

(えっ……)

どきりと跳ねる鼓動を感じながら、私はレイヴィスに小首を傾げた。
吉琳:そういう顔って……どんな顔?
レイヴィス:嬉しそうに、また何か予想外のこと考えてる顔?
同じように疑問形で返されて、思わず笑みがこぼれ落ちる。

(予想外というなら、急に好きって言うレイヴィスも負けていないと思うけれど、)
(でも、嬉しいな…)

レイヴィス:それで、何かするわけ?
吉琳:うん、未来でアンナのためになることをしたくて
不思議そうなレイヴィスに、私はにこっと微笑んだ。

***

その夜…―
私は、ロベールさんにお願いをして、
客間でレイヴィスとの肖像画を描いてもらっていた。
ロベール:だいたいの構図は出来たから、二人とも自由にしていいよ
ロベール:画材が足りなくなってきたから、ちょっと取ってくるね
吉琳:はい。ありがとうございます
ロベールさんを見送ると、隣の椅子に座っているレイヴィスがふっと微笑む。
レイヴィス:これが『アンナのためになること』か


=====


レイヴィス:これが『アンナのためになること』か
吉琳:うん。一枚、ちゃんと完成した肖像画を用意しておきたくて

〝アンナ:お父様とお母様の絵…はじめてだったの〞
〝アンナ:それでメイドさん、すごく困ってて…アンナがないしょにするって言って…〞

吉琳:二枚目だから破ってもいいというわけじゃないけれど…
吉琳:初めての肖像画を破ってしまうよりは、
吉琳:アンナもメイドさんも、気にし過ぎなくて済むかなと思ったの
レイヴィス:なるほどね

(この絵を残しておけば、きっと未来の…アンナの役に立つはず)

レイヴィス:相変わらず、お前の考えは読めないな
レイヴィスは足を組みながら、ぽつりとこぼす。
吉琳:だめだった…?
レイヴィス:そうじゃない。面白いこと考える奴って思っただけ
レイヴィス:そういうお前だから好きなんだけど
吉琳:っ…ありがとう……
ふわりと笑うレイヴィスから伝えられたさり気ない言葉に、胸が落ち着かなくなる。
そんな私を見つめるレイヴィスの瞳が、いたずらに揺れて…─
レイヴィス:でも、こうやって二人の肖像画を描かせたら…


=====


レイヴィス:でも、こうやって二人の肖像画を描かせたら…
レイヴィス:お前が次期国王を選んだって思われるんじゃない?
試すような眼差しを真正面から見つめ返して、私は小さく頷いた。

(確かにそうかもしれない。でも…)

吉琳:それでもいいの
吉琳:…まだ正式にお城のみんなには言っていないけれど、
吉琳:私が選びたいのはレイヴィスだから…
レイヴィス:……

(心から愛してるレイヴィスと結ばれて、)
(また…アンナと逢いたい)

レイヴィスと同じ瞳をしたあの可愛いアンナの姿を思い出していると、
くいっと手を引かれて、目元に柔らかな温もりが触れる。
吉琳:レ、レイヴィス…
レイヴィス:今のは、お前が悪い
吉琳:もう…
照れ隠しにそう呟いても、レイヴィスは気にしない様子で笑っている。

(時々、意地悪なところも、全部優しさが裏側に隠れてるって知っているから…)
(レイヴィスへの愛しさだけがどんどん増えていくな)

積み重なった愛しさが、未来のあの子へと繋がっていく。
そんな幸せに胸が満たされるのを感じながら、
私はレイヴィスの肩に、そっと寄り添った…─

 

fin.

 

 

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エピローグEpilogue:

雷後

未来への期待と幸せが、彼への想いを溢れさせて…―
レイヴィス:俺の、どんなとこが好きなの
レイヴィス:一つずつ言って
晒された鎖骨に、熱い唇が寄せられて…
レイヴィス:お前の、全部が好き
こぼれる吐息も、絡み合う眼差しも甘く溶け合い、
この愛は、永遠に続いていく…―

 

 

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    創作者介紹
    創作者 小澤亞緣(吉琳) 的頭像
    小澤亞緣(吉琳)

    ♔亞緣腐宅窩♔

    小澤亞緣(吉琳) 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()