Magic of love~恋する魔法使い~(ルイ)
プロローグ:
――…ここは、魔法の国ウィスタリア
誰もが魔法を使えるこの国のお城で、私は宮廷魔法使いとして働いている。
***
(この本は、確かあの棚に返せばよかったかな…)
腕に抱えていた数冊の本を、魔法で宙に浮かべて棚の中に収めていく。
お城の図書館を飛び交う本は、私にとっては見慣れた光景だけれど……
アルバート:…………
(アルバートさんにとっては、珍しいのかも)
隣国シュタインから来ているアルバートさんは、
私の隣で物珍しげに空飛ぶ本を眺めていた。
(たまたま図書館ではち合わせたけど、もしかして、ここに来るのは初めてなのかな)
アルバート:さすが、ウィスタリアですね。
アルバート:本の返却まで魔法で行うとは…
吉琳:手で返すより、この方が早いんですよ
アルバート:利便性があるのはわかってますが、
アルバート:シュタインではこうした魔法が使える人間は限られています
アルバート:あまり見ない光景ですので、興味深いですね
感慨深く呟いたアルバートさんが、ふと、私の方に目を向けた。
アルバート:そういえば、前から聞きたかったのですが…
アルバート:宮廷魔法使いであるあなたは、
アルバート:普段どのような仕事をしているのですか?
吉琳:私は主に、魔法の研究をしています
アルバート:研究ですか…。きっと熱心に取り組んでいるのでしょうね
吉琳:え…?
アルバート:あなたの魔法は素晴らしいと、ゼノ様も褒めていましたから
(シュタインの国王陛下に褒めていただけるなんて、嬉しいな)
吉琳:ありがとうございます
お礼を告げたその時、図書館の重厚な扉が音を立てて開いた。
???:吉琳
吉琳:あ…
(もう約束の時間?)
入り口から差し込む光の中に、彼の姿が見える。
(急がないと)
吉琳:すみません、私はこれで失礼しますね
アルバートさんと別れて、彼の元へと向かう。
光が差し込む扉の前で、私を待っていたのは…――
どの彼と過ごす…?
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共通第1話:
――…透き通った青空が鏡のように煌めく午後
ノア:吉琳ー
吉琳:あ…
いつもの柔らかい声音が、図書館に控えめに響く。
(もう約束の時間?)
(急がないと)
吉琳:すみません、私はこれで失礼しますね
図書館にいたアルバートさんと別れ、入り口へと駆け寄る。
***
吉琳:ルイ、ノア…待たせてごめん
光が差し込む扉の前で私を待っていたのは、
ウィスタリアの王位継承者であるルイとノアだった。
ノア:吉琳、仕事終わったー?
吉琳:うん、ばっちり
ルイ:それなら、よかった
ノア:じゃ、予定通り三人でお忍びに行こっか
吉琳:お忍びなのはルイとノアだけでしょ?
ノア:細かいことは気にしなーい
ルイ:それにしても、今日が晴れてよかったね
吉琳:うん、私も今日の約束を楽しみにしてたから嬉しい
話しながら廊下を歩いていると、すれ違うメイドたちがニ人に羨望の眼差しを向けた。
(いつも当たり前みたいに一緒にいるけど…)
(ニ人は、本当なら私が気軽に話せるような人たちじゃない…)
視線を上げて、淡く光る髪を揺らして歩く二人の姿を眺める。
(魔法学校で知り合っていなかったら、きっとこんな風に仲良くなることはなかっただろうな)
出逢った頃を思い出してふっと頬を緩めていると、
ルイとノアがくるりと振り返って私に手を差し伸べた。
ルイ:吉琳
ノア:お手をどーぞ
吉琳:え…
目の前に差し出された二人の手に、目を瞬かせる。
(どういうこと…?)
ノア:吉琳は空飛ぶ魔法、苦手でしょー?
ルイ:歩いていくと時間がかかるから…
ルイ:俺たちが、エスコートしてあげる
(でも私と一緒に飛んだら、普通に飛ぶより疲れちゃうんじゃ…)
吉琳:本当に…いいの?
ノア:もちろん
ノア:それに三人で一緒に空飛ぶのって、きっと楽しいよ?
ルイ:ちょっと揺れるかもしれないけど
ルイ:君の手だけは、絶対に離さないから
促すように手を揺らすノアと、静かに微笑むルイを見て、
胸の奥がぎゅっと音をたてる。
(私が一人じゃ空を飛べないから、気を遣ってくれてるんだ…)
(…こういう優しいところも、学生の頃と変わらないな)
吉琳:ありがとう
私は笑顔で両手を伸ばし、二人の温かな手をとった。
***
ルイとノアに手を引かれ、バルコニーへとやって来る。
ノア:準備はいーい? それじゃ、行くよー
ルイ:しっかり掴まってて
吉琳:う、うん
二人の手を握り返すと、私の足がふわりと地面から離れる。
吉琳:わ……っ
(飛べた…!)
二人と一緒に、空をどんどん登っていく。
ノア:吉琳、上手に飛べてるよー
吉琳:二人のエスコートのおかげだよ
ルイ:高いけど、怖くない?
吉琳:うん、大丈夫
(本当はちょっと怖いけど…)
(二人が支えてくれてるから、安心できる)
ルイとノアとともに、地平線へと滑るように飛んでいく。
風を受けて目を細める二人を見て、私はふっと思い出した。
吉琳:そういえば…どうして急に私を誘ってくれたの?
(学生時代に出逢ってから一緒にいることは多かったけど…)
(こうして三人で出かけることなんて、今までなかった気がする)
私の問いに、ルイとノアは悪戯が成功した子どものように視線を交わす。
ルイ:それは…
ルイ:吉琳が最近、忙しそうだったから
吉琳:え…?
ルイとノアは思い出すように、顔を見合わせて笑みを浮かべる。
ノア:息抜きしないと倒れちゃいそうだねって、この間ルイと話してたんだよ
ノア:でも、お城にいると、吉琳はすぐ働きたがるでしょー?
吉琳:言われてみれば…そうかも
(宮廷魔法使いとして、何か少しでもみんなの役に立ちたくて…)
ここ数日のことを振り返ると、私は廊下を走ってばかりだった気がする。
ルイ:出かけた方が、君はゆっくりできると思ったんだ
ルイ:だから、今日はのんびり過ごそう
いつもより髪を跳ねさせて笑うノアと、優しい眼差しを向けるルイを見て、
温かな思いが心の中に広がっていく。
(私でさえ、自分の限界に気がついてなかったのに)
(二人とも、心配してくれたんだ)
吉琳:…ありがとう。ルイ、ノア
(私、二人に出逢えて本当に幸せだよ)
ノア:そーいうわけで、今からのんびりできる場所に行こうと思います
吉琳:のんびりできる場所って?
ノア:街外れにある花畑とかどーかな?
吉琳:わあ、行ってみたい
ルイ:決まりだね
ノア:でも、その前に…吉琳、ランチはもう食べた?
吉琳:あ…食べてない
ノアの言葉に、思い出したようにお腹が小さく音をたてる。
(…っ、恥ずかしい)
顔を赤くする私に、隣にいるルイが柔らかく微笑んだ。
ルイ:それじゃ…花畑に行く前に、美味しいもの食べよう
***
人のいない静かな路地裏に、私たち三人はふわりと降り立つ。
ルイ:足元気をつけて
吉琳:うん
(久しぶりに空を飛んだからかな…)
(足の先がまだふわふわする)
ノア:お腹すいたー。早く何か食べよう
吉琳:そうだね。何食べよっか?
ルイ:…そういえばこの前、ジルから聞いたけど
ルイ:この裏通りにできたお店が美味しいって評判だって
吉琳:あ、私も聞いたことある。じゃ、そこにしようよ
名物のメニューについて話しながら歩いていると、視界の端で何かが光った。
(ん? あれは…)
光の正体を確かめようと、近づいてそっと屈み込む。
わずかな陽差しで輝くそれは、繊細な装飾のブレスレットだった。
(綺麗…)
???:誰かの落とし物かな?
吉琳:あ…
後ろからやってきた彼が、私の肩越しに手を伸ばす。
彼の手が触れた瞬間、ブレスレットが光り始めて…――
???:………っ
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第2話:
光の正体を確かめようと、近づいてそっと屈み込む。
わずかな陽差しで輝くそれは、繊細な装飾のブレスレットだった。
ルイ:誰かの落とし物かな?
吉琳:あ…
後ろからやってきたルイが、私の肩越しに手を伸ばす。
ルイの手が触れた瞬間、ブレスレットが光り始めて……
ルイ:………っ
吉琳:…ルイ!
しゅるりと、ブレスレットがルイの手に巻きついてしまった。
ノア:勝手に巻きついた…
吉琳:これ、魔法のブレスレット…?
ルイが外そうと引っ張っても、ブレスレットは固まったように動かない。
ルイ:…とれないかも
ノア:んーちょっと見せて
ノアが高度な解除の魔法をいくつか唱えるものの、
ブレスレットはときどき光を帯びるだけでルイの腕に留まっていた。
(とれなくなっただけならいいけど…)
(何かおかしな魔法がかけられてたら大変)
吉琳:ルイ、どこか変なところはない?
ルイ:うん、大丈夫
吉琳:本当に…?
心配でルイの顔を覗き込むと、ルイがふっと頬を緩ませて…
ルイ:そんな心配そうな顔しないで
ルイ:…好きな子に、そんな顔はさせたくない
吉琳:え…?
思いがけない笑顔と言葉に、頬が熱を帯びるのを感じる。
吉琳:き、急にどうしたの?
ルイ:………俺、いま…
ルイも自分で驚いたように、口元を手で覆った。
ノア:あー…魔法、かかっちゃってるかもね
吉琳:どんな魔法…?
ノア:吉琳に惚れちゃう魔法
吉琳:………え?
(そんなおとぎ話みたいな魔法があるの…?)
目を丸くすると、ふいにルイが私に顔を近づけて……
(*驚いていると、ふいにルイが私に顔を近づけて……)
ルイ:びっくりした顔も、可愛い
吉琳:……っ
見たことがないほど柔らかな笑みが間近に広がり、胸が甘く疼く。
(普段のルイなら、絶対にこんなこと言わない)
(ノアの言う通り、ルイは魔法にかかってるんだ)
ノア:俺、ルイのこんな顔初めて見るかもー
吉琳:うん…私も
いつものルイじゃないことはわかっていても、どうしても胸が高鳴ってしまう。
(でもルイは私のことが好きなわけじゃないのに)
(…魔法のせいでルイに、こんなこと言わせたらいけない)
手を握り込んで気持ちを抑え、ルイを見上げる。
吉琳:ルイ、しばらく大変かもしれないけど…安心して
ルイ:え…?
吉琳:ルイにかけられた魔法を解く方法、きっと私が見つけるから
ルイ:…うん、ありがとう
***
お城に戻った私は、ルイの部屋で魔法を解く方法を探していた。
吉琳:よし…できた!
(ブレスレットは外せなかったから、魔法の効果を打ち消す薬を作ってみたけど…)
ガラス瓶に入った青色の液体を片手に、ルイに視線を向ける。
吉琳:飲んでみて、ルイ
ルイ:うん
グラスに注いだ解除薬を、こぼさないようにルイに手渡す。
ルイはそっと口をつけると、最後の一滴まで静かに飲みほした。
吉琳:どうかな…?
ルイ:…美味しい
吉琳:よかった…じゃなくて、魔法が解けたか試してみよう
吉琳:私のこと、どう思ってる…?
グラスの底を見つめていたルイの瞳が、私に向いて……
ルイ:……好きだよ
吉琳:…っ…まだ解けてないみたいだね
昼間と同じような甘く優しい笑顔に、思わず目を伏せる。
(…さっきから何度も同じ言葉を聞いてるのに、慣れない)
(今のルイが言う『好き』は本物じゃないのに…)
魔法を解除する方法を色々試したけれど、まだどれも効果を発揮できていなかった。
(やっぱり、ブレスレットを外す方法を探したほうがいいのかな)
ルイ:…吉琳
吉琳:…っ、ルイ…?
俯いていた私の頬にルイの手がそっと添えられる。
ルイ:…今日はもう遅いから、諦めて
吉琳:でも…っ
(まだルイの魔法が解けてないのに…)
ルイが小さく首を横に振る。
ルイ:俺のせいで、無理させたくない
ルイ:それに、俺は困ってないから
吉琳:困ってない…?
ルイ:うん
ルイ:…君を困らせてはいるけど
(また、見たことない笑顔…)
どこか悪戯っぽく微笑むルイの姿に、胸の奥がかすかに痛む。
(私、ルイの笑顔は好きなのに…どうして今は、苦しく感じるんだろう)
吉琳:…うん、わかった。今日はこの辺でやめておくね
吉琳:でも私、必ず魔法を解いてみせるから
ルイ:君はいつも、頑張り屋さんだね
ルイは表情を和らげると、私の手を取った。
不思議に思っていると、手の甲に唇が寄せられて…――
吉琳:…っ、ルイ…?
触れた柔らかな感触に、頬が熱くなっていく。
ルイ:ごめん。君を好きって気持ちが抑えられなかった
ルイは視線を上げると、少し困ったような笑みを浮かべる。
吉琳:…っ…
(こんなことするのも、魔法のせい…だよね)
(…魔法のせいじゃなければ、素直に喜べるのに)
切なさを含んだ痛みが、また私の胸を覆うのを感じた。
***
――…翌日の夜
仕事を終えた私は、図書館でブレスレットを外す方法を調べていた。
(えっと、こっちの本は昨日読んだから…)
夢中になってページをめくっていると、急に視界を後ろから塞がれて……
吉琳:……っ
???:熱心だね
(この声は…)
吉琳:ルイ…?
ルイ:うん、正解
目元を隠していた手が外れて振り返ると、
淡い笑みを浮かべるルイの姿があった。
ルイ:俺も、一緒に調べていい?
吉琳:え…?
ルイ:自覚はあまりないけど…魔法にかかったのは、俺だから
ルイは隣の席に座ると、積み上げた本の一冊を手に取った。
吉琳:…ありがとう
ルイ:お礼を言うのは俺の方
ルイ:でも…ほんとは少し、魔法が解けなければいいと思ってる
吉琳:え、どうして…?
ルイ:魔法のおかげで、今吉琳とこうして過ごせてるから
(…っ…この言葉は魔法のせいなんだから、真に受けちゃだめ)
言い聞かせてもどうしても頬が熱くなってしまって、慌てて本に視線を落とす。
しばらく二人で黙って調べていると、ふいにルイが口を開いた。
ルイ:こうしてると…思い出すね
吉琳:何を思い出すの?
ルイ:学生の時のこと
ルイが本から顔を上げ、私を見つめる。
ルイ:昔、似たようなことがあったの覚えてる?
吉琳:あ…もしかして、箱にかかった魔法を解こうとした時のこと?
ルイ:うん。俺が生徒会室で開かない箱を見つけて…
ルイ:優等生だった君に、魔法を解いてほしいって頼んだ
(懐かしいな…)
(簡単には開かなかったから、図書館で必死に解き方を調べたっけ)
〝吉琳:…! 開きましたよ、ルイ先輩!〞
〝ルイ:俺は何をやってもだめだったのに…さすがだね〞
〝ルイ:ありがとう、吉琳〞
〝吉琳:……っ〞
(あの時はまだ、ルイのことをよく知らなかったけど…)
初めて見たルイの笑顔がすごく素敵だったことを、今でも覚えている。
(そういえば、あの後からルイとよく話すようになったんだっけ)
吉琳:ねえ、ずっと不思議に思ってたんだけど…
ルイ:ん…?
吉琳:ルイはあの時、どうして魔法を解く手伝いを私に頼んだの?
吉琳:ルイの周りには、もっとたくさん優秀な人がいたのに…
ルイ:…あれは、ただの口実
吉琳:口実…?
目を瞬かせる私に、ルイはふっと笑みを浮かべる。
ルイ:魔法を解く方法を知るためじゃない
ルイ:…最初から、君の心が欲しくて近づいたんだ
吉琳:え…?
思いがけない言葉に、胸の奥が大きな音を立てる。
息を詰めていると、真剣な眼差しに見つめられて…――
ルイ:君は…俺の、初恋の人だったから
第3話:
息を詰めていると、真剣な眼差しに見つめられて……
ルイ:君は…俺の、初恋の人だったから
吉琳:初恋……?
ルイの言葉に少しずつ鼓動の音が早くなっていく。
目を見開くと、ルイは少し照れたように瞼を伏せた。
ルイ:…学校の中庭で、俺と逢った時のこと、覚えてる?
吉琳:あ…ルイが自由課題の準備で、氷の魔法を使ってた時のこと?
ルイ:うん
頷くと、ルイは記憶を辿るようにその日のことを語っていく。
〝吉琳:わあ…雪が降ってるみたい、すごく綺麗!〞
〝ルイ:え…?〞
〝吉琳:あ…急にすみません。あなたの氷の魔法が素敵だったので〞
〝ルイ:…………〞
〝吉琳:あの、よかったらその魔法、私にも教えてくれませんか?〞
ルイ:そう言ってくれた君の笑顔が、すごく綺麗で…
ルイ:あの日から、ずっと気になってた
(そんなの…全然知らなかった……)
思い出を愛しむように、ルイの眼差しが優しく細められる。
ルイ:最初は、ただ気になってただけだったけど…
ルイ:一緒に過ごすようになってから、どんどん好きになっていった
吉琳:……っ
(…魔法にかかってるから、そんなこと言うんだよね)
(ルイの、本心じゃないよね…?)
嬉しいはずの言葉が苦しくて、一度強く目をつぶる。
そっと目を開いて、ルイの顔を見上げた。
吉琳:…ルイ、それは勘違いだよ
ルイ:…勘違い?
吉琳:うん。今は魔法のせいで、そう思ってるだけ…
(だから…この言葉を喜んじゃいけない)
こぼれそうになる思いを抑えて、椅子から立ち上がる。
ルイ:…吉琳?
吉琳:ごめん。…そろそろ、部屋に戻るね
ルイ:あ…、吉琳…っ
私は本を抱えると、ルイを置いて図書館から走り去った。
***
ソファーに座り、気もそぞろに魔法の解読について書かれた本を捲る。
(どうして、今のルイに好きって言われるたび)
(こんなに苦しいんだろうって思ってたけど…今わかった)
(欲しい言葉なのに、そこにルイの本当の気持ちがないからだ)
ページを捲りながら、ルイと過ごしてきた時間を思い返す。
〝ルイ:…俺には、敬語を使わなくていい〞
〝吉琳:え…?〞
〝ルイ:もっと、君と親しくなりたいから〞
〝ルイ:敬語はいらないし、呼び捨てで呼んで〞
〝(ほんとにいいのかな…?)〞
〝吉琳:それじゃ……ルイ…?〞
〝ルイ:うん〞
(学生の頃から、ルイに惹かれてて…)
(いつか気持ちが通じたらって思ってた)
けれど、こんな風に魔法で好きになってもらっても虚しいだけだ。
(ルイのことが本気で好きだからこそ…苦しい)
ため息をつきながら次のページを捲ると、
見覚えのあるブレスレットの写真が目に入る。
吉琳:これって、ルイの手に巻きついたブレスレット…?
(あ…魔法の解き方が載ってる!)
吉琳:えっと、方法は…
はやる気持ちを抑えて、文字を辿り……
吉琳:……っ
そこに書かれた内容に、大きく目を見開いた。
***
本を抱えて部屋を尋ねると、ルイは驚いた顔をした。
ルイ:吉琳…?
吉琳:夜遅くにごめんね。少し、いいかな…?
ルイ:もしかして、魔法を解く方法がわかったの?
吉琳:……うん
(わかったけど…本当にこんな方法で解けるのかな)
(でも…迷っていられない)
吉琳:ルイ、先に謝るね。…ごめん
ルイ:…?
震える息を整え、ルイを真っ直ぐに見つめる。
吉琳:目、つむってくれる?
ルイ:…いいよ
ルイは理由を聞かずに目を閉じてくれる。
緊張を堪えて背伸びをし、私はルイに唇を寄せて…――
(*緊張を堪えて背伸びをし、ルイにそっと唇を重ねた瞬間……)
ルイ:っ…
ブレスレットが強い光を放ち、ルイの手から滑り落ちる。
ルイ:え…
(あれだけノアが解除の魔法を唱えても動かなかったのに)
(キスするとはずれるって、本当だったんだ)
吉琳:どう、かな…?
吉琳:これで、魔法が解けたはずなんだけど
ルイは呆然と手首をさすり、床に落ちたブレスレットを見つめた。
ルイ:……そうみたい
吉琳:そっか…よかった
ほっとしながらも、胸に小さな痛みを感じる。
(…魔法が解けたから、ルイが私に好きって言うこともなくなる)
(これで、よかったんだよね…)
感じる切なさに俯いた、その時……
ルイ:…吉琳
吉琳:…っ…
ふいに抱きしめられ、思わず本を落としてしまう。
吉琳:ルイ…?
ルイ:どうして、そんな顔するの?
今までにない近さで聞こえる澄んだ声に、胸の音が大きくなる。
吉琳:……っ、ルイこそ、どうして…?
吉琳:魔法が解けたのに、どうしてこんなことするの…?
ルイ:それは…
ルイ:君のことが、好きだから
(え…?)
静まり返った部屋の中で、ルイの掠れた声だけが響く。
ルイ:悲しい顔を、見たくなかった
(なん、で…)
吉琳:もしかして、まだ魔法が解けてないの…?
ルイ:解けてるよ。…君が解いてくれた
吉琳:だって、それならルイはもう私を好きじゃないはずで…っ
言葉を遮るようにルイの腕の力が強くなる。
ルイ:今も言ったけど…俺は君が好きだよ
ルイ:それに、あの魔法…君に惚れる魔法じゃない
吉琳:え…?
ルイ:たぶん、本音が隠せなくなる魔法だと思う
吉琳:どういうこと…?
ルイは少し体を離すと、気恥ずかしそうに視線を落とした。
ルイ:あのブレスレットをつけた時から…
ルイ:思ったことが、そのまま声になってたから
ルイは床に落ちていた本を拾うと、
ブレスレットについて書かれたページを開いた。
ルイ:…やっぱり。ここ見て
本を覗き込むと、魔法の解き方が書かれた次のページに、
『本音が隠せなくなる魔法のブレスレット』と効果の説明が書いてある。
(…本当だ。ここまで見てなかった)
吉琳:それじゃ…
ルイ:うん。魔法でも、なんでもない
ルイ:君が好きって気持ちは、本当だよ
ルイ:…ただ、ずっと言えなかっただけ
そう言うと、ルイは困ったように目を伏せた。
ルイ:言ってしまったら、君が離れてしまうんじゃないかと思って…怖かった
吉琳:ルイ…
(それなら、ルイの言葉を受け止めていいの…?)
(ルイも私を好きでいてくれたんだって…)
ルイ:だけど…魔法には少し感謝してる
吉琳:え、どうして…?
ルイはふっと微かに笑うと、私の体をもう一度優しく抱きしめる。
ルイはふっと微かに笑うと、私の体をもう一度優しく抱きしめる。
ルイ:君にようやく、気持ちを伝えられたから
吉琳:……っ
ルイ:君は…?
ルイ:キスしてまで、魔法を解いてくれたのはどうして…?
(どうして、なんて…決まってるよ)
どこか熱のこもった瞳を見つめながら、
温め続けた思いを紡いでいく。
吉琳:私も……ルイが好きだからだよ
吉琳:…ずっと前から、好きだった
ルイ:吉琳…
気持ちを告げた瞬間、ルイの顔が近づいて……
吉琳:…っん
優しいキスに、そっと唇を塞がれる。
甘い吐息とともに唇が離れると、ルイは見惚れるような笑みを滲ませた。
ルイ:それなら…
ルイ:吉琳が…俺のことしか見えなくなる魔法、かけていい?
吉琳:それなら…もう、かかってるよ
ルイ:え…?
(ルイの笑顔を初めて見た日からじゃなくて…)
(きっと最初に出逢った日からずっと…)
〝吉琳:あの、よかったらその魔法、私にも教えてくれませんか?〞
〝ルイ:…俺以外にも、氷の魔法を扱える人はいるけど〞
〝吉琳:でもこんなに綺麗な氷の魔法は、初めて見たんです〞
〝吉琳:私もあなたみたいに、人を笑顔にできる魔法を覚えられたらなって〞
〝吉琳:だから教えてもらえませんか?〞
〝ルイ:……っ〞
〝ルイ:…わかった。俺でよければ〞
(ルイはあの日の私の笑顔に惹かれたって、言ってくれたけど…)
(私だって、魔法を使うルイの姿が忘れられなかった)
吉琳:私は最初から、ルイに魔法をかけられてたんだよ
気持ちを告げると、ルイは嬉しそうに口元を綻ばせた。
ルイ:…じゃあ、その魔法が消えないように
ルイ:もう一度かけさせて
吉琳:…うん
近づく顔に瞳を閉じると、再び唇が落ちてくる。
この魔法は永遠に続くのだと告げるように、
床に落ちたブレスレットが静かに光っていた…――
fin.
Epilogue:
――…魔法の国ウィスタリアで、魔法使いの彼らと過ごす日々は、
まだまだ終わらない…――
………
……
ある日、ルイとノアとピクニックに出かけたあなた…
そこで、魔法の飴を舐めたあなたに、思いがけないことが起きて…?
ノア:…ほんと、可愛いーな
ルイ:うん、今までで一番かも
二人にたくさん撫で撫でされる…!?
彼らとの愛しい時間を、もう少し覗いてみる…――?