日版王宮 劇情活動-婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな

婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな未来~(ジル)
2020/02/25~2020/03/08

日版王宮 劇情活動-婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな

もしも、愛する彼との間に子どもがいたら……?
婚前旅行の間だけ、
幼い子供のパパとママ代わりをすることになり……
………
ジル 「……仕方ないですね。」
ジル 「少しの間、私達でこの小さな騎士の親代わりをしましょうか」
ジル 「貴女はクリストフ夫人、ということになりますね」
………
いつか訪れるかもしれない彼との未来を、
少し覗いてみませんか…?

 

 

 

 

日版王宮 劇情活動-婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな

 

日版王宮 劇情活動-婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな

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プロローグ:

日版王宮 劇情活動-婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな

少しずつ春の息吹を感じると共に、
街の子供たちにも活気が溢れ始める頃…―

(可愛い……)
(子供を見ていると、家庭教師をしていた頃を思い出すな)

無邪気に笑う子供たちの様子を、
なんとも微笑ましい気持ちで眺めつつ私は歩を進める。
はやる気持ちを抑えて、
待たせている馬車へと向かうと、その前にはアランが立っていた。
吉琳 「アラン、お迎えありがとう!」
アラン 「公務お疲れ。……余程楽しみなんだな、今日からの婚前旅行」
アラン 「待ちきれねえって顔してる」
そう笑いこちらを見るアランに、少し気恥ずかしさを覚える。
吉琳 「最近、お互いに忙しかったから、会うのも久しぶりで……」
アラン 「まあ、今朝も早くから頑張ってたもんな」
アラン 「ほら、乗れよ」
吉琳 「うん!」
乗り込むと、少しして馬車が走り始めた。
馬車に揺られながら、窓から流れていく景色を眺める。

(素敵な思い出、沢山できるといいな……)

***

彼との楽しい旅行に思いを馳せていると、
あっという間に目的地に到着した。
アラン 「着いたぞ」
アランは扉を開けると、こちらへ手を差し伸べてくれる。
アラン 「暫くは公務も忘れて、楽しんでくれば」
吉琳 「ありがとう!」
私は笑顔で頷き返しながら、彼に会える喜びで高鳴る胸を抑える。

(この旅行を通して、二人の未来がより明るく見通せるといいな)
(結婚した後……子供のことなんかも、考えたりして……)

まさかこの婚前旅行で愛する彼と父と母になるなんて、
この時の私は思いもしなかった…―。

 


どの彼と物語を過ごす?
>>>ジルを選ぶ

 

日版王宮 劇情活動-婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな

 

第1話:


太陽が少し傾き始め、色濃く庭園の花々を照らしだす午後…─
今日の公務である視察が終わり、ウィスタリア内の別邸を訪れた私は、
大きな扉に手をかけながら、胸をときめかせていた。

(今日から、婚前旅行か……)

ジルは執務で他国へと出ていたため、
お互いの移動時間を考えて、この別邸で合流することになっていた。
自然と頬が緩むのを感じていると、目の前の扉がゆっくりと開いていく。

(あれ……?)

ジル 「お待ちしておりました」
お城にいる時とは違う装いのジルが出迎えてくれて、胸がとくんと音を立てる。
吉琳 「わざわざお出迎えありがとうございます」
ジル 「いえ。一秒でも早く、貴女にお会いしたかったので」
ジルはそう言って、静かな笑みを浮かべた。
その言葉が嬉しくて、私もつい笑みが零れてしまう。
吉琳 「……私も、早くジルに会いたかったです」
吉琳 「それなのに、遅くなってしまってすみません」
ジル 「いえ、公務お疲れ様でした」
労りの言葉にお礼を返そうとしたその時、
ジルの後ろから、パタパタという足音が聞こえてくる。
不思議に思って覗くと、小さな男の子が駆け寄ってきた。
男の子 「この人がジルの待ってた人?」
息を弾ませながら私を見上げた男の子は、そのまま目を丸くした。
吉琳 「この子は……」


=====


男の子 「この人がジルの待ってた人?」
息を弾ませながら私を見上げた男の子は、そのまま目を丸くした。
吉琳 「この子は……」
ジル 「行儀が悪いですよ、チャド」
ジルは、男の子をたしなめるように言う。
チャド 「だって、ジルが待ってたっていう人を早く見たかったんだ!」

(えっと……誰だろう?)

状況が分からず困惑している私を、ジルは邸の中へと促す。
ジル 「お疲れでしょう。中で説明致しますので、まずはゆっくりなさってください」

***

ジル 「彼の名前は、チャドといいます」
ジルが今日この別邸に到着したところ、
敷地内の庭に迷い込んでいたので、保護したのだという。
ジル 「この寒空ですし、放っておくわけにもいきませんから」
吉琳 「そうですね。今日は特に冷えますし……」
ソファに座って、
ジルの淹れてくれたお茶にほっと息をつきながら、私は頷いた。
ジル 「ただ、名前以外は頑なに話そうとしないので困っています」

(そうなんだ……何か事情があるのかな)

私はカップを置くと、チャドに向かって微笑んだ。
吉琳 「私は、吉琳。よろしくね、チャド」
チャドは少しはにかむと、小さな笑顔を覗かせた。
チャド 「……吉琳って、プリンセスみたいだな」
吉琳 「え?」
チャド 「こんなに可愛い女の人、見たことない」
ジル 「ああ。それで先ほど驚いていたのですか」
チャド 「うん」
ジル 「チャドは、見る目がありますね」


=====


ジル 「チャドは、見る目がありますね」
吉琳 「そんな……言い過ぎです」
二人からの誉め言葉に、思わず照れてしまうと、
ジルが笑みを浮かべて、チャドに伝える。
ジル 「吉琳は、ウィスタリアのプリンセスなのですよ」
チャド 「そうなの!?」
吉琳 「うん、そうだよ」
頷くと、チャドは目を輝かせて何かを思いついたのか、
突然私の前で片膝をついた。
吉琳 「ど、どうしたの? チャド」
チャド 「俺を、プリンセスの騎士にして!」
部屋に大きく響いた声に、私もジルも目を瞬かせた。
ジル 「騎士ごっこですか?」
チャド 「違う! 俺、騎士になりたいんだ。父さんみたいなのは、嫌なんだ」

(お父さん……?)

私は跪くチャドを覗き込んで、目線を合わせた。
吉琳 「お父さんって、何をしてる人なの?」
チャド 「……」

(何か、聞けるかと思ったんだけど……)

無言で口を引き結んだままのチャドから、私は視線をジルへと移した。
ジル 「……仕方ないですね。」
ジル 「少しの間、私達でこの小さな騎士の親代わりをしましょうか」
吉琳 「親代わり、ですか?」
ジル 「ええ。貴女はクリストフ夫人、ということになりますね」


=====


吉琳 「親代わり、ですか?」
ジル 「ええ。貴女はクリストフ夫人、ということになりますね」
不意打ちの言葉に、私の頬はみるみる熱を帯びていく。
ジル、 「吉琳、赤くなっていますよ?」
吉琳 「……言わないでください」

(もう、ジルったら……)

私は自分の両頬を手で包みながら、ジルからの微笑みを受け止めた。
チャド 「ここにいていいの?」
私たちの様子を見つめていたチャドが口を開く。
ジル 「城に連絡も入れておきましたし、少しの間だけですよ?」
チャド 「うん!」
チャドは、嬉しそうに大きく頷いた。
ジル 「では、少し早いですが、夕食にしましょうか」

***

食堂へと移動すると、チャドが私の側へと歩み寄る。
チャド 「俺、プリンセスの騎士だから、吉琳の隣に座る!」
チャド 「側で守らなきゃな!」
ジル 「おや、可愛らしい騎士様ですね」
吉琳 「じゃあ、チャドの席は私の隣で」
使用人の方に伝えて席を用意してもらうと、
ジルは、カトラリーやグラスを並べたりと、夕食の準備を手伝っていく。
チャド 「ジルは偉い人なのに、召使いみたいなこともするんだな」
チャドの言葉に、ジル小さな笑みを浮かべると…─


=====


チャド 「ジルは偉い人なのに、召使いみたいなこともするんだな」
チャドの言葉に、ジル小さな笑みを浮かべると……
ジル 「ここは使用人の数も少ないですし、自分でできることは自分でしますよ」
チャド 「ふーん……そうなんだ」
スマートにグラスに飲み物を注ぐジルの姿を、チャドはじっと見つめていた。
食事が始まると、お腹が減っていたのか、チャドは勢いよく食べだした。
そのチャドのお皿には、ニンジンのグラッセだけが残っている。
ジル 「好き嫌いをするようでは、立派な騎士になれませんよ」
ジルはグラスを置くと、チャドに視線を送る。

(ジル、何だかお父さんみたい……)

思わず小さく笑った私も、ジルに合わせて隣のチャドを見た。
吉琳 「私も、何でも食べられる人に守ってもらいたいな」
チャド 「う……」
チャドはニンジンを見つめ、意を決したようにフォークを刺すと、口へと運ぶ。
チャド 「あれ……おいしい」
チャドは、甘く味つけたニンジンに目を瞬かせた。
吉琳 「凄いね、チャド」
チャド 「……まあ、騎士だしな!」
頑張ったことを褒めると、チャドはどこか誇らしげに笑う。
その様子を見つめて、ジルは笑みを浮かべた。
ジル 「少し失礼いたします」
そうして席を外したジルは、しばらくすると、カップを両手に戻ってきて…─

 

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第2話:


ジル 「少し失礼いたします」
そうして席を外したジルは、しばらくすると、カップを両手に戻ってきて……
ジル 「頑張って食べたので、ご褒美ですよ」
甘い香りのするカップをチャドの前に置くと、もう一つを私の前に置いた。
ジル 「貴女も、よろしければどうぞ。特製ココアです」
吉琳 「ありがとうございます」
チャドと一緒に口をつけると、深みのある甘さが広がる。
チャド 「美味しい!」
吉琳 「本当に」
ジル 「それはよかったです」

(ご褒美だなんて……こういうの、ジルらしいな)

今までジルから色々と教えてもらったり、
導いてもらった時のことが少し懐かしくなる。
チャド 「ジルって優しいんだね」
そっと耳打ちされて、私は大きく頷きを返した。
ジル 「お二人で内緒話ですか?」
吉琳 「はい」
笑みを浮かべて伝えると、ジルが柔らかく笑う。
ジル 「それは、少し妬けてしまいますね」
ジルの言葉にチャドもおかしそうに笑って、
和気あいあいとした、温かい家族のようなひとときが過ぎていった…─

***

夜がやってきて、辺りを静かな闇が包んでいく。
私たちは、
大きなベッドにチャドを挟むようにして、三人で横になっていた。
チャド 「もっと遊びたいな」
ジル 「今日は遅いですから、また明日にしましょう」


=====


チャド 「もっと遊びたいな」
ジル 「今日は遅いですから、また明日にしましょう」
ジルはそう言って、毛布をチャドの肩まで引き上げてあげる。
ジル 「それに、プリンセスもお疲れですから、」
ジル 「早く休ませてあげるのも騎士の務めですよ」
諭すように伝えると、チャドは毛布の中でもぞもぞと身を捩る。
チャド 「ジルって何か……父さんみたいだ」
ジル 「お父上が恋しくなりましたか?」
チャド 「……ううん」
チャドは、首を横に振った。
チャド 「父さんはただの召使いで、」
チャド 「騎士みたいにカッコよくないから……会いたくない」

(お父さん、使用人の方なんだ……)

ジル 「そうですか。それで、喧嘩をなさったんですか?」
ジルがさりげなく聞くと、チャドはぽつりぽつりと答えていく。
チャド 「うん……もう少し大きくなったら、一緒にお仕えしろって言うんだ」
チャド 「だから、父さんみたいな大人にはならないって……」
チャド 「こんな家も嫌いだって言っちゃった」
そして、家を飛び出したチャドは、乗合馬車にもぐり込んだりしながら、
気が付けばこの邸の近くに辿り着き、庭に入り込んだのだという。
チャド 「父さんみたいにカッコ悪いのは嫌だ。俺はカッコいい騎士になりたいんだ!」
ジルは小さな息をつくと、チャドを見つめて…─
ジル 「では、私も格好悪いですか?」


=====


ジル 「では、私も格好悪いですか?」
チャド 「え?」
ジル 「私は、国王やプリンセスにお仕えする使用人でもありますが」
チャド 「……そんなことない。ジルはカッコいいよ!」
ジル 「ありがとうございます」
ジルは静かに笑って、チャドの髪をそっと撫でた。
ジル 「眠れないようですし、少し私の話でもしましょうか」
チャド 「ジルの……?」
私はチャドと一緒に、ジルの声に耳を傾ける。
ジル 「私は、騎士の家系に生まれ、」
ジル 「自分でも騎士になるものだと思っていました」
チャド 「どうして騎士にならなかったの?」
ジル 「騎士になるには、身体が少し弱かったのですよ」
ジル 「ですが、後悔はしていません」
おかげで、今はプリンセスの教育係を務め、そして国王の右腕として、
大切な人たちを支えることができていると話してくれる。
ジルの想いが胸に響いて、じわりと熱くなっていく。
ジル 「私は、今の仕事に誇りを持っていますよ」
微笑むジルに、
チャドは無言のまま少し考え込むような素振りをみせていた…─


=====


ジルの柔らかい声に包まれるように、
チャドの瞼が、とろんと重くなっていく。
とんとんと優しくチャドの胸を叩いていた私は、
瞼がしっかりと閉じたのを見届けて、ジルに視線を向けた。
吉琳 「ありがとうございます……」
吉琳 「ジルに、あんな風に言って頂けるなんて嬉しいです」
ジル 「いえ、全て事実ですから」
ジルはそう言って、微笑んでくれる。
ジル 「貴女を今すぐ抱きしめられないことが、少しもどかしいですね」
チャドの胸の上に置いた私の手に、ジルはそっと手を重ねて、指を絡めた。
私の胸が、とくんと甘く小さな音を立てる。
ジル 「こうしていると、本当に私たちの子供のようではないですか?」
吉琳 「はい、そうですね」
チャドを二人で包み込むようにしながら、私たちは微笑み合う。
ジルから伝わる温もりを感じながら、優しい夜にまどろんでいった…─

***

翌日、三人で朝食を終えると、
昨日は私の側にくっついていたチャドは、ジルの側へと歩み寄る。
チャド 「俺、手伝うよ」
ジル 「ありがとうございます。」
ジル 「では、こちらのお皿をワゴンに乗せて頂けますか?」
ジルはニッコリと笑って、食べ終えたお皿たちを片付けるようお願いした。
チャド 「分かった」
チャドはお皿をこわごわ持つと、ワゴンへと運んでくれる。
最初は一皿ずつ運んでいたものの、
持つことに慣れてきたのか、両手にお皿を数枚重ねて持ち上げた瞬間、
チャドの体勢が大きく崩れる。
吉琳 「危ないっ」
ジル 「チャド!」


=====


ジル 「チャド!」
即座に踏み込んだジルは、長い腕でチャドの腰をぐっと支える。
食器の砕ける音が辺りに響き、チャドは目を見開いた。
身体は支えてもらったものの、
持っていた皿を落とし、割ってしまったのだった。
チャド 「あ……」
ジル 「大丈夫ですか? 怪我は……ないようですね」
吉琳 「よかった……」
ほっとする私たちとは別に、チャドは瞳を固めたままでいる。
吉琳 「チャド? どこか痛いの?」
顔を覗き込むと、チャドはようやく瞬きをした。
チャド 「ううん……平気。でも、お皿を割っちゃって、ごめんなさい」
しょんぼりと肩を落とすチャドを、ジルは優しく抱き上げる。
ジル 「気にしないでください。貴方に怪我がなくてよかった」
ジルが伝えると、チャドの瞳が微かに揺れた。
チャド 「召使いの仕事って、難しいんだね……」
ジルは割れた皿から遠ざけた席にチャドをそっと下ろし、使用人に片付けを命じた。
ジル 「誰にでも失敗はあります」
ジル 「自ら進んで手伝おうとしてくれた気持ちが、私は嬉しいですよ?」
チャドは視線を落として一度考え込むと、ゆっくりと顔を上げて…─
チャド 「ジルは……まだ、騎士になりたい?」

 

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第3話-プレミア(Premier)END:


チャドは視線を落として一度考え込むと、ゆっくりと顔を上げて…─
チャド 「ジルは……まだ、騎士になりたい?」
ジル 「何故ですか?」
チャド 「さっき、助けてくれた時……ほんとの騎士みたいだった」
ふっと息をつくように笑ったジルは、首を横に振った。
ジル 「昨日お伝えしたように、私は今の仕事に誇りを持っています」
ジル 「教育係も、騎士と同じように、」
ジル 「人に仕える信念を持った素晴らしい仕事ですから」

(ジル……)

ジル 「貴方のお父上も、同じではないですか?」
ハッと何かに気づいたようなチャドに、私は言葉を添える。
吉琳 「私も、お城で沢山の使用人の方々に助けてもらってるよ」
吉琳 「彼らがいなかったら、公務に専念できないし……」
ジル 「では、私を含め、」
ジル 「彼らもまた国やプリンセスを守っているということになりますね」
吉琳 「はい……本当に、日々感謝しています」
チャドは、私たちの言葉にじっと耳を傾けていた。
チャド 「召使いがカッコ悪いなんて……何で思ってたんだろう」
チャド 「俺、父さんにひどいこと言っちゃった……」
家を出る時に伝えた言葉に対して、チャドは後悔を滲ませていた。
ジルはチャドの前にしゃがみ込むと、その瞳をじっと見つめて…─


=====


ジルはチャドの前にしゃがみ込むと、その瞳をじっと見つめて…─
ジル 「間違いに気づいたのでしたら、謝ればいいのですよ」
ジル 「嫌いなニンジンも食べられた貴方なら、簡単ですよね?」
優しく諭すような言葉に、チャドは大きく頷いた。
ジル 「いい子です」
ジルはチャドの頭を優しく撫でた後、切り替えるように手を叩いた。
ジル 「さあ、城から迎えが来るまで時間があります。」
ジル 「それまで、何をして過ごしましょうか」
そう言うと、チャドは真っ直ぐな目で私達を見る。
チャド 「じゃあ……それまでジルたちと、いっぱい遊びたい!」
ジル 「昨夜、約束しましたからね。勿論です」
吉琳 「じゃあ、チャドの好きな遊びを教えて?」
チャド 「えっとね……」
私達は、本当の親子のようなひとときを過ごした…─

***

チャドとの楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
ジル 「もうこんな時間ですか……」
外を見れば、窓の外は既に日が沈み始めている。
ちょうどその時、外から馬のいななきが聞こえてきた。
ジル 「どうやら、迎えが来たようですね」
少しして、部屋の扉が開き、入ってきたのは……


=====


少しして、部屋の扉が開き、入ってきたのは……
ジル 「アラン殿でしたか。お手数をおかけしました」
アラン 「別に。」
アラン 「プリンセスのところでトラブルだっていうから、念のため俺が来ただけだ」
吉琳 「ありがとう、アラン」
初めて『騎士』を間近で見たチャドは、目を丸くする。
その瞳の奥には、憧れが輝いていた。
ジル 「この国の騎士団長ですよ」
ジルが伝えると、チャドはぐっとひと呼吸を置いてから、アランを見据えた。
チャド 「騎士よりもカッコいい仕事だってあるんだからな」
突然の言葉に、アランは不思議そうに首を傾げた。
アラン 「何だ、こいつ?」

(もう、チャドったら……)

吉琳 「ごめんね、アラン」
慌てて謝りながら、説明をしようとすると、
アランは、ぽんとチャドの頭を撫でる。
アラン 「当たり前だろ」
アラン 「色んな仕事があって、それぞれに格好いいところがあるんだ」
口角を上げて笑ってみせるアランに、チャドは少し驚いたあと、小さく頷き返す。
二人を見つめながら、私とジルは静かな笑みをこぼした。

***

外へと出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。
アラン 「で、どこまで送っていけばいいんだ?」
アランに付き添われて、チャドは親元へと帰ろうとしている。
別れの時がやってきて、チャドはぐっと手を握り込むと、ジルを見上げた。
チャド 「俺、ジルや父さんみたいに……」
チャド 「人を助けられるカッコいい大人になれるかな」
ジルはチャドと視線を合わせると、優しく微笑んで…─


=====


ジルはチャドと視線を合わせると、優しく微笑んで…─
ジル 「貴方なら、きっとなれますよ」

(ジルって、子供を正しく導いてあげられる……)
(素敵なお父さんになりそう)

胸の中が温かくなるのを感じながら、私はジルを見つめた。
ジル 「アラン殿、よろしくお願いいたします」
アラン 「ああ」
吉琳 「元気でね、チャド」
チャド 「うん……ありがとう!」
チャドを乗せた馬が、手綱の音と共に駆け出す。
その姿が見えなくなるまで、私はずっと手を振り続けた。
ジル 「ここは冷えますから、中に入りましょうか」
吉琳 「……はい」
ジルに促されて、私はようやく手を下ろして頷いた。

***

(なんだか邸内が、凄く静かだな……)

自分たちの足音だけが響く廊下を歩きながら、私はジルを見上げた。
ジル 「どうかしましたか?」
吉琳 「いえ、何でもないです。……ジルは、子供の相手も流石ですね」
ジル 「何も特別なことはしていませんよ」
ジルは柔らかく笑って、私を見つめた。
ジル 「伝えるべきことを伝えただけです」
吉琳 「でも……まるで、チャドのお父さんのようでした」
笑みを浮かべて伝えると、ジルは息をこぼすように笑って…─


=====


笑みを浮かべて伝えると、ジルは息をこぼすように笑って…─
ジル 「私には貴女こそ、チャドの素敵な母親のように見えましたよ」
吉琳 「そ、そうでしょうか……」
『母親』という響きがくすぐったく感じてはにかむと、
そっと壁に片手をついたジルが、私の方へと身体を傾けた。
吉琳 「ん……」
唇にキスが落とされて、柔らかな温もりに包まれる。

(ジル……)

唇を離したジルの瞳には、艶やかな熱が揺らいでいる。
ジル 「夫婦ごっこも楽しかったですが、」
ジル 「二人きりでこういうこともしたかったと伝えたら……」
ジル 「貴女を困らせてしまいますか?」
胸が大きな音を立てて、頬が熱くなるのを感じながら、私は俯いた。
吉琳 「……そんなこと、ないです」
吉琳 「私も、ジルに触れたいと思っていましたから……」
ジルの長い指が顎にかかり、上を向かされると、間近で瞳を見つめられる。
ジル 「そういう可愛らしいことは、私を見て伝えてください」
吉琳 「っ……」

(そんなこと、言えないよ……)

吉琳 「あ……あの」
言葉を探しながら、定まらない思考にあたふたとしていると、
ジルは妖艶に微笑みながら、私の耳元に唇を寄せ…─
ジル 「それでは、二人きりの時間を楽しみましょうか」


fin.

 

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第3話-スウィート(Sweet)END:


チャドは視線を落として一度考え込むと、ゆっくりと顔を上げて…─
チャド 「ジルは……まだ、騎士になりたい?」
ジルは静かに首を横に振り、優しく微笑んだ。
ジル 「いいえ。私は、なりたかった自分になれたので」
チャド 「なりたかった自分……」
チャドは、ジルの言葉を噛みしめるように繰り返した。
チャド 「俺、やっぱり騎士になりたいな」
チャド 「ジルや……」
チャド 「父さんが、人を助けるすごい仕事をしてるってことはわかった」
チャド 「だから俺は騎士として、」
チャド 「二人みたいに人を助けられるカッコ良い大人になりたい」
話を聞いて頷くジルを、チャドは決意するように真っ直ぐ見据えた。
チャド 「ジルがなれなかった分まで、騎士を目指してもいいかな?」
ジル 「それを決めるのは、私ではありません。貴方の心です」
ジルが微笑んで答えると、チャドは微かな不安を滲ませた。
チャド 「でも、父さんは何て言うかな」

(そっか……反対されないか、心配だよね)

ジルは少し考えるように視線を伏せると、静かな声音で言葉を紡ぐ。
ジル 「私は貴方の父上ではありませんが……」


=====


ジル 「私は貴方の父上ではありませんが……」
ジル 「息子が、自分の望む道へと進んでくれることを願うと思います」
ジル 「幸せは、きっとその先にあるはずですから」

(ジル……)

ジル 「貴方の名前にも入っているではないですか」
チャド 「え?」
ジル 「チャドとは『幸せな』という意味ですよ」
ジルの言葉に、チャドの瞳が揺れる。
ジル 「貴方の父上は、貴方の幸せを願っていますよ」
チャド 「そっか……ジル、ありがとう」
チャドは、ぎゅっとジルに抱きついた。
ジルは、そんなチャドの背中に優しく腕を回す。
胸の奥がじわりと熱くなっていくのを感じながら、私は二人を見つめていた。
チャド 「帰って……父さんに、ちゃんと話してみる」
ジル 「その前に、家を飛び出して心配かけたことを謝ってくださいね」
チャド 「うん!」

(ジルって、いいお父さんになりそうだな)

私はそう思いながら、微かな笑みをこぼした…─

***

昨日のうちにお城に事情を伝えておいたため、
午後になって、アランが別邸へと到着した。
アラン 「こいつを親元に送っていけばいいんだな」
ジル 「よろしくお願い致します」
吉琳 「アラン、ありがとう」
アラン 「ああ」
吉琳 「チャド、おうちに帰れるよ」
隣にいるチャドに視線を移すと、
騎士姿のアランを見つめて、チャドは瞳を輝かせていた…─
チャド 「……騎士団って、入るの難しい?」


=====


チャド 「……騎士団って、入るの難しい?」
アラン 「まあな」
風に揺らめくマントに身を包んだアランが答える。
吉琳 「アランは、騎士団長なんだよ」
そっと教えると、チャドは息をのんで、アランを見上げた。
チャド 「……俺、騎士団長になる!」
アラン 「は?」
チャドの突然の宣言に、アランは目を瞬かせた。
チャド 「父さんやジルと違う道へ行くなら、それくらいにならなきゃ!」
ジル 「そうですか。頑張ってくださいね」
ジルがどこか愉しそうに笑みをこぼすと、
アランもまた面白そうに口の端で笑う。
アラン 「やってみろよ。何年でも待ってやるから」
チャド 「いつか、そのマントをつけてみせるからな!」
意気込むチャドの頭を、アランは笑いながら、くしゃりと撫でた。
アラン 「こいつ、面白いな」
ジル 「未来の、有望な騎士の卵ですから」
アラン 「ん。大事に送り届けとく」
二人が笑みを交し合うのを、私は静かに見つめていた。
アラン 「ちゃんと掴まってろよ」
アランの馬に乗せてもらったチャドが、私たちに満面の笑顔を見せる。
チャド 「ジル、吉琳、二人ともありがとう! またね!」


=====


チャド 「ジル、吉琳、二人ともありがとう! またね!」
ジル 「ええ。お気をつけて」
吉琳 「元気でね」
チャド 「うん!」
アランが手綱を握り直すと、馬は勢いよく駆け出して、
『また会おうねえー!』と声を上げるチャドの姿が、すぐに小さくなっていく。
静まり返った庭先で、私たちは思わず笑い合った。
吉琳 「小さな、嵐みたいでしたね」
ジル 「ええ。全く」
ジルは、溜め息に似た笑みをこぼす。
ジル 「今は、ゆっくり貴女とお茶が飲みたいです」
吉琳 「では、お茶の用意をしますね」
ジル 「いえ。私が淹れますので、とりあえず中に入りましょうか」
吉琳 「はい」
私たちは笑い合ったまま、二人で邸へと入っていった。

***

結局、私とジルは一緒にお茶を用意して、ソファへと座った。
吉琳 「二人だと、随分静かですね」
ジル 「ええ。……ですが、ようやく婚前旅行らしくなりました」
いつもより深くソファへと座り、大きく息を吐いたジルを、
私は少しばかり心配の眼差しで見つめる。
ジル 「どうされました?」


=====


ジル 「どうされました?」
こちらの視線に気づき、目を瞬かせるジルに、私は少し慌ててしまう。
吉琳 「すみません」
吉琳 「お疲れのようなので……」
言い淀むと、ジルはそっと私の手を握る。
ジル 「心配をかけてしまいましたね。大丈夫ですよ」
ジル 「私は、貴女との時間を楽しむために来たのですから」
そうして自分の方へと引き寄せると、私の髪にキスを落とした。
みるみる頬が熱くなる私を、ジルは腕の中に閉じ込める。
ジル 「旅行はまだ始まったばかりですし、」
ジル 「この後は貴女の望むままに過ごしましょう」
ジル 「二人きりで……」
耳元で囁かれる甘い響きに、私の鼓動は大きく跳ねる。

(子供のいる楽しい時間もいいけれど……)

私は騒ぐ鼓動のまま、ジルに微笑みを返した。
吉琳 「それならもう、叶っています」
吉琳 「私の望みは……ジルと一緒に過ごすことですから」
はにかむ私に、微かに揺れたジルの瞳が近づく。
ジル 「私も、同じですよ」
限りなく甘く優しい口づけを交わしながら、
私たちは、二人きりの幸せな時間に身を委ねていった…─


fin.

 

日版王宮 劇情活動-婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな

 

エピローグEpilogue:

日版王宮 劇情活動-婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな
温かな将来が垣間見えるような三人の時を過ごした後には
彼とあなただけの、一際甘い時間が待っていて……
ジル 「困っている貴女はどうにも愛らしくて、煽られてしまいました」
抑えていた熱が溢れ出すような、彼の視線に捉われて…―
ジル 「ここには貴女と私、二人しかいないのですから」
未来に想いを馳せながら、愛し合う二人はひとつに溶け合っていく…―

 

日版王宮 劇情活動-婚前旅行でパパ&ママ体験~彼と描く幸せな

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